(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20230112BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230112BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230112BHJP
C01B 32/21 20170101ALI20230112BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/36 E
H01M4/36 D
H01M4/36 C
C01B32/21
C01B33/02 Z
(21)【出願番号】P 2021531274
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(86)【国際出願番号】 KR2019010322
(87)【国際公開番号】W WO2020111446
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2018-0152144
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ヨン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 スン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】カン、 ユン テ
(72)【発明者】
【氏名】ウ、 ジュン ギュ
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-170246(JP,A)
【文献】特開2018-29049(JP,A)
【文献】特開2016-66585(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0072274(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0078720(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
H01M 4/38
H01M 4/36
C01B 32/21
C01B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系物質に複数のナノシリコン粒子が埋め込まれ、気孔を含む多孔性シリコン-炭素系複合体であって、
前記炭素系物質は、黒鉛粒子、易黒鉛化炭素(soft carbon)、
および難黒鉛化炭素(hard carbon)
を含み、
前記黒鉛粒子と、前記易黒鉛化炭素
との重量比は、
1:1~1:5である、リチウム二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記多孔性シリコン-炭素系複合体の比表面積は、20m
2/g以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記負極活物質の気孔度は、負極活物質の全体積を基準として3体積%以下である、請求項2に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記負極活物質の表面に炭素コーティング層がさらに位置し、
前記負極活物質100重量%に対して、前記炭素コーティング層の蒸着量は、3~15重量%である、請求項3に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記多孔性シリコン-炭素系複合体100重量%に対して、ナノシリコン:30~40重量%、および炭素系粒子:60~70重量%を含む、請求項4に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項6】
前記負極活物質のD50粒径は、8~15μmである、請求項5に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項7】
ナノシリコン粒子、黒鉛粒子、およびピッチ粒子を乾式ミリングで混合して多孔性シリコン-炭素系混合粉末を製造する段階;
前記多孔性シリコン-炭素系混合粉末とバインダーを蒸留水に投入して混合溶液を製造する段階;
前記混合溶液を噴霧乾燥して一次粒子を製造する段階;
前記一次粒子を金型に装入し加圧成形して二次粒子を製造する段階;
前記二次粒子を熱処理する段階;および
前記熱処理された二次粒子を粉砕および分級する段階を含み、
前記多孔性シリコン-炭素系混合粉末を製造する段階において、
前記多孔性シリコン-炭素系混合粉末100重量%に対して、前記ピッチ粒子は、30重量%以上含
み、前記ナノシリコン粒子、黒鉛粒子、およびピッチ粒子を乾式ミリングで混合して多孔性シリコン-炭素系混合粉末を製造する段階において、前記ピッチと前記黒鉛との重量比は、1:1~5:1である、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記ナノシリコン粒子、黒鉛粒子、およびピッチ粒子を乾式ミリングで混合して多孔性シリコン-炭素系混合粉末を製造する段階において、
前記ピッチの重量は、前記黒鉛の重量以上である、請求項7に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記ピッチは、石炭系ピッチおよび石油系ピッチの組み合わせを含み、
前記石炭系ピッチの重量は、前記石油系ピッチの重量以上である、請求項7
または8に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記ピッチ100重量%に対して、石炭系ピッチ:石油系ピッチの重量比は、5:5~9:1である、請求項
9に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記ピッチの軟化点は、250℃以上である、請求項7から
10のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記二次粒子を熱処理する段階は、
前記二次粒子をピッチの軟化点より50~350℃高い温度まで7℃/min以下の速度で昇温後に維持する1次等温段階;および
前記1次等温段階の後、700~1000℃の温度範囲まで7℃/min以下の速度で昇温後に維持する2次等温段階を含む、請求項
11に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記1次等温段階および前記2次等温段階は、1~4時間維持するものである、請求項
12に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記熱処理された二次粒子を粉砕および分級する段階の後、
前記二次粒子の表面に炭素コーティング層を形成する段階をさらに含み、
前記炭素コーティング層を形成する段階は、750~1,000℃で実施する、請求項7から
13のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記二次粒子を熱処理する段階の後、
前記二次粒子の炭化収率は、60~95%である、請求項7から
14のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記二次粒子を熱処理する段階によって、
前記ピッチは、易黒鉛化炭素(soft carbon)に炭化し、
前記バインダーは、難黒鉛化炭素(hard carbon)に炭化する、請求項7から
15のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項17】
正極;
負極;および
電解質を含み、
前記負極は、請求項1~6のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池(LIB)は、携帯用家電機器および携帯電話の高性能化に伴う要求容量の増加と環境問題が懸案になっている中、化石燃料を使用する内燃機関の代替手段として提案される電気自動車の駆動エネルギー源として最も有力で効率的なエネルギーシステムとして多くの研究と投資が進められている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、正極素材、負極素材、分離膜、電解質から構成され、電池の性能および挙動は構成要素相互間で密接な関連性を有する。そのうち、負極活物質は、LIBが開発された1991年から30年に近い期間の間、炭素同素体であるハード/ソフトカーボンあるいは黒鉛系の素材が用いられてきている。
【0004】
現在、リチウムイオン二次電池の負極素材として幅広く使用されている黒鉛は、低いworking voltage、安定した寿命特性、効率、価格と環境にやさしい面でメリットがある。ただし、最大372mAh/gに制限される理論容量の限界から、電気自動車の走行距離の確保および多様な応用分野で克服すべき問題点がある。
【0005】
黒鉛の容量を克服するために考えられる次世代物質としては、多様な元素の酸化物系(Fe3O4;924mAh/g、FeO;744mAh/g、Co3O4;890mAh/g、NiO;718mA/g、SnO2;781mAh/gなど)素材とSiに代表される4族元素(Si;4200mAh/g、Sn;994mAh/g、Ge;1600mAh/g)が挙げられ、このうち、Siは高容量電極開発のために最も活発に研究されている素材といえる。
【0006】
理論的に、シリコンベースの負極材は、商用化された黒鉛系負極材より10倍以上の高い容量を有することが知られている。しかし、シリコン負極材は、充電と放電を繰り返すにつれ、約4倍程度の体積変化を伴い、ひいては、粒子がつぶれたり、電極が剥がれたりすることによって電池性能を急激に減少させる問題が商品化のネックとされている。
【0007】
このとき、リチウムイオン挿入の際、電解質の塩と溶液がSi表面で固体状態の層(Solid Electrolyte interphase、SEI)の形成を考慮すれば、電極の収縮/膨張のため、形成されたSEI表面に亀裂が発生し、新たに露出した表面で再びSEIが形成される繰り返しの現象によってLi ionの拡散経路(diffusion path)の増加、電解液の消耗増加、伝導性の劣化、クーロン効率の悪化により、結局、電池が使用不可能になる結果をもたらすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実施形態は、一次粒子が有する比表面積を最小化してSEIの形成を抑制するように高密度化された二次粒子を含むSi系負極活物質を提供しようとするものである。具体的には、ピッチの炭化収率の変化を低減すべく、ピッチの重量範囲、二次粒子の昇温条件、石油系ピッチとの共炭化効果などを制御したリチウム二次電池用負極活物質を提供しようとするものである。
これによって、炭化収率が増加して比表面積の低減されたリチウム二次電池用負極活物質を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。ただし、これは例として提示されるものであり、これによって本発明は制限されず、本発明は後述する請求範囲の範疇によってのみ定義される。
【0010】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極活物質は、炭素系物質に複数のナノシリコン粒子が埋め込まれ、高圧に圧縮して比表面積を最小化した複合物質であって、前記炭素系物質は、黒鉛粒子、易黒鉛化炭素(soft carbon)、難黒鉛化炭素(hard carbon)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0011】
まず、前記多孔性シリコン-炭素系複合体は、炭素系物質に複数のナノシリコン粒子が埋め込まれ、高圧の成形工程によって気孔発現を最小化した形態である。
これは、前記複数のナノシリコン粒子の体積が膨張または収縮されても、炭素系物質によって埋め込まれているため、内部構成物質との電気的接触を維持できる形態に相当する。
【0012】
また、加圧工程によって高密度化された複合体は、充電時の体積膨張を制御し、放電時の短絡を最小化する役割を果たし、このような複合体は、投入されるシリコンの種類、量と黒鉛とのネットワークを維持させるバインダーピッチの種類および接着性能によって安定した電気化学的性能を実現することができる。
【0013】
前記ナノシリコン粒子は、シランガスに二酸化炭素レーザを照射してナノ水準に制御された粒子であってもよい。具体的には、アセチレンガスを高温で熱分解した後、前記ナノシリコン粒子の表面に蒸着させて、炭素コーティング層を有するナノシリコン粒子であってもよい。
【0014】
また、前記ナノシリコン粒子は、熱蒸着、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、電磁溶融、同時揮発法を含む乾式法で合成されて、別途の粉砕工程が不必要なナノシリコン粒子であってもよい。具体的には、前記ナノシリコン粒子の平均粒径(D50)は、30~100nmであってもよいし、好ましくは、40~50nmの範囲を有する。
【0015】
このとき、前記炭素系物質は、黒鉛粒子、易黒鉛化炭素(soft carbon)、難黒鉛化炭素(hard carbon)、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0016】
具体的には、黒鉛粒子を含む場合、黒鉛の優れた可逆性で長期寿命特性を補完することができる。また、前記黒鉛の粒径(D50)は、10~40μmであってもよい。
【0017】
前記易黒鉛化炭素(soft carbon)は、ピッチに起因するものであってもよい。これによって、ピッチを用いる場合、熱処理による炭素化後に構造安定性を強化させることができる。
前記難黒鉛化炭素(hard carbon)は、後述するリチウム二次電池用負極活物質の製造方法で使用したバインダーに起因するものであってもよい。
【0018】
具体的には、前記多孔性シリコン-炭素系複合体100重量%に対して、前記黒鉛粒子と、前記易黒鉛化炭素、前記難黒鉛化炭素、またはこれらの組み合わせとの重量比は、1:5~5:1であってもよい。
【0019】
より具体的には、炭素系物質の重量比が前記範囲であることによって、前記ナノシリコン-炭素系複合体の比表面積は、20m2/g以下であってもよい。具体的には、10m2/g以下であってもよい。さらに具体的には、5m2/g以下であってもよい。
さらに具体的には、ピッチに起因した易黒鉛化炭素を含む重量が前記のように黒鉛より多い場合、負極活物質の比表面積を低減することができる。
【0020】
前記多孔性シリコン-炭素系複合体100重量%に対して、ナノシリコン:30~40重量%、および炭素系粒子:60~70重量%を含むことができる。
ナノシリコンの含有量が前記範囲を満足する場合、優れた容量特性を確保すると同時に、本実施例の負極活物質を適用した電池に対して充放電の進行による電極の体積膨張を抑制できて、非常に有利である。
【0021】
また、前記ナノシリコン粒子の平均粒径(D50)は、30~100nmであってもよい。
このように、ナノサイズに微細化された平均粒径を有するシリコン粒子は、電池の充放電による体積膨張が最小化できる。
【0022】
前記多孔性シリコン-炭素系複合体の形成のために使用されるバインダー物質は、炭化して難黒鉛化炭素になる。このような難黒鉛化炭素は、シリコン-炭素系複合体の特性を低下させうることから、これを防止するために、熱処理による炭素化後の残存炭素量が5~10%の範囲である高分子物質が好適である。
【0023】
また、ピッチは、炭化して上述した易黒鉛化炭素(soft carbon)になる。ピッチは、前記シリコン/炭素複合構造を安定的に支持する粘結剤としても機能することができる。これによって、難黒鉛化炭素および易黒鉛化炭素が多孔性シリコン-炭素系複合体の気孔の間に分散して位置することによって、本発明の一実施形態による負極活物質を電池に適用する場合、充放電サイクルが繰り返されてもシリコン-炭素系複合体の多孔性構造が崩れるのを防止することができる。
【0024】
前記負極活物質の全体積(100体積%)に対して、気孔の体積は、3体積%以下であってもよい。具体的には、1~3体積であってもよい。
負極活物質の気孔度が前記範囲を満足する場合、シリコンの体積膨張が効果的に緩和できる。
【0025】
前記負極活物質のD50粒径は、8~15μmであってもよい。
負極活物質のD50粒径が前記範囲を超える場合、コーティング後の電極圧延時に圧延ロールによって粒子の損傷が発生し、これは、電池の効率、寿命および電極膨張率など全般的な性能の低下をもたらすことがある。
【0026】
また、前記負極活物質の表面に炭素コーティング層が位置することができる。
具体的には、前記負極活物質100重量%に対して、前記炭素コーティング層の蒸着量は、3~15重量%であってもよい。
前記のように負極活物質の表面に炭素コーティング層がさらに位置する場合、前記負極活物質の比表面積をさらに低減できる。
【0027】
本発明の他の実施形態によるリチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、ナノシリコン粒子、黒鉛粒子、およびピッチ粒子を乾式ミリングで混合して多孔性シリコン-炭素系混合粉末を製造する段階と、前記多孔性シリコン-炭素系混合粉末とバインダーを蒸留水に投入して混合溶液を製造する段階と、前記混合溶液を噴霧乾燥して一次粒子を製造する段階と、前記一次粒子を金型に装入し加圧成形して二次粒子を製造する段階と、前記二次粒子を熱処理する段階と、前記熱処理された二次粒子を粉砕および分級する段階とを含むことができる。
【0028】
まず、ナノシリコン粒子、黒鉛粒子、およびピッチ粒子を乾式ミリングで混合して多孔性シリコン-炭素系混合粉末を製造する段階を実施することができる。
【0029】
このとき、ナノシリコン粒子は、リチウム二次電池用負極活物質において前述した通りであるので、省略する。
【0030】
前記多孔性-炭素系混合粉末を製造する段階において、前記多孔性-炭素系混合粉末100重量%に対して、前記ピッチ粒子は、30重量%以上含むことができる。
具体的には、前記多孔性-炭素系混合粉末100重量%に対して、ナノシリコン粒子:30~40重量%、黒鉛粒子:10~30重量%、およびピッチ:30~50重量%を含むことができる。
このとき、前記ピッチの重量は、前記黒鉛の重量以上であってもよい。
具体的には、前記ピッチと前記黒鉛との重量比は、1:1~5:1であってもよい。
【0031】
前述した重量範囲でピッチと黒鉛を混合して混合粉末を用意する場合、追って熱処理する段階の後においても炭化収率が増加して、製造された負極活物質の比表面積を低減することができる。これによって、タップ密度が高い負極活物質を提供することができる。
【0032】
より具体的には、前記ピッチは、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
具体的には、前記石炭系ピッチに前記石油系ピッチを組み合わせる場合、前記石炭系ピッチの重量は、前記石油系ピッチの重量以上であってもよい。
より具体的には、前記ピッチ100重量%に対して、石炭系ピッチ:石油系ピッチの重量比は、5:5~9:1であってもよい。
前記のように石炭系ピッチを用いる場合、粘結性と収率が高い。石油系ピッチは、同じ軟化点の構造を基準として比較するとき、流動性が大きくて気孔内部への浸透性には優れることができるが、粘結性と収率の面で欠陥を生じうる可能性が大きい。よって、石炭系ピッチに石油系ピッチを前述した重量だけ混合して用いる場合、追って熱処理段階の後にも炭化収率に優れた負極活物質を得ることができる。
【0033】
また、前記ピッチは、固定炭素と粘結値(coking value)は、なるべく高いことが好ましい。ただし、これによって、前記ピッチの軟化点が過度に高くなると、ピッチの単価の上昇および工程性に不利に作用しかねず、適切な水準の軟化点と収率の選択が重要である。
【0034】
より具体的には、前記ピッチの固定炭素値は、70以上であってもよい。
ピッチの固定炭素値が増加するほど、自己伝導度が低いSiと導電性パス(path)を生成させて容量および効率の増大を誘導することができる。固定炭素値が前記範囲を満足する場合、本実施例の負極活物質の内部気孔を減少させることができる。これによって、電解液との副反応も減少させることが可能なため、電池の初期効率アップに寄与できる。
【0035】
前記ピッチのベータレジン(β-resin)値は、20以上であってもよい。
具体的には、前記ベータレジン(β-resin)値は、ベンゼン不溶量(benzene-insoluble)からキノリン容量を除いた値を意味する。このようなベータレジン値は、粘結性に比例する。本発明の一実施形態では、ベータレジン(β-resin)値が前記範囲を満足するピッチを含むため、前記多孔性シリコン-炭素系複合体の多孔性構造がより安定的に維持できる。これによって、優れた寿命特性および極板の膨張特性を有するリチウム二次電池を実現することができる。
【0036】
また、ピッチは、数μm水準に微細に粉砕して適用可能である。
【0037】
さらに、使用された黒鉛は、電池等級(grade)の純度を有し、数μm~数十μm水準の粒度に制御して一次粒子の製造に使用することができる。
【0038】
前記のように乾式ミリングにより黒鉛粒子、ピッチ粒子、およびナノシリコン粒子を混合した後、このような負極活物質を電池に適用するとき、サイクリングによる体積膨張および収縮現象にも前記ナノシリコン粒子が他の物質との電気的接触を維持できる。具体的には、黒鉛粒子およびピッチ粒子がナノシリコン粒子の膨張を制御することができる。
【0039】
また、前記ミリング(milling)工程は、メカノフュージョン、ボールミル(ball mill)工程を利用することができる。ただし、これに限定するものではなく、粉末との接触媒介による工程であればすべて可能である。
【0040】
以後、前記多孔性シリコン-炭素系混合粉末とバインダーを蒸留水に投入して混合溶液を製造する段階を実施することができる。
【0041】
このとき、前記バインダーは、有機バインダー、水系バインダー、またはこれらの組み合わせを含むことができる。具体的には、前記バインダーは、水系バインダーであってもよい。水系バインダーを用いる場合、設備投資が少なく工程がより簡便であり得る。
【0042】
具体的には、前記水系バインダーは、ポリアクリル酸(polyacrylic acid、PAA)、アラビアゴム(Gum Arabic)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリエチレングリコール(Poly ethylene glycohol、PEG)、プルロニック(登録商標)(Pluronic(R)、F-127)およびセルロース(cellulose)系化合物を含む群より選択される少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0043】
具体的には、本発明の一実施形態は、水系バインダーを用いることによって、水系スラリーを使用することができる。
このとき、前記多孔性シリコン-炭素系混合粉末100重量部に対して、バインダーは、15重量部以下で含むことができる。
具体的には、バインダーの含有量が前記範囲の場合、混合溶液で前記多孔性シリコン-炭素系混合粉末とピッチの分散を活性化することができる。
後述するが、前記バインダーは、熱処理段階の後、難黒鉛化炭素(hard carbon)になる。
【0044】
具体的には、前記混合粉末とバインダーを蒸留水に投入した後、1時間以上超音波によってよく分散したコロイド状の混合溶液を製造することができる。
【0045】
一方、前記混合溶液の溶媒として、蒸留水ではない、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトンなどのような溶媒を適用すれば、ナノシリコン粒子と黒鉛粒子、ピッチ粒子の間の結着力を低下させて、これを適用した電池の性能が低下しうる。
【0046】
前記混合溶液を噴霧乾燥して一次粒子を製造する段階を実施することができる。
具体的には、前記で製造された混合溶液をスプレー装置で噴霧乾燥することによって、球状の一次粒子を製造することができる。
【0047】
具体的には、噴霧乾燥工程を実施しない場合、ナノシリコン粒子と黒鉛粒子、およびピッチ粒子を均一に分散させるのに限界がありうる。
つまり、乾式ミリング(milling)工程だけでは、噴霧乾燥工程を実施するだけの分散効果を期待できないことがある。これによって、分散効果が低下する場合、電池に適用して電気化学性能の測定時に寿命劣化および膨張深化などの副作用が生じることがある。
【0048】
前記一次粒子を金型に装入し加圧成形して二次粒子を製造する段階を実施することができる。
前記のように加圧成形して二次粒子を製造する場合、高密度化を進行させることができる。
【0049】
具体的には、前記二次粒子を製造する段階は、ピッチの軟化点より50~100℃以上の温度範囲で実施することができる。
本発明の一実施形態で使用するピッチの軟化点は、250℃以上であってもよい。
よって、前記温度範囲で加圧成形を実施する場合、前述した多孔性シリコン-炭素系物質内に存在する気孔を最小化できる。
【0050】
具体的には、加圧成形時の温度範囲をピッチの軟化点より50~100℃以上に制御する場合、前記ピッチは、粘度を有し、多孔性シリコン-炭素系物質内に存在する気孔を満たすことができる。複合体内の気孔は、電池への適用時、電解液との副反応サイトを提供して電気化学性能の劣化をもたらすため、前記温度範囲に温度を制御して電気化学特性を向上させることができる。
【0051】
また、100~200トン(ton)の圧力を5分~1時間印加して二次粒子を製造することができる。前記範囲だけの圧力を印加して、ナノシリコン粒子と黒鉛粒子、およびピッチ粒子の間の結着力を追加的にさらに増大させることができる。
【0052】
前記二次粒子を熱処理する段階を実施することができる。
このとき、前記熱処理は、700~1000℃、不活性雰囲気で実施することができる。前記熱処理段階によって前記二次粒子が炭化できる。
【0053】
具体的には、前記条件で熱処理を実施する理由は、Siの酸化を防止し、ピッチ(pitch)に高温粘度特性を付与して結着力を増大させるためである。
【0054】
前述したが、前記段階によって、ピッチとバインダーは、それぞれ易黒鉛化炭素(soft carbon)および難黒鉛化炭素(hard carbon)に炭化できる。
【0055】
より具体的には、前記二次粒子を熱処理する段階は、前記二次粒子をピッチの軟化点より50~350℃高い温度まで7℃/min以下の速度で昇温後に維持する1次等温段階と、前記1次等温段階の後、700~1000℃の温度範囲まで7℃/min以下の速度で昇温後に維持する2次等温段階とを含むことができる。
【0056】
より具体的には、前記1次等温段階および前記2次等温段階での昇温速度は、5℃/min以下であってもよい。
【0057】
また、前記1次等温段階は、1~4時間維持できる。
一方、前記2次等温段階は、1~4時間維持できる。
【0058】
このとき、前述したが、本発明の一実施形態で使用するピッチの軟化点は、250℃以上であってもよい。
【0059】
より具体的には、1次等温段階でピッチの軟化点より50~350℃高い温度まで昇温後に一定時間維持することによって、高温で分解できる低分子量の揮発分をゆっくり除去することができる。あるいは、縮合反応を誘導する工程が負極活物質の炭化収率の向上に重要に作用できる。
【0060】
さらにより具体的には、1次等温段階で前記温度範囲までゆっくり昇温する場合、得られる負極活物質の炭化収率により優れることができる。
【0061】
また、1次等温段階の後、700~1000℃の温度範囲まで7℃/min以下の速度でゆっくり昇温後に維持する2次等温段階をさらに実施することによって、炭化収率をさらに向上させることができる。
【0062】
前記二次粒子を熱処理する段階の後、前記二次粒子の炭化収率は、60~95%であってもよい。具体的には、80~95%であってもよい。
【0063】
以下、本明細書において、「炭化収率」とは、熱処理後に得られた炭素の重量を熱処理前の炭素の含有量で割って百分率で換算した結果を意味する。
【0064】
より具体的には、一次粒子に含まれるナノシリコン粒子と黒鉛粒子は、熱処理後にも重量変化がほとんど観察されない。一方、ピッチは、熱処理によって急激な構造および形態の変化が発生しうる。これによって、収率変化が最も大きくなる。
【0065】
さらにより具体的には、熱処理によってピッチの重量変化が大きくなる場合に炭化収率が減少し、これによって、二次粒子内部の気孔が発現して比表面積(BET)が増加できる。
【0066】
よって、本発明の一実施形態による負極活物質は、熱処理後にも炭化収率に優れることができる。これは、前述した条件をすべて制御したことによる結果である。
【0067】
前記熱処理された二次粒子を粉砕および分級する段階を実施することができる。
具体的には、前記熱処理された二次粒子をジェットミル(Jet mill)、ピンミル(Pin mill)、またはこれらの組み合わせを用いて粉砕することができる。
【0068】
粉砕後にふるい分けを実施して平均粒径(D50)8~15μmの負極活物質を得ることができる。
【0069】
前記熱処理された二次粒子を粉砕および分級する段階の後、前記二次粒子の表面に炭素コーティング層を形成する段階をさらに実施することができる。
【0070】
具体的には、750~1000℃で30分~2時間、CVD蒸着法で炭素コーティング層を形成することができる。さらに具体的には、不活性気体および炭化水素ガスを用いて、CVD蒸着法で炭素コーティング層を形成することができる。具体的には、温度が高すぎる場合、Si酸化の危険があり、温度が低すぎる場合、コーティング層の形成が容易でないことがある。
【0071】
また、アルゴンガスおよび炭化水素ガスを含む雰囲気で、CVD蒸着法で二次粒子の表面に炭素コーティング層を形成することができる。
【0072】
さらにより具体的には、前記段階によって二次粒子の表面に形成された炭素コーティング層の蒸着量は、前記二次粒子の全100重量%に対して3~15重量%であってもよい。前述した条件で実施してこそ、前記蒸着量の炭素コーティング層が形成できる。
【0073】
また、前記コーティング層が形成された二次粒子は、比表面積をさらに低減できる。
【0074】
前述した負極活物質は、リチウム二次電池の負極に有用に使用できる。
つまり、一実施形態によるリチウム二次電池は、正極と共に、前述した負極活物質を含む負極および電解質を含む。
【0075】
一実施形態によるリチウム二次電池は、正極と、負極と、前記正極および負極の間に配置されたセパレータとを含む電極組立体を含むことができる。このような電極組立体は、ワインディングされるか、折り畳まれてケースに収容されることによってリチウム二次電池を構成する。
【0076】
このとき、ケースは、円筒形、角型、薄膜型などの形態を有することができ、適用しようとする装置の種類によって適切に変形可能である。
【0077】
前記負極は、負極活物質、バインダー、および選択的に導電材を混合して負極活物質層形成用組成物を製造した後、これを負極集電体に塗布して製造できる。
【0078】
前記負極集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、導電性金属がコーティングされたポリマー基材、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0079】
前記負極活物質としては、一実施例で説明したように、炭素系物質に複数のナノシリコン粒子が埋め込まれ、多数の気孔を含む多孔性シリコン-炭素系複合体を含むことができる。各構成に関する具体的な内容は前述したものと同一であることから、ここでは省略する。
【0080】
前記バインダーとしては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース/スチレン-ブタジエンラバー、ヒドロキシプロピレンセルロース、ジアセチレンセルロース、ポリビニルクロライド、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどを使用することができるが、これに限定されるものではない。前記バインダーは、前記負極活物質層形成用組成物の総量に対して1重量%~30重量%混合できる。
【0081】
前記導電材としては、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用できる。前記導電材は、前記負極活物質層形成用組成物の総量に対して0.1重量%~30重量%混合できる。
【0082】
次に、前記正極は、正極活物質、バインダー、および選択的に導電材を混合して正極活物質層形成用組成物を製造した後、この組成物を正極集電体に塗布して製造することができる。このとき、バインダーおよび導電材は、前述した負極の場合と同一に使用される。
【0083】
前記正極集電体は、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものを使用することができる。
【0084】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的な挿入および脱離が可能な化合物(リチウム化挿入化合物)を使用することができる。
【0085】
前記正極活物質は、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケルまたはこれらの組み合わせの金属と、リチウムとの複合酸化物のうちの1種以上のものを使用することができ、その具体例としては、下記の化学式のうちのいずれか1つで表現される化合物を使用することができる。LiaA1-bRbD2(上記式中、0.90≦a≦1.8および0≦b≦0.5である);LiaE1-bRbO2-cDc(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、および0≦c≦0.05である);LiE2-bRbO4-cDc(上記式中、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobRcDα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobRcO2-αZα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNi1-b-cCobRcO2-αZ2(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbRcDα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbRcO2-αZα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbRcO2-αZ2(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNibEcGdO2(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5および0.001≦d≦0.1である。);LiaNibCocMndGeO2(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5および0.001≦e≦0.1である。);LiaNiGbO2(上記式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiaCoGbO2(上記式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiaMnGbO2(上記式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiaMn2GbO4(上記式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiTO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);およびLiFePO4。
【0086】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mnまたはこれらの組み合わせであり;Rは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組み合わせであり;Dは、O、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;Eは、Co、Mnまたはこれらの組み合わせであり;Zは、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vまたはこれらの組み合わせであり;Qは、Ti、Mo、Mnまたはこれらの組み合わせであり;Tは、Cr、V、Fe、Sc、Yまたはこれらの組み合わせであり;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cuまたはこれらの組み合わせである。
【0087】
前記リチウム二次電池に充填される電解質としては、非水性電解質または公知の固体電解質などを使用することができ、リチウム塩が溶解したものを使用することができる。
【0088】
前記リチウム塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiC4F9SO3、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCl、およびLiIからなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0089】
前記非水性電解質の溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類などを使用することができるが、これに限定されるものではない。これらを単独または複数組み合わせて使用することができる。特に、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を好ましく使用することができる。
【0090】
また、電解質として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどの重合体電解質に電解液を含浸したゲル状重合体電解質や、LiI、Li3Nなどの無機固体電解質が可能である。
【0091】
前記セパレータは、耐薬品性および疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維、ポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用できる。電解液としてポリマーなどの固体電解液が使用される場合、固体電解液が分離膜を兼ねることもできる。
【発明の効果】
【0092】
一次粒子内にはピッチに起因したハードカーボンが気孔と共によく分散したSiナノ粒子を含み、充/放電時の膨張/収縮にもカーボン物質との短絡が発生しないように緻密に取り込む構造を有することができる。さらに、ピッチは、黒鉛粒子との結着力を維持させて黒鉛粒子と電気的ネットワークを維持できる。
【0093】
また、前記一次粒子を加圧して粒子内の気孔度を低減し、ナノシリコン粒子-ピッチ粒子-黒鉛粒子の3成分が強い結束力で繰り返された充放電においても短絡を最小化できる。このとき、比表面積が最小化されることによってSEIによる容量損失も最小化でき、新たに露出する表面積を最小化して持続的なSEIの増加を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】ピッチの含有量と比表面積(BET)との間の相関関係をグラフに示したものである。
【
図2】比較例A1および実施例A1による一次粒子の内部断面構造を示したものである。
【
図3】実施例B1~B3と比較例B1~B2において二次粒子の熱処理段階での熱処理条件による比表面積の変化をグラフに示したものである。
【
図4】石炭系ピッチの含有量増加に応じた熱処理後の炭化収率をグラフに示したものである。
【
図5】実施例A1と比較例A1によるリチウム二次電池の充放電回数に応じたクーロン効率(a)と、容量維持率(b)を測定した結果を示したものである。
【
図6】実施例A1(a)と比較例A1(b)によるリチウム二次電池の1
stサイクル時の充放電曲線を示したものである。
【
図7】実施例C1~C2と比較例C1によるリチウム二次電池の吸脱着曲線(a)と、DFT法によって検討されたポア分布曲線(b)を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0095】
以下、本発明の具体的な実施例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の具体的な一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0096】
「実施例A:ピッチの含有量に応じた特性の比較」
(実施例A1)
(1)負極活物質の製造
ナノシリコン粒子、黒鉛粒子、およびピッチ粒子を乾式条件で1時間ミリング(milling)して混合粉末を製造した。このとき、前記混合粉末におけるナノシリコン粒子:黒鉛粒子:ピッチ粒子の重量比は4:1:5とした。
このとき、使用したピッチは石炭系ピッチであり、前記ピッチの軟化点は250℃であった。
【0097】
以後、水系バインダー(Gum Arabic)と前記混合粉末を蒸留水に投入して、magnetic stirrerで水とよく分散する状態を確認した後、混合タイプの超音波を用いて1時間よく分散できるように混合溶液を製造した。
このとき、前記混合溶液100重量%に含まれる前記混合粉末の濃度は3~20%であった。
【0098】
以後、前記混合溶液を50mL/minの速度で投入しながら、atomizer20,000r.p.mで噴霧乾燥して一次粒子を製造した。
以後、前記一次粒子粉末を金型に装入し、一軸加圧成形機を用いて二次粒子を製造した。具体的には、ピッチの軟化点対比50℃高い温度で、16トン(ton)の圧力で20分間加圧した。成形後に空冷を実施した。
以後、前記二次粒子を不活性雰囲気で熱処理した後、常温まで自然冷却した。このとき、前記熱処理段階は、300℃で2時間維持した後、900℃で1時間維持して実施した。
冷却後、ジェットミル(Jet mill)を用いて前記二次粒子の粒径をD50ベースで8~15μmの範囲に粉砕した。粉砕後、#635mesh(20μm)のふるい分けにより分級して、最終負極活物質を得た。
【0099】
(2)リチウム二次電池(Half-cell)の製造
前記(1)の負極活物質、バインダー(PAA)および導電材(Super P)を負極活物質:バインダー:導電材の重量比が75:24:01となるように用意した後、蒸留水に投入した後に均一に混合してスラリーを製造した。
前記スラリーを銅(Cu)集電体に均一に塗布した後、ロールプレスで圧着した後に乾燥して負極を製造した。具体的には、Loading量4g/cm2、電極密度が1.0~1.2g/ccを有するようにした。
対電極としてはリチウム金属(Li-metal)を用い、電解液としてはエチレンカーボネート(EC、Ethylene Carbonate):ジメチルカーボネート(DMC、Dimethyl Carbonate)の体積比率が1:1の混合溶媒に1モルのLiPF6溶液を溶解させたものを用いた。
前記負極、リチウム金属および電解液を用いて、通常の製造方法によりCR2032半電池(half coin cell)を作製した。
【0100】
(実施例A2)
(1)負極活物質の製造
実施例A1の(1)と比較して、混合粉末におけるナノシリコン粒子:黒鉛粒子:ピッチ粒子の重量比を4:2:4とした以外は、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
(実施例A3)
【0101】
(1)負極活物質の製造
実施例A1の(1)と比較して、混合粉末におけるナノシリコン粒子:黒鉛粒子:ピッチ粒子の重量比を4:3:3とした以外は、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0102】
(比較例A1)
(1)負極活物質の製造
実施例A1の(1)と比較して、混合粉末におけるナノシリコン粒子:黒鉛粒子:ピッチ粒子の重量比を4:5:1とした以外は、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0103】
(比較例A2)
(1)負極活物質の製造
実施例A1の(1)と比較して、混合粉末におけるナノシリコン粒子:黒鉛粒子:ピッチ粒子の重量比を4:4:2とした以外は、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
以後、前記実施例Aと比較例Aにおいてピッチの含有量に応じた比表面積を測定して、下記表1および2に開示した。
気孔度、比表面積およびタップ密度の測定方法は、下記の通りである。
【0104】
(TPV(Total pore volume)、Vt-plot、fmicro、APDの測定方法)
全細孔容積(TPV)は、相対圧0.95でsingle pointで測定された相対圧で計算できる。
Vt-plotは、t-plotによって得られたマイクロ気孔の容積である。
Fmicroは、前記Vt-plotとTPVの分率で計算(=V(t-plot)/TPV)したものである。
APD(平均細孔径)は、TPV(全細孔容積)つまり、細孔の形態がシリンダ形態を仮定した時の、表面積と容積との間の相関式で計算される。
【0105】
(比表面積の測定)
BET法(Surface area and Porosity analyzer)(Micromeritics、ASAP2020)を用いて比表面積を測定した。
【0106】
(タップ密度の測定)
ASTM-B527に基づいて、50mLの容器に10gの粉末を入れた後、3000cycle@284cycle/minでタッピング(tapping)させて充填密度を測定した。
【0107】
(炭化収率の測定)
炭化収率は、TG-DTAを用いて測定され、昇温プロファイルに応じた収率を900℃で測定した。昇温速度、昇温時のstep温度、step維持時間、最終温度における維持時間に応じた差が検討された。
【0108】
【0109】
【0110】
表1に開示されたところから、実施例および比較例による一次粒子と二次粒子の気孔構造が分かる。
具体的には、ピッチより黒鉛がより多い比較例の場合、二次粒子の製造後にむしろ比表面積が増加する傾向を示すことが分かる。
これは、組成比に応じてピッチが多い場合、塑性(plasticity)が増加すると理解することができ、黒鉛が支配的に存在する場合は、弾性が支配的に作用して、圧縮時の圧力に復原力が作用する現象によって比表面積が増加することが考えられる。
もちろん、黒鉛の粒子サイズに応じて圧縮時の粒子接触は異なる挙動が予測されるが、高密度の圧縮構造を有するためには、ピッチの相対的含有量が支配的に依存することを確認できる。
【0111】
表2は、実施例および比較例により製造された負極活物質の炭化収率とTap密度などを開示したものである。
前記表2に開示したように、ピッチの含有量が多くなるほど、炭化収率は減少し、Tap密度は増加する傾向を確認できる。
これは、後述する
図1にて、ピッチの含有量に応じて比表面積が減少する結果と相反することが分かる。
【0112】
また、これは
図1にも示されている。
図1は、ピッチの含有量と比表面積(BET)との間の相関関係をグラフに示したものである。
一次粒子と定義した複合球体(sphere)と成形して製造した二次粒子(After press)は、全体的にピッチの増加に応じて比表面積が減少する傾向を示す。
しかし、減少の傾向とプレス前後の変化をみると、一次粒子の場合、ピッチ投入量30%以上で比表面積の減少が飽和する傾向を示すが、二次粒子では、ピッチ量が増加するほど、直線的に比表面積が減少する傾向を示す。
具体的には、ピッチが少なく黒鉛が多い場合(比較例1)、一次粒子のプレス後にむしろ比表面積が増加する傾向を示すことが分かる。ただし、ピッチの重量が30%以上の時から、プレス後に比表面積の減少効果が顕著になる。
前述したが、ピッチが多い場合、塑性(plasticity)が増加するからである。具体的には、黒鉛が支配的に存在する場合は、弾性が支配的に作用して、圧縮時の圧力に復原力が作用する現象によって比表面積が増加しうる。これによって、高密度の圧縮構造を有するためには、ピッチの相対的含有量が黒鉛粒子より多いか、等しい場合、これによる比表面積の低減効果が支配的であることが分かる。
【0113】
図2は、比較例A1および実施例A1による一次粒子の内部断面構造を示したものである。
図2に示されているように、黒鉛が主導的に存在する比較例A1は、相対的に組成成分間の結着が完全になされず、気孔(void)のような空間が多く観察される。
しかし、先にピッチの含有量が増加するに伴い、粒子間空間である比表面積が減少する傾向を確認した。
具体的には、
図2の実施例A1のように、50重量%のピッチが投入された場合、黒鉛とは区分されるピッチの凝集された領域が増加する現象が見られる。
つまり、多孔性シリコン-炭素系複合体の断面構造に基づいて均一な分散および粒子間の接触性を増加させるためには、前記組成の最適比を導出することが重要に考えられなければならないことが分かる。
【0114】
図5は、実施例A1と比較例A1によるリチウム二次電池の充放電回数に応じたクーロン効率(a)と、容量維持率(b)を測定した結果を示したものである。
充放電回数に応じたクーロン効率と容量維持率の測定方法は、下記の通りである。
【0115】
(クーロン効率および容量維持率の測定)
前述した実施例および比較例においてそれぞれ最終的に得られた活物質を半電池に適用して試験した。
具体的には、0.5C、0.005V、0.005_C cut-off充電および0.5C、1.5V cut-off放電の条件で電池を駆動し、クーロン効率および容量維持率を測定して、
図6に示した。
具体的には、
図5は、ピッチの投入量に応じてリチウム二次電池の電気化学特性の変化をグラフに示した。さらに具体的には、
図5の(a)に示されているように、ピッチの含有量が10重量%と少ない比較例A1の場合、実施例A1に比べて20~30回の充放電区間で効率が急激に減少することを確認できる。
このように、ピッチの含有量が少なすぎる場合、膨張と収縮による電気的接触経路が途切れる部分が多くなるにつれ、効率が急激に減少するからである。
このような電気的接触経路が途切れる現象は、
図5の(b)を通しても確認できる。具体的には、
図5の(b)に示されているように、比較例A1は、充放電20~30回の区間で電気的接触経路が途切れる部分が多くなるにつれ、容量維持率も急減することが分かる。
【0116】
図6は、実施例A1(a)と比較例A1(b)によるリチウム二次電池の1
stサイクル時の充放電曲線を示したものである。
図6に示されているように、実施例A1の場合、初期効率が86.5%であり、比較例A1の初期効率は86.3%と類似の傾向性を有するが、放電初期プロファイルの傾きが異なり、放電時の抵抗が黒鉛を多く含む複合材においてより大きい値を有することが分かる。
これも、実施例A1(a)と比較例A1(b)におけるピッチの含有量に応じた差による。
【0117】
「実施例B:二次粒子の熱処理段階の条件に応じた特性の比較」
(実施例B1)
(1)負極活物質の製造
実施例A1の(1)と比較して、混合粉末におけるナノシリコン粒子:黒鉛粒子:ピッチ粒子の重量比を3:3:4とした。このとき、使用したピッチは石炭系ピッチであり、前記ピッチの軟化点は250℃であった。
以後、二次粒子を熱処理する段階において、600℃まで5℃/minの速度で昇温後に1時間維持する1次等温段階と、以後、900℃まで5℃/minの速度で昇温後に1時間維持する2次等温段階を実施した以外は、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0118】
(実施例B2)
(1)負極活物質の製造
実施例B1の(1)と比較して、使用したピッチは石炭系ピッチであり、前記ピッチの軟化点は250℃であった。
以後、二次粒子を熱処理する段階において、400℃まで5℃/minの速度で昇温後に2時間維持する1次等温段階と、以後、900℃まで5℃/minの速度で昇温後に1時間維持する2次等温段階を実施した以外は、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0119】
(比較例B1)
(1)負極活物質の製造
実施例B1の(1)と比較して、二次粒子を熱処理する段階において、600℃まで10℃/minの速度で昇温後に2時間維持する1次等温段階と、以後、900℃まで10℃/minの速度で昇温後に1時間維持する2次等温段階を実施した以外は、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0120】
(比較例B2)
(1)負極活物質の製造
実施例B1の(1)と比較して、二次粒子を熱処理する段階において、400℃まで10℃/minの速度で昇温後に1時間維持する1次等温段階と、以後、900℃まで10℃/minの速度で昇温後に1時間維持する2次等温段階を実施した以外は、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0121】
(比較例B3)
(1)負極活物質の製造
実施例B1の(1)と比較して、二次粒子を熱処理する段階において、等温段階なしに、900℃まで10℃/minの速度で昇温して熱処理を実施した以外は、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
以後、前記実施例B1~B2と比較例B1~B3の炭化収率を測定して、下記表3に開示した。
比表面積の測定方法は前述したものと同一であり、炭化収率は下記の方法で測定した。
【0122】
【0123】
具体的には、前記実施例B1~B2と比較例B1~B3により製造された負極活物質の比表面積を測定して、表3と
図3に示した。
【0124】
図3は、実施例B1~B2と比較例B1~B3において二次粒子の熱処理段階での熱処理条件に応じた比表面積の変化をグラフに示したものである。
表3と
図3に示されているように、700℃まで等温段階なしに熱処理を実施した比較例B3の場合、比表面積は高く炭化収率は非常に低い結果を確認できる。一方、実施例のように等温段階を実施した場合、比表面積が低いながらも炭化収率に優れた結果であることが分かる。
【0125】
これから、軟化点近傍でピッチの熱分解を最大限に徐々に発生するように等温段階を実施した実施例のような場合と、一定の速度で目標温度まで直線的に昇温させたサンプル(比較例B3)との間の明確な傾向性の差が分かる。
一方、等温段階を実施した場合にも、温度と速度に応じてその結果に差が生じることが分かる。
より具体的には、ピッチの軟化点近傍の温度まで昇温速度が遅いほど、炭化収率に優れた結果であることが分かる。具体的には、1次等温段階の温度まで5℃/minの速度で昇温する実施例B1とB2の炭化収率が、比較例B1とB2の炭化収率より高かった。
昇温速度が速い比較例B1とB2の中でも、1次等温段階の温度が軟化点付近で維持される比較例B2の炭化収率がより優れていることが分かる。具体的には、同一の昇温速度の条件では、熱処理時に分解しうる低分子量の揮発成分(volatile)を長時間除去した場合の方が、より高い収率を有するのである。
つまり、二次粒子を熱処理する条件に応じて負極活物質の最終炭化収率が密接に関連することが分かる。
【0126】
「実施例C:Si-C複合体の表面における炭素蒸着量に応じた特性の比較」
(実施例C1)
(1)負極活物質の製造
実施例A1の(1)により製造された負極活物質をhorizontal furnaceに投入し、760℃で1時間アルゴン(Ar)ガス200sccmとCH4 400sccmを投入してCVD蒸着実験を実施した。前記2件の実施の件によって得られた蒸着量は約2%前後の値を有する。よって、前記実施例A1の(1)により製造された負極活物質の表面に炭素成分を蒸着した以外は、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例A1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0127】
(実施例C2)
(1)負極活物質の製造
実施例A1の(1)により製造された負極活物質をhorizontal furnaceに投入し、1,000℃で1時間アルゴン(Ar)ガス200sccmとCH4 400sccmを投入してCVD蒸着実験を実施した。前記2件の実施の件によって得られた蒸着量は約7%前後の値を有する。よって、前記実施例A1の(1)により製造された負極活物質の表面に炭素成分を蒸着した以外は、同様の方法で負極活物質を製造した。
【0128】
(比較例C1)
(1)負極活物質の製造
比較例A1の(1)により製造された負極活物質をhorizontal furnaceに投入し、760℃で1時間アルゴン(Ar)ガス200sccmとCH
4 400sccmを投入してCVD蒸着実験を実施した。前記2件の実施の件によって得られた蒸着量は約7%前後の値を有する。よって、前記実施例A1の(1)により製造された負極活物質の表面に炭素成分を蒸着した以外は、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例C1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
前記実施例と比較例によるリチウム二次電池の比表面積と気孔を測定して、下記表4と
図7に開示した。
【0129】
【0130】
表4に開示したように、CH4ガスを投入して無定形炭素層をさらに形成させて得られた実施例C1、C2と比較例C1の比表面積と気孔の変化が分かる。
【0131】
前記特性は
図7にも示されている。
図7は、実施例C1~C2と比較例C1によるリチウム二次電池の吸脱着曲線(a)と、DFT法によって検討されたポア分布曲線(b)を示したものである。
つまり、表4および
図7に示されたところから、CVD蒸着段階での温度に応じて炭素層の蒸着量が変化することが分かる。具体的には、760℃で蒸着実験を実施した結果、2%の蒸着量が形成される一方、1000℃では7%の蒸着量を確認できる。これによって、CVD蒸着のための適切な温度区間の設定が重要であることが分かる。
具体的には、BET法で検討された比表面積は、蒸着量の増加に伴って減少する結果を示す。これは、外部気孔および欠陥構造がCVD蒸着時にコーティングおよび充填されるからである。
また、
図7に示されているように、DFT法による気孔構造の変化を検討すると、蒸着量が増加するほど、2nm以下の微細孔が顕著に減少しかつ、蒸着量2%ではメソ領域の気孔もやや減少後、7%の蒸着量では再び増加する傾向を示す。
これによって、マイクロ領域の気孔が存在するほど、BET値は増加しやすく、CVD蒸着はBETの減少に効果的であることを確認できる。
【0132】
(実験例:石油系ピッチと石炭系ピッチの混合による粉体の共炭化特性の比較)
具体的には、ピッチのみで粉体を製造して熱処理による共炭化挙動を確認するために、下記の実験例を開示した。つまり、下記表5に開示されたように、ピッチ1種あるいはピッチを混合して粉体を製造した後、TG/DTAを用いて重量変化を確認した。
【0133】
(収率変化の測定)
下記表5にて、収率変化は最終ターゲット温度の900℃で維持時間に応じた収率変化を意味する。具体的には、900℃等温処理およびピッチの組成に応じてそれぞれ異なる収率変化を示す。
【0134】
【0135】
表5に開示したように、石油系または石炭系ピッチを単独で使用する場合に比べて、混合して使用する実施例の最終炭化収率がより高いことを確認できる。
また、ピッチを単独で使用する場合でも、石炭系ピッチのみ使用する場合には、最終収率が他の実施例と類似しているが、石油系ピッチのみ使用する比較例C1の場合には、最終収率が劣位であることが分かる。
【0136】
これは、
図4を通しても確認できる。
図4は、石炭系ピッチの含有量増加に応じた熱処理後の炭化収率をグラフに示したものである。
具体的には、
図4および表5に開示されたように、ピッチを単独で使用する場合より、混合して用いる場合の炭化収率がより優れていて、比表面積が少ないことが分かる。したがって、石炭系ピッチと石油系ピッチの共炭化による収率改善効果を確認できる。
それだけでなく、
図4に示されているように、石炭系50%以上の分率では、2次式の傾向線とよく一致して、R2=0.9937水準の適合度を確認した。これは、理論的な2次方程式の傾向線との一致度を意味し、1に近いほど、理論的傾向と一致することを意味する。
【0137】
本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。