(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】経営情報システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20230101AFI20230112BHJP
【FI】
G06Q40/02
(21)【出願番号】P 2022508860
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2021037188
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】397077955
【氏名又は名称】株式会社三井住友銀行
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内川 淳
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 清徳
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特許第6353612(JP,B1)
【文献】特開2012-243235(JP,A)
【文献】新井 雅之,影響確認プロセスの定型化によるテスト品質向上の取組み[online],情報処理学会 デジタルプラクティス Vol.11 No.3 ,情報処理学会,URL<https://www.ipsj.or.jp/dp/contents/ publication/43/S1103-U01.html>, [検索日:2021年11月2日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定されたデータマートの情報を含む検索対象データを受信したことに応答して、第4の定義情報に基づいて、前記検索対象データに関連付けられる基本計数データを識別し、
第3の定義情報に基づいて、前記識別された基本計数データに関連付けられる標準化データを識別し、
第2の定義情報に基づいて、前記識別された標準化データに関連付けられる基礎データを識別し、
第1の定義情報に基づいて、前記識別された基礎データに関連付けられる外部システムの素データを識別し、
識別された前記素データに関連付けられる第2の基礎データ、前記第2の基礎データに関連付けられる第2の標準化データ、前記第2の標準化データに関連付けられる第2の基本計数データ、および前記第2の基本計数データに関連付けられる第2のデータマートを識別し、
トレース情報を生成し、
前記トレース情報に基づいて、前記素データ、前記第2の基礎データ、前記第2の標準化データ、前記第2の基本計数データ、および前記第2のデータマートの関連付けを示すグラフィック情報を生成する
ように構成され
、
前記グラフィック情報は、2種類の関連付け情報を含み、
第1の関連付け情報は、前記検索対象データとして指定された前記データマートを出発点として示し、第2の関連付け情報は、前記識別された素データを出発点として示す、
経営情報システム。
【請求項2】
前記トレース情報は、前記第1の定義情報、前記第2の定義情報、前記第3の定義情報および前記第4の定義情報、並びに前記素データ、前記第2の基礎データ、前記第2の標準化データ、前記第2の基本計数データ、および前記第2のデータマートの情報に基づいて、生成される、請求項1の経営情報システム。
【請求項3】
前記第2の関連付け情報において前記出発点として示された前記識別された素データに関連付けられる組織情報、業務処理統制情報、データ内容、および/または送信元情報を提供するようにさらに構成された、請求項
1の経営情報システム。
【請求項4】
前記第2の関連付け情報のうちの一つが選択されたことに応答して、対応する定義情報を表示するようにさらに構成された、請求項
1の経営情報システム。
【請求項5】
前記グラフィック情報をユーザ端末に表示するようにさらに構成された、請求項1の経営情報システム。
【請求項6】
指定されたデータマートの指定された第1のデータ項目を含む検索対象データを受信したことに応答して、第4の定義情報に基づいて、前記検索対象データに関連付けられる基本計数データおよび対応する第2のデータ項目を識別し、
第3の定義情報に基づいて、前記識別された基本計数データおよび対応する第2のデータ項目に関連付けられる標準化データおよび対応する体系化コードを識別し、
第2の定義情報に基づいて、前記識別された標準化データおよび対応する体系化コードに関連付けられる基礎データおよび対応する第3のデータ項目を識別し、
第1の定義情報に基づいて、前記識別された基礎データに関連付けられる外部システムの素データを識別し、
識別された前記素データに関連付けられる第2の基礎データ、前記第2の基礎データに関連付けられる第2の標準化データ、前記第2の標準化データに関連付けられる第2の基本計数データ、および前記第2の基本計数データに関連付けられる第2のデータマートを識別し、
トレース情報を生成し、
前記トレース情報に基づいて、前記素データ、前記第2の基礎データ、前記第2の標準化データ、前記第2の基本計数データ、および前記第2のデータマートの関連付けを示すグラフィック情報を生成する
ように構成され
、
前記グラフィック情報は、2種類の関連付け情報を含み、
第1の関連付け情報は、前記検索対象データとして指定された前記データマートを出発点として示し、第2の関連付け情報は、前記識別された素データを出発点として示す、
経営情報システム。
【請求項7】
素データが選択されたことを示す信号をユーザ端末から受信し、
第1の定義情報に基づいて、前記選択された素データに関連付けられる基礎データを識別し、
第2の定義情報に基づいて、前記識別された基礎データに関連付けられる標準化データを識別し、
第3の定義情報に基づいて、前記識別された標準化データに関連付けられる基本計数データを識別し、
第4の定義情報に基づいて、前記識別された基本計数データに関連付けられるデータマートを識別し、
前記選択された素データと、前記識別された基礎データと、前記識別された標準化データと、前記識別された基本計数データと、前記識別されたデータマートとを関連付けて、グラフィック情報を生成し、
前記グラフィック情報をユーザ端末に提供する
ように構成され
、
前記グラフィック情報は、2種類の関連付け情報を含み、
第1の関連付け情報は、選択された前記素データを出発点として示し、第2の関連付け情報は、前記識別されたデータマートを出発点として示す、経営情報システム。
【請求項8】
基礎データが選択されたことを示す信号をユーザ端末から受信し、
第2の定義情報に基づいて、前記選択された基礎データに関連付けられる標準化データを識別し、
第3の定義情報に基づいて、前記識別された標準化データに関連付けられる基本計数データを識別し、
第4の定義情報に基づいて、前記識別された基本計数データに関連付けられるデータマートを識別し、
前記選択された基礎データと、前記識別された標準化データと、前記識別された基本計数データと、前記識別されたデータマートとを関連付けて、グラフィック情報を生成し、
前記グラフィック情報をユーザ端末に提供する
ように構成され
、
前記グラフィック情報は、2種類の関連付け情報を含み、
第1の関連付け情報は、選択された前記基礎データを出発点として示し、第2の関連付け情報は、前記識別されたデータマートを出発点として示す、経営情報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経営情報システムに関する。より詳細に言えば、本発明は、あるデータマートのあるデータ項目に関連付けられる素データを識別し、識別された素データの影響範囲をトレースする経営情報システムに関する。また、本発明は、指定された素データまたは基礎データに関連付けられるデータマートを識別する経営情報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
経営情報システム(MIS:Management Information System)は、企業およびそのグループ会社のシステムに格納されている様々な情報を集計し、所定の情報処理を行い、処理結果を出力することにより、経営者や管理者の意思決定に役立てる計数を生成するシステムである(特許文献1)。MISは、企業およびそのグループ会社の各システムから素データを受信し、受信した素データに基づいて基礎データを生成した上で、貸借対照表(B/S)および損益計算書(P/L)の少なくとも一つに関連づけられる標準化データを生成する。MISは、標準化データに基づいて基本計数データを生成する。MISは、ユーザの要求に応答して、基本計数データに関連付けられるデータマートを提供する。基本計数データおよびデータマートは、企業およびそのグループ会社の経営のために利用される計数であり、かつ財務会計に関するデータおよび/または管理会計に関するデータを含む。
【0003】
会社には、販売部門、製造部門、および管理部門など、様々な組織がある。各部門には、経営環境および業務ニーズに沿ったデータマートが基本計数データに基づいて生成され、提供される。経営環境および業務ニーズが変化するにつれ、データマートの数は多くなり、データマートを生成する処理の数も増えていく。このため、システム改修が計画される場合、システム改修の影響範囲を正確に把握することは非常に困難である。より詳細に言えば、改修されることになるシステムによって使用されている基本計数データおよびデータマートがどの基礎データに基づいて生成されており、当該基礎データがどのシステムの素データに基づいているのかを特定すること、および特定された素データに関連付けられる基礎データを特定し、特定した基礎データに基づいて生成されている基本計数データおよびデータマートを特定することは非常に困難である。特定できない素データ、基礎データ、基本計数データ、およびデータマートが一つでも存在すると、システム改修の影響範囲が明確にならず、手作業でこれらのシステムおよび加工処理を特定・調査することから多くの時間が必要である。また、調査担当者の記憶や更新されていない文書に依存するため、網羅性の保証が困難となる。さらに、エンドユーザへの改修連絡の疎漏から、エンドユーザの意図しない不整合が発生する懸念があり、誤報告、誤利用、システム障害が生じる可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は、あるデータマートのあるデータ項目に関連付けられる素データを識別し、識別された素データの影響範囲をトレースする、トレーサビリティ機能を有する経営情報システムを提供する。また、本発明は、指定された素データまたは基礎データに関連付けられるデータマートを識別する、トレーサビリティ機能を有する経営情報システムを提供する。
【0006】
本発明の一態様としての経営情報システムは、指定されたデータマートの情報を含む検索対象データを受信したことに応答して、第4の定義情報に基づいて、前記検索対象データに関連付けられる基本計数データを識別し、第3の定義情報に基づいて、前記識別された基本計数データに関連付けられる標準化データを識別し、第2の定義情報に基づいて、前記識別された標準化データに関連付けられる基礎データを識別し、第1の定義情報に基づいて、前記識別された基礎データに関連付けられる外部システムの素データを識別し、識別された前記素データに関連付けられる第2の基礎データ、前記第2の基礎データに関連付けられる第2の標準化データ、前記第2の標準化データに関連付けられる第2の基本計数データ、および前記第2の基本計数データに関連付けられる第2のデータマートを識別し、トレース情報を生成し、前記トレース情報に基づいて、前記素データ、前記第2の基礎データ、前記第2の標準化データ、前記第2の基本計数データ、および前記第2のデータマートの関連付けを示すグラフィック情報を生成するように構成される。
【0007】
本発明の他の態様としての経営情報システムは、素データが選択されたことを示す信号をユーザ端末から受信し、第1の定義情報に基づいて、前記選択された素データに関連付けられる基礎データを識別し、第2の定義情報に基づいて、前記識別された基礎データに関連付けられる標準化データを識別し、第3の定義情報に基づいて、前記識別された標準化データに関連付けられる基本計数データを識別し、第4の定義情報に基づいて、前記識別された基本計数データに関連付けられるデータマートを識別し、前記選択された素データと、前記識別された基礎データと、前記識別された標準化データと、前記識別された基本計数データと、前記識別されたデータマートとを関連付けて、グラフィック情報を生成し、前記グラフィック情報をユーザ端末に提供するように構成される。
【0008】
本発明によれば、MISは、各データ処理の定義情報を有するので、MISは、選択されたデータマート(およびそのデータ項目)に関連付けられる素データを識別することができ、識別された素データの影響範囲を識別することができる。すなわち、MISは、原システムのオリジナルデータそのものに遡って影響範囲を調査することができる。MISは、識別された素データの所管部および素データの送信元である業務システムの識別子をユーザに提供することができる。MISは、指定された素データまたは基礎データに関連付けられるデータマートを識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書において開示される実施形態の詳細な理解は、添付図面に関連して例示される以下の説明から得ることができる。
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る経営情報システム(MIS)を含むシステム全体の構成図である。
【
図2】
図2は、MISのシステム構成の一例を説明する。
【
図3】
図3は、素データに基づいて基本計数データを生成するシステム領域における処理フローの概略、およびユーザ端末からの要求に応答して各部門のためのデータマートを生成するユーザ領域における処理フローの概略を説明する。
【
図4】
図4は、MISが、定義情報に基づいて、基礎データから、第1の標準化データおよび第2の標準化データを生成する処理の例を示す。
【
図5】
図5は、指定されたデータマートおよびデータ項目に関連付けられる素データの影響範囲をトレースする処理フローの実例を示す。
【
図6】
図6は、検索対象データとしてデータマートおよびそのデータ項目を指定する検索画面の一例を示す。
【
図7】
図7は、指定された素データに関連付けられる基礎データ、第1の標準化データ、第2の標準化データ、基本計数データおよびデータマートを識別し、識別結果をユーザ端末に提供する処理フローの実例を挙げる。
【
図8】
図8は、グラフィック情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る経営情報システム(MIS)100を含むシステム全体の構成図である。MIS100は、既知のネットワークを介して、複数の第1の業務システム110および複数の第2の業務システム120と相互に通信可能に接続される。MIS100は、既知のネットワークを介して、複数のユーザ端末130と相互に通信可能に接続される。
図1において、第1の業務システム110、第2の業務システム120、およびユーザ端末130は、表示の簡易化のために1つずつしか示されていないが、これらは複数存在する。MIS100によって実行される様々な処理は、複数の装置で分散して実行され得る。
【0011】
MIS100は、第1の業務システム110および第2の業務システム120のそれぞれから素データ(オリジナルデータ)を受信し、受信した素データに対して計数化処理を行うことにより基礎データを生成する。MIS100は、当該基礎データに対して予め定められたデータ処理を行うことによって、標準化データおよび基本計数データを生成する。MIS100は、ユーザ端末130からの要求に応答して、経営環境および業務ニーズに沿った各部門のためのデータマートを生成し、ユーザ端末130に提供する。これらの処理は、
図3を参照しながら詳述される。
【0012】
MIS100は、ユーザ端末130によって指定されたデータマートおよびそのデータ項目に関連付けられる素データを定義情報に基づいて識別する。定義情報は、素データに対する計数化の処理詳細、基礎データに基づいて標準化データを生成する処理詳細、標準化データに基づいて基本計数データを生成する処理詳細、および基本計数データに基づいてデータマートを生成する処理詳細、並びに各データベースとシステム間の関連付け情報を記述する。MIS100は、定義情報を使用することによって、素データに関連付けられる基礎データ、標準化データ、基本計数データ、およびデータマートを識別する。さらに、MIS100は、定義情報を使用することによって、あるデータマートのあるデータ項目に関連付けられる基本計数データ、標準化データ、基礎データ、および素データを識別する。
【0013】
第1の業務システム110は、企業の業務システムであってよく、第2の業務システム120は、その企業のグループ会社の業務システムであってよい。第1の業務システム110および第2の業務システム120は、様々な業務に関連して発生した素データを格納する。素データは、MIS100に送信され、MIS100は、第1の定義情報を使用して計数化処理を行い、素データに基づいて対応する基礎データを生成する。第1の定義情報は、第1の業務システム110および第2の業務システム120の素データと、基礎データとの関連付け情報、および基礎データの生成処理の詳細を示す。
【0014】
MIS100に格納されている基礎データは、データの送信者である第1の業務システム110または第2の業務システム120の識別子(例えば、国内勘定システムの識別子)を含むこともできる。MIS100は、この識別子に基づいて基礎データに関連付けられている第1の業務システム110または第2の業務システム120を識別することもできる。
【0015】
第1の業務システム110および第2の業務システム120に格納されている素データは、組織情報や各プロダクトの事務処理プロセスに関する業務処理統制情報およびIT業務処理統制情報に関連付けられている。組織情報は、素データの品質維持に関する責任を持つ所管部を示す。各プロダクトの事務処理プロセスに関する情報は、まとめて「業務処理統制情報」と呼ぶことができる。業務処理統制情報は、メイン情報とサブ情報に分けてもよく、あるいは、統合された情報であってもよい。メイン情報およびサブ情報は、それぞれ、識別子を含むことができる。
【0016】
メイン情報は、各プロダクトにおける業務処理プロセスを大まかに分類した情報を示す。より詳細に言えば、メイン情報は、各商品において生じる個別の事務フローの観点から区分するための情報を示す。例えば、銀行業務では、メイン情報は、「預金業務プロセス」を示す。
【0017】
サブ情報は、各プロダクトにおける業務処理プロセスを更に細かい事務処理プロセスに分類した情報を示す。銀行業務の「預金プロセス」の例で言えば、サブ情報は、口座開設、預金振替、口座解約・払戻などを示す。
【0018】
MIS100は、指定された組織情報や各プロダクトの事務処理プロセスに関する情報に関連付けられる複数のデータベースを識別し、識別された複数のデータベースを関連付けたグラフィック情報(例えば、
図8に示されるような樹形図)を生成する。MIS100は、生成されたグラフィック情報をユーザ端末130に提供し、各業務システムの素データからデータマートまでの紐づけ情報を可視化することができる。
【0019】
ユーザ端末130は、ネットワークを介してMIS100にアクセスし、MIS100によって提供される様々な機能を利用する。ユーザ端末130は、MIS100にアクセスし、ユーザに関連付けられるデータマートを検索し、検索されたデータマートを画面上に表示する。ユーザ端末130は、パーソナルコンピュータ(PC)、ラップトップ、タブレット型端末、あるいは有線または無線環境において動作可能な他の任意のタイプのデバイスを含むことができ、特に限定されない。
【0020】
(システム構成)
図2は、MIS100のシステム構成の一例を説明する。MIS100は、プロセッサ201、主記憶装置202、補助記憶装置203、インターフェース装置204、および出力装置205を備える。MIS100は、ファイルまたはデータベースの形式として、基礎データ206、第1の標準化データ207、第2の標準化データ208、基本計数データ209、データマート210、および定義情報211を備える。コンポーネント201乃至211は、バス220によって相互に接続される。
【0021】
プロセッサ201は、MIS100内の各コンポーネントの制御およびデータの演算を行い、補助記憶装置203に格納されている各種プログラムを主記憶装置202に読み出して実行する。主記憶装置202は、各種の送受信データ、コンピュータ実行可能命令および当該命令による演算処理後のデータを記憶する。補助記憶装置203は、ハードディスクドライブ(HDD)またはソリッドステートドライブ(SSD)などの記憶装置であり、データやプログラムを長期的に保存する。
【0022】
図2は、プロセッサ201、主記憶装置202および補助記憶装置203を同一のコンピュータ内に設ける実施形態を説明する。本発明の他の実施形態において、MIS100は、複数のプロセッサ201、主記憶装置202および補助記憶装置203を使用することによって、複数のコンピュータにおいて並列分散処理を実行するように構成されることができる。本発明の他の実施形態において、MIS100のために複数のコンピュータが設置され、複数のコンピュータが一つの補助記憶装置203を共有する実施形態を採用することもできる。
【0023】
インターフェース装置204は、他のシステムや装置との間でデータを送受信する際のインターフェースの役割を果たす。インターフェース装置204は、システムオペレータから各種コマンドや入力データ(例えば、様々なマスタファイル、テーブルのデータ)を受信するためのインターフェースを提供する。出力装置205は、プロセッサ201によって処理されたデータおよび/または様々なデータベース、ファイルから読み出されたデータを表示する。出力装置205は、ディスプレイに表示されたデータを印刷する。
【0024】
基礎データ206は、第1の業務システム110および第2の業務システム120から受信された様々な素データと、第1の定義情報とに基づいて生成された基礎データを格納する。基礎データは、第1の業務システム110および第2の業務システム120の素データに関連付けられる「正」の計数データである。本発明の一実施形態では、基礎データ206は、基礎データの送信者である第1の業務システム110または第2の業務システム120の識別子と、それぞれの基礎データをメンテナンスする責任を持つ所管部を示す組織情報とを格納することも可能である。
【0025】
第1の標準化データ207は、貸借対照表(B/S)の各項目に関連付けられる標準化データを格納する。第1の標準化データ207は、資産系マスタデータに相当する。第1の標準化データ207は、基礎データ206に格納されているデータのうちの1または複数のB/S関連データ項目に基づいて生成され、かつ企業グループに関連付けられる体系化コードを含む。
【0026】
体系化コードは、基礎データ206に含まれるデータを標準化し、第1の標準化データ207および第2の標準化データ208に格納する際に付与される識別子である。体系化コードは、企業グループ全体で統一された基準で情報管理を行うために使用される。
【0027】
第2の標準化データ208は、損益計算書(P/L)の各項目に関連付けられる標準化データを格納する。第2の標準化データ208は、損益系マスタデータに相当する。第2の標準化データ208は、基礎データ206に格納されているデータのうちの1または複数のP/L関連データ項目に基づいて生成され、かつ企業グループに関連付けられる体系化コードを含む。
【0028】
基本計数データ209は、第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208の1または複数の体系化コードに関連付けられるデータ項目を抽出し、事業部門別、顧客別などの基準で選択、形成することによって生成されたデータである。換言すれば、MIS100は、選択された1または複数の体系化コードに基づいて、1または複数の第1の標準化データ207、および/または、1または複数の第2の標準化データ208の複数のデータ項目を組み合わせて、基本計数データ209を生成する。基本計数データ209は、例えば、顧客ごとに第1の標準化データ207および第2の標準化データ208を組み合わせたデータベース、取引(Deal)ごとに第1の標準化データ207および第2の標準化データ208を組み合わせたデータベースを示し得る。基本計数データ209のそれぞれは、企業およびそのグループ会社の経営のために利用され得る。
【0029】
データマート210は、ユーザ端末130からの要求に応答して、1または複数の基本計数データ209に基づいて生成される。データマート210は、経営環境および業務ニーズに沿って各部門のために生成されたデータである。
【0030】
定義情報211は、どのような処理が行われたかの詳細情報および各データベースと業務システム間の関連付け情報を含む。定義情報211は、1または複数であってよい。定義情報211は、第1の定義情報211-1、第2の定義情報211-2、第3の定義情報211-3、および第4の定義情報211-4を含む。第1の定義情報211-1は、素データに基づいて基礎データ206を生成する処理を詳細に記述する。第2の定義情報211-2は、基礎データ206に基づいて第1の標準化データ207および第2の標準化データ208を生成する処理を詳細に記述する。第3の定義情報211-3は、第1の標準化データ207および第2の標準化データ208に基づいて基本計数データ209を生成する処理を詳細に記述する。第4の定義情報211-4は、基本計数データ209に基づいてデータマート210を生成する処理を詳細に記述する。
【0031】
図3は、業務システム110、120から受信した素データに基づいて、基礎データ206、第1の標準化データ207、第2の標準化データ208、および基本計数データ209を生成するシステム領域101における処理フローの概略を説明する。また、
図3は、ユーザ端末130からの要求に応答して各部門のためのデータマート210を生成するユーザ領域102における処理フローの概略を説明する。
【0032】
MIS100は、第1の業務システム110および/または第2の業務システム120から素データを受信し、第1の定義情報211-1を使用して素データに対して計数化処理を行うことにより基礎データ206を生成する。第1の定義情報211-1は、生成処理を詳細に説明する。基礎データ206に格納されているそれぞれのデータは、データの送信者である第1の業務システム110または第2の業務システム120の識別子を含むことも可能である。MIS100は、この識別子または第1の定義情報211-1に基づいて基礎データ206に関連付けられている第1の業務システム110および/または第2の業務システム120を識別することができる。
【0033】
MIS100は、それぞれの素データに関連付けられる組織情報を基礎データ206に格納することもできる。組織情報は、素データをメンテナンスする責任を持つ所管部を示す。MIS100は、組織情報に基づいて、同一の所管部に関連付けられる1または複数の基礎データ206を識別することができる。MIS100は、識別された基礎データ206に関連付けられる第1の標準化データ207、第2の標準化データ208、基本計数データ209、およびデータマート210を検索し、検索された各データベースの関連付け情報をグラフィック情報として生成することができる。
【0034】
MIS100は、基礎データ206に含まれるB/S関連データに基づいて第1の標準化データ207を生成し、および基礎データ206に含まれるP/L関連データに基づいて第2の標準化データ208を生成する。第2の定義情報211-2は、これらの処理を詳細に説明する。MIS100は、第1の標準化データ207および第2の標準化データ208を生成する際、B/S関連データおよびP/L関連データに体系化コードを付与する。体系化コードは、企業およびそのグループ会社において全体で統一された基準で管理するために付与される。
【0035】
図4は、MIS100が、第2の定義情報211-2に基づいて、基礎データ206から、第1の標準化データ207および第2の標準化データ208を生成する処理の例を示す。基礎データ206は、1件のレコードの中に元帳(素データ)を識別する識別子および複数のデータ項目401~404を含む。MIS100は、基礎データ206からそれぞれのデータ項目を抽出し、そのデータ項目に関連付けられる体系化コードを含む1件の標準化データを生成し、生成した標準化データを第1の標準化データ207または第2の標準化データ208に格納する。第2の定義情報211-2は、基礎データ206からデータ項目を抽出し、関連する体系化コードを付与することによって、第1の標準化データ207および第2の標準化データ208を生成する処理の詳細を記述している。
図4に例示されるように、第1の標準化データ207および第2の標準化データ208は、体系化コードおよび対応するデータ項目を含むレコードを有する。
【0036】
図3に戻ると、MIS100は、第3の定義情報211-3に基づいて、第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208から体系化コードに関連付けられるデータ項目を抽出し、予め定められた基準で選択し、形成することによって、基本計数データ209を生成する。第3の定義情報211-3は、これらの処理を詳細に説明する。基本計数データ209は、企業およびそのグループ会社の経営のために利用される。例えば、基本計数データ209は、顧客別の計数、取引別の計数などを含む。第3の定義情報211-3は、第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208に基づいて基本計数データ209を生成する処理の詳細を記述している。
【0037】
MIS100は、ユーザ端末130からの要求に応答して、第4の定義情報211-4に基づいて、1または複数の基本計数データ209から、経営環境および業務ニーズに沿った各部門のためのデータマート210を生成する。データマート210は、ユーザ領域102に格納される。詳細に言えば、ユーザ端末130は、所望のデータマート210を生成するのに必要な基本計数データ209およびそのデータ項目、並びにデータ生成の処理手順(例えば、データ項目Aとデータ項目Bの数値の加算、など)をMIS100に送信し、MIS100は、受信した情報を第4の定義情報211-4に書き込む。MIS100は、ユーザ端末130からの要求において指定された第4の定義情報211-4の処理手順に基づいてデータマート210を生成する。MIS100は、生成されたデータマート210をユーザ端末130に提供する。
【0038】
図5は、指定されたデータマート210およびデータ項目に関連付けられる素データの影響範囲をトレースする処理フローの実例を示す。
【0039】
S501にて、ユーザ端末130は、MIS100にアクセスし、検索画面600をディスプレイに表示する。検索画面600は、検索対象データとしてデータマート210およびそのデータ項目を指定する入力欄を有する。
図6の例は、ID「10001」の「データマートAA」が左の欄で選択され、ID「10001-03」のデータ項目が右の欄で選択されていることを示している。MIS100は、検索画面600を介して入力された検索対象データをユーザ端末130から受信する。
【0040】
本発明の一実施形態では、検索画面600は、検索対象データとしてデータマートのみを指定するように構成されてもよい。
【0041】
S502にて、検索対象データを受信したことに応答して、MIS100は、第4の定義情報211-4に基づいて、指定されたデータマート210の指定されたデータ項目に関連付けられる基本計数データ209および対応するデータ項目を識別する。代替として、MIS100は、検索対象データを受信したことに応答して、指定されたデータマート210に関連付けられる基本計数データ209を識別することができる。
【0042】
S503にて、MIS100は、第3の定義情報211-3に基づいて、識別された基本計数データ209および対応するデータ項目に関連付けられる第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208、並びに対応する体系化コードを識別する。代替として、MIS100は、第3の定義情報211-3に基づいて、識別された基本計数データ209に関連付けられる第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208を識別することができる。
【0043】
S504にて、MIS100は、第2の定義情報211-2に基づいて、識別された第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208、並びに対応する体系化コードに関連付けられる基礎データ206および対応するデータ項目を識別する。代替として、MIS100は、第2の定義情報211-2に基づいて、識別された第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208に関連付けられる基礎データ206を識別することができる。
【0044】
S505にて、MIS100は、第1の定義情報211-1に基づいて、識別された基礎データ206、および対応するデータ項目に関連付けられる素データを識別する。上述したように、素データは、第1の業務システム110または第2の業務システム120に格納されている。代替として、MIS100は、第1の定義情報211-1に基づいて、識別された基礎データ206に関連付けられる素データを識別することができる。
【0045】
S506にて、MIS100は、第1の定義情報211-1に基づいて、識別された素データに関連付けられる基礎データ206および対応するデータ項目を識別する。MIS100は、第2の定義情報211-2に基づいて、識別された基礎データ206および対応するデータ項目に関連付けられる第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208、並びに対応する体系化コードを識別する。MIS100はまた、第3の定義情報211-3に基づいて、識別された第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208、並びに対応する体系化コードに関連付けられる基本計数データ209および対応するデータ項目を識別する。さらに、MIS100は、第4の定義情報211-4に基づいて、識別された基本計数データ209および対応するデータ項目に関連付けられるデータマート210を識別する。MIS100は、各定義情報、および識別されたこれらの全ての情報を一つにまとめてトレース情報を生成する。すなわち、トレース情報は、各定義情報と、識別された素データと、識別された基礎データ206および対応するデータ項目と、識別された第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208、並びに対応する体系化コードと、識別された基本計数データ209および対応するデータ項目と、指定されたデータマート210とを示す。代替として、トレース情報は、各定義情報と、識別された素データと、識別された基礎データ206と、識別された第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208と、識別された基本計数データ209と、指定されたデータマート210とを示すこともできる。
【0046】
S507にて、MIS100は、トレース情報に基づいて、素データと、複数のデータベース206、207、208、209および210との関連付けを示すグラフィック情報を生成し、グラフィック情報をユーザ端末130に表示する。
【0047】
図8は、グラフィック情報の一例を示す図である。
図8は、素データの領域、基礎データ206の領域、第1の標準化データ207および第2の標準化データ208の領域、基本計数データ209の領域、並びにデータマート210の領域を示す。符号801は、S501にて検索対象データとして指定されたデータマートを示す。
図8において、着色矢印は、S502~S505の処理において1または複数のデータベースを識別したそれぞれの処理を示す。すなわち、着色矢印は、検索対象データとして指定されたデータマートを出発点とする関連付け情報を示す。
【0048】
図8において、白抜き矢印は、S506の処理において複数のデータベースを識別したそれぞれの処理を示す。すなわち、白抜き矢印は、識別された素データを出発点とする関連付け情報を示す。
【0049】
図8に示されるように、MIS100は、2種類の関連付け情報を動的に生成し、2種類の関連付け情報を含むグラフィック情報をユーザ端末130に提供することができる。
【0050】
白抜き矢印802がユーザ操作によって指定されると、MIS100は、白抜き矢印802に関連付けられる第2の定義情報211-2を読み出し、ユーザ端末130に表示する(803)。本発明の一実施形態では、MIS100は、ユーザ操作に応答して、白抜き矢印802の出発点である基礎データ206に関連する情報をユーザ端末130に表示することができる。白抜き矢印804がユーザ操作によって指定されると、MIS100は、白抜き矢印804に関連付けられる第3の定義情報211-3を読み出し、ユーザ端末130に表示する(805)。
【0051】
本発明の一実施形態では、MIS100は、S505にて識別された素データの具体的なデータ内容、素データの送信元となる業務システム110、120の情報(識別子およびサーバ名など)、業務処理統制情報、および/または組織情報(所管部の情報)をユーザ端末130に提供することができる。
【0052】
図7は、指定された素データに関連付けられる、基礎データ206、第1の標準化データ207、第2の標準化データ208、基本計数データ209およびデータマート210を識別し、識別結果をユーザ端末に提供する処理フローの実例を挙げる。この処理フローでは、ある所管部がある素データのデータベースを改修するケースを説明する。
【0053】
S701にて、MIS100は、改修が予定されている素データが選択されたことを示す信号をユーザ端末130から受信する。
【0054】
S702にて、MIS100は、第1の定義情報211-1を読み出し、読み出した第1の定義情報211-1に基づいて、選択された素データに関連付けられる基礎データ206を識別する。
【0055】
S703にて、MIS100は、第2の定義情報211-2を読み出し、読み出した第2の定義情報211-2に基づいて、識別された基礎データ206に関連付けられる第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208を識別する。
【0056】
S704にて、MIS100は、第3の定義情報211-3を読み出し、読み出した第3の定義情報211-3に基づいて、識別された第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208に関連付けられる基本計数データ209を識別する。
【0057】
S705にて、MIS100は、第4の定義情報211-4を読み出し、読み出した第4の定義情報211-4に基づいて、識別された基本計数データ209に関連付けられるデータマート210を識別する。
【0058】
S706にて、MIS100は、選択された素データと、識別された基礎データ206と、識別された第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208と、識別された基本計数データ209と、識別されたデータマート210とを関連付けて、グラフィック情報を生成し、グラフィック情報をユーザ端末130に提供する。このグラフィック情報は、素データに関連付けられる、基礎データ、標準化データ、基本計数データ、およびデータマートの間の関連付け情報を示す。
【0059】
本発明の他の実施形態では、MIS100は、基礎データが最初に選択されたことに応答して、基礎データに関連付けられる標準化データ、基本計数データ、およびデータマートを識別することができる。MIS100は、選択された基礎データと、識別された第1の標準化データ207および/または第2の標準化データ208と、識別された基本計数データ209と、識別されたデータマート210とを関連付けて、グラフィック情報を生成し、グラフィック情報をユーザ端末130に提供することができる。この実施形態では、MIS100は、基礎データの任意のデータ項目が選択され、選択されたデータ項目に関連付けられる標準化データ、基本計数データ、およびデータマートを識別することもできる。この第2のグラフィック情報は、基礎データに関連付けられる標準化データ、基本計数データ、およびデータマートの間の関連付け情報を示す。
【0060】
上述したように、本願発明では、MIS100は、選択されたデータマート210およびデータ項目に関連付けられる素データを識別することができ、および識別された素データの影響範囲を識別することができる。MIS100は、識別された素データ206の所管部および素データの送信元である業務システム110、120の識別子をユーザに提供することができる。MIS100は、改修が予定されている業務システムの素データに関連付けられる基礎データ206、第1の標準化データ207、第2の標準化データ208、基本計数データ209およびデータマート210を識別することができる。
【0061】
以上、例示的な実施形態を参照しながら本発明の原理を説明したが、本発明の要旨を逸脱することなく、構成および細部において変更する様々な実施形態を実現可能であることを当業者は理解するだろう。本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能である。
【要約】
経営情報システム(MIS)は、指定されたデータマートの情報を含む検索対象データを受信したことに応答して、第4の定義情報に基づいて、検索対象データに関連付けられる基本計数データを識別する。MISは、第3の定義情報に基づいて、識別された基本計数データに関連付けられる標準化データを識別する。MISは、第2の定義情報に基づいて、識別された標準化データに関連付けられる基礎データを識別する。MISは、第1の定義情報に基づいて、識別された基礎データに関連付けられる素データを識別する。MISは、識別された素データに関連付けられる第2の基礎データ、第2の標準化データ、第2の基本計数データ、および第2のデータマートの関連付けを示すグラフィック情報を生成する。