(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】医療用ゴム製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B26F 1/44 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
B26F1/44 J
(21)【出願番号】P 2018189373
(22)【出願日】2018-10-04
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏昭
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030079(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0197451(US,A1)
【文献】特開2012-147859(JP,A)
【文献】特開2017-202848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/44
A61M 3/00
B26D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の医療用ゴム製品がシート状の継ぎ部によって連結され、かつ一方の表面に不活性フィルムがラミネートされて成る成型シートから、前記医療用ゴム製品を切り離す切離し工程を含む医療用ゴム製品の製造方法であって、
前記切離し工程は、前記成型シートの医療用ゴム製品と継ぎ部との境界位置で、前記不活性フィルムを切断する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記成型シートの医療用ゴム製品を、打ち抜き刃を用いて継ぎ部から打ち
抜く第2工程と、を含
み、
前記第1工程は、レーザー光により行うことを特徴とする、医療用ゴム製品の製造方法。
【請求項2】
前記医療用ゴム製品は、接液部及び摺動部に前記不活性フィルムがラミネートされた注射器用のガスケットを含むことを特徴とする、
請求項1に記載の医療用ゴム製品の製造方法。
【請求項3】
複数個の医療用ゴム製品がシート状の継ぎ部によって連結され、かつ、一方の表面に不活性フィルムがラミネートされて成る成型シートから、前記医療用ゴム製品を切り離す切離し工程を含む医療用ゴム製品の製造方法であって、
切離し工程は、上刃と下刃とを挟み合わせることによって前記成型シートから前記医療用ゴム製品を切り離す工程を含み、
切り離し工程に用いる上刃には、前記医療用ゴム製品の外縁を切断するために製品切断面側に位置する内刃先角と、製品切断面側と反対側の外側に位置する外刃先角とが備えられ、かつ、外刃先角には角Rが付与されていて、
切り離し工程は、第1工程及び第2工程を有し、
第1工程では、上刃を降下させて内刃先角により医療用ゴム製品の外縁の不活性フィルムだけを切断し、その後上刃を上昇させて成型シートの継ぎ部に負荷したテンションを一旦取り除き、
第2工程では、上刃を再度降下させて成型シートの継ぎ部のゴムシートのみにテンションを掛けた状態でゴムシートを切断することを特徴とする、医療用ゴム製品の製造方法。
【請求項4】
前記医療用ゴム製品は、接液部及び摺動部に前記不活性フィルムがラミネートされた注射器用のガスケットを含むことを特徴とする、
請求項3に記載の医療用ゴム製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ゴム製品の製造方法に関し、特に、複数個の医療用ゴム製品がシート状の継ぎ部によって連結状態で成型された成型シートから、医療用ゴム製品を切り離す切離し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の製造方法が適用される医療用ゴム製品の一例として、注射器用のラミネートガスケットが挙げられる。
ラミネートガスケットは、その表面に摺動性の良い不活性フィルムがラミネートされている。接液面およびシリンジとの接触面に不活性フィルムが積層(ラミネート)されたガスケットは、シリンジ内壁やガスケット表面にシリコーンが存在せずとも、注射器使用時に使用者が片手で無理なく、押し子でガスケットを移動させることができる。これは、不活性フィルムの摩擦抵抗が小さいためである。
【0003】
一方、ガスケット製造工程には、成型した製品(ガスケット)をシートから打ち抜き個別にする工程が含まれる。この工程により、打ち抜かれた製品には、成型シートからの切断面部(以下この切断面部を「打ち抜きバリ部」と称する。)が存在することになる。
打ち抜きバリ部には、不活性フィルムが積層されておらず、ゴム粗面が剥き出しとなっている。このため、打ち抜きバリ部がシリンジ内壁に接触すると、ガスケットの摺動抵抗値は急激に上昇し、注射器としての使い勝手が悪化する。
【0004】
打ち抜きバリ部がシリンジ内壁に接触するのを防止するためには、製品(ガスケット)を成型シートから打ち抜く打ち抜き工程において、成型シートにテンションをかけながら製品を打ち抜くいわゆるテンション抜き(たとえば、特許文献1に、テンション抜きが紹介されている。)を実施する必要がある。
しかしながら、テンション抜きを実施した場合であっても、打ち抜きバリ部とシリンジ内壁とが接触する可能性はある。なぜなら、打ち抜き時に、製品(ガスケット)の周方向に対して、不均一なテンションがかかった状態で打ち抜かれた場合、または、打ち抜き刃が積層された不活性フィルムを切断して、成型シート全体に所望のテンションがかからない場合等である。
【0005】
そこで、この打ち抜きバリ部がシリンジ内壁に接触するのを防止するための方法を、発明者らは鋭意研究を行い、打ち抜き時に使用する打ち抜き金型を工夫することで打ち抜きバリ部の安定化を図ってきた。(特許文献2を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-147859号公報
【文献】特開2017-30079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の装置を用いた医療用ゴム製品の切離し方法では、金型の刃先のR加工時のばらつきに伴う打ち抜きバリ部のばらつきや、打ち抜き金型の長期使用による刃先のR具合による経時的な打ち抜きバリ部の変化が発生するという課題が判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の医療用ゴム製品の製造方法は、以下の構成を具備している。すなわち、請求項1記載の発明は、複数個の医療用ゴム製品がシート状の次部によって連結され、かつ一方の表面に不活性フィルムがラミネートされて成る成型シートから、前記医療用ゴム製品を切り離す切離し工程を含む医療用ゴム製品の製造方法であって、前記切離し工程は、前記成型シートの医療用ゴム製品と継ぎ部との境界位置で、前記不活性フィルムを切断する第1工程と、前記第1工程の後に、前記成型シートの医療用ゴム製品を、打ち抜き刃を用いて継ぎ部から打ち抜く第2工程と、を含み、前記第1工程は、レーザー光により行うことを特徴とする、医療用ゴム製品の製造方法である。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記医療用ゴム製品は、接液部及び摺動部に前記不活性フィルムがラミネートされた注射器用のガスケットを含むことを特徴とする、請求項1に記載の医療用ゴム製品の製造方法である。
請求項3記載の発明は、複数個の医療用ゴム製品がシート状の継ぎ部によって連結され、かつ、一方の表面に不活性フィルムがラミネートされて成る成型シートから、前記医療用ゴム製品を切り離す切離し工程を含む医療用ゴム製品の製造方法であって、切離し工程は、上刃と下刃とを挟み合わせることによって前記成型シートから前記医療用ゴム製品を切り離す工程を含み、切り離し工程に用いる上刃には、前記医療用ゴム製品の外縁を切断するために製品切断面側に位置する内刃先角と、製品切断面側と反対側の外側に位置する外刃先角とが備えられ、かつ、外刃先角には角Rが付与されていて、切り離し工程は、第1工程及び第2工程を有し、第1工程では、上刃を降下させて内刃先角により医療用ゴム製品の外縁の不活性フィルムだけを切断し、その後上刃を上昇させて成型シートの継ぎ部に負荷したテンションを一旦取り除き、第2工程では、上刃を再度降下させて成型シートの継ぎ部のゴムシートのみにテンションを掛けた状態でゴムシートを切断することを特徴とする、医療用ゴム製品の製造方法である。
請求項4記載の発明は、前記医療用ゴム製品は、接液部及び摺動部に前記不活性フィルムがラミネートされた注射器用のガスケットを含むことを特徴とする、請求項3に記載の医療用ゴム製品の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、成型シートから医療用ゴム製品を切り離す切離し工程において、不活性フィルムを切断する第1工程、及びその後に行う第2工程としての打ち抜き工程を含んでいる。このため、第1工程においてラミネートされた不活性フィルムを事前に切断し、その後に第2工程である打ち抜きを行うことによって、安定した打ち抜きバリ部を有する医療用ゴム製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の製造方法により製造されたガスケットの一例を示す拡大側面図で、ガスケットの左半分を断面で表した図である。
【
図2】
図2は、本発明の製造方法に用いられる一実施形態に係る打ち抜き装置の模式的な構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す打ち抜き装置で、成型シートでつながった製品(ガスケット)を打ち抜く様子を示す図解的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、具体的に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の製造方法により製造されたガスケットの一例を示す拡大側面図で、ガスケットは左半分が断面で表されている。
図1を参照して、本実施形態に係るガスケット10は、弾性材で構成された本体11と、本体11の表面にラミネートされた不活性フィルム12とを含むいわゆるラミネートガスケットである。本体11は、弾性材で構成されておればよく、その素材に関しては特に限定されるものではない。たとえば、熱硬化型ゴムや、熱可塑性エラストマ等で構成することができる。このうち、耐熱性に優れることから、熱硬化性ゴムや、熱可塑性エラストマのうち架橋点を有する動的架橋型熱可塑性エラストマがより好ましい。これらのポリマー成分も特に限定されるものではなく、強いて言えば、成型性に優れるエチレン-プロピレン-ジエンゴムやブタジエンゴムが好ましい。また、耐ガス透過性に優れるブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムも好ましい。
【0013】
本体11の表面にラミネートされた不活性フィルム12は、架橋ゴム(本体11)からの成分の移行を阻止でき、かつ、ゴムよりも摺動性の優れるもの、すなわち、ゴムより摩擦係数の小さいフィルムであれば、その種類は特に限定されない。一例として、医療用途に実績のある超高分子量ポリエチレンやフッ素系樹脂のフィルムを挙げることができる。このうち、フッ素系樹脂は摺動性に優れ、かつ、表面の化学的な安定性に優れているので好ましい。フッ素系樹脂としては、フッ素を含む樹脂であれば公知のものを使用すればよく、例として、PTFE、変性PTFE、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、パーフルオロアルキルエーテル(PFA)、FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共同合体したフッ素樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)などが挙げられる。PTFEや変性PTFEは、摺動性および化学的な安定性共に優れており好ましい。ETFEは、γ線滅菌への耐性が良く好ましい。本体11との接着性の観点からは、これらの樹脂の混合物、もしくは積層からなるフィルムを用いることもできる。
【0014】
このガスケット10は、シリンジの内周面に気密的、液密的に接する円周面部13を備えており、円周面部13の表面および接液部14(
図1において下方側に位置する先端部)は不活性フィルム12で覆われている。ガスケット10の後端面15からは軸方向に彫り込まれた雌ねじ形状の嵌合凹部16が形成されている。使用時においては、この嵌合凹部16に押し子の先端が嵌合される。
【0015】
ガスケット10には、その後端面15の周囲に形成された後端切断面部17が含まれている。後端切断面部17は、ガスケット10が成型シートから打ち抜かれる際に生じる切断面部であり「打ち抜きバリ部」と称される部分である。打ち抜きバリ部17がガスケット10の軸方向に対して後方へ斜め方向に傾いているのは、いわゆるテンション抜きがされたためである。
【0016】
ガスケット10の寸法について説明しておくと、円周面部13の直径をD1、打ち抜きバリ部17の直径をD2、ガスケット10が打栓されるシリンジの内径をD0とすると、D1>D0>D2の関係になっている。これにより、円周面部13がシリンジ内壁に圧接され、シリンジ内壁と円周面部13との間から薬液が漏れることが防止できるとともに、不活性フィルム12で覆われた円周面部13はシリンジ内を無理なく移動し得る。また、打ち抜きバリ部17はシリンジ内壁と接触しないので、ガスケット10の摺動抵抗値が高くならない。
【0017】
図2は、本発明の製造方法に用いられる一実施形態に係る打ち抜き装置20の模式的な構成を示す断面図である。
図2において、21は下刃保持部であり、下刃保持部21の上面には円筒状の下刃22が立設されている。また、下刃22に関連して、成型シート受け部23が備えられている。成型シート受け部23は、成型シートでつながった製品(ガスケット10)を載せるためのものである。
【0018】
下刃22の上方には、上刃保持部24から垂下された円筒状の上刃25が配置されている。上刃保持部24で保持された上刃25を降下させ、上刃25と下刃22とを挟み合わせることによって、成型シートから製品であるガスケット10を打ち抜くことができる。
上刃25には、製品(ガスケット10)の外縁を切断するための製品切断面側に位置する内刃先角251と、製品(ガスケット10)切断面側の外側に位置する外刃先角252とが含まれている。そして、
図2において、Aで囲った部分の拡大図に示す通り、外刃先角252には、角Rが付与されている。これがこの実施形態に係る打ち抜き装置20の特徴である。
【0019】
この実施形態では、外刃先角252に付与された角Rは、曲率半径が0.02mm以上にされている。外刃先角252に付与された角Rが0.02mm以上である場合は、打ち抜き時に、テンションをかけるように成型シートを引っ張ったとしても、バリ部外側のフィルム31が切断されることはなく、小さなフィルム片が発生することがない。
この実施形態では、また、外刃先角252に付与された角Rは、曲率半径が0.5mm以下とされている。通常、上刃25(下刃22も同様であるが)は、繰り返しの打ち抜き作業により、刃先角が摩耗する。特に、硬い不活性フィルム31が積層されたバリ部の打ち抜きは、上刃25の摩耗を加速させる。摩耗した上刃25は研磨を実施することにより再度使用することが可能となる。この研磨は、上刃25の下端側を磨くので内刃先角251および外刃先角252に対して共通に行われ、研磨後には、外刃先角252に対してだけ角Rを付与するための加工を施さなければならない。
【0020】
外刃先角252の角Rが0.5mm以上であっても打ち抜き特性としては好ましいのであるが、外刃先角252に0.5mm以上の角Rを付与する加工は、加工時間を多く必要とし、コスト高を招くことになる。
それゆえ、この実施形態では、外刃先角252に付与された角Rは、曲率半径が0.02mm~0.5mmに調整されている。
【0021】
本発明の医療用ゴム製品の製造方法の特徴は、成型シートから医療用ゴム製品を切り離す切離し工程において、不活性フィルム31を切断する第1工程、及びその後に行う打ち抜き工程(第2工程)を含んでいることである。
図2を参照して説明すると、打ち抜き工程の前に、成型シートの一方の表面にラミネートされた不活性フィルム31の矢印A1で示す位置、すなわちガスケット10の外縁の不活性フィルム31だけをまず切断する第1工程を含むことが特徴である。
【0022】
図3は、
図2に示す打ち抜き装置で、成型シートでつながった製品(ガスケット10)に対し、ガスケット10の外縁の不活性フィルム31を切断する様子を示す図解的な図である。
図3に示すように、上刃25が降下されると、製品(ガスケット10)周囲の不活性フィルム31及びゴムシート30が上刃25で押し下げられて製品周囲の成型シート、いわゆるバリ部にテンションがかかる。上刃25の押し下げによりバリ部にテンションをかける際、外刃先角252に角Rが付与されているので、テンション付与時に外刃先角252が不活性フィルム31を切断せず、バリ部全体(ゴムシート30及び不活性フィルム31)にテンションを付与する。そして、内刃先角251により、まず、ガスケット10の外縁の不活性フィルム31が切断される。(
図3の(i)で示す第1工程)
ガスケット10の外縁の不活性フィルム31の切断後、上刃25を上昇させてバリ部に負荷されているテンションを一旦取り除き(
図3の(ii)で示す上刃25の上昇)、その後、上刃25を再度下降させてバリ部のゴムシート30のみにテンションを掛けた状態でゴムシート30を切断する(第2工程を行う)ものである。
【実施例】
【0023】
図1に示す形状とほぼ同等の形状のラミネートガスケット10を製造した。ガスケット10の製造は、特開2013-49236号公報に記載のように、メス型およびオス型からなる成型金型を使用して、未加硫ゴムシートに不活性フィルムを重ねた成型用シートを金型に挟んで成型した。
成型されたガスケット10は、5mL用のシリンジに適用されるサイズであり、製品径(
図1における円周面部13の直径D1)は、12.5mmとし、嵌合凹部16の最大内径は8.0mmとした。
また、製造したガスケット10を打栓し、内壁との接触を確認したシリンジの内径は、D0=12.0mmのものを用いた。
【0024】
[打ち抜き装置]
図2に示す打ち抜き装置20を使用して、成型シートでつながった製品(ガスケット10)を個別の製品(ガスケット10)に打ち抜いた。
実施例1及び実施例2:打ち抜き工程(第2工程)の前に、ラミネートした不活性フィルム31を切断する第1工程を、
図3を参照して説明した通り、打ち抜き装置20を用いて行った。
実施例3及び実施例4:打ち抜き工程(第2工程)の前に、レーザー光により、ガスケット10の外縁のラミネートした不活性フィルム31を切断する第1工程を行った。
【0025】
使用した装置は、アライドレーザー株式会社製 多用途マニュアル機で、発信器としてハイブリッドレーザーを用いて、波長1064nmのレーザー光を照射した。加工はスポット径10μmにて実施した。
比較例1及び比較例2:
図2に示す打ち抜き装置20を使用して、成型シートでつながった製品(ガスケット10)を個別の製品(ガスケット10)に打ち抜いた。(第1工程は行わなかった)
【0026】
打ち抜き装置20において、上刃25の内刃先角251(ガスケット10の外縁の不活性フィルム積層面側の打ち抜き刃の刃先角)の角Rを、実施例1、2、3、4及び比較例1、2でそれぞれ異ならせ、打ち抜き処理を行った。
内刃先角251の角Rの測定は、キーエンス社製のレーザー変位計LJ-V7020を使用し、打ち抜き刃の全数を、1個の刃に対して90°毎に4箇所測定した。
なお、刃先角R値によって結果が異なる場合、刃先角R値への依存性を×とした。
【0027】
[評価試験]
ガスケット10の打ち抜き部(打ち抜きバリ部17)とシリンジ内壁との接触は、ガスケット10の嵌合凹部16に押し子の先端を取り付け、そのガスケット10をシリンジに手で打栓し、目視により接触を確認した。
【0028】
目視による検査は、明るさ1800ルクス以上の場所で対象物を目から20cm以上離して実施した。評価したガスケットの数はそれぞれ20個である。全てのガスケットにおいて、接触がないものを〇、1個が接触しているものを△、2個以上が接触しているものを×とした。
シリンジへのガスケット打栓時の吸着不良は、ガスケット底部の面積を計算し、評価数N=20個の平均値が45mm2以上の場合は〇、40mm2以上で45mm2未満の場合は△、45mm2未満の場合は×とした。
【0029】
製品へのフィルム片の付着は、バリ部からの打ち抜きを行った製品に対して目視による検査を実施した。検査の方法は、ガスケットを打ち抜き部とシリンジ内壁との接触を確認する際に行った条件と同じ条件で行った。評価数はそれぞれN=20であり、付着率を算出した。
評価の結果は、表1に示す通りである。
【0030】
【0031】
[総括]
打ち抜き工程の前に積層したフィルムを切断した実施例では、打ち抜き金型によらず安定した打ち抜きバリ部を有するガスケットが得られた。
なお、実施例1、2の場合、最初の切断時にフィルムが擦られるので、フィルム片が発生すると考えられる。実施例3、4は最初のフィルム切断時フィルム片は発生せず、打ち抜き時は切れ込みが入っていて、フィルムが逃げやすい(擦られない)ので、フィルム片が発生しない。よって、フィルム片付着率より、熱化学的切断を実施した実施例3、4が最も好ましい結果が得られた。
【0032】
積層したフィルムを切断せずに打ち抜きを実施した比較例1、2において、適切なR加工が施された打ち抜き金型での比較例1では実施例同様の好適な結果が得られたが、R加工が施されていない金型での比較例2では不適な結果となった。即ち、打ち抜き金型の加工状態による結果への悪影響が示されており、比較例は安定した工程ではないことが確認された。
【0033】
本発明は、以上説明した実施形態や実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で種々の設計変更を施すことが可能である。たとえば、この発明では、打ち抜かれる製品をガスケットとして説明したが、打ち抜かれる製品は医療用ゴム栓、ゴムキャップなどであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 ガスケット
11 本体
12 不活性フィルム
13 円周面部
14 接液部
15 後端面
16 嵌合凹部
17 後端切断面部(打ち抜きバリ部)
20 打ち抜き装置
21 下刃保持部
22 下刃
23 成型シート受け部
24 上刃保持部
25 上刃
251 内刃先角
252 外刃先角
30 ゴムシート
31 ラミネートした不活性フィルム