(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ラミネート接着剤、包装用積層体、及び包装体
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20230113BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230113BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20230113BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230113BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230113BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20230113BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230113BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C09J175/04
B65D65/40 D
B32B7/12
B32B27/40
B32B27/18 Z
C09J175/06
C09J11/04
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2021191639
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2022-06-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 千智
(72)【発明者】
【氏名】青山 純也
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-102487(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108300400(CN,A)
【文献】特開2016-194053(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110551477(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール主剤、及びポリイソシアネート硬化剤を含有するラミネート接着剤であって、
該ラミネート接着剤が、リンの酸素酸又はその誘導体を含有し、
前記ポリオール主剤が、ポリオール化合物、アミノ基を有するシランカップリング剤、エポキシ化脂肪酸エステル、及びカルボニル基を有する有機溶剤の混合物である、ラミネート接着剤。
【請求項2】
前記ポリオール主剤における、前記エポキシ化脂肪酸エステルの配合率が、前記ポリオール化合物の固形分質量を基準として0.3~5質量%の範囲である、請求項1に記載のラミネート接着剤。
【請求項3】
前記エポキシ化脂肪酸エステルがエポキシ化植物油を含む、請求項1又は2に記載のラミネート接着剤。
【請求項4】
前記ポリオール主剤における、前記アミノ基を有するシランカップリング剤の配合率が、前記ポリオール化合物の固形分質量を基準として0.2~2質量%の範囲である、請求項1~3いずれか1項に記載のラミネート接着剤。
【請求項5】
前記ポリオール主剤が、さらにリンの酸素酸又はその誘導体を含有し、前記ポリオール化合物の固形分質量を基準として、前記リンの酸素酸又はその誘導体を0.01~1質量%の範囲で含む、請求項1~4いずれか1項に記載のラミネート接着剤。
【請求項6】
前記ポリオール化合物が、ポリエステルポリオールを含む、請求項1~5いずれか1項に記載のラミネート接着剤。
【請求項7】
少なくとも2つの基材が、請求項1~6いずれか1項に記載のラミネート接着剤を介して積層された包装用積層体。
【請求項8】
プラスチックフィルムと、金属箔、金属の蒸着層を有するプラスチックフィルム、及び金属酸化物の蒸着層を有するプラスチックフィルムからなる群より選ばれる少なくとも1種とが、請求項1~6いずれか1項に記載のラミネート接着剤を介して積層された包装用積層体。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の包装用積層体を用いた包装体。
【請求項10】
ポリオール主剤、及びポリイソシアネート硬化剤を含有するラミネート接着剤であって、
該ラミネート接着剤が、リンの酸素酸又はその誘導体を含有し、
前記ポリオール主剤が、ポリオール化合物と、アミノ基を有するシランカップリング剤及びエポキシ化脂肪酸エステルの反応生成物と、カルボニル基を有する有機溶剤とを含む、ラミネート接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラミネート接着剤、該接着剤を用いた包装用積層体、及び包装体に関し、より詳細には、食品、医療品、化粧品等の包装体の形成に好適なラミネート接着剤、該接着剤を用いた包装用積層体、及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医療品、化粧品等の内容物を包装する包装体には、各種プラスチックフィルム、金属若しくは金属酸化物の蒸着フィルム、金属箔等の基材を、接着剤を介して積層してなる積層体が利用されており、接着剤としては、主にポリオール/ポリイソシアネート系の反応性ウレタン接着剤が用いられている。
そして、ボイル・レトルト処理を必要とする食品用途では、金属箔とプラスチックフィルムを積層した構成が使用されるため、高い金属密着性が求められており、例えば、特許文献1には、有機ポリイソシアネート、有機ポリオール、リンの酸素酸又はその誘導体、アミン化合物及びビスフェノールA型エポキシ樹脂を配合してなる接着剤を用いて、プラスチックと金属箔とを接着することが開示されている。
【0003】
また、一般的に、金属箔や蒸着フィルムと、プラスチックフィルムとの密着性を向上させるために、ラミネート用途の接着剤にはエポキシシランが配合されている。しかしながら、近年、プラスチックを含む包装材から食品に溶出する化学物質を規制する法律が強化されており、接着剤中のエポキシシランが食品へ移行することが懸念されている。
このような課題に対し、例えば、特許文献2には、ポリオールとポリイソシアネートとシランカップリング剤とを含むラミネート接着剤組成物において、シランカップリング剤としてエポキシシランとアミノシランとの混合物を用いることで、食品へのエポキシシラン等の化学物質の溶出を低減する接着剤が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、ポリイソシアネートとポリオールと可塑剤とを含む接着剤が開示されており、可塑剤としてエポキシ化ダイズ油を用いた具体例が記載されている。
いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-11225号公報
【文献】国際公開第2015/008822号
【文献】特開2012-131979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、食品包装用途においては、エポキシ樹脂は、安全性の観点から使用を規制する方向にある。また、近年、化学物質の溶出量の低減に関する要求レベルは高まっており、少量であってもエポキシシランを使用して基準を達成することは非常に難しいのが現状である。したがって、特許文献1及び特許文献2に記載の接着剤では、現行や将来の規制及び基準を達成することが困難である。
また、ラミネート接着剤分野で一般的に使用されるエステル系又はケトン系の有機溶剤を含む場合においてアミノシランを用いると、アミノシランのアミノ基が、エステル系又はケトン系の有機溶剤が有するカルボニル基と反応し、接着剤の白濁や不溶性化合物の生成を引き起こし、ボイル・レトルト処理時の性能が低下するという課題がある。
特許文献3に記載の接着剤は、エポキシ化脂肪酸エステルであるエポキシ化ダイズ油を含むが、シランカップリング剤を含まないため、金属箔や蒸着フィルムとの接着性が低く、ボイルやレトルトといった熱水殺菌処理後に強度が低下しデラミネーションが発生するという課題がある。また、特許文献3は、エポキシ化脂肪酸エステルを可塑剤として用いることが開示されているのみであり、エポキシシラン又はビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用しない接着剤において、ボイル・レトルト耐性を付与し、且つ白濁又は沈降を抑制するという本願発明を想起させる記載はない。
【0007】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、エポキシシラン又はビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用することなく、ボイル・レトルトのような熱水殺菌処理後においても、良好な接着性能を有し、且つ包材の白化を抑制できる接着剤を提供することにある。また、アミノ基を有するシランカップリング剤とカルボニル基を有する有機溶剤とを組み合わせて用いた場合においても、白濁又は沈降が抑制され、ポリオール主剤を経時保管しても熱水殺菌処理後の性能を維持可能な接着剤を提供することにある。さらに、本発明の課題は、熱水殺菌処理後においても、良好な接着性能を有し、且つ白化が抑制された積層体、並びに包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るラミネート接着剤は、ポリオール主剤、及びポリイソシアネート硬化剤を含有するラミネート接着剤であって、該ラミネート接着剤が、リンの酸素酸又はその誘導体を含有し、前記ポリオール主剤が、ポリオール化合物、アミノ基を有するシランカップリング剤、エポキシ化脂肪酸エステル、及びカルボニル基を有する有機溶剤の混合物であることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係るラミネート接着剤は、前記ポリオール主剤における、前記エポキシ化脂肪酸エステルの配合率が、前記ポリオール化合物の固形分質量を基準として0.3~5質量%の範囲であることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係るラミネート接着剤は、前記エポキシ化脂肪酸エステルがエポキシ化植物油を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係るラミネート接着剤は、前記ポリオール主剤における、前記アミノ基を有するシランカップリング剤の配合率が、前記ポリオール化合物の固形分質量を基準として0.2~2質量%の範囲であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係るラミネート接着剤は、前記ポリオール主剤が、さらにリンの酸素酸又はその誘導体を含有し、前記ポリオール化合物の固形分質量を基準として、前記リンの酸素酸又はその誘導体を0.01~1質量%の範囲で含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係るラミネート接着剤は、前記ポリオール化合物が、ポリエステルポリオールを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る包装用積層体は、少なくとも2つの基材が、上記ラミネート接着剤を介して積層されたことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る包装用積層体は、プラスチックフィルムと、金属箔、金属の蒸着層を有するプラスチックフィルム、及び金属酸化物の蒸着層を有するプラスチックフィルムからなる群より選ばれる少なくとも1種とが、上記ラミネート接着剤を介して積層されたことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る包装体は、上記包装用積層体を用いたことを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係るラミネート接着剤は、ポリオール主剤、及びポリイソシアネート硬化剤を含有するラミネート接着剤であって、該ラミネート接着剤が、リンの酸素酸又はその誘導体を含有し、前記ポリオール主剤が、ポリオール化合物と、アミノ基を有するシランカップリング剤及びエポキシ化脂肪酸エステルの反応生成物と、カルボニル基を有する有機溶剤とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、エポキシシラン又はビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用することなく、ボイル・レトルトのような熱水殺菌処理後においても、良好な接着性能を有し、且つ白化を抑制できる接着剤を提供することにある。また、ポリオール主剤を経時保管しても熱水殺菌処理後の性能を維持可能な接着剤を提供することにある。さらに、本発明の課題は、熱水殺菌処理後においても、良好な接着性能を有し、且つ白化が抑制された積層体、並びに包装体を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のラミネート接着剤は、ポリオール主剤、及びポリイソシアネート硬化剤を含有するラミネート接着剤であって、リンの酸素酸又はその誘導体を含有し、且つ前記ポリオール主剤が、ポリオール化合物、アミノ基を有するシランカップリング剤、エポキシ化脂肪酸エステル、及びカルボニル基を有する有機溶剤の混合物であることを特徴とする。
ポリオール主剤が、ポリオール化合物とアミノ基を有するシランカップリング剤とエポキシ化脂肪酸エステルとの混合物であることで、ポリオール主剤中で、エポキシ化脂肪酸エステルのエポキシ基と、アミノ基を有するシランカップリング剤のアミノ基とが反応し、反応生成物を生じる。一方、反応前のエポキシ化脂肪酸エステル及びアミノ基を有するシランカップリング剤は、反応の進行により低減又は消失する。これにより、カルボニル基を有する有機溶剤との反応が抑制され、白濁や不溶性化合物の生成が抑制される。
一方、エポキシ化脂肪酸エステルと、アミノ基を有するシランカップリング剤との反応生成物は、アミノ基を有するシランカップリング剤に由来するシラン誘導体部位を有するため、接着剤は、金属若しくは金属酸化物の蒸着フィルム、金属箔への優れた密着性を発揮することができる。
即ち、ポリオール主剤が、ポリオール化合物と、アミノ基を有するシランカップリング剤及びエポキシ化脂肪酸エステルの反応生成物と、カルボニル基を有する有機溶剤とを含むことで、白濁や不溶性化合物の生成を抑制し、且つ優れた密着性を発揮することができる。
さらに、接着剤がリンの酸素酸又はその誘導体を含むことで、エージング直後から優れたレトルト適正を発現することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
<ポリオール主剤>
本発明に用いるポリオール主剤は、ポリオール化合物、アミノ基を有するシランカップリング剤、エポキシ化脂肪酸エステル、及びカルボニル基を有する有機溶剤の混合物である。
【0021】
[ポリオール化合物]
ポリオール化合物は、分子内に水酸基を2つ以上有する化合物であればよく、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油又はそれらの混合物のほか、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール等のグリコール;数平均分子量200~10,000のポリアルキレングリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;上記3官能又は4官能の脂肪族アルコールに、上記グリコール若しくはポリオールが付加したポリオール化合物を用いることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0022】
ポリオール化合物は、耐熱性、接着力に優れるという観点から、好ましくはポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールを含むものであり、より好ましくはポリエステルポリオールを含むものである。
【0023】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとしては、例えば、カルボキシ基成分と水酸基成分との反応生成物であるポリエステルポリオール;ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。これらポリエステルポリオールは、1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
上記カルボキシ基成分として好ましくは多価カルボン酸であり、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸;無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等の脂環式ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸、それらのエステル化合物を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも接着性と耐熱性の両立観点から、前記カルボキシ基成分として、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とを併用することが好ましい
【0025】
上記水酸基成分として好ましくは多価アルコールであり、該多価アルコールとしては、ジオールや3官能以上のポリオールが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3,3‘-ジメチロールヘプタン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサンのような脂肪族ジオール;ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシエチレングリコールのようなエーテルグリコール;前記脂肪族ジオールと、エチレンオキシド、テトラヒドロフランのような種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルジオール;前記脂肪族ジオールと、ラクタノイド、ε-カプロラクトンのような種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;が挙げられる。
【0026】
前記3官能以上のポリオールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールのような脂肪族ポリオール;前記脂肪族ポリオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルのような種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール;前記脂肪族ポリオールと、ε-カプロラクトンのような種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;が挙げられる。
上記水酸基成分は、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコールのようなポリアルキレングリコール;ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体;プロピレンオキサイド・エチレンオキサイドランダムポリエーテル;が挙げられる。
また、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、シュークローズ等の低分子量ポリオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を付加重合した付加重合体をポリエーテルポリオールとして用いてもよい。
【0028】
これらのポリオール化合物は、ポリオール中の水酸基の一部に酸無水物を反応させてカルボキシ基を導入(以下、酸変性ともいう)したものであってもよく、ポリイソシアネートを反応させてウレタン結合を導入(以下、ウレタン変性ともいう)したものであってもよい。
【0029】
上記酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物としては、例えば、炭素数2~30のアルキレングリコール又はアルカントリオールを無水トリメリット酸でエステル化反応させてなるエステル化合物が挙げられ、具体的には、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが挙げられる。
【0030】
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0031】
ポリオール化合物の重量平均分子量は、好ましくは、5,000~100,000であり、より好ましくは10,000~80,000であり、さらに好ましくは10,000~50,000である。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いて測定した。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてテトロヒドロフランを用いた。分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0032】
ポリオール化合物の酸価は、特に制限されないが、好ましくは0~50mgKOH/g、より好ましくは0~40mgKOH/gである。ポリオール化合物の水酸基価は、特に制限されないが、好ましくは5~200mgKOH/g、より好ましくは10~50mgKOH/gである。ポリオール化合物が複数のポリオールを含む場合、ポリオール化合物の酸価又は水酸基価は、各々のポリオールの酸価又は水酸基価とその質量比率から求めることができる。
【0033】
[アミノ基を有するシランカップリング剤]
アミノ基を有するシランカップリング剤は、後述するエポキシ化脂肪酸エステルと反応し、反応生成物は金属への接着性を向上させ、ボイル・レトルト等の熱水殺菌処理時に剥離を抑制する役割を担う。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3-(2-(2-アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、3-(N-エチルアミノ)-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、N-エチル-3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、N-エチル-3-アミノ-2-メチルプロピルジエトキシメチルシラン、N-エチル-3-アミノ-2-メチルプロピルトリエトキシシラン、N-エチル-3-アミノ-2-メチルプロピルメチルジメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、3(N-メチル-2-アミノ-1-メチル-1-エトキシ)-プロピルトリメトキシシラン、N-エチル-4-アミノ-3,3-ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、N-エチル-4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤は、反応性、金属密着性確保の観点から、1級のアミノ基を有することが好ましい。中でも、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好適に用いられる。
上記アミノ基を有するシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
混合物において、アミノ基を有するシランカップリング剤の配合量は、ポリオール化合物の固形分質量を基準として、好ましくは0.2~2質量%、より好ましくは0.5~1.5質量%の範囲である。アミノ基を有するシランカップリング剤の配合量が0.2~2質量%の範囲であると、金属密着性とポリオール主剤の溶液安定性に優れるため好ましい。
【0035】
[エポキシ化脂肪酸エステル]
エポキシ化脂肪酸エステルとしては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和結合を有する脂肪酸のエステルである脂肪酸エステル化合物のエポキシ化物;これらの脂肪酸を構成成分として含む植物油(例えば、大豆油、亜麻仁油、ひまし油)のエポキシ化物が挙げられる。中でも、耐熱性や溶出量の低減といった観点から、好ましくはエポキシ化植物油(植物油のエポキシ化物)であり、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化ひまし油が好適に用いられる。
また、エポキシ化物中のオキシラン酸素濃度(%)は、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であり、好ましくは10以下である。オキシラン酸素(%)とは、基準油脂分析試験法 2.3.7.1-2013「オキシラン酸素定量方法(その1)」に準拠して測定した値である。
【0036】
ポリオール主剤である混合物において、エポキシ化脂肪酸エステルの配合量は、ポリオール化合物の固形分質量を基準として、好ましくは0.3~5質量%、より好ましくは0.5~2質量%の範囲である。エポキシ化脂肪酸エステルの配合量が0.3~5質量%の範囲であると、接着性と溶液安定性を確保する点で優れるため好ましい。
【0037】
[カルボニル基を有する有機溶剤]
カルボニル基を有する有機溶剤は、溶解性と乾燥性に優れるため、ポリオール/ポリイソシアネート系の2液反応型ウレタン接着剤において好適に用いられる。一方、アミノ基を有するシランカップリング剤とカルボニル基を有する有機溶剤とを併用すると、アミノ基を有するシランカップリング剤とカルボニル基を有する有機溶剤とが反応して、溶液安定性や金属密着性を低下させるという問題があった。
上記に対し、本発明の接着剤は、ポリオール化合物、アミノ基を有するシランカップリング剤、エポキシ化脂肪酸エステル、及びカルボニル基を有する有機溶剤の混合物を用いること、即ち、ポリオール化合物と、アミノ基を有するシランカップリング剤及びエポキシ化脂肪酸エステルの反応生成物と、カルボニル基を有する有機溶剤とを含むことで、カルボニル基を有する有機溶剤を用いた場合でも、優れた溶液安定性と金属密着性を発揮できる。
【0038】
カルボニル基を含む有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤が挙げられる。
【0039】
カルボニル基を含む有機溶剤の含有量は、ポリオール主剤の質量を基準として、好ましくは10~50質量%の範囲である。
ポリオール主剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、カルボニル基を含む有機溶剤以外の有機溶剤を含んでもよい。カルボニル基を含む有機溶剤以外の有機溶剤(以下、その他有機溶剤という)としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系の溶剤が挙げられる。
【0040】
<ポリイソシアネート硬化剤>
本発明に用いるポリイソシアネート硬化剤は、ポリイソシアネート化合物を含有するものであり、該ポリイソシアネート化合物は、ポリオール主剤中のポリオール化合物と反応しウレタン樹脂を形成する。
ポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアナト基を2つ以上有する化合物であればよく、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート;m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4′-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4′,4″-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエンのような有機トリイソシアネート、4,4′-ジフェニルジメチルメタン-2,2′-5,5′-テトライソシアネートのような有機テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体;上記ポリイソシアネート単量体から誘導された、ダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネート硬化剤は、ポリイソシアネート化合物1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0041】
ポリイソシアネート硬化剤は、上述したポリイソシアネート化合物に、ポリオールを付加した付加体であってもよい。
該ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3′-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子ポリオール;分子量200~20,000のポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオールが挙げられる。
【0042】
ポリイソシアネート硬化剤は、耐熱性、接着性の観点から、好ましくは、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートもしくは芳香脂肪族ジイソシアネートから誘導された、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート、およびポリイソシアネート化合物にポリオールを付加したポリオール付加体からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む。
ポリイソシアネート化合物は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート硬化剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、有機溶剤を含んでもよい。該有機溶剤としては、上述したカルボニル基を有する有機溶剤及びその他有機溶剤から適宜選択できる。
【0043】
本発明のラミネート接着剤は、上述したポリオール主剤及びポリイソシアネート硬化剤を配合して得られる2液硬化型のウレタン系接着剤であって、ポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤との配合割合は、前記ポリイソシアネート硬化剤に含まれる全イソシアナト基と、前記ポリオール主剤に含まれる全水酸基とのモル比[NCO/OH]が1.0~5.0の範囲であることが好ましい。
【0044】
<リンの酸素酸又はその誘導体>
本発明のラミネート接着剤は、リンの酸素酸又はその誘導体を含む。リンの酸素酸又はその誘導体は、アミノ基を有するシランカップリング剤の安定化と、シランカップリング剤の金属への密着性を促進する役割を担う。
リンの酸素酸又はその誘導体は、本発明の効果を損なわない限り、ポリオール主剤又はポリイソシアネート硬化剤のいずれか又は両方に配合してもよいし、ポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤とを混合する際に配合してもよい。溶液安定性、作業性の観点から、リンの酸素酸又はその誘導体は、ポリオール主剤に配合することが好ましい。
リンの酸素酸は、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類;メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類;が挙げられる。また、誘導体としては、例えば、上記のリンの酸素酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。該アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール;フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール;が挙げられる。
リンの酸素酸又はその誘導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
リンの酸素酸又はその誘導体の配合量は、ポリオール化合物の質量を基準として、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%、さらに好ましくは0.02~0.1質量%の範囲である。リンの酸素酸又はその誘導体の配合量が0.01~0.1質量%であると、金属密着性とレトルト後の外観不良抑制の点で特に優れる。
【0046】
<その他成分>
本発明のラミネート接着剤は、さらに公知の有機溶剤、添加剤を含有してもよい。
有機溶剤としては、上述したカルボニル基を有する有機溶剤及びその他溶剤が挙げられる。添加剤としては、例えば、反応促進剤、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤が挙げられる。
上記有機溶剤及び添加剤は、ポリオール主剤又はポリイソシアネート硬化剤のいずれか又は両方に配合してもよいし、ポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤とを混合する際に配合してもよい。
これらの成分は、各々、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
本発明のラミネート接着剤は、硬化反応を促進するため、さらに反応促進剤を含有することができる。反応促進剤としては、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート、等の金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノールアミン等反応性3級アミン;が挙げられる。
【0048】
本発明のラミネート接着剤は、金属箔等の金属基材や蒸着素材に対する接着強度を向上させる観点から、シランカップリング剤(ただし、アミノ基又はエポキシ基を有しない)を含有することができる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン;メルカプト基を有するメルカプトトリメトキシシラン、メルカプトトリエトキシシラン等のメルカプト基を有するトリアルコキシシランが挙げられる。
【0049】
本発明のラミネート接着剤は、積層体の外観を向上させる目的で、公知のレベリング剤又は消泡剤を、含有してもよい。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物が挙げられる。
【0050】
また本発明のラミネート接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、公知のその他添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒が挙げられる。
【0051】
<包装用積層体、包装体>
本発明の包装用積層体は、少なくとも2つの基材が上述のラミネート接着剤を介して積層されたものであり、該包装用積層体を用いることで包装体とすることができる。包装体としては、少なくともその一部に上述の包装用積層体が用いられているものであればよく形状は制限されない。例えば、2枚の包装用積層体のシーラント基材同士を向かい合わせてヒートシールしたパウチ等が挙げられる。
【0052】
包装用積層体は、例えば、ラミネート接着剤を第1の基材に塗布し、乾燥工程を経た後に、第2の基材を貼り合わせ、両基材の間に位置する接着剤を20℃~60℃程度の温度条件下で硬化して製造することができる。本発明の包装用積層体は、上記構成に限定されず、さらに接着剤層等を介して別の層が積層されていてもよい。
ラミネート接着剤の乾燥後塗布量は任意であるが、ラミネート外観、接着性能の安定性の観点から、好ましくは1~6g/m2、より好ましくは2~5g/m2の範囲である。また、包装用積層体の厚みは、包装材としての強度や耐久性の観点から、好ましくは10μm以上である。
【0053】
ラミネート接着剤を塗布する装置としては、例えば、コンマコーター、ドライラミネーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーターが挙げられる。
【0054】
[基材]
基材は特に制限されず、例えば、包装材用途に一般的に使用される従来公知のプラスチックフィルム、紙、ガスバリア基材、シーラントが挙げられる。2つの基材は同種のものであってもよく、異種のものであってもよい。
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステルフィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンフィルム;ポリスチレンフィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリアクリルニトリルフィルム;ポリイミドフィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が用いられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
プラスチックフィルムは、好ましくは5~100μm、より好ましくは10~50μmの厚みを有するものである。
【0055】
紙としては、例えば、天然紙、合成紙が挙げられる。
ガスバリア基材としては、例えば、アルミニウム箔等の金属箔;アルミニウム等の金属の蒸着層を有するプラスチックフィルム;シリカ、アルミナ等の金属酸化物の蒸着層を有するプラスチックフィルム;が挙げられる。例えばアルミニウム箔の場合、経済的な面から3~50μmの範囲の厚みが好ましい。
【0056】
シーラントとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂;が挙げられる。中でもレトルト時の耐熱性の観点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、ヒートシール性の観点から、より好ましくは未延伸ポリプロピレン(CPP)である。
シーラントの厚みは特に限定されないが、包装体への加工性やヒートシール性等を考慮して10~200μmの範囲が好ましく、15~150μmの範囲がより好ましい。また、シーラントに高低差5~20μmの凸凹を設けることで、シーラントに滑り性や包装体の引き裂き性を付与することが可能である。
また、シーラントは、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の金属又は金属酸化物の蒸着層を有していてもよい。
【0057】
[印刷層]
本発明の包装用積層体は、さらに印刷層を有していてもよい。
印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者等の表示、その他等の表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様等の所望の任意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、印刷層の形成方法は特に限定されない。
一般的には、印刷層は、顔料や染料等の着色剤とバインダー樹脂とを含むインキを用いて基材上に形成される。インキに含まれるバインダー樹脂は、用途や基材に応じて適宜選択され、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンポリウレア樹脂、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂、及びこれらの変性樹脂が用いられる。
【0058】
印刷インキの塗工方法は特に限定されず、グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の方法により塗布することができる。これを放置するか、必要により送風、加熱、減圧乾燥、紫外線照射等を行うことにより印刷層が形成される。
印刷層の厚みは、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは1~5μm、さらに好ましくは1~3μmである。
【0059】
本発明の包装用積層体の構成は制限されず、例えば、以下の構成が挙げられる。
2軸延伸ポリプロピレン(OPP)/印刷層/接着剤層/CPP、
OPP/印刷層/接着剤層/AL蒸着CPP、
OPP/印刷層/接着剤層/PE、
印刷層/OPP/接着剤層/CPP、
NY/印刷層/接着剤層/PE、
印刷層/NY/接着剤層/CPP
NY/印刷層/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/CPP、
印刷層/PET/接着剤層/CPP
PET/印刷層/接着剤層/NY/接着剤層/CPP、
金属酸化物蒸着PET/印刷層/接着剤層/NY/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL蒸着PET/接着剤層/PE、
PET/印刷層/接着剤層/AL箔/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL箔/接着剤層/PE、
PET/印刷層/接着剤層/NY/接着剤層/AL箔/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL箔/接着剤層/NY/接着剤層/CPP
【0060】
本発明のラミネート接着剤は、金属若しくは金属酸化物の蒸着フィルム、及び金属箔への優れた密着性を有するため、特に、プラスチックフィルムと、アルミニウム箔等の金属箔、及び、アルミニウム等の金属若しくはシリカ、アルミナ等の金属酸化物の蒸着層を有するプラスチックフィルムからなる群より選ばれる少なくとも1種とが、ラミネート接着剤を介して積層された包装用積層体に好適に用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0062】
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いて測定した。溶媒としてテトロヒドロフランを用い、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0063】
<酸価(AV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオール溶液)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。次式により酸価を求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0064】
<ポリオール化合物の製造>
(ポリオール化合物a-1)
反応容器にイソフタル酸250部、テレフタル酸200部、アジピン酸170部、エチレングリコール138部、ネオペンチルグリコール139部、1,6-ヘキサンジオール105部、を仕込み、200~230℃で8時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.01部を添加して徐々に減圧し、1mmHg以下、230~250℃で6時間加熱し、グリコール成分の一部を留去し、エステル交換反応を行った。その後、酢酸エチルを用いて不揮発分60%になるよう希釈し、重量平均分子量22,000、酸価0.3mgKOH/gのポリエステルポリオールであるポリオール化合物a-1の溶液を得た。
【0065】
(ポリオール化合物a-2)
反応容器にイソフタル酸300部、セバシン酸365部、エチレングリコール135部、ネオペンチルグリコール226部、を仕込み、200~230℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.01部を添加して徐々に減圧し、1mmHg以下、230~250℃で4時間加熱し、グリコール成分の一部を留去し、エステル交換反応を行った。その後、イソホロンジイソシアネート42部を加えて150℃で3時間ウレタン化反応を行い、メチルエチルケトンを用いて不揮発分60%になるよう希釈し、重量平均分子量26,000、酸価0.2mgKOH/gのウレタン結合を導入したポリエステルポリオールであるポリオール化合物a-2の溶液を得た。
【0066】
(ポリオール化合物a-3)
数平均分子量約2,000の2官能ポリプロピレングリコール8部、数平均分子量約400の2官能ポリプロピレングリコール34部、数平均分子量約400の3官能ポリプロピレングリコール3部、トリレンジイソシアネート15部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80~90℃で3~5時間加熱してウレタン化反応を行った。反応触媒として、ジブチルスズジラウレートを0.1%添加して反応促進を行った。
反応完了後、酢酸エチルで不揮発分60%になるよう希釈し、重量平均分子量22,000のポリエーテルウレタンポリオールであるポリオール化合物a-3の溶液を得た。
【0067】
<ポリオール主剤の製造>
(ポリオール主剤A-1)
ポリオール化合物a-1の溶液を167部(内訳は、ポリオール化合物a-1が100部、酢酸エチルが67部)と、エポキシ化大豆油1.7部とを反応容器に仕込み、攪拌しながら60℃まで加温した後、3-アミノプロピルトリエトキシシラン1.0部を添加して30分間攪拌を行った。その後、50℃まで冷却し、リン酸0.04部を加えて15分攪拌を行い、ポリオール主剤A-1を得た。
【0068】
(ポリオール主剤A-2)
ポリオール化合物a-2の溶液を167部(内訳は、ポリオール化合物a-2が100部、メチルエチルケトンが67部)と、エポキシ化大豆油1.7部とを反応容器に仕込み、攪拌しながら60℃まで加温した後、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.8部を添加して30分間攪拌を行った。その後、50℃まで冷却し、ピロリン酸0.08部を加えて15分攪拌を行い、ポリオール主剤A-2を得た。
【0069】
(ポリオール主剤A-3)
ポリオール化合物a-1の溶液を167部(内訳は、ポリオール化合物a-1が100部、酢酸エチルが67部)と、エポキシ化亜麻仁油0.8部とを反応容器に仕込み、攪拌しながら60℃まで加温した後、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン1.0部、ビニルトリエトキシシラン0.3部を添加して30分間攪拌を行った。その後、50℃まで冷却し、リン酸0.04部を加えて15分攪拌を行い、ポリオール主剤A-3を得た。
【0070】
(ポリオール主剤A-4~14)
表1に示す配合組成に変更した以外は、ポリオール主剤1と同様の方法で混合し、ポリオール主剤A-4~14を得た。なお、いずれもポリオール化合物の溶液(不揮発分60%)を167部用い、ポリオール化合物と含有される溶剤の配合量を個別に記載した。
【0071】
(ポリオール主剤A-15)
ポリオール化合物a-2の溶液167部(内訳は、ポリオール化合物a-2が100部、メチルエチルケトンが67部)と、エポキシ化大豆油1.7部とを反応容器に仕込み、攪拌しながら60℃まで加温し、30分間攪拌を行った。その後、50℃まで冷却し、リン酸0.05部を加えて15分攪拌を行い、ポリオール主剤A-15を得た。
【0072】
(ポリオール主剤A-16)
ポリオール化合物a-1の溶液167部(内訳は、ポリオール化合物a-1が100部、酢酸エチルが67部)と、エポキシ化亜麻仁油1.5部とを反応容器に仕込み、攪拌しながら60℃まで加温し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン1.0部を添加して30分間攪拌を行い、ポリオール主剤A-16を得た。
【0073】
(ポリオール主剤A-17)
ポリオール化合物a-1の溶液167部(内訳は、ポリオール化合物a-1が100部、酢酸エチルが67部)を反応容器に仕込み、攪拌しながら60℃まで加温し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン1.0部を添加して30分間攪拌を行った。その後、50℃まで冷却し、リン酸0.04部を加えて15分攪拌を行い、ポリオール主剤A-17を得た。
【0074】
(ポリオール主剤A-18)
ポリオール溶液a-1を167部(内訳は、ポリオール化合物a-1が100部、酢酸エチルが67部)と、エポキシ化大豆油1.7部とを反応容器に仕込み、攪拌しながら60℃まで加温した後、ビニルトリエトキシシラン1.0部を添加して30分間攪拌を行った。その後、50℃まで冷却し、リン酸0.04部を加えて15分攪拌を行い、ポリオール主剤A-18を得た。
【0075】
<ポリオール主剤の外観評価>
得られたポリオール主剤について、外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
〇:透明、且つ沈降なし(良好)
△:微濁、且つ沈降なし(使用可)
×:白濁あり、又は沈降あり(使用不可)
【0076】
【0077】
表1中の略称を示す。
(アミノ基を有するシランカップリング剤)
3-アミノプロピルトリエトキシシラン:信越化学工業社製 KBE-903
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業社製 KBM-603
ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン:EVONIK社製 Dynasylan1122
(エポキシ化脂肪酸エステル)
エポキシ化大豆油:株式会社ADEKA製 アデカサイザーO-130P(オキシラン酸素% 6.7)
エポキシ化亜麻仁油:株式会社ADEKA製 アデカサイザーO-180A(オキシラン酸素% 8.5)
エポキシ化脂肪酸イソブチル:新日本理化株式会社製 サンソサイザー E-4030(オキシラン酸素% 4.5)
【0078】
<ポリイソシアネート硬化剤の製造>
(ポリイソシアネート硬化剤B-3)
数平均分子量約2,000の2官能ポリプロピレングリコール300部、数平均分子量約400の2官能ポリプロピレングリコール230部、数平均分子量約400の3官能ポリプロピレングリコール148部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート322部、酢酸エチル176部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら70~80℃で4~7時間加熱してウレタン化反応を行った。反応完了後、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体100部を混合し、酢酸エチルで不揮発分75%に希釈して、ポリイソシアネート硬化剤B-3の溶液を得た。
【0079】
<ラミネート接着剤の製造>
[実施例1~15、比較例1~4]
ポリオール主剤、ポリイソシアネート硬化剤、その他成分を表2に示す割合で混合し、酢酸エチルで不揮発分30%となるように調整を行い、ラミネート接着剤を得た。得られた接着剤を用いて以下の通り積層体を作製し、該積層体を用いて以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0080】
<ラミネート接着剤の評価>
[積層体の作製]
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製 E5100、厚み12μm、以下PET)上に、ラミネーターを用いてラミネート接着剤を常温にて塗布し、乾燥オーブンで溶剤を揮散させた後、塗布面をナイロンフィルム(ユニチカ社製 エンブレムON-RT、厚み15μm、以下NY)と貼り合わせた。
次いで、得られた積層体のNYフィルム面に、上述と同様にしてラミネート接着剤を塗布し溶剤を揮散させ、塗布面をアルミニウム箔(厚み7μm、以下AL)と貼り合わせた。
得られた積層体のAL箔面に、上述と同様にしてラミネート接着剤を塗布し溶剤を揮散させ、塗布面を未延伸ポリプロピレンフィルム(厚み70μm、以下CPP)のコロナ処理面と貼り合わせた。
接着剤層の塗布量は、いずれも4.0g/m2となるように調整した。
得られた積層体を、50℃で4日間保温して、PET/接着剤層/NY/接着剤層/AL/接着剤層/CPPの構成である積層体を作成した。
【0081】
[ラミネート強度(初期)]
得られた積層体から15mm×300mmの大きさの試験片をつくり、引張り試験機を用いて、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、T型剥離により、剥離速度30cm/分で、NYとAL間のラミネート強度(N/15mm)を測定した。
【0082】
[ラミネート強度(レトルト後)]
得られた積層体を用いて14cm×18cmの大きさのパウチを作成し、内容物として、食酢、サラダ油、ケチャップを質量比で1:1:1に配合した疑似食品150mlを充填した。このパウチを135℃-30分間レトルト殺菌した後、[ラミネート強度(初期)]
と同様にして、NYとAL間のラミネート強度を測定した。
【0083】
[パウチ外観(レトルト後)]
[ラミネート強度(レトルト後)]でレトルト殺菌したパウチのNYとAL間の剥離状態及びパウチの白化の有無を目視で確認し、下記の基準で評価した。
A:剥離無し、白化無し(良好)
B:剥離無し、僅かに白化あり(使用可)
C:剥離あり、又は顕著な白化あり(使用不可)
【0084】
[ポリオール主剤経時後のラミネート強度(レトルト後)]
ポリオール主剤を50℃環境下で4週間保管した。保管後のポリオール主剤を用いて、上述する[積層体の作製]と同様にして積層体を作製した。得られた積層体を用いて、上述する[ラミネート強度(レトルト後)]と同様にして、レトルト殺菌した後、NYとAL間のラミネート強度を測定した。
【0085】
[ポリオール主剤経時後のパウチ外観(レトルト後)]
ポリオール主剤を50℃環境下で4週間保管した。保管後のポリオール主剤を用いて、上述する[積層体の作製]と同様にして積層体を作製した。得られた積層体を用いて、上述する[外観(レトルト後)]と同様にして、レトルト殺菌したパウチのNYとAL間の剥離状態及びパウチの白化の有無を目視で確認し、下記の基準で評価した。
A:剥離無し、白化無し(良好)
B:剥離無し、僅かに白化あり(使用可)
C:剥離あり、又は顕著な白化あり(使用不可)
【0086】
【0087】
表2中の略称を以下に示す。
B-1:東洋モートン社製 CAT―10、ポリイソシアネート硬化剤
B-2:東洋モートン社製 CAT-RT86L-60、ポリイソシアネート硬化剤
B-3:上述する製造例で得られたポリイソシアネート硬化剤B-3の溶液
【0088】
表2の結果から、且つ、前記ポリオール主剤が、ポリオール化合物、アミノ基を有するシランカップリング剤、エポキシ化脂肪酸エステル、及びカルボニル基を有する有機溶剤の混合物であるポリオール主剤と、ポリイソシアネート硬化剤とを含み、且つリンの酸素酸又はその誘導体を含む本願発明のラミネート接着剤は、エポキシシラン又はビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用せずとも、レトルト後のラミネート強度が良好で、パウチの剥離や白化が低減した。また、ポリオール主剤を経時保管した場合においても、パウチの剥離や顕著な白化が見られなかった。
特に、ポリオール化合物の固形分質量を基準として、エポキシ化脂肪酸エステルが0.3~5質量%の範囲であり、アミノ基を有するシランカップリング剤が0.2~2質量%の範囲であり、リンの酸素又はその誘導体が0.01~1質量%の範囲である場合に、これらの性能に優れていた。
【要約】
【課題】エポキシシラン又はビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用することなく、ボイル・レトルトのような熱水殺菌処理後においても、良好な接着性能を有し且つ包材の白化を抑制できる接着剤の提供。白濁又は沈降が抑制され、ポリオール主剤を経時保管しても熱水殺菌処理後の性能を維持可能な接着剤の提供。熱水殺菌処理後においても、良好な接着性能を有し且つ白化が抑制された積層体並びに包装体の提供。
【解決手段】上記課題は、ポリオール主剤、及びポリイソシアネート硬化剤を含有し、該ラミネート接着剤が、リンの酸素酸又はその誘導体を含有し、前記ポリオール主剤が、ポリオール化合物、アミノ基を有するシランカップリング剤、エポキシ化脂肪酸エステル、及びカルボニル基を有する有機溶剤の混合物である、ラミネート接着剤によって解決される。
【選択図】なし