(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】油圧式のロール調整装置を備えた傾斜圧延機
(51)【国際特許分類】
B21B 19/04 20060101AFI20230112BHJP
B21B 19/06 20060101ALI20230112BHJP
B21B 38/10 20060101ALI20230112BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B21B19/04
B21B19/06 B
B21B38/10 Z
B21C51/00 M
B21C51/00 N
(21)【出願番号】P 2020560134
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2019060458
(87)【国際公開番号】W WO2019206958
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】102018003434.9
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ドーヌ・フランク
(72)【発明者】
【氏名】ザウアーラント・マルティン
(72)【発明者】
【氏名】クラーン・マティアス
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-177221(JP,A)
【文献】特開平05-185117(JP,A)
【文献】特表2014-526976(JP,A)
【文献】特開昭53-149857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 19/04
B21B 19/06
B21B 38/10
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークロール(1,2)を有し、これらワークロールが、それぞれ、実質的に半径方向に整向された圧延荷重をビレット(3)に加え、ワークロール(1,2)が、ロールスタンド内に支持され、ワークロール(1,2)の間のロールギャップ(10)又はビレット(3)に対する少なくとも1つのワークロール(1,2)のロール軸(1a,2a)の3次元的な位置調整が変更可能である、マンドレル(5)を介してビレット(3)を中空ビレットに圧延するための傾斜圧延機(11)において、
圧延操作中に、測定されたロールスタンド膨張を補償するために、ビレット(3)に対する少なくとも1つのワークロール(1,2)のロール軸(1a,2a)の3次元的な位置調整の変更を行なうための、油圧式の調整要素(8,9)が設けられていること、
及び、3次元的な位置調整が、圧延方向に対して横で水平なx方向と、圧延方向に対して垂直なy方向と、出側に向かう圧延方向のz方向の位置調整であること、を特徴とする傾斜圧延機(11)。
【請求項2】
ワークロール(1,2)に対して付加的に、ロールギャップ(10)を横から制限するディスク、いわゆるディシャーディスク及び/又はガイドシューが設けられており、これらディスク又はガイドシューは、同様に油圧式の調整要素と接続されていること、を特徴とする請求項1
に記載の傾斜圧延機(11)。
【請求項3】
付加的に、圧延操作中のロールギャップジオメトリ及び/又はロールギャップ変位の変化及び/又は空間内のワークロール(1,2)の姿勢並びにその変化を決定可能な測定手段が設けられていること、を特徴とする請求項1
又は2に記載の傾斜圧延機(11)。
【請求項4】
測定手段が、外乱値を算定するために適した評価ユニットと接続されていること、を特徴とする請求項
3に記載の傾斜圧延機(11)。
【請求項5】
予め算定された、圧延操作中のロールギャップジオメトリ及び/又はロールギャップ変位の変化及び/又は空間内のワークロール(1,2)の姿勢並びにその変化が
、ビレット(3)に対する少なくとも1つのワークロール(1,2)のロール軸(1a,2a)の3次元的な位置調整の変更により、対処され得るように、油圧式の調整要素(8,9)と接続された制御調整ユニット(HGC)が設けられていること、を特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の傾斜圧延機(11)。
【請求項6】
制御調整ユニット(HGC)が、請求項
4に記載の評価ユニットと接続されていること、を特徴とする請求項
5に記載の傾斜圧延機(11)。
【請求項7】
測定手段が、光学的な画像検出ユニットを有すること、を特徴とする請求項
3~
6のいずれか1項に記載の傾斜圧延機(11)。
【請求項8】
測定手段が、ロールスタンドと接続された1つの画像要素(MM1,MM2)又はワークロール(1,2)用の調整要素(8,9)と接続された1つ又は複数の画像要素(MM1,MM2)を検出し、画像要素の姿勢変化及び/又は形状変化を算定し得ること、を特徴とする請求項
3~
7のいずれか1項に記載の傾斜圧延機(11)。
【請求項9】
少なくとも1つの画像要素(MM1,MM2)が、アクティブな発光体であること、を特徴とする請求項
8に記載の傾斜圧延機(11)。
【請求項10】
画像要素(MM1,MM2)が、所定の直径を備えた円形、既知の対角寸法を備えた正方形又は長方形又は所定の形状を備えた楕円形であること、を特徴とする請求項
7又は
8に記載の傾斜圧延機(11)。
【請求項11】
ロールギャップ(10)内のマンドレル(5)の位置が変更可能であること、を特徴とする請求項1~
10に記載の傾斜圧延機(11)。
【請求項12】
傾斜圧延機(11)が、複数のワークロール(1,2)を有し、これらワークロールが、それぞれ、実質的に半径方向に整向された圧延荷重をビレット(3)に加え、ワークロール(1,2)が、ロールスタンド内に支持され、ワークロール(1,2)の間のロールギャップ(10)又はビレット(3)に対する少なくとも1つのワークロール(1,2)のロール軸(1a,2a)の3次元的な位置調整が変更可能である、マンドレル(5)を介してビレット(3)を圧延するための傾斜圧延機(11)によってビレット(3)から中空ビレットを製造するための方法において、
圧延操作中に、測定されたロールスタンド膨張を補償するために、油圧式の調整要素(8,9)が
、ビレットに対する少なくとも1つのワークロールのロール軸の3次元的な位置調整を変更すること、
及び、3次元的な位置調整が、圧延方向に対して横で水平なx方向と、圧延方向に対して垂直なy方向と、出側に向かう圧延方向のz方向の位置調整であること、を特徴とする方法。
【請求項13】
測定手段によって予め測定された、圧延操作中のローギャップルジオメトリ及び/又はロールギャップ変位の変化及び/又は空間内のワークロール(1,2)の姿勢並びにその変化が、評価ユニットによって算定され、外乱値として分類された場合
、ビレット(3)に対する少なくとも1つのワークロール(1,2)のロール軸(1a,2a)の3次元的な位置調整の変更が行なわれること、を特徴とする請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
制御調整ユニット(HGC)が、評価ユニットと接続され、外乱値を補償するための信号を油圧式の調整要素(8,9)に出力すること、を特徴とする請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
評価ユニットが、光学式の画像検出ユニットを備えた測定手段と接続されていること、を特徴とする請求項
13又は
14に記載の方法。
【請求項16】
測定手段が、ロールスタンドと接続された1つの画像要素又はワークロール(1,2)用の調整要素(8,9)と接続された1つ又は複数の画像要素(MM1,MM2)を検出し、圧延過程中の画像要素の姿勢変化及び/又は形状変化を算定すること、を特徴とする請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
圧延過程中のロールギャップ(10)内のマンドレル(5)の姿勢及び/又は位置調整が、予め算定された外乱値を補償するために変更されること、を特徴とする請求項
13~
16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の傾斜圧延機(11)によって実施されること、を特徴とする請求項
12~
17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のワークロールを有し、これらワークロールが、それぞれ、実質的に半径方向に整向された圧延荷重をビレットに加え、ワークロールが、ロールスタンド内に支持され、ワークロールの間のギャップが変更可能であり、好ましくはまたビレットに対する少なくとも1つのワークロールのロール軸の位置調整が変更可能である、マンドレルを介してビレットを中空ビレットに圧延するための傾斜圧延機に関する。更に、本発明は、このような傾斜圧延機によってビレットから中空ビレットを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるマンネスマン法によりマンドレルを介して金属の中空ビレットを圧延する際、予熱されたビレットは、鋼の場合には約1250℃に予熱されたビレットが2つ以上のメインワークロールによってロールの間に存在するマンドレルを介して中空ビレットに圧延される。ワークロールは、圧延過程中にビレットに、実質的に半径方向に整向された圧延荷重を加え、ロールスタンド、いわゆるロールハウジング内に支持するために、少なくともワークロールの間のロールギャップが生成すべき中空ビレットのそれぞれ所望の肉厚に設定され得るように、支承及び支持される。このため、何十年もの間、少なくとも圧延過程の前後のロールギャップ調整を可能にする機械式のスピンドル駆動装置が使用されてきた。これにより、圧延過程中のロールギャップ調整、特に圧延過程自体の間の自動的なロールギャップ調整は、それにもかかわらず可能でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の課題は、従来技術から知られた問題を解決し、算定された外乱値の好ましくは圧延過程中に自動化された補償を可能にする、マンドレルを介してビレットを中空ビレットに圧延するための傾斜圧延機並びに方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明の意味で、請求項1の特徴を有する傾斜圧延機並びに請求項13の特徴を有する方法によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項並びに以下の説明で詳述されている。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、例えばスピンドル駆動装置のようなこれまで使用されていた機械式の調整要素の代わりに、ロールギャップの変更を行なうための、好ましくはまたビレットに対する少なくとも1つのワークロールのロール軸の位置調整を行なうための、油圧式の調整要素、好ましくは油圧式のカプセルが設けられている、マンドレルを介してビレットを中空ビレットに圧延するための傾斜圧延機が提供される。ワークピースとしてのビレットに対する油圧式の調整要素によるロールギャップの変更は、ワークロールが、必要に応じて互いに新たに位置調整され、これにより、ロールギャップ寸法及びロールギャップジオメトリが、圧延過程中でも変更可能に保たれると理解する。従って、圧延過程中に、中空ビレットに成形すべきビレットに対する位置調整が行なわれ、従ってまた又は選択的に、それぞれの圧延プロセスの間及び圧延プロセス中に、少なくとも1つのロール軸の位置調整が、1つのワークロール又は他の複数のワークロールに対して行なわれる。この場合、油圧式の調整要素は、好ましくは慣行的にチョックと結合されており、これらチョックを介して、ワークロールは、それぞれのロールスタンド内に調整可能に支承されている。
【0006】
これにより、初めて、油圧式の調整要素に基づいてロールギャップジオメトリ又は他のそれぞれの形式の外乱値補償の変更を圧延過程中でも可能にする傾斜圧延機が提供される。
【0007】
ワークロールは、油圧式の調整要素を介して、本発明によれば互いに所定の間隔、いわゆるロールギャップに予調整される。ワークロールの間で対称に、本発明による傾斜圧延機内に、マンドレルロッドによって保持されたマンドレルバーが存在し、そしてこのマンドレルを介して、ビレットは、中空ビレットに圧延される。ワークロールの傾斜調整に基づいて、ロールギャップ内に不動に配置されたマンドレルを介する中空ビレットへのビレットの成形が行なわれ、これは、ワークロールの傾斜調整によってビレットに加えられる推力に基づいて行なわれる。
【0008】
しかしながら、圧延中は、特にワークロールを押して離間させる膨大な力が生じる。ロールハウジング全体は、ワークロールに作用する力によってその形状を伸ばされ、さもなければ歪められ、これが、最終的には、予め設定されたロールギャップ及びそのジオメトリの変化を生じさせる。
【0009】
通常、ワークロール、例えば上下のワークロールは、異なる空間方向に異なる強さで移動する。これは、1つ又は複数のワークロールが、ロールスタンド及び/又は基礎と不動に結合され、従って負荷下でも最低限の移動しか受けない場合に、ますます当て嵌まる。この場合、ワークロールと場合によってはマンドレルの両方の予め設定された配置が失われる。その結果、ロールギャップが拡大し、ワークロールと場合によってはマンドレルの配置の互いの対象性が狂うが、特にそれは、例えば上下のワークロールが構成に起因して異なる強さで例えば上方又は下方へ変位させられるからである。最終的に、ワークロールの中心は、互いに及びマンドレルに対して、従って傾斜圧延機の出側に対して変位し、これが、生成された中空ビレットの品質に対する不所望の作用を生じさせる。中空ビレットの肉厚分布内で、ワークロール中心の互いの変位によって増幅されて、最終的に仕上げ圧延されたパイプでも未だに見ることができる偏心が生じる。
【0010】
これまで、このような外乱値は、圧延過程の終了後に初めて算定し、次の圧延過程前のワークロールの互いの再調整によって補償することができた。動的な外乱値補償、特に圧延過程中にオンラインで算定された測定データに基づいて行なわれる調整値補償は、これまでは可能でなかった。油圧式の調整要素の本発明による使用は、これまでに存在していた傾斜圧延機のこの欠点を克服する。
【0011】
本発明によれば、油圧式の調整要素、好ましくは油圧式のカプセルの使用によって、ハウジング膨張及びこれに関連する圧延位置の互いの変位の動的な最小化又は完全な補償が可能にされる。特に、負荷状況が変化する場合、例えば圧延時でも、好ましくはリアルタイムでロールギャップ変化及びロールギャップ変位の外乱値をロールギャップの適切な変更により、好ましくはまたビレット又は他のそれぞれのワークロールに対する少なくとも1つのワークロールのロール軸の位置調整により、好ましくは十分に補償することが、初めて可能にされる。
【0012】
調整値として、好ましくは、ワークロールの油圧式の調整要素のために、圧延方向に対して横で水平なx方向と、圧延方向に対して垂直なy方向と、出側に向かう圧延方向のz方向に作用する外乱値制御量が使用される。
【0013】
好ましくは、本発明による傾斜圧延機は、本発明の第1の態様によれば、ワークロール、好ましくは上下のワークロールに対して付加的に、ロールギャップを横から制限するディスク又はガイドシューを備え、これらディスク又はガイドシューを介して、ロールギャップ内でのビレット及び退出する中空ビレットの中心への位置決めに影響を与えることができる。いわゆるこれらディシャーディスクは、通常は、圧延すべき中空ビレットの形態の環状のプロファイルを備え、中空ビレットに対して調整可能に傾斜圧延機内に配置されている。これに関連して、ディシャーディスク又はガイドシューが、好ましくは動的なオンラインで作用する外乱値補償を支援又は実行することができる油圧式の調整要素を備える場合が、好ましい。
【0014】
本発明による傾斜圧延機の別の好ましい実施形態では、圧延操作中のロールギャップジオメトリ及び/又はロールギャップ変位の変化及び/又は空間内のワークロールの姿勢並びにその変化を決定可能な測定手段が設けられている。これに関連して、この測定手段が、補償すべき外乱値を算定するために適した評価ユニットと接続されている場合が、特に好ましい。これにより、好ましくは、例えば測定すべきハウジング膨張及びこれに関係したワークロールと場合によってはマンドレルの配置の互いの変化による圧延過程のあらゆる変化を、動的かつ永久的に算定し得る傾斜圧延機が提供される。測定手段は、原理的にロールスタンド又はその内蔵要素のすべての箇所に配置することができ、ワークロールでの実質的に直接的な測定が好ましいが、それにもかかわらず、例えばディシャーディスク又はガイドシューのようなガイド要素での間接的な測定も、相応の相関を考慮して、負荷下にあるロールスタンド内のワークロールもしくは個々のガイド要素の位置の逆推定を可能にする。
【0015】
この場合、測定手段が、光学的な画像検出ユニットを有する場合が、特に好ましく、これにより、測定ユニットを、ロールスタンドから離間して、さもなければそこで測定ユニットに作用しかつ測定結果を乱すように影響を与える状況から切り離すことが可能になる。測定手段が、カメラ、好ましくはCCDカメラを有する場合が、特に好ましい。このようなカメラにより、圧延機内の測定ユニットは、ロールスタンドに対してほぼ任意に位置決めすること、及び、同時に、場合によっては相応の較正後に、所望の全ての測定結果を提供すること、ができる。
【0016】
これに関連して、測定手段が、ロールスタンドと接続された1つの画像要素、好ましくはワークロール用の調整要素と接続された1つ又は複数の画像要素を検出し得、そして、圧延過程中の画像要素の姿勢変化及び/又は形状変化を算定し得る場合が、特に好ましい。これに関連して、少なくとも1つの画像要素が、アクティブな発光体であり、この発光体が、本発明の非常に好ましい実施形態で、所定の直径を備えた円形又は所定の形状を備えた楕円形に形成されている場合が、特に好ましい。画像要素が、正方形又は長方形に形成されている場合も好ましく、その場合、例えば負荷下の1つ又は複数の画像要素対角線の変化の評価は、ロールスタンド膨張又はロールスタンド歪の指摘を可能にする。
【0017】
これにより、一方で、各ロールスタンド膨張及び/又はロールスタンド歪を直接かつ即座に測定する可能性が提供され、他方で、アクティブな発光体として画像要素を形成することにより、画像検出が、特に簡単な手段によって有利に支援される。最後に、所定の直径を備えた円形又は予め確定された形状を備えた楕円形又は既知の体格寸法を備えた正方形又は長方形の形状を備えた画像要素の好ましい形成により、一方では、測定の較正が特に簡単な手段によって支援され、他方では、ロールスタンド膨張中の画像要素の姿勢変化を検出するだけでなく、ロールスタンドの他の形式の歪に基づく画像要素のそれぞれの形状変化も検出する可能性も提供される。これは、光学的な画像検出が、画像要素の中心点(円形の形状の場合)又は主軸の交点(楕円形の形状の場合)面対角線の交点(正方形又は長方形の形状の場合)だけでなく、その面全体、少なくとも画像要素の端部及びその中心点を検出し得る場合、特に有利に利用可能である。この測定方法の利点は、1つの点を決定するために、面状の画像要素の多くの点を評価し得る可能性が提供されることである。これは、1つの点の考察しか可能にしない通常のレーザ測定に対して故障のし易さを低減する。加えて、面の考察は、測定機器のその場所に依存しない較正を可能にし、従って、測定機器の位置は、自由に選択し、測定から次の測定へ必要に応じて変更することができる。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、マンドレルを介してビレットを圧延するための傾斜圧延機、特に好ましくは本発明の第1の態様による傾斜圧延機によってビレットから中空ビレットを製造するための方法が提供される。本発明によれば、ワークロールと直接的又は間接的に、例えばロールチョックを介して結合された油圧式の調整要素、好ましくは油圧式のカプセルが、圧延過程中に、ロールギャップを変更し、好ましくはまたビレットに対する少なくとも1つのワークロールのロール軸の位置調整を変更する。これにより、圧延過程中にロールギャップジオメトリの変更を行ない、これにより、圧延過程の品質保証又は品質最適化のために、算定された外乱値に対処することを、初めて可能にする方法が提供される。
【0019】
測定された、圧延操作中のロールギャップジオメトリ及び/又はロールギャップ変位の変化及び/又は空間内のワークロールの姿勢並びにその変化により予め、評価ユニットによって外乱値が決定された場合、前記のようにロールギャップの変更が行なわれ場合が、特に好ましい。その場合、特に有利には、評価ユニットと適当な制御調整ユニットの協働により、調整値を補償するための信号が、油圧式の調整要素に出力される。
【0020】
これに関連して、評価ユニットが、測定手段、好ましくはロールスタンドから離間して配置された光学式の測定手段、特に光学式の画像検出ユニットを備えた測定手段と接続されている場合が、特に好ましい。この測定手段は、本発明の好ましい実施形態では、ロールスタンドと接続された1つの画像要素、好ましくはワークロール用の調整要素と接続された1つ又は複数の画像要素を検出し、圧延過程中の画像要素の姿勢変化及び/又は形状変化を算定することができる。画像要素の移動は、光学的な測定手段によって好ましくは高精度で動的に検出され、上のワークロールの変化Δx1(t)及びΔy1(t)もしくは下のワークロールの変化Δx2(t)及びΔy2(t)は、好ましくはオンラインで算定され、調整値の最小化又は補償をするために評価ユニットによって制御調整ユニットに伝達される。好ましくは、次に、上のワークロール及び/又は下のワークロールの油圧式の調整要素用の新しい調整値がオンラインで適当なアルゴリズムを介して計算され、それぞれのロール位置が、絶対的なロールギャップ誤差を最小化し、当初の中心に対する対称性を回復させ得るように適合される。
【0021】
これにより、簡単で故障のしにくい並びに正確でオンラインで使用可能な手段によって、非常に正確で高動的な外乱値補償を可能にする方法が提供され、これにより初めて、傾斜圧延機内での圧延プロセス中に、現在進行中の圧延操作に影響を与えることができる。
【0022】
このため、ワークロール、好ましくは上及び/又は下のワークロールの位置に対して付加的に、マンドレルの位置及び/又は姿勢も、又は、マンドレルの位置及び/又は姿勢だけ、並びに、これに対して付加的に又は他の変化に依存せずに、ビレット又は中空ビレットに対するディシャーディスクの位置及び/又は姿勢が、予め算定された外乱値の補償を実行する又は少なくとも支援するために、動的に変更される場合も、有利である。
【0023】
全体として、本発明は、前で詳細に説明した両態様により、圧延時の圧延機の膨張の動的な補償と、傾斜圧延機によって生産すべきパイプ内の瑕疵の低減又は除去を可能にする。測定値検出は、好ましくは非接触でロールスタンドから離間して、従って測定結果を乱す、ロールギャップ近傍の影響がないように行なわれ、局所的な条件に応じたロールスタンドに対する測定手段の配置の最大限の柔軟性を可能にする。圧延プロセス中、ロールスタンドの運動を検出し、次の圧延時に、場合によっては進行する圧延プロセス中でも、補償することができる。補償に必要なデータを検出するために、複数の点で同時に測定が行なわれ、また、測定手段は、不動に取り付けることも、可動に形成することもできる。
【0024】
測定のため、非常に好ましい方法では、測定機器CaliView(登録商標)を使用する光学式の画像検出装置を使用することができる。この測定機器は、8m~40mの間隔から0.1mmの精度での輪郭を測定することができ、CaliView(登録商標)は、更に、測定をチェックするためのシリーズ画像機能を有する。
【0025】
従って、測定は、圧延過程中に算定されたロールスタンドの運動並びにそれから生じるロールギャップ及びロールギャップジオメトリの変化を採取し、操作中にワークロール又は他の調整値を再調整するために使用することができる。加えて、ロールスタンド上の画像要素の好ましくは既知の形状及び寸法により、ロールスタンドに対して測定手段を配置する際に、オフセット角を設けることができ、その場合、このオフセット角は、測定機器の較正時に考慮されるべきである。これにより、傾斜圧延プロセス時に生じる上記の影響及び測定結果を乱すそれ以外の影響を回避不能な最小値に限定することができる。
【0026】
本発明を、以下で一連の図面を参照して詳細に説明するが、これらの図では、本発明の例示的及び概略的な表現だけが提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態による傾斜圧延機の一部の概略図
【
図2】本発明の第2の実施形態による傾斜圧延機の一部の概略図
【
図3】本発明による方法を適用するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、第1の実施形態で、上のワークロール1並びに下のワークロール2を有する傾斜圧延機の作用方式を示す。上下のワークロール1,2は、その大きい端面で互いに結合された2つ円錐台の形態で形成され、ビレット3の成形時に
図1の左から右の方向(z方向)に、マンドレルバー4上に配置されたマンドレル5と協働する。ビレット3は、ビレット3に対して相対的に上下のワークロール1,2を適当に調整する際に、上下のワークロール1,2のその縦軸1aもしくは2aを中心とする回転により上下のワークロール1,2の間のロールギャップを経てマンドレル5の上を入側6から出側7へ移送される。上もしくは下のワークロール1,2のそれぞれの端部に、油圧式の調整要素8a,8b並びに9a,9bが配置され、これら調整要素を介して、ワークロール1,2の姿勢が、互いにかつビレット3に対してほぼ任意に、特に図示したように圧延方向に対して垂直なy方向に変更可能である。油圧式の調整要素8a,8b,9a,9bの垂直方向の調整により、上下のワークロール1,2の間のロールギャップも少なくともy方向とz方向の両方に変更することができる。
【0029】
図2は、不定のプロファイルを備えたそれぞれ1つの円錐台形状を示す上のワークロール1並びに下のワークロール2を有する本発明による圧延機の重要な部分の別の実施形態を示す。上と下のワークロール1,2の間に、更にまたロールギャップ10が形成され、このロールギャップ内に、ビレット3が、マンドレル5に向かうz方向の移動により進入し、そこで局所的に固定されたピアシングマンドレル5と上下のワークロール1,2の協働により(図示してない)中空ビレットに成形される。上下のワークロール1,2の両端に、油圧式の調整要素8a,8b、もしくは9a,9bが配置され、これら調整要素により、ロールギャップ10並びにロール軸1a,1bの局所的な姿勢の変更を行なうことができる。
【0030】
図3は、上のワークロール1並びに下のワークロール2を支持する本発明による傾斜圧延機11による本発明による方法の概略的なフローチャートを示す。画像要素MM1及びMM2は、ロールスタンド11のロールハウジング内に配置され、圧延操作中に永久的に高精度かつ動的にその姿勢とその形状の両方に関して離間して配置された図示してないカメラによって監視される。上のワークロール1に関するx方向とy方向の各位置変化Dx1(t),Δy1(t)並びに下のワークロール2に関するx方向とy方向の各位置変化Dx2(t),Δy2(t)は、(図示してない)測定ユニットによって検出され、(同様に図示してない)評価ユニットに伝達される。この評価ユニット内で更にまた、(図示してない)画像ユニットによって検出された画像要素MM1,MM2の姿勢変化が、補償すべき調整値とみなすべきかが判定される。そうであれば、評価ユニットによって決定された外乱値が制御調整ユニットとしてのHGC-コントローラ(Hydraulic Gap Control-コントローラ)に転送される。制御調整ユニット(HGC)には、別のプロセスパラメータが含まれているので、予め確定されたアルゴリズムに基づいて、制御コマンドY1,Y2が、油圧式の調整要素8,9に出力される。これら油圧式の調整要素8,9は、(図示してない)マンドレルに対する上のワークロール1及び/又は下のワークロール2の調整により、ロールギャップジオメトリ並びに場合によっては(図示してない)ロール軸の互いの位置調整を変更する。これにより、圧延過程中に高動的に測定データの恒常的な検出及び評価をしつつオンラインで、圧延結果及び傾斜圧延プロセスの経過に積極的に影響を与え得る制御調整コマンドを出力することが可能になる。
【符号の説明】
【0031】
1 ワークロール
1a,b ロール軸
2 ワークロール
2a,b ロール軸
3 ビレット
5 マンドレル
8 調整要素
8a,8b 調整要素
9 調整要素
9a,9b 調整要素
10 ロールギャップ
11 傾斜圧延機
HGC 油圧ギャップコントロール
MM1 画像要素
MM2 画像要素