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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】消しゴム付きノック式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/02 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
B43K29/02 D
B43K29/02 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019213641
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021008105
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2019122779
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392005126
【氏名又は名称】ミクロ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】細谷 智広
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039296(JP,A)
【文献】実開平07-017585(JP,U)
【文献】特開2017-013342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記体を収納した筆記具本体と、筆記体を前進させるよう該本体内に前後動可能に挿入されたノック部材と、ノック部材の後部に保持された消しゴムと、ノック部材に設けられた前後方向に延びる摺動溝及び該摺動溝の後端から周方向に延びる係止溝と、上記ノック部材の上記摺動溝及び係止溝にわたって移動しかつ外方端が上記本体の半径方向に向かって延びる制御ピンと、該制御ピンが嵌合する上記摺動溝の前方側に前後方向に自由移動可能に挿入された可動ストッパーと、上記制御ピンが係止溝に嵌合しているとき該制御ピンの前進を阻止するよう本体内に設けられた阻止部を具備する消しゴム付きノック式筆記具。
【請求項2】
上記係止溝は、阻止部と同じ若しくはそれより後方に位置している請求項1に記載の消しゴム付きノック式筆記具。
【請求項3】
上記係止溝は、後方に傾斜しながら延びている請求項1または2に記載の消しゴム付きノック式筆記具。
【請求項4】
上記本体の後部に固定したノックホルダーと、上記ノック部材を後方に付勢するノックスプリングと、ノック部材の後方に前後方向に自由移動可能に挿入され消しゴムを保持する消しゴムホルダーを具備し、上記ノックホルダーの後端面は、上記制御ピンが上記係止溝に嵌合しているとき制御ピンの外方端が当接する阻止部を構成している請求項1に記載の消しゴム付きノック式筆記具。
【請求項5】
上記ノック部材の移動範囲を定めるよう上記ノックホルダーとノック部材のいずれか一方には前後方向に延びるノック溝が設けられ、他方にはこのノック溝に挿入される係止突起が設けられ、消しゴムをノック部材の後部から出没可能に設けた請求項4に記載の消しゴム付きノック式筆記具。
【請求項6】
上記ノック溝の後端には、係止突起が嵌合するよう周方向に延びる保持溝が形成され、上記ノックホルダーの内面には上記消しゴムホルダーの制御ピンが入り込む案内溝が前後方向に形成され、該案内溝には上記係止突起が保持溝に係合しているとき制御ピンが係合する保持孔が設けられている請求項5に記載の消しゴム付きノック式筆記具。
【請求項7】
上記ノック部材は、後部に取付孔を有し、該取付孔に消しゴムを静止状態で装着した請求項1に記載の消しゴム付きノック式筆記具。
【請求項8】
上記筆記具本体内には、制御ピンが係止溝に嵌合しているとき当接するよう当接リブが設けられ、該当接リブの後端面が阻止部を構成している請求項7に記載の消しゴム付きノック式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消しゴムを有するノック部材をノックして筆記体を繰り出す形式の筆記具において、消しゴムを使用する際に、ノック部材が作動しないようにした消しゴム付きノック式筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノック部材をノックしてシャープペンシルやボールペン等の筆記体を繰り出す形式の筆記具として、ノック部材の後部に設けた消しゴムが、筆記具本体の後端から突出するようにした筆記具が広く用いられている。この消しゴムは、筆記具の筆記先端が上方に位置するように筆記具本体を傾けたとき、ノック部材から後方に突出するようノック部材に出没可能に設けられている場合と、静止状態でノック部材に装着されている場合がある。ノック式筆記具では、ノック部材は、ノックした際に、筆記体を繰り出すために筆記具本体の前後方向に移動可能に設けられているから、消しゴムが強く押されると、ノック部材が前進して芯が繰り出されるおそれがある。そこで、消しゴムを使用するとき、消しゴムに強い力が作用しても、ノック部材が作動しないようにした種々のロック機構が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、筆記状態では消しゴムは筆記具本体内に没入されているが、消しゴム側を下方に向けると、筆記具本体から消しゴムが自重で突出して消しゴムを使用できる構成の筆記具が記載されている。特許文献1の筆記具では、芯繰出し機構の芯タンクの後端に接続部材を圧入し、この接続部材に出没ユニットを接続し、出没ユニット内にホルダーや出没具(消しゴム)を有する進退部材を設けてある。出没具(消しゴム)側を下方に向けると、ホルダー内で進退部材が下方にスライドし、進退部材のスライド軸に設けた凹部に、ホルダーと進退部材との間に跨るように、転動体(球体)が嵌り込む。そして、下方にスライドしてきた脱部材がこの転動体の外周を囲むことにより進退部材、すなわち進退部材に取り付けた出没具(消しゴム)を後退不能に係止するよう構成されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の構成では、出没ユニットの支持ケースは、軸筒内面に設けた縦溝に沿って前進可能であるから、出没具(消しゴム)を使用する際、紙面に出没具(消しゴム)をあてて押し込むと、出没ユニットに押圧力が伝わり、接続部材を介して芯タンクが直接押圧されて前進する。この前進動は、芯繰出し機構をノック操作したことと同様の作動となる。その結果、芯が筆記具本体の先端から繰り出されることになり、消しゴムが後退するために、消しゴムによる消去作業の効率もよくない。また、ノック式筆記具は、芯繰出し機構を構成する芯タンクが、チャックスプリングで後方に付勢されている。通常、芯の硬度が低い筆記具では、芯を保護するためにこのスプリングの強さは弱く設定されている。したがって、消しゴムで消去する際の弱い力でも、簡単に芯タンクが前進して芯が繰り出されてしまうおそれがある。
【0005】
消しゴムをノック部材に静止状態で装着した筆記具の場合も、ノック部材のロック機構がないと、出没式消しゴムを設けた特許文献1に記載のノック式筆記具と同様に、消しゴムを使用するときにノック部材がノックされてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6045651号公報(段落0043、図4(a) 、(b)、 図5(a) 、(b))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決課題は、筆記先端が上方に位置するように筆記具を傾けてノック部材に設けた消しゴムを使用する際、ノック部材がロックされ、消しゴムを紙面に当てて擦ったり、押したりしても、ノック部材が前進することがなく、芯の繰り出しが防止され、筆記先端が下方に位置するように傾けると、通常のようにノック操作により筆記体を繰り出すことができる消しゴム付きノック式筆記具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、筆記体を収納した筆記具本体と、筆記体を繰り出すよう筆記具本体内に前後動可能に挿入されたノック部材と、ノック部材の後部に保持された消しゴムと、上記ノック部材に形成された前後方向に延びる摺動溝及び該摺動溝の後端から周方向に延びる係止溝と、上記ノック部材の上記摺動溝と係止溝にわたって移動可能に嵌合しかつ外方端が上記筆記具本体の半径方向に向かって延びる制御ピンと、該制御ピンが嵌合する上記摺動溝の前方側に前後方向に自由移動可能に挿入された可動ストッパーと、上記制御ピンが係止溝に嵌合しているとき該制御ピンの外方端が当って制御ピンの前進を阻止するよう筆記具本体内に設けた阻止部を具備する消しゴム付きノック式筆記具が提供され、上記課題が解決される。
【0009】
本発明によれば、上記摺動溝の後端から周方向に延びる係止溝は、ノック部材の仮想中心軸線に対し後方に傾斜して設けられ、上記ノック部材の後部に保持される消しゴムを、ノック部材から後方に出没可能に設けたり、静止状態でノック部材に装着した消しゴム付きノック式筆記具が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記のように構成され、筆記体を収納した本体内に、前後動可能にノック部材を挿入し、ノック部材の後部には消しゴムを設けてある。上記ノック部材には、前後方向に延びる摺動溝と該摺動溝の後端から周方向に延びる係止溝が形成されている。そして上記摺動溝から係止溝にわたって移動するように制御ピンを設けてあり、この摺動溝の前方側には前後方向に自由移動可能な可動ストッパーが挿入されている。筆記先端が上方に位置するように筆記具を傾けて消しゴム側を下方に向けると、制御ピン及び可動ストッパーは摺動溝に沿って自重で下方に落下し、制御ピンが係止溝に対応する位置まで移動すると、摺動溝から係止溝に入り込み、周方向に少し回転する。制御ピンと共に落下する上記可動ストッパーは、上記係止溝に制御ピンが入り込んだとき、該制御ピンに隣接する位置で停止し、係止溝を塞ぐ。その結果、制御ピンは係止溝から抜け出ることができなくなる。このとき制御ピンの外方端は、筆記具本体内に設けた阻止部に当接するから、制御ピンは前進が阻止され、ノック部材も前進させることができなくなる。このようにして、ノック部材の前進がロックされるので、消しゴムの使用中の筆記体の繰り出しを防止することができる。
【0011】
上記摺動溝の後端から周方向に延びる係止溝を、ノック部材の中心軸線に対し後方に傾斜して設けると、摺動溝を自重で落下してきた制御ピンは、係止溝の開口部に到達したとき、容易に係止溝に入り込みやすい。また筆記具を使用する際、筆記先端を向きにしたとき係止溝から摺動溝に戻りやすく、支障なく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例を示し、筆記状態の断面図。
図2】ノックホルダーを示し、(A)は正面図、(B)は断面図、(C)は右側面図。
図3】ノック部材を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は断面図、(D)は右側面図。
図4】消しゴムホルダーを示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は断面図。
図5】制御ピンを示し、(A)は正面図、(B)は右側面図、(C)は平面図。
図6】可動ストッパーを示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は断面図、(D)は右側面図。
図7】消しゴム側を下方に向けたが、まだ消しゴムが落下しない状態の説明図であって、 (A)は消しゴムホルダーと筆記具本体の関係を示す説明図、(B)は制御ピンがノックホルダーの案内溝に嵌合している状態を示す説明図、(C)は摺動溝に嵌合している制御ピンと可動ストッパーの両端の位置を示す説明図。
図8】消しゴム側を下方に向けて消しゴムが落下した状態の説明図であって、(A)は消しゴムホルダーと筆記具本体の関係を示す説明図、(B)は制御ピンがノックホルダーの案内溝から抜け出して少し回転した状態を示す説明図、(C)は制御ピンが係止溝に入り込み可動ストッパーが制御ピンに隣接した状態の両端の位置を示す説明図。
図9】消しゴムを使用して少し押し戻され、制御ピンがノックホルダーの後端面に当った状態の説明図であって、(A)は消しゴムホルダーと筆記具本体の関係を示す説明図、(B)は制御ピンとノックホルダーの後端面の関係を示す説明図、(C)は制御ピンが係止溝に入り込み可動ストッパーが制御ピンに隣接した状態の両端の位置を示す説明図。
図10】筆記体としてボールペンリフィールを使用した実施例の断面図。
図11】本発明の他の実施例を示し、筆記状態の断面図。
図12】筆記具本体を示し、(A)は断面図、(B)は右側面図。
図13】ノック部材を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は断面図。
図14】制御ピンを示し、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は断面図。
図15】可動ストッパーを示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は断面図、(D)は右側面図。
図16】消しゴム側を下方に向けたが、まだ制御ピン及び可動ストッパーが落下しない状態の説明図であって、(A)は制御ピン及び可動ストッパーと筆記具本体の関係を示す説明図、(B)は制御ピンがノック部材の摺動溝に嵌合している状態を示す説明図、(C)は摺動溝に嵌合している制御ピンと可動ストッパーの両端の位置を示す説明図。
図17】消しゴム側を下方に向けて制御ピンと可動ストッパーが落下した状態の説明図であって、(A)はノック部材と筆記具本体の関係を示す説明図、(B)は制御ピンが係止溝に嵌合して少し回転した状態を示す説明図、(C)は制御ピンが係止溝に入り込み、可動ストッパーが制御ピンに隣接した状態の両端の位置を示す説明図。
図18】消しゴムを使用して少し押し戻され、制御ピンが筆記具本体内の当接リブ(阻止部)に当った状態の説明図であって、(A)は制御ピンと筆記具本体の関係を示す説明図、(B)は制御ピンと当接リブ(阻止部)の関係を示す説明図、(C)は制御ピンが係止溝に入り込み、可動ストッパーが制御ピンに隣接した状態の両端の位置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、シャープペンシルやボールペン等の筆記体を有する筆記具に適用することができ、筆記体以外の棒状体の繰り出し具に適応することもできる。また、消しゴムをノック部材に静止状態で装着したノック式筆記具や、ノック部材から出没できるように消しゴムを設けたノック式筆記具に適応することができる。図1は、筆記体としてシャープペンシルを具備する出没式消しゴムに本発明を適用した一実施例を示している。図1において、筒状の筆記具本体1は外周にグリップ2を有し、内部には、上記筆記体3が収納されている。本発明において、前、前部、前方、先とは、筆記体の筆記先端が筆記具本体1から突出する方向をいい、筆記先端が筆記具本体1内に後退する方向を後、後部、後方という。
【0014】
シャープペンシルのノック式の芯繰出し機構は、種々知られており、図1に示す実施例では、芯4を収納する芯タンク5の前方に、芯を把持するチャック6と、該チャックを締着するクラッチ7を設け、芯タンク5をチャックスプリング8で後方に付勢している。筆記具本体1の先端に設けたテーパー9からは先端ブッシュ10が突出しており、該先端ブッシュ10には、繰り出された芯を仮保持するブレーカー11と、筆記先端から突出する芯を保護する金属製の芯保護パイプ12が設けられている。芯タンク5をノックすると、芯を把持しながらチャック6が前進し、前進の途中でクラッチ7が先端ブッシュに設けた段部に当たってチャックを開放し、公知のように芯4を先端から繰り出して筆記することができる。
【0015】
上記筆記具本体1の後部には、消しゴム出没機構13が設けられ、該出没機構により、消しゴム14側を下方に向ける、消しゴムは自重で落下して筆記具本体1から突出し、使用することができる。実施例に示す出没機構は、筆記体3を収納した筆記具本体1の後部内に固定されるノックホルダー15と、該ノックホルダー15内に前後動可能に挿入され後方に付勢されたノック部材16と、ノック部材16の後方に前後方向に自由移動可能に挿入され消しゴム14を保持する消しゴムホルダー17と、消しゴムホルダー17の前方に設けた制御ピン18と、制御ピン18の前方に位置する可動ストッパー19を具備している。
【0016】
上記ノックホルダー15は、図2に示すように、筒状に形成され、スリット20を形成した前端部21が筆記具本体1内の段部22に当接した状態で筆記具本体内に設けた環状突起23に係合して固定されるよう外周に環状溝24を有している。上記前端部21には、上記ノック部材16の先端筒部25が前方に突出するよう先端孔26が形成されている。筒状の周面部には、ノック部材16の移動範囲を定めるよう前後方向に延びるノック溝27が設けられ、上記ノック部材16には、このノック溝27に挿入される係止突起28が設けられ、ノック部材16はこの係止突起28がノック溝27の端部に当たる範囲内でノックすることができる。このノック溝27と係止突起28は、図に示す実施例とは逆側の部材に、すなわち、ノックホルダー15側に係止突起を設け、ノック部材16側にノック溝を設けてもよい。該ノック溝27の後端には、好ましくは周方向に延び上記係止突起28を受け入れできる保持溝29が設けられている。上記ノック溝27の後端部側には係止突起28をノック溝27に挿入する際の案内となる傾斜面30が設けられ、係止突起自体も傾斜面を有する側面視略直角三角形状に形成されている。
【0017】
上記ノックホルダー15の内面には、前後方向に延びる案内溝31が形成され、該案内溝31の後端はノックホルダー15の後端面32で開口しているが、該後端面32は該案内溝31の後端開口部の円周方向においては塞がれている。したがって、消しゴムホルダー17に設けた制御ピン18が、案内溝31の開口部の円周方向の後端面32に対向する位置にあるときには、ノック部材16を前方に移動させようとしても消しゴムホルダー17の制御ピン18の外方端がノックホルダー15の後端面32に当たるので、ノック部材16を移動させることができない。このように、後端面32は、ノック部材の前進を阻止する阻止部を構成している。
【0018】
後端面32に当たる位置から、消しゴムホルダー17を少し回転して、制御ピン18が案内溝31の後端開口部に対向する位置にあるときは、制御ピン18の外方端を、案内溝31に嵌合させることが可能になり、ノック部材16のノック操作による前進動に合わせて案内溝内に入り込んで消しゴムホルダーは前進可能となる。また、消しゴムホルダー17を筆記具本体1内に没入するとともに上記ノック部材16を回転して係止突起28を保持溝29に係合させたとき、上記制御ピン18の外方端が対向する位置の案内溝31には、該制御ピン18を係止できるよう保持孔33が設けられている。制御ピン18がこの保持孔33に係止されると、消しゴムホルダー17の前後方向の移動が阻止される。
【0019】
上記ノック部材16は、内壁34を有する筒状に形成され、先端筒部25の後方段部35とノックホルダー15の内方段部36の間に、ノック部材16を後方に付勢するノックスプリング37を装着してノックホルダー15内に挿入されている(図1参照)。該先端筒部25の後方の中間筒部38には、上述したように、上記ノック溝27に嵌合する係止突起28を設けてあり、かつ制御ピン18及び可動ストッパー19が自重で自由に摺動できるよう前後方向に延びる摺動溝39が対向状態に形成され、該摺動溝39の後端からは、周方向に延びる係止溝40が設けられている。該係止溝40は、図3に示すように、落下してきた制御ピン18が自然に係止溝40に入り込むようノック部材16の仮想中心軸線に対し、後方に傾斜しながら周方向に延びていることが好ましく、かつその位置は、ノックホルダーの後端面32と同じ位置か若しくはそれより後方に位置するように設けられている。中間筒部38の後方には、上記消しゴムホルダー17を受け入れる後方筒部41が形成され、該後方筒部41の外周は、筆記具本体1の後部内面に摺接する。後方筒部41の内面前部42には、上記摺動溝39の後端に対応する位置に、制御ピン18や可動ストッパー19のストッパー片43の挿入をガイドする案内部44が設けられている。
【0020】
上記消しゴムホルダー17は、ノック部材16の後方筒部41に納まる大きさの筒状に形成され、後方は消しゴム14を装着できるよう大径部45に形成されている。大径部45の内面には消しゴムの抜け止め突起46が形成されている。周壁の一部には消耗した消しゴム14を掘り出して交換できるよう切り欠き溝47が設けられている。小径部48は、制御ピン18の基部49を収納できる内径に形成され、先端側には制御ピン18の突片50を保持するため略U字状に開口する取付孔51が形成されている。
【0021】
制御ピン18は、消しゴムホルダー17の小径部に挿入される基部49と、上記摺動溝39に嵌合するよう略T字状に延びる突片50を有し、その断面形状は略円形でもよいが、図に示す実施例では、両側に平面部を有する略楕円形に形成してあり、自重により上記摺動溝39内を移動する際、安定状態で摺動溝39に摺接して移動するようにしている。制御ピン18の外方端、すなわち突片50の先端は、上記ノック部材16及びノックホルダー15の半径方向に沿って延び、上記ノック部材16の中間筒部38の外周面より外方に突出し、上記ノックホルダー15の内面に設けた案内溝31に嵌合して移動できるようノックホルダー15の内径よりも大きい長さである。しかし、ノックホルダー15の後端面32の外径を超えない長さであり、該制御ピン18が摺動溝39から係止溝40に入ったとき、突片50の先端は、ノックホルダー15内面の上記案内溝31から抜け出し、ノックホルダー15の後端面32に対向する長さを有している。
【0022】
上記可動ストッパー19は、上記ノック部材16の中間筒部38に挿入されて自重で前後方向に移動できるような重さの円柱状のストッパー本体52を有し、該ストッパー本体52の周面に上記摺動溝39に挿入されて前後方向に自由移動可能なストッパー片43が設けられている。該ストッパー片43の後端部53は、摺動溝39と係止溝40が接続する開口部を確実に閉鎖できるよう斜めの傾斜縁に形成されている。該ストッパー本体52の中心部には可動ストッパー19の自重による落下移動を容易にするよう貫通孔54が形成されている。
【0023】
上記可動ストッパー19と制御ピン18は、ノック部材16の案内部44を通して摺動溝39に挿入され、ストッパー片43を摺動溝39に嵌合してから制御ピン18の突片50を摺動溝39に嵌合させ、その後方から消しゴムホルダー17を挿入して制御ピン18の基部49を消しゴムホルダー17の小径部に挿入するとともに突片50の基部を取付孔51に係合させれば、ノック部材16を組立できる。
【0024】
シャープペンシルとして使用する際は、図1に示すように、通常と同様に筆記具本体1の先端のテーパー9側が紙面を向くように筆記具本体1を保持すれば、制御ピン18が固定され消しゴムホルダー17は、自重により前方に移動してノック部材16の後方筒部41内に収納され、可動ストッパー19はノック部材16の内壁34に当たって停止している。この状態でノック部材16をノックすると、ノック部材16はノック溝27に沿って前進し、芯タンク5の後端を押圧し、通常のノック式繰出し機構と同様にチャック6を前進させて芯4を繰り出し、筆記することができる。
【0025】
消しゴム14を使用する際は、消しゴム14側が下方を向くように、筆記具本体1を傾ける(反転させる)。この反転操作により、消しゴムホルダー17と可動ストッパー19はノック部材16内で一緒に下方に落下する。図7(A)は、落下移動する前の状態を示す説明図であるが、この移動前の状態では、図7(B)に示すように、制御ピン18の外方端はノックホルダー15の案内溝31内に嵌合しており、同時に図7(C)に示すように、 ノック部材16の摺動溝39に突片50が嵌合している。図7において、該制御ピン18の上方には可動ストッパー19が位置しており、下端が制御ピン18に当っている。
【0026】
消しゴム14側を下向きにしたことにより、図8に示すように、消しゴムホルダー17は、下方に移動し、ノック部材16の後方筒部41から消しゴム14が突出する。そして、図8(C)に示すように、制御ピン18は摺動溝39の下方まで落下し、同時に可動ストッパー19も落下してくる。摺動溝39の端部まで落下してくると、消しゴムホルダー17は係止溝40に沿ってわずかに回転しつつ制御ピン18の突片50は係止溝40に入り込む。その後、係止溝40の開口部には、後から落下してきた可動ストッパー19のストッパー片43が制御ピン18の突片50に隣り合うように並んでとまり、係止溝40の開口部は閉ざされる。このとき、制御ピン18の突片50の先端は、ノックホルダー15の案内溝31の後端から抜け出し、図8(B)に示すように、消しゴムホルダー17のわずかな回転にともなってノックホルダー15の後端面32に対向する位置に回転移動し、図8(A)に示す状態になる。
【0027】
この状態で消しゴム14を紙面55に押し付けると、図8(C)に示すように、制御ピン18の突片50に隣接して可動ストッパー19のストッパー片43が位置しているため消しゴムホルダー17はノック部材16内に戻らないが、さらに押すとノック部材全体が前方に移動して筆記具本体内に引っ込もうとする。しかし、図9(A)、(B)に示すように、制御ピン18の突片50の外方端がノックホルダー15の後端面32、すなわち阻止部に当るので、ノック部材16も消しゴムホルダー17も前方に移動しない。このようにして、ノック部材の前進、すなわちノック操作を阻止できるので、芯の繰り出しが防止され、安定して消しゴムを使用することができる。
【0028】
図9に示す状態から消しゴム14が上になるように筆記具本体1を持ち替えると、先ず可動ストッパー19のストッパー片43が摺動溝39に案内されて、図7(C)に示す状態に戻り、ノック部材16の係止溝40の開口部が開放されるので、消しゴムホルダー17の制御ピン18の突片50も係止溝40から抜け出し、元の位置に戻り、消しゴム14はノック部材16内に収納される。そして、図1に示す状態になるから、ノック操作が可能となる。
【0029】
図1に示す状態では、ノック部材16はノックスプリング37に付勢されてノックホルダー15内で後退しており、係止突起28はノックホルダー15の保持溝29に隣接した位置にある。この状態で、ノック部材16を回転させると、係止突起28は該保持溝29に嵌合し、同時に消しゴムホルダー17に設けた制御ピン18の外方端を、ノックホルダー15の内面に形成した保持孔33に係合することができる。したがって、ノック部材16や消しゴムホルダー17が、持ち運び中に筆記具本体から飛び出さないようにできる。消しゴムの出没が煩わしいときにノック部材の移動を停止させることもできる。
【0030】
上記実施例では、筆記体3としてシャープペンシルに適用した例を説明したが、その他の筆記体として消せるボールペンに適用した実施例が図10に示されている。図10において、ボールペンリフィール56は、戻しスプリング57で筆記先端がテーパー9内に後退するよう本体1内に収納され、該リフィール56の後端には公知のノック式繰出し機構が設けられている。この繰出し機構は、公知のように、ノック操作でノックカムを前進させ、本体内に設けた固定カムと協働してリフィールの後部に当接している回転カムを前後動させてリフィールを出没させる機構であり、公知の機構であるので、詳述しない。消しゴム出没機構13は、上記実施例と同様であり、この実施例においてはノック部材16の前部にノックカム58を固定している点及び消しゴムとして消せるボールペン消去用の消しゴム59を使用している点が相違しているだけなので、説明を省略する。この実施例においても、消しゴム59側を下方に向ければ、消しゴムホルダー17がノック部材16から突出し、筆記具本体1内に没入しないようにノック部材をロックして消しゴムを使用することができる。
【0031】
上記実施例では、消しゴムをノック部材から出没式に設けた実施例につき、説明したが消しゴムをノック部材に静止状態で装着した筆記具に本発明を適用することもできる。図11から図18は、そのような実施例を示す。図11は、筆記体61としてシャープペンシルを筆記具本体62内に収納した実施例を示している。芯63を収納した芯タンク64の前方には、芯を把持するチャック65と、該チャック65を締着するクラッチ66が設けられ、芯タンク64をチャックスプリング67で後方に付勢している。上記芯タンク64の後方には、芯タンク64の後端に対向してノック部材68が設けられている。筆記具本体62の先端に設けたテーパー69からは、繰り出された芯を仮保持するブレーカー70を形成したスライダー71が突出し、筆記先端を形成している。ノック部材68をノックすると、芯タンク64を介して芯63を把持しながらチャック65が前進し、前進の途中でクラッチ66がテーパー69内に設けた段部に当たってチャック65を開放し、公知のように芯63を先端から繰り出して筆記することができる。
【0032】
上記筆記具本体62内には、上記ノック部材68に対応する部分に、ノック部材68の直進動をガイドするノックリブ72が設けられ、該ノックリブより後方には、制御ピン73の前進を阻止する阻止部となる当接リブ74が設けられている。また、後部にはノック部材68の移動を規制するノック溝75が設けられている。
【0033】
上記ノック部材68は、筒状に形成され、先端には、筆記具本体62の内面に摺接できるよう頭部76が設けられている。この実施例においては、上述の実施例と相違し、ノック部材68を後方に付勢するノックスプリングは設けられていないが、所望によりノックスプリングを設けて後方に付勢することもできる(図示略)。該頭部76より小径の中間筒部77には、制御ピン73及び可動ストッパー78が自重で自由に摺動できるよう前後方向に延びる摺動溝79が対向状態に形成され、該摺動溝79の後端からは、周方向に延びる係止溝80が設けられている。該係止溝80は、図13に示すように、落下してきた制御ピン73が自然に係止溝80に入り込むようノック部材68の仮想中心軸線に対し、後方に傾斜しながら周方向に延びていることが好ましく、かつその位置は、上記筆記具本体62の内面に形成した当接リブ74と同じ位置か若しくはそれより後方に位置するように設けられている。また、上記摺動溝79の先端側には前方に開口するスリット81が形成されており、該スリット81を筆記具本体62内に設けたノックリブ72に係合させている。該スリット81の前端には、上記制御ピン73や可動ストッパー78をノック部材68内に挿入するときのガイドとなるよう傾斜面82が設けられている。
【0034】
上記中間筒部77の後方には、上記消しゴム83を静止状態で装着するための取付孔84を形成した後方筒部85が形成されている。該後方筒部85の外周には、上記筆記具本体62に形成したノック溝75に係合する係止突起86と貫通孔87が設けられている。後方筒部85は、係止突起86がノック溝75に係合した状態で、筆記具本体62の後部内面に摺接する。後方筒部85の内面には、消しゴム83を抜け止めする環状隆起部88が形成されている。なお、係止突起86とノック溝75は、図に示す実施例とは逆側の部材に、すなわち筆記具本体側に係止突起を設け、ノック部材側にノック溝を設けてもよい(図示略)。
【0035】
制御ピン73は、芯補給用の挿通孔89を有する筒状に形成され、先部90が上記可動ストッパー78に挿通される外径に形成され、後部91が上記ノック部材68の後方筒部85に摺接する外径に形成され、ノック部材68内で自由に前後方向に移動可能である。後部91の前端側には、上記摺動溝79に嵌合するよう筆記具本体62の半径方向に向かって、略T字状に延びる突片92が形成されている。突片92の断面形状は略円形でもよいが、図14に示す実施例では、両側に平面部を有する略楕円形に形成してあり、自重により上記摺動溝79内を移動する際、安定状態で摺動溝79に摺接して移動するようにしている。制御ピン73の外方端、すなわち突片92の先端は、上記ノック部材68の中間筒部77の外周面より外方に突出する長さであり、かつ、筆記具本体62の内面にはあたらないが、該筆記具本体62の内面に突設した当接リブ74の後端面には当接可能な長さである。
【0036】
上記可動ストッパー78は、上記ノック部材68の中間筒部77に挿入され、自重で前後方向に移動できるような重さの円筒状のストッパー本体93を有する。該ストッパー本体93の周面には、上記摺動溝79に挿入されて前後方向に自由移動可能なストッパー片94が設けられている。該ストッパー片94の後端部95は、摺動溝79と係止溝80が接続する開口部を確実に閉鎖できるよう斜めの傾斜縁に形成されている。該ストッパー本体93には、上記制御ピン73の先部90が挿通する貫通孔96が形成されている。
【0037】
シャープペンシルとして使用する際は、図11に示すように、通常と同様に筆記具本体62の先端のスライダー71側が紙面を向くように筆記具本体62を保持したとき、ノック部材68の係止突起86は、筆記具本体62のノック溝75の後端側に位置している。上記制御ピン73や可動ストッパー78は、自重により前方に移動してノック部材68の移動を拘束していない。この状態でノック部材68をノックすると、ノック部材68はノックリブ72にガイドされて前進し、芯タンク64の後端を押圧し、通常のノック式繰出し機構と同様にチャック65を前進させて芯63を繰り出し、筆記することができる。
【0038】
消しゴム83を使用する際は、消しゴム側が下方を向くように、筆記具本体62を傾ける(反転させる)。この反転操作により、制御ピン73と可動ストッパー78はノック部材68内で一緒に下方に落下する。図16(A)は、落下移動する前の状態を示す説明図であるが、この移動前の状態では、図16(B)に示すように、制御ピン73の突片92の外方端はノック部材68の半径方向に突出しているが、当接リブ74には対向していない。図16(C)に示すように、 ノック部材68の摺動溝79には突片92が嵌合している。図16において、該制御ピン73の上方には可動ストッパー78が位置しており、下端が制御ピン73に当っている。
【0039】
消しゴム83側を下向きにしたことにより、図17(A)、(C)に示すように、制御ピン73は摺動溝79の下方まで落下し、同時に可動ストッパー78も落下してくる。摺動溝79の端部まで落下してくると、制御ピン73は係止溝80に沿ってわずかに回転しつつ突片92が係止溝80に入り込む。その後、係止溝80の開口部には、後から落下してきた可動ストッパー78のストッパー片94が制御ピン73の突片92に隣り合うように並んでとまり、係止溝80の開口部は閉ざされる。制御ピン73が回転することにより、制御ピン73の突片92外方端は、図17(B)に示すように、筆記具本体62内に形成した当接リブ74の後端面に対向する位置に移動する。
【0040】
この状態で消しゴム83を紙面97に押し付けると、図17(C)に示すように、制御ピン73の突片92に隣接して可動ストッパー78のストッパー片94が位置しているため制御ピン73の突片92はノック部材68の摺動溝79内に戻らないが、さらに押すとノック部材68の全体が前方に移動して筆記具本体内に引っ込もうとする。しかし、図18(A)、(B)に示すように、制御ピン73の突片92の外方端が当接リブ74の後端面、すなわち阻止部に当るので、ノック部材68は前方に移動しない。このようにして、ノック部材68の前進、すなわちノック操作を阻止できるので、芯の繰り出しが防止され、安定して消しゴム83を使用することができる。
【0041】
図18に示す状態から消しゴム83が上になるように筆記具本体62を持ち替えると、先ず可動ストッパー78が摺動溝79に案内されて、図16(C)に示す状態に戻り、ノック部材68の係止溝80の開口部が開放されるので、制御ピン73の突片92は係止溝80から脱出して摺動溝79に入り、図11に示す状態になるから、ノック操作が可能となる。
【0042】
図11に示す実施例のシャープペンシルに代えて、ボールペンに適用することもできることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0043】
1、62 筆記具本体
3、61 筆記体
13 消しゴム出没機構
14、83 消しゴム
15 ノックホルダー
16、68 ノック部材
17 消しゴムホルダー
18、73 制御ピン
19、78 可動ストッパー
27、75 ノック溝
28、86 係止突起
29 保持溝
31 案内溝
33 保持孔
39、79 摺動溝
40、80 係止溝
43、94 ストッパー片
50、92 突片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18