(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ゴム組成物、ゴムローラおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
C08J 9/06 20060101AFI20230113BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230113BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20230113BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20230113BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20230113BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20230113BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C08J9/06 CEQ
C08K3/04
C08K3/34
C08L9/00
C08L23/16
F16C13/00 A
F16C13/00 B
G03G15/00 550
G03G15/00 551
(21)【出願番号】P 2018099002
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2018003558
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】小坂 圭亮
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-259131(JP,A)
【文献】特開昭59-098142(JP,A)
【文献】特開2013-139490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60、67/20
C08L 1/00-101/14
G03G 13/00、15/00、21/16-21/18
F16C 13/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真法を利用した画像形成装置に用いる多孔質体を形成するためのゴム組成物であって、
ジエン系ゴム、およびエチレンプロピレン系ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種、ならびにイオン導電性ゴムを含むゴム、
前記ゴムを架橋させるための架橋成分、
前記ゴムを発泡させるための発泡成分、ならびに
ゼオライト、活性炭、およびケイソウ土からなる群より選ばれた少なくとも1種の微細多孔質粒子(但し、発泡剤の溶液に微細孔を有する微粉末を浸漬し、これを濾過、乾燥し
て前記微細孔内に発泡剤のみを付着させた発泡剤付着の微粉末を含まない)
を含み、前記ゴムの総量100質量部あたりの、前記3種の微細多孔質粒子の合計の配合割合Pは
3質量部以上で、かつ式(1):
P≦Z×35+C×20+D×35 (1)
〔式中、Zはゼオライト、Cは活性炭、Dはケイソウ土の、それぞれ当該3種の微細多孔質粒子の総量を1としたときの質量比を示す。〕
を満足するゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴムは、ジエン系ゴム、およびエチレンプロピレン系ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種、ならびにイオン導電性ゴムのみを含む請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載のゴム組成物からなる、多孔質のローラ本体を含むゴムローラ。
【請求項4】
前記請求項3に記載のゴムローラを含む画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、当該ゴム組成物を成形し、発泡、架橋させて形成された多孔質体からなるローラ本体を含むゴムローラ、および当該ゴムローラを含む画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、レーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置においては、近年の市場の成熟化に伴って、形成画像の高画質化や、画像形成速度の高速化が求められる傾向にある。
画像形成装置の部品の一つである転写ローラ等としては、たとえば、ゴム、架橋成分、発泡成分等を含み、かつ導電性が付与されたゴム組成物を、筒状に成形したのち発泡、架橋させて形成された、多孔質で導電性のローラ本体を含むゴムローラが用いられる(特許文献1)。
【0003】
かかるゴムローラには、上記の要求を満足するため、とくに、ローラ本体の外周面に露出した発泡セルのセル径の平均値、すなわち平均セル径ができるだけ小さい上、セル径のバラツキも小さいことが求められる。
ローラ本体は、上述したように、ゴム組成物を筒状に成形して発泡、架橋させたのち、その外周面を、所定の外径になるように研磨して形成されるのが一般的である。
【0004】
そのため、研磨後の外周面に露出する発泡セルの平均セル径やセル径のバラツキを小さくするためには、ローラ本体の全体で平均セル径を小さくするとともに、セル径のバラツキを小さくしなければならない。
しかし、従来技術では、たとえば、ゴム組成物の粘度、架橋度、発泡成分の種類や配合割合等の兼ね合いにもよるが、現状よりも発泡セルの平均セル径を小さくしたり、セル径のバラツキを小さくしたりすることは困難になりつつあるのが現状である。
【0005】
すなわち、発泡成分としての発泡剤の種類や粒径、配合割合等を調整しても、発泡セルの平均セル径を小さくできる範囲には限界がある。
また、平均セル径を小さくするほど、発泡が不安定化して、個々の発泡セルのセル径にバラツキを生じやすくなる。そして、たとえば、平均セル径よりも大幅にセル径の大きい発泡セル等が含まれやすくなる傾向がある。
【0006】
このようなセル径の大きい発泡セルが、研磨によってローラ本体の外周面に露出すると、当該ローラ本体を備えたゴムローラを、たとえば、転写ローラとして用いた際に、形成画像の画質が低下するといった課題を生じる。
またローラ本体は、画像形成装置内で、その外周面を、感光体やベルト等の部材と直接に接触させて配設されるのが一般的である。
【0007】
さらに転写ローラの場合、ローラ本体の外周面は、画像形成用の用紙とも直接に接触する。
ところがローラ本体中には、たとえば、圧接力が加わったりした際に、当該ローラ本体の外周面に滲出する成分が含まれていることがある。
そして、かかる成分が外周面に滲出すると、当該外周面と直接に接触する感光体等の部材や用紙に移行し、これらの部材や用紙を汚染して、形成画像の画質を低下させる原因となるといった課題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-067722号公報
【文献】特開2006-178128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、発泡セルの平均セル径を現状よりも小さくでき、しかも安定して発泡させて、セル径のバラツキをも小さくできる上、接触する部材や用紙が成分の移行によって汚染されるのを抑制して、画質の良好な画像を形成できる、ローラ本体等の多孔質体のもとになるゴム組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、かかるゴム組成物を発泡、架橋させた多孔質体からなるローラ本体を含むゴムローラと、当該ゴムローラを含む画像形成装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電子写真法を利用した画像形成装置に用いる多孔質体を形成するためのゴム組成物であって、
ジエン系ゴム、およびエチレンプロピレン系ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種、ならびにイオン導電性ゴムを含むゴム、
前記ゴムを架橋させるための架橋成分、
前記ゴムを発泡させるための発泡成分、ならびに
ゼオライト、活性炭、およびケイソウ土からなる群より選ばれた少なくとも1種の微細多孔質粒子(但し、発泡剤の溶液に微細孔を有する微粉末を浸漬し、これを濾過、乾燥し
て前記微細孔内に発泡剤のみを付着させた発泡剤付着の微粉末を含まない)
を含み、前記ゴムの総量100質量部あたりの、前記3種の微細多孔質粒子の合計の配合割合Pは3質量部以上で、かつ式(1):
P≦Z×35+C×20+D×35 (1)
〔式中、Zはゼオライト、Cは活性炭、Dはケイソウ土の、それぞれ当該3種の微細多孔
質粒子の総量を1としたときの質量比を示す。〕
を満足するゴム組成物である。
【0011】
また本発明は、上記ゴム組成物からなる、多孔質のローラ本体を含むゴムローラである。
さらに本発明は、上記ゴムローラを含む画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発泡セルの平均セル径を現状よりも小さくでき、しかも安定して発泡させて、セル径のバラツキをも小さくできる上、接触する部材や用紙が成分の移行によって汚染されるのを抑制して、画質の良好な画像を形成できる、ローラ本体等の多孔質体のもとになるゴム組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、かかるゴム組成物を発泡、架橋させた多孔質体からなるローラ本体を含むゴムローラと、当該ゴムローラを含む画像形成装置とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のゴムローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【
図2】ゴムローラのローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《ゴム組成物》
上述したように、本発明は、電子写真法を利用した画像形成装置に用いる多孔質体を形成するためのゴム組成物であって、
ジエン系ゴム、およびエチレンプロピレン系ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種、ならびにイオン導電性ゴムを含むゴム、
前記ゴムを架橋させるための架橋成分、
前記ゴムを発泡させるための発泡成分、ならびに
ゼオライト、活性炭、およびケイソウ土からなる群より選ばれた少なくとも1種の微細多孔質粒子(但し、発泡剤の溶液に微細孔を有する微粉末を浸漬し、これを濾過、乾燥し
て前記微細孔内に発泡剤のみを付着させた発泡剤付着の微粉末を含まない)
を含み、前記ゴムの総量100質量部あたりの、前記3種の微細多孔質粒子の合計の配合割合Pは3質量部以上で、かつ式(1):
P≦Z×35+C×20+D×35 (1)
〔式中、Zはゼオライト、Cは活性炭、Dはケイソウ土の、それぞれ当該3種の微細多孔
質粒子の総量を1としたときの質量比を示す。〕
を満足することを特徴とするものである。
【0015】
本発明によれば、ゴム組成物の発泡時に発泡成分から発生するガスの一部を、いずれも微細な多孔質構造を有する微細多孔質粒子であるゼオライト、活性炭、もしくはケイソウ土が吸着して、当該ゴム組成物の発泡を緩和するために機能する。
そのため、たとえば、多孔質体としてゴムローラのローラ本体を形成する場合は、当該ローラ本体の全体での平均セル径を小さくするとともに、セル径のバラツキを小さくすることができる。
【0016】
したがって、研磨によってローラ本体の外周面に露出する発泡セルの平均セル径やセル径のバラツキをも小さくすることができる。
また、接触する部材や用紙に移行して汚染のもとになる成分は、たとえば、
・ ゴム等を混練してゴム組成物を調製する際に発生する等してゴム組成物中に含まれていたり、
・ ゴム組成物を多孔質体の形状に成形して架橋させる際に発生したり、
・ その後の多孔質体の使用によって発生したり
する。
【0017】
これに対し、本発明によれば、微細多孔質粒子であるゼオライト、活性炭、もしくはケイソウ土が、上記ゴム組成物の調製以降、継続的に、発生した成分を多孔質構造中に吸着して、当該成分が多孔質体の表面に滲出するのを抑制するためにも機能する。
そのため、たとえば、多孔質体としてゴムローラのローラ本体を形成する場合は、当該ローラ本体の外周面に上記成分が浸出するのを抑制して、画像形成装置内で当該外周面と直接に接触する部材や用紙が成分の移行によって汚染されるのを抑制することもできる。
【0018】
汚染のもとになる成分としては、たとえば、架橋成分等の残滓などが挙げられる。
また、たとえば、架橋反応時に発生する、ポリマーに由来するものなどの比較的低分子量の成分や、ゴムとしてエピクロルヒドリンゴムやクロロプレンゴムを使用する場合は架橋時にこれらのゴムから発生する塩素系ガスなども、汚染のもとになる成分の一つとなる。
【0019】
ハイドロタルサイト類等の受酸剤を配合すると、当該受酸剤が、陰イオン交換能によって、塩素系ガス中の塩素を捕捉する働きをする。
そのため、架橋されたゴムローラ内に、塩素系ガスが遊離状態のままで残留したり、残留した塩素系ガスが、接触する部材や用紙へ移行したりするのを、ある程度は抑制することができる。
【0020】
しかし、それ以外の成分は、受酸剤を配合しても、移行を抑制することはできない。
とくに、ゴムローラを転写ローラとして使用して、感光体と所定の圧接力で圧接させた状態で、たとえば、高温高湿環境下、一定期間に亘って静置すると、上記の成分がローラ本体の外周面に滲出し、感光体等に移行して、形成画像の画像不良を生じやすくなる。
これに対し、本発明によれば、微細多孔質粒子として配合したゼオライト、活性炭、ケイソウ土の機能により、たとえ上述した条件下で一定期間静置しても、汚染のもとになる成分がローラ本体の外周面に滲出して感光体等に移行するのを抑制することができる。
【0021】
したがって、上記ローラ本体を備えたゴムローラを、たとえば、転写ローラとして用いた際には、上述した各機能の相乗効果によって、形成画像の画質を向上することができる。
これらのことは、後述する実施例、比較例の結果からも明らかである。
〈微細多孔質粒子〉
微細多孔質粒子としては、粉体状、粉粒体状、ないしは粒子状等の任意の形状を有する、上述したゼオライト、活性炭、およびケイソウ土からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
【0022】
(ゼオライト)
ゼオライトとしては、上述したように、ゴム組成物の発泡時に発泡成分から発生するガスや、あるいは汚染のもとになる成分を吸着する機能を有する種々のゼオライトを用いることができる。
詳しくは、ゼオライトとしては、たとえば、粘土鉱物の1種である結晶性アルミノケイ酸塩の含水アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等からなり、分子レベルの微細な細孔を含む三次元網目状構造を有する、天然物由来の種々の天然ゼオライトが挙げられる。
【0023】
また、ゼオライトとしては、たとえば、種々の化学物質を出発原料として合成される合成ゼオライト、あるいは石炭灰や製紙スラッジ焼却灰等から再生される人工ゼオライト等を用いることもできる。
ゼオライトの具体例としては、たとえば、方沸石、ホージャサイト、アシュクロフチン、菱沸石、グメリン沸石、レビーナイト、毛沸石、トムソン沸石、ソーダ沸石、モルデン沸石、ギスモンダイト、エジングトナイト、ゴンナルダイト、エピデスミン、濁沸石、束沸石、輝沸石、ヒル沸石、ラウバナイト、パベナイト、ブリューステライト、エピスチルバイト、ウェルサイト、メソ沸石、カイリョク石、ゼオライトP、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトT、ゼオライトA、ゼオライトL等が挙げられる。
【0024】
これらゼオライトの1種または2種以上を用いることができる。
(活性炭)
活性炭としては、種々の製造方法によって製造された、ゴム組成物の発泡時に発泡成分から発生するガスや、あるいは汚染のもとになる成分を吸着する機能を有する各種の活性炭を用いることができる。
【0025】
活性炭の製造方法としては、たとえば、原料を、水蒸気、二酸化炭素、空気、燃焼ガスなどの活性化ガスと高温で接触させて活性化するガス賦活法や、原料に塩化亜鉛溶液を含浸させて、不活性ガス気流中で加熱して炭化、活性化する薬品賦活法等が挙げられる。
このうち、ガス賦活法によって活性炭を製造する原料としては、たとえば、木材、果実殻(ヤシ殻等)、竹、合成樹脂などの炭化物、褐炭、泥炭、瀝青炭、亜炭、石炭チャーなどの石炭類、石油残渣その他の炭化物が挙げられる。
【0026】
また、薬品賦活法によって活性炭を製造する原料としては、たとえば、のこ屑などが挙げられる。
これら活性炭の1種または2種以上を用いることができる。
(ケイソウ土)
ケイソウ土としては、やはりゴム組成物の発泡時に発泡成分から発生するガスや、あるいは汚染のもとになる成分を吸着する機能を有する各種のケイソウ土を用いることができる。
【0027】
かかるケイソウ土としては、たとえば、単細胞性藻類であるケイソウの遺骸を主な成分とする堆積物であるケイソウ土を任意の粒度に粉砕し、必要に応じて精製して得られた各種のケイソウ土を用いることができる。
これらケイソウ土の1種または2種以上を用いることができる。
(配合割合)
ゼオライト、活性炭、およびケイソウ土の3種の微細多孔質粒子の、ゴムの総量100質量部あたりの合計の配合割合Pは、前述したように、式(1):
P≦Z×35+C×20+D×35 (1)
〔式中、Zはゼオライト、Cは活性炭、Dはケイソウ土の、それぞれ当該3種の微細多孔質粒子の総量を1としたときの質量比を示す。〕
を満足している必要がある。
【0028】
たとえば、微細多孔質粒子がゼオライトのみ(2種以上のゼオライトを併用する場合を含む、以下同様。)である場合には、式(1)のZ=1、C=0、D=0であるため、ゼオライトの配合割合Pは、ゴムの総量100質量部あたり35質量部以下に限定される。
また、微細多孔質粒子が活性炭のみである場合は、式(1)のZ=0、C=1、D=0であるため、活性炭の配合割合Pは、ゴムの総量100質量部あたり20質量部以下に限定される。
【0029】
微細多孔質粒子がケイソウ土のみである場合は、式(1)のZ=0、C=0、D=1であるため、ケイソウ土の配合割合Pは、ゴムの総量100質量部あたり35質量部以下に限定される。
さらに、微細多孔質粒子がゼオライト、活性炭、およびケイソウ土を、それぞれ同量ずつ含む場合は、式(1)のZ=1/3、C=1/3、D=1/3となるため、当該3種の微細多孔質粒子の合計の配合割合Pは、ゴムの総量100質量部あたり30質量部以下に限定される。
【0030】
上述したそれぞれの範囲より微細多孔質粒子の合計の配合割合Pが多い場合には、架橋後のローラ本体が硬くなりすぎて、たとえば、転写ローラとしての使用に適した適度の柔軟性が得られない場合がある。
また、架橋前のゴム組成物の、加熱溶融時の粘度が上昇して、当該ゴム組成物の加工性が低下する場合もある。
【0031】
これに対し、微細多孔質粒子の配合割合Pを上記の範囲とすることにより、ローラ本体の良好な柔軟性、あるいはゴム組成物の良好な加工性を維持することができる。
ただし、微細多孔質粒子が少なすぎる場合には、当該微細多孔質粒子を配合することによる、前述した、ゴム組成物の発泡時に発泡成分から発生するガスの一部を吸着して、当該ゴム組成物の発泡を緩和する機能が十分に得られない場合がある。
【0032】
そして、たとえば、ゴムローラのローラ本体の外周面に露出する発泡セルの平均セル径を小さくしたり、セル径のバラツキを小さくしたりできない場合を生じる。
また、前述した汚染のもとになる成分を吸着して、当該成分の移行による汚染と、それによる画質の低下とを抑制する効果が十分に得られない場合もある。
したがって、微細多孔質粒子の配合割合は、上記の範囲でも3質量部以上である必要がある。
【0033】
かかる下限値は、微細多孔質粒子として、ゼオライト、活性炭、またはケイソウ土のうちの1種のみを用いる場合は、その微細多孔質粒子の配合割合の下限値である。
また、2種以上の微細多孔質粒子を併用する場合は、その合計の配合割合の下限値である。
なお、活性炭の配合割合の上限が、他の2種の微細多孔質粒子の場合よりも少ないのは、活性炭が、ゴムの補強剤としても機能して、他の2種より少量の配合でも、架橋後のローラ本体を硬くしてしまう傾向があるためである。
【0034】
また、活性炭が電子導電性を有し、多量に配合すると、架橋後のゴムローラのローラ抵抗値が、たとえば、転写ローラとして適した範囲より低くなりすぎる場合があるためでもある。
なお、前述した特許文献1には、ゴム組成物に配合してもよい充填剤の一例として、ゼオライトが記載されている。
【0035】
しかし、特許文献1に記載の発明では、ゼオライトは、カーボンブラックその他、各種充填剤の1種として単に例示されているに過ぎず、実際にゼオライトを配合して効果を検証した実施例は、特許文献1には含まれていない。
また特許文献1には、ゼオライト等の微細多孔質粒子を配合すると、
・ ゴム組成物の発泡を緩和して、発泡セルの平均セル径を現状よりも小さくしたり、セル径のバラツキを小さくしたり、あるいは
・ 汚染のもとになる成分を吸着して、当該成分の移行によって部材や用紙が汚染されるのを抑制したりして、
画質の良好な画像を形成できるという、本発明に特有の効果が得られることについても、一切記載されていない。
【0036】
また、特許文献2には、発泡剤を含むシリコーンゴムに、さらにゼオライト等の多孔質フィラー(微細多孔質粒子)を配合したゴム組成物を筒状に成形し、発泡、架橋させて定着用ローラを形成することが記載されている。
多孔質フィラーは、形成された定着用ローラ中で、加熱によって膨張した発泡体中のガスを吸着して、当該定着用ローラの、温度上昇に伴う熱膨張を抑制する働きをする。
【0037】
しかし、結晶性アルミノケイ酸塩を主成分とするゼオライト、炭素を主成分とする活性炭、および二酸化ケイ素を主成分とするケイソウ土は、いずれも他のゴムよりも、シリコーンゴムとの親和性が高い。
そのため、微細多孔質粒子とシリコーンゴムとを組み合わせた場合には、当該微細多孔質粒子の細孔の多くに、溶融状態のシリコーンゴムが吸着されてしまい、ガスや汚染のもとになる成分が十分に吸着されない。
【0038】
したがってシリコーンゴムとの組み合わせでは、ガスを吸着して、発泡セルの平均セル径やそのバラツキを小さくしたり、汚染のもとになる成分を吸着して、当該成分の移行によって部材や用紙が汚染されるのを抑制したりする効果は得られない。
このことも、後述する実施例、比較例、従来例の結果から明らかである。
〈ゴム〉
ゴムとしては、前述したように、少なくとも、ジエン系ゴムおよび/またはエチレンプロピレン系ゴムと、イオン導電性ゴムとが併用される。
【0039】
とくに、シリコーンゴム等の他のゴムを含まない(除く)状態で、ジエン系ゴムおよび/またはエチレンプロピレンゴム、ならびにイオン導電性ゴムのみを、ゴムとして併用するのが好ましい。
このうち、ジエン系ゴムおよび/またはエチレンプロピレン系ゴムは、とくにローラ本体に、ゴムとしての良好な特性、すなわち柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくい特性を付与するために機能する。
【0040】
また、イオン導電性ゴムは、ローラ本体に適度のイオン導電性を付与して、ゴムローラのローラ抵抗値を、たとえば、転写ローラとして適した範囲に調整するために機能する。
(ジエン系ゴム)
ジエン系ゴムとしては、たとえば、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。
【0041】
とくに、ジエン系ゴムとしては、NBR、SBR、およびBRの3種のうちの少なくとも1種が好ましい。
・ NBR
NBRとしては、アクリロニトリル含量が24%以下である低ニトリルNBR、25~30%である中ニトリルNBR、31~35%である中高ニトリルNBR、36~42%である高ニトリルNBR、43%以上である極高ニトリルNBRが、いずれも使用可能である。
【0042】
また、NBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明では、感光体等の汚染を防止するために、ブリード物質となりうる伸展油を含まない非油展タイプのNBRを用いるのが好ましい。
これらNBRの1種または2種以上を用いることができる。
・ SBR
SBRとしては、スチレンと1,3-ブタジエンとを、乳化重合法、溶液重合法等の種々の重合法によって共重合させて合成される種々のSBRが、いずれも使用可能である。
【0043】
また、SBRとしては、スチレン含量によって分類される高スチレンタイプ、中スチレンタイプ、および低スチレンタイプのSBRがあるが、このいずれも使用可能である。
さらに、SBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明では、やはり感光体等の汚染を防止するために、ブリード物質となりうる伸展油を含まない非油展タイプのSBRを用いるのが好ましい。
【0044】
これらSBRの1種または2種以上を用いることができる。
・ BR
BRとしては、分子中にポリブタジエン構造を備え、架橋性を有する種々のBRが、いずれも使用可能である。
とくに、低温から高温までの広い温度範囲でゴムとしての良好な特性を発現しうる、シス-1,4結合の含量が95%以上の高シスBRが好ましい。
【0045】
また、BRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明では、やはり感光体等の汚染を防止するために、ブリード物質となりうる伸展油を含まない非油展タイプのBRを用いるのが好ましい。
これらBRの1種または2種以上を用いることができる。
(エチレンプロピレン系ゴム)
エチレンプロピレン系ゴムとしては、エチレンとプロピレンの共重合体であるエチレンプロピレンゴム(EPM)、およびエチレンとプロピレンとジエンの共重合体であるエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が挙げられ、とくにEPDMが好ましい。
【0046】
EPDMとしては、エチレン、プロピレン、およびジエンを共重合させた種々の共重合体を用いることができる。
ジエンとしては、エチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)等が挙げられる。
また、EPDMとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明では、やはり感光体等の汚染を防止するために、ブリード物質となりうる伸展油を含まない非油展タイプのEPDMを用いるのが好ましい。
【0047】
これらEPDMの1種または2種以上を用いることができる。
(イオン導電性ゴム)
イオン導電性ゴムとしては、たとえば、エピクロルヒドリンゴム、ポリエーテルゴム等が挙げられる。
このうちエピクロルヒドリンゴムとしては、たとえば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン-プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)、エピクロルヒドリン-プロピレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル四元共重合体等が挙げられる。
【0048】
またポリエーテルゴムとしては、たとえば、エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体等が挙げられる。
中でも、エチレンオキサイドを含む共重合体、とくにECOおよび/またはGECOが好ましい。
【0049】
ECOおよび/またはGECOにおけるエチレンオキサイド含量は、いずれも30モル%以上、とくに50モル%以上であるのが好ましく、80モル%以下であるのが好ましい。
エチレンオキサイドは、ゴムローラのローラ抵抗値を下げる働きをする。
しかし、エチレンオキサイド含量がこの範囲未満では、かかる働きが十分に得られないため、ゴムローラのローラ抵抗値を十分に低下できない場合がある。
【0050】
一方、エチレンオキサイド含量が上記の範囲を超える場合には、エチレンオキサイドの結晶化が起こり、分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、却ってゴムローラのローラ抵抗値が上昇する傾向がある。
また、架橋後のローラ本体が硬くなりすぎたり、架橋前のゴム組成物の、加熱溶融時の粘度が上昇して、当該ゴム組成物の加工性が低下したりする場合もある。
【0051】
ECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量の残量である。
すなわち、エピクロルヒドリン含量は20モル%以上であるのが好ましく、70モル%以下、とくに50モル%以下であるのが好ましい。
また、GECOにおけるアリルグリシジルエーテル含量は0.5モル%以上、とくに2モル%以上であるのが好ましく、10モル%以下、とくに5モル%以下であるのが好ましい。
【0052】
アリルグリシジルエーテルは、それ自体が側鎖として、自由体積を確保するために機能することにより、エチレンオキサイドの結晶化を抑制して、ゴムローラのローラ抵抗値を低下させる働きをする。
しかし、アリルグリシジルエーテル含量がこの範囲未満では、かかる働きが十分に得られないため、ゴムローラのローラ抵抗値を十分に低下できない場合がある。
【0053】
一方、アリルグリシジルエーテルは、GECOの架橋時に架橋点として機能する。
そのため、アリルグリシジルエーテル含量が上記の範囲を超える場合には、GECOの架橋密度が高くなりすぎることによって分子鎖のセグメント運動が妨げられて、却ってゴムローラのローラ抵抗値が上昇する傾向がある。
GECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量、およびアリルグリシジルエーテル含量の残量である。
【0054】
すなわち、エピクロルヒドリン含量は10モル%以上、とくに19.5モル%以上であるのが好ましく、69.5モル%以下、とくに60モル%以下であるのが好ましい。
なおGECOとしては、先に説明した3種の単量体を共重合させた狭義の意味での共重合体の他に、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合体(ECO)をアリルグリシジルエーテルで変性した変性物も知られている。
【0055】
本発明では、このいずれのGECOも使用可能である。
これらイオン導電性ゴムの1種または2種以上を用いることができる。
(配合割合)
イオン導電性ゴムの配合割合は、ゴムの総量100質量部中の50質量部以上、とくに55質量部以上であるのが好ましく、70質量部以下、とくに65質量部以下であるのが好ましい。
【0056】
ジエン系ゴムおよび/またはエチレンプロピレン系ゴムの配合割合は、イオン導電性ゴムの残量である。
すなわち、イオン導電性ゴムの配合割合を上記範囲内の所定値に設定した際にゴムの総量が100質量部となるように、ジエン系ゴムおよび/またはエチレンプロピレン系ゴムの配合割合を設定すればよい。
【0057】
イオン導電性ゴムの配合割合が上記の範囲未満、または上記の範囲を超える場合には、このいずれにおいても、ゴムローラのローラ抵抗値を、たとえば、転写ローラとして適した範囲に調整できない場合がある。
また、イオン導電性ゴムの配合割合が上記の範囲を超える場合には、相対的に、ジエン系ゴムおよび/またはエチレンプロピレン系ゴムの割合が少なくなって、ローラ本体に、前述したゴムとしての良好な特性を付与できない場合もある。
【0058】
これに対し、イオン導電性ゴムの配合割合を上記の範囲とすることにより、ゴムローラのローラ抵抗値を、たとえば、転写ローラとして適した範囲に調整することができる。
また、ローラ本体に、ゴムとしての良好な特性を付与することもできる。
〈架橋成分〉
架橋成分としては、ゴムを架橋させるための架橋剤と、当該架橋剤によるゴムの架橋を促進するための架橋促進剤とを併用するのが好ましい。
【0059】
このうち架橋剤としては、たとえば、硫黄系架橋剤、チオウレア系架橋剤、トリアジン誘導体系架橋剤、過酸化物系架橋剤、各種モノマー等が挙げられる。
架橋剤は、組み合わせるゴムの種類に応じて、適宜選択することができる。
たとえば、ゴムが、いずれも硫黄架橋性を有するジエン系ゴムおよび/またはEPDMと、GECOとの組み合わせである場合、架橋剤としては、硫黄系架橋剤を用いればよい。
【0060】
また、たとえば、イオン導電性ゴムが硫黄架橋性を有しないECOである場合、架橋剤としては、ジエン系ゴムおよび/またはEPDMを架橋するための硫黄系架橋剤と、ECOを架橋するためのチオウレア系架橋剤とを併用すればよい。
(硫黄系架橋剤)
硫黄系架橋剤としては、たとえば、粉末硫黄、オイル処理粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等の硫黄や、あるいはテトラメチルチウラムジスルフィド、N,N-ジチオビスモルホリン等の有機含硫黄化合物などが挙げられ、とくに硫黄が好ましい。
【0061】
硫黄の配合割合は、ローラ本体に、前述したゴムとしての良好な特性を付与すること等を考慮すると、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、2質量部以下であるのが好ましい。
なお、たとえば、硫黄としてオイル処理粉末硫黄、分散性硫黄等を使用する場合、上記配合割合は、それぞれの中に含まれる有効成分としての硫黄自体の割合とする。
【0062】
また、架橋剤として有機含硫黄化合物を使用する場合、その配合割合は、分子中に含まれる硫黄の、ゴムの総量100質量部あたりの割合が上記の範囲となるように調整するのが好ましい。
(架橋促進剤)
硫黄系架橋剤によるゴムの架橋を促進するための架橋促進剤としては、たとえば、チアゾール系促進剤、チウラム系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
【0063】
このうち、チウラム系促進剤とチアゾール系促進剤とを併用するのが好ましい。
チウラム系促進剤としては、たとえば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等の1種または2種以上が挙げられる。
【0064】
またチアゾール系促進剤としては、たとえば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(4′-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の1種または2種以上が挙げられる。
上記2種の架橋促進剤の併用系において、硫黄系架橋剤によるゴムの架橋を促進する効果を十分に発現させることを考慮すると、チウラム系促進剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部以上、3質量部以下であるのが好ましい。
【0065】
また、チアゾール系促進剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部以上、2質量部以下であるのが好ましい。
(チオウレア系架橋剤)
チオウレア系架橋剤としては、分子中にチオウレア構造を有し、ECOの架橋剤として機能しうる種々のチオウレア化合物が使用可能である。
【0066】
チオウレア系架橋剤としては、たとえば、エチレンチオウレア、N,N′-ジフェニルチオウレア、トリメチルチオウレア、式(2):
(CnH2n+1NH)2C=S (2)
〔式中、nは1~12の整数を示す。〕で表されるチオウレア、テトラメチルチオウレア等の1種または2種以上が挙げられ、とくにエチレンチオウレアが好ましい。
【0067】
チオウレア系架橋剤の配合割合は、ローラ本体に、前述したゴムとしての良好な特性を付与すること等を考慮すると、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部以上であるのが好ましく、1質量部以下であるのが好ましい。
(架橋促進剤)
チオウレア系架橋剤には、当該チオウレア系架橋剤によるECOの架橋反応を促進する種々の架橋促進剤を併用してもよい。
【0068】
架橋促進剤としては、たとえば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド等のグアニジン系促進剤などの1種または2種以上が挙げられ、とくに1,3-ジ-o-トリルグアニジンが好ましい。
架橋促進剤の配合割合は、架橋反応を促進する効果を十分に発現させることを考慮すると、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部以上であるのが好ましく、1質量部以下であるのが好ましい。
【0069】
〈発泡成分〉
発泡成分としては、加熱によって分解してガスを発生する種々の発泡剤を用いることができる。また、発泡剤の分解温度を引き下げて、その分解を促進する働きをする発泡助剤を組み合わせてもよい。
(発泡剤)
発泡剤としては、たとえば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4′-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0070】
発泡剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
(発泡助剤)
発泡助剤としては、上述したように、組み合わせる発泡剤の分解温度を引き下げて、その分解を促進する働きをする種々の発泡助剤を用いることができ、たとえば、ADCAと組み合わせる発泡助剤としては、尿素(H2NCONH2)系発泡助剤が挙げられる。
【0071】
発泡助剤の配合割合は、組み合わせる発泡剤の種類等に応じて任意に設定できるが、ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
(発泡成分)
発泡成分としては、とくにADCAと尿素系発泡助剤とを組み合わせるか、もしくはOBSHを単独で用いるのが好ましい。
【0072】
〈その他〉
ゴム組成物には、さらに必要に応じて、各種の添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、たとえば、受酸剤、充填剤等が挙げられる。
このうち受酸剤は、前述したように、架橋時にエピクロルヒドリンゴム等から発生した塩素系ガス中の塩素を捕捉して、塩素系ガスが遊離状態でゴムローラ内に残留したり、それによって架橋阻害や感光体の汚染等が生じたりするのを抑制するために機能する。
【0073】
受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、中でも分散性に優れたハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましく、とくにハイドロタルサイト類が好ましい。
またハイドロタルサイト類等を酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用すると、より高い受酸効果を得ることができ、感光体等の汚染をより一層確実に防止できる。
【0074】
受酸剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.2質量部以上、とくに0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、とくに2質量部以下であるのが好ましい。
充填剤としては、たとえば、酸化亜鉛、シリカ、カーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0075】
充填剤を配合することにより、ゴムローラの機械的強度等を向上できる。
また、充填剤として導電性カーボンブラックを用いることで、ゴムローラに電子導電性を付与することもできる。
導電性カーボンブラックとしてはHAFが好ましい。
HAFは、ゴム組成物中に均一に分散できるため、ゴムローラにできるだけ均一な電子導電性を付与できる。
【0076】
導電性カーボンブラックの配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、20質量部以下であるのが好ましい。
また添加剤としては、さらに架橋助剤、劣化防止剤、スコーチ防止剤、可塑剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、共架橋剤等の各種添加剤を、任意の割合で配合してもよい。
【0077】
《ゴムローラ》
図1は、本発明のゴムローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
図1を参照して、この例のゴムローラ1は、上記各成分を含むゴム組成物の発泡体からなる、多孔質でかつ単層の筒状に形成されたローラ本体2を備えるとともに、ローラ本体2の中心の通孔3にシャフト4が挿通されて固定されたものである。
【0078】
シャフト4は、良導電性の材料、たとえば、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属などによって一体に形成されている。
シャフト4は、たとえば、導電性を有する接着剤を介してローラ本体2と電気的に接合され、かつ機械的に固定されるか、あるいは通孔3の内径よりも外径の大きいものを通孔3に圧入することで、ローラ本体2と電気的に接合され、かつ機械的に固定される。
【0079】
また、この両法を併用して、シャフト4を、ローラ本体2と電気的に接合し、かつ機械的に固定してもよい。
〈ローラ抵抗値〉
ゴムローラ1のローラ抵抗値R(Ω)は、当該ゴムローラの用途に応じて、その用途に適した範囲に設定することができる。
【0080】
たとえば、転写ローラの場合は、温度23±1℃、相対湿度55±1%の常温常湿環境下、下記の測定方法によって測定したローラ抵抗値R(Ω)が、常用対数値logRで表して6.5以上であるのが好ましく、7.5以下であるのが好ましい。
(ローラ抵抗値の測定)
図2は、ゴムローラのローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
【0081】
図1、
図2を参照して、この測定方法では、一定の回転速度で回転させることができるアルミニウムドラム6を用意し、用意したアルミニウムドラム6の外周面7に、上方から、ローラ抵抗値を測定するゴムローラ1の、ローラ本体2の外周面5を接触させる。
また、ゴムローラ1のシャフト4とアルミニウムドラム6との間に直流電源8、および抵抗9を直列に接続して計測回路10を構成する。
【0082】
直流電源8は、(-)側をシャフト4、(+)側を抵抗9と接続する。
抵抗9の抵抗値rは100Ωとする。
次いでシャフト4の両端部にそれぞれ4.9N(≒500gf)の荷重Fをかけてローラ本体2をアルミニウムドラム6に圧接させた状態で、アルミニウムドラム6を30rpmで回転させる。
【0083】
そして、回転を続けながら、ゴムローラ1とアルミニウムドラム6との間に、直流電源8から直流1000Vの印加電圧Eを印加して30秒後に、抵抗9にかかる検出電圧Vを計測する。
計測した検出電圧Vと印加電圧E(=1000V)とから、ゴムローラ1のローラ抵抗値Rは、基本的に式(i′):
R=r×E/V-r (i′)
によって求められる。
【0084】
ただし式(i′)中の-rの項は微小とみなすことができるため、本発明では式(i):
R=r×E/V (i)
によって求めた値でもって、ゴムローラ1のローラ抵抗値とすることとする。
〈アスカーC型硬さ〉
転写ローラの場合、ローラ本体2のゴム硬さは、アスカーC型硬さで表して20°以上であるのが好ましく、45°以下であるのが好ましい。
【0085】
アスカーC型硬さがこの範囲未満では、ローラ本体2の強度が不足してヘタリ等を生じやすくなる場合がある。
一方、アスカーC型硬さが上記の範囲を超える場合には、ローラ本体2が硬くなりすぎて、転写ローラとしての使用に適した適度の柔軟性が得られない場合がある。
ローラ本体2のアスカーC型硬さは、温度23±1℃、相対湿度55±1%の常温常湿環境下、日本工業規格JIS K7312-1996「熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形物の物理試験方法」の付属書2において援用する(社)日本ゴム協会標準規格SRIS0101「膨張ゴムの物理試験方法」に準拠したタイプC硬さ試験機(例えば高分子計器(株)製のアスカーゴム硬度計C型等)を用いて、下記の方法で測定した値でもって表すこととする。
【0086】
(アスカーC型硬さの測定)
ローラ本体2に挿通して固定したシャフト4の両端を支持台に固定した状態で、当該ローラ本体2の中央部に上記タイプC硬さ試験機の押針を押し当て、さらに4.9N(≒500gf)の荷重を付加してアスカーC型硬さを測定する。
〈ゴムローラの製造〉
本発明のゴムローラ1を製造するには、まず、前述した各成分からなるゴム組成物を、押出成形機を用いて筒状に押出成形し、次いで所定の長さにカットして、加硫缶内で加圧水蒸気によって加圧、加熱して発泡、および架橋させる。
【0087】
次いで、発泡、架橋させた筒状体を、オーブン等を用いて加熱して二次架橋させたのち冷却し、さらに所定の外径となるように研磨してローラ本体2を形成する。
シャフト4は、筒状体のカット後から研磨後までの任意の時点で通孔3に挿通して固定できる。
ただし、カット後、まず通孔3にシャフト4を挿通した状態で二次架橋および研磨をするのが好ましい。
【0088】
これにより、二次架橋時の膨張収縮による筒状体の反りや変形等を抑制できる。
また、シャフト4を中心として回転させながら研磨することで当該研磨の作業性を向上し、なおかつ外周面5のフレを抑制できる。
シャフト4は、先に説明したように、導電性を有する接着剤、特に導電性の熱硬化性接着剤を介して二次架橋前の筒状体の通孔3に挿通したのち二次架橋させるか、あるいは通孔3の内径より外径の大きいものを通孔3に圧入すればよい。
【0089】
前者の場合は、オーブン中での加熱によって筒状体が二次架橋されるのと同時に熱硬化性接着剤が硬化して、当該シャフト4がローラ本体2に電気的に接合されるとともに機械的に固定される。
また後者の場合は、圧入と同時に電気的な接合と機械的な固定が完了する。
また、前述したように、この両法を併用して、シャフト4を、ローラ本体2と電気的に接合し、かつ機械的に固定してもよい。
【0090】
〈発泡セルのセル径〉
上記の工程を経て製造される本発明のゴムローラ1は、たとえば、転写ローラとして使用した際に、形成画像の画質を向上するため、研磨によってローラ本体2の外周面5に露出した発泡セルの平均セル径が120μm以下であるのが好ましい。
また、ローラ本体2の外周面5に露出した発泡セルのセル径のバラツキも小さく、最も大きいセル径が150μm以下であるのが好ましい。
【0091】
これらのセル径を、本発明では、下記の方法で求めた値でもって表すこととする。
(セル径の測定)
ローラ本体2の外周面5を、マイクロスコープを用いて倍率200倍で観察した視野中に含まれる、大きいものから30個の発泡セルの長径(μm)と短径(μm)から、式(3):
セル径(μm)=(長径+短径)/2 (3)
によって求めた個々の発泡セルのセル径のうちの最大値を、最も大きいセル径とする。
【0092】
また30個のセル径の平均値を、平均セル径とする。
本発明のゴムローラ1は、たとえば、レーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、およびこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置において、前述したように転写ローラとして好適に使用できる。
ただし、本発明のゴムローラ1は、たとえば、帯電ローラ、現像ローラ、クリーニングローラ等として用いることもできる。
【0093】
《画像形成装置》
本発明の画像形成装置は、本発明のゴムローラ1を組み込んだことを特徴とするものである。
かかる本発明の画像形成装置としては、上述したように、レーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した種々の画像形成装置が挙げられる。
【実施例】
【0094】
以下に、本発明を、実施例、比較例、従来例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、必ずしもこれらの実施例、比較例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
(ゴム組成物)
ゴムとしてはGECO〔日本ゼオン(株)製のHYDRIN(登録商標)T3108〕50質量部、およびNBR〔JSR(株)製のJSR(登録商標)N250SL、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量20%、非油展〕50質量部を配合した。
【0095】
そして両ゴムの総量100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながら、まず下記表1に示す各成分のうち架橋成分以外の成分を加えて混練し、さらに架橋成分を加えて混練してゴム組成物を調製した。
【0096】
【0097】
表1中の各成分は下記のとおり。なお表1中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
ゼオライト:天然ゼオライト〔日東粉化工業(株)製のSP#2300〕
発泡剤:OBSH〔永和化成工業(株)製のネオセルボン(登録商標)N#1000SW〕
充填剤:カーボンブラックHAF〔東海カーボン(株)製の商品名シースト3〕
受酸剤:ハイドロタルサイト類〔協和化学工業(株)製のDHT-4A-2〕
架橋剤:粉末硫黄〔鶴見化学工業(株)製〕
架橋促進剤DM:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド〔Shandong Shanxian Chemical Co. Ltd.製の商品名SUNSINE MBTS〕
架橋促進剤TS:テトラメチルチウラムジスルフィド〔三新化学工業(株)製のサンセラー(登録商標)TS〕
(ゴムローラ)
調製したゴム組成物を押出成形機に供給して外径φ10mm、内径φ3.0mmの筒状に押出成形した後、所定の長さにカットして外径φ2.2mmの架橋用の仮のシャフトに装着した。
【0098】
次いで、加硫缶内で、加圧水蒸気によって120℃×10分間、次いで160℃×20分間の加圧、加熱をして、筒状体を、発泡剤の分解によって発生したガスによって発泡させるとともにゴムを架橋させた。
次いで、この筒状体を、外周面に導電性の熱硬化性接着剤を塗布した外径φ5mmのシャフト4に装着し直して、オーブン中で160℃×60分間加熱して二次架橋させるとともに、熱硬化性接着剤を硬化させてシャフト4と電気的に接合し、かつ機械的に固定した。
【0099】
そして、筒状体の両端を整形したのち、その外周面5を、円筒研削盤を用いてトラバース研削することで外径をφ12.5mm(公差±0.1mm)に仕上げてローラ本体2を形成し、ゴムローラ1を製造した。
〈実施例2〉
NBRに代えて、同量のSBR〔住友化学(株)製の住友SBR1502、スチレン含量23.5%、非油展〕を配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、ゴムローラ1を製造した。
【0100】
〈実施例3〉
NBRに代えて、同量のBR〔JSR(株)製のJSR BR01、高シスBR、シス-1,4結合含量95%、非油展〕を配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、ゴムローラ1を製造した。
〈実施例4〉
NBRに代えて、同量のEPDM〔住友化学(株)製のエスプレンEPDM 505A、エチレン含量:50%、ジエン含量:9.5%、非油展〕を配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、ゴムローラ1を製造した。
【0101】
〈比較例1~4〉
ゼオライトを配合しなかったこと以外は実施例1~4と同様にしてゴム組成物を調製し、ゴムローラ1を製造した。
〈従来例1〉
シリコーンゴムコンパウンド〔信越化学工業(株)製のKE-551U〕100質量部に、ゼオライト5.0質量部、架橋剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサン2質量部、発泡剤としてのジメチル-1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)5質量部、および触媒としての塩化白金酸を加えてゴム組成物を調製した。
【0102】
そして、かかるゴム組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にしてゴムローラを製造した。
この従来例1は、特許文献2の実施例1を再現したものに該当する。
〈発泡セルのセル径の測定および評価〉
実施例、比較例、従来例で製造したゴムローラ1の、外周面5に露出した発泡セルの平均セル径、および最も大きいセル径を、先に説明した方法によって求めた。
【0103】
そして、平均セル径が120μm以下で、かつ最も大きいセル径が150μm以下であるものを良好(○)、平均セル径が120μm以下であったが、最も大きいセル径が150μmを超えたもの、および平均セル径が120μmを超えたものを不良(×)と評価した。
〈汚染の有無評価〉
(試験1)
実施例、比較例、従来例で製造したゴムローラ1のローラ本体2を、レーザープリンタ〔(株)日本HP製のHP LaserJet(登録商標)P1606 dn〕のカートリッジから取り出した感光体に圧接させた状態で、温度40℃、相対湿度90%の高温高湿環境下で静置した。
【0104】
圧接の荷重は、シャフト4の片側あたり4.9N(≒500gf)、両側で9.8N(≒1kgf)とした。
そして、1週間経過後に圧接を解除した感光体を再びカートリッジに組み込んでレーザープリンタにセットし、黒ベタの画像を10枚連続して画像形成して、画像不良の有無を確認した。
【0105】
(試験2)
実施例、比較例、従来例で製造したゴムローラ1のローラ本体2を、アルミホイルの表面に圧接させた状態で、温度40℃、相対湿度90%の高温高湿環境下で静置した。
圧接の荷重は、シャフト4の片側あたり4.9N(≒500gf)、両側で9.8N(≒1kgf)とした。
【0106】
そして、1週間経過後に圧接を解除したアルミホイルの表面を、顕微鏡で観察して、圧接痕の有無を確認した。
(評価)
試験1で形成した10枚の画像に全く画像不良が見られず、しかも試験2で圧接痕が確認されなかったものを汚染なし良好(○)と評価した。
【0107】
一方、試験1で形成した10枚の画像に1枚でも画像不良が見られたもの、および/または試験2で圧接痕が確認されたものを汚染あり不良(×)と評価した。
〈ゴム硬さ評価〉
実施例、比較例、従来例で製造したゴムローラ1のローラ本体2の、温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下でのアスカーC型硬さを、先に説明した測定方法に則って測定した。
【0108】
そして、アスカーC型硬さが20°以上、45°以下のものを良好(○)、20°未満のもの、および45°を超えるものを不良(×)と評価した。
〈ローラ抵抗値の評価〉
実施例、比較例、従来例で製造したゴムローラ1の、温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下でのローラ抵抗値R(Ω)を、先に説明した測定方法に則って測定した。
【0109】
そして、測定したローラ抵抗値R(Ω)が、常用対数値logRで表して6.5以上、7.5以下であるものを良好(○)、6.5未満のもの、および7.5を超えるものを不良(×)と評価した。
以上の結果を表2、表3に示す。
【0110】
【0111】
【0112】
表2、表3の実施例1~4、比較例1~4の結果より、ゼオライト等の微細多孔質粒子を配合したゴム組成物によってローラ本体を形成することにより、
・ ゴム組成物の発泡を緩和して、発泡セルの平均セル径を現状よりも小さくしたり、セル径のバラツキを小さくできるとともに、
・ 汚染のもとになる成分を吸着して、当該成分の移行によって部材や用紙が汚染されるのを抑制できるため、
転写ローラ等として使用した際に、画質の良好な画像を形成できるゴムローラが得られることが判った。
【0113】
ただし、実施例1~4、従来例1の結果より、ゴムがシリコーンゴムである場合は、ゼオライトを配合しても上記の効果が得られず、ローラ本体の外周面に露出する発泡セルの平均セル径やセル径のバラツキを小さくしたり、汚染を抑制したりできないことが判った。
〈実施例5〉
(ゴム組成物)
ゴムとしては、
・ NBR〔JSR(株)製のJSR(登録商標)N250SL、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量20%、非油展〕10質量部、
・ SBR〔住友化学(株)製の住友SBR1502、スチレン含量23.5%、非油展〕10質量部、
・ BR〔JSR(株)製のJSR BR01、高シスBR、シス-1,4結合含量95%、非油展〕10質量部、
・ EPDM〔住友化学(株)製のエスプレンEPDM 505A、エチレン含量:50%、ジエン含量:9.5%、非油展〕10質量部、および
・ GECO〔日本ゼオン(株)製のHYDRIN(登録商標)T3108〕60質量部
を配合した。
【0114】
そして上記ゴムの総量100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながら、まず下記表4に示す各成分のうち架橋成分以外の成分を加えて混練し、さらに架橋成分を加えて混練してゴム組成物を調製した。
【0115】
【0116】
表4中の各成分は下記のとおり。なお表1中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
ゼオライト:天然ゼオライト〔日東粉化工業(株)製のSP#2300〕
発泡剤:ADCA〔永和化成工業(株)製の商品名ビニホールAC#3〕
発泡助剤:尿素系発泡助剤〔永和化成工業(株)製の商品名セルペースト101〕
受酸剤:ハイドロタルサイト類〔協和化学工業(株)製のDHT-4A-2〕
架橋剤:粉末硫黄〔鶴見化学工業(株)製〕
架橋促進剤DM:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド〔Shandong Shanxian Chemical Co. Ltd.製の商品名SUNSINE MBTS〕
架橋促進剤TS:テトラメチルチウラムジスルフィド〔三新化学工業(株)製のサンセラー(登録商標)TS〕
(ゴムローラ)
調製したゴム組成物を押出成形機に供給して外径φ15mm、内径φ4.5mmの筒状に押出成形した後、所定の長さにカットして外径φ3.5mmの架橋用の仮のシャフトに装着した。
【0117】
次いで、加硫缶内で、加圧水蒸気によって120℃×10分間、次いで160℃×20分間の加圧、加熱をして、筒状体を、発泡剤の分解によって発生したガスによって発泡させるとともにゴムを架橋させた。
次いで、この筒状体を、外周面に導電性の熱硬化性接着剤を塗布した外径φ6mmのシャフト4に装着し直して、オーブン中で160℃×60分間加熱して二次架橋させるとともに、熱硬化性接着剤を硬化させてシャフト4と電気的に接合し、かつ機械的に固定した。
【0118】
そして、筒状体の両端を整形したのち、その外周面5を、円筒研削盤を用いてトラバース研削することで外径をφ13mm(公差±0.1mm)に仕上げてローラ本体2を形成し、ゴムローラ1を製造した。
〈実施例6〉
ゼオライトに代えて、同量の活性炭〔(株)クラレ製のクラレコール(登録商標)PK-D〕を配合したこと以外は実施例5と同様にしてゴム組成物を調製し、ゴムローラ1を製造した。
【0119】
〈実施例7〉
ゼオライトに代えて、同量のケイソウ土〔昭和化学工業(株)製のトプコ(登録商標)No.54〕を配合したこと以外は実施例5と同様にしてゴム組成物を調製し、ゴムローラ1を製造した。
〈比較例5〉
ゼオライトを配合しなかったこと以外は実施例5と同様にしてゴム組成物を調製し、ゴムローラ1を製造した。
【0120】
〈実施例8、比較例6〉
ゼオライトの配合割合を、ゴムの総量100質量部あたり35.0質量部(実施例8)、40.0質量部(比較例6)としたこと以外は実施例5と同様にしてゴム組成物を調製し、ゴムローラ1を製造した。
〈実施例9、比較例7〉
活性炭の配合割合を、ゴムの総量100質量部あたり20.0質量部(実施例9)、25.0質量部(比較例7)としたこと以外は実施例6と同様にしてゴム組成物を調製し、ゴムローラ1を製造した。
【0121】
〈実施例10、比較例8〉
ケイソウ土の配合割合を、ゴムの総量100質量部あたり35.0質量部(実施例10)、40.0質量部(比較例8)としたこと以外は実施例7と同様にしてゴム組成物を調製し、ゴムローラ1を製造した。
上記実施例、比較例で製造したゴムローラ1について、前述した各評価を実施した。結果を表5、表6に示す。
【0122】
【0123】
【0124】
表5、表6の実施例5~10、比較例5の結果より、ゼオライト、活性炭、およびケイソウ土からなる群より選ばれた少なくとも1種の微細多孔質粒子を配合したゴム組成物によってローラ本体を形成することにより、やはり
・ ゴム組成物の発泡を緩和して、発泡セルの平均セル径を現状よりも小さくしたり、セル径のバラツキを小さくできるとともに、
・ 汚染のもとになる成分を吸着して、当該成分の移行によって部材や用紙が汚染されるのを抑制できるため、
転写ローラ等として使用した際に、画質の良好な画像を形成できるゴムローラが得られることが判った。
【0125】
ただし実施例5、8、比較例6の結果より、微細多孔質粒子としてゼオライトを用いた系では、上記の効果を維持しながら、なおかつローラ本体のゴム硬さやローラ抵抗値を転写ローラ等として適した範囲とするために、当該ゼオライトの配合割合を、ゴムの総量100質量部あたり35質量部以下とする必要があることが判った。
また実施例6、9、比較例7の結果より、微細多孔質粒子として活性炭を用いた系では、上記の効果を維持しながら、なおかつローラ本体のゴム硬さやローラ抵抗値を転写ローラ等として適した範囲とするために、当該活性炭の配合割合を、ゴムの総量100質量部あたり20質量部以下とする必要があることが判った。
【0126】
さらに実施例7、10、比較例8の結果より、微細多孔質粒子としてケイソウ土を用いた系では、上記の効果を維持しながら、なおかつローラ本体のゴム硬さやローラ抵抗値を転写ローラ等として適した範囲とするために、当該ケイソウ土の配合割合を、ゴムの総量100質量部あたり35質量部以下とする必要があることが判った。
【符号の説明】
【0127】
1 ゴムローラ
2 ローラ本体
3 通孔
4 シャフト
5 外周面
6 アルミニウムドラム
7 外周面
8 直流電源
9 抵抗
10 計測回路
F 荷重
V 検出電圧