(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】オゾン発生器
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20230112BHJP
C01B 13/11 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
G01N27/416 311L
C01B13/11 K
(21)【出願番号】P 2021145229
(22)【出願日】2021-09-07
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅泰
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 美子
(72)【発明者】
【氏名】水溪 由希
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-99398(JP,A)
【文献】特開2020-16593(JP,A)
【文献】特開2015-117156(JP,A)
【文献】特開2010-159178(JP,A)
【文献】特開2001-328802(JP,A)
【文献】特開平10-101306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/49
C01B 13/10-13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空間へオゾンを供給するオゾン供給部と、
電気化学方式によってオゾン濃度を検知する検知部と、
前記検知部によって検知されるオゾン濃度が目標濃度に近づくように前記オゾン供給部をフィードバック制御する第1制御と、前記第1制御の実行中に判定条件が成立した場合に前記第1制御を停止させる第2制御と、を実行する制御部と、
前記検知部によって検知されるオゾン濃度の前記判定条件が成立してから所定期間が経過するまでの変化度合いに基づいて異常を判定する異常判定部と、
を備えるオゾン発生器。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2制御において、低濃度のオゾンを供給させるように前記オゾン供給部を制御するか又は前記オゾン供給部を停止させ、
前記異常判定部は、前記検知部によって検知されるオゾン濃度の前記判定条件が成立してから前記所定期間が経過するまでの低下度合いに基づいて異常を判定する
請求項1に記載のオゾン発生器。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記低下度合いが閾値を超えていると判定した場合に異常と判定する
請求項2に記載のオゾン発生器。
【請求項4】
前記制御部は、前記低下度合いが前記閾値を超えていないと判定した場合に前記第1制御を実行し、前記低下度合いが前記閾値を超えていると判定した場合に前記検知部によって検知される濃度が前記目標濃度よりも低い第2目標濃度に近づくように前記オゾン供給部をフィードバック制御するか、前記オゾン供給部を低濃度のオゾンを供給させる状態にするか、又は前記オゾン供給部を停止した状態にする第3制御を実行する
請求項3に記載のオゾン発生器。
【請求項5】
前記制御部は、前記第3制御において前記オゾン供給部を低濃度のオゾンを供給させる状態にする場合、前記低下度合いが大きいほどオゾン供給量が小さくなるように前記オゾン供給部を制御する
請求項4に記載のオゾン発生器。
【請求項6】
前記外部空間を加湿する加湿部を備える
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のオゾン発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オゾン発生装置の一例が開示されている。このオゾン発生装置は、外部オゾンセンサからの信号に基づいて、オゾン発生装置の外部空間の外部オゾン濃度が目標外部オゾン濃度となるようにフィードバック制御を行う。
また、特許文献2には、オゾンセンサの一例が開示されている。このオゾンセンサは、隔膜ポーラログラフ法を利用した電気化学式センサであり、作用極および対極の両極間に流れる電流の大きさからオゾンガスの定量を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-099398号公報
【文献】特開2020-16593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に例示される電気化学式ガスセンサでは、オゾンガスだけでなく、オゾンガス以外のガスも、作用極および対極の両極間に流れる電流の大きさに影響を与えるおそれがある。その結果、センサによって測定されるオゾン濃度が、実際の外部オゾン濃度から乖離するおそれがある。このため、例えば特許文献2に例示される電気化学式ガスセンサを用いて、特許文献1に例示されるようにフィードバック制御を行う場合、実際の外部オゾン濃度が目標外部オゾン濃度から乖離するおそれがある。
【0005】
本発明は、フィードバック制御しているときの実際のオゾン濃度が目標濃度から乖離する異常を判定しうる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明のオゾン発生器は、オゾン供給部と、検知部と、制御部と、異常判定部とを備える。オゾン供給部は、外部空間へオゾンを供給する。検知部は、電気化学方式によってオゾン濃度を検知する。制御部は、検知部によって検知されるオゾン濃度が目標濃度に近づくようにオゾン供給部をフィードバック制御する第1制御と、第1制御の実行中に判定条件が成立した場合に第1制御を停止させる第2制御と、を実行する。異常判定部は、検知部によって検知されるオゾン濃度の判定条件が成立してから所定期間が経過するまでの変化度合いに基づいて異常を判定する。
【0007】
このオゾン発生器は、第1制御を停止させると、実際のオゾン濃度に応じて検知部によって検知されるオゾン濃度(検知濃度)の変化度合いに差が生じる。このため、このオゾン発生器は、この変化度合いに基づいて、フィードバック制御しているときの実際のオゾン濃度が目標濃度から乖離する異常を判定しうる。
【0008】
[2]上記制御部は、上記第2制御において、低濃度のオゾンを供給させるように上記オゾン供給部を制御するか又は上記オゾン供給部を停止させるようにしてもよい。上記異常判定部は、上記検知部によって検知されるオゾン濃度の上記判定条件が成立してから上記所定期間が経過するまでの低下度合いに基づいて異常を判定するようにしてもよい。
【0009】
この構成によれば、外部空間におけるオゾン濃度の上昇を抑えつつ異常を判定しうる。
【0010】
[3][2]のオゾン発生器において、上記異常判定部は、上記低下度合いが閾値を超えていると判定した場合に異常と判定してもよい。
【0011】
この構成によれば、フィードバック制御しているときの実際のオゾン濃度が目標濃度よりも大きくなる異常を判定しうる。
【0012】
[4][3]のオゾン発生器において、上記制御部は、上記低下度合いが上記閾値を超えていないと判定した場合に上記第1制御を実行し、上記低下度合いが上記閾値を超えていると判定した場合に上記検知部によって検知される濃度が上記目標濃度よりも低い第2目標濃度に近づくように上記オゾン供給部をフィードバック制御するか、上記オゾン供給部を低濃度のオゾンを供給させる状態にするか、又は上記オゾン供給部を停止した状態にする第3制御を実行してもよい。
【0013】
この構成によれば、低下度合いが閾値を超えていないと判定した場合には第1制御を再開させ、低下度合いが閾値を超えていると判定した場合にはオゾンの供給を低減させるか又は停止させることができる。
【0014】
[5][4]のオゾン発生器において、上記制御部は、上記第3制御において上記オゾン供給部を低濃度のオゾンを供給させる状態にする場合、上記低下度合いが大きいほどオゾン供給量が小さくなるように上記オゾン供給部を制御してもよい。
【0015】
この構成によれば、実際のオゾン濃度が高いと推測される場合ほどオゾン供給量を小さくすることができる。
【0016】
[6]上記オゾン発生器は、上記外部空間を加湿する加湿部を備えていてもよい。
【0017】
この構成によれば、オゾン発生器が加湿器としても機能しうる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フィードバック制御しているときの実際のオゾン濃度が目標濃度から乖離する異常を判定しうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、第1実施形態のオゾン発生器を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1制御を停止させてからのオゾン濃度の経時変化を示すグラフである。
【
図3】
図3は、オゾン発生器によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.第1実施形態
1-1.オゾン発生器の構成
図1に示すオゾン発生器1は、オゾンを発生させ、自身の外側の外部空間90へオゾンを供給する装置である。オゾン発生器1は、ケース3と、オゾン供給部5と、加湿部7と、検知部10と、制御部12と、異常判定部14と、操作部16と、表示部18と、を備えている。
【0021】
ケース3内には、オゾン供給部5と、加湿部7と、検知部10と、制御部12と、異常判定部14と、操作部16と、表示部18と、が収容されている。ケース3の外側の空間は、オゾン発生器1の外側の空間であり、外部空間90である。ケース3は、開口部3Aを有する。外部空間90に存在する気体は、開口部3Aを介して検知部10内に導入されうる構成となっている。
【0022】
オゾン供給部5は、オゾンを発生させ、発生させたオゾンを外部空間90へオゾンを供給する。オゾン供給部5は、オゾン発生装置5Aと、ファン5Bと、供給管5Cとを有している。オゾン発生装置5Aは、オゾンを発生させる装置である。オゾン発生装置5Aによるオゾンを発生させる方法は限定されない。本実施形態では、オゾン発生装置5Aは、トランスなどの交流電源(図示省略)と、オゾン発生体(図示省略)と、を有している。交流電源は、直流電圧を交流電圧に変換する。オゾン発生体は、交流電源によって変換された交流電圧が印加されることで放電(例えば誘電体バリア放電)し、外部空間90から導入された対象気体(例えば空気)中の酸素を原料としてオゾンを発生させる。オゾン発生装置5Aによるオゾン発生量は、オゾン発生装置5Aに印加される電圧(より具体的には、オゾン発生体に印加される交流電圧の実効値)を調整することによって調整される。オゾン発生量は、オゾン発生体に印加される電圧(より具体的には、オゾン発生体に印加される交流電圧の実効値)が大きくなるほど大きくなる。オゾン発生装置5Aは、自身が発生させたオゾンを供給管5Cに送り込む。
【0023】
供給管5Cは、オゾン発生装置5Aにて発生したオゾンを外部空間90へ誘導する管である。供給管5Cを流れる気体の流量及び流速は、ファン5Bによって調整される。
【0024】
ファン5Bは、ブロワー(送風機)として構成される。ファン5Bは、例えば複数の羽根を有する回転体(図示省略)と、この回転体を回転させる動力部(図示が省略されたモータ等)と、動力部の回転を調整する駆動回路(図示省略)とを有している。駆動回路は、回転体の回転数を制御部12から指示された回転数に制御する。ファン5Bを構成する回転体の回転数が大きくなるほど、供給管5Cを流れる気体の流量及び流速は大きくなる。
【0025】
オゾン供給部5が外部空間90に供給するオゾン供給量は、オゾン発生装置5Aに印加される電圧、及びファン5Bの回転数のうち少なくとも一方を調整することで調整される。
【0026】
加湿部7は、オゾン発生器1の外側の外部空間90へ水蒸気又はミストを供給し、外部空間90を加湿する。加湿部7は、加湿装置7Aと、ファン7Bと、供給管7Cと、を有している。
【0027】
加湿装置7Aは、水蒸気又はミストを発生する装置である。加湿装置7Aが水蒸気又はミストを発生させる方式は、公知の様々な方式を採用することができ、例えば、スチーム式、超音波式、気化式、ハイブリッド式などの公知方式を採用し得る。加湿装置7Aは、自身が発生させた水蒸気又はミストを供給管7Cに送り込む。
【0028】
供給管7Cは、加湿装置7Aにて発生した水蒸気又はミストをオゾン発生器1の外側の外部空間90へ誘導する管である。供給管7Cを流れる気体の流量及び流速は、ファン7Bによって調整される。
【0029】
ファン7Bは、ブロワー(送風機)として構成される。ファン7Bは、例えば複数の羽根を有する回転体(図示省略)と、この回転体を回転する動力部(図示が省略されたモータ等)と、動力部の回転を調整する駆動回路(図示省略)とを有しており、駆動回路は、回転体の回転数を制御部12から指示された回転数に制御する。ファン7Bを構成する回転体の回転数が大きくなるほど、供給管7Cを流れる気体の流量及び流速は大きくなる。
【0030】
加湿装置7Aが一定の発生速度で水蒸気又はミストを発生させる場合、ファン7Bの回転数が大きくなるほど、供給管7Cを介して流れる水蒸気又はミストの流量及び流速は大きくなる。従って、制御部12は、ファン7Bの回転数を調整することで、水蒸気又はミストの供給速度(単位時間当たりに外部空間90に供給される水蒸気又はミストの量)を調整することができる。
【0031】
検知部10は、電気化学方式によってオゾン濃度を検知するオゾンセンサである。「電気化学方式」は、例えば定電位電解方式である。検知部10は、外部空間90から導入された空気のオゾン濃度を検知する。検知部10によって検知されたオゾン濃度(以下、「検知濃度」ともいう)を示す信号は、制御部12及び異常判定部14にそれぞれ入力される。
【0032】
制御部12及び異常判定部14は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成され、CPU,ROM,RAMなどを有する。制御部12は、オゾン供給部5、加湿部7及び表示部18の動作を制御する。操作部16は、例えば押圧式のスイッチである。表示部18は、例えば、LEDランプや、液晶表示器などである。
【0033】
1-2.オゾン発生器の動作
制御部12は、検知部10によって検知されるオゾン濃度が目標濃度に近づくようにオゾン供給部5をフィードバック制御する第1制御を実行する。
【0034】
目標濃度は、予め定められた固定値であってもよいし、操作部16を用いて行われる設定操作によって設定される値であってもよい。目標濃度は、外部空間90に浮遊するウイルスを不活化させる観点からは高い方が好ましいが、人体への悪影響が無い程度に留めることが好ましく、例えば、0ppb(parts per billion)よりも大きく且つ100ppb以下であることが好ましい。本実施形態では、目標濃度を50ppbとする。
【0035】
制御部12は、第1制御において、例えばオゾン供給部5のオゾン発生装置5Aに印加する電圧を調整することで、オゾン供給部5をフィードバック制御する。なお、本実施形態では、制御部12は、第1制御において、ファン5Bを構成する回転体の回転数を一定とするが、変動するようにしてもよい。
【0036】
制御部12は、第1制御の実行中に判定条件が成立した場合に第1制御を停止させる第2制御を実行する。判定条件は、特に限定されない。判定条件は、例えば、第1制御が開始されてから第2所定期間(例えば120分)が経過したことであってもよい。第2所定期間は、予め定められた固定値であってもよいし、オゾン濃度などに応じて変動するようにしてもよいし、操作部16を用いて行われる設定操作によって設定される値であってもよい。第2所定期間は、第1制御の実行中のオゾン濃度として想定される上限値を基準に決定するようにしてもよい。例えば、第2所定期間は、上記上限値が160ppbと想定される場合、160ppbの状態が継続しても人体に影響がない200分未満(例えば120分)としてもよい。判定条件は、別の例として、操作部16によって判定操作が行われたことであってもよい。
【0037】
第2制御は、例えば一定量のオゾンを供給させる制御、規則的な変化でオゾンを供給させる制御、オゾン供給部5を停止させる制御などである。制御部12は、第2制御において、例えば低濃度のオゾンを供給させるようにオゾン供給部5を制御するか又はオゾン供給部5を停止させる。つまり、制御部12は、第2制御において、例えば一定量且つ低濃度のオゾンを供給させるようにオゾン供給部5を制御するか、規則的な変化で低濃度のオゾンを供給させるようにオゾン供給部5を制御するか又はオゾン供給部5を停止させる。
【0038】
「低濃度」とは、第1制御の実行中に判定条件が成立したときのオゾン供給部5から供給されるオゾン供給量よりも少ない量のことをいい、「予め定められた値」であってもよいし、「検知濃度に基づいて決定される値」であってもよい。本実施形態では、オゾン以外のガスが検知濃度に対してプラス側に作用することを想定している。このため、「予め定められた値」は、例えば、オゾン以外のガスの影響がない環境下で実濃度を目標濃度に維持するために必要なオゾン供給量よりも小さい値としてもよい。また、「検知濃度に基づいて決定される値」は、例えば、第1制御の実行中に判定条件が成立したときにおけるオゾン供給部5から供給されるオゾン供給量の30%以下としてもよい。オゾン供給部5から供給されるオゾン供給量は、ファン5Bを構成する回転体の回転速度が一定の場合、オゾン供給部5に印加される電圧と相関があるため、第1制御の実行中に判定条件が成立したときのオゾン供給部5に印加される電圧と比較することができる。つまり、制御部12は、ファン5Bを構成する回転体の回転速度を判定条件が成立したときの回転速度のまま維持しつつ、オゾン供給部5に印加する電圧を、第1制御の実行中に判定条件が成立したときのオゾン供給部5に印加される電圧の30%以下とすることで、オゾン供給部5から供給されるオゾン供給量を30%以下にすることができる。
【0039】
異常判定部14は、検知部10によって検知されるオゾン濃度の判定条件が成立してから所定期間が経過するまでの変化度合いに基づいて異常を判定する。ここで「異常」とは、「フィードバック制御しているときの実際のオゾン濃度が目標濃度から乖離する異常」のことである。上述した電気化学方式によってオゾン濃度を検知する検知部10は、オゾン以外のガスの影響も受ける。例えば、酸化性ガスであるオゾンとは逆の性質を持つ還元性ガスが存在する場合、電気化学方式によってオゾン濃度を検知する検知部10の検知結果に対してマイナス方向に作用することが想定される。この場合、検知濃度は、実際のオゾン濃度(以下「実濃度」ともいう)よりも低くなる。このため、制御部12が第1制御において検知濃度が目標濃度に近づくようにフィードバック制御すると、実濃度が目標濃度よりも高くなる。異常判定部14は、このようにして生じる異常を判定しうる。所定期間は、予め定められた期間であり、例えば10分である。
【0040】
異常判定部14は、制御部12が第2制御において低濃度のオゾンを供給させるようにオゾン供給部5を制御するか又はオゾン供給部5を停止させる構成において、検知濃度の判定条件が成立してから所定期間が経過するまでの低下度合いに基づいて異常を判定する。制御部12が第2制御において低濃度のオゾンを供給させるようにオゾン供給部5を制御するか又はオゾン供給部5を停止させる場合、第2制御の実行中に検知濃度が低下する。このときの検知濃度の低下度合いは、実濃度が高いほど大きくなりやすい。このため、異常判定部14は、検知濃度の低下度合いに基づいて異常を判定しうる。
【0041】
また、異常判定部14は、上記低下度合いが閾値を超えていると判定した場合に異常と判定する。上述したように還元性ガスが存在する場合には、第1制御において実濃度が目標濃度よりも高くなる傾向がある。また、実濃度が高いほど、第2制御が実行されたときの上記低下度合いは大きくなる。このため、第2制御が実行されると、還元性ガスが存在する場合には、還元性ガスが存在しない場合(つまり、実濃度が目標濃度と一致する場合)と比較して、上記低下度合いが大きくなる。
【0042】
異常判定部14は、判定条件が成立したときの実濃度が異常値である場合に、所定期間が経過したときの低下度合いがどの程度となるかを予め把握しておくことで、異常を判定しうる。
図2には、実測値に基づくグラフG1,G2,G3が示されている。G1は、実濃度が目標濃度(50ppb)と一致する状態から第2制御(ここでは、オゾン供給部5の停止)が実行されたときのオゾン濃度の経時変化をあらわしている。G2は、実濃度が100ppbである状態から第2制御が実行されたときのオゾン濃度の経時変化をあらわしている。G3は、実濃度が130ppbである状態から第2制御が実行されたときのオゾン濃度の経時変化をあらわしている。実濃度が目標濃度と一致する状態で第2制御が開始されてから所定期間が経過するまでの低下度合いをC1とする。実濃度が100ppbの状態で第2制御が開始されてから所定期間が経過するまでの低下度合いをC2とする。実濃度が130ppbの状態で第2制御が開始されてから所定期間が経過するまでの低下度合いをC3とする。
【0043】
上述した「閾値」は、C1よりも大きい値であり、本実施形態ではC2とする。
図2のG3のように、判定条件が成立した時点で実濃度が100ppbを超えている場合には、低下度合いが閾値であるC2を超える。このため、異常判定部14は、低下度合いが閾値を超えていると判定し、異常と判定する。逆に、
図2のG1のように、判定条件が成立した時点で実濃度が100ppbを超えていない場合には、低下度合いが閾値であるC2を超えない。このため、異常判定部14は、低下度合いが閾値を超えていないと判定し、異常と判定しない。
【0044】
制御部12は、低下度合いが閾値を超えていないと判定された場合に第1制御を実行し、低下度合いが閾値を超えていると判定した場合に第3制御を実行する。第3制御は、検知濃度が上記目標濃度よりも低い第2目標濃度に近づくようにオゾン供給部5をフィードバック制御するか、オゾン供給部5を低濃度のオゾンを供給させる状態にするか、又はオゾン供給部5を停止した状態にする制御である。
【0045】
第3制御は、第2制御とは異なる制御であってもよいし、第2制御と同じ制御であってもよい。つまり、制御部12は、第2制御から第3制御へ移行する際、制御内容を変更してもよいし、変更しなくてもよい。第3制御が第2制御と異なる例としては、例えば、第2制御においてオゾン供給部5を停止させ、第3制御においてオゾン供給部5を低濃度のオゾンを供給させる状態にしてもよい。第3制御が第2制御と同じ制御である例としては、例えば、第2制御において低濃度のオゾンを供給させるようにオゾン供給部5を制御し、第3制御においてオゾン供給部5を低濃度のオゾンを供給させる状態で維持させるようにしてもよい。
【0046】
オゾン発生器1の制御部12及び異常判定部14は、開始条件が成立した場合に、
図3に示す処理を協働して実行する。開始条件は、例えば、操作部16によって開始操作が行われたことである。
【0047】
制御部12は、開始条件が成立した場合に、ステップS10にて上述した第1制御を開始する。制御部12は、第1制御を開始した後、ステップS11にて、上述した判定条件が成立したか否かを判定する。制御部12は、判定条件が成立していないと判定した場合(ステップS11にてNoの場合)、ステップS11に戻る。つまり、制御部12は、判定条件が成立するまで、判定条件が成立したか否かの判定を繰り返す。
【0048】
制御部12は、判定条件が成立したと判定した場合(ステップS11にてYesの場合)、ステップS12にて第1制御を停止して第2制御を開始する。異常判定部14は、ステップS13にてタイマの作動を開始させる。異常判定部14は、ステップS14にて、ステップS13で作動させたタイマに基づいて、所定期間が経過したか否かを判定する。異常判定部14は、所定期間が経過していないと判定した場合(ステップS14にてNoの場合)、ステップS14に戻る。つまり、異常判定部14は、所定期間が経過したと判定するまで、所定期間が経過したか否かの判定を繰り返す。
【0049】
異常判定部14は、所定期間が経過したと判定した場合(ステップS14にてYesの場合)、ステップS15にて、検知濃度の低下度合いが閾値を超えているか否かを判定する。異常判定部14によって検知濃度の低下度合いが閾値を超えていないと判定された場合(ステップS15にてNoの場合)、制御部12は、ステップS10に戻り、第2制御を停止して第1制御を開始する。異常判定部14によって検知濃度の低下度合いが閾値を超えていると判定された場合(ステップS15にてYesの場合)、ステップS16にて、制御部12は第2制御を停止して第3制御を開始する。つまり、制御部12は、第1制御の実行中に判定条件が成立した場合に第2制御を実行し、検知濃度の低下度合いが閾値を超えていなければ第1制御を再開させ、検知濃度の低下度合いが閾値を超えていればオゾン供給部5を低濃度のオゾンを供給させる状態にするか、又はオゾン供給部5を停止した状態にする。
【0050】
1-3.第1実施形態のオゾン発生器の効果
次の説明は、第1実施形態のオゾン発生器1の効果に関する。
検知部10は電気化学方式によってオゾン濃度を検知するため、オゾン以外のガス(例えば、煙草の煙やお香など)の影響を受け得る。その結果、検知濃度が実濃度から乖離するおそれがある。この状態で検知濃度が目標濃度に近づくようにオゾン供給部5をフィードバック制御すると、実濃度が目標濃度から乖離してしまう。こうした異常を判定すべく、オゾン発生器1は、第1制御の実行中に判定条件が成立した場合に第1制御を停止させる第2制御を実行する。そして、オゾン発生器1は、判定条件が成立してから所定期間が経過するまでの検知濃度の変化度合いに基づいて異常を判定する。電気化学方式によってオゾン濃度を検知する検知部10は、実濃度が高いほど検知濃度が下がりやすいという特性がある。このため、第1制御が停止されると、実濃度に応じて検知濃度の変化度合いに差が生じる。オゾン発生器1は、この変化度合いに基づいて、フィードバック制御しているときの実濃度が目標濃度から乖離する異常を判定しうる。
【0051】
更に、オゾン発生器1は、第2制御において低濃度のオゾンを供給させるようにオゾン供給部5を制御するか又はオゾン供給部5を停止させ、判定条件が成立してから所定期間が経過するまでの検知濃度の低下度合いに基づいて異常を判定する。このため、オゾン発生器1は、外部空間90におけるオゾン濃度の上昇を抑えつつ異常を判定しうる。
【0052】
更に、オゾン発生器1は、低下度合いが閾値を超えていると判定した場合に異常と判定する。このため、オゾン発生器1は、フィードバック制御しているときの実際のオゾン濃度が目標濃度よりも大きくなる異常を判定しうる。
【0053】
更に、オゾン発生器1は、低下度合いが閾値を超えていないと判定した場合には第1制御を再開させ、低下度合いが閾値を超えていると判定した場合にはオゾンの供給を低減させるか又は停止させることができる。
【0054】
更に、オゾン発生器1は、加湿部7を備える。このため、オゾン発生器1は、加湿器としても機能しうる。
【0055】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した実施形態や後述する実施形態の様々な特徴は、矛盾しない組み合わせであればどのように組み合わされてもよい。
【0056】
上記実施形態では、オゾン発生器によって検知濃度の低下度合いが閾値を超えていると判定した場合に異常と判定する構成であったが、別の方法で異常を判定してもよい。例えば、検知濃度の低下度合いが閾値を超えていないと判定した場合に異常と判定する構成であってもよい。オゾンガス以外のガスには、検知濃度に対してマイナス方向の影響を与えるガスだけでなく、プラス方向に影響を与えるガスも存在しうる。プラス方向に影響を与えるガスが存在する場合には、実濃度が検知濃度よりも小さくなるため、低下度合いが小さくなる。こうした異常を判定する方法として、検知濃度の低下度合いが閾値を超えていないと判定した場合に異常と判定する構成を採用することが考えられる。
【0057】
上記実施形態では、オゾン発生器は、低下度合いが閾値を超えている場合に、第3制御において超えている度合いとは無関係に共通の制御を行う構成であったが、超えている度合いに基づいて異なる制御を行う構成であってもよい。例えば、オゾン発生器の制御部は、第3制御においてオゾン供給部を低濃度のオゾンを供給させる状態にする場合、低下度合いが大きいほどオゾン供給量が小さくなるようにオゾン供給部を制御してもよい。オゾン供給量の決定方法は、例えば低下度合いと低下度合いが大きいほど小さくなるように設定されたオゾン供給量との対応関係を示す対応データを予め記憶しておき、この対応データと実際の低下度合いとに基づいて決定する方法であってもよい。対応データは、テーブルであってもよいし、演算式であってもよい。
【0058】
上記実施形態では、オゾン供給部と加湿部が別の構成であったが、オゾン供給部が加湿部を含む構成であってもよい。例えば、オゾン供給部は、原料水の電気分解によってオゾン水を生成し霧化又は気化させる構成であってもよい。この構成であれば、オゾンの供給に伴って加湿することができる。オゾン水を霧化又は気化させる構成としては、上記実施形態で説明した加湿部の構成を採用することができる。また、上記実施形態のオゾン発生器では、加湿部を備える構成であったが、加湿部を備えていない構成であってもよい。
【0059】
上記実施形態では、オゾン発生器が第1制御を停止させる第2制御として、低濃度のオゾンを供給させるようにオゾン供給部を制御するか又はオゾン供給部を停止させる構成であったが、別の構成であってもよい。例えば、オゾン発生器は、目標濃度より高濃度のオゾンを供給させるようにオゾン供給部を制御してもよい。「高濃度」とは、第1制御の実行中に判定条件が成立したときのオゾン供給部5から供給されるオゾン供給量よりも多い量のオゾンが供給されることをいう。
【0060】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1…オゾン発生器
5…オゾン供給部
7…加湿部
10…検知部
12…制御部
14…異常判定部
90…外部空間
【要約】
【課題】フィードバック制御しているときの実際のオゾン濃度が目標濃度から乖離する異常を判定する。
【解決手段】オゾン発生器1は、オゾン供給部5と、検知部10と、制御部12と、異常判定部14とを備える。オゾン供給部5は、外部空間90へオゾンを供給する。検知部10は、電気化学方式によってオゾン濃度を検知する。制御部12は、検知部10によって検知されるオゾン濃度が目標濃度に近づくようにオゾン供給部5をフィードバック制御する第1制御と、第1制御の実行中に判定条件が成立した場合に第1制御を停止させる第2制御と、を実行する。異常判定部14は、検知部10によって検知されるオゾン濃度の判定条件が成立してから所定期間が経過するまでの変化度合いに基づいて異常を判定する。
【選択図】
図1