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特許7209156多峰性ポリイソオレフィン組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】多峰性ポリイソオレフィン組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/22 20060101AFI20230113BHJP
   C08F 210/12 20060101ALI20230113BHJP
   C08L 23/28 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C08L23/22
C08F210/12
C08L23/28
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019517072
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 CA2017051149
(87)【国際公開番号】W WO2018058245
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】16191508.7
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516186267
【氏名又は名称】アランセオ・シンガポール・プライヴェート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャロン・グオ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ジェイ・イー・デヴィッドソン
(72)【発明者】
【氏名】ブリアンナ・バインダー
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-146941(JP,A)
【文献】特開昭52-010354(JP,A)
【文献】特表2001-523302(JP,A)
【文献】特表2004-506088(JP,A)
【文献】特表2005-531655(JP,A)
【文献】国際公開第2007/117374(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08F 6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多峰性分子量分布を有するポリイソオレフィンをベースとするポリマー組成物を製造する方法であって、第1の工程において連鎖移動剤の非存在下でイソオレフィンを重合し、第2の工程において連鎖移動剤の存在下でイソオレフィンの重合を続けて、100,000g/mol未満のピーク分子量(Mp)を有する低分子量画分及び250,000g/molより大きいピーク分子量(Mp)を有する高分子量画分を含む多峰性分子量分布を含むポリイソオレフィンをベースとするポリマー組成物であって、低分子量画分が高分子量画分より少ない量で組成物中に存在する組成物を製造することを含む、方法。
【請求項2】
重合する工程が、溶液重合法、スラリー重合法、バッチ法又は連続法である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の工程を、10~45分間の範囲の時間実施する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
モノマーのポリマーへの変換率が25%以上に達したときに連鎖移動剤を添加する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
重合が開始した後に、1種又は複数のコモノマー及び/又は分岐剤を添加する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
イソオレフィンがイソブテンであり、イソブテンを、β-ピネン又は少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーと共重合させる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ポリイソオレフィンをベースとするポリマーを臭素化又は塩素化する工程を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソオレフィン組成物、特にブチルゴム組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブチルゴムは、イソオレフィンと、コモノマーとしての1種又は複数の、好ましくは共役の、マルチオレフィンと、のコポリマーであると理解される。特に、ポリ(イソブチレン-コ-イソプレン)(IIR)は、イソブチレン(IB)及びイソプレン(IP)を用いたカチオン重合によって製造される高分子量コポリマーである。1940年代以降、IIRはイソブチレンと少量のイソプレン(通常2.5mol%以下)とのランダムカチオン共重合によって調製されている。ブチルゴムすなわちブチルポリマーは、一般に、塩化メチルを希釈剤として用い、フリーデルクラフツ触媒を重合開始剤の一部として用いて、スラリー法で調製される。この方法は、参照によりその内容が本明細書に組み込まれている米国特許第2,356,128号及びUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry、第A 23巻、1993、288~295頁に更に記載されている。
【0003】
2.5mol%未満のイソプレンを含有するブチルゴムを製造するための触媒系に関する改善が、Gronowski(米国特許第6,403,747号)により提示された。この改善では、ジアルキルアルミニウムを微量成分のジエチルアルミニウム及び少量の水又はその他の添加剤と反応させる。Gronowskiが提示した改善によって、ブチルゴムを製造するための、改善された活性をもつより均一な触媒の製造が可能になる。このような進歩は本発明に応用することができる。
【0004】
その分子構造の結果として、IIRは優れた空気不透過性、高い損失弾性率、酸化安定性及び長期の耐疲労性を保有する。このエラストマーは、ガスに対する非常に低い透過性のため、主としてタイヤのインナーライナー及びインナーチューブに使用され、また、優れた耐老化性及び耐薬品性、又はこのポリマー構造に固有の高い減衰特性のために、他の応用分野に最適な材料でもある。
【0005】
混合(インターナルミキサー)、ミル加工、カレンダー加工、押出、及び成型加工中のブチルゴムの加工性は、顧客にとって最も重要なことである。高分子量のブチルポリマーは、改善されたグリーン強度をもたらすが、応力緩和に負の影響を与える可能性があり、すると結果として得られるゴムコンパウンドの他の加工特性に負の影響を及ぼす。異なるポリマーとブレンドしたり、いろいろな分子量のブチルゴムをブレンドしたり、配合の途中で油又は樹脂を加えたり等、ブチルゴムへの後修飾によって加工処理の容易さを改善しようとする幾つかの試みがなされてきた。このような試みは加工性を改善することが示されているが、製品の全合成において追加の工程を必要としたり、コストを上昇させたりし、又は仕上がったコンパウンドの物理的特性に不利な影響を及ぼしたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第2,356,128号
【文献】米国特許第6,403,747号
【文献】米国特許第5,417,930号
【文献】米国特許第6,841,642号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry、第A 23巻、1993、288~295頁
【文献】Rubber Technology、第3版、Maurice Morton、Kluwer Academic Publishers編、297~300頁
【文献】Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (第5完全改訂版、第A231巻、Editors Elvers等)
【文献】Rubber Technology (第3版) by Maurice Morton、第10章(Van Nostrand Reinhold Company (C) 1987)、particularly、297~300頁
【文献】J. Macromol. Sci.-Chem.、A1(6)、995-1004頁、(1967)、Kennedy等
【文献】Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第17巻、s. 666 et seq. (Vulcanization)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当技術分野ではポリイソオレフィンポリマー、特にブチルゴムの加工性の改善が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、約100,000g/mol未満のピーク分子量(Mp)を有する低分子量画分及び約250,000g/molより大きいピーク分子量(Mp)を有する高分子量画分を含む多峰性分子量分布を含むポリイソオレフィンをベースとするポリマー組成物であって、低分子量画分が高分子量画分より少ない量で組成物中に存在する、組成物が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、多峰性分子量分布を有するポリイソオレフィンをベースとするポリマー組成物を製造する方法であって、第1の工程において連鎖移動剤の非存在下でイソオレフィンを重合し、第2の工程において連鎖移動剤の存在下でイソオレフィンの重合を続けて、約100,000g/mol未満のピーク分子量(Mp)を有する低分子量画分及び約250,000g/molより大きいピーク分子量(Mp)を有する高分子量画分を含む多峰性分子量分布を含み、低分子量画分が高分子量画分より少ない量で組成物中に存在する、ポリイソオレフィンをベースとするポリマー組成物を製造することを含む、方法が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、本発明のポリイソオレフィンをベースとするポリマー組成物を含む硬化物品が提供される。
【0012】
本発明は、有利なことに、ポリイソオレフィンをベースとするポリマー組成物から製造される硬化物品の物理的特性及び寸法安定性を維持したまま、改善された加工性を有するポリイソオレフィンをベースとするポリマー組成物を提供する。改善された加工性により、混合時間及びエネルギーが低減し、配合コストが低下し、より高いスループット及び生産量が得られる。更なる利益としては、プロセス油の使用の低減、充填材装填量の増加、不透過性の改善及び熱酸化安定性の改善を挙げることができる。
【0013】
本発明の更なる特徴は、以下の詳細な説明で記載されるか又は明らかとなろう。
【0014】
以下、本発明がより明瞭に理解され得るように、添付の図面を参照してその実施形態を例により詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、イソブチレンとイソプレンの溶液共重合において共重合開始の30分後に連鎖移動剤を加えた場合の、ジイソブチレン(DIB)連鎖移動剤の反応時間の、低分子量画分の生成に対する効果を示すゲル浸透クロマトグラム(GPC)である。
図2図2は、イソブチレンとイソプレンの溶液共重合において共重合開始の30分後にDIBを加えた場合の、生成された低分子量画分の量に対するDIB反応時間の効果を示すグラフである。
図3図3は、イソブチレンとイソプレンの溶液共重合において共重合開始の30分後に連鎖移動剤を加えた場合の、全ポリマー組成物の分子量Mp、Mw及びMnに対するDIB反応時間の効果を示すグラフである。
図4図4は、イソブチレンとイソプレンの溶液共重合の第3の試験において共重合開始の30分後に連鎖移動剤を加えた場合の、低分子量画分の生成に対する増加する量のジイソブチレン(DIB)連鎖移動剤の効果を示すゲル浸透クロマトグラム(GPC)である。
図5図5は、市販のBB2030と比較してEP-IIRにおけるポリマーの分子量分布を比較したグラフである。
図6図6は、本発明の臭素化された二峰性ブチルゴム(EP-IIR)からタイヤライナーを調製するのに必要とされる混合エネルギーを市販の臭素化ブチルゴム(BB2030)と比較して示すトルク対時間のグラフである。
図7図7は、本発明の臭素化された二峰性ブチルゴム(EP-IIR)から調製されたタイヤライナーの緩和特性を市販の臭素化ブチルゴム(BB2030)と比較して示すトルク対時間のグラフである。
図8図8は、本発明の臭素化された二峰性ブチルゴム(EP-IIR)の硬化特性を市販の臭素化ブチルゴム(BB2030)と比較して示すトルク対時間のグラフである。
図9図9は、本発明の臭素化された二峰性ブチルゴム(EP-IIR)の引張特性を市販の臭素化ブチルゴム(BB2030)と比較して示す応力対歪みのグラフである。
図10図10は、本発明の規則的な二峰性のブチルゴム(EP-IIR)から標準的なコンパウンドを調製するのに必要とされる混合エネルギーを、同様な原料ポリマームーニー粘度を有する市販のブチルゴム(PB402)と比較して示すトルク対時間のグラフである。
図11図11は、本発明の二峰性ブチルゴム(EP-IIR)から調製されたコンパウンドの緩和特性を市販のブチルゴム(RB402)と比較して示すトルク対時間のグラフである。
図12図12は、本発明の規則的な二峰性ブチルゴム(EP-IIR)の硬化特性を市販のブチルゴム(RB402)と比較して示すトルク対時間のグラフである。
図13図13は、本発明の規則的な二峰性のブチルゴム(EP-IIR)の引張特性を市販のブチルゴム(RB402)と比較して示す応力対歪みのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特許請求の範囲を含めて本明細書で、ある品目に関連して冠詞「a(1つ(種)の)」、「an(1つ(種)の)」、又は「the(その)」の使用は、幾つかの実施形態において複数のその品目を含む可能性を排除することを意図していない。当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を含めた本明細書において少なくとも幾つかの例で、少なくとも幾つかの実施形態において複数のその品目を含むことが可能である。
【0017】
ポリイソオレフィンをベースとするポリマー組成物は、多峰性分子量分布を有する。約100,000g/mol未満のピーク分子量(Mp)を有する低分子量画分及び約250,000g/molより大きいピーク分子量(Mp)を有する高分子量画分が存在する。低分子量画分は高分子量画分より少ない量で組成物内に存在し、従って高分子量画分は低分子量画分より多い量で存在する。ポリマー組成物は少なくとも2つの異なる分子量ピーク(Mp)を含むが、3、4、5又はそれ以上の異なる分子量ピークがあってもよい。1つの実施形態において、ポリマー組成物は2つの分子量ピークを示す二峰性分子量分布を有する。
【0018】
ポリマー組成物中の低分子量画分の量は、ポリマーの総質量に対して約50wt%(質量%)未満、例えば、約45wt%以下、約40wt%以下、約35wt%以下、約30wt%以下、約25wt%以下又は約20wt%以下であり得る。ポリマー組成物中の低分子量画分の量は、ポリマーの総質量に対して少なくとも約5wt%、例えば、少なくとも約10wt%、少なくとも約15wt%、少なくとも約20wt%、少なくとも約25wt%、少なくとも約30wt%、少なくとも約35wt%、少なくとも約40wt%又は少なくとも約45wt%であってよいが、但し、低分子量画分の量は高分子量画分の量より少ない。様々な実施形態において、低分子量画分の量は、上に述べた限界の任意の組合せ内でよい。特に好ましい範囲は、15~25wt%である。低分子量画分のMpは、約100,000g/mol未満である。幾つかの実施形態において、Mpは、約10,000g/mol~約100,000g/mol、又は約25,000g/mol~約100,000g/mol、又は約50,000g/mol~約100,000g/molの範囲内でよい。
【0019】
ポリマー組成物中の高分子量画分の量は、ポリマーの総質量に対して約50wt%より多く、例えば、少なくとも約55wt%、少なくとも約60wt%、少なくとも約65wt%、少なくとも約70wt%、少なくとも約75wt%、少なくとも約80wt%、少なくとも約85wt%であり得る。ポリマー組成物中の高分子量画分の量は、約90wt%以下、約85wt%以下、約80wt%以下、約75wt%以下、約70wt%以下、約65wt%以下、約60wt%以下又は約55wt%以下であってよいが、但し低分子量画分の量が高分子量画分の量より少ない。様々な実施形態において、高分子量画分の量は上に述べた限界の任意の組合せ内でよい。特に好ましい範囲は、85~75wt%である。高分子量画分のMpは、約250,000g/molより大きい。幾つかの実施形態において、Mpは、約300,000g/molより大きくてよい。幾つかの実施形態において、Mpは、約250,000g/mol~約2,000,000g/mol、又は約300,000g/mol~約800,000g/mol、又は約350,000g/mol~約600,000g/mol、又は約350,000g/mol~約550,000g/molの範囲内でよい。
【0020】
低分子量テールをもつ分子量分布(MWD)を有する本発明のポリマー組成物は、このポリマー組成物から製造される硬化物品の物理的特性に不利な影響を及ぼすことはないが、このポリマー組成物は改善された加工性を示す。高い方の分子量ピークは、低分子量画分に起因する何らかの負の効果を緩和しつつ、優れた物理的特性をもつポリイソオレフィンをベースとする材料をもたらす高分子量画分によるものである。高分子量画分は、好ましくは狭い多分散指数(PDI)を有する。
【0021】
本発明は特別なポリイソオレフィンに限定されない。しかし、4~16個の炭素原子、好ましくは4~7個の炭素原子を有するイソオレフィンモノマー、例えばイソブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、4-メチル-1-ペンテン及びこれらの混合物から製造されたポリイソオレフィンが好ましい。イソブテン(イソブチレンともいう)がより好ましい。ポリイソブチレンは、ポリイソオレフィンの一例である。
【0022】
ある実施形態において、ポリイソオレフィンをベースとするポリマー組成物は、少なくとも1種のイソオレフィンモノマーと少なくとも1種の他のモノマーとのコポリマーを含み得る。特に好ましい実施形態において、ポリイソオレフィンをベースとする材料は、ブチルゴムである。ブチルゴムは、少なくとも1種のイソオレフィンモノマーと、β-ピネン又は少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーと、の共重合によって形成される。当業者に公知の、イソオレフィンと共重合可能なあらゆるマルチオレフィンを使用することができる。しかし、4~14個の炭素原子を有するマルチオレフィンモノマー、例えば、イソプレン、ブタジエン、2-メチルブタジエン、2,4-ジメチルブタジエン、ピぺリリン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチルブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1-ビニル-シクロヘキサジエン及びこれらの混合物、好ましくは共役ジエンを使用してもよい。イソプレンがより好ましく使用される。
【0023】
ブチルゴムは、場合により、更なる共重合可能なモノマー、好ましくはカチオン重合可能なモノマーを含んでいてもよい。任意の更なるモノマーとして、当業者に公知のイソオレフィン及び/又はジエンと共重合可能ないかなるモノマーを使用することもできる。インデン、スチレン誘導体又はこれらの混合物を任意のモノマーとして使用してもよい。α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、クロロスチレン又はこれらの混合物が好ましく使用される。p-メチルスチレンはより好ましく使用される。
【0024】
ブチルゴムポリマーは、ハロブチルポリマーを製造するために、ハロゲン化プロセスにかけることができる。臭素化又は塩素化は、当業者に公知の方法、例えば、Rubber Technology、第3版、Maurice Morton、Kluwer Academic Publishers編、297~300頁及びそこに引用されている更なる文献に記載されている手順に従って実行することができる。ハロゲン化中、ブチルポリマーのマルチオレフィン含量の一部又は全てがハロゲン化アリルに変換される。ハロブチルポリマー内のハロゲン化アリルは、従って、元々ブチルポリマー内に存在していたマルチオレフィンモノマーから誘導された繰返し単位である。ハロブチルポリマーの総ハロゲン化アリル含量は、親のブチルポリマーの出発マルチオレフィン含量を超えることができない。
【0025】
ハロゲン化剤は、元素の塩素(Cl2)又は臭素(Br2)及び/又はその有機ハロゲン化物前駆体、例えばジブロモ-ジメチルヒダントイン、トリ-クロロイソシアヌル酸(TCIA)、n-ブロモスクシンイミド、等を含み得る。好ましくは、ハロゲン化剤は、臭素を含むか又は臭素である。この手順中のハロゲン化の量は、最終のポリマーが上に記載したハロゲンの好ましい量を有するように制御することができる。ハロゲンをポリマーに結合する具体的な様式は特に制限されず、当業者は本発明の利益を達成しつつ上に記載したもの以外の様式を使用してもよいことを認識するであろう。溶液相ハロゲン化プロセスに関する追加の詳細及び代替の実施形態については、例えば、参照により本明細書に組み込まれるUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (第5完全改訂版、第A231巻、Editors Elvers等)及び/又は「Rubber Technology」(第3版) by Maurice Morton、10章(Van Nostrand Reinhold Company(C)1987)、particularly 297~300頁を参照されたい。
【0026】
重合反応は、ルイス酸(例えばAlCl3又はAlCl3誘導性触媒系)及び重合プロセスを開始させることができる開始剤(例えばプロトン源及び/又はカチオン源)の存在下で実施することができる。本発明において適切なプロトン源には、ルイス酸又はルイス酸を含有する組成物に添加されたときにプロトンを生成するあらゆる化合物が含まれる。プロトンは、ルイス酸と、プロトン及び対応する副生成物を生成するプロトン源との反応から生じ得る。このような反応は、プロトン源とモノマーとの反応と比較して、プロトン源とプロトン化した添加剤との反応の方が速い場合に好ましい可能性がある。
【0027】
プロトンを生成する反応物質としては、例えば水、アルコール、フェノールチオール、カルボン酸、等、又はこれらの任意の混合物、等がある。水、アルコール、フェノール又はこれらの任意の混合物が好ましい。本発明によると、低分子量ポリマーが望まれるときは脂肪族又は芳香族のアルコールが好ましい。最も好ましいプロトン源は水である。ルイス酸のプロトン源に対する好ましい比は質量で5:1~100:1である。
【0028】
代わりに、又は更に、他の触媒系、例えば、塩化ジエチルアルミニウム、塩化エチルアルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズ、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、又はメチルアルモキサンを導入するのが有利なことがある。
【0029】
ハロゲン化アルキル触媒系は、本発明による溶液重合反応を触媒するための特に好ましい1つのクラスのルイス酸である。ハロゲン化アルキル触媒の例には、二臭化メチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二臭化ブチルアルミニウム、二塩化ブチルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、臭化ジブチルアルミニウム、塩化ジブチルアルミニウム、セスキ臭化メチルアルミニウム、セスキ塩化メチルアルミニウム、セスキ臭化エチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム及びこれらの任意の混合物がある。塩化ジエチルアルミニウム(Et2AlCl又はDEAC)、セスキ塩化エチルアルミニウム(Et1.5AlCl1.5又はEASC)、二塩化エチルアルミニウム(EtAlCl2又はEADC)、臭化ジエチルアルミニウム(Et2AlBr又はDEAB)、セスキ臭化エチルアルミニウム(Et1.5AlBr1.5又はEASB)及び二臭化エチルアルミニウム(EtAlBr2又はEADB)並びにこれらの任意の混合物が好ましい。
【0030】
プロトン源に加えて、又はその代わりに、重合プロセスを開始させることができるカチオン源を使用することができる。適切なカチオン源としては、存在する条件下でカルボカチオンを生成するあらゆる化合物がある。1つの好ましい群のカチオン源としては、次式
【0031】
【化1】
【0032】
[式中、R1、R2及びR3は、独立して水素、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の芳香族若しくは脂肪族基であり、但し、R1、R2及びR3の1つのみが水素であり得る]
を有するカルボカチオン性化合物が挙げられる。好ましくは、R1、R2及びR3は、独立してC1~C20芳香族又は脂肪族基である。適切な芳香族基の非限定的な例は、フェニル、トリル、キシリル及びビフェニルである。適切な脂肪族基の非限定的な例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、3-メチルペンチル及び3,5,5-トリメチルへキシルが挙げられる。
【0033】
別の好ましい群のカチオン源としては、次式
【0034】
【化2】
【0035】
[式中、R1、R2及びR3は、独立して水素、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の芳香族又は脂肪族基であり、但し、R1、R2及びR3の1つのみが水素であり得る]
を有する置換されたシリリウムカチオン性化合物が挙げられる。好ましくは、R1、R2及びR3のいずれもHではない。好ましくは、R1、R2及びR3は、独立して、C1~C20芳香族又は脂肪族基である。より好ましくは、R1、R2及びR3は独立してC1~C8アルキル基である。有用な芳香族基の例は、フェニル、トリル、キシリル及びビフェニルである。有用な脂肪族基の非限定例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、3-メチルペンチル及び3,5,5-トリメチルへキシルがある。1つの好ましい群の反応性置換シリリウムカチオンとしては、トリメチルシリリウム、トリエチルシリリウム及びベンジルジメチルシリリウムが挙げられる。このようなカチオンは、例えば、R1R2R3Si-Hの水素化物基を、非配位アニオン(NCA)(例えばPh3C+B(pfp)4 -等)と交換して、組成物(例えば、適当な溶媒中でカチオンをもたらすR1R2R3SiB(pfp)4等)を得ることによって調製することができる。
【0036】
本発明によると、Ab-はアニオンを意味する。好ましいアニオンとしては、2種の成分が化合したとき形成され得る活性種上の電荷と釣り合うのに必要な程度まで負に帯電した電荷を有する金属又は半金属コアを保有する単一の配位錯体を含有するものがある。より好ましくは、Ab-は、一般式[MQ4]-の化合物に対応する。式中、Mは、+3の形式的酸化状態のホウ素、アルミニウム、ガリウム又はインジウムであり、Qは、独立して、水素化物、ジアルキルアミド、ハロゲン化物、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシド、ハロ置換されたヒドロカルビル、ハロ置換されたヒドロカルビルオキシド、又はハロ置換されたシリルヒドロカルビル基である。
【0037】
ブチルゴムポリマーを生成させるために使用する反応混合物は、場合により更に、1種又は複数の分岐剤、例えば多官能性オリゴマー、マルチオレフィン架橋剤又はこれらの混合物を含有していてもよい。用語分岐剤は、ポリマーと反応して、主鎖を延ばすよりはむしろ側鎖を形成する化合物を意味する。用語架橋剤は、当業者に公知であり、ポリマー鎖に加えられるモノマーとは違って、ポリマー鎖間の化学架橋を引き起こす化合物を意味すると理解される。ある化合物がモノマーとして機能するか、あるいは架橋剤として機能するかは、幾らかの簡単な予備的試験で明らかになる。架橋剤の選択は制限されない。好ましくは、架橋は、マルチオレフィン性炭化水素化合物を含有する。これらの例としては、ノルボルナジエン、2-イソプロぺニルノルボルネン、2-ビニル-ノルボルネン、1,3,5-ヘキサトリエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、ジビニルベンゼン(DVB)、ジイソプロぺニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びこれらのC1~C20アルキル置換誘導体がある。より好ましくは、マルチオレフィン架橋剤は、ジビニルベンゼン、ジイソプロぺニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニル-キシレン及びこれらのC1~C20アルキル置換誘導体、及び/又はこれらの化合物の混合物である。最も好ましくは、マルチオレフィン架橋剤は、ジビニルベンゼン及びジイソプロぺニルベンゼンを含有する。
【0038】
ブチルゴムポリマーを調製する際、好ましくは、モノマー混合物は、約80%~約95質量%の範囲の少なくとも1種のイソオレフィンモノマーと、約4.0%~約20質量%の範囲の少なくとも1種のマルチオレフィンモノマー及び/又はβ-ピネンとを含有する。より好ましくは、モノマー混合物は、83%~94質量%の範囲の少なくとも1種のイソオレフィンモノマーと、5.0%~17質量%の範囲のマルチオレフィンモノマー又はβ-ピネンとを含有する。最も好ましくは、モノマー混合物は、85%~93質量%の範囲の少なくとも1種のイソオレフィンモノマーと、6.0%~15質量%の範囲の少なくとも1種のマルチオレフィンモノマー又はβ-ピネンとを含有する。マルチオレフィン架橋剤が使用されるとき、0.01%~1質量%の範囲のマルチオレフィン架橋剤が提供される。
【0039】
モノマーは、一般に、好ましくは約-120℃~約-50℃の範囲、好ましくは約-100℃~約-70℃の範囲、より好ましくは約-98℃~約-75℃の範囲、例えば約-98℃~約-90℃の温度でカチオン重合される。約-98℃及び約-75℃の操作温度は、特に注目に値する。好ましい圧力は、0.1~4バールの範囲である。
【0040】
重合プロセスは、バッチ法としてバッチ式反応器で行うか、又は連続法(例えばプラグフロー法)として連続式反応器で行うことができる。溶液法でもスラリー法でもよい。希釈剤中の溶液法が特に好ましい。経済的な製造のためには、全内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,417,930号に記載されているように、希釈剤中のスラリー(懸濁液)で実施される連続法を使用することができる。希釈剤は、当業者に公知の1種又は複数の不活性溶媒を含み得る。このような他の不活性溶媒は、例えば、ヒドロフルオロカーボン以外のハロゲン化炭化水素(例えばクロロアルカン)、シクロアルカン又は芳香族化合物であってよい。シクロアルカン及び芳香族化合物は、ハロゲンで一若しくは多置換されていることも多く、ハロゲン置換基がフッ素原子でない場合には、ヒドロフルオロカーボン以外のハロゲン化炭化水素に包含される。ヘキサン/クロロアルカン混合物、塩化メチル、ジクロロメタン又はこれらの混合物は、特に注目すべきである。連続法において、重合プロセスは、好ましくは少なくとも以下の供給流を用いて実施される:
I)溶媒/希釈剤+イソオレフィン(好ましくはイソブテン)+マルチオレフィン(好ましくはジエン、イソプレン);
II)開始剤系;及び、場合により、
III)マルチオレフィン架橋剤。
【0041】
マルチオレフィン架橋剤は、イソオレフィン及びマルチオレフィンと同じ供給流に加えることもできることに留意されたい。更に、連鎖移動剤が、それ自身の供給流として、又は別の供給流の一部として存在していてもよい。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、希釈剤は、少なくとも80wt%、好ましくは少なくとも90wt%、更により好ましくは少なくとも95wt%の、1013hPaの圧力で45℃~80℃の範囲の沸点を有する、1種又は複数の脂肪族炭化水素を含む一般的な脂肪族媒質を含む。1013hPaの圧力で45℃~80℃の範囲の沸点を有する脂肪族炭化水素としては、シクロペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘキサン、メチルシクロペンタン及び2,2-ジメチルペンタンがある。
【0043】
C6溶媒は、溶液法で使用するのに特に好ましい選択である。C5以下のようなより低分子量の溶媒は、モノマーに近い沸点を有しており、従ってモノマーは蒸留によって溶液から分離することができない。C7以上のようなより高分子量の溶媒は、ハロゲン化の後ゴムから分離するのがより困難であろう。C7溶媒の使用により提供される溶液粘度もまた、上記のモノマーの溶媒に対する高い比で提供されたときでも、C6溶媒の場合より顕著に高く、溶液の取扱いがより困難になると共に反応器内での熱伝達が妨げられる。結果として、本発明のC6溶媒は、利用可能な溶媒の中で好ましい選択である。本発明で使用するのに適したC6溶媒は、好ましくは50℃~69℃の間の沸点を有する。好ましいC6溶媒の例には、n-ヘキサン又はヘキサン異性体、例えば2-メチルペンタン若しくは3-メチルペンタン、又はn-ヘキサンとこのような異性体との混合物並びにシクロヘキサンがある。
【0044】
一般的な脂肪族媒質は、例えば、他の脂肪族炭化水素、例えば1013hPaの圧力で80℃より高い沸点を有するへプタン及びオクタン、プロパン、ブタン、n-ペンタン、シクロヘキサン並びに塩化メチル等のハロ炭化水素、及び、反応条件下で不活性の他の塩素化脂肪族炭化水素等の、重合条件下で不活性の他の化合物を、更に含んでもよい。
【0045】
本発明の別の好ましい実施形態において、一般的な脂肪族媒質は、ハロ炭化水素を実質的に含まない。本明細書で使用されるとき用語「実質的に含まない」とは、一般的な脂肪族媒質内のハロ炭化水素の含量が2wt%未満、好ましくは1wt%未満、より好ましくは0.1wt%未満であること、更により好ましくはハロ炭化水素が存在しないことを意味する。
【0046】
多峰性分子量分布は、バッチ又は連続式反応器における重合プロセスの後の段階での連鎖移動剤の添加によりその場で達成することができる。連鎖移動剤の遅延添加とは、重合プロセスが開始した後に連鎖移動剤を含ませることを意味する。連鎖移動剤は、開始後0.5分以上、5分以上、10分以上、15分以上、20分以上、25分以上、30分以上、35分以上、又は40分以上後に加えてもよい。連鎖移動剤は、好ましくは開始後60分以内、又は開始後45分以内、若しくは40分以内、若しくは35分以内に加える。様々な実施形態において、連鎖移動剤の添加時間は、上に述べた限界のいかなる組合せの範囲内でもよい。連続溶液法は、一般に、連続した1つ又は複数の反応器を有する。このような概念を連続の反応器設定に適用するために、連鎖移動剤の添加は、少なくとも10分以上、15分以上、20分以上、25分以上、30分以上、35分以上、又は40分以上の最小の滞留時間を提供する第1の(又は1より多くの)反応器の後に行うことができる。これらの時間は、例えば、適切な、流量、連鎖移動剤の添加前に使用する反応器の数を選択することによって、あるいは個々の反応器の容量を変えることによって、調節することができる。バッチ反応器から連続法へのこのようなプロセスの移行は当業者に公知である。
【0047】
連鎖移動剤の添加を、絶対時間に基づく代わりに、モノマーのポリマーへの変換率を基準にして遅延添加を行ってもよい。例えば、連鎖移動剤は、2%以上の変換率、又は5%以上の変換率、又は10%以上の変換率、又は15%以上の変換率、又は20%以上の変換率、又は25%以上の変換率、又は30%以上の変換率、又は35%以上の変換率、又は40%以上の変換率、又は45%以上の変換率、又は50%以上の変換率が達成されたときに加えることができる。連鎖移動剤は、好ましくは変換率15%~25%以内で加える。タイミングは、最終的に望まれる最終の変換率値及び最終のポリマー組成物の所望の組合せに依存する。この概念は、連続溶液法に移行させることもできる。連続溶液法は、一般に連続した1つ又は複数の反応器を有する。モノマーのポリマーへの変換率は、反応器列に沿った連鎖移動剤の遅延添加前の標的の変換率に適合するように流量、開始剤濃度、反応器の数又は全反応器容量を変化させることによって変更することができる。例えば、連鎖移動剤は、2%以上の変換率、又は5%以上の変換率、又は10%以上の変換率、又は15%以上の変換率、又は20%以上の変換率、又は25%以上の変換率、又は30%以上の変換率、又は35%以上の変換率、又は40%以上の変換率、又は45%以上の変換率、又は50%以上の変換率が達成されたとき反応器列に沿って加えることができる。連鎖移動剤は、好ましくは変換率15%~25%以内で加えられる。タイミングは、最終的に望まれる最終の変換率値及び最終のポリマー組成物の所望の特性に依存する。
【0048】
連鎖移動剤は、好ましくは、使用したイソブチレンの量に対して0.1wt%より多く20wt%より少ない量、最も好ましくは0.5~5wt%の間の量で加える。連鎖移動剤の種類及び量は、望まれる分子量分布に依存する。最少の追加の低分子量材料を必要とする多峰性分子量分布のためには、少量の連鎖移動剤を加えるが、最大の低分子量材料のためには、それより顕著に多い量の連鎖移動剤が必要とされる。連鎖移動剤は、好ましくは強力な連鎖移動剤であるべきである。それは成長するポリマー鎖と反応することができ、その更なる成長を終結させ、その後新しいポリマー鎖を開始させることができるべきである。弱い連鎖移動剤の使用は避けなければならない。なぜならば、それは、その後の硬化又は最終生成物の得られる物理的特性に干渉し得る残余の連鎖移動剤を除去するための得られたポリマーのかなりの精製工程を必要とする、非経済的なプロセスをもたらす可能性があるからである。
【0049】
連鎖移動剤の強度は、従来技術により決定することができる(例えば、J. Macromol. Sci.-Chem.、A1(6)、995-1004頁、(1967)、Kennedy等参照)。移動定数(移動係数)は連鎖移動剤の強度を表す。この論文に公表されたデータによると、1-ブテンの移動定数は0である。好ましくは、連鎖移動剤は少なくとも1、より好ましくは少なくとも約10、更により好ましくは少なくとも約50の移動係数を有する。
【0050】
連鎖移動剤は、限定されることはないが、ピペリレン、1-メチルシクロヘプテン、1-メチル-シクロペンテン、2-エチル-1-ヘキセン、インデン、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン(ジイソブチレン、DIB)、2,4,4-トリメチル-2-ペンテン、2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン(TMP-Cl)、ジアルキルエーテル、ジアリールエーテル、置換アリール基(例えばトルエン、アニソール、チオフェン、p-キシレン又はp-クロロアニソール)及びアルキルビニルエーテルを含み得る。最も好ましい連鎖移動剤は、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン(ジイソブチレン、DIB)である。連鎖移動剤は、例えば内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,841,642号に記載されているように、広く当技術分野で公知である。
【0051】
1つの実施形態において、連鎖移動剤の遅延添加は、プロセスの反応物質の全てが混合され、重合が開始した後に行うことができる。しかし、連鎖移動剤の遅延添加と併せて様々なプロセスの変形を実施して特定の効果を得てもよい。これらのプロセスには、追加のモノマー、オリゴマー、分岐(架橋)剤、又は重合反応に通常伴うその他の成分の遅延添加が含まれ得る。幾つかの具体的な例は以下の通りである。
【0052】
特にバッチ溶液重合プロセスにおいて、1種又は複数のコモノマー及び/又は分岐剤(例えば多官能性オリゴマー、マルチオレフィン架橋剤)の遅延添加と併せた連鎖移動剤の遅延添加は、官能性のコモノマー及び/又は実質的な分岐を低分子量画分により多く組込むことをもたらす。このような材料は、従来のブチルゴムと比較して増加した反応性及び充填材相互作用を示すことができる。添加のタイミングの調節は、コモノマー及び/又は分岐の低分子量画分への選択的な組込み、並びにポリマー組成物の特性の調整を可能にする。例えば、連鎖移動剤の遅延添加と併せたマルチオレフィンコモノマー(例えばイソプレン)の遅延添加の結果、マルチオレフィンの低分子量画分への選択的な組込みが得られる。この結果、高分子量画分の低いマルチオレフィン含量(例えば0.5~2.5mol%)及び低分子量画分の高いマルチオレフィン含量(例えば2.5~15mol%、又は3.0~10mol%)を有するポリマー組成物をもたらす。
【0053】
特にバッチ溶液重合プロセスにおいて、高ビニル樹脂の遅延添加と併せた連鎖移動剤の遅延添加もまた、反応性及び充填材相互作用が高められた高度に分岐した低分子量画分をもたらす。
【0054】
連続溶液法において、プロセス変量(例えば温度、混合率、滞留時間)の調節と併せた連鎖移動剤の遅延添加は、ポリマー組成物の分子量分布の調節を可能にする。
【0055】
バッチ又は連続溶液重合において、開始剤の遅延添加又は開始剤の段階的添加と併せた連鎖移動剤の遅延添加は、モノマー変換率の増加を可能にすることにより、分子量分布を低分子量画分側に調節する。
【0056】
連鎖移動剤の遅延添加は、その後、二重反応器スラリー重合プロセスにおいて、コモノマー(例えばイソプレン)及び連鎖移動剤を含有する第2のスラリーを添加することによって完成し得る。これにより、スラリー重合プロセスから生じる低分子量画分のコモノマー含量の増加が可能になる。
【0057】
ポリマー組成物は、成形品に形成し、次いで硬化させることができる。好ましい硬化系は、硫黄ベースのものである。典型的な硫黄をベースとする硬化系は、(i)金属酸化物、(ii)元素硫黄、及び(iii)少なくとも1種の硫黄をベースとする促進剤を含む。硬化系の成分としての金属酸化物の使用は、当技術分野で周知である。適切な金属酸化物は、酸化亜鉛であり、これは通例組成物中の100重量部のポリマー当たり約1~約10、好ましくは約2~約5重量部の量で使用される。好ましい硬化系の成分(ii)を含む元素硫黄は、通例組成物中の100重量部のポリマー当たり約0.2~約10重量部の量で使用される。適切な硫黄をベースとする促進剤(好ましい硬化系の成分(iii))は、通例組成物中の100重量部のポリマー当たり約0.5~約3重量部の量で使用される。有用な硫黄をベースとする促進剤の非限定例は、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)のようなチウラムスルフィド、亜鉛ジメチルジチオカルバメート(ZDC)のようなチオカルバメート並びにメルカプトベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)のようなチアジル及びベンゾチアジル化合物から選択され得る。好ましくは、硫黄をベースとする促進剤は、メルカプトベンゾチアジルジスルフィドである。
【0058】
硬化物品は、ゴム工業で公知の、反応促進剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、酸化防止剤、発泡剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、阻害剤、金属酸化物、及び活性化剤、例えばトリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオール、等の、ポリマー(例えばゴム)のための更なる助剤製品を含有してもよい。ゴム助剤は、とりわけ意図される使用目的に依存する従来の量で使用される。硬化物品は、鉱物及び/又は非鉱物充填材を含有してもよい。従来の量は、ゴムに対して0.1~50wt%である。加硫プロセスに関する更なる情報は、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第17巻、s. 666 et seq. (Vulcanization)から得られる。
【0059】
硬化物品は、低減した組成物粘度及び弾性に起因する改善された加工性、及び、より高い充填材装填量又は低減したプロセスオイル装填量に起因する改善された不透過性として理解される1つ又は複数の側面を有し得る。硬化物品は、例えば、タイヤインナーライナー、タイヤインナーチューブ、シール、ガスケット又は医薬品クロージャー(pharmaceutical closure)であり得る。
【実施例
【0060】
材料及び試薬
イソプレン(IP)をCaH2上で蒸留により精製し、冷凍庫内の密閉したビンに保存した。エチルアルミニウムジクロリド(EADC)及びジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)は、Sigma-Aldrich社からヘキサン中1.0M溶液として購入し、受け取ったまま使用した。無水ヘキサン(Sigma-Aldrich社)は、MBraun MB-SPS溶媒精製系を用いて乾燥し、使用のために直接ドライボックスにパイプで導いた。2,4,4-トリメチル-1-ペンテン(DIB、ジイソブチレン)は、Sigma-Aldrich社から購入し、受け取ったまま使用した。
【0061】
特性決定
分子量は、サーモスタットで35℃に調節した、3つの7.8mm×300mmの10μm混合床カラムを用いるWaters Alliance 2690/5 Separations Module及びWaters 410 dRI検出器によって測定した。移動相は、0.8mL/minの流量の、OmniSolv(商標)グレードの安定化THF(EMD Chemicals社)であり、狭いMWDポリスチレン標準をトルエンと共に内部基準として使用した。機器は、ブチルゴムに対するMark Houwink定数による普遍的な較正原理を用いて較正し、分子量はWaters' Empower2(商標)ソフトウェアを用いて計算した。
【0062】
ポリマーの微細構造解析は、1H NMRにより、Bruker DRX500分光計(500MHz)を用い、CDCl3中、テトラメチルシランを参照した化学シフトによる100回のスキャンを用いて行った。10秒の緩和遅延(relaxation delay)で1H NMRデータを集めた。
【0063】
配合
標準的な実験技術を用いてコンパウンドを混合した。全ての成分を受け取ったまま使用した。
【0064】
硫黄硬化:ハロゲン化ブチルゴムを、60℃及び60rpmでローラーローター(350g容量)付きBrabenderインターナルミキサーに加えた。ゴムを単独で短期間(1分間)混合した後、樹脂SP1068、ステアリン酸、Sunpar(商標)2280及びカーボンブラックを加えた。スイープを4分間で行った。コンパウンドを、全部でおよそ7分間混合した。次いで、硬化剤(硫黄、MBTS及び酸化亜鉛)を、二本ロールミルに加えた。最終成分の添加が完了した後、コンパウンドを最小6つのスリークォーターカット(three-quarter cut)及び6つのエンドワイズパス(endwise pass)で精製した。
【0065】
非ハロゲン化ブチルコンパウンド:ブチルゴムを、60℃及び60rpmでローラーローター(350g容量)付きBrabenderインターナルミキサーに加えた。ゴムを単独で短期間(1分間)混合した後、ステアリン酸及びカーボンブラックを加えた。スイープを4分間で行った。コンパウンドを、全部でおよそ7分間混合した。次いで、硬化剤(硫黄、Vulkacit Thiuram/C及び酸化亜鉛)を、二本ロールミルに加えた。最終成分の添加が完了した後、コンパウンドを最小6つのスリークォーターカット及び6つのエンドワイズパスで精製した。
【0066】
硬化特性は、Moving Die Rheometer(MDR)を用いて評価した。およそ6g(+/-0.5g)のコンパウンドを、ASTM D-5289に従って、160℃の温度で30分間、MDR 2000を用いて弧度を1°としてMDR硬化によって分析した。各種の硬化特性(t90及びΔS'を含む)を記録した。
【0067】
ムーニー粘度:コンパウンドのムーニー粘度測定は、125℃でMonsanto社製のMV 2000回転式粘度計を用いてASTM D1646に従って行った。原料ポリマームーニー粘度について、予熱時間は1分間で、その後8分間の実行時間であった。
【0068】
応力歪みダンベルを、160℃でtc90+5硬化させ、Alpha T2000引張試験機を用いて室温及び100℃で試験した。ASTM D412法に従って試料を試験した。
【0069】
多峰性ブチルゴムの調製
反応は-80℃においてMBRAUNドライボックス(MB 200G)で行った。オーバーヘッドスターラーを備えた500mLの丸底フラスコで重合を実施した。100mLのErlenmeyerフラスコで8.0mLのヘキサン、1.0mLのDEAC(ヘキサン中1.0M)、及び1.0mLのEADC(ヘキサン中1.0M)を合わせ、撹拌しながら40μLの水を加えることによって、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)開始剤溶液を調製した。
【0070】
重合は、500mLの丸底フラスコで行った。撹拌羽根付きの撹拌棒をフラスコの中心の開口に挿入し、オーバーヘッド機械式撹拌ドライブを使用して反応を撹拌した。イソブチレン(80mL)を、ヘキサン(40mL)及びイソプレン(2.4mL)と組み合わせて反応容器に加えた。熱電対をフラスコの残りの首に入れ、反応が-80℃に達したら、2.0~3.0mLの2.0M EASC開始剤を加えた(段階1)。特定の時間に、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン(DIB)を反応フラスコに加え、下に概略を示す時間、重合を進行させた(段階2)。
【0071】
段階2で重合反応が完了した後、1.0mLのNaOH/EtOH溶液(250mLのエタノールに溶解した2.5gのNaOH)を加えることにより、反応を終結させた。ポリマーを単離し、真空オーブン中65℃で一晩乾燥した。
【0072】
Table 1(表1)は、段階2の時間を変えて行った重合反応の結果を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
各々の試料のGPCトレース(図1)は、DIBの添加により、低分子量画分の形成を導くかなりの連鎖移動反応が引き起こされることを示している。製造されたブチル試料(実施例1~実施例4)は、特徴的な低分子量テールを有しており、これはDIB反応時間が増加すると顕著に大きくなる。このように、DIB添加後の反応時間は、得られる物質の分子量分布の形状及びムーニー粘度に劇的な効果をもたらす。
【0075】
イソプレンレベルは各々の反応において一致しているが、ムーニー粘度はDIB反応時間の増加により顕著に影響を受けることに留意されたい。
【0076】
Table 2(表2)は、様々なDIB反応時間の分析データを示す。
【0077】
【表2】
【0078】
分子量データはTable 2(表2)にまとめて示されているが、やはりより長いDIB反応時間で、連鎖移動反応に起因して、特定の分子量(100kDa)より低いポリマーの割合(%Polys<100)が大きくなることを示している。GPCデータを分析して、特定の限界より低いポリマーのパーセント割合を決定した。このデータは、DIB反応時間と低分子量画分の増大との間の強い相関を示している(図2)。このデータは、より長いDIB添加時間の結果、試料内の低分子量鎖の量のかなりの増加が生じることを強調している。
【0079】
また、Mw及びMnの値はDIB反応時間の増加と共に減少するが、Mpは概して同じままであることも注意するべきである(図3)。従って、データは、DIBが、反応おいてより遅延して開始するポリマー鎖の平均の長さを低下させる役目を果たすが、重合の最初の段階からの高分子量鎖の画分は影響を受けないで残ることを示している。DIB反応時間が長くなるにつれて、低分子量画分が増加することにより、Mw及びMnが両方とも低下するが一定のMpを維持する。
【0080】
様々な量のDIBを用いた多峰性ブチルゴム(EP-IIR)の調製
30分間の反応時間(段階1)後にいろいろな量のDIBを添加して重合反応を行い、40分間反応させた。Table 3(表3)は、反応に遅延した、様々なレベルの連鎖移動剤の効果を示す。
【0081】
【表3】
【0082】
生成されたブチル試料は、連鎖移動反応に起因して添加したDIBの量に正比例する特徴的な低分子量画分を有する。GPCプロットを図4に示す。より低いレベルのDIBで、低いMWの増大はMWDの広がりとしてより多く現れる。DIBの量が増加すると、やはり重合において遅延して生成されるブチル鎖の分子量がかなり低下する。このように、開始後に添加される連鎖移動剤の量は、分子量分布にかなりの影響を有する。
【0083】
臭素化された多峰性ブチルゴム(EP-BIIR)とBB2030との比較
ブチルゴム(EP-IIR)の、1つは約15wt%、もう1つは約20wt%の低分子量画分を有する2つの試料を、上に記載した手順に従って調製した。これらの試料を、先行技術に記載されている方法を使用して臭素化してEP-BIIRを生成させた。EP-BIIRの特性を商用グレードのBIIR(BB2030)と比較した。図5は、EP-IIRの分子量分布(MWD)を、BB2030と比較して示すグラフである。EP-IIRは、BB2030と比較して、より高いMp、より狭い多分散指数(PDI)及び低分子量テールが増強された二峰性分子量分布を有することが分かる。
【0084】
Table 4(表4)は、更なる結果を示す。EP-BIIRは、BB2030より高いピーク分子量(Mp)を有するが、より低いムーニー粘度を有する。このように、EP-BIIRは、BB2030と等価又はそれより良好な物理的特性を示しつつ、より良好な加工特性を有すると期待される。
【0085】
【表4】
【0086】
EP-BIIR及びBB2030から形成されたタイヤインナーライナーの比較
ハロゲン化されたブチルゴムを、60℃及び60rpmでローラーローター(容量350g)付きBrabenderインターナルミキサーに加えた。ゴムを、単独で短期間(1分間)混合した後、樹脂SP1068、ステアリン酸、Sunpar(商標) 2280及びカーボンブラックを加えた。スイープを4分間で行った。コンパウンドを、全部でおよそ7分間混合した。次に、硬化剤(硫黄、MBTS及び酸化亜鉛)を、二本ロールミルに加えた。最終成分の添加が完了した後、コンパウンドを最小6のスリークォーターカット及び6のエンドワイズパスで精製した。
【0087】
実施例5及び6は次の配合を用いて製造した。
【0088】
【表5】
【0089】
図6は、EP-BIIRが、タイヤライナーを調製するのにBB2030より少ない混合エネルギーしか必要としないことを示している。これは生産コストを大幅に低減する。図7は、EP-BIIRコンパウンドが、BB2030コンパウンドより改善された緩和特性を有することを示している。これは、この材料が、より高い速度で薄板に伸ばしたり又は押し出したりすることができ、新しい装備にかなりの投資をすることなくゴム製品の製造中のスループットを増加させることができるため、このようなゴムコンパウンドのカレンダー加工又は押出に有利である可能性がある。図8は、EP-BIIRが、少し低減した最小及び最終のトルク値を有するが、全体の速度及び硬化状態は従来のBB2030コンパウンドと同様なままであることを示している。図9は、EP-BIIRがBB2030と比較してやや低下した引張特性を有することを示しているが、これは当業者に公知の様々な配合技術を使用することにより相殺することができる。例えば、硬化剤のレベルを増加させることにより、又はベースポリマー中の臭素又はイソプレンの含量を増加させることによりコンパウンドの硬化レベルを上げることができるであろう。
【0090】
EP-IIRと市販のブチルゴム(RB402)の比較
重合の規模を大きくして、配合研究を行うのに十分な材料が単一の反応で製造できるようにした。ここでは溶液重合を、広口の2000mL丸底フラスコで行った。Teflon(商標)撹拌羽根及びベアリングを備えた撹拌棒をフラスコの中心の開口に挿入し、オーバーヘッド機械式撹拌ドライブを使用して反応物を撹拌した。予冷した500mLメスシリンダーを用いて浴温度でイソブチレン(480mL)を測定した。次いで、これをヘキサン(240mL)及びイソプレン(14.4mL)と共に反応容器に移した。熱電対を溶液中に入れ、反応が好ましい温度(-80℃)に達したら、12.0~16.0mLの2.0M EASC開始剤を、反応容器に加えて溶液重合を開始した。所与の時間(30分間)後、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン(DIB)(12.0mL)を反応フラスコに加え、追加の40分間重合を続けた。
【0091】
ここでは、増強された低分子量画分(EP-IIR、実施例8)を有するブチルゴムの加工及び硬化特性を、同様なムーニー粘度の現在市販されている試料(RB402、実施例7)と比較する。EP-IIIRは商用グレードのムーニー粘度と合致するように生成させた。Table 5(表6)は、これらのポリマーの対応する分析データを示す。
【0092】
【表6】
【0093】
混合、硬化及び加硫物の初期物理的特性を比較するための基準として標準的な硫黄硬化コンパウンドを選んだ。EP-IIRをベースとするコンパウンドを、実施例8を用いて混合し、市販のRB402をベースとする配合と比較した(Table 5(表6)参照)。コンパウンドの配合は次の通り(ここで、IIRはEP-IIR又はRB402試料を表す)。
【0094】
【表7】
【0095】
図10は、EP-IIRが、標準的な配合を使用したRB402コンパウンドより少ない混合エネルギーしか必要としないことを示している。これは、これらの新しいEP-IIR材料が、様々な異なるコンパウンドの生産コストを大きく低減する能力を示している。図11は、EP-IIRコンパウンドが、(より高い初期コンパウンドムーニーであっても、)RB402コンパウンドより改善された緩和特性を有することを示している。これは、この材料がより高い速度で薄板に伸ばしたり又は押し出したりすることができ、新しい装備にかなりの投資をすることなくゴム製品の製造のスループットを上昇させることができるため、このようなゴムコンパウンドのカレンダー加工又は押出に有利であり得る。図12は、EP-IIRが、市販のRB402コンパウンドより低減した最終のトルク値を有するが、同様な硬化速度を有することを示している。図13は、EP-IIRが、RB402コンパウンドと比較して少し低減した引張特性を有することを示しているが、これは当業者に公知の様々な配合技術の使用により相殺することができる。例えば、硬化剤のレベルを増加させることにより、又はベースポリマー中のイソプレンの含量を増加させることによりコンパウンドの硬化状態を上昇させることができるであろう。
【0096】
本発明の新規な特徴は、本発明の詳細な説明の検討により当業者に明らかとなろう。しかし、特許請求の範囲の範囲は、実施例に記載した好ましい実施形態により制限されることはなく、本明細書全体と一致した最も広い解釈が与えられるべきであることを理解されたい。
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