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特許7209179油溶性染料の溶解方法及び油溶性染料溶液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】油溶性染料の溶解方法及び油溶性染料溶液
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20230113BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230113BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/34
A61K8/37
A61Q1/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018227783
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020090451
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菱川 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 維章
(72)【発明者】
【氏名】草川 直美
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-160434(JP,A)
【文献】特開2018-080134(JP,A)
【文献】特開2014-073974(JP,A)
【文献】特開平07-206635(JP,A)
【文献】特開2019-043904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C09D 11/00-13/00、
15/00-17/00
C09C 1/00- 3/12
C09B 57/00
Cosmetic Info.
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶質である3重量%以上の下記成分(A)が溶媒である下記成分(B)及び(C)に溶解しており、前記成分(B)の重量比が前記成分(B)及び前記成分(C)の総含有量に対して0.1~0.9である、前記成分(A)、(B)及び(C)以外の成分を含有しない油溶性染料溶液。
(A)赤色218号、赤色223号及び橙色201号からなる群より選択される1種又は2種以上の油溶性染料
(B)炭素数2及び/又は3の低級アルコール
(C)液状エステル油
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、油溶性染料を容易に溶解する方法及び当該方法により得られ、医薬部外品に配合でき、かつ油溶性染料の経時的な析出を抑制することを特徴とする油溶性染料溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
油溶性染料を含有する口紅、アイシャドウ、チーク等のメイクアップ化粧料は、淡い外観色を持ちながらも口唇や肌に適用すると鮮やかに発色し、持続効果も高いことから、近年人気が高い化粧料である。油溶性染料としては赤色218号や赤色223号等が使用され、溶解性に優れた溶媒に溶解して油溶性染料溶液にすることで、化粧料や医薬部外品に容易に配合することができる。
【0003】
油溶性染料溶液を得るための溶媒として、酢酸エチル及びテトラヒドロフラン等の有機溶剤は、より高濃度で油溶性染料を溶解できる点で有利であるが、上記のように油溶性染料は口唇や肌に適用すると鮮やかに発色する色材であり、化粧料、医薬部外品等の人体に適用される用途の組成物に配合されるものであるため、得られた溶液を化粧料、医薬部外品等に添加して最終製品とした場合には、当該最終製品内にこれらの有機溶剤が微量ではあっても含有される可能性がある。そうすると、油溶性染料溶液を人体に適用される用途の組成物に使用した場合には、その組成物中に含有された有機溶剤が、化粧料、医薬部外品の他の成分と共に人体に適用されることになる。
【0004】
上記有機溶剤の酢酸エチル及びテトラヒドロフランは、非特許文献1に記載のある医薬部外品の添加物リストに収載されておらず、医薬部外品には配合前例がないため、成分として酢酸エチル又はテトラヒドロフランを含む油溶性染料溶液を医薬部外品に配合する場合は、安全性に関する資料の提出が求められる。また、酢酸エチルに溶解した油溶性染料は安定性が良好でなく、時間が経過するにつれて油溶性染料が析出することにより、酢酸エチル溶液中の安定性が思いのほか早く低下するため、得られた油溶性染料の酢酸エチル溶液を長期に保存することは難しい。
【0005】
一方、炭素数2の低級アルコールであるエタノール及び炭素数3の低級アルコールであるイソプロパノールは医薬部外品の添加物リストに収載され、薬用口唇類を含めた医薬部外品の全ての種類で配合前例があるため、人体に対して比較的安全であると言えるが、油溶性染料の溶解性に劣り、油溶性染料を十分に溶解することができない。
【0006】
特許文献1には、油溶性染料の染着性を向上させる技術として、赤色218号、赤色223号、橙色201号の少なくとも1種とジプロピレングリコール又はヘキシレングリコール又は平均分子量が200~2000であるポリプロピレングリコールの少なくとも1種と非水溶性で且つ油溶性である1価アルコールの少なくとも1種とを含むことを特徴とする油性唇用組成物が記載されているが、油溶性染料の溶解性や油性唇用組成物の溶解状態については言及されていない。
【0007】
また、非特許文献2には、油溶性染料をメイクアップ化粧料に配合する技術として、予めエステル油等の極性油に1重量%の油溶性染料を溶解した溶液を配合することが記載されているが、調査された油溶性染料は赤色218号のみで、また可溶化できるエステル油はイソノナン酸トリシクロデカンメチル等選択肢が限定される上、溶解するために100℃の加熱が必要であり、確認されている溶解量も1重量%と少ないものであった。
【0008】
さらに、特許文献2には、油溶性染料をメイクアップ化粧料に配合する技術として、赤色218号、赤色223号及び橙色201号からなる群から選択される油溶性染料の1種又は2種以上、高級脂肪酸金属塩、及び油分を含み、顔料の配合量が0.5重量%以下であるメーキャップ化粧料が、高輝度の蛍光発色が得られると同時に透明感にも優れる効果があることが記載されているが、高級脂肪酸金属塩が必須成分としているため、処方の制約がある上、油溶性染料は前記油分中に溶解又は分散していると記載されているものの、溶解していることを確認した等、溶解状態の詳細までは言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平6-287109号公報
【文献】特許第5801503号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】平成29年12月6日薬生薬審発1206第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知、「医薬部外品の添加物リストについて」
【文献】荒平奈々・佐々木直樹著、「リップティント処方に最適な新規素材の提案」、FRAGRANCE JOURNAL、フレグランスジャーナル社、2017年4月、第45巻、第4号、p.29―34
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は、油溶性染料を容易に溶解して溶液を得るとともに、医薬部外品に配合でき、かつ油溶性染料の経時的な析出を抑制することを特徴とする油溶性染料溶液を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本願発明は、油溶性染料を、炭素数2又は3の低級アルコール及び液状エステル油を含有する溶媒により溶解した。
【0013】
すなわち本願発明は、次の成分(A)を溶質として、成分(B)及び(C)を含有する溶媒により溶解する方法及び当該方法により得られる油溶性染料溶液である。
(A)赤色218号、赤色223号及び橙色201号からなる群より選択される1種又は2種以上の油溶性染料
(B)炭素数2又は3の低級アルコール
(C)液状エステル油
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、溶媒として酢酸エチル等の有機溶剤を使用しなくても、酢酸エチルを使用した場合と同程度以上の溶解効率にて、油溶性染料を溶解することができる。特に溶媒が、炭素数2又は3の低級アルコール及び液状エステル油を含有する溶媒であり、これらの溶媒中に油溶性染料を高濃度で溶解することが可能となる。さらに、撹拌することにより常温で容易に溶解するため、加熱する必要がなく、使用できる液状エステル油もトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリエチルヘキサノイン等、化粧料、特に口唇化粧料や、医薬部外品、特に薬用口唇類に通常に配合される油剤であるので、処方の幅広い選択が可能となる。なお、ここで常温とは15~25℃を示す。また、これらの溶媒は化粧料用として使用されているので、溶解されてなる油溶性染料溶液は、化粧料、医薬部外品等の人体に適用する用途に使用する組成物に配合しても、残留する溶媒がもともと化粧料用であることからみて、十分な安全性を有することは明らかである。さらに、炭素数2又は3の低級アルコール及び液状エステル油を含有する溶媒中の油溶性染料溶液は、酢酸エチルで溶解する油溶性染料溶液よりも油溶性染料が析出しにくくなるために、油溶性染料の長期にわたる安定性が高く保存性に優れるので、プレミックス原料として油溶性染料溶液を調製して保存した後、化粧料の製造時に適宜、配合することができるという効果を有する。本発明の油溶性染料溶液は、油溶性染料を含有することによって、化粧料に配合して口唇や肌に適用すると鮮やかに発色する性質を有しており、このような性質を利用した用途に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願発明を詳細に説明する。
【0016】
本願発明に用いられる成分(A)油溶性染料は、化粧料の分野において有機合成色素と呼ばれる油溶性の染料から選択されるフルオレセイン誘導体からなる油溶性染料であり、赤色218号(テトラクロロテトラブロモフルオレセイン)、赤色223号(テトラブロモフルオレセイン)及び橙色201号(ジブロモフルオレセイン)から選択される1種又は2種以上の油溶性染料を用いる。
【0017】
本願発明に用いられる成分(A)油溶性染料の含有量は特に限定されないが、油溶性染料溶液を化粧料に配合すると少量でも鮮やかで発色が良く、かつ落ちにくい化粧料を作ることができる点から、成分(B)炭素数2又は3の低級アルコール及び(C)液状エステル油を含有する溶媒の総含有量100重量%に対し、成分(A)油溶性染料を溶質として0.001~10重量%含有することが好ましい。含有量が0.001重量%未満では、十分な発色を呈さない場合があり、含有量が10重量%を超えると、皮膚に対する安全性が低下する場合や経時的に析出して油溶性染料溶液の安定性が低下する場合がある。
【0018】
本願発明に用いられる成分(B)炭素数2又は3の低級アルコールは、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されないが、炭素数2のエタノール及び炭素数3のイソプロパノールから選択される1種又は2種の低級アルコールを用いる。油溶性染料溶液を医薬部外品に配合する場合は、エタノール及びイソプロパノールが医薬部外品の添加物リストに収載され、薬用口唇類を含めた医薬部外品の全ての種類で配合前例があるため、好ましい。さらに、油溶性染料溶液を化粧料に配合した後に、炭素数2又は3の低級アルコールを除去する場合は、エタノールが低分子量で揮発性が高く除去しやいため、より好ましい。なお、炭素数1の低級アルコールであるメタノールは化粧料への配合が禁止されており、また炭素数が4以上のアルコールは揮発性が低くなるため、除去しにくくなる傾向がある。
【0019】
本願発明に用いられる成分(C)液状エステル油は、常温で液状のトリグリセリド(油脂)、ジグリセリド、モノグリセリド、ワックスエステル又はコレステロールエステル等、脂肪酸のカルボキシル基とグリセリン、高級アルコール等の水酸基が脱水縮合して生じるエステル結合を含む化合物のことをいい、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されないが、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソノナン酸イソトリデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン等から選択される1種又は2種以上の常温で液状のエステル油を用いる。
【0020】
本願発明に用いられる成分(B)炭素数2又は3の低級アルコール及び(C)液状エステル油は、単独の使用では油溶性染料の溶解性は低いが、併用することで油溶性染料の溶解性を高めることできる。成分(B)炭素数2又は3の低級アルコール及び(C)液状エステル油を含有する溶媒の重量比は特に限定されないが、成分(B)の含有量b及び成分(C)の含有量cの総含有量(b+c)に対する成分(B)の重量比b/(b+c)を0.1~0.9として調製すると、油溶性染料の溶解性を高めることできる。重量比が0.1未満であるか、0.9を超えると、油溶性染料の溶解性が低くなる場合がある。また、油溶性染料を化粧料、又は医薬部外品に配合した後に、炭素数2又は3の低級アルコールを除去して化粧料、又は医薬部外品を製造する場合は、炭素数2又は3の低級アルコールの重量比が小さい方が除去に要する時間が短く生産性が高いため、より好ましい。
【0021】
本願発明の油溶性染料溶液には、必須成分の他に本願発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料、又は医薬部外品に用いられる成分を必要に応じて含有することができる。例えば、油脂、ロウ類、炭化水素、脂肪酸及び有機酸、アルコール、エーテル、エステル、シリコーン油及びフッ素油、多価アルコール、糖類、高分子、界面活性剤、粉体及び色材、植物・海藻エキス、アミノ酸及びペプチド、ビタミン、紫外線防御剤、殺菌・防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、香料等である。
【0022】
本願発明の油溶性染料溶液は、油溶性染料溶液を調製する常法に従って各成分を混合溶解することによって調製することができる。例えば、予め成分(A)油溶性染料成分と成分(B)炭素数2又は3の低級アルコール成分と成分(C)液状エステル油成分を混合し均一に混和させた後に、ディスパーミキサーやホモミキサー等の撹拌機を用いて常温で混合撹拌し、油溶性染料成分を溶解する方法等がある。また、予め成分(A)油溶性染料成分を成分(C)液状エステル油成分に撹拌分散させた後、成分(B)炭素数2又は3の低級アルコール成分を加えて常温で混合撹拌し、油溶性染料成分を溶解させて調製してもよい。
【0023】
本願発明の油溶性染料溶液は、リップスティック、リップカラー、リップグロス、リップクリーム、アイシャドウ、チークカラー等に配合することができる。中でも、リップスティック、リップカラー、リップクリーム、リップグロス等の口唇化粧料に配合すると、調製時に淡い外観色を維持しながらも、その化粧料を一旦塗布すると十分な発色を呈することができる。また、油溶性染料溶液を配合する工程において、油溶性染料由来の不溶物等の不純物をろ過により除去することができる。
【実施例
【0024】
以下に、実施例を挙げて、本願発明をより詳細に説明するが、本願発明はこれらに限定されるものではない。なお、含有量は特記しない限り重量%とする。
【0025】
発明の効果検証(実施例1~26及び比較例1~32)
本願発明の効果を以下の実施例1~26を用いて詳細に説明する。表1~10に示す組成により試料を調製した。油溶性染料溶液の調製時の溶解性、医薬部外品への配合及び経時的な析出の試験、評価法は下記に示す。
【0026】
<調製時の溶解性>
調製時の溶解性は、成分(B)炭素数2又は3の低級アルコール及び/又は(C)液状エステル油及び/又は酢酸エチル等の有機溶剤及び/又はジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等のその他の油剤を含有する溶媒の総含有量100重量%に対して、成分(A)油溶性染料を溶質として1重量%、3重量%又は5重量%を加え、常温でタッチミキサーを用いて1分間撹拌した後、5分間静置して試料を調製した。得られた試料を目視して油溶性染料の溶解量を判定基準にし、調製時の溶解性を下記5段階評価判定基準により判定した。
(評価項目)
調製時の溶解性
(判定基準) (判定)
(油溶性染料の溶解量)
5重量%以上 :優れる (◎)
3重量%以上5重量%未満 :やや優れる (○)
1重量%以上3重量%未満 :やや劣る (△)
1重量%未満 :劣る (×)
溶媒が混和せず、分離する :判定外 (-)
【0027】
<医薬部外品への配合>
医薬部外品への配合は、添加物リストへの収載及び配合制限を判定基準にし、医薬部外品への配合を下記3段階評価判定基準により判定した。
(評価項目)
医薬部外品への配合
(判定基準) (判定)
(添加物リストへの収載及び配合制限)
添加物リストに収載され、配合制限がない :優れる (◎)
添加物リストに収載され、配合制限がある :やや劣る (△)
添加物リストに収載されていない :劣る (×)
【0028】
<経時的な析出>
油溶性染料の経時的な析出は、調製時の溶解性の試験において、3重量%又は5重量%の成分(A)油溶性染料が溶解した油溶性染料溶液について常温下で1箇月間、経時観察した溶解状態を目視して油溶性染料の析出を判定基準にし、経時的な析出を下記4段階評価判定基準により判定した。
(評価項目)
経時的な析出
(判定基準) (判定)
(油溶性染料の析出)
1箇月以上の期間、析出しない :優れる (◎)
2週間以上1箇月未満の期間に析出する :やや劣る (△)
2週間未満の期間に析出する :劣る (×)
溶解量が3重量%未満 :判定外 (-)
【0029】
以上の評価方法により得られた結果を表1~10に併せて示す。ここで、「成分(B)及び成分(C)の総含有量に対する成分(B)の重量比」とは、成分(B)の含有量b及び成分(C)の含有量cの総含有量(b+c)に対する成分(B)の重量比b/(b+c)である。
【0030】
表1(油溶性染料各種)
成分(A)油溶性染料が赤色218号、赤色223号及び/又は橙色201号である場合について、成分(B)炭素数2又は3の低級アルコール及び(C)液状エステル油を含有する溶媒を含有した実施例1~4を比較して検討した。
【0031】
【表1】
※1:TPP赤色218号(癸巳化成)
※2:TPP赤色223号(癸巳化成)
※3:橙色201号(癸巳化成)
※4:O.D.O(日清オイリオグループ)
※5:リソレックス PGIS23(高級アルコール工業)
※6:KAK 139(高級アルコール工業)
※7:コスモール 222(日清オイリオグループ)
※8:コスモール 525(日清オイリオグループ)
※9:KAK TTI(高級アルコール工業)
※10:ノムコート TAB(日清オイリオグループ)
【0032】
表1より、本願発明において、成分(A)油溶性染料、成分(B)炭素数2又は3の低級アルコール及び成分(C)液状エステル油を含有する実施例1~4は、調製時の溶解性に優れ、医薬部外品に配合でき、かつ油溶性染料の経時的な析出がないことが示された。
【0033】
表2(溶媒が単独である場合又は有機溶剤である場合)
表1の成分(B)炭素数2又は3の低級アルコール又は(C)液状エステル油について、併用せず、何れかの溶媒のみを含有した比較例1~3、及び溶媒が有機溶剤の酢酸エチルである比較例4並びにテトラヒドロフランである比較例5を比較して検討した。
【0034】
【表2】
【0035】
表2より、成分(C)液状エステル油を含まない比較例1及び2、及び成分(B)炭素数2又は3の低級アルコールを含まない比較例3は、油溶性染料の溶解性が低いことが示された。さらに、有機溶剤の酢酸エチルを溶媒として用いる比較例4は、溶解性は優れているものの、医薬部外品の添加物リストに収載されておらず、また油溶性染料が経時的に析出した。また、テトラヒドロフランを溶媒として用いる比較例5は、溶解性は優れているものの、テトラヒドロフランも医薬部外品の添加物リストに収載されていない。
【0036】
表3及び4(炭素数2又は3の低級アルコールの含有量の重量比について比較)
成分(B)及び成分(C)の総含有量に対する成分(B)の重量比が0.1~0.9である実施例5~13と、重量比が0である比較例6及び重量比が0.05である比較例7、並びに重量比が0.95である比較例8及び重量比が1である比較例9を調査した。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
表3及び4より、本願発明において、成分(B)及び成分(C)の総含有量に対する成分(B)の重量比は、好ましくは0.1~0.9であり、より好ましくは0.2~0.8であることがわかった。
【0040】
表5(液状エステル油がトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2である場合における、炭素数2又は3の低級アルコールの含有量の重量比について比較)
表3及び4の成分(C)液状エステル油について、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに代わり、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2を用いた場合における成分(A)油溶性染料の溶解性について、成分(B)及び成分(C)の総含有量に対する成分(B)の重量比が0.1~0.9である実施例14~17と、重量比が0である比較例10及び重量比が0.05である比較例11、並びに重量比が0.95である比較例12及び重量比が1である比較例13を調査した。
【0041】
【表5】
【0042】
表5より、本願発明において、成分(C)液状エステル油について、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2を用いた場合においても、成分(B)及び成分(C)の総含有量に対する成分(B)の重量比は、好ましくは0.1~0.9であり、より好ましくは0.2~0.8であることがわかった。
【0043】
表6(炭素数2又は3の低級アルコールがイソプロパノールである場合における、炭素数2又は3の低級アルコールの含有量の重量比について比較)
表3及び4の成分(B)炭素数2又は3の低級アルコールについて、エタノールに代わり、イソプロパノールを用いた場合について、成分(B)及び成分(C)の総含有量に対する成分(B)の重量比が0.1~0.9である実施例18~21と、重量比が0である比較例14及び重量比が0.05である比較例15、並びに重量比が0.95である比較例16及び重量比が1である比較例17を調査した。
【0044】
【表6】
【0045】
表6より、本願発明において、成分(B)炭素数2又は3の低級アルコールについて、イソプロパノールを用いた場合についても、成分(B)及び成分(C)の総含有量に対する成分(B)の重量比は、好ましくは0.1~0.9であり、より好ましくは0.2~0.8であることがわかった。
【0046】
表7及び8(液状エステル油各種の場合について比較)
表3、4及び6の成分(C)液状エステル油について、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに代わり、液状エステル油各種を用いた場合について、成分(B)及び成分(C)の総含有量に対する成分(B)の重量比が0.2である実施例22~26と、重量比が0である比較例18~22を調査した。
【0047】
【表7】
【0048】
【表8】
【0049】
表7及び8より、本願発明において、成分(C)液状エステル油について、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに代わり、イソノナン酸イソトリデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル等の液状エステル油各種を用いた場合についても効果を発揮できることがわかった。
【0050】
表9及び10(その他の油剤について比較)
表7及び8の成分(C)液状エステル油に代わり、液状のシリコーン油であるジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、又はジメチコン、あるいは液状の炭化水素油である水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、又はスクワランを用いた場合について、比較例23~32を調査した。
【0051】
【表9】
【0052】
【表10】
【0053】
表9及び10より、本願発明において、溶媒中の成分(C)液状エステル油に代わり、液状のシリコーン油又は液状の炭化水素油を用いると、成分(B)炭素数2又は3の低級アルコールを含有しない場合は、成分(A)油溶性染料を溶解できず、さらに成分(B)炭素数2又は3の低級アルコールを併用しても、成分(A)油溶性染料の溶解性を高めることはできないことがわかった。
【0054】
配合例:リップスティック
成分 (重量%)
(1)本願発明の油溶性染料溶液 1.30
下記成分を混合撹拌して調製した (重量%)
赤色218号※1 0.03
赤色223号※2 0.02
エタノール 0.25
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル※4 1.00
(2)パラフィンワックス 10.50
(3)マイクロクリスタリンワックス 4.00
(4)カルナウバロウ 1.00
(5)トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2 40.37
(6)トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 23.00
(7)水添ポリイソブテン 10.00
(8)ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)
ジペンタエリスリチル 10.00
(9)トコフェロール 0.05
(10)クエン酸 0.03
合計(エタノールを除く) 100.00
製法:成分(2)~(10)を85~90℃にて加熱混合し、成分(1)をろ過して添加した。脱泡した後、80~85℃で金型に流し込み、冷却成型したものを容器に充てんして、リップスティックを得た。
【0055】
配合例のリップスティックは口唇に塗布すると鮮やかに発色し、持続効果も高いものであった。また、ベースをスライドガラスに挟んで顕微鏡で観察すると、油溶性染料の析出はなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本願発明は、油溶性染料、炭素数2又は3の低級アルコール及び液状エステル油を含有することにより、医薬部外品に配合でき、かつ油溶性染料の経時的な析出を抑制することを特徴とする油溶性染料溶液を提供する技術であり、溶解性の低い油溶性染料を利用する他の産業においても、容易に溶解するのに役立つ技術である。