(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 3/00 20060101AFI20230113BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20230113BHJP
F25D 11/02 20060101ALI20230113BHJP
F25D 17/06 20060101ALI20230113BHJP
F25D 17/08 20060101ALI20230113BHJP
F25D 17/04 20060101ALI20230113BHJP
F25D 25/02 20060101ALI20230113BHJP
F25D 25/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
F25D3/00 E
F25D11/00 101A
F25D11/02 A
F25D11/02 J
F25D17/06 308
F25D17/08 307
F25D17/04 302
F25D25/02 C
F25D25/02 L
F25D25/00 N
(21)【出願番号】P 2019029958
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2021-04-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】小柳 智之
(72)【発明者】
【氏名】堀井 愼一
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-025992(JP,U)
【文献】特開2008-002801(JP,A)
【文献】特開平04-098075(JP,A)
【文献】特開2005-226984(JP,A)
【文献】特開2016-205641(JP,A)
【文献】特開2012-017968(JP,A)
【文献】特開昭50-085957(JP,A)
【文献】特開2017-20661(JP,A)
【文献】実開昭55-169977(JP,U)
【文献】特開平9-318242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 3/00
F25D 11/00
F25D 11/02
F25D 17/06
F25D 17/08
F25D 17/04
F25D 25/02
F25D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵室に貯蔵物を置く貯蔵棚を備えた冷蔵庫において、前記貯蔵棚は、冷蔵温度帯で凝固する蓄冷材と、
前記貯蔵棚の下方に位置し前記冷蔵室より温度が低い低温貯蔵室へ冷気を吐出する庫内冷却吐出口を有した冷却風路と、
内部に断熱部材とを備え
、前記蓄冷材を収納する凹部は前記貯蔵棚の上面に形成し、前記冷却風路は前記貯蔵棚の内部に
形成されたダクト
風路を通って前記庫内冷却吐出口に連通して前記低温貯蔵室を冷却し、
前記ダクト風路は、前記凹部の側面側に配置し、前記庫内冷却吐出口は前記凹部の前面側に配置したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記貯蔵棚は、前記冷却風路と前記蓄冷材の間に断熱部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記貯蔵棚は、前記冷却風路の一部に冷却部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵棚は、上側貯蔵室と下側貯蔵室とを有し、前記上側貯蔵室より前記下側貯蔵室の方が低温であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記蓄冷材は、前記蓄冷材の外郭を形成する外郭部材とで構成された蓄冷ユニットとしたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫に関し、特にその冷蔵室構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に冷蔵庫は複数の温度帯貯蔵室を持ち、冷凍温度帯貯蔵室において、冷凍温度で凍る蓄冷材を利用した急速冷却の機能を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の冷蔵庫は、冷蔵温度帯貯蔵室に肉類・魚介類の保存に適した冷蔵温度帯よりも低い温度の低温度貯蔵室が設けられている。しかし、蓄冷材を用いた急冷機能を貯蔵室棚に備える場合、貯蔵室棚内に構成された風路部と蓄冷材が干渉する配置となってしまうため、両機能の両立が困難となってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の冷蔵庫は上記課題を解決するために、冷蔵室温度帯の貯蔵室棚に冷蔵温度で凝固する蓄冷材と貯蔵室を冷却する風路を併設したものである。これによって低温貯蔵室の冷却風路に干渉することなく食品の急速冷却機能を設けることができるようになり、低温度貯蔵室と急速冷却機能の両立が可能となる。
【0006】
また、貯蔵棚内の冷却風路と蓄冷材の間に断熱手段を設けたことで蓄冷材が過度に冷却され、蓄冷材表面での結露の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上記構成により、冷蔵庫冷蔵室低温度帯室の冷却能力を阻害せずに蓄冷材の冷蔵庫搭載を可能とし、さらに蓄冷材の過冷却による結露の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図
【
図13】同冷蔵庫の蓄冷材温度と鍋温度の経時変化を示した図
【
図14】本発明の実施の形態2における冷蔵庫の貯蔵棚を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、冷蔵室に貯蔵物を置く貯蔵棚を備えた冷蔵庫において、前記貯蔵棚は、冷蔵温度帯で凝固する蓄冷材と、庫内冷却吐出口を有した冷却風路と、を備えた構成とした。これにより、冷却風路による貯蔵室の冷却と、蓄冷材を用いた急冷機能の両立が可能とした貯蔵棚の構成が可能となる。
【0010】
第2の発明は、特に第1の発明において、貯蔵棚は、冷却風路と蓄冷材の間に断熱部材を備えた構成とした。これにより、冷却風路を通過する冷気と蓄冷材とを断熱し、冷気が蓄冷材を過度に冷却することと、蓄冷材の熱が冷却風路へ伝達されることを抑制することができ、蓄冷材の冷え過ぎによる結露防止と冷却風路温度上昇による貯蔵室温度影響を防止できる。
【0011】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、貯蔵棚は、冷却風路の一部に冷却部を備えた構成とした。これにより、冷却風路と蓄冷材の間での熱伝達を促進することで、一度食品の急速冷却を行って融解した蓄冷材の冷却速度を向上し、食品急速冷却機能を再利用できるまでの時間を短縮することができる。
【0012】
第4の発明は、特に第1~第3いずれか1つの発明において、貯蔵棚は、上側貯蔵室と下側貯蔵室とを有し、前記上型貯蔵室の温度より前記下側貯蔵室の温度の方が低温である構成とした。これにより、棚の風路によって下側貯蔵室温度を上側貯蔵室温度より低温にできるとともに蓄冷材の下側からも冷却が可能となり、蓄冷材の吸熱量が大きくなることで急冷効果が向上できる。
【0013】
第5の発明は、特に第1~第4いずれか1つの発明において、蓄冷材は蓄冷材の外郭を形成する外郭部材とで構成された蓄冷ユニットとした。これにより、蓄冷材の強度を向上させて、鍋などの荷重に耐え、かつ冷却対象と熱交換を行う接触面積を確保すると同時に、これら食品を置いた時の安定感を確保することができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1~
図7は冷蔵庫の全体及び各部構成を説明する図、
図8~9は冷蔵室に付設した蓄冷ユニットを説明する図、
図10~11は蓄冷ユニット冷却構成を説明する図である。
【0016】
(1.冷蔵庫の全体構成)
まず
図1~
図3を用いて冷蔵庫の全体構成を説明する。
図1~
図3において、本実施の形態に係る冷蔵庫は、前方を開口した冷蔵庫本体1を備え、この冷蔵庫本体1は金属製の外箱2と、硬質樹脂製の内箱3と、前記外箱2および内箱3の間に発泡充填された発泡断熱材4とで構成してあり、仕切板5、6等によって複数の貯蔵室が仕切形成してある。
【0017】
また、前記冷蔵庫本体1の各貯蔵室は冷蔵庫本体1と同様の断熱構成を採用した回動式の扉7或いは引出し式の扉8、9、10、11で開閉自在としてある。
【0018】
冷蔵庫本体1内に形成した貯蔵室は、最上部の冷蔵室14と、冷蔵室14の下に設けた温度帯切り替え可能な切替室15及びその横に設けた製氷室16と、切替室15及び製氷室16と最下部の野菜室17との間に設けた冷凍室18で構成している。
【0019】
冷蔵室14の温度は通常約3℃で、冷蔵保存のために凍らず、また食品の菌の発生を抑制するため1℃~10℃としている。野菜室17は、冷蔵室14の温度より若干高い約7℃を通常の設定としている。また冷凍室18は通常約-20℃で設定されているが、冷凍保存状態向上のために約-30℃とする場合もある。製氷室16は、冷凍室18と近い温度設定であり、また切替室15は、冷蔵室14と同等の温度から冷凍室18と同等の温度まで温度の設定を変化させることができる。
【0020】
また、冷蔵庫本体1の冷凍室18背面には冷却室23が設けてあり、この冷却室23には冷気を生成する冷却器24と、冷気を前記各室に供給する冷却ファン25とが設置してある。
【0021】
冷却器24は、圧縮機27と、コンデンサ(図示せず)と、放熱用の放熱パイプ(図示せず)と、キャピラリーチューブ(図示せず)とを環状に接続して冷凍サイクルを構成しており、圧縮機27によって圧縮された冷媒の循環によって冷却を行う。
【0022】
また、冷却ファン25は冷却器24の上方に設けてあり、その下流側に連なる冷蔵室ダクト28、冷凍室ダクト29、を介して冷蔵室14、冷凍室18、野菜室17等に冷気を供給し、これら各室を冷却するようになっている。
【0023】
(2.冷蔵室構成)
次に
図3~
図7を用いて冷蔵室構成を説明する。
【0024】
冷蔵室14は、冷蔵庫本体1の最上部に位置していて、透光性の材料で形成した複数の棚板20を着脱自在に設けて冷蔵室内空間を上下複数の空間に仕切るとともに、下部に低温貯蔵室21が設けてある。
【0025】
冷蔵室14の背面には冷蔵室ダクト28が設けてある。この冷蔵室ダクト28は発泡スチロールからなる断熱部材と冷蔵室側表面の樹脂製カバー部材で覆われた構成としてあり、冷蔵室14と冷凍室18との間を仕切る仕切板5の冷気供給口(図示せず)を覆う如く冷蔵室背面に装着して冷却室23と連通させてある。
【0026】
冷蔵室ダクト28は冷蔵室ダクト吐出口30、と冷蔵室ダクト戻り口31を備えており、冷却室23と連通している。冷蔵室ダクト吐出口30は、冷蔵室ダクト戻り口31に対し高い配置で構成されている。
【0027】
上記冷気供給口には冷蔵室ダンパ37が組み込んであり、この冷蔵室ダンパ37の開閉によって冷却室23から冷蔵室14への冷気の供給量を制御するようになっている。
【0028】
低温貯蔵室21はその冷却温度帯が、微凍結保存に適した-5~3℃の低め温度であるパーシャル温度、または、冷蔵室14よりも低いがパーシャル室よりは高い1℃前後の高め温度のチルド温度に冷却可能な構成としてある。冷蔵室14内には、冷蔵室14内を上下空間に区画する複数の棚板20の下方で冷蔵室14と低温貯蔵室21とを断熱区画する貯蔵棚として、貯蔵棚ユニット50が設けてある。
(3.貯蔵棚ユニット構成)
次に
図7を用いて貯蔵棚ユニット50の説明をする。低温貯蔵室21の天面として構成される貯蔵棚ユニット50は、
図7の断面図で示すように以下記載の構成部材を合わせることで、ユニットとして構成されている。
【0029】
貯蔵棚ユニット50の上面に食品を貯蔵するための貯蔵棚51が構成されており、貯蔵棚51の下面には発泡スチロール等からなる断熱部材53が組み込んである。これにより貯蔵棚51と低温貯蔵室21の間を断熱し、それぞれの貯蔵空間を別個の温度帯にすることができる。
【0030】
貯蔵棚ユニット50の上面部には凹部54が設けられている。凹部54に対応する断熱部材53の形状も同様の凹み形状を構成している。
【0031】
蓄冷ユニット60は、貯蔵棚ユニット50に設けられた凹部54に着脱可能に収納配置されている。収納された蓄冷ユニット60の上面部は、貯蔵棚51の上面部と同面になるよう配置されている。
(4.蓄冷ユニット構成)
次に
図8~
図9を用いて蓄冷ユニット構成を説明する。
【0032】
図8に示すように、蓄冷ユニット60は、上下に分割配置された以下記載の構成部材が合わせることで、ユニットとして構成している。
【0033】
蓄冷ユニット60は、樹脂材料系で成型された枠体形状をした上外郭部材61と、上外郭部材61の裏側から組み込まれる金属材料等の高熱伝導部材で形成された冷却板62と、上外郭部材61と嵌合組立てされる樹脂材料系で成型された下外郭部材63と、上外郭部材61外郭の内側と下外郭部材63外郭の内側との間に金属フィルム等の袋部材64によって被覆された蓄冷材65とが組合わさることで、ユニットとして構成されている。また、袋部材64は、アルミ箔を積層加工したフィルムで形成されている。
【0034】
具体的には、
図9に示すように、冷却板62の外周部には段差部62aを備え、段差部62aの上面に上外郭部材61が重なるように配置され、冷却板62の上面部と上外郭部材61とが略同一面となるように構成されている。
【0035】
冷却板62は、段差部62aを形成したことで、蓄冷ユニット60の上面部を形成する冷却板62と上外郭部材61の上面部とが略同一面となるので、蓄冷ユニット60を貯蔵棚ユニット50に収納した時に貯蔵棚51上面と略同一面でフラットにして収納できるので、冷却板62からはみ出して鍋等の容器(後述する対象物70)を置いた場合でも安定して置くことができる。
【0036】
蓄冷材65を封入した袋部材64は蓄冷ユニット60の内部で冷却板62のみと接着剤や両面テープなどの接着材で接着されている。
【0037】
また、液体状態の蓄冷材65と上外郭部材61や下外郭部材63との間には空間部71が形成されるように構成されている。この空間部71により、蓄冷材が凝固して体積膨張した状態でも、蓄冷ユニット60内で冷却板62への熱伝導は維持しながら、上外郭部材61や下外郭部材63への接触による変形を抑制することができる。また、冷却板62の対向面となる下外郭部材63に対して袋部材64を接着していないので袋部材64の破損を防止することができる。
【0038】
蓄冷材65は、冷蔵室の冷蔵温度で凝固する材料を用いており、例えば特開2017-003182号公報に記載された材料を使用している。具体的には、第四級アンモニウム塩のクラスレートハイドレートのように冷却によりクラスレートハイドレートを形成する材料の中には、0℃より高い融点(クラスレートハイドレートの分解が始まる温度)を有する材料がある。例えば、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)のクラスレートハイドレートは約5~12℃の融点を有するものがある。
【0039】
袋部材64に封入されている蓄冷材65の内部には、金属ウール等の熱伝導促進部材66が浸漬した構成とし、前記熱伝導促進部材66は袋部材64と少なくとも一箇所以上の接触部を有するように螺旋状に収納された状態としてある。
【0040】
また、蓄冷ユニット60には食品の最適な設置場所を示す設置位置指示部67を設けている。
【0041】
また蓄冷ユニット60の上面部となる冷却板62は貯蔵棚51とは異なる色で形成されているので、急速冷却したい対象食品を貯蔵棚ユニット50のどの位置に置けばよいかを示すことができる。
【0042】
(5.蓄冷ユニット冷却構成)
次に
図10~
図13を用いて蓄冷ユニットの冷却構成を説明する。
【0043】
蓄冷ユニット60は、貯蔵棚51の凹部54に設置されており、凹部54の下部には発泡スチロール等からなる断熱部材53が組み込まれており、低温貯蔵室21と蓄冷ユニットとの間を断熱している。
【0044】
凹部54の側面部には、冷気が流入するダクト風路80が備わっている。ダクト風路80はダクト風路入口81を介して冷蔵室ダクト28と連通しており、冷蔵室ダクト28から吹き込む冷気の一部がダクト風路入口81からダクト風路80を介してダクト風路吐出口82より低温貯蔵室21へと流出する構成となっている。
【0045】
ダクト風路80と凹部54とが接する部位の凹部側には金属材料などの高熱伝導材料で構成された凹部冷却板84が構成されており、風路外壁と接する状態としてある。
【0046】
凹部冷却板84は貯蔵棚ユニット50の凹部54の底面や側面に設けられており、また、蓄冷ユニット60の底部には、蓄冷ユニット60を支持する底面凸部85や、底面凹部86が設けられ、貯蔵棚51の凹部54や凹部冷却板84との間に空間が構成される。
【0047】
蓄冷ユニット60の底部の底面凹部86には、底部冷却板87が構成されており、底部冷却板87と凹部冷却板84とが接触か、またはそれに近い状態で設置されている。
【0048】
また、外郭部材60aを金属材料等の高熱伝導材料で構成する場合には、外郭部材60aの表面の温度が底面側まで熱を伝えやすくすることができる。
【0049】
さらに、外郭部材60aの内側には、金属材料等の高熱伝導材料で構成された内部熱伝導手段88を設けており、外郭部材60a表面の温度が底面側に伝わりやすくしている。
【0050】
また、貯蔵棚51の一部分に手の指を挿入できる挿入凹部83を設けることで、蓄冷ユニット60を貯蔵棚51から取り外しやすくでき、蓄冷ユニット60の外郭部材60aに持ち手部89を設けることで持ち運びし易くしている。挿入凹部83は、貯蔵棚51の奥側に配置することで、食品設置時の邪魔にならないようにする。
【0051】
以上のように構成した冷蔵庫について、以下、その動作と作用効果を説明する。
【0052】
冷蔵庫は、冷蔵室14の温度が設定温度より高くなると、圧縮機27と冷却ファン25を駆動し、冷却器24で生成された冷気を、冷却ファン25の下流側に供給する。
【0053】
冷却ファン25の下流側に供給された冷気は、冷蔵室ダクト28等を介して、冷蔵室14、野菜室17、冷凍室18、低温貯蔵室21に供給され、各室を冷却する。そして、前記各室への冷気供給はダンパ(図示せず)の開閉によってそれぞれ制御され、冷蔵室14、野菜室17、冷凍室18、低温貯蔵室21をそれぞれの設定温度に冷却する。
【0054】
冷却室23から冷蔵室ダクト28に供給された冷気は、冷蔵室14内を循環し、また冷却室23に戻っていく。この間の庫内温度変化状況については、冷蔵室温度センサ(図示せず)からの出力に基づき、ダンパ開閉によってよって冷気供給量を制御し温度制御が行われる。
【0055】
冷蔵室内に構成される低温貯蔵室21は冷蔵室を冷却するダンパと別に構成されたダンパから供給される冷気を貯蔵棚51の下部に構成されたダクト風路80から流すことで、冷蔵室内温度より低い温度に維持される。
【0056】
次に、
図13で、蓄冷ユニットによる急速冷却について説明する。
【0057】
貯蔵棚ユニット50に収納配置された蓄冷ユニット60は、通常、冷蔵室14内の温度と同じ温度で維持されている。蓄冷ユニット60の上表面は貯蔵棚51の表面と同面であるため、蓄冷ユニット60の大きさを超えるサイズの食品であっても、蓄冷ユニット60が使用制限を与えることなく自由に使用することができる。
【0058】
また、冷却板62に絞り加工することで、冷却板62の強度が高くなり、蓄冷材65が相変化に伴って体積変化したときに蓄冷ユニット60の上表面が変形するのを抑制できる。これにより、鍋等との接触面積を増やし蓄冷ユニットと鍋等との熱交換効率を向上することができ、より急速冷却効果を向上できる。
【0059】
急速冷却したい状況について述べる。調理後の残った食材を次の食事までの間おいしさと安全性を保持したままで保存したいというニーズは多い。例えば、鍋等の温度の高い食材を夏場の朝に調理し、その後すぐに外出する状況において、そのまま放置してしまうと食品に菌が発生し、夜帰宅したときには食品が傷み食べられなくなる状況などがある。このとき、朝の調理後に急速冷却できればそのような状況の発生を防止することができる。
【0060】
一般的に食材温度が約20℃~50℃の温度帯のときに食中毒菌が発育し易い温度帯と言われている。この温度帯を早く通過させることで菌の発生を抑制し安全性を確保することができる。
【0061】
食材を調理し料理が残った状態の鍋や、冷め切っていない沸かしたお茶が入ったヤカン、作り立てのお弁当等、温度の高い状態の対象物70(約40℃~90℃)を、蓄冷ユニット60の冷却板62の上面に置く。
対象物70は、冷却板62と袋部材64と熱伝導促進部材66を介して、蓄冷材65と熱交換を行うことで対象物70を急速冷却することができる。蓄冷材は潜熱100J/g以上、過冷却深度も加味し0℃以上で凝固し、融点10℃以下の材料を用いることで急速冷却の効果を確保する。
【0062】
図13は、常温の蓄冷材65を冷蔵室14内の所定位置に収納した時点からの温度変化を示す。蓄冷材65は、前述の材料で、凝固点が例えば5℃、融点は例えば7℃の材料を用いている。冷蔵室温度が約3℃の場合、蓄冷材65は冷蔵室温度近傍まで過冷却深度となって過冷却し、過冷却解除後に凝固し始め、凝固点の5℃まで上昇した後、蓄冷材65は冷蔵室温度で固体となった状態で維持している。
【0063】
対象物70である鍋を凝固した蓄冷ユニットに設置した後、蓄冷材65の温度が上がるが、対象物70の温度が約20℃~50℃の温度帯を通過する時に蓄冷材の潜熱を使うので、この温度帯を早く通過することができ、蓄冷材の潜熱効果により融解温度(7℃)付近で一旦温度が安定する。その後、潜熱を使った後、再び温度が上昇し融解する。この融解までの過程によって、対象物の温度を急速に冷蔵室温度まで冷却することができる。
【0064】
蓄冷材65の潜熱を有効的に利用することで冷却スピードを速めることができる。そのためには対象物70の熱を蓄冷材65内全体にすばやく伝え、蓄冷材65全体で熱交換を行える状況にする必要がある。
【0065】
熱伝導促進部材66は、銅やアルミ材料をウール状に形成されたものであり、袋部材64内全体に広がるようにして袋部材64にも接触する程度の量を設置してある。これによって冷却板62から離れた位置にある蓄冷材65においても、有効的に活用することができる。
【0066】
温度の高い対象物70が冷蔵室14に投入されると、冷蔵室温度センサ(図示しない)が冷蔵室14内の温度上昇を感知し、ダンパ開閉の制御を行い冷蔵室ダクト28から吐出される冷気の供給を増やすことで、蓄冷ユニット60と相乗的な急冷効果を得ることができ、冷却スピードをより速くすることができる。
【0067】
対象物70と熱交換をした後の蓄冷材65は、融解した状態となっており冷蔵室14の温度よりも高い状態となっている。これによる周辺食材、特に蓄冷ユニット60が設置される下側の低温貯蔵室21への温度影響を抑制するために、蓄冷ユニット60が埋設する貯蔵棚ユニット50に設けられた凹部54の下側を、通常から低い温度帯にするとともに、発泡スチロール等からなる断熱部材53を組み込むことで、その温度影響を抑制することができる。
【0068】
また蓄冷材65の凝固点が5℃なので、冷蔵室温度(約3℃)より高く冷蔵室14内に入れた状態で凝固するので、蓄冷ユニット60は取り出すことなく、冷蔵室14内に入れたままで使うことができる。
【0069】
また、蓄冷材65の融点を10℃以下にすることで、周辺食材の温度上昇も10℃以下に抑えることが可能となる。これにより急速冷却の対象食品だけでなく周辺食材においても、菌の繁殖を抑制する理想的な保存温度10℃以下を実現できる。
【0070】
また、温度の高い対象物70は、急速冷却効果を得るためには、冷蔵室14の冷却板62の上面に置く必要があり、蓄冷ユニット60に設置場所を示す刻印やシールなど設置位置指示部67設けている。
【0071】
例えば冷却板62に小さな凹で円形状のマークや文字刻印、ロゴ等を設けたり、上外郭部材61に刻印やシール等で機能を説明するなどの表示を設けたりしている。冷却板62に小さな凹を刻印することにより、鍋等との接触面積の減少を最小限に抑えることができるだけでなく、冷却板62の強度をさらに高め平面度を向上させ熱交換効率を向上させる効果も得られる。
【0072】
製品設置後の初期運転時や、温度の高い状態の対象物70の急速冷却後、融解してしまった蓄冷材65を再使用可能な状態に素早く復帰させるために蓄冷ユニット60の専用冷却手段を設け、蓄冷材65の復帰速度を向上させる。
【0073】
凹部54の側面部には、冷蔵室ダクト28から冷気が流入するダクト風路80が備わっている。冷蔵室ダクト28から吹き込む冷気の一部がダクト風路入口81に入り込み、ダクト風路80を通過してダクト風路吐出口82より低温貯蔵室21へと流出し、低温貯蔵室21を冷却する。
【0074】
ダクト風路80は断熱部材で構成されており、外部より熱が侵入したり、冷気が外部へ漏れたりすることはないが、凹部54と隣接しているダクト風路80を覆う断熱部材の部分は薄くなっており、凹部54側は金属材料などの高熱伝導材料で構成された凹部冷却板84と接していて、ダクト風路80を通過する冷気が低温貯蔵室21を冷却する際にあわせて凹部冷却板84を冷却する。
【0075】
ダクト風路吐出口82からの冷気は冷蔵室ダンパ37の開閉によって、吐出量や時間を調節され、蓄冷材65と低温貯蔵室21との状態に応じた冷却を行うことができる。
【0076】
また、凹部冷却板84は凹部54の側面から底面へ繋がるように構成されることで、凹部冷却板84の熱伝導効果により、凹部54底面側の冷却効果を高めることができる。さらに、蓄冷ユニット60の底部の底面凹部86に設置された底部冷却板87は、凹部冷却板84と接触した状態で配置されることで、凹部冷却板84の熱が直接伝わることになり、蓄冷ユニット60の底部の冷却速度を早めることができる。
【0077】
また、外郭部材60aの内側に構成された内部熱伝導手段88は、蓄冷ユニット60内部で、表面側と底面側の温度差を抑制し、表面側で冷却された熱を底面側へより早く伝えることで、蓄冷材65を短時間で凝固させることができる。
【0078】
内部熱伝導手段88は、冷却板62と接触させることで、冷却効果を高めることができ、さらに、内部熱伝導手段88と冷却板62が一体化されることで熱伝導効果をより向上させることができる。
【0079】
また、蓄冷材65の融解や凝固状態を温度等によって感知するセンサーを設けることによって、ダンパ開閉の制御を行い冷蔵室ダクト28から吐出される冷気の供給を調整し、蓄冷材65の凝固時には速度を向上させることができる。
【0080】
以上のように、蓄冷ユニット60の専用冷却手段を設けたことで、初期の融解した蓄冷材の凝固までの時間短縮と、使用後の再凝固までの時間短縮による繰り返し使用時における効果を確保ができ、使用頻度を高めることができる。
【0081】
(実施の形態2)
図14は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の貯蔵棚ユニット50を示す平面図である。
図15は、
図14のC-C線における貯蔵棚ユニット50の断面図である。なお、実施の形態1と同一部分は同一符号を付与して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0082】
図14において、蓄冷ユニット60は、貯蔵棚ユニット50の下部に組み込まれた断熱部材凹部90上に設置され、蓄冷ユニット60が貯蔵棚51と断熱部材凹部90に密閉されるかたちで構成されることによって、汚れの侵入を防ぐことができ蓄冷ユニット60を清潔に保つことができる。
【0083】
蓄冷ユニット60の上面は貯蔵棚51の下面と接する構成となっており、冷蔵室空間と空間91との間を断熱する効果も持つ。蓄冷ユニット60の底面は底面凸部85を介して断熱部材凹部90と接している。その結果、蓄冷ユニットと断熱部材の間には冷気が通過する空間91が存在する。
【0084】
断熱部材凹部90は蓄冷ユニット60を断熱部材で覆う形で構成されているが、側面部の一部に、ダクト風路80から冷気が流入するダクト風路入口81とダクト風路吐出口82が備わっている。冷蔵室ダクト28から吹き込む冷気の一部はダクト風路入口81から空間91を介してダクト風路吐出口82へ流れ、ダクト風路80を流れる冷気と合流してダクト風路吐出口82より低温貯蔵室21へと流出する構成となっている。
【0085】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。なお、実施の形態1と同様である動作・作用についての説明は省略する。
【0086】
製品設置後の初期運転時や、温度の高い状態の対象物70の急速冷却後、融解してしまった蓄冷材65を再使用可能な状態に素早く復帰させるために蓄冷ユニット60の専用冷却手段を設け、蓄冷材65の復帰速度を向上させる。
【0087】
断熱部材凹部90の側面の一部に構成された冷気が流入するダクト風路入口81からダクト風路80を通過している低温冷気の一部が断熱部材凹部90内の空間91に流入する。流入した低温の冷気は蓄冷ユニット60を冷却し蓄冷材65を短時間で凝固させることができる。
【0088】
断熱部材凹部90内では蓄冷材が優先的に冷やされるため、蓄冷材は貯蔵棚51と空間91との間の断熱も果たしている。
【0089】
また、蓄冷材65の融解や凝固状態を温度等によって感知するセンサーを設けることによって、ダンパ開閉の制御を行い冷蔵室ダクト28から吐出される冷気の供給を調整し、蓄冷材65の凝固時には速度を向上させることができる。
【0090】
また、温度の高い対象物70が急速冷却効果を得るためには、対象物70を冷蔵室14の貯蔵棚51の上面に置く必要があり、蓄冷ユニット60に設置場所を示す刻印やシールなど設置位置指示部67を貯蔵棚51に設けている。指示部の内容は、例えば小さな凹で円形状のマークや文字刻印、照明、ロゴを設ける、シール等で機能を説明したりするなどが考えられる。
【0091】
以上、本発明に係る冷蔵庫について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。つまり、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、冷蔵温度帯で低温保存したい多様な食材を最適状態もしくはより最適な状態で冷却保存でき、食材の多様化に対応した使い勝手の良い冷蔵庫とすることができる。よって、家庭用および業務用など様々な種類および大きさの冷蔵庫に適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 冷蔵庫本体
2 外箱
3 内箱
4 発泡断熱材
5、6 仕切板
7、8、9、10、11 扉
14 冷蔵室
15 切替室
16 製氷室
17 野菜室
18 冷凍室
20 棚板
21 低温貯蔵室
23 冷却室
24 冷却器
25 冷却ファン
28 冷蔵室ダクト
29 冷凍室ダクト
30 冷蔵室ダクト吐出口
31 冷蔵室ダクト戻り口
50 貯蔵棚ユニット
51 貯蔵棚
53 断熱部材
54 凹部
60 蓄冷ユニット
61 上外郭部材
62 冷却板
63 下外郭部材
64 袋部材
65 蓄冷材
66 熱伝導促進部材
67 設置位置指示部
70 対象物
80 ダクト風路
81 ダクト風路入口
82 ダクト風路吐出口
83 挿入凹部
84 凹部冷却板
85 底面凸部
86 底面凹部
87 底部冷却板
88 内部熱伝導手段
89 持ち手部
90 断熱部材凹部