IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 森永乳業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-組成物 図1
  • 特許-組成物 図2
  • 特許-組成物 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/125 20160101AFI20230112BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20230112BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20230112BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20230112BHJP
【FI】
A23L33/125
A23L33/135
A23L33/18
A23L33/17
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021524928
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2020022291
(87)【国際公開番号】W WO2020246583
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2019105521
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 周太郎
(72)【発明者】
【氏名】村田 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】織田 浩嗣
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0092373(US,A1)
【文献】特開2014-210801(JP,A)
【文献】国際公開第2018/041803(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109337883(CN,A)
【文献】特表2014-513697(JP,A)
【文献】特開平02-225419(JP,A)
【文献】織田 浩嗣,ラクトフェリンペプチドが微生物の成育に与える影響,ミルクサイエンス,2012年,vol. 61, no. 3,pp. 271-275
【文献】織田 浩嗣,ラクトフェリンの生体防御作用に関する研究,ミルクサイエンス,2013年,vol. 62, no. 3,pp. 105-109
【文献】浦島 匡,ミルクオリゴ糖の機能研究における最近の進歩,応用糖質科学,2014年,第4巻、第4号,pp. 273-286
【文献】稲垣 瑞穂、金丸 義敬,乳成分を用いた受動免疫素材の可能性,ビタミン,2018年,92巻、9号,pp. 424-426
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23C
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖とを含有するビフィドバクテリウム属細菌増殖促進用組成物。
【請求項2】
ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物の組成物全体に対する含有量が、0.001質量%以上100質量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ヒトミルクオリゴ糖の組成物全体に対する含有量が、0.001質量%以上100質量%未満である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ヒトミルクオリゴ糖が、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、及びラクトジフコテトラオースからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、及びビフィドバクテリウム・ロンガムからなる群から選択される一種又は二種以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖と、ビフィドバクテリウム属細菌とを含有する経口組成物。
【請求項7】
前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、及びビフィドバクテリウム・ロンガムからなる群から選択される一種又は二種以上である、請求項に記載の経口組成物。
【請求項8】
ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物の組成物全体に対する含有量が、0.001質量%以上5.0質量%以下であり、
ヒトミルクオリゴ糖の組成物全体に対する含有量が、0.001質量%以上5質量%以下である、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
ヒトミルクオリゴ糖が、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、及びラクトジフコテトラオースからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、請求項のいずれか一項に記載の経口組成物。
【請求項10】
乳幼児用調製乳である、請求項のいずれか一項に記載の経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖とを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
乳幼児の腸内細菌叢はビフィドバクテリウム属細菌(以下、ビフィズス菌とも記す)が最優勢であることが知られており、このことは乳児の健康の維持と密接に関わっていると考えられている。そのため、ビフィズス菌の増殖を促進する食品を開発することは、乳幼児の健康を維持する上で重要である。
【0003】
ビフィズス菌の増殖を促進因子として、乳タンパク質ではラクトフェリンが知られており(非特許文献1)、ウシラクトフェリンは育児用粉乳、サプリメント等に広く使用されている。また、ラクトフェリン分解物(ラクトフェリン由来ペプチド)についても、ビフィズス菌増殖促進作用を有することが報告されている(非特許文献2、特許文献1)。
【0004】
また、ヒトの初乳に含まれる多種類のオリゴ糖の総称であるヒトミルクオリゴ糖(以下、HMOとも記す)についても、ビフィズス菌の増殖を促進することが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2015-139955号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012-294840号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】Rahman, M.M. et. al., Int. J. Food Sci. Tech. 45:453-458, 2010
【文献】H. Oda et. al., Appl. Environ. Microbiol., 79(6) 1843-1849, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ビフィズス菌の増殖をより促進する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖とを組み合わせることにより、ビフィドバクテリウム属細菌の増殖促進効果が相乗的に発揮されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第一の態様は、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖とを含有する組成物である。
本態様において、好ましくはラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物に対するヒトミルクオリゴ糖の質量比が、1/100000以上1/10以下である。
本態様において、好ましくはラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物の組成物全体に対する含有量は、0.001質量%以上100質量%未満である。
本態様において、好ましくはヒトミルクオリゴ糖の組成物全体に対する含有量は、0.001質量%以上100質量%未満である。
本態様におけるヒトミルクオリゴ糖は、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、及びラクトジフコテトラオースからなる群から選択される一種又は二種以上を含むことが好ましい。
本態様の組成物は、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進用途に好ましく適用できる。ここで、前記ビフィドバクテリウム属細菌は、好ましくはビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、及びビフィドバクテリウム・ロンガムからなる群から選択される一種又は二種以上である。
【0010】
また、本発明の第二の態様は、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖と、ビフィドバクテリウム属細菌とを含有する経口組成物である。
本態様において、好ましくは、前記ビフィドバクテリウム属細菌は、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、及びビフィドバクテリウム・ロンガムからなる群から選択される一種又は二種以上である。
本態様において、好ましくは、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物に対するヒトミルクオリゴ糖の質量比が、1/100000以上1/10以下である。
本態様におけるヒトミルクオリゴ糖は、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、及びラクトジフコテトラオースからなる群から選択される一種又は二種以上を含むことが好ましい。
本態様の経口組成物は、好ましくは乳幼児用栄養組成物であり、特に好ましくは乳幼児用調製乳である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ビフィズス菌増殖を促進させることができる組成物が提供される。かかる組成物は、添加物等の態様で、飲食品や医薬品に含有させることができる。また、本発明の組成物を、さらにビフィズス菌を含有する経口組成物の態様とすることにより、腸内細菌叢の改善効果が得られ、摂食者、特に乳幼児の健康維持に役立つことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1における、2’-フコシルラクトース及びラクトフェリンのビフィドバクテリウム・ブレーベの増殖促進作用を示すグラフ。
図2】実施例2における、2’-フコシルラクトース及びラクトフェリンのビフィドバクテリウム・インファンティスの増殖促進作用を示すグラフ。
図3】実施例2における、2’-フコシルラクトース及びラクトフェリンのビフィドバクテリウム・インファンティスの増殖促進作用を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
【0014】
本発明の第一の態様の組成物は、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖とを含有する。
【0015】
ラクトフェリンは、哺乳動物、例えば、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、水牛、ラクダ、ヤク、ウマ、ロバ、ラマ、ウシ又はヒトの乳、涙、唾液、血液等に含まれる鉄結合性の糖タンパク質である。
本発明におけるラクトフェリンは、いずれの哺乳動物に由来するものであってもよく、特に限定されないが、含有量や入手容易性の点から、例えば、ウシ、ヒト等の乳由来のラクトフェリンが好ましい。前記乳としては、初乳、移行乳、常乳、末期乳のいずれでもよい。
また、本発明におけるラクトフェリンは、前記乳の処理物である脱脂乳、ホエイ等から常法(例えば、イオンクロマトグラフィー等)によって分離されたラクトフェリン、遺伝子操作によって微生物、動物細胞、トランスジェニック動物等から産生された組換えラクトフェリン、合成ラクトフェリン、又はそれらの混合物でもよい。また、ラクトフェリンは、非グリコシル化又はグリコシル化されたものでもよい。このようなラクトフェリンとして、工業的規模で製造されている市販のラクトフェリン(例えば、森永乳業社製等)を使用することができる。
【0016】
本発明におけるラクトフェリン中の金属含有量は特に限定されず、ラクトフェリンを塩酸やクエン酸等により脱鉄したアポ型ラクトフェリン;該アポ型ラクトフェリンを、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の金属でキレートさせて得られる飽和度100%以上の状態の金属飽和型ラクトフェリン;及び100%未満の各種飽和度で金属が結合している状態の金属部分飽和型ラクトフェリンからなる群から選ばれる、いずれか1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0017】
ここで、本技術に用いられるラクトフェリンの調製(乳等の原料からのラクトフェリンの分離、精製)方法の一例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
ウシ由来の乳原料を陽イオン交換カラムに通液し、この通過液を回収し、適宜この通過液を繰り返しカラムに通液する。このカラムに脱イオン水を通液し、食塩水を通液し、この陽イオン交換カラムに吸着した塩基性タンパク質の溶出液を得る。この溶出液に硫酸アンモニウム沈殿法にて、これを回収し、適宜洗浄する。回収された沈殿物を脱イオン水にて溶解し、この溶解液を限外ろ過膜にてろ過する。さらに、脱塩処理、凍結乾燥することで、粉末状のラクトフェリンが得られる。
【0018】
より詳細には、まず、イオン交換体をカラムに充填し、塩酸を通液し、水洗してイオン交換体を平衡化する。続いて、4℃に冷却したpH6.9の脱脂乳をカラムに通液し、透過液を回収し、再度同様にカラムに通液する。次いで、脱イオン水をカラムに通液し、食塩水を通液し、イオン交換体に吸着した塩基性タンパク質の溶出液を得る。この溶出液に飽和度80%の硫酸アンモニウムを添加し、タンパク質を沈殿させ、遠心分離して沈殿物を回収する。回収した沈殿物を、飽和度80%の硫酸アンモニウム溶液で洗浄し、脱イオン水を添加して溶解し、得られた溶液を限外ろ過膜モジュールを用いて脱塩し、凍結乾燥して、粉末状ウシラクトフェリンを得る。このようにして、純度が95質量%以上のウシラクトフェリンが得られる。
【0019】
ラクトフェリンにおいては、種、属、個体等の違いによって、1又は複数の位置での1又は複数の塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位等の遺伝子変異が当然存在し、このような変異を有する遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸においても変異が生じている場合がある。本発明における本技術に用いることができるラクトフェリンには、本発明の効果を損なわない限りにおいて、このような変異を含むものも含有される。
また、本発明におけるラクトフェリンには、本発明の効果を損なわない限りにおいて、熱処理、酸処理、又はアルカリ処理を行ったラクトフェリン処理物も含まれてもよい。
【0020】
本発明におけるラクトフェリン加水分解物は、前述のラクトフェリンを加水分解処理したものをいう。
加水分解処理としては、例えば特開2012-235768号公報に記載された方法が挙げられる。
具体的には、ラクトフェリン溶液を酵素反応処理を行う前に、塩酸、クエン酸、酢酸等の酸によりpHを2~4、好ましくは2.5~3.5、特に好ましくはpH3に調整する。
pHを調整したラクトフェリン溶液に、キモシンを含有する酵素組成物を所望の量で添加した後、酵素反応の温度を35~55℃、好ましくは40~50℃、より好ましくは42~48℃に保持して、6時間~24時間、好ましくは12~18時間、攪拌しながらラクトフェリンを加水分解させる。
次いで、例えば反応溶液を80℃に昇温して10分間維持し、酵素を加熱失活させる。さらに、好ましくは、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ溶液を添加して、pHを5~7、例えば6に調整する。
なお、pH調整後の反応溶液(ラクトフェリン加水分解物)は、溶液のままでもよいが、凍結乾燥等を行って粉末化することが好ましい。また、ラクトフェリン分解物は、クロマトグラフィー、又は限外濾過等により、分画したものを用いることもできる。
【0021】
本態様の組成物において、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物の組成物全体に対する含有量は、好ましくは0.001質量%以上100質量%未満、より好ましくは0.005~75質量%、さらに好ましくは0.01~50質量%である。
【0022】
本発明におけるヒトミルクオリゴ糖は、ヒトの乳に通常含まれるオリゴ糖であれば特に限定されないが、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ラクトジフコテトラオース、2’,3-ジフコシルラクトース、ラクト-N-トリオースII、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-ネオテトラオース、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-ネオフコペンタオース、ラクト-N-フコペンタオースII、ラクト-N-フコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV、ラクト-N-ネオフコペンタオースV、ラクト-N-ジフコヘキサオースI、ラクト-N-ジフコヘキサオースII、6’-ガラクトシルラクトース、3’-ガラクトシルラクトース、ラクト-N-ヘキサオースおよびラクト-N-ネオヘキサオース等の中性ヒトミルクオリゴ糖、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトース、3-フコシル-3’-シアリルラクトース、ジシアリル-ラクト-N-テトラオースなどの酸性ヒトミルクオリゴ糖が好ましく挙げられる。これらのうち、ビフィドバクテリウム属細菌の増殖促進効果の観点から、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、及びラクトジフコテトラオースが好ましく、2’-フコシルラクトースが特に好ましい。
【0023】
なお、本発明におけるヒトミルクオリゴ糖は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、精製されたものであっても、混合物であってもよい。また、前述したヒトミルクオリゴ糖の一種又は二種以上を含んでいてもよい。
【0024】
本態様の組成物において、ヒトミルクオリゴ糖の組成物全体に対する含有量は、好ましくは0.001質量%以上100質量%未満、より好ましくは0.005~75質量%、さらに好ましくは0.01~50質量%である。
また、本態様の組成物において、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物に対するヒトミルクオリゴ糖の質量比は、好ましくは1/100000以上1/10以下、より好ましくは1/10000以上1/10以下、さらに好ましくは1/1000以上1/10以下である。
【0025】
本発明の組成物は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌の増殖を促進させることができる。
ここで「増殖の促進」とは、in vivo又はin vitroで本発明の組成物を適用した場合のビフィドバクテリウム属細菌の菌数が、適用しない場合に比べて増加させることをいう。かかる菌数の増加の程度は、特に限定されないが、本発明の組成物を適用しない場合のビフィドバクテリウム属細菌の菌数に対して、好ましくは0.1%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは5%以上大きいことをいう。
かかる菌数の増加は、菌数を直接的に計測する他、例えば、細菌を培養した培地の濁度(吸光度)又は酢酸等の短鎖脂肪酸量を測定してその値が上昇すること、前記培地におけるpHを測定してその値が低下すること、等により確認することができる。
【0026】
ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖とは、それぞれビフィドバクテリウム属細菌に対して増殖促進作用を示すことが知られていたが、後述の実施例に示されるように、両者を組み合わせることにより、相乗的に該作用が発揮され、優れたビフィドバクテリウム属細菌の増殖促進効果が奏される。
【0027】
本発明の組成物により増殖が促進されるビフィドバクテリウム属細菌としては、特に制限されないが、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスに再分類されている)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(Bifidobacterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、及びビフィドバクテリウム・シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)が挙げられる。これらのうち、好ましくはビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、及びビフィドバクテリウム・ロンガムからなる群から選択される一種又は二種以上である。
【0028】
本発明の第一の態様の組成物は、それ自体を飲食品や医薬品等の形態としてもよいし、添加物として飲食品や医薬品等に含有させる形態としてもよい。
本態様の組成物の摂取(投与)経路は、経口又は非経口のいずれでもよいが、通常は経口である。また、非経口摂取(投与)としては、直腸投与等が挙げられる。
【0029】
本発明の第一の態様の組成物が、経口摂取(投与)されるものである場合、さらにビフィドバクテリウム属細菌を含有することがこのましい。
すなわち、本発明の第二の態様は、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖と、ビフィドバクテリウム属細菌とを含有する経口組成物である。
【0030】
本態様におけるラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物、並びにヒトミルクオリゴ糖に係る説明は、前述の第一の態様における説明に準ずる。
【0031】
第二の態様の組成物において、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物の組成物全体に対する含有量は、好ましくは0.001~5.0質量%、より好ましくは0.005~1.0質量%、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。
また、第二の態様の組成物において、ヒトミルクオリゴ糖の組成物全体に対する含有量は、好ましくは0.001~5.0質量%、より好ましくは0.005~1.0質量%、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。
これらは、通常、経口組成物として流通するときの含有量の範囲であってよい。
【0032】
第二の態様の組成物を経口摂取(投与)するときの含有量としては、上記の範囲としてもよいし、適宜希釈等してもよい。例えば、経口摂取(投与)時のラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物の組成物全体に対する含有量は、0.0001~5.0質量%とすることができる。また、経口摂取(投与)時のヒトミルクオリゴ糖の組成物全体に対する含有量は、0.0001~5.0質量%とすることができる。
【0033】
本態様において、ビフィドバクテリウム属細菌としては少なくとも生菌を含んでおり、経口組成物1mL当たり好ましくは1.0×106cfu以上、より好ましくは1.0×107cfu以上、さらに好ましくは2.0×107cfu以上のビフィドバクテリウム属細菌の生菌を含有する。なお、生菌を含有する限りにおいて、死菌も含まれていても構わない。
なお、cfuはコロニー形成単位(Colony forming unit)を指す。本明細書においては、例えば、還元脱脂粉乳10質量%を含む固体培地にて38℃で培養したときの値とすることができる。
これらは、通常、経口組成物として流通するときの含有量の範囲であってよい。
【0034】
本態様において経口組成物に含有させるビフィドバクテリウム属細菌としては、前述の第一の態様において説明した種類のものが挙げられるが、好ましくはビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、及びビフィドバクテリウム・ロンガムからなる群から選択される一種又は二種以上である。
【0035】
ビフィドバクテリウム・ブレーベとしてより具体的には、ビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16Vが挙げられる。ビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16Vは、2018年1月26日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、受託番号NITE BP-02622で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。市販品として入手可能な、例えば、森永乳業社製の「ビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V」を用いてもよい。
また、ビフィドバクテリウム・ブレーベとしてより具体的には、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274も挙げられる。ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274は、2009年8月25日付で、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(現・独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター(IPOD)(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、受託番号FERM BP-11175で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。
【0036】
ビフィドバクテリウム・インファンティスとしてより具体的には、ビフィドバクテリウム・インファンティス M-63も挙げられる。ビフィドバクテリウム・インファンティス M-63は、2018年1月26日付で、NPMDに、受託番号NITE BP-02623で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。
【0037】
ビフィドバクテリウム・ロンガムとしてより具体的には、ビフィドバクテリウム・ロンガムNITE BP-02621、(別名:BB536又はBifidobacterium longum subsp. longum ATCC BAA-999)を用いることが出来る。ビフィドバクテリウム・ロンガムBB536は、NPMDに、2018年1月26日にNITE BP-02621の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。これと同一の細菌であるBifidobacterium longum subsp. longum ATCC BAA-999(番号:ATCC BAA-999)は、American Type Culture Collection(ATCC:米国、20110、ヴァージニア州、マナサス、ユニバーシティ ブルバード10801(10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110,United States of America))から、ATCC BAA-999として入手可能である(例えば、特開2012-223134号公報等参照)。
【0038】
なお、上記例示した細菌名で特定される細菌には、当該細菌名で所定の機関に寄託や登録がなされている株そのもの(以下、説明の便宜上、「寄託株」ともいう)に限られず、それと実質的に同等な株(「派生株」または「誘導株」ともいう)も包含される。すなわち、上記受託番号で上記寄託機関に寄託されている株そのものに限られず、それと実質的に同等な株も包含される。各細菌について、「上記寄託株と実質的に同等の株」とは、上記寄託株と同一の種に属し、腸内細菌叢改善効果が得られ、さらにその16SrRNA遺伝子の塩基配列が、上記寄託株の16SrRNA遺伝子の塩基配列に対して、好ましくは99.86%以上、より好ましくは99.93%以上、さらに好ましくは100%の同一性を有し、かつ、好ましくは上記寄託株と同一の菌学的性質を有する株をいう。各細菌について、上記寄託株と実質的に同等の株は、例えば、当該寄託株を親株とする派生株であってよい。派生株としては、寄託株から育種された株や寄託株から自然に生じた株が挙げられる。育種方法としては、遺伝子工学的手法による改変や、突然変異処理による改変が挙げられる。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、ならびにN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン、エチルメタンスルフォネート、およびメチルメタンスルフォネート等の変異剤による処理が挙げられる。寄託株から自然に生じた株としては、寄託株の使用の際に自然に生じた株が挙げられる。そのような株としては、寄託株の培養(例えば継代培養)により自然に生じた変異株が挙げられる。派生株は、一種の改変により構築されてもよく、二種またはそれ以上の改変により構築されてもよい。
【0039】
本態様の経口組成物に含有し得るビフィドバクテリウム属細菌の菌体としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
また、本態様の経口組成物に含有し得るビフィドバクテリウム属細菌の菌体は、前述のビフィドバクテリウム属細菌を培養することにより容易に取得することができる。培養方法は、ビフィドバクテリウム属細菌が増殖できる限り、特に制限されない。培養方法としては、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる方法を、そのまま、あるいは適宜修正して、用いることができる。培養温度は、例えば、25~50℃であってよく、35~42℃であることが好ましい。培養は、好ましくは嫌気条件下で実施することができ、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら実施することができる。また、培養は、液体静置培養等の微好気条件下で実施することもできる。培養は、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌が所望の程度に増殖するまで実施することができる。
【0040】
培養に用いる培地は、ビフィドバクテリウム属細菌が増殖できる限り、特に制限されない。培地としては、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる培地を、そのまま、あるいは適宜修正して、用いることができる。すなわち、炭素源としては、例えば、ガラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、セロビオース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて用いることができる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩類や硝酸塩類を用いることができる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。また、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる培地として、具体的には、強化クロストリジア培地(Reinforced Clostridial medium)、MRS培地(de Man, Rogosa, and Sharpe medium)、mMRS培地(modified MRS medium)、TOSP培地(TOS propionate medium)、TOSP Mup培地(TOS propionate mupirocin medium)が挙げられる。
【0041】
本態様の経口組成物に含有し得るビフィドバクテリウム属細菌としては、その菌体又はそれを含有する画分を、特に制限されず用いることができる。すなわち、ビフィドバクテリウム属細菌としては、例えば、培養により得られた培養物をそのまま用いてもよく、培養物を希釈又は濃縮して用いてもよく、培養物から回収した菌体を用いてもよい。また、腸内細菌叢改善効果を損なわない限り、加熱や凍結乾燥等の種々の追加操作を培養後に行うことができる。追加操作は、菌体の生残性が高いものであるのが好ましい。すなわち、本態様の経口に含有し得るビフィドバクテリウム属細菌として、具体的には、ビフィドバクテリウム属細菌の培養物、又は前記培養物から回収した菌体、それらの処理物が挙げられ、前記処理物としては希釈物、濃縮物、又は乾燥物等が挙げられる。なお、菌体は、通常は生菌体を含有する形態で使用されるのが好ましい。菌体は、例えば、生菌体からなるものであってもよく、生菌体と死菌体の混合物であってもよい。
【0042】
本態様の経口組成物は、第一の態様で説明した通りビフィドバクテリウム属細菌の増殖を促進させることができる。ここで、増殖対象のビフィドバクテリウム属細菌は、経口組成物に含有されるビフィドバクテリウム属細菌に限らず、摂取したヒト等の動物の消化管内に存在するビフィドバクテリウム属細菌も含まれる。
そのため、本態様の経口組成物は、腸内細菌叢を改善させるために用いることができる。ここで、「菌叢改善」とは、ビフィドバクテリウム属細菌の腸内細菌叢に存在する細菌数やその存在割合を増加させることを含む。また、「菌叢改善」は、ビフィドバクテリウム属細菌の腸内細菌叢における存在割合が増加する限りにおいて、他の善玉菌の腸内細菌叢における存在割合を増加させることや、悪玉菌の腸内細菌叢における存在割合を減少させることを含んでもよい。他の善玉菌としては乳酸菌等が挙げられる。悪玉菌としては、ウェルシュ菌、サルモネラ属細菌、黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌等が挙げられる。
前記「存在割合」は、腸内細菌叢において検出された菌群全体に対する「占有率」とも言い換えることができる。
【0043】
本発明の組成物は、腸内菌叢が改善することにより予防又は改善しうる疾患や病態の対象者、あるいは腸内菌叢が悪化することに起因する疾患や病態の対象者に対して、有用となり得る。例えば、整腸用、免疫調節用、抗アレルギー用、細菌・ウイルス感染防御用、酸化ストレス低減用、下痢の予防・改善用、便秘の予防・改善用、炎症性腸疾患用、大腸がんの予防用等とすることができる。
【0044】
本発明の別の態様は、ビフィドバクテリウム属細菌の増殖促進用組成物の製造における、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物、並びにヒトミルクオリゴ糖の使用である。
本発明の別の態様は、ビフィドバクテリウム属細菌の増殖促進における、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物、並びにヒトミルクオリゴ糖の使用である。
本発明の別の態様は、ビフィドバクテリウム属細菌の増殖を促進させるために用いられる、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物、並びにヒトミルクオリゴ糖である。
本発明の別の態様は、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物、並びにヒトミルクオリゴ糖を動物に投与することを含む、ビフィドバクテリウム属細菌の増殖を促進させる方法である。ここで、動物は、特に限定されないが、通常はヒトである。
【0045】
本発明の組成物の摂取(投与)時期は、特に限定されず、投与対象の状態に応じて適宜選択することが可能である。
【0046】
本発明の組成物の摂取(投与)量は、摂取(投与)対象の年齢、性別、状態、その他の条件等により適宜選択される。
なお、摂取(投与)の量や期間にかかわらず、薬剤は1日1回又は複数回に分けて投与することができる。
【0047】
本発明の組成物は、飲食品の態様とすることが好ましい。
飲食品としては、本発明の効果を損なわないものであれば形態や性状は特に制限されず、通常飲食品に用いられる原料を用いて通常の方法によって製造することができる。
なお、飲食品に添加する添加物の態様も本発明の組成物に含まれる。かかる態様としては、例えば、搾乳された母乳や調製乳に添加する添加物が挙げられ、添加後の乳を新生児や乳児に摂取させることが想定される。
飲食品は、通常は経口摂取されるものであるが、これに限られず、例えば経鼻摂取されるもの、胃瘻や腸瘻により摂取されるものでもよい。例えば、新生児や乳児に対し、後述の本発明の組成物である乳幼児用調製乳や、本発明の組成物を添加した母乳を、経鼻胃栄養チューブ等によって摂取させることが想定される。
【0048】
飲食品としては、液状、ペースト状、ゲル状固体、粉末等の形態を問わず、例えば、錠菓;流動食(経管摂取用栄養食);パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、ゼリー、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等のその他の市販食品等;サプリメント、調製乳(粉乳、液状乳等を含む)等の栄養組成物;育児用サプリメント、育児用調製乳(粉乳、液状乳等を含む)等の育児用(乳幼児用)栄養組成物;経腸栄養食;機能性食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等が挙げられる。
また、飲食品として、妊娠期・授乳期の母親向けのママ用ミルク(妊娠・授乳期に必要な栄養をバランスよく配合した調製乳)、学童期以降の調製乳や成人向け調製乳、高齢者向け流動食などの栄養調整食品や、栄養補助食品、流動食などの栄養機能食品、病者用食品(特別用途食品)等が挙げられる。
これらのうち、より好ましくは乳幼児用栄養組成物であり、特に好ましくは乳幼児用調製乳である。
【0049】
また、飲食品の一態様として飼料とすることもできる。飼料としては、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
飼料の形態としては特に制限されず、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類;大豆油粕、ナタネ油粕、ヤシ油粕、アマニ油粕等の植物性油粕類;フスマ、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、脱脂粉乳、ホエイ、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類;トルラ酵母、ビール酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等を含有するものであってよい。
【0050】
本発明の組成物が飲食品(飼料を含む)の態様である場合、腸内のビフィズス菌を増殖させるという用途が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。
【0051】
かかる「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明の「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0052】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0053】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一年内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
かかる表示としては、例えば、「ビフィズス菌を増やしたい方」、「腸内フローラ改善のために」、「乳幼児のおなかの健康のために」等と表示することが挙げられる。
【0054】
本発明の組成物が、医薬品の形態である場合、その投与経路は、経口又は非経口のいずれでもよいが経口が好ましい。また、非経口摂取(投与)としては、直腸投与等が挙げられる。
医薬品の形態としては、投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与の場合、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。また、非経口投与の場合、座剤、軟膏剤、注射剤等に製剤化することができる。
製剤化に際しては、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、他の薬効成分や、公知の又は将来的に見出されるビフィドバクテリウム属細菌に対するプレバイオティクスなどを併用することも可能である。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、製剤担体を配合して製剤化してもよい。
【0055】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
【0056】
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
【0057】
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
【0058】
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
【0059】
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
【0060】
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤等が挙げられる。
【0061】
本発明の医薬品を摂取するタイミングは、例えば食前、食後、食間、就寝前など特に限定されない。
【実施例
【0062】
以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
<実施例1>ヒトミルクオリゴ糖及びラクトフェリンのビフィドバクテリウム・ブレーベの増殖活性への影響の検討
(1)培地と試薬の調製
(i)MRS培地の調製
DifcoMRS(BD)を添付文書の記載通りに精製水に溶解し、115℃において15分間滅菌した。L-Cysteine hydrochloride(Wako)を精製水に溶解し、濾過滅菌し、滅菌後に常温まで冷却したMRS培地に最終濃度0.05質量%となるよう無菌的に添加した。
【0064】
(ii)グルコースを含有しないMRS培地の調製
表1に記載の組成で試薬を精製水に溶解し、115℃において15分間滅菌した。L-Cysteine hydrochloride(Wako)を精製水に溶解し、濾過滅菌し、滅菌後に常温まで冷却したMRS培地に最終濃度0.05質量%となるよう無菌的に添加した。
【0065】
【表1】
【0066】
(iii)ヒトミルクオリゴ糖溶液及びラクトフェリン溶液の調製
ヒトミルクオリゴ糖(2’-フコシルラクトース(2’-FL)(Carbosynth))、及びラクトフェリン(森永乳業社製、鉄含量15.8 mg/100g)をそれぞれ精製水に溶解した。溶解後に濾過滅菌した。
【0067】
(2)前培養液の調製
(1)(i)で調製したMRS培地3mLに、ビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16Vの前培養液150μLを添加し、嫌気的に16時間37℃で培養した。培養後、1500×gで5分間遠心分離し、菌体と培養液を分離した。培養液を取り除き、(1)(ii)で調製したグルコースを含有しないMRS培地3mLに再懸濁させた。
【0068】
(3)増殖促進効果の評価
(1)(ii)で調製したグルコースを含まないMRS培地に、(2)で調製した前培養液を終濃度1v/v%となるように添加した。さらに、(1)(iii)で調製した2’-フコシルラクトース(2’-FL)及びラクトフェリン溶液をそれぞれ、表2に示す終濃度となるように添加し、96ウェルプレートに200μL/ウェルずつ分注した。
なお、1.0mg/mLは質量百分率に換算すると0.1質量%である。
その後、嫌気的に24時間37℃で培養した。培養後、マイクロプレートリーダー(コロナ電気)を用いて600nmの波長で濁度を測定し、ビフィズス菌の増殖を評価した。
【0069】
結果を表2及び図1に示す。2’-フコシルラクトース及びラクトフェリン共存下で培養した場合は、コントロール(2’-フコシルラクトース及びラクトフェリン未添加)に対して有意なビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16Vの増殖が認められた。
【0070】
【表2】
【0071】
<実施例2>ヒトミルクオリゴ糖及びラクトフェリンのビフィドバクテリウム・インファンティスの増殖活性への影響の検討
ビフィズス菌を、ビフィドバクテリウム・インファンティス M-63に替えた以外は実施例1と同様の操作を行い、増殖の評価を行った。
【0072】
結果を表3並びに図2及び図3に示す。2’-フコシルラクトース及びラクトフェリン共存下で培養した場合は、コントロール(2’-フコシルラクトース及びラクトフェリン未添加)に対してビフィドバクテリウム・インファンティス M-63の増殖傾向が認められた。また、2’-フコシルラクトース及びラクトフェリン共存下で培養した場合は、2’-フコシルラクトース添加かつラクトフェリン未添加群に対して有意なビフィドバクテリウム・インファンティス M-63の増殖が認められた。
【0073】
【表3】
【0074】
<実施例3>ヒトミルクオリゴ糖及びラクトフェリンのビフィドバクテリウム・ロンガムの増殖活性への影響の検討
ビフィズス菌を、ビフィドバクテリウム・ロンガム BB536に替えた以外は実施例1と同様の操作を行い、増殖の評価を行った。
【0075】
結果を表4に示す。2’-フコシルラクトース及びラクトフェリン共存下で培養した場合は、コントロール(2’-フコシルラクトース及びラクトフェリン未添加)に比べてビフィドバクテリウム・ロンガム BB536の増殖傾向が認められた。

【0076】
【表4】
【0077】
<実施例4>ヒトミルクオリゴ糖及びラクトフェリンのビフィドバクテリウム・ブレーベの増殖活性への影響の検討
ビフィズス菌を、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274に替えた以外は実施例1と同様の操作を行い、増殖の評価を行った。
【0078】
結果を表5に示す。2’-フコシルラクトース及びラクトフェリン共存下で培養した場合は、コントロール(2’-フコシルラクトース及びラクトフェリン未添加)に比べてビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274の増殖傾向が認められた。
【0079】
【表5】
図1
図2
図3