(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】起立動作支援装置、起立動作支援装置の作動方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
A61H1/02 N
(21)【出願番号】P 2021035788
(22)【出願日】2021-03-05
(62)【分割の表示】P 2017047313の分割
【原出願日】2017-03-13
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2016172297
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】嘉藤 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛
(72)【発明者】
【氏名】本山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小澤 順
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-230099(JP,A)
【文献】特開2004-194780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの下腿の剛性を示す前記下腿の筋電値を計測する第1のセンサと、
前記ユーザの膝関節角度を計測する第2のセンサと、
少なくとも、計測された前記筋電値および前記膝関節角度に基づいて、前記ユーザが座っている状態から起立する動作である起立動作の支援開始が可能か否かを判定し、可能と判定した場合に、指示信号を出力し、不可能と判定した場合に、前記指示信号を出力しないプロセッサと、
前記プロセッサから前記指示信号が出力された場合に、前記ユーザの起立動作の支援を開始する支援機構と
を備える起立動作支援装置。
【請求項2】
前記第1のセンサは、前記下腿の筋電値として前脛骨筋の筋電値を計測する
請求項1に記載の起立動作支援装置。
【請求項3】
前記支援機構は、前記ユーザの膝の伸展を支援することによって前記起立動作を支援する
請求項1または2に記載の起立動作支援装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
計測された前記筋電値が第1の閾値以上である第1の条件と、計測された前記膝関節角度が第2の閾値以下である第2の条件とが共に満たされている場合に、前記ユーザの起立動作の支援開始が可能であると判定する
請求項1~3の何れか1項に記載の起立動作支援装置。
【請求項5】
前記第2の閾値は、60°以上100°以下である
請求項4に記載の起立動作支援装置。
【請求項6】
前記第2のセンサによって計測される前記ユーザの膝関節角度は、前記ユーザの左脚の膝関節角度と右脚の膝関節角度のうちの小さい方の角度である
請求項1~5の何れか1項に記載の起立動作支援装置。
【請求項7】
前記起立動作支援装置は、さらに、
前記ユーザの体幹前傾角度を計測する第3のセンサを備え、
前記プロセッサは、
計測された前記筋電値、膝関節角度および体幹前傾角度に基づいて、前記起立動作の支援開始が可能か否かを判定する
請求項1に記載の起立動作支援装置。
【請求項8】
前記体幹前傾角度は、鉛直方向と前記ユーザの体幹との間の角度であって、前記体幹が前記ユーザの前方に倒れるほど大きくなる角度である
請求項7に記載の起立動作支援装置。
【請求項9】
ユーザの下腿の剛性を示す前記下腿の筋電値を計測する第1のセンサと、
前記ユーザの膝関節角度を計測する第2のセンサと、
少なくとも、計測された前記筋電値および前記膝関節角度に基づいて、前記ユーザが座っている状態から起立する動作である起立動作の支援開始が可能か否かを判定し、可能と判定した場合に、前記起立動作を支援する支援機構に対して指示信号を出力し、不可能と判定した場合に、前記指示信号を出力しないプロセッサと
を備える起立動作支援装置。
【請求項10】
第1のセンサがユーザの下腿の剛性を示す前記下腿の筋電値を計測し、
第2のセンサが前記ユーザの膝関節角度を計測し、
プロセッサが、少なくとも、
(i)計測された前記筋電値および前記膝関節角度に基づいて、前記ユーザが座っている状態から起立する動作である起立動作の支援開始が可能か否かを判定し、
(ii)可能と判定された場合に、前記起立動作を支援する支援機構に対して指示信号を出力し、不可能と判定した場合に、前記指示信号を出力しない
起立動作支援
装置の作動方法。
【請求項11】
ユーザの下腿の剛性を示す前記下腿の筋電値を取得し、
前記ユーザの膝関節角度を取得し、
少なくとも、取得された前記筋電値および前記膝関節角度に基づいて、前記ユーザが座っている状態から起立する動作である起立動作の支援開始が可能か否かを判定し、可能と判定した場合に、前記起立動作を支援する支援機構に対して指示信号を出力し、不可能と判定した場合に、前記指示信号を出力しない
ことをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ユーザの起立動作を支援する起立動作支援装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの下肢に装着され、そのユーザの膝または腰などに配置されたアクチュエータを駆動させることで、そのユーザの起立動作を支援する起立動作支援装置(脚補助装具)が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の起立動作支援装置では、ユーザの起立動作を適切に支援することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本開示では、ユーザの起立動作を適切に支援することができる起立動作支援装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る起立動作支援装置は、ユーザの下腿の剛性を示す前記下腿の筋電値を計測する第1のセンサと、前記ユーザの前記膝関節角度を計測する第2のセンサと、少なくとも、計測された前記筋電値および膝関節角度に基づいて、前記ユーザが座っている状態から起立する動作である起立動作の支援開始が可能か否かを判定し、可能と判定した場合に、指示信号を出力し、不可能と判定した場合に、前記指示信号を出力しないプロセッサと、前記プロセッサから前記指示信号が出力された場合に、前記ユーザの起立動作の支援を開始する支援機構とを備える。
【0007】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の起立動作支援装置は、ユーザの起立動作を適切に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、実施の形態1に係る起立動作支援装置の概略的な機能ブロック図である。
【
図1B】
図1Bは、実施の形態1に係る起立動作支援方法の概略的なフローチャートである。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る起立動作支援装置の具体的な機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る筋電計測部に含まれる筋電センサの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る、アンプから出力される計測電圧、整流回路から出力される整流電圧、およびフィルタ回路から出力されるフィルタ処理電圧のそれぞれの波形の一例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、実施の形態1に係る、ユーザの上半身の体幹前傾角度の一例を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、実施の形態1に係る、体幹角度計測部がユーザに装着された状態の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る、ユーザが起立動作を行うときに体幹角度計測部によって計測される角速度と体幹前傾角度とを示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る支援機構の具体的な構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1に係る記憶部に格納されている情報の一例を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、実施の形態1に係る記憶部に格納されている情報の他の例を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、実施の形態1に係る記憶部に格納されている情報の他の例を示す図である。
【
図10A】
図10Aは、実施の形態1に係る、前脛骨筋の筋電値の波形および第1の閾値の例を示す図である。
【
図10B】
図10Bは、実施の形態1に係る、体幹前傾角度の波形および第3の閾値の例を示す図である。
【
図11A】
図11Aは、実施の形態1に係る起立動作支援装置の処理のフローチャートを示す図である。
【
図12A】
図12Aは、実施の形態2に係る起立動作支援装置の概略的な機能ブロック図である。
【
図12B】
図12Bは、実施の形態2に係る起立動作支援方法の概略的なフローチャートを示す図である。
【
図13】
図13は、実施の形態2の変形例1に係る起立動作支援装置の機能ブロック図である。
【
図14】
図14は、実施の形態2の変形例1に係る膝角度計測部の配置および膝関節角度の一例を示す図である。
【
図15A】
図15Aは、起立動作の支援開始時にユーザがバランスを崩してしまう例を示す図である。
【
図17】
図17は、起立動作直前の膝関節角度が65度と95度であったときの起立動作における筋活動量の計測結果の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、複数の膝関節角度のそれぞれで起立動作が行われるときの前脛骨筋の筋活動量の最大値を示す図である。
【
図19】
図19は、実施の形態2の変形例1に係る判定部による第1の閾値の変更の例を示す図である。
【
図20】
図20は、実施の形態2の変形例1に係る起立動作支援装置の処理のフローチャートである。
【
図21】
図21は、実施の形態2の変形例1に係るステップS132の詳細な処理の一例を示す図である。
【
図22】
図22は、実施の形態2の変形例1に係るステップS132の詳細な処理の他の例を示す図である。
【
図24】
図24は、実施の形態2の変形例2に係る起立動作支援装置の機能ブロック図である。
【
図25】
図25は、起立動作の支援が行われているときにユーザがバランスを崩してしまう例を示す図である。
【
図26】
図26は、起立動作の支援が行われているときの膝関節角度および体幹大腿角度の変化の一例を示す図である。
【
図27】
図27は、実施の形態2の変形例2に係る起立動作支援装置の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者は、「背景技術」の欄において記載した、特許文献1の起立動作支援装置に関し、以下の問題が生じることを見出した。
【0011】
特許文献1のようなユーザの下肢に装着される起立動作支援装置では、起立動作の支援を行った際、ユーザがバランスを崩して転倒しないように気をつけなければならない。バランスを崩す主な原因としては、起立動作支援装置によって想定されている起立前の姿勢をユーザが正しくできていないことが挙げられる。そのため、起立動作支援装置は、支援を開始する前に、ユーザの姿勢を認識し、ユーザが転倒することなく起立できるかを判断する必要がある。そこで、特許文献1の起立動作支援装置は、支援を開始する前に、ユーザの腰位置に対する各足の水平方向の相対位置を計測する。そして、その起立動作支援装置は、その相対位置が予め決められた範囲内にあって、かつ、ユーザの各足が接地している場合に、ユーザの起立動作の支援を開始する。
【0012】
特許文献1の起立動作支援装置は、接地センサによってユーザの各足が接地しているか否かを判断している。しかしながら、起立動作を支援するためには、ユーザの各足が接地していたとしても、ユーザが脚に力を入れて下腿に強い剛性を持たせている必要がある。もし、ユーザの各足が接地していても下腿に強い剛性がなければ、起立動作支援装置が起立動作の支援を開始することによってユーザの膝を伸展させても、ユーザを起立させることができず、下腿を前方に移動させてしまうことになる。また、下腿に強い剛性があっても、ユーザの膝が適切に曲がっていなければ、ユーザを起立させることが困難になってしまう。
【0013】
このような問題を解決するために、本開示の一態様に係る起立動作支援装置は、ユーザの下腿の筋電値を計測する第1のセンサと、前記ユーザの膝関節角度を計測する第2のセンサと、少なくとも、計測された前記筋電値および膝関節角度に基づいて、前記ユーザが座っている状態から起立する動作である起立動作の支援開始が可能か否かを判定し、可能と判定した場合に、指示信号を出力するプロセッサと、前記プロセッサから前記指示信号が出力された場合に、前記ユーザの起立動作の支援を開始する支援機構とを備える。例えば、前記支援機構は、前記ユーザの膝の伸展を支援することによって前記起立動作を支援する。具体的には、前記プロセッサは、計測された前記筋電値が第1の閾値以上である第1の条件と、計測された前記膝関節角度が第2の閾値以下である第2の条件とが共に満たされている場合に、前記ユーザの起立動作の支援開始が可能であると判定する。
【0014】
これにより、ユーザの下腿の筋電値および膝関節角度に基づいて、そのユーザの起立動作の支援開始が可能か否かが判定されるため、ユーザの下腿に強い剛性があり、ユーザが膝を適切に曲げているときに、起立動作の支援を開始することができる。したがって、起立動作の失敗などの発生を抑えて、ユーザの起立動作を適切に支援することができ、ユーザを安定した状態で起立させることができる。
【0015】
また、前記第1のセンサは、前記下腿の筋電値として前脛骨筋の筋電値を計測してもよい。
【0016】
これにより、ユーザの下腿に強い剛性があるタイミングに、起立動作の支援をより適切に開始することができ、ユーザをより安定した状態で起立させることができる。
【0017】
また、前記第2の閾値は、60°以上100°以下であってもよい。
【0018】
これにより、ユーザが膝を適切に曲げているとき、すなわち、ユーザが容易に立ち上がれる状態にあるときに、起立動作の支援を開始することができる。その結果、起立動作の失敗などの発生をより抑えることができる。
【0019】
また、前記第2のセンサによって計測される前記ユーザの膝関節角度は、前記ユーザの左脚の膝関節角度と右脚の膝関節角度のうちの小さい方の角度であってもよい。
【0020】
これにより、ユーザの左脚および右脚のうち、起立動作のときに力がかかる脚の膝関節角度に基づいて、起立動作の支援開始が可能か否かが判定されるため、ユーザをより安定した状態で起立させることができる。
【0021】
また、前記起立動作支援装置は、さらに、前記ユーザの体幹前傾角度を計測する第3のセンサを備え、前記プロセッサは、計測された前記筋電値、膝関節角度および体幹前傾角度に基づいて、前記起立動作の支援開始が可能か否かを判定してもよい。ここで、例えば、前記体幹前傾角度は、鉛直方向と前記ユーザの体幹との間の角度であって、前記体幹が前記ユーザの前方に倒れるほど大きくなる角度である。
【0022】
ここで、ユーザが起立するためには上半身(すなわち体幹)を前へ傾ける必要がある。もし、ユーザの上半身が十分に前へ傾けられていない場合に、起立動作の支援が開始されると、ユーザが後方へ転倒する危険がある。しかし、特許文献1の起立動作支援装置では、ユーザの上半身の姿勢を考慮することなく、起立動作の支援を開始している。したがって、上述のような危険が生じる可能性がある。
【0023】
しかし、上記本開示の一態様に係る起立動作支援装置では、上述のように、ユーザの下腿の筋電値、膝関節角度および体幹前傾角度に基づいて、そのユーザの起立動作の支援開始が可能か否かが判定される。その結果、ユーザが上半身を前に傾けているときに、起立動作の支援を開始することができる。したがって、ユーザの転倒などの発生を抑えて、ユーザの起立動作をより適切に支援することができ、ユーザをより安定した状態で起立させることができる。
【0024】
また、前記プロセッサは、計測された前記筋電値が第1の閾値以上である第1の条件と、計測された前記膝関節角度が第2の閾値以下である第2の条件と、計測された前記体幹前傾角度が第3の閾値以上である第3の条件とが共に満たされている場合に、前記ユーザの起立動作の支援開始が可能であると判定してもよい。
【0025】
これにより、膝関節角度が大きく、かつ体幹前傾角度が小さい場合には、ユーザの起立動作の支援が開始されず、膝関節角度が小さく、かつ体幹前傾角度が大きい場合に、ユーザの起立動作の支援が開始される。したがって、ユーザが脚を前に伸ばして膝関節角度を大きくしているときに、起立動作の支援が開始されてしまうことによって、ユーザがバランスを崩して転倒してしまうなどの危険を抑えることができる。さらに、ユーザが上半身を前に傾けていないときに、起立動作の支援が開始されてしまうことによって、ユーザが後方へ転倒してしまうなどの危険を抑えることができる。
【0026】
また、前記プロセッサは、さらに、計測された前記膝関節角度が小さいほど第1の閾値が小さくなるように、前記第1の閾値を設定し、計測された前記筋電値が前記第1の閾値以上である第1の条件と、計測された前記体幹前傾角度が第3の閾値以上である第3の条件とが共に満たされている場合に、前記ユーザの起立動作の支援開始が可能であると判定してもよい。
【0027】
これにより、膝関節角度が大きい場合には、ユーザの下腿により強い剛性がなければ、ユーザの起立動作の支援が開始されず、膝関節角度が小さい場合には、ユーザの下腿の剛性が弱くても、ユーザの起立動作の支援が開始される。したがって、ユーザが脚を前に伸ばして膝関節角度を大きくしているときに、ユーザの下腿の剛性が十分に強くないにもかかわらず起立動作の支援が開始されてしまうことによって、ユーザがバランスを崩して転倒してしまうなどの危険を抑えることができる。
【0028】
また、前記プロセッサは、さらに、計測された前記筋電値および体幹前傾角度がそれぞれ周期的に変化している場合に、前記ユーザに膝を曲げることを促すための報知信号を出力してもよい。
【0029】
下腿の筋電値および体幹前傾角度がそれぞれ周期的に変化している場合には、ユーザは、起立を試みているが、膝関節角度が大きいために、起立することができず、その行為を繰り返している状況にある。このような状況には、ユーザに膝を曲げることを促すための報知信号が出力される。この報知信号によって、例えば、膝を曲げることを促す音声または文字がユーザに提示される。その提示によって、ユーザは膝を曲げる。膝が曲がると、すなわち膝関節角度が小さくなると、第1の閾値は小さく設定されるため、第1の条件が満たされ易くなる。その結果、起立動作の支援開始が可能であると判定されて、ユーザは支援機構による起立動作の支援を受けることができ、容易に起立することができる。
【0030】
また、前記起立動作支援装置は、さらに、前記ユーザの体幹と大腿との間の角度である体幹大腿角度を計測する第4のセンサを備え、前記プロセッサは、前記起立動作時に計測された前記膝関節角度および体幹大腿角度のそれぞれの変化に基づいて、前記第1の閾値を変更してもよい。例えば、前記プロセッサは、前記起立動作時に計測された前記体幹大腿角度の変化率が前記膝関節角度の変化率よりも大きい場合に、前記第1の閾値をより大きい値に変更してもよい。
【0031】
起立動作時に計測された体幹大腿角度の変化率が膝関節角度の変化率よりも大きい場合には、ユーザは起立動作時に不安定な状態になっていると想定される。したがって、このような場合に、第1の閾値をより大きい値に変更することによって、次にユーザが起立動作を行うときには、その変更された第1の閾値を用いて判定されたタイミングで起立動作の支援が開始される。したがって、起立動作の支援が開始されるタイミングを遅らせることができ、その結果、ユーザをより安定した状態で起立させることができる。
【0032】
また、本開示の一態様に係る起立動作支援装置は、ユーザの下腿の筋電値を計測する第1のセンサと、前記ユーザの膝関節角度を計測する第2のセンサと、少なくとも、計測された前記筋電値および膝関節角度に基づいて、前記ユーザが座っている状態から起立する動作である起立動作の支援開始が可能か否かを判定し、可能と判定した場合に、前記起立動作を支援する支援機構に対して指示信号を出力するプロセッサとを備えてもよい。
【0033】
これにより、上述と同様に、ユーザの起立動作を適切に支援することができ、ユーザを安定した状態で起立させることができる。
【0034】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0035】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0036】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0037】
(実施の形態1)
[概要]
図1Aに、本実施の形態に係る起立動作支援装置の概略的な機能ブロック図を示す。
図1に示すように、起立動作支援装置10は、第1のセンサ11と、第3のセンサ12aと、プロセッサ15と、支援機構17とを備える。
【0038】
第1のセンサ11は、ユーザの下腿の筋電値を計測する。第3のセンサ12aは、そのユーザの体幹前傾角度を計測する。プロセッサ15は、計測された筋電値および体幹前傾角度に基づいて、そのユーザが座っている状態から起立する動作である起立動作の支援開始が可能か否かを判定し、可能と判定した場合に、指示信号を出力する。支援機構17は、プロセッサ15から指示信号が出力された場合に、ユーザの起立動作の支援を開始する。なお、本実施の形態に係る起立動作支援装置10は、支援機構17を備えるが、支援機構17を備えていなくてもよい。
【0039】
図1Bに、本実施の形態に係る起立動作支援方法の概略的なフローチャートを示す。この起立動作支援方法では、まず、第1のセンサ11がユーザの下腿の筋電値を計測する(ステップS11)。次に、第3のセンサ12aがそのユーザの体幹前傾角度を計測する(ステップS12a)。次に、プロセッサ15が、計測された筋電値および体幹前傾角度に基づいて、そのユーザが座っている状態から起立する動作である起立動作の支援開始が可能か否かを判定する(ステップS13)。ここで、プロセッサ15が可能と判定した場合に(ステップS13のYES)、支援機構17は、そのユーザの起立動作の支援を開始する(ステップS14)。
【0040】
これにより、ユーザの下腿の筋電値および体幹前傾角度に基づいて、そのユーザの起立動作の支援開始が可能か否かが判定されるため、ユーザの下腿に強い剛性があり、ユーザが上半身を前に傾けているときに、起立動作の支援を開始することができる。したがって、ユーザの転倒または起立動作の失敗などの発生を抑えて、ユーザの起立動作を適切に支援することができ、ユーザを安定した状態で起立させることができる。
【0041】
以下、このような起立動作支援装置および起立動作支援方法の詳細について説明する。
【0042】
[装置構成]
図2に、本実施の形態に係る起立動作支援装置の具体的な機能ブロック図を示す。
図2に示すように、起立動作支援装置100は、筋電計測部101、体幹角度計測部102、タイマー103、計測処理部109、記憶部104、判定部105、支援要求部106、および支援機構107を備える。なお、
図2に示す起立動作支援装置100は、
図1Aに示す起立動作支援装置10をより具体化した装置である。また、
図2に示す筋電計測部101、体幹角度計測部102および判定部105は、それぞれ
図1Aに示す第1のセンサ11、第3のセンサ12a、およびプロセッサ15に相当する。また、
図2に示す支援機構107は、
図1Aに示す支援機構17に相当する。
【0043】
[筋電計測部101]
筋電計測部101は、上述の下腿の筋電値として前脛骨筋の筋電値を計測する。すなわち、筋電計測部101は、ユーザの下肢(具体的には下腿)に配置された電極を用いて、ユーザの前脛骨筋の筋電値を計測する。ここで、筋電値は、その電極から直接得られる計測値であってもよく、その計測値から算出または処理された値であってもよい。なお、筋電計測部101は、ユーザの両脚の前脛骨筋の筋電値を計測する。
【0044】
図3に、筋電計測部101に含まれる筋電センサの一例を示す。筋電計測部101は、例えば2つの筋電センサ1011を備え、一方の筋電センサ1011がユーザの右脚の前脛骨筋の筋電値を計測し、他方の筋電センサ1011がユーザの左脚の前脛骨筋の筋電値を計測する。
【0045】
図3に示すように、筋電センサ1011は、例えば2つの電極1012aおよび1012bと、アンプ1014と、整流回路1013と、フィルタ回路1015とを有する。
【0046】
電極1012aおよび1012bは、ユーザの前脛骨筋の直上の皮膚に配置される。なお、前脛骨筋は下腿前面の外側浅層に位置する筋肉である。例えば、電極1012aと電極1012bとの間の距離は、10~30mm程度である。
【0047】
アンプ1014は、例えば差動増幅回路である。アンプ1014は、電極1012aを用いて測定された電位V1と、電極1012bを用いて測定された電位V2との差分電圧を増幅し、増幅された差分電圧を計測電圧として出力する。電位V1は、アースと電極1012aとの間の電位差であり、電位V2は、アースと電極1012bとの間の電位差である。
【0048】
整流回路1013は、アンプ1014から出力される計測電圧に対して全波整流することによって、全波整流された計測電圧を整流電圧として出力する。フィルタ回路1015は、整流電圧に対して低域周波数通過フィルタ(すなわちローパスフィルタ)処理を行うことによって、低域周波数通過フィルタ処理された整流電圧をフィルタ処理電圧として出力する。
【0049】
筋電計測部101は、2つの筋電センサ1011のそれぞれから出力されるフィルタ処理電圧の平均値、最大値または最小値を、前脛骨筋の筋電値として計測する。
【0050】
図4に、アンプ1014から出力される計測電圧、整流回路1013から出力される整流電圧、およびフィルタ回路1015から出力されるフィルタ処理電圧のそれぞれの波形の一例を示す。なお、
図4において、縦軸は電圧(μV)であり、横軸は時間(sec)である。
【0051】
アンプ1014は、
図4の(a)に示すような波形の計測電圧を出力する。整流回路1013は、
図4の(b)に示すように、
図4の(a)に示す波形の計測電圧に対して全波整流を行う。次に、フィルタ回路1015は、
図4の(c)に示すように、全波整流された波形の包絡線を得るため、
図4の(b)に示す全波整流された波形に対して低域周波数通過フィルタ処理を行う。
【0052】
なお、ローパスフィルタ処理によって通過される周波数帯域は、例えば2Hz以下の帯域である。この処理により、整流電圧に含まれる2Hzより大きな周波数成分は減衰する。なお、このようなローパスフィルタ処理された整流電圧の波形を、前脛骨筋の活動波形ともいう。前脛骨筋の活動波形に含まれる各時刻における値を、その時刻における前脛骨筋の活動値ともいう。
【0053】
また、筋電計測部101によって計測される筋電値は、上述のように、電極1012aおよび1012bから直接得られる計測値であってもよく、その計測値に応じた値であってもよい。その計測値に応じた値は、直接得られる計測値に対して増幅、全波整流、またはローパスフィルタ処理などの処理を行うことによって得られる値である。
【0054】
[体幹角度計測部102]
体幹角度計測部102は、ユーザの上半身の体幹前傾角度を計測する。
【0055】
図5Aに、ユーザの上半身の体幹前傾角度の一例を示す。体幹前傾角度は、
図5Aに示すように、鉛直方向に対するユーザの体幹の角度601である。すなわち、体幹前傾角度は、鉛直方向とユーザの体幹との間の角度であって、体幹がユーザの前方に倒れるほど大きくなる角度である。なお、ユーザの体幹は、例えばユーザの背骨である。
【0056】
体幹角度計測部102の具体的なハードウェアの一例は、9軸センサである。9軸センサは、加速度センサ、角速度センサ、および地磁気センサを有する。これらの加速度センサ、角速度センサ、および地磁気センサは、それぞれ加速度計側回路、角速度計測回路、および地磁気計測回路を有する。9軸センサにより鉛直方向に対する体幹の角度を体幹前傾角度として計算可能である。また、9軸センサの角速度センサのみを用いる場合には、キャリブレーションと角速度センサの計測値の積算とを行うことにより、体幹前傾角度を計算することができる。
【0057】
図5Bに、体幹角度計測部102がユーザに装着された状態の一例を示す。体幹角度計測部102は、椅子603に座っているユーザの腰に配置されている。また、
図5Bに示すように、センサのx軸、y軸およびz軸が設定されている。x軸は、例えば鉛直方向に沿う軸であり、上向きがプラスの向きである。y軸方向は、例えばx軸に垂直であってユーザの左右方向に沿う軸であり、左向きがプラスの向きである。z軸方向は、例えばx軸に垂直であってユーザの前後方向に沿う軸であり、後向きがプラスの向きである。加速度センサは、x軸方向、y軸方向およびz軸方向のそれぞれの体幹角度計測部102の加速度を計測する。地磁気センサは、x軸方向、y軸方向およびz軸方向のそれぞれの地磁気強度を計測する。角速度センサは、x軸、y軸およびz軸のそれぞれを回転中心として体幹角度計測部102が回転する角速度を計測する。
【0058】
図6に、ユーザが起立動作を行うときに体幹角度計測部102によって計測される、y軸を回転中心とした角速度と、体幹前傾角度とを示す。
図6のグラフにおける実線は、体幹角度計測部102の角速度センサによって計測された、ユーザが起立動作時に前屈運動をした際のy軸を回転中心とした角速度604を示す。
図6のグラフにおける点線は、その計測された角速度604の積算によって得られる体幹前傾角度605を示す。この
図6に示すように、体幹前傾角度605はユーザが前屈するに従い大きくなり、前屈後、もとの姿勢に戻るに従って小さくなる。
【0059】
なお、角速度センサは、角速度の変化量を直接的に計測し、その変化量を角速度計測回路によって積分することによって角速度を計測する。体幹角度計測部102は、角速度センサによって計測された角速度の累積値を初期角度に加えた値として体幹前傾角度を計測する。初期角度は、キャリブレーションにより設定されてもよく、体幹角度計測部102が有する内部メモリに、予め保持されていてもよい。また、体幹角度計測部102は、予め保持している初期角度を、キャリブレーションにより修正してもよい。例えば、起立動作支援装置100は、x軸方向(鉛直方向)に沿って体幹角度計測部102を配置するようにユーザへ指示し、指示後の体幹角度計測部102によって計測される体幹前傾角度を初期角度(すなわち0deg)に設定する。
【0060】
また、体幹角度計測部102によって計測される体幹前傾角度は、9軸センサから直接得られる計測値から算出される角度であってもよく、その計測値に応じた値から算出される角度であってもよい。その計測値に応じた値は、直接得られる計測値に対して増幅、整流またはフィルタ処理などの処理を行うことによって得られる値である。
【0061】
[支援要求部106]
支援要求部106は、ユーザの動きまたは操作に応じて、支援機構107に対して起立動作の支援開始を要求する。例えば、支援要求部106は、ボタンの操作によって支援開始を要求する、あるいは音声による操作によって支援開始を要求する。具体的には、起立動作支援装置100に配置されたボタンがユーザによって押下されると、支援要求部106は、起立動作の支援開始を支援機構107に要求する。または、ユーザがキーワードを発声し、起立動作支援装置100に配置された音声認識回路がそのキーワードを認識すると、支援要求部106は、起立動作の支援開始を要求する。
【0062】
[支援機構107]
支援機構107は、ユーザの膝の伸展を支援することによって起立動作を支援する。このような支援機構107は、支援要求部106から支援開始の要求を受けると、判定部105による現在の判定結果を取得する。その判定結果が支援開始可能を示す場合に、支援機構107は、ユーザの起立動作の支援を開始する。なお、支援開始可能を示す判定結果は、上述の指示信号として、プロセッサである判定部105から支援機構107に出力される。支援機構107は、プロセッサから指示信号が出力された場合に、ユーザの起立動作の支援を開始する。
【0063】
また、支援機構107は、上述のように、支援要求部106から支援開始の要求を受けると、判定部105による現在の判定結果を取得するが、常時、現在の判定結果を取得していてもよい。この場合、支援機構107は、その現在の判定結果が支援開始可能を示すときに、支援要求部106から支援開始の要求を受けると、ユーザの起立動作の支援を開始する。
【0064】
このような支援機構107は、例えば、ユーザの下肢に装着されるロボットまたはアシストスーツである。
【0065】
図7に、支援機構107の具体的な構成の一例を示す。
図7に示すように、支援機構107は、上部骨格1061と、下部骨格1062と、動力部1063とを有する。上部骨格1061は、下部骨格1062に対して動力部1063を介して回動自在に接続される。
【0066】
上部骨格1061は、ユーザの下肢の大腿に固定される。下部骨格1062は、ユーザの下肢の足(foot)または下腿に固定される。上部骨格1061および下部骨格1062は、それぞれ固定装具1065および1066を有し、その固定装具によりユーザに固定される。固定装具1065および1066は、例えば、テープ(A hook and loop fastener)またはベルトである。固定装具1065および1066は紐状であってもよい。動力部1063は、例えば、モータと電源とを有する。
【0067】
ここで、大腿とは、脚(leg)のうち、膝より上の部分に相当する。下腿とは、脚(leg)のうち、膝から足首までの部分に相当する。
【0068】
動力部1063は、
図7に示すように、上部骨格1061および下部骨格1062の間(またはユーザの膝)を中心として、ユーザの膝を伸展させる方向(矢印1064の方向)に、上部骨格1061を動かす。これにより、ユーザの起立動作を支援することができる。
【0069】
なお、支援機構107がユーザに装着される布状のアシストスーツの場合には、上部骨格1061と、下部骨格1062とは、それぞれ布に含まれていてもよい。
【0070】
[タイマー103]
タイマー103は、現在の時刻を計時し、その計時された時刻を示す時刻信号を計測処理部109に出力する。例えば、タイマー103は、0.01秒ごとに現在の時刻を示す時刻信号を出力する。
【0071】
[記憶部104]
記憶部104は、前脛骨筋の筋電値および体幹前傾角度を記憶するための記憶領域を有する記憶媒体であって、例えばハードディスクまたはメモリなどからなる。
【0072】
[計測処理部109]
計測処理部109は、タイマー103から出力された時刻信号によって示される時刻と、その時刻において筋電計測部101によって計測された前脛骨筋の筋電値と、その時刻において体幹角度計測部102によって計測された体幹前傾角度とを取得する。そして、計測処理部109は、その時刻と筋電値と体幹前傾角度とを対応付けて記憶部104に格納する。
【0073】
図8に、記憶部104に格納されている情報の一例を示す。
【0074】
計測処理部109は、時刻信号によって示される時刻「13:45:30.00」と、その時刻における前脛骨筋の筋電値「0.000639V」と、その時刻における体幹前傾角度「18.32deg」とを対応付けて記憶部104に格納する。また、計測処理部109は、例えば0.01秒ごとに、そのときの時刻と筋電値と体幹前傾角度とを対応付けて記憶部104に格納してもよい。また、計測処理部109は、ユーザの識別情報であるユーザIDを取得し、そのユーザIDを、時刻、筋電値および体幹前傾角度に対応付けて記憶部104に格納してもよい。また、内側広筋の筋電値が計測されている場合には、計測処理部109は、その内側広筋の筋電値も、その筋電値が計測された時刻に対応付けて記憶部104に格納してもよい。
【0075】
図9Aおよび
図9Bに、記憶部104に格納されている情報の他の例を示す。
【0076】
タイマー103は、上述のように時刻信号を出力する代わりに、クロック信号を出力してもよい。この場合、計測処理部109は、そのクロック信号に基づく第1の時間間隔(例えば0.001秒)の経過ごとに、その経過時の時刻を算出し、その時刻において計測された前脛骨筋の筋電値を筋電計測部101から取得する。そして、計測処理部109は、
図9Aに示すように、筋電値が取得された取得順と、その筋電値と、その筋電値が取得されるときに算出された時刻とを対応付けて記憶部104に格納する。例えば、計測処理部109は、取得順「1」と、最初に取得された筋電値と、基準時刻(例えば、0sec)とを対応付けて格納する。さらに、計測処理部109は、取得順「2」と、2番目に取得された筋電値と、時刻「基準時刻+第1の時間間隔」(sec)とを対応付けて格納する。さらに、計測処理部109は、取得順「3」と、3番目に取得された筋電値と、時刻「基準時刻+第1の時間間隔×2」(sec)とを対応付けて格納する。このように、計測処理部109は、取得順「n」と、n番目に取得された筋電値と、時刻「基準時刻+第1の時間間隔×(n-1)」(sec)とを対応付けて格納する(nは自然数)。
【0077】
同様に、計測処理部109は、クロック信号に基づく第2の時間間隔(例えば0.01秒)の経過ごとに、その経過時の時刻を算出し、その時刻において計測された体幹前傾角度を体幹角度計測部102から取得する。そして、計測処理部109は、
図9Bに示すように、体幹前傾角度が取得された取得順と、その体幹前傾角度と、その体幹前傾角度が取得されるときに算出された時刻とを対応付けて記憶部104に格納する。例えば、計測処理部109は、取得順「1」と、最初に取得された体幹前傾角度と、基準時刻(例えば0sec)とを対応付けて格納する。さらに、計測処理部109は、取得順「2」と、2番目に取得された体幹前傾角度と、時刻「基準時刻+第2の時間間隔」(sec)とを対応付けて格納する。さらに、計測処理部109は、取得順「3」と、3番目に取得された体幹前傾角度と、時刻「基準時刻+第2の時間間隔×2」(sec)とを対応付けて格納する。このように、計測処理部109は、取得順「n」と、n番目に取得された体幹前傾角度と、時刻「基準時刻+第2の時間間隔×(n-1)」(sec)とを対応付けて格納する(nは自然数)。なお、第1の時間間隔と第2の時間間隔とは異なっていてもよいが、同じであることが望ましい。
【0078】
[判定部105]
判定部105は、ユーザの前脛骨筋の筋電値と、ユーザの上半身の体幹前傾角度とに基づいて、ユーザの状態が起立動作の支援を開始してよい状態か否かを判定する。言い換えれば、判定部105は、ユーザの前脛骨筋の筋電値、およびユーザの体幹前傾角度の両方を用いてユーザの起立動作の支援開始が可能か否かを判定する。より具体的には、判定部105は、計測された筋電値が第1の閾値以上である第1の条件と、計測された体幹前傾角度が第3の閾値以上である第3の条件とが共に満たされている場合に、ユーザの起立動作の支援開始が可能であると判定する。言い換えれば、判定部105は、(i)ユーザの前脛骨筋の筋電値が第1の閾値以上であり、(ii)ユーザの上半身の体幹前傾角度が第3の閾値以上とき、ユーザの起立動作の支援開始が可能と判定する。なお、判定部105は、第1の閾値および第3の閾値を予め記憶していてもよく、外部の記録媒体から第1の閾値および第3の閾値を読み出してもよい。
【0079】
ここで、判定に用いられる筋電値および体幹前傾角度は、例えば、記憶部104に格納されている最新の時刻に対応付けられた筋電値および体幹前傾角度である。つまり、判定部105は、最新の時刻に対応付けられた筋電値および体幹前傾角度が記憶部104に格納されるたびに、記憶部104を参照することにより、その最新の筋電値および体幹前傾角度を特定する。そして、判定部105は、その特定された筋電値および体幹前傾角度に基づいて、上述の支援開始が現時点において可能か否かを判定する。
【0080】
図10Aに、前脛骨筋の筋電値の波形および第1の閾値の例を示し、
図10Bに、体幹前傾角度の波形および第3の閾値の例を示す。
【0081】
判定部105は、
図10Aに示すように、ユーザの前脛骨筋の筋電値が第1の閾値(例えば200μV)以上であるか否かを判定する。さらに、判定部105は、
図10Bに示すように、ユーザの体幹前傾角度が第3の閾値(例えば23deg)以上であるか否かを判定する。そして、判定部105は、筋電値が第1の閾値以上であり、かつ体幹前傾角度が第3の閾値以上である場合に、ユーザの起立動作の支援開始が可能と判定する。このとき、判定部105は、上述の指示信号を支援機構107に出力する。
【0082】
なお、判定部105は、記憶部104に格納されている情報を参照することなく、筋電計測部101および体幹角度計測部102から、ユーザの前脛骨筋の筋電値と、ユーザの体幹前傾角度とを直接取得してもよい。このとき、判定部105は、筋電計測部101および体幹角度計測部102から、筋電値および体幹前傾角度が計測された時刻を取得してもよい。または、判定部105は、第1の時間間隔および第2の時間間隔を内部のメモリに記憶していてもよい。この場合、判定部105は、第1の時間間隔および第2の時間間隔を用いて、ユーザの前脛骨筋の筋電値と、ユーザの上半身の体幹前傾角度とを取得するための時刻を算出する。そして、判定部105は、タイマー103からのクロック信号に基づいて、その算出された時刻に筋電値および体幹前傾角度を取得し、取得された最新の筋電値および体幹前傾角度に基づいて、上述の支援開始が現時点において可能か否かを判定してもよい。
【0083】
[起立動作支援装置100の処理]
図11Aに、起立動作支援装置100の処理のフローチャートを示す。
【0084】
(ステップS110)
筋電計測部101は、ユーザの前脛骨筋の筋電値を計測する。なお、この計測される筋電値は、ユーザの両脚の前脛骨筋の筋電値から得られる値(例えば、平均値、最小値または最大値など)である。
【0085】
(ステップS120)
体幹角度計測部102は、ユーザの体幹前傾角度を計測する。
【0086】
(ステップS130)
判定部105は、ステップS110で計測された前脛骨筋の筋電値と、ステップS120で計測された体幹前傾角度とに基づいて、起立動作の支援開始が可能か否かを判定する。判定部105によって起立動作の支援開始が可能と判定された場合、起立動作支援装置100は、ステップS140の処理に進む。一方、判定部105によって起立動作の支援開始が不可能と判定された場合、起立動作支援装置100は、ステップS110およびS120の処理に戻る。
【0087】
(ステップS140)
支援機構107は、支援要求部106から起立動作の支援開始の要求があるか否かを確認する。支援開始の要求がある場合、起立動作支援装置100はステップS150の処理へ進む。支援開始の要求が無い場合、起立動作支援装置100はステップS110およびS120の処理に戻る。
【0088】
(ステップS150)
支援機構107は、ユーザの起立動作の支援を開始する。
【0089】
[判定部105の処理の詳細]
図11Bに、
図11AのステップS130のより詳細な処理のフローチャートを示す。
【0090】
(ステップS131)
判定部105は、記憶部104から前脛骨筋の筋電値を取得する。
【0091】
(ステップS132)
判定部105は、ステップS131で取得された前脛骨筋の筋電値が第1の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、前脛骨筋の筋電値が第1の閾値以上であることは、前脛骨筋が活動していることを示す。
【0092】
前脛骨筋の筋電値が第1の閾値以上であると判定される場合には、判定部105は、ステップS133の処理に進む。一方、前脛骨筋の筋電値が第1の閾値よりも小さいと判定される場合には、判定部105は、ステップS131の処理に戻る。ここで、ステップS131の処理に戻った後は、判定部105は、新たな前脛骨筋の筋電値を取得する。
【0093】
なお、判定部105は、前脛骨筋の筋電値ではなく、前脛骨筋の筋電値の変化量を用いて、前脛骨筋が活動しているか否かを判定しても良い。例えば、判定部105は、前脛骨筋の筋電値の変化量が閾値以上であることを検知し、そのときに用いた筋電値が計測された時刻をtbとして、記憶部104に記憶してもよい。ここでは、前脛骨筋の筋電値の変化量(Ib―Ia)が閾値以上のとき、筋電値Ibを計測した時刻をtbとする。なお、時刻taが時刻tbよりも早い(ta<tb)場合、時刻taに計測された筋電値をIaとし、時刻tbに計測された筋電値をIbとする。なお、変化量が閾値以上の場合は、Ib>Iaの関係が成り立つ。
【0094】
(ステップS133)
判定部105は、記憶部104から体幹前傾角度を取得する。
【0095】
(ステップS134)
判定部105は、ステップS133で取得した体幹前傾角度が第3の閾値以上であるか否かを判定する。体幹前傾角度が第3の閾値以上であると判定される場合には、起立動作支援装置100は、ステップS140の処理に進む。体幹前傾角度が第3の閾値よりも小さいと判定される場合には、判定部105は、ステップS131の処理に戻る。ここで、判定部105は、ステップS131の処理に戻り、再びステップS133の処理に到達したときは、新たに筋電値および体幹前傾角度を取得する。なお、判定部105は、体幹前傾角度ではなく、体幹前傾角度の変化量を用いて、その変化量が閾値以上か否かを判定してもよい。
【0096】
[効果]
このように本実施の形態では、ユーザの下腿の筋電値および体幹前傾角度に基づいて、そのユーザの起立動作の支援開始が可能か否かが判定されるため、ユーザの下腿に強い剛性があり、ユーザが上半身を前に傾けているときに、起立動作の支援を開始することができる。したがって、ユーザの転倒または起立動作の失敗などの発生を抑えて、ユーザの起立動作を適切に支援することができ、ユーザを安定した状態で起立させることができる。
【0097】
また、本実施の形態では、計測された筋電値が第1の閾値以上である第1の条件と、計測された体幹前傾角度が第3の閾値以上である第3の条件とが共に満たされている場合に、ユーザの起立動作の支援開始が可能でと判定される。したがって、ユーザの下腿に強い剛性があり、ユーザが上半身を前に傾けているタイミングに、起立動作の支援をより適切に開始することができ、ユーザをより安定した状態で起立させることができる。
【0098】
(実施の形態2)
上記実施の形態1に係る起立動作支援装置では、起立動作の支援開始が可能か否かを判定するために、ユーザの下肢の筋電値と体幹前傾角度とを計測する。一方、本実施の形態に係る起立動作支援装置は、体幹前傾角度の代わりに、ユーザの膝関節角度を計測する。なお、膝関節角度は、膝関節の角度ともいう。
【0099】
[概要]
図12Aに、本実施の形態に係る起立動作支援装置の概略的な機能ブロック図を示す。
図1に示すように、起立動作支援装置10は、第1のセンサ11と、第2のセンサ12と、プロセッサ15と、支援機構17とを備える。
【0100】
第1のセンサ11は、ユーザの下腿の筋電値を計測する。第2のセンサ12は、そのユーザの膝関節角度を計測する。プロセッサ15は、計測された筋電値および膝関節角度に基づいて、そのユーザが座っている状態から起立する動作である起立動作の支援開始が可能か否かを判定し、可能と判定した場合に、指示信号を出力する。支援機構17は、プロセッサ15から指示信号が出力された場合に、ユーザの起立動作の支援を開始する。なお、本実施の形態に係る起立動作支援装置10は、支援機構17を備えるが、支援機構17を備えていなくてもよい。
【0101】
図12Bに、本実施の形態に係る起立動作支援方法の概略的なフローチャートを示す。この起立動作支援方法では、まず、第1のセンサ11がユーザの下腿の筋電値を計測する(ステップS11)。次に、第2のセンサ12がそのユーザの膝関節角度を計測する(ステップS12)。次に、プロセッサ15が、計測された筋電値および膝関節角度に基づいて、そのユーザが座っている状態から起立する動作である起立動作の支援開始が可能か否かを判定する(ステップS13)。ここで、プロセッサ15が可能と判定した場合に(ステップS13のYES)、支援機構17は、そのユーザの起立動作の支援を開始する(ステップS14)。
【0102】
これにより、ユーザの下腿の筋電値および膝関節角度に基づいて、そのユーザの起立動作の支援開始が可能か否かが判定されるため、ユーザの下腿に強い剛性があり、ユーザが膝を適切に曲げているときに、起立動作の支援を開始することができる。したがって、起立動作の失敗などの発生を抑えて、ユーザの起立動作を適切に支援することができ、ユーザを安定した状態で起立させることができる。
【0103】
例えば、上記実施の形態1と同様、第1のセンサ11aは、下腿の筋電値として前脛骨筋の筋電値を計測する。そして、支援機構17は、ユーザの膝の伸展を支援することによってその起立動作を支援する。
【0104】
具体的には、プロセッサ15は、計測された筋電値が第1の閾値以上である第1の条件と、計測された膝関節角度が第2の閾値以下である第2の条件とが共に満たされている場合に、ユーザの起立動作の支援開始が可能であると判定する。ここで、例えば、第2の閾値は、60°以上100°以下である。また、第2のセンサ12によって計測されるユーザの膝関節角度は、ユーザの左脚の膝関節角度と右脚の膝関節角度のうちの小さい方の角度である。
【0105】
(変形例1)
ここで、起立動作支援装置10は、さらに、実施の形態1と同様に、ユーザの体幹前傾角度を計測する第3のセンサ12aを備えてもよい。この場合、プロセッサ15は、計測された筋電値、膝関節角度および体幹前傾角度に基づいて、起立動作の支援開始が可能か否かを判定する。
【0106】
本変形例では、上記実施の形態1と異なり、前脛骨筋が活動しているか否かの判定に用いられる筋電値の第1の閾値を、ユーザの膝関節の角度に応じて変更する。
【0107】
[装置構成]
図13に、本変形例に係る起立動作支援装置の機能ブロック図の一例を示す。本変形例に係る起立動作支援装置100Aは、
図2に示す起立動作支援装置100の各構成要素を備えるとともに、さらに、膝関節角度を計測する膝角度計測部108を備える。
【0108】
[膝角度計測部108]
膝角度計測部108は、ユーザの膝関節角度を計測する第2のセンサであり、例えば、エンコーダから構成されている。
【0109】
図14に、膝角度計測部108の配置および膝関節角度の一例を示す。
【0110】
例えばエンコーダから構成される膝角度計測部108は、
図14に示すように、モータを有する動力部1063に設置され、動力部1063のモータの回転角度を計測する。そして、膝角度計測部108は、上部骨格1061と下部骨格1062との成す角度である膝関節角度θを、その回転角度から算出する。これにより、膝関節角度θが計測される。
【0111】
図15Aに、起立動作の支援開始時にユーザがバランスを崩してしまう例を示し、
図15Bに、起立動作の失敗の例を示す。
【0112】
例えば、
図15Aに示すように、膝関節角度が大きい状態で起立動作の支援が開始された場合には、ユーザはバランスを崩して転倒することがある。また、
図15Bに示すように、膝関節角度が大きい状態で起立動作の支援が開始された場合には、ユーザは起立できずに着座状態のまま膝を伸ばしてしまうことがある。しかし、本変形例に係る起立動作支援装置100Aでは、膝角度計測部108によって計測される膝関節角度を用いて、起立動作の支援開始が可能か否かを判定する。これにより、上述の転倒などの危険を減らすことができる。
【0113】
ここで、膝関節角度と筋電値との関係を導くために行われた実験について説明する。
【0114】
図16は、実験の状況を示す。この実験では、この
図16に示すように、下肢に配置した筋電位センサとモーションセンサを用いて起立動作直前の膝関節角度を変化させた際の前脛骨筋の筋活動量を計測した。なお、筋活動量は、上述の筋電値に相当する。
【0115】
図17は、起立動作直前の膝関節角度が65度と95度であったときの起立動作における筋活動量の計測結果の一例を示す。
【0116】
図17の(a)および(b)に示すように、起立動作直前の膝関節角度が65度でユーザが立ち上がる場合、その膝関節角度が95度でユーザが立ち上がる場合に比べて、起立動作時の筋活動量は小さい。より具体的には、膝関節角度が65度の場合の筋活動量の最大値が約0.06Vであるのに対して、膝関節角度が95度の場合では、筋活動量の最大値は約0.3Vである。
【0117】
図18に、複数の膝関節角度のそれぞれで起立動作が行われるときの前脛骨筋の筋活動量の最大値を示す。
図18に示すように、膝関節角度が大きくなるほど、起立動作に必要な筋活動量の最大値が大きくなっている。
【0118】
このことは、筋電値の第1の閾値を用いれば、ある膝関節角度では正しく起立動作を判定することができても、他の膝関節角度では正しく判定することができない場合があることを示している。より具体的には、
図18に示すような膝関節角度と筋活動量との関係がある状況において、例えば、第1の閾値を0.15Vに設定する。このような場合に、膝関節角度が80度より小さい状態で起立動作が行われるときには、筋電値が0.15V以上にならないため、起立動作の支援開始が可能と判定されない。一方、第1の閾値を0.04Vに設定する。このような場合に、ユーザが膝関節角度を大きくしていると、起立するつもりがなくても、または、起立可能な状態になっていなくても、起立動作の支援開始が可能と判定されてしまうことがある。その結果、膝関節角度によって、ユーザが転倒することがあり、危険な場合がある。そこで、本変形例では、膝関節角度に応じてその第1の閾値を変更する。
【0119】
なお、膝角度計測部108によって計測される膝関節角度は、エンコーダから直接得られる計測値を用いて算出される角度であってもよく、その計測値に応じた値を用いて算出される角度であってもよい。その計測値に応じた値は、直接得られる計測値に対して増幅、整流またはフィルタ処理などの処理を行うことによって得られる値である。
【0120】
[判定部105]
本変形例に係る判定部105は、膝角度計測部108によって計測された膝関節角度に応じて第1の閾値を変更する。すなわち、判定部105は、計測された膝関節角度が小さいほど第1の閾値が小さくなるように、その第1の閾値を設定する。そして、判定部105は、計測された筋電値が第1の閾値以上である第1の条件と、計測された体幹前傾角度が第3の閾値以上である第3の条件とが共に満たされている場合に、ユーザの起立動作の支援開始が可能であると判定する。
【0121】
図19に、判定部105による第1の閾値の変更の例を示す。
【0122】
例えば
図19に示すように、判定部105は、計測された膝関節角度が第2の閾値θ2(例えば90deg)より大きければ、第1の閾値をtha=300μVに設定し、計測された膝関節角度が第2の閾値θ2以下であれば、第1の閾値をthb=160μVに設定する。このように、第1の閾値は、膝関節角度に応じてthaとthbとに切り替えられる。なお、判定部105は、第2の閾値θ2を予め記憶していてもよく、外部の記録媒体から第2の閾値θ2を読み出してもよい。
【0123】
[起立動作支援装置100Aの処理]
図20に、起立動作支援装置100Aの処理のフローチャートを示す。
【0124】
起立動作支援装置100Aの処理は、
図11Aに示す起立動作支援装置100の処理と同様に、ステップS110~S150の処理を含むとともに、さらに、ステップS160の処理を含む。
【0125】
(ステップS160)
膝角度計測部108は、ユーザの膝関節角度を計測する。なお、この計測される膝関節角度は、筋電値と同様、ユーザの両脚の膝関節角度から得られる値(例えば、平均値、最小値または最大値など)である。このように計測されたユーザの膝関節角度は、ステップS130の処理、より具体的には、
図11Bに示すステップS132の処理に用いられる。つまり、本変形例に係る起立動作支援装置100Aの処理は、
図11Bに示すステップS131~S134の処理を含む。しかし、本変形例に係る起立動作支援装置100Aの処理では、上記実施の形態1と比較して、判定部105における前脛骨筋が活動しているか否かを判定する処理(ステップS132)の具体的な内容が異なる。
【0126】
図21に、本変形例に係るステップS132の詳細な処理の一例を示す。
【0127】
(ステップS132a)
判定部105は、膝角度計測部108によって計測された膝関節角度を取得する。
【0128】
(ステップS132b)
判定部105は、ステップS132aで取得した膝関節角度が第2の閾値θ2以下であるか否かを判定する。ここで、ステップS132aで取得した膝関節角度が第2の閾値θ2以下であると判定された場合、判定部105はステップS132cの処理に進む。一方、第2の閾値θ2よりも大きいと判定された場合、判定部105はステップS132dの処理に進む。
【0129】
(ステップS132c)
判定部105は、ステップS131で取得した前脛骨筋の筋電値が、第1の閾値として設定された閾値tha以上であるか否かを判定する。ここで、筋電値が閾値tha以上であると判定された場合、判定部105は、前脛骨筋が活動していると判定し、
図11Bに示すステップS133以降の処理を行う。一方、筋電値が閾値tha以上でないと判定された場合、判定部105は、前脛骨筋が活動していないと判定し、
図11Bに示すステップS131以降の処理を行う。
【0130】
(ステップS132d)
判定部105は、ステップS131で取得した前脛骨筋の筋電値が、第1の閾値として設定された閾値thb(tha<thb)以上であるか否かを判定する。ここで、筋電値が閾値thb以上であると判定された場合、判定部105は、前脛骨筋が活動していると判定し、
図11Bに示すステップS133以降の処理を行う。一方、筋電値が閾値thb以上でないと判定された場合、判定部105は、前脛骨筋が活動していないと判定し、
図11Bに示すステップS131以降の処理を行う。
【0131】
ここで、
図21に示す処理から、ステップS132dの処理を省いてもよい。
【0132】
図22に、本変形例に係るステップS132の詳細な処理の他の例を示す。
【0133】
(ステップS132a)
判定部105は、膝角度計測部108によって計測された膝関節角度を取得する。
【0134】
(ステップS132b)
判定部105は、ステップS132aで取得した膝関節角度が第2の閾値θ2以下であるか否かを判定する。ここで、ステップS132aで取得した膝関節角度が第2の閾値θ2以下であると判定された場合、判定部105はステップS132cの処理に進む。一方、第2の閾値θ2よりも大きいと判定された場合、判定部105は、前脛骨筋が活動していないと判定し、
図11Bに示すステップS131以降の処理を行う。
【0135】
(ステップS132c)
判定部105は、ステップS131で取得した前脛骨筋の筋電値が、第1の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、筋電値が第1の閾値以上であると判定された場合、判定部105は、前脛骨筋が活動していると判定し、
図11Bに示すステップS133以降の処理を行う。一方、筋電値が第1の閾値以上でないと判定された場合、判定部105は、前脛骨筋が活動していないと判定し、
図11Bに示すステップS131以降の処理を行う。
【0136】
このように、ステップS132bにおいて、膝関節角度が第2の閾値θ2以下でない場合、判定部105は、筋電値の値とは無関係にステップS131の処理に進む。すなわち、本変形例に係る判定部105は、計測された筋電値が第1の閾値以上である第1の条件と、計測された膝関節角度が第2の閾値以下である第2の条件と、計測された体幹前傾角度が第3の閾値以上である第3の条件とが共に満たされている場合に、ユーザの起立動作の支援開始が可能であると判定する。
【0137】
また、判定部105は、膝関節角度が大きくなるほど第1の閾値が連続的に大きくなるように、その第1の閾値を設定してもよい。例えば、判定部105は、第1の閾値th1をth1=α×θによって設定してもよい。ここで、αは正の定数であり、θは膝関節角度である。例えば、第1の閾値の初期値が200μV、第2の閾値θ2が90degである場合、αの値は200/90=2.22に決定される。
【0138】
ここで、ユーザは起立しようとするときには、下腿の筋電値および体幹前傾角度が変化する。また、
図21に示すフローチャートの処理が行われる場合、第1の閾値が大きいと、つまり、ユーザの膝関節角度が大きいと、ユーザは容易に起立することができない。このような場合には、ユーザは、繰り返し起立を試みる。その結果、下腿の筋電値および体幹前傾角度が周期的に変化する。
【0139】
そこで、判定部105は、
図20のステップS130において、計測された筋電値および体幹前傾角度がそれぞれ周期的に変化している場合に、ユーザに膝を曲げることを促すための報知信号を出力する。
【0140】
図23は、
図20のステップS130のより詳細な処理のフローチャートを示す。
【0141】
(ステップS201)
判定部105は、記憶部104から前脛骨筋の筋電値を取得する。
【0142】
(ステップS202)
判定部105は、さらに、記憶部104から体幹前傾角度を取得する。
【0143】
(ステップS203)
判定部105は、ステップS201およびS201で取得された筋電値および体幹前傾角度が周期的に変動しているか否かを判定する。
【0144】
(ステップS204)
ここで、判定部105は、筋電値および体幹前傾角度が周期的に変動していると判定すると(ステップS203YES)、ユーザに膝を曲げることを促すための報知信号を出力する。例えば、この報知信号を受けたスピーカは、ユーザに膝を曲げるように促す音声を出力する。あるいは、この報知信号を受けたディスプレイは、ユーザに膝を曲げるように促すメッセージを表示する。その結果、ユーザは膝を曲げる。つまり、ユーザの膝関節角度が小さくなる。
【0145】
(ステップS132)
次に、判定部105は、
図21に示すフローチャートにしたがって、前脛骨筋が活動しているか否かを判定する。ステップS204の報知が行われた場合には、膝関節角度は小さくなり、第2の閾値以下になっている可能性が高い。その結果、ステップS132cにおいて、判定部105は、筋電値が第1の閾値tha(tha<thb)以上であるか否かを判定する。つまり、判定部105は、筋電値を、小さい第1の閾値thaと比較する。一方、膝関節角度が第2の閾値以下でなければ、ステップS132dにおいて、判定部105は、筋電値が第1の閾値thb以上であるか否かを判定する。つまり、判定部105は、筋電値を、大きい第1の閾値thbと比較する。そして、ステップS132cおよび132dにおいて、判定部105によって、筋電値が第1の閾値以上であると判定されると(すなわちステップS132のYES)、
図20に示すステップS140の処理が行われる。つまり、起立動作の支援が開始される。一方、ステップS132cおよび132dにおいて、判定部105によって、筋電値が第1の閾値未満であると判定されると(すなわちステップS132のNO)、判定部105は、
図23に示すステップS201からの処理を繰り返し実行する。
【0146】
このように、下腿の筋電値および体幹前傾角度がそれぞれ周期的に変化している場合には、ユーザは、起立を試みているが、膝関節角度が大きいために、起立することができず、その行為を繰り返している状況にある。そこで、このような状況には、上述のように、ユーザに膝を曲げることを促すための報知信号が出力される。この報知信号によって、膝を曲げることを促す音声または文字がユーザに提示される。その提示によって、ユーザは膝を曲げる。膝が曲がると、第1の閾値は小さくなり、第1の条件が満たされ易くなる。その結果、起立動作の支援開始が可能であると判定されて、ユーザは支援機構107による起立動作の支援を受けることができ、容易に起立することができる。
【0147】
[効果]
このように、本変形例では、膝関節角度が大きいために正しく起立動作の支援が行えない状態では、前脛骨筋の活動を判定する第1の閾値が大きくなるため、活動していると判定されにくくなる。つまり、前脛骨筋の筋電値が同じでも、膝を曲げているときよりも伸ばしているときに、起立動作の支援開始が可能と判断することを少なくすることができる。その結果、
図15Aおよび
図15Bに示すユーザの転倒および起立動作の失敗を抑えることができる。
【0148】
言い換えれば、本変形例では、計測された膝関節角度が小さいほど第1の閾値が小さくなるように、その第1の閾値が設定され、膝関節角度に応じて設定された第1の閾値を用いてユーザの起立動作の支援開始が可能か否かが判定される。これにより、膝関節角度が大きい場合には、ユーザの下腿により強い剛性がなければ、ユーザの起立動作の支援が開始されず、膝関節角度が小さい場合には、ユーザの下腿の剛性が弱くても、ユーザの起立動作の支援が開始される。したがって、
図15Aに示す例のような危険を抑えることができる。すなわち、ユーザが脚を前に伸ばして膝関節角度を大きくしているときに、ユーザの下腿の剛性が十分に強くないにもかかわらず起立動作の支援が開始されてしまうことによって、ユーザがバランスを崩して転倒してしまうことを抑えることができる。また、
図15Bに示す例のような起立動作の失敗を抑えることができる。すなわち、ユーザが脚を前に伸ばして膝関節角度を大きくしているときに、ユーザの下腿の剛性が十分に強くないにもかかわらず起立動作の支援が開始されてしまうことによって、ユーザが起立できずに着座した状態で膝を伸ばしてしまうことを抑えることができる。
【0149】
または、本変形例では、計測された膝関節角度が第2の閾値以下である第2の条件と、上述の第1の条件および第3の条件とが共に満たされている場合に、ユーザの起立動作の支援開始が可能であると判定される。これにより、膝関節角度が大きい場合には、ユーザの起立動作の支援が開始されず、膝関節角度が小さい場合に、ユーザの起立動作の支援が開始される。したがって、
図15Aに示す例のような危険を抑えることができ、
図15Bに示す例のような起立動作の失敗を抑えることができる。
【0150】
(変形例2)
本変形例では、上記実施の形態1および変形例1と異なり、起立動作支援時の体幹大腿角度と膝関節角度とに基づいて、前脛骨筋が活動しているか否かの判定に用いる筋電値の第1の閾値th1を変更する。なお、体幹大腿角度は、大腿と体幹との間の角度である。
【0151】
[装置構成]
図24に、本変形例に係る起立動作支援装置の機能ブロック図の一例を示す。本変形例に係る起立動作支援装置100Bは、
図13に示す起立動作支援装置100Aの各構成要素を備えるとともに、さらに、大腿角度を計測する大腿角度計測部110を備える。
【0152】
[大腿角度計測部110]
大腿角度計測部110は、体幹角度計測部102と同様に例えば9軸センサなどからなり、ユーザの大腿角度を計測する。例えば、大腿角度計測部110は、2つの9軸センサを有し、一方の9軸センサがユーザの右脚の大腿に配置され、他方の9軸センサがユーザの左脚の大腿に配置される。そして、大腿角度計測部110は、それらの9軸センサによって得られる、y軸を回転中心とする回転角度の平均値、最小値または最大値を、ユーザの大腿角度として計測する。大腿角度は、例えば、鉛直方向とユーザの大腿との間の角度であって、ユーザが起立している状態では約180degであり、ユーザが着座している状態では約90degである。
【0153】
なお、大腿角度計測部110によって計測される大腿角度は、9軸センサから直接得られる計測値を用いて算出される角度であってもよく、その計測値に応じた値を用いて算出される角度であってもよい。その計測値に応じた値は、直接得られる計測値に対して増幅、整流またはフィルタ処理などの処理を行うことによって得られる値である。
【0154】
[計測処理部109]
本変形例に係る計測処理部109は、上記実施の形態1と同様の処理を行うとともに、ユーザの体幹と大腿との間の角度である体幹大腿角度を算出する。つまり、計測処理部109は、大腿角度計測部110によって計測されるユーザの大腿角度から、体幹角度計測部102によって計測されるユーザの体幹前傾角度を減算することによって、上述の体幹大腿角度を算出する。これにより、体幹大腿角度が計測される。そして、計測処理部109は、その計測された体幹大腿角度を判定部105に通知する。
【0155】
つまり、本変形例に係る起立動作支援装置100Bは、ユーザの体幹と大腿との間の角度である体幹大腿角度を計測する第4のセンサを備える。なお、この第4のセンサは、体幹角度計測部102、大腿角度計測部110、および計測処理部109の一部の機能から構成される。
【0156】
[判定部105]
本変形例に係る判定部105は、上記実施の形態1と同様の処理を行うとともに、起立動作時に計測された膝関節角度および体幹大腿角度のそれぞれの変化に基づいて、第1の閾値th1を変更する。具体的には、判定部105は、起立動作時に計測された体幹大腿角度の変化率が膝関節角度の変化率よりも大きい場合に、第1の閾値th1をより大きい値に変更する。
【0157】
つまり、判定部105は、支援機構107による起立動作の支援が行われているときには、膝角度計測部108によって計測されるユーザの膝関節角度の変化率を算出するとともに、計測処理部109から通知される体幹大腿角度の変化率を算出する。そして、判定部105は、起立動作の支援が行われているとき、すなわちユーザが起立動作をしているときの、膝関節角度の最大の変化率と、体幹大腿角度の最大の変化率とを比較する。その結果、判定部105は、体幹大腿角度の最大の変化率が膝関節角度の最大の変化率よりも大きい場合に、第1の閾値th1をより大きい値に変更する。変更された第1の閾値th1は、ユーザの次の起立動作の支援開始の判定に用いられる。
【0158】
図25に、起立動作の支援が行われているときにユーザがバランスを崩してしまう例を示す。
【0159】
例えば、起立動作の支援開始のタイミングが早過ぎる場合は、
図25に示すように、ユーザは、そのタイミングではまだ下腿に強い剛性を持たせていないため、支援開始直後にバランスを崩してしまう。このとき、体幹大腿角度φは、膝関節角度θよりも大きく変動する傾向がある。
【0160】
図26に、起立動作の支援が行われているときの膝関節角度θおよび体幹大腿角度φの変化の一例を示す。
【0161】
図26に示されるように、起立動作の支援開始のタイミングが適切な場合には、ユーザは安定して起立動作を行うことができる。この場合、体幹大腿角度φと膝関節角度θは共に緩やかに増加する。しかし、起立動作の支援開始のタイミングが早過ぎる場合には、ユーザは不安定な起立動作を行い、バランスを崩してしまう。この際、ユーザの体幹大腿角度φは安定した通常の起立動作時に比べて大きく変動する。つまり、体幹大腿角度φは、膝関節角度θよりも急に増加する。
【0162】
しかし、本変形例に係る起立動作支援装置100Bでは、体幹大腿角度φの変化率が膝関節角度θの変化率よりも大きい場合には、第1の閾値th1がより大きな値に変更される。したがって、次に起立動作の支援が開始されるときには、その支援開始のタイミングを遅らせることができ、適切なタイミングで起立動作の支援を開始することができる。
【0163】
[起立動作支援装置100Bの処理]
図27に、本変形例に係る起立動作支援装置100Bの処理のフローチャートを示す。
【0164】
起立動作支援装置100Bの処理は、
図11Aに示す起立動作支援装置100の処理と同様に、ステップS110~S150の処理を含むとともに、さらに、ステップS170およびS180の処理を含む。
【0165】
(ステップS170)
起立動作支援装置100Bは、大腿角度計測部110、体幹角度計測部102および膝角度計測部108によって、起立動作の支援が行われているときの大腿角度、体幹前傾角度および膝関節角度を計測する。なお、これらの角度は、例えば上述の第2の時間間隔が経過するごとに計測される。また、このときには、計測処理部109は、同一のタイミングで計測された大腿角度および体幹前傾角度の組ごとに、その組に対応する体幹大腿角度を算出する。これにより、例えば上述の第2の時間間隔の経過ごとに、体幹大腿角度および膝関節角度が計測される。
【0166】
(ステップS180)
判定部105は、ステップS170で計測された起立動作時の体幹大腿角度および膝関節角度のそれぞれの変化率に基づいて、前脛骨筋が活動しているか否かの判定に用いる第1の閾値th1の変更処理を行う。
【0167】
[判定部105の処理の詳細]
図28に、
図27のステップS180のより詳細な処理のフローチャートを示す。
【0168】
(ステップS181)
判定部105は、起立動作の支援が行われているときの体幹大腿角度を計測処理部109から取得し、起立動作の支援が行われているときの膝関節角度を膝角度計測部108から取得する。なお、起立動作の支援が行われているときは、例えば、起立動作の支援が開始されてから予め定められた時間が経過するまでの期間である。つまり、判定部105は、この期間中、上述の第2の時間間隔の経過ごとに、その経過時の体幹大腿角度および膝関節角度を取得する。
【0169】
(ステップS182)
判定部105は、起立動作の支援が行われているときの体幹大腿角度の方が膝関節角度に比べて変動が大きいか否かを判定する。体幹大腿角度の変動が大きいと判定した場合は、判定部105は、ステップS183に進み、体幹大腿角度の変動が大きくないと判定した場合は、判定部105は、第1の閾値の変更処理を終了する。
【0170】
具体的には、判定部105は、起立動作の支援が行われているときの体幹大腿角度の最大の変化率が、そのときの膝関節角度の最大の変化率よりも大きいか否かを判定する。または、判定部105は、所定時間幅における膝関節角度の変化に対して体幹大腿角度が所定値以上大きく変化している場合に、体幹大腿角度の変動が大きいと判定してもよい。
【0171】
また、判定部105は、ステップS182の判定では、ユーザの体幹大腿角度のみからその判定を行ってもよい。具体的には、判定部105は、予め決めておいた閾値より、所定時間幅における体幹大腿角度の変化が大きい場合に、体幹大腿角度の変動が大きいと判定する。また、ユーザが起立動作時にバランスを崩した場合は、ユーザの体が前後に揺れる。したがって、判定部105は、体幹前傾角度の変化が単調増加ではなく、極値を持つ場合に、体幹大腿角度の変動が大きいと判定してもよい。
【0172】
このように、起立動作の支援を行ったときのユーザの体幹大腿角度および膝関節角度の変化をみることで、ユーザへ正しく起立動作の支援ができたかどうかを判断できる。
【0173】
(ステップS183)
体幹大腿角度の変動が大きいと判定した場合、すなわち、ユーザへ正しい起立動作の支援ができていないと判定した場合、判定部105は、筋電値の第1の閾値th1を所定値だけ大きくする。
【0174】
[効果]
このように、本変形例では、起立動作の支援時の体幹大腿角度の変動が大きい場合に、次回の起立動作の支援開始の判定に用いる第1の閾値th1が大きく変更される。したがって、次回の起立動作では、より大きな剛性が下腿に生じなければその起立動作の支援が開始されない。したがって、より適切なタイミングで起立動作の支援を開始することができ、起立動作の支援時にユーザがバランスを崩してしまうという危険を減らすことができる。
【0175】
すなわち、起立動作時に計測された体幹大腿角度の変化率が膝関節角度の変化率よりも大きい場合には、ユーザは起立動作時に不安定な状態になっていると想定される。そこで、本変形例では、起立動作時に計測された体幹大腿角度の変化率が膝関節角度の変化率よりも大きい場合に、第1の閾値がより大きい値に変更される。これにより、次にユーザが起立動作を行うときには、その変更された第1の閾値を用いて判定されたタイミングで起立動作の支援が開始される。したがって、起立動作の支援が開始されるタイミングを遅らせることができ、その結果、ユーザをより安定した状態で起立させることができる。
【0176】
(その他の実施の形態)
以上、一つまたは複数の態様に係る起立動作支援装置について、各実施の形態および各変形例に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態および各変形例に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記各実施の形態または各変形例に施したものや、各実施の形態および各変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれてもよい。
【0177】
例えば、上記各実施の形態および各変形例では、
図11A、
図20および
図27に示すように、起立動作の支援開始が可能と判定された後に、起立動作の支援開始の要求があるか否かを判定するが、それらの判定の順序は逆であってもよい。
【0178】
また、上記各実施の形態および各変形例では、第1の閾値、第2の閾値および第3の閾値の具体的な数値を示しているが、これらの数値は一例であって、上記各閾値はこれらの数値に限定されることなく、任意の数値であってもよい。
【0179】
また、上記各実施の形態および各変形例では、前脛骨筋の筋電値を計測したが、前脛骨筋の代わりに内側広筋などの他の筋肉の筋電値を計測してもよい。また、両脚の筋電値を計測することなく、右脚または左脚の筋電値のみを計測してもよい。同様に、両脚の大腿角度を計測することなく、右脚または左脚の大腿角度のみを計測してもよい。例えば、ユーザの利き脚の筋電値または大腿角度を計測してもよい。
【0180】
また、変形例2では、体幹大腿角度の変動が大きいか否かを判定するために、起立動作時における体幹大腿角度の最大の変化率が、起立動作時における膝関節角度の最大の変化率よりも大きいか否かを判定した。しかし、このような判定方法に限らず、他の判定方法によって、体幹大腿角度の変動が大きいか否かを判定してもよい。例えば、起立動作が行われている期間の一部における、体幹大腿角度の変化率の平均が、その期間の一部における膝関節角度の変化率の平均よりも大きいか否かを判定してもよい。その期間の一部は、起立動作が行われている期間の最初と最後を除く途中の期間であってもよい。
【0181】
なお、上記各実施の形態および各変形例において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記各実施の形態または各変形例の起立動作支援装置を実現するソフトウェアプログラムは、
図1B、
図11A、
図11B、
図12B、
図20~
図23、
図27および
図28に示すフローチャートに含まれる各ステップをコンピュータに実行させるプログラムである。
【0182】
また、本開示において、ユニット、装置、部材又は部の全部又は一部、又は
図1A、
図2、
図12A、
図13、および
図24に示されるブロック図の機能ブロックの全部又は一部は、半導体装置、半導体集積回路(IC)、又はLSI(large scale integration)を含む一つ又は複数の電子回路によって実行されてもよい。LSI又はICは、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップを組み合わせて構成されてもよい。例えば、記憶素子以外の機能ブロックは、一つのチップに集積されてもよい。ここでは、LSIやICと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(very large scale integration)、若しくはULSI(ultra large scale integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、Field Programmable Gate Array(FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができるreconfigurable logic deviceも同じ目的で使うことができる。
【0183】
さらに、ユニット、装置、部材又は部の全部又は一部の機能又は操作は、ソフトウエア処理によって実行することが可能である。この場合、ソフトウエアは一つ又は複数のROM、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録され、ソフトウエアが処理装置(processor)によって実行されたときに、そのソフトウエアで特定された機能が処理装置(processor)および周辺装置によって実行される。システム又は装置は、ソフトウエアが記録されている一つ又は複数の非一時的記録媒体、処理装置(processor)、及び必要とされるハードウエアデバイス、例えばインターフェース、を備えていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本開示に係る起立動作支援装置は、起立動作の支援を行う例えばアシストスーツまたはロボットなどに適用可能である。
【符号の説明】
【0185】
10,100,100A,100B 起立動作支援装置
11 第1のセンサ
12 第2のセンサ
15 プロセッサ
17,107 支援機構
101 筋電計測部
102 体幹角度計測部
103 タイマー
104 記憶部
105 判定部
106 支援要求部
108 膝角度計測部
109 計測処理部
110 大腿角度計測部