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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】眼の複数の部分の画像化
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20230112BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20230112BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
A61B3/10
G02B3/00 A
H01L27/146 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020532553
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2018059791
(87)【国際公開番号】W WO2019123085
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】62/607,661
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ベルント バルム
【審査官】鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-506107(JP,A)
【文献】特開2016-093509(JP,A)
【文献】特開2017-074377(JP,A)
【文献】特表2009-523539(JP,A)
【文献】特表2015-523105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0010260(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
G02B 3/00-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の各部分を画像化するためのシステムであって、
光を前記眼の、前記光を反射する複数の部分に向けて方向付けるように構成された光源及び光学系と、
前記反射された光を透過させるように構成されたレンズと、
センサアレイ上に配置されたレンズアレイを含むレンズ・センサアレイと、
を含み、
前記レンズアレイは前記レンズからの前記光を前記センサアレイに向かって透過させるように構成され、前記レンズアレイは、
前記眼の第一の部分により反射された前記光を前記センサアレイへと方向付けるように構成された第一のセクションであって、複数の第一のサブセクションを含み、各第一のサブセクションは少なくとも1つの第一のレンズレットを含む第一のセクションと、
前記眼の第二の部分により反射された前記光を前記センサアレイへと方向付けるように構成された第二のセクションであって、複数の第二のサブセクションを含み、各第二のサブセクションは少なくとも1つの第二のレンズレットを含む第二のセクションと、
を含み、
前記センサアレイは、
前記レンズアレイからの前記光を検出し、
前記眼の前記第一の部分により反射された前記光及び前記眼の前記第二の部分により反射された前記光に対応する複数のセンサ信号を生成するように構成された複数のセンサを含み、
前記第二のセクションは、前記第二のレンズレットの真正面に平面波面を生成するように動作する2つの焦点距離をもつ組み合わせレンズレットを含む
システム。
【請求項2】
前記第一のセクションの光学パワーはゼロである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第二のセクションは、ティルト成分を有する2~10ミリメートルの焦点距離を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第一及び第二のサブセクションは市松模様のパターンを形成し、
前記第一及び第二のサブセクションは複数の行及び複数の列に配置され、
各行において、各第一のサブセクションは第二のサブセクションと隣接し、
各列において、各第一の撮像サブセクションは第二のサブセクションと隣接する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第一及び第二のサブセクションは同心円状の環状パターンを形成し、
第一のサブセクションは第一の環状リングのような形状であり、
第二のサブセクションは前記第一の環状リングと同心円の第二の環状リングのような形状である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第一及び第二のサブセクションは縞模様のパターンを形成し、
第一のサブセクションは第一の長方形のような形状であり、
第二のサブセクションは、前記第一の長方形に隣接する第二の長方形のような形状である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
眼の各部分を画像化するためのレンズ・センサアレイであって、
センサアレイ上に配置されたレンズアレイを含み、
前記レンズアレイは、レンズからの光を前記センサアレイに向かって透過させるように構成され、前記レンズアレイは、
前記眼の第一の部分により反射された前記光を前記センサアレイへと方向付けるように構成された第一のセクションであって、複数の第一のサブセクションを含み、各第一のサブセクションは少なくとも1つの第一のレンズレットを含む第一のセクションと、
前記眼の第二の部分により反射された前記光を前記センサアレイへと方向付けるように構成された第二のセクションであって、複数の第二のサブセクションを含み、各第二のサブセクションは少なくとも1つの第二のレンズレットを含む第二のセクションと、
を含み、
前記センサアレイは、
前記レンズアレイからの前記光を検出し、
前記眼の前記第一の部分により反射された前記光及び前記眼の前記第二の部分により反射された前記光に対応する複数のセンサ信号を生成するように構成された複数のセンサを含み、
前記第二のセクションは、前記第二のレンズレットの真正面に平面波面を生成するように動作する2つの焦点距離をもつ組み合わせレンズレットを含む
レンズ・センサアレイ。
【請求項8】
前記第一のセクションの光学パワーはゼロである、請求項7に記載のレンズ・センサアレイ。
【請求項9】
前記第二のセクションは、ティルト成分を有する2~10ミリメートルの焦点距離を有する、請求項7に記載のレンズ・センサアレイ。
【請求項10】
前記第一及び第二のサブセクションは市松模様のパターンを形成し、
前記第一及び第二のサブセクションは複数の行及び複数の列に配置され、
各行において、各第一のサブセクションは第二のサブセクションと隣接し、
各列において、各第一の撮像サブセクションは第二のサブセクションと隣接する、請求項7に記載のレンズ・センサアレイ。
【請求項11】
前記第一及び第二のサブセクションは同心円状の環状パターンを形成し、
第一のサブセクションは第一の環状リングのような形状であり、
第二のサブセクションは前記第一の環状リングと同心円の第二の環状リングのような形状である、請求項7に記載のレンズ・センサアレイ。
【請求項12】
前記第一及び第二のサブセクションは縞模様のパターンを形成し、
第一のサブセクションは第一の長方形のような形状であり、
第二のサブセクションは、前記第一の長方形に隣接する第二の長方形のような形状である、請求項7に記載のレンズ・センサアレイ。
【請求項13】
眼の各部分を画像化するためのレンズ・センサアレイの製造方法であって、
センサアレイを基板として提供するステップと、
複数のレンズ層を前記基板上に印刷して、
前記眼の第一の部分により反射された光を前記センサアレイへと方向付けるように構成された第一のセクションであって、複数の第一のサブセクションを含み、各第一のサブセクションは少なくとも1つの第一のレンズレットを含む第一のセクションと、
前記眼の第二の部分により反射された前記光を前記センサアレイへと方向付けるように構成された第二のセクションであって、複数の第二のサブセクションを含み、各第二のサブセクションは少なくとも1つの第二のレンズレットを含む第二のセクションと、
を生成するステップと、
を含み、
前記第二のセクションは、前記第二のレンズレットの真正面に平面波面を生成するように動作する2つの焦点距離をもつ組み合わせレンズレットを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に手術機器に関し、より詳しくは、眼の複数の部分を画像化することに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の画像化には、その物体から反射された光を検出することと、検出された光からその物体の画像を作成することが関わる。診断及び外科処置中、眼は様々な方法で画像化できる。例えば、角膜から反射された光線を使って角膜を画像化することができる。他の例として、網膜から反射された波面を使って、網膜を画像化することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
特定の実施形態において、眼の各部分を画像化するためのシステムは、光源と光学系、レンズ、及びレンズ・センサアレイを含む。光源と光学系は、光を眼の各部分に向けて方向付け、それが光を反射する。レンズは反射光を透過させる。レンズ・センサアレイは、センサアレイ上に配置されたレンズアレイを含む。レンズアレイは、レンズからの光をセンサアレイに向かって透過させる。レンズアレイは、眼の第一の部分により反射された光をセンサアレイへと方向付けるように構成された第一のセクションと、眼の第二の部分により反射された光をセンサアレイへと方向付けるように構成された第二のセクションを含む。第一のセクションは第一のサブセクションを含み、各第一のサブセクションは少なくとも1つの第一のレンズレットを含む。第二のセクションは第二のサブセクションを含み、各第二のサブセクションは少なくとも1つの第二のレンズレットを含む。センサアレイはセンサを含み、これはレンズアレイからの光を検出し、眼の第一の部分により反射された光と眼の第二の部分により反射された光に対応するセンサ信号を生成する。
【0004】
特定の実施形態において、眼の各部分を画像化するためのレンズ・センサアレイは、センサアレイ上に配置されたレンズアレイを含む。レンズアレイは、レンズからの光をセンサアレイに向かって透過させる。レンズアレイは、眼の第一の部分により反射された光をセンサアレイへと方向付けるように構成された第一のセクションと、眼の第二の部分により反射された光をセンサアレイへと方向付けるように構成された第二のセクションを含む。第一のセクションは第一のサブセクションを含み、各第一のサブセクションは少なくとも1つの第一のレンズレットを含む。第二のセクションは第二のサブセクションを含み、各第二のサブセクションは少なくとも1つの第二のレンズレットを含む。センサアレイはセンサを含み、これは、レンズアレイからの光を検出し、眼の第一の部分により反射された光と眼の第二の部分により反射された光に対応するセンサ信号を生成する。
【0005】
特定の実施形態において、眼の各部分を画像化するためのレンズ・センサアレイの製造方法は、センサアレイを基板として提供するステップを含む。レンズ層が基板上に印刷されて、眼の第一の部分により反射された光をセンサアレイへと方向付ける第一のセクションと、眼の第二の部分により反射された光をセンサアレイへと方向付ける第二のセクションを生成する。第一のセクションは第一のサブセクションを含み、第一のサブセクションの各々は少なくとも1つの第一のレンズレットを含む。第二のセクションは第二のサブセクションを含み、第二のサブセクションの各々は少なくとも1つの第二のレンズレットを含む。
【0006】
本開示の実施形態を、下記のような添付の図面を参照しながら、例としてさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】眼の各部分を画像化するためのシステムの例を示す。
図2A図1のシステムによる角膜及び網膜の画像化を示す。
図2B】角膜の画像化を示す。
図2C】網膜の画像化を示す。
図2D図1のシステムと共に使用されてよいセンサアレイの動作を示す。
図3A図1のシステムと共に使用されてよい市松模様のパターンのレンズアレイの例を示す。
図3B図1のシステムと共に使用されてよい縞模様のパターンのレンズアレイの例を示す。
図3C図1のシステムと共に使用されてよい同心円状の環状パターンのレンズアレイの例を示す。
図4図1のシステムと共に使用されてよいレンズ・センサアレイの製造方法の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで説明文と図面を参照するが、開示されている装置、システム、及び方法の例示的実施形態が詳しく示されている。当業者にとっては明らかであるように、開示されている実施形態は例であり、考え得るすべての実施形態を網羅しているわけではない。
【0009】
図1は、眼12の各部分を画像化するためのシステム10の例を示す。システム10はレンズ・センサアレイを含み、これはセンサアレイ上に配置されたレンズアレイを有する。レンズアレイは、第一及び第二のセクションを含み、各セクションは、眼12の異なる部分を同時に画像化するために使用される。例えば、第一のセクションは、角膜から反射された光をセンサアレイへと透過させることにより、角膜を画像化してよく、第二のセクションは、網膜から反射された波面をセンサアレイへと透過させることにより、網膜を画像化してもよい。
【0010】
システム10の概観として、図の例では、システム10は光源20と、光学系22と、レンズ24と、レンズ・センサアレイ26(レンズアレイ28とセンサアレイ30を含む)と、ディスプレイ31と、コンピュータ40(1つ又は複数のプロセッサ42と、画像処理アプリケーション46を記憶する1つ又は複数のメモリ44を含む)と、を含む。図の例の動作の概観として、光源20と光学系22は、光を眼12の各部分に向け、それが光を反射する。レンズ24は、光をレンズ・センサアレイ26に向かって透過させる。レンズアレイ28の第一のセクションは、眼12の第一の部分から反射された光をセンサアレイ30に向かって方向付け、レンズアレイ28の第二のセクションは、眼12の第二の部分から反射された光をセンサアレイ30へと方向付けることにより、眼12の両方の部分の画像をディスプレイ32上で生成する。コンピュータ40は、システム10の構成要素の動作を制御して画像を生成する。
【0011】
より詳細には、図の例において、1つ又は複数の光源20は、眼12に向かって方向付けられることになる光を生成する。何れの適当な光(例えば、赤外光又は可視光)を生成する何れの適当な光源(例えば、レーザ又はダイオード、例えばスーパルミネッセントダイオード(SLED))でも使用されてよい。例えば、レーザ又はSLEDは網膜を照明してよく、インコヒーレント光源(例えば、ダイオード群)は眼を照明してよく、及び/又は赤外光源は血管をハイライトする画像を生成するための領域を照明してよい。
【0012】
光学系22は1つ又は複数の光学機器を含み、これは光源20により生成された光を眼12の各部分に向かって方向付ける。光学機器は、光を透過させ、反射し、及び/又は回折させる。光学機器の例としては、レンズ、ビームスプリッタ、及びミラーが含まれる。例えば、光学系22は、光を眼12に向かって反射し、眼12から反射された光をレンズ24へと透過させるスプリッタを含んでいてよい。眼12の部分は光を反射する。眼12の部分の例には、角膜、虹彩、強膜、水晶体、及び網膜が含まれる。
【0013】
レンズ24は、反射光をレンズ・センサアレイ26に向かって透過させる光学機器である。レンズ24は何れの適当な焦点距離fLを有していてもよく、これは50~200、200~400、又は400~550ミリメートル(mm)の範囲であってよい。レンズ24は1つのレンズ又は複数のレンズの系、例えばディレイライン付きの系を含んでいてよい。
【0014】
レンズ・センサアレイ26は、センサアレイ30上に配置されたレンズアレイ28を含む。レンズアレイ28は、3D印刷付加製造工程、例えば2光子造形法を使ってセンサアレイ30上に配置されてよい。工程中、赤色フェムト秒レーザパルスからの2つの光子がセンサアレイ30のフォトレジスストに吸収され、青色の光子のように動作する。これによって、液体フォトレジン内の架橋プロセスが開始する。レンズアレイ28の構造がセンサアレイ30上に1層ずつ印刷される。
【0015】
レンズアレイ28は第一及び第二のセクションを含み、これらは眼12の異なる部分を画像化するために使用される。レンズアレイ28の第一のセクションは、眼12の第一の部分から反射された光をセンサアレイ30に向かって方向付け、レンズアレイ28の第二のセクションは、眼12の第二の部分から反射された光をセンサアレイ30に向かって方向付けることにより、眼12の両方の部分の画像をディスプレイ32上で生成する。各セクションは、レンズレットを有するサブセクションを含む。第一のセクションは第一のサブセクションを含み、各第一のサブセクションは少なくとも1つの第一のレンズレットを有する。第二のセクションは第二のサブセクションを含み、各第二のサブセクションは少なくとも1つの第二のレンズレットを有する。特定の実施形態において、第一のセクションは、眼12の角膜及び角膜付近のその他の部分、例えば強膜と虹彩を画像化するために使用されてよく、第二のセクションは、眼12の網膜及び網膜付近のその他の部分を画像化するために使用されてよい。第一及び第二のセクションを、図2Dを参照しながらより詳しく説明する。
【0016】
センサアレイ30はセンサを含み、これはレンズアレイ30からの光を検出し、検出された光に対応するセンサ信号を生成する。センサ信号は、眼12の各部分の画像を生成するために使用できる。センサアレイ30の例としては、電荷結合素子(CCD)及び相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサが含まれる。センサアレイ30は、何れの適当な大きさ及び形状を有していてもよい。典型的なセンサアレイは、寸法10ミリメートル(mm)未満の長方形である。
【0017】
コンピュータ40は、システム10の構成要素の動作を制御して、眼12の各部分の画像を生成する。特定の実施形態において、コンピュータ40は光源20に光を生成するように命令する。コンピュータ40はまた、センサアレイ30からセンサ信号を受信する。画像処理アプリケーション46は、信号を処理して画像信号を生成し、これはディスプレイ32に画像を表示するように命令する。例えば、画像処理アプリケーション46は、センサ信号の中で受け取った情報をフィルタ処理し、パディングし、変換することにより、画像信号を生成する。
【0018】
ディスプレイ32は、コンピュータ40から画像信号を受信して、眼12の各部分の画像を表示する。ディスプレイは、デジタル画像を表示できる何れの適当な機器であってもよい(例えば、コンピュータディスプレイ、テレビスクリーン、又はヘッドアップディスプレイ)。
【0019】
図2A~2Dは、図1のシステム10を使用した眼12の各部分(例えば、角膜及び網膜)の画像化の例を示す。図2Aは、角膜及び網膜の画像化を示す。説明を簡潔にするために、図2Bは角膜の画像化を示し、図2Cは網膜の画像化を示す。図2Dは、センサアレイ30の動作をより詳しく示している。
【0020】
図2Aを参照すると、眼12から反射された光は、角膜から反射された光と網膜から反射された光を含む。光は角膜から光47として反射され、光は眼の網膜から波面48として反射される。レンズ24は、焦点距離fLを有し、光をレンズ・センサアレイ26に向かって透過させる。角膜とレンズ24との間の距離は2fLであり、レンズ24とレンズアレイ28との間の距離は2fLである。
【0021】
図2Bを参照すると、角膜からの光47はレンズ24を通過して、レンズ・センサアレイ26に向かって伝搬する。角膜とレンズ24との間の距離は2fLであり、レンズ24とレンズアレイ28との間の距離は2fLであるため、光47は第一のセクションで合焦する。
【0022】
図2Cを参照すると、網膜からの波面48は、焦点距離fCを有する眼12の水晶体49を通過する。波面48は、レンズ24を通ってレンズ・センサアレイ26に向かって伝搬する。第二のセクションの各レンズレットは、網膜の小さい画像を作る。第二のセクションのレンズレットは、波面48のティルト補正を行い、光のスポットをセンサアレイ26のセンサに向かって方向付ける。
【0023】
図2Dを参照すると、レンズアレイ28は第一のサブセクション50aを有する第一のセクションと、第二のサブセクション50bを有する第二のセクションを含む。光47は第一のサブセクション50aを通ってセンサアレイ30へと伝搬し、波面48は第二のサブセクション50bを通ってセンサアレイ30へと伝搬する。レンズアレイ28のレンズレットは何れの適当な寸法を有していてもよく、例えばセンサアレイ30に平行な平面に関して測定された約150~300マイクロメートル(μm)の幅とその平面に垂直な方向zへと測定された約3~10ミリメートルの厚さTである。レンズレットは、何れの適当な屈折率n(例えば、1.3~1.4、1.4~1.5、及び/又は1.5~1.6の範囲の屈折率)の何れの適当な材料(例えば、ポリマ)を含んでいてもよい。
【0024】
特定の実施形態において、第一のセクションは、眼12の角膜及び角膜付近のその他の部分、例えば強膜及び虹彩を画像化するために使用されてよい。角膜を画像化するために、センサアレイ30のセンサはレンズ24及びレンズアレイ28の像面にあるべきである。レンズ24に関するセンサの位置及びレンズレットの第一のセクションの焦点距離f1はこれを実現するために選択されてよい。
【0025】
説明を簡略化するために、レンズ・センサアレイ26がレンズアレイ28を含まない仮定の状況を考える。レンズ24の像面は、レンズ24から2*fLの距離にあり、*は乗算を表し、fLはレンズ24の焦点距離を表し、したがってセンサは画像を捕捉するために距離2*fLにあるべきである。この仮定の状況とは異なり、レンズ・センサアレイ26は、厚さT、屈折率nのレンズアレイ28を有しており、それによって像面が(n-1)*Tの距離だけレンズ24からさらに遠ざかる。例えば、2*fL=500mm、n=1.4、T=6mmとする。したがって、像面は(1.4-1)*6mm=2.4mmの距離だけレンズ24から遠ざかる。
【0026】
レンズ24に関するセンサの位置及び/又はレンズレットの第一のセクションの焦点距離f1は、像面をセンサに位置付けるように選択されてよい。特定の実施形態において、センサはレンズ24からさらに遠い新たな像面(n-1)*Tに設置され、第一のセクションの光学(屈折)パワー(1/焦点距離、に等しい)はゼロであり、すなわち、焦点距離はプラス又はマイナス無限大に近付く。この例のように、センサは、それらがレンズアレイ28を持たない仮定の状況の場合より、レンズ24から2.4mmの距離だけ遠くに設置される。
【0027】
他の実施形態において、レンズレットの第一のセクションは焦点距離f1lensletを有していてよく、それによって像面はセンサに設置される。適当な焦点距離f1は以下のレンズの公式を使って計算されてよい:
【数1】
式中、f1はレンズアレイ28を持たない系の焦点距離を表し、f2はレンズアレイ28の第一のレンズレットの焦点距離を表し、f3はレンズアレイ28を有する系の焦点距離を表す。この例では、f1=8.4mm、f3=6mmである。それゆえ、レンズレットの第一のセクションの焦点距離f1lenslet=f2~21mmである。
【0028】
また別の実施形態において、レンズ24に関するセンサの位置と第一のレンズレットセクションの焦点距離f1lensletの組合せは、像面をセンサに位置付けるように選択されてもよい。位置と焦点距離f1lensletは、レンズの公式にしたがって選択されてよい。
【0029】
特定の実施形態において、第二のセクションは、眼12の網膜及び網膜付近のその他の部分を、波面分析を使って画像化するために使用されてよい。第二のセクションは、レンズレットの真正面に平面波面を生成するように動作する2つの焦点距離を持つ組合せレンズレットを含んでいてよく、すなわち焦点距離fAと焦点距離fL-fAであり、fLはレンズ24の焦点距離を表す。焦点距離fAは何れの適当な値を有していてもよく、例えば、2~4、4~6、6~8、又は8~10mmの範囲の値である。焦点距離fL-fAは、レンズレットのティルト補正に対応し、したがってレンズレットの第二のセクションはティルト成分を有する焦点距離fAを有する。
【0030】
図3A~3Cは、図1のシステム10と使用されてよいレンズアレイ28の例を示す。レンズアレイ28は、何れの適当な形状及び大きさを有していてもよい。特定の実施形態において、レンズアレイ28はセンサアレイ30の形状及び大きさとほぼ同じ形状と大きさを有し、それによってレンズアレイ28をセンサアレイ30の上に配置(例えば、印刷)できる。図の実施形態において、レンズアレイ28は長方形であり、その辺の長さはS1とS2で、これらは相互に等しくてもそうでなくてもよい。
【0031】
レンズアレイ28は、何れの適当な形状及び大きさの、何れの適当な数の第一のサブセクション50a及び第二のサブセクション50bを有していてもよい。第一の50aサブセクションの数は、第二のサブセクション50bの数より多くても、少なくとも、又はそれと等しくてもよい。第一のサブセクション50aは、第二のサブセクション50bの形状及び大きさと同じ形状及び大きさを有していてもよく、又はこれらは異なる形状又は大きさを有していてもよい。1つの第一のサブセクション50aは、他の第一のサブセクション50aのそれと同じ形状及び大きさを有していてもよく、又は異なる形状又は大きさを有していてもよい。同じことが第二のサブセクション50bについても言える。
【0032】
特定の実施形態において、サブセクション50a~bのパターン(サブセクション50a~bの数、形状、及び大きさを含む)は、センサアレイ30の上に設置できるように設計されてよい。例えば、印刷工程の限界によりサブセクション50a~bの最小大きさが制約されるかもしれない。特定の実施形態において、サブセクション50a~bのパターンは、特定の作業を行うように設計されてもよい。例えば、網膜からの波面48を受け取る第二のサブセクション50bはレンズアレイ28の中央領域に設置されてよく、角膜からの光47を受け取る第一のサブセクション50aはレンズアレイ28の外側領域に設置されてよい。
【0033】
図3Aは、レンズアレイ28の例を示しており、第一のサブセクション50a及び第二のサブセクション50bは市松模様のパターンで配置されている。第一のサブセクション50a及び第二のサブセクション50bは、行60及び列62に配置される。各行60の中で、第一のサブセクション50aの各々は第二のサブセクション50bに隣接する。各列の中で、第一の撮像サブセクション50aの各々は第二のサブセクション50bに隣接する。このパターンは、センサアレイ30上への設置を可能にする何れの適当な数の行60(例えば、2~5、5~10、又は10より多い)と列62(例えば、2~5、5~10、又は10より多い)を含んでいてもよい。行60の数は列62の数より多くても、それと等しくても、又はそれより少なくてもよい。
【0034】
図3Bは、レンズアレイ28の例を示しており、第一のサブセクション50a及び第二のサブセクション50bは縞模様のパターンで配置されている。第一のサブセクション50aは第一の長方形64のような形状であり、第二のサブセクション50bは、第一の長方形に隣接する第二の長方形64のような形状である。このパターンは、センサアレイ30上への設置を可能にする何れの適当な数の長方形64(例えば、2~5、5~10、又は10より多い)を含んでいてもよい。長方形64の辺は、センサアレイ30上への設置を可能にする何れの適当な長さ及び長さの比を有していてもよい。長方形64は同じ形状及び大きさを有していてもよく、又は異なる形状又は大きさを有していてもよい。
【0035】
図3Cは、レンズアレイ28の例を示しており、第一のサブセクション50a及び第二のサブセクション50bは同心円状の環状パターンで配置されている。このパターンは、少なくとも2つの環状リング形サブセクションを有する。第一のサブセクション50aは第一の環状リング66のような形状であり、第二のサブセクション50bは、第一の環状リング66と同心円の第二の環状リング66のような形状である。特定の例において、中央のサブセクション66は円であってよい。このパターンは、センサアレイ30上への設置を可能にする何れの適当な数の環状リング66(例えば、2~5、5~10、又は10より多い)を含んでいてもよい。環状リング66は、センサアレイ30上への設置を可能にする何れの適当な半径方向の幅68を有していてもよい。
【0036】
図4は、図1のシステム10と共に使用されてよいレンズ・センサアレイ26の製造方法の例を示す。方法はステップ100から始まり、ここで第一のセクション50a及び第二のセクション50bを有するレンズアレイ28が設計される。例えば、設計は、図2Dに関して説明したものであってよい。
【0037】
ステップ102で、この設計のレンズ層が特定される。レンズ層は、付加製造工程中に、層の堆積の結果としてその設計とマッチするレンズアレイが得られるように印刷される層である。図2Dの例では、レンズ層の1つ又は複数は、第一のセクション50a及び第二のセクション50bを構成する部分を含む。これらの層のz方向に測定される厚さは概して同じであってよい。第一の層は、センサアレイ30の上に直接印刷される層であってよい。次の層は、第一の層の上に印刷される層である。後続の層がz方向へと同様に印刷される。
【0038】
ステップ104で、付加製造工程のための基板としての役割を果たすセンサアレイ30が提供される。ステップ106で、レンズ層がセンサアレイ30の上に印刷される。ステップ108で印刷すべき次の層がある場合、方法はステップ106に戻り、層を印刷する。なければ、方法は終わる。
【0039】
本明細書で開示されるシステム及び装置の構成要素(例えば、コンピュータ)は、インタフェース、ロジック、及び/又はメモリを含んでいてよく、その何れもハードウェア及び/又はソフトウェアを含んでいてよい。インタフェースは、構成要素への入力を受信し、構成要素からの出力を提供し、及び/又は入力及び/又は出力を処理することができる。ロジックは、構成要素の動作を実行でき、例えば、入力から出力を生成する命令を実行する。ロジックは、コンピュータ、マイクロプロセッサ、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等のプロセッサであってよい。ロジックは、コンピュータにより実行可能な、メモリ内の符号化されたコンピュータ実行可能命令、例えばコンピュータプログラム又はソフトウェアであってよい。メモリは情報を記憶でき、1つ又は複数の有形、非一時的、コンピュータ可読、コンピュータ実行可能記憶媒体を含んでいてよい。メモリの例には、コンピュータメモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)又はリードオンリメモリ(ROM))、マスストレージ媒体(例えば、ハードディスク)、リムーバブルストレージ媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)又はデジタルビデオディスク(DVD))、及びネットワークストレージ(例えば、サーバ又はデータベース)が含まれる。
【0040】
本開示を特定の実施形態の点で説明したが、実施形態の変更(例えば、置換、追加、変更、又は省略)は当業者にとって明らかであろう。したがって、本発明の範囲から逸脱せずに、実施形態に対して変更が行われてもよい。例えば、変更は本明細書で開示されたシステム及び装置に対して行われてよい。システム及び装置の構成要素は統合されても分離されてもよく、システム及び装置の動作はより多くの、より少ない、又は他の構成要素により実行されてもよい。他の例として、変更は本明細書で開示される方法に対して行われてもよい。方法はより多くの、より少ない、又は他のステップを含んでいてもよく、ステップは何れの適当な順序で行われてもよい。
図1
図2A-2C】
図2D
図3A-3C】
図4