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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20230113BHJP
   F25D 21/14 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
F25D23/00 302L
F25D21/14 E
F25D21/14 S
F25D21/14 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018212602
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020079670
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-04-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】河杉 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】南部 桂
(72)【発明者】
【氏名】柿田 健一
(72)【発明者】
【氏名】安信 淑子
(72)【発明者】
【氏名】大久保 公美子
(72)【発明者】
【氏名】平井 剛樹
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-046891(JP,A)
【文献】特開2018-109512(JP,A)
【文献】特開2002-147926(JP,A)
【文献】特開2016-144603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
F25D 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納室と、前記収納室に設けられ、野菜を収納する収納容器と、前記収納室の露点を下回る前記収納室の天面壁に結露搬送部材を備え、前記結露搬送部材は、前記収納容器内の前記野菜の蒸散作用により放出された水分を自身の表面に結露させる吸水部と、前記吸水部で発生した結露水を前記収納容器の外へ放出する乾燥部と、前記吸水部と前記乾燥部との間に、前記吸水部で発生した結露水を前記乾燥部へ搬送する搬送部とを有し、前記乾燥部は前記収納容器の天面開口部の投影面より外側に配置し乾燥させることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記吸水部は、前記収納室冷凍室とを区画する面に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記乾燥部は、前記収納室を流れる空気の吸い込み口近傍に設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記乾燥部の近傍に乾燥用ヒータ又はファン又は対流促進手段を設けたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記搬送部は、圧力を利用して結露水を搬送することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記搬送部は、重力を利用して結露水を搬送することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結露搬送手段を備えた冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の冷蔵庫は、収納容器内部の結露を吸水する吸収部と、収納容器外部へ結露を放出する放出部を有する水分放出部材を収納容器に設けることで結露を防止している。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は特許文献1に記載された従来の冷蔵庫の野菜室の断面図を示すものである。図5において野菜室301内には野菜容器302が収納され、その中に野菜等水分を蒸散する野菜室負荷303が収納される。野菜容器302は冷却器(図示せず)で生成され、冷気吐き出し口304を通って導入される冷気により冷却される。導入された冷気は野菜室301内を対流した後、冷気戻り口305、冷気戻り風路306を通って冷却器へ返っていく。このとき、冷気吐き出し口304から出てきたばかりの冷気は比較的温度の低い冷気であり、この冷気が触れる野菜容器302の壁面はその他の壁面よりも過度に冷却され、野菜室負荷303から蒸散された水分が結露として付着する。この結露は野菜室負荷303に付着すると負荷を損傷させる虞があり、また見映えが悪くなり、冷蔵庫の使用者に不快感を与えるものであるため、これを防ぐために水分放出部材307を野菜容器302の結露が生成される面に設けている。水分放出部材307は結露を吸収する吸収部308と結露を野菜容器302外に放出する放出部309を有しており、吸収部307と放出部308は一体に構成されているものである。水分放出部材307は結露が生成された際に、吸収部308で結露を吸収し、毛細管現象によりその結露を放出部308に運ぶ。放出部308に運ばれた結露は、放出部308の周辺または放出部308に向かって吹き付ける冷気吐き出し口304を通って導入される乾燥した冷気により乾燥されることで、野菜容器302内の結露を防ぐものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6100198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、放出部に乾燥冷気を当てることによって結露を乾燥させる際に、放出部と吸収部が一体となって構成されるために、放出部と吸収部のどちらも冷却されてしまい、放出部の結露を乾燥させる能力を減退させてしまう、または吸収部のある容器内への結露生成を増進してしまう。またそれを防ぐために乾燥部を加熱すると、吸収部が乾燥部に近いため、吸収部や、吸収部を有する収納容器内の温度を高めてしまい、収納容器の保鮮性が悪化するという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、収納容器内に発生した結露を乾燥させる際に用いるエネルギーが、収納容器内に伝わることを抑制し結露を乾燥できる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
収納室と、前記収納室に設けられ、保存物を収納する収納容器と、結露搬送部材を設け、結露搬送部材は、前記容器外を流れる冷気により容器内に生成する水分を自身の表面に結露させる吸水部と、前記吸水部で発生した結露水を収納容器の外へ放出する乾燥部と、前記吸水部と前記乾燥部との間に、前記吸水部で発生した結露を前記乾燥部まで搬送するとともに、前記乾燥部からのエネルギーを前記吸水部へ伝導するのを抑制する搬送部を備えたものである。
【0008】
これによって、結露を乾燥させようと乾燥部へエネルギーを加えた際に、吸水部や吸水部を有する収納容器内へそのエネルギーが伝わることを抑制することができ、その上で結露を乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷蔵庫は、結露を収納容器の外へ放出する乾燥部にエネルギーを与えた際に、吸収部や、吸収部を有する収納容器内へそのエネルギーを伝えることなく、結露を乾燥することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1の冷蔵庫の縦断面図
図2】本発明の実施の形態1の冷蔵庫の野菜室の縦断面図
図3】本発明の実施の形態2の冷蔵庫の野菜室の低温部の拡大断面図
図4】本発明の実施の形態3の冷蔵庫の野菜室の低温部の拡大断面図
図5】従来例の冷蔵庫の野菜室の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、収納室と、前記収納室に設けられ、保存物を収納する収納容器と、結露搬送部材を備え、前記結露搬送部材は、前記収納容器外を流れる冷気により前記収納容器内に生成する水分を自身の表面に結露させる吸水部と、前記吸水部で発生した結露水を前記収納容器の外へ放出する乾燥部と、前記吸水部と前記乾燥部との間に、前記吸水部で発生した結露水を前記乾燥部まで搬送するとともに、前記乾燥部からのエネルギーを前記吸水部へ伝導するのを抑制する搬送部を備えたことにより、結露水を乾燥させようと乾燥部へエネルギーを加えた際に、そのエネルギーが吸水部や吸水部を有する収納容器内へ伝わることを抑制することができ、その上で結露水を乾燥させることができるようになる。
【0012】
第2の発明は、特に第1の発明の吸水部を、収納室を区画する面に設けたものであり、収納室を区画する面は、収納室を冷却するために導入される冷気との対流熱伝達に加え、収納容器を設けた収納室と壁を介して隣接する、前記収納室よりも温度の低い部屋への吸熱により冷却されるため、その面に設けられた吸水部も冷却されるようになり、自身の表面に結露させることができ、効率的に結露水を吸水することができる。
【0013】
第3の発明は、特に第1または第2の発明の乾燥部を、収納容器の投影面の外側に設けたことにより、乾燥部に与えた乾燥のためのエネルギーが収納容器の内部により伝わりにくくすることができる。
【0014】
第4の発明は、特に第1~3のいずれか1つの発明の乾燥部を、収納室を流れる空気の吸い込み口近傍に設けたことにより、乾燥部の周辺に吸水部よりも乾燥した空気を対流させることで、乾燥部に加える、乾燥に要するエネルギーを低減することができる。
【0015】
第5の発明は、特に第1~4のいずれか1つの発明の吸水部、搬送部、および、乾燥部を、収納室天面に設けたことにより、結露の発生しやすい天面の結露水を吸水部で吸水できると同時に、蒸散負荷に吸水部や搬送部が触れる可能性が小さくなることで結露搬送部材の破損や汚れを防ぐことができる。加えて、使用者が収納容器に野菜室負荷を出し入れする際に、結露搬送部材が目に付きにくくなり、外観意匠性を向上することができる。
【0016】
第6の発明は、特に第1~5のいずれか1つの発明の乾燥部の近傍にエネルギー付与手段を設けたことで、結露水の乾燥を促し、乾燥部での結露水の乾燥スピードが向上し、収納容器内の蒸散負荷の収納量が多いときなど、結露が過剰な場合であっても、結露水を乾燥することができる。
【0017】
第7の発明は、特に第6の発明のエネルギー付与手段は、熱エネルギーを付与することとし、これにより熱エネルギーによって乾燥部の温度を上昇させることができるため、乾燥を促進することができる。
【0018】
第8の発明は、特に第6の発明のエネルギー付与手段は、風エネルギーを付与することとし、風エネルギーによって乾燥部の周囲の空気の対流を促して乾燥を促進する方式にすることで、収納容器内へエネルギーが伝わりにくくすることができる。
【0019】
第9の発明は、特に第1~8のいずれか1つの発明の搬送部を、吸水部から乾燥部へ圧力を利用して結露水を搬送する構成としたことで、吸水部と乾燥部の間に凹凸がある場合や、吸水部よりも高い位置に乾燥部がある場合でも結露水を搬送することができる。
【0020】
第10の発明は、特に第1~8のいずれか1つの発明の搬送部を、吸水部から乾燥部へ重力を利用して結露水を搬送する構成としたことで、結露搬送部材の構成を簡便化することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による冷蔵庫の縦断面図、図2は同実施の形態1の冷蔵庫の野菜室の縦断面図である。
【0023】
図1、2において、冷蔵庫1の断熱箱体2は、主に鋼板を用いた外箱3と、ABSなどの樹脂で成型された内箱4と、外箱3と内箱4との間の空間に充填発泡される、例えば硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材とからなり、周囲と断熱し、複数の貯蔵室に区分されている。
【0024】
断熱箱体2の最上部には第一の貯蔵室としての冷蔵室5が設けられ、その冷蔵室5の下部に左右に並んで第四の貯蔵室としての切換室6と第五の貯蔵室としての製氷室7が横並びに設けられ、その切換室6と製氷室7の下部に第二の貯蔵室としての野菜室8が設けられ、そして最下部に第三の貯蔵室としての冷凍室9が配置される構成となっている。
【0025】
冷蔵室5は、冷蔵保存のため、凍らない温度を下限に通常1℃~5℃とし、野菜室8は、冷蔵室5と同等もしくは若干高い温度設定の2℃~7℃としている。冷凍室9は、冷凍温度帯に設定されており、冷凍保存のために通常-22℃~-15℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、例えば-30℃や-25℃の低温で設定されることもある。切換室6は、1℃~5℃で設定される冷蔵温度帯、2℃~7℃で設定される野菜用温度帯、通常-22℃~-15℃で設定される冷凍温度帯以外に、冷蔵温度帯から冷凍温度帯の間で予め設定された温度帯に切換えることができる。切換室6は製氷室7に並設された独立扉を備えた貯蔵室であり、引出し式の扉を備えることが多い。
【0026】
なお、本実施の形態1では、切換室6を、冷蔵、冷凍の温度帯までを含めた貯蔵室としているが、冷蔵は、冷蔵室5、野菜室8、冷凍は、冷凍室9に委ねて、冷蔵と冷凍の中間の上記温度帯のみの切換えに特化した貯蔵室としても構わない。また、特定の温度帯に固定された貯蔵室でもかまわない。
【0027】
断熱箱体2の天面部は、冷蔵庫1の奥面方向に向かって階段状に凹みを設けた形状であり、この階段状の凹部に機械室2aを形成して圧縮機10、水分除去を行うドライヤ(図示せず)等の冷凍サイクルの高圧側構成部品が収容されている。すなわち、圧縮機10を配設する機械室2aは、冷蔵室5内の最上部の後方領域に食い込んで形成されることになる。
【0028】
なお、以下に述べる発明の要部に関する事項は、従来一般的であった断熱箱体2の最下部の貯蔵室後方領域に機械室を設けて、そこに圧縮機10を配置するタイプの冷蔵庫に適用しても構わない。また、冷凍室9と野菜室8の配置を入れ替えた、いわゆるミッドフリーザーの構成の冷蔵庫1であっても構わない。
【0029】
次に、野菜室8と冷凍室9の奥面には冷気を生成する冷却室11が設けられ、野菜室8と冷却室11の間もしくは冷凍室9と冷却室11との間には、断熱性を有する各室への冷気の搬送風路(図示せず)と、各室と断熱区画するために構成された奥面仕切壁12が構成されている。
【0030】
冷却室11内には、冷却器13が配設されており、冷却器13の上部空間には強制対流方式により冷却器13で冷却した冷気を冷蔵室5、切換室6、製氷室7、野菜室8、冷凍室9に送風する冷却ファン14が配置され、冷却器13の下部空間には、冷却時に冷却器13やその周辺に付着する霜や氷を除霜するためのガラス管製のラジアントヒータ15が設けられ、さらにその下部には除霜時に生じる除霜水を受けるためのドレンパン16、その最深部から庫外に貫通したドレンチューブ17が構成され、その下流側の庫外に蒸発皿18が構成されている。
【0031】
野菜室8には、野菜室8の引出し扉19に取り付けられたフレームに載置された下段収納容器20と、下段収納容器20の上に載置された上段収納容器21が配置されている。
【0032】
上段収納容器21と第一の仕切壁22aの間には、奥面仕切壁12に構成された野菜室8用の吐き出し口23から吐出された冷気の風路が設けられており、その近傍には野菜室8内の温度を調節する目的で野菜室ヒータ24が配置される。
【0033】
さらに、下段収納容器20と下段収納容器20の下の第2の仕切壁22bとの間にも空間が設けられ冷気風路を構成している。野菜室8の奥面側に備えられた奥面仕切壁12の下部には、野菜室8内を冷却し熱交換された冷気が冷却器13に戻るための野菜室8用の吸い込み口25が設けられている。吸い込み口25の近傍には温度センサ26が設置されている。
【0034】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
【0035】
まず、冷凍サイクルの動作について説明する。庫内の設定された温度に応じて制御基板(図示せず)からの信号により冷凍サイクルが動作して冷却運転が行われる。圧縮機10の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器(図示せず)にてある程度凝縮液化し、さらに冷蔵庫1の側面や奥面、また冷蔵庫1の前面間口に配設された冷媒配管(図示せず)などを経由し冷蔵庫1の結露を防止しながら凝縮液化し、キャピラリーチューブ(図示せず)に至る。その後、キャピラリーチューブでは圧縮機10への吸入管(図示せず)と熱交換しながら減圧されて低温低圧の液冷媒となって冷却器13に至る。
【0036】
ここで、低温低圧の液冷媒は、冷却ファン14の動作により搬送する各貯蔵室内の空気と熱交換され、冷却器13内の冷媒は蒸発気化する。この時、冷却室11内で各貯蔵室を冷却するための冷気を生成する。
【0037】
冷却室11内で生成された低温の冷気は、冷却ファン14から冷蔵室5、切換室6、製氷室7、野菜室8、冷凍室9に冷気を風路や冷却ダンパー27を用いて分流させ、それぞれの目的温度帯に冷却するように、冷却ダンパー27により調整される。
【0038】
冷却器13で通常-20℃以下に冷却された空気は、野菜室8内で平均的に2~7℃にまで温度上昇するため、野菜室8内で収納容器20,21の外の空気は平均相対湿度が約15~30%RHと乾燥している。一方で、収納容器20,21内の野菜は保存中も生理活性を有し水分の蒸散を続けるため、収納容器20,21内の空気はより高湿度となる。第一の仕切り壁22aと上段収納容器21との間の隙間、上段収納容器21と下段収納容器20との隙間などから、収納容器20、21外周の乾燥空気と収納容器20、21内部の高湿度空気が入れ替わることにより収納容器20、21から湿度の一部が排出される。
【0039】
蒸散された水蒸気を収納容器20、21外に排出しなければ結露が発生し野菜に接触すると微生物が増えて水腐れする虞がある。また、水蒸気排出が過多になれば収納容器20、21内の湿度が下がりすぎて、野菜の水分の蒸散を促進して萎びさせる虞がある。両リスクのバランスを考慮して90~95%RHが多くの野菜について適切な保存湿度とされる。本実施の形態1では、収納容器20、21内に生成した結露水を収納容器外へ搬送する結露搬送部材28と乾燥用ヒータ29を用いることにより、高湿化しつつ結露を防ぐようにしている。
【0040】
図2において、結露搬送部材28は収納容器21内に発生した結露水を吸収する吸水部30と、結露水を収納容器外へ放出する乾燥部31と、吸水部30で吸水した結露水を乾燥部31へ搬送する搬送部32で構成され、吸収部30と乾燥部31と搬送部32は野菜室天面に設けられる。特に乾燥部31は収納容器21の天面への投影面の外側になるように設置される。ここで搬送部32は、圧力を利用して結露水を搬送する部材であり、たとえば圧力差が引き起こす毛細管現象を利用した紙や布のような繊維質の材料でもよいし、細かい溝を複数形成したような部材でもよい。
【0041】
次に結露搬送部材28を用いて、収納容器内の結露水を収納容器外へ放出する動作について説明する。収納容器21内に野菜などの蒸散負荷が入れられた場合、蒸散負荷は時間が経過するごとに水分を放出する。もしこのとき収納容器21を区画する面のうち、露点を下回る面があれば、その面には結露が発生する。結露が発生する面は野菜室8の設計位置や冷蔵庫の運転条件などによって変化することはあるが、本実施の形態1の場合、野菜室の真上には冷凍温度帯である切替室6や製氷室7が存在するため、基本的に野菜室天面がもっとも冷やされることになり、結露は野菜室天面に集中することが予想される。このとき結露搬送部材28の吸水部30を結露が発生する部分に設置することで、収納容器内に生成される結露水を吸水することができる。吸水部30で吸水した結露水は、搬送部32によって収納容器外部に設けられた乾燥部31まで搬送される。乾燥部31の近傍には結露水を効率的に乾燥させるためにエネルギー付与手段として乾燥用エネルギーを加えるデバイスが設けられ、たとえばそれは図2に示すような乾燥用ヒータ29がある。乾燥用ヒータ29は乾燥部31に搬送された結露水を温めることにより乾燥を促進する目的で作動する。このとき乾燥用ヒータ29により発生した熱が収納容器21の内部に伝わってしまい、収納容器21内の温度を上げてしまうことで保鮮性が悪化することが予想されるが、先に述べたように、野菜室天面に対する、収納容器21の投影面よりも外側に乾燥部31を設けたことで、乾燥部31へ伝えた熱が収納容器21内に伝わりにくくしている。なお図2のように野菜室天面に結露搬送部材28を設ける場合、新たに結露搬送部材28を設置せずに、天面を構成する筐体側の部材に複数の細かい溝を設けることで、同様の効果を奏することができ、コストダウンにもつながる。なお、ここでは乾燥部31での結露水の乾燥を促すために乾燥用ヒータ29を使用しているが、乾燥部31での結露水の乾燥を促すために、乾燥部31表面上での対流を促進するための乾燥用ファンなどを用いてもよい。また乾燥用ファンでなくとも、野菜室8に冷気を送り込むために使われる冷却ファン14を使用して、乾燥部31の周囲空気の対流を促進する方法をとってもよい。また本実施の形態1では上段収納容器21内に発生する結露を容器外へ放出する方法について述べたが、下段収納容器20内に発生する結露を容器外へ放出する場合でも同様の方法を用いることで同様の効果を奏する。また本実施の形態1では乾燥部31を野菜室天面に設けることとしたが、乾燥部31は必ずしも天面に接触している必要はなく、天面との間に空間を有する構成であってもよい。
【0042】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2の結露搬送部材28の設置位置の別の形態を表した図である。
【0043】
図3は、実施の形態1における結露搬送部材28のうち、乾燥部31を吸い込み口25近傍に設けたものであり、それに伴って、実施の形態1における乾燥用ヒータ29などの乾燥部31の結露乾燥を促すエネルギー付与手段も乾燥部31近傍に設けたものである。
【0044】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
【0045】
まず、結露搬送部材28を構成する吸水部30、搬送部32、乾燥部31のうち、吸水部30は収納容器21内の結露が発生する部分に設けられる。図3では結露が主に発生する部分が野菜室天面であると想定し、野菜室天面に吸水部30を設けたが、収納容器21の側壁や底面に結露が発生する場合は、吸水部30をその部分に設ける。また乾燥部31は吸い込み口25近傍に設けられる。ここで吸い込み口25には、野菜室8に導入された乾燥冷気が野菜室8内を冷却しながら熱交換されていくなかで、比較的温められた乾燥空気が通過していくことになる。吸い込み口25近傍に乾燥部31を設けることで乾燥部31周囲の空気は比較的温かい乾燥空気が対流することになり、乾燥部31に結露水が搬送された場合、乾燥部31が温められる効果や、対流が促進される効果によって結露水の乾燥が促進されることになる。このとき、結露水の乾燥をさらに促すために、乾燥部31近傍に設けられた乾燥用ヒータ29が作動し乾燥部31を温めるが、乾燥空気の対流により結露水の乾燥が十分である場合は乾燥用ヒータ29による乾燥は不要である。すなわち、本実施の形態2では乾燥部31を乾燥させるための乾燥用デバイスを追加せずに、または乾燥用デバイスに入力される電力量を抑えて結露水を乾燥させることができるという利点がある。
【0046】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3の結露搬送部材28の設置位置と搬送方法の別の形態を表したものである。
【0047】
図4において、結露搬送部材28のうち、搬送部32を、重力を利用して収納容器20の下方へ搬送するように設けたものである。重力を利用した搬送手段としては、たとえば筒状の部材の内部に水を伝わらせて落下させる方法や、収納容器20の下面に穴を設けて、そこから収納容器20外に結露水を落下させる方法、野菜室天面に傾斜を設け、結露水を傾斜をつけた方向へ自重によって搬送する方法があるが、ここでは説明を簡便にするため、筒状の部材の内部に結露水を落下させる方法について述べる。ここで吸水部30や乾燥部32の形状や材質は特に限定しないが、吸水部30の設置位置は収納容器20内部の結露水を吸水して集めることができる位置、乾燥部31の設置位置は、野菜室8の底面に対する、収納容器20の投影面の外側部分であることとする。また乾燥部31に搬送された結露水の乾燥を促進するために、乾燥用ヒータ29を乾燥部31近傍に設ける。
【0048】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
【0049】
まず、吸水部30は収納容器20内の結露がしやすい部分に設けられるが、本実施の形態3のように収納容器が上下段に分かれている場合、下段の収納容器20内でもっとも結露する可能性のある面は、野菜室8に導入される冷気が吹き付ける吐き出し口23に近い面であり、収納容器20の背面と考えられる。吸水部30はこの面に設けるが、本実施の形態3では特に結露搬送部材28の材料を限定しないため、吸水部30は収納容器20の背面を構成する材料でもよいし、結露水を一部分に集約するように新たに設置される部材でもよい。そうして集約された結露水は筒状の部材で構成される搬送部32によって、野菜室8の底面のうち、収納容器20の投影面よりも外側の部分に設けられた乾燥部31に搬送される。本実施の形態3では特に結露搬送部材28の材料を限定しないため、乾燥部31は野菜室8の底面を構成する筐体自体でもよいし、乾燥を促進するために表面積を広くしたような新たな部材を設けてもよい。こうして吸水部30に集められた結露水は搬送部32によって乾燥部31へ運ばれ、乾燥用ヒータ29によって乾燥部31周囲の空気を加温することで、搬送された結露水の乾燥を促進することができる。
【0050】
なお、ここでは搬送部に筒状の部材を用いた方法について述べたが、野菜室天面に傾斜を設け、その部分を結露水の自重によって流れ落ちる仕組みとした搬送部であっても同様の効果が得られる。また乾燥部31での結露水の乾燥を促すために乾燥用ヒータ29を使用しているが、乾燥部31での結露乾燥を促すために、乾燥部31表面上での対流を促進するための乾燥用ファンなどを用いてもよい。また、乾燥用ファンではなく、野菜室8に冷気を送り込むために使われる冷却ファン14を使用して、乾燥部31の周囲空気の対流を促進する方法をとってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明にかかる結露水の吸水手段、搬送手段および乾燥手段からなる結露搬送手段による結露防止技術は、比較的単純な構成で収納容器の結露を収納容器外へ放出することができるので、家庭用又は業務用冷蔵庫もしくは野菜専用庫に対して実施することはもちろん、野菜以外の物品も含めた高湿保存が必要な流通、倉庫などの用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 冷蔵庫
8 野菜室(収納室)
20 下段収納容器(収納容器)
21 上段収納容器(収納容器)
25 吸い込み口
28 結露搬送部材
30 吸水部
31 乾燥部
32 搬送部
図1
図2
図3
図4
図5