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  • 特許-情報記録媒体およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】情報記録媒体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/24038 20130101AFI20230113BHJP
   G11B 7/24067 20130101ALI20230113BHJP
   G11B 7/24053 20130101ALI20230113BHJP
   G11B 7/2578 20130101ALI20230113BHJP
   G11B 7/2433 20130101ALI20230113BHJP
   G11B 7/24018 20130101ALI20230113BHJP
   G11B 7/26 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
G11B7/24038
G11B7/24067
G11B7/24053
G11B7/2578
G11B7/2433
G11B7/24018
G11B7/26 531
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020536353
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2019023386
(87)【国際公開番号】W WO2020031498
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2018150255
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】児島 理恵
(72)【発明者】
【氏名】槌野 晶夫
(72)【発明者】
【氏名】会田 和輝
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/159561(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/129237(WO,A1)
【文献】特開2018-106794(JP,A)
【文献】特開2003-151175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/24038
G11B 7/24067
G11B 7/24053
G11B 7/2578
G11B 7/2433
G11B 7/24018
G11B 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の情報層を含み、レーザ光の照射により情報を記録または再生する情報記録媒体であって、
前記2以上の情報層のうちの、少なくとも一つの情報層を第1情報層とし、前記第1情報層が、前記レーザ光が照射される面から遠い方から近い方に向かって、第1誘電体膜、および記録膜をこの順に含み、
前記第1誘電体膜が少なくとも
Zrと酸素とを含み、さらに、ZnおよびSn元素D1を含み、Zrと、酸素と、前記元素D1の原子数とを合わせて100原子%とした場合、Zrを3原子%以上26原子%以下含み、前記元素D1を10原子%以上43原子%以下含み、
前記記録膜が少なくともWと、Cuと、Mnと、酸素とを含み、さらに、Zn、Nb、Mo、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素Mを含む、情報記録媒体。
【請求項2】
前記第1誘電体膜が、さらに、
Si、Y、CaおよびMgより選ばれる少なくとも一つの元素D2を含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記第1誘電体膜が、さらに、
GaおよびAlより選ばれる少なくとも一つの元素D3を含み、Zrと、酸素と、前記元素D1と、前記元素D2および前記元素D3の原子数を合わせて100原子%とした場合、前記元素D3を7原子%以下含む、
請求項に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記第1情報層が、前記レーザ光が照射される面から遠い方から近い方に向かって、
前記第1誘電体膜、前記記録膜、および第2誘電体膜をこの順に含み、
前記第2誘電体膜が、少なくとも
Zrと酸素とを含み、さらに、ZnおよびSnより選ばれる少なくとも一つの元素D1を含み、Zrと、酸素と、前記元素D1の原子数とを合わせて100原子%とした場合、Zrを3原子%以上26原子%以下含み、前記元素D1を10原子%以上43原子%以下含む、
請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記第2誘電体膜が、さらに、
Si、Y、CaおよびMgより選ばれる少なくとも一つの元素D2を含む、
請求項4に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記第2誘電体膜が、さらに、
GaおよびAlより選ばれる少なくとも一つの元素D3を含み、Zrと、酸素と、前記元素D1と、前記元素D2および前記元素D3の原子数を合わせて100原子%とした場合、前記元素D3を7原子%以下含む、
請求項に記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記第1情報層が、前記レーザ光が照射される面から遠い方から近い方に向かって、
前記第1誘電体膜、前記記録膜、および第2誘電体膜をこの順に含み、
前記第2誘電体膜が少なくとも
Zrと、酸素と、Inとを含む、
請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項8】
前記第2誘電体膜が、さらに、
Si、Y、CaおよびMgより選ばれる少なくとも一つの元素D2を含む、
請求項7に記載の情報記録媒体。
【請求項9】
前記記録膜におけるW、Cu、Mn、および前記元素Mが、
下記の式(1):
CuMn100-x-y-z(原子%) (1)
(前記式(1)中、
15≦x<60、0<y≦30、10≦z≦40、且つ、10≦100-x-y-z≦50)、
を満たす、請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項10】
前記記録膜の前記元素MがTaとZnより選ばれる少なくとも一つである、請求項1または9に記載の情報記録媒体。
【請求項11】
前記第1情報層が、前記レーザ光照射面から見て最も遠い位置に配置されている情報層よりも、前記レーザ光照射面に近い位置に配置されている、
請求項1から10のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
【請求項12】
前記第1情報層が、前記レーザ光照射面に最も近い位置に配置されている、
請求項1から11のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
【請求項13】
2以上の情報層を含む情報記録媒体の製造方法であって、
前記2以上の情報層の各々を形成する工程を含み、
前記2以上の情報層のうちの少なくとも一つの情報層を第1情報層とし、前記第1情報層を形成する工程が、
少なくとも、第1誘電体膜を形成する工程と、記録膜を形成する工程とを含み、
前記第1誘電体膜を形成する工程が、
少なくともZrと酸素とを含み、さらに、ZnおよびSn元素D1を含む第1誘電体膜を形成し、
前記記録膜を形成する工程が、少なくともWと、Cuと、Mnとを含み、
さらに、Zn、Nb、Mo、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素Mを含む記録膜を形成し、
前記第1誘電体膜を形成する工程と、前記記録膜を形成する工程が、DC電源を用いたスパッタリングにより実施される、情報記録媒体の製造方法。
【請求項14】
前記第1誘電体膜を形成する工程で形成する前記第1誘電体膜が、
さらに、Si、Y、CaおよびMgより選ばれる少なくとも一つの元素D2を含む、
請求項13に記載の情報記録媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学的手段によって情報を記録または再生する、大容量な情報記録媒体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及や放送のデジタル化等により、デジタルデータの利用量が年々増加している。光学的情報記録媒体である光ディスクはデータの長期保存に適した信頼性の高い情報記録媒体として、増大する情報量と共に大容量化という進化を続けてきた。
【0003】
BDXL規格(BD:Blu-ray(登録商標) Disc)は2010年6月に策定された。この規格に準じた3層ディスク(3つの情報層を備える光ディスク)は、1情報層あたりの記録容量が33.4ギガバイト(GB)であり、片面で100GBという大容量のデータを保存できる。3層ディスクを構成する3つの情報層については、レーザ光の光源から最も遠いものが「L0層」と呼ばれ、次に遠いものが「L1層」と呼ばれ、レーザ光の光源に最も近いものが「L2層」と呼ばれる。
例えば、データセンター向けに、追記型のBD-R XLディスクを用いた、最大約638テラバイト(TB)の大容量を実現できる光ディスクライブラリーが既に提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
BDXL規格の次の規格として、業務用光ディスク規格「アーカイバル・ディスク(Archival Disc)」が2014年3月に策定された(例えば、非特許文献2参照)。アーカイバル・ディスクは、BDよりも高い信頼性を有し、ランド・アンド・グルーブ記録方式の採用によって、より高い記録密度を有している。さらに、アーカイバル・ディスクは、基板の両面にディスク構造を備えているため、より大容量の記録媒体として提供される。アーカイバル・ディスク規格のロードマップは、ディスク1枚あたりの記録容量を順次増やすように策定されている。このロードマップによれば、具体的には、第1世代として300GBのシステムを、第2世代として500GBのシステムを、第3世代として1TBのシステムを開発する計画である。
【0005】
第1世代の300GBのアーカイバル・ディスクは、150GBの情報を保存できる3層ディスクが基板の両面に設けられて、1枚あたり300GBの情報の記録再生を可能にするものである。すなわち、このアーカイバル・ディスクにおいて、1情報層あたりの記録容量は50GBである。各情報層は、酸化物誘電体膜で酸化物記録膜を挟んだ簡素な構造である(例えば、特許文献1および2参照)。記録膜にレーザ光を照射すると、記録膜が形状変化を生じて信号が記録される。このディスクを用いて、最大1.9ペタバイト(PB)という大容量を実現できる光ディスクライブラリーが既に提案されている(例えば、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/159561号
【文献】日本国特許第4210620号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】パナソニック株式会社、データアーカイバーLB-DH8シリーズカタログ、2016年9月
【文献】Archival Disc White Paper:Archival Disc Technology 1st Edition July 2015
【文献】パナソニック株式会社、データアーカイバーLB-DH7シリーズカタログ、2016年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第2世代の500GB容量のアーカイバル・ディスクにおいては、片面に設けられる3層ディスクが250GBの容量を実現しなければならない。すなわち、1情報層あたりの記録容量を、第1世代の50GBから83.4GBへ増やす必要がある。記録容量を増やす一つの手法として、最短の記録マークのサイズを小さくして、一つの情報層における記録密度を高くする方法がある。その場合の課題の一つとして、再生耐久性が挙げられる。
【0009】
また、情報層に含まれる誘電体膜には、従来、ZrO、SiO、およびInを含む材料(ZrO-SiO-In)が用いられている。ZrO-SiO-Inは、DCスパッタまたはパルスDCスパッタのどちらでもスパッタ可能で、高い成膜速度を有する。また高透明性と高耐湿性を持ち合わせた優れた誘電体材料である。DCスパッタができるのは、ZrO-SiO-Inが透明導電材料のInを含むからである。Inを減らしたり除去したりすると、ZrO-SiO-InのDCスパッタまたはパルスDCスパッタが困難になる。
しかしながら、本発明者らは、Inの含有量に着目し、鋭意検討した結果、Inが再生耐久性を悪化させることを見出した。そして、誘電体膜として実用できる、従来のZrO-SiO-Inに代わる、新しい誘電体材料が必要であるとの結論に至った。
【0010】
本開示の目的は、DCスパッタまたはパルスDCスパッタが可能で、且つ優れた再生耐久性を有し、高い生産性と高い信頼性を有する、500GB以上の大容量な多層の情報記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明者らは、第1誘電体膜および記録膜の組み合わせを種々検討した。その結果、第1誘電体膜の組成および記録膜の組成を特定のものとした情報層を用いることにより、本発明を完成するに至った。
本発明は下記の手段により達成された。
〔1〕
2以上の情報層を含み、レーザ光の照射により情報を記録または再生する情報記録媒体であって、
上記2以上の情報層のうちの、少なくとも一つの情報層を第1情報層とし、上記第1情報層が、上記レーザ光が照射される面から遠い方から近い方に向かって、第1誘電体膜、および記録膜をこの順に含み、
上記第1誘電体膜が、少なくともZrと酸素とを含み、さらに、ZnおよびSnより選ばれる少なくとも一つの元素D1を含み、Zrと、酸素と、上記元素D1の原子数とを合わせて100原子%とした場合、Zrを3原子%以上26原子%以下含み、上記元素D1を10原子%以上43原子%以下含み、
上記記録膜が少なくともWと、Cuと、Mnと、酸素とを含み、さらに、Zn、Nb、Mo、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素Mを含む、情報記録媒体。
〔2〕
上記第1誘電体膜が、さらに、
Si、Y、CaおよびMgより選ばれる少なくとも一つの元素D2を含む、〔1〕に記載の情報記録媒体。
〔3〕
上記第1誘電体膜が、さらに、GaおよびAlより選ばれる少なくとも一つの元素D3を含み、Zrと、酸素と、上記元素D1と、上記元素D2および上記元素D3の原子数を合わせて100原子%とした場合、上記元素D3を7原子%以下含む、
〔1〕または〔2〕に記載の情報記録媒体。
〔4〕
上記第1情報層が、上記レーザ光が照射される面から遠い方から近い方に向かって、上記第1誘電体膜、上記記録膜、および第2誘電体膜をこの順に含み、
上記第2誘電体膜が、少なくともZrと酸素とを含み、さらに、ZnおよびSnより選ばれる少なくとも一つの元素D1を含み、Zrと、酸素と、上記元素D1の原子数とを合わせて100原子%とした場合、Zrを3原子%以上26原子%以下含み、上記元素D1を10原子%以上43原子%以下含む、
〔1〕に記載の情報記録媒体。
〔5〕
上記第2誘電体膜が、さらに、Si、Y、CaおよびMgより選ばれる少なくとも一つの元素D2を含む、
〔4〕に記載の情報記録媒体。
〔6〕
上記第2誘電体膜が、さらに、GaおよびAlより選ばれる少なくとも一つの元素D3を含み、Zrと、酸素と、上記元素D1と、上記元素D2および上記元素D3の原子数を合わせて100原子%とした場合、上記元素D3を7原子%以下含む、
〔4〕または〔5〕に記載の情報記録媒体。
〔7〕
上記第1情報層が、レーザ光が照射される面から遠い方から近い方に向かって、
上記第1誘電体膜、上記記録膜、および第2誘電体膜をこの順に含み、
上記第2誘電体膜が少なくともZrと、酸素と、Inとを含む、
〔1〕に記載の情報記録媒体。
〔8〕
上記第2誘電体膜が、さらに、Si、Y、CaおよびMgより選ばれる少なくとも一つの元素D2を含む、
〔7〕に記載の情報記録媒体。
〔9〕
上記記録膜におけるW、Cu、Mn、および上記元素Mが、
下記の式(1):
CuMn100-x-y-z(原子%) (1)
(上記式(1)中、
15≦x<60、0<y≦30、10≦z≦40、且つ、10≦100-x-y-z≦50)、
を満たす、〔1〕に記載の情報記録媒体。
〔10〕
上記記録膜の上記元素Mが、TaとZnより選ばれる少なくとも一つである、〔1〕または〔9〕に記載の情報記録媒体。
〔11〕
上記第1情報層が、上記レーザ光が照射される面から最も遠い位置に配置されている情報層よりも、上記レーザ光が照射される面に近い位置に配置されている、
〔1〕から〔10〕のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
〔12〕
上記第1情報層が、上記レーザ光照射面に最も近い位置に配置されている、〔1〕から〔11〕のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
〔13〕
2以上の情報層を含む情報記録媒体の製造方法であって、
上記2以上の情報層の各々を形成する工程を含み、
上記2以上の情報層のうちの少なくとも一つの情報層を第1情報層とし、上記第1情報層を形成する工程が、少なくとも、第1誘電体膜を形成する工程と、記録膜を形成する工程とを含み、
上記第1誘電体膜を形成する工程が、少なくともZrと酸素とを含み、さらに、ZnおよびSnより選ばれる少なくとも一つの元素D1を含む第1誘電体膜を形成し、
上記記録膜を形成する工程が、少なくともWと、Cuと、Mnとを含み、さらに、Zn、Nb、Mo、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素Mを含む記録膜を形成し、
上記第1誘電体膜を形成する工程と、上記記録膜を形成する工程が、DC電源を用いたスパッタリングにより実施される、情報記録媒体の製造方法。
〔14〕
上記第1誘電体膜を形成する工程で形成する上記第1誘電体膜が、さらに、Si、Y、CaおよびMgより選ばれる少なくとも一つの元素D2を含む、
〔13〕に記載の情報記録媒体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態にかかる情報記録媒体は、優れた再生耐久性を示す情報層を有し、大容量かつ高信頼性の多層の情報記録媒体の実現を可能にする。また、高い生産性も併せ持つ多層の情報記録媒体を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の実施の形態1に係る情報記録媒体100の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は例示的なものであり、本開示は以下の実施の形態に限定されない。
【0015】
(実施の形態1)
本発明の実施形態に係る情報記録媒体は、2以上の情報層を含み、レーザ光の照射により情報を記録または再生する情報記録媒体であって、
前記2以上の情報層のうちの、少なくとも一つの情報層を第1情報層とし、前記第1情報層が前記レーザ光が照射される面から遠い方から近い方に向かって、第1誘電体膜、および記録膜をこの順に含み、
前記第1誘電体膜が、少なくともZrと酸素とを含み、さらに、ZnおよびSnより選ばれる少なくとも一つの元素D1を含み、Zrと、酸素と、前記元素D1の原子数とを合わせて100原子%とした場合、Zrを3原子%以上26原子%以下含み、前記元素D1を10原子%以上43原子%以下含み、
前記記録膜が少なくともWと、Cuと、Mnと、酸素とを含み、さらに、Zn、Nb、Mo、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素Mを含む。
第1誘電体膜の組成および記録膜の組成を上記のとおり特定のものとした情報層を用いることにより、本発明の効果を得ることができる。
実施の形態1として、レーザ光6を用いて情報の記録及び再生を行う、情報記録媒体の一例を説明する。
【0016】
図1に、本発明の実施形態に係る情報記録媒体100の断面を示す。
本発明の実施形態にかかる情報記録媒体100は基板1を有していてもよい。
本実施の形態の情報記録媒体100は、情報を記録および再生する情報層を、基板1を介して両側にそれぞれ3層ずつ(合計6層)設けており、カバー層4側よりレーザ光6を照射し、各情報層での情報の記録および再生が可能である多層光学的情報記録媒体である。レーザ光6は波長405nm付近の青紫色域のレーザ光である。
情報記録媒体100は、A面情報記録媒体101とB面情報記録媒体102を貼り合わせた、両面の情報記録媒体である。A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102は、それらの基板1の裏面(情報層を有する面とは逆側)にて貼り合わせ層5により貼り合わされている。A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102は各々、基板1上に中間分離層2および3などを介して、情報層として順次積層されたL0層10、L1層20およびL2層30を有し、さらに、L2層30に接して設けられたカバー層4を有する。L1層20およびL2層30は透過型の情報層である。
L0層10は、レーザ光6が照射される面から遠い方から近い方に向かって、第1誘電体膜11、記録膜12および第2誘電体膜13を、この順に含む。同様にL1層20は、第1誘電体膜21、記録膜22および第2誘電体膜23を、L2層30は、第1誘電体膜31、記録膜32および第2誘電体膜33を、この順に含む。
【0017】
すなわち、A面情報記録媒体101とB面情報記録媒体102は、各々、はレーザ光6が照射される面から遠い方から近い方に向かって、基板1、L0層10、中間分離層2、L1層20、中間分離層3、L2層30、およびカバー層4を順に形成した構造となっている。さらにL0層10は、レーザ光6が照射される面から遠い方から近い方に向かって、基板1上に第1誘電体膜11、記録膜12、および第2誘電体膜13が形成され、L1層20は、中間分離層2上に第1誘電体膜21、記録膜22、および第2誘電体膜23が形成され、L2層30は、中間分離層3上に第1誘電体膜31、記録膜32、および第2誘電体膜33が形成された構造となっている。第1誘電体膜21、第1誘電体膜31、記録膜22、記録膜32、第2誘電体膜23、および第2誘電体膜33は、スパッタリング(スパッタ)法を用いて形成することができる。
【0018】
L1層20とL2層30は、第1誘電体膜21と第1誘電体膜31をそれぞれ中間分離層2と中間分離層3上に形成することができる。スパッタ時間が長いほど、スパッタリングターゲット(ターゲット)の熱輻射でスパッタ中の基板温度は高くなる。成膜速度を上げるためにはDC(DC:Direct Current)スパッタまたはパルスDCスパッタの採用が好ましく、基板温度も高周波スパッタ法よりも上昇する。中間分離層は、例えばアクリル系等の紫外線硬化型樹脂からなる。L1層20の第1誘電体膜21を形成する際、中間分離層2の表面は高温に曝される。また、L2層30の第1誘電体膜31を形成する際も、中間分離層3の表面は高温に曝される。紫外線硬化型樹脂からなる中間分離層2及び中間分離層3は紫外線による硬化工程を経ているが、スパッタ中に高温に曝されると、光重合開始剤の一部の未硬化成分や低分子成分が揮発する可能性がある。スパッタ時間が長いほど中間分離層2及び中間分離層3の表面温度が上がり、それらの成分の揮発量が増す。以下、光重合開始剤の一部の未硬化成分や低分子成分を「有機物」と記す。
L1層20及びL2層30の第1誘電体膜21、及び第1誘電体膜31は、従来は、ZrO、SiO、およびInを含む材料(ZrO-SiO-In)を用いている。従来の情報記録媒体におけるL2層30の、ZrO-SiO-Inの第1誘電体膜31を二次イオン質量分析法で定性分析したところ、ターゲット成分に含まれていない炭素が検出された。この結果から、スパッタ中に揮発した有機物が、第1誘電体膜31に混入していることが推定された。L1層20の第1誘電体膜21も同様に有機物が混入していることが推定された。
【0019】
発明者らの実験によれば、L2層30において、第1誘電体膜31をより長い時間スパッタすると、再生耐久性がより悪化した。L1層20でも同様の傾向が得られた。このことから、スパッタ時間が長いほど、その熱輻射でよりたくさんの有機物が中間分離層から揮発し、L2層30の第1誘電体膜31に混入し、再生耐久性を悪化させたと考えられる。
【0020】
本発明の実施形態においては、L0層10、L1層20、およびL2層30より選択される少なくとも一つの情報層を第1情報層とする。
第1情報層は、レーザ光6が照射される面から最も遠い位置に配置されている情報層よりも、レーザ光6が照射される面に近い位置に配置されていることが好ましく、L1層20、又はL2層30が第1情報層であることがより好ましく、少なくともL2層30が第1情報層であることが更に好ましく、L1層20およびL2層30が第1情報層であることが特に好ましい。
第1情報層は、レーザ光6が照射される面に最も近い位置に配置されていることが好ましく、少なくともL2層30が第1情報層であることが好ましい。例えば、L0層10およびL2層30が第1情報層であることが好ましく、L1層20およびL2層30が第1情報層であることがより好ましく、L0層10、L1層20およびL2層30が第1情報層であることが更に好ましい。
【0021】
情報記録媒体100において、案内溝を基板1に形成した場合、本明細書においては、レーザ光6が照射される面に近い側にある面を便宜的に「グルーブ」と呼び、レーザ光6が照射される面から遠い側にある面を便宜的に「ランド」と呼ぶ。このグルーブとランドの両方に対応する位置で記録膜に、記録密度を高くして(すなわち、マーク長を短くして)ピットを形成すれば(ランド-グルーブ記録)、1情報層あたりの容量を、例えば、83.4GBにすることができる。情報記録媒体100においては6つの情報層で情報の記録および再生が可能であるから、情報記録媒体100は500GBの容量を有するものとして提供できる。案内溝は、後述するとおり、中間分離層2および3にも形成してよい。特に、L1層20およびL2層30において、ランド-グルーブ記録を実施する場合には、中間分離層2および3に案内溝を形成することが好ましい。
【0022】
3つの情報層の実効反射率は、L0層10、L1層20およびL2層30の反射率と、L1層20およびL2層30の透過率を各々調整することにより制御できる。本明細書中では、上記のとおり、3つの情報層を積層した状態で測った各情報層の反射率を、実効反射率と定義する。特に断りがない限り、「実効」と記載していなければ、積層しないで測った反射率を指す。また、反射率Rはグルーブ部の未記録状態での溝部反射率、反射率Rはランド部の未記録状態での溝部反射率を示す。
【0023】
本実施の形態では、一例として、L0層10の実効反射率Rが3.5%、実効反射率Rが3.8%、L1層20の実効反射率Rが4.0%、実効反射率Rが4.3%、L2層30の実効反射率Rが5.8%、実効反射率Rが6.1%となるように設計した構成を説明する。
L2層30の透過率が80%、L1層20の透過率が77%である場合、L0層10は反射率Rが8.0%、反射率Rが8.5%、L1層20は反射率Rが6.0%、反射率Rが6.3%、L2層30は反射率Rが5.8%、反射率Rが6.1%となるように設計すれば、前述の実効反射率を得ることができる。ここでの透過率は記録膜32,22,12が未記録状態であるときのグルーブ部およびランド部での平均値を示している。
【0024】
ここで、再生光量について説明する。再生光量は、各層の記録時の実効反射率と再生パワーの積を求め、これを100で除すことにより(記録時の実効反射率R(%)×再生パワーPr(mW)/100)、求めることができる。
第2世代のアーカイバル・ディスクにおいては、より高い再生光量が必要とされており、ランド・アンド・グルーブ記録の500GBのアーカイバル・ディスクを作製すると、4倍速における再生光量は以下のようになる。
L0層10の再生光量:0.070(2.8%×2.5mW/100)
L1層20の再生光量:0.070(3.2%×2.2mW/100)
L2層30の再生光量:0.070(4.6%×1.6mW/100)
【0025】
以下、基板1、中間分離層2、中間分離層3、カバー層4および貼り合わせ層5の機能、材料および厚さについて説明する。
基板1の材料として、例えばポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはPMMA等の樹脂、あるいはガラスを用いることができる。基板1は透明であることが好ましいが、半透明であってもよく、特に透明性は限定されない。また、基板1の形状は特に限定されず、円盤状であってもよい。基板1は、例えば、厚さが約0.5mmであり、直径が約120mmである円盤状のものである。
基板1のL0層10側の表面には、必要に応じてレーザ光6を導くための凹凸の案内溝が形成されていてもよい。案内溝を基板1に形成した場合、前述した通り、レーザ光6が照射される面に近い側の溝(面)を「グルーブ」と呼び、レーザ光6が照射される面から遠い側の溝(面)を「ランド」と呼ぶ。溝深さ(グルーブ面とランド面の段差)は、例えば10nm以上50nm以下であってよい。ランド-グルーブ記録方式を採用し、かつ高い記録密度で記録する場合、クロストークの影響を低減するために、溝深さはより深く設計してよい。但し、溝を深くすると反射率は下がる傾向にある。クロストークを低減するとともに、反射率を維持できるよう、溝深さは20nm以上40nm以下であることが好ましい。実施の形態1ではランド-グルーブ間距離(グルーブの幅方向の中心と、当該グルーブに隣接するランドの幅方向の中心との間の距離)は、約0.225μmであるが、これに限定されるものではない。
【0026】
中間分離層2および3は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)、もしくは遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂等からなり、例えばアクリル系樹脂からなる。中間分離層2および3は、記録および再生に用いる波長λのレーザ光6に対して光吸収が小さいものであると、レーザ光6を効率よくL0層10およびL1層20に到達させることができる。中間分離層2および3は、L0層10、L1層20およびL2層30のフォーカス位置を区別するために設けられるものである。したがって、中間分離層2および3の厚さは、例えば、対物レンズの開口数(NA)とレーザ光6の波長λによって決定される焦点深度ΔZ以上としてよい。焦点の光強度の基準を無収差の場合の80%と仮定した場合、ΔZはΔZ=λ/{2(NA)}で近似できる。また、L1層20における裏焦点の影響を防ぐため、中間分離層2と中間分離層3の厚さは異なる値としてよい。
中間分離層2および3において、レーザ光6の入射側に凹凸の案内溝が形成されていてもよい。中間分離層2および3に設ける案内溝の段差、およびランド-グルーブ間距離は、基板1に設けられる案内溝に関して説明したとおりである。実施の形態1では、溝深さ(グルーブ面とランド面の段差)は30nm、ランド-グルーブ間距離は、約0.225μmとしているが、これらに限定されるものではない。
【0027】
カバー層4は、例えば、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)、もしくは遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂、または誘電体等からなる。カバー層4は、使用するレーザ光6に対して光吸収が小さいものであってよい。あるいは、カバー層4は、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、あるいはガラスを用いて形成してよい。これらの材料を使用する場合は、カバー層4は、シート状や薄板状であってよい。シート状や薄板状のカバー層4は、例えば、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)または遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を接着剤として、L2層30における第2誘電体膜33に貼り合わせることにより形成してよい。カバー層4の厚さは、例えば、上記NA=0.91で良好な記録および再生が可能な厚さである40μm~80μm程度としてよく、特に、50μm~65μm程度としてよい。
【0028】
貼り合わせ層5は、例えば、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)または遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂からなり、A面情報記録媒体101とB面情報記録媒体102を接着させている。貼り合わせ層5の透明性は特に限定されず、透明であっても、半透明であってもよい。貼り合わせ層5にはレーザ光6を遮光する膜を設けてもよい。貼り合わせ層5の厚さは5μm~80μm程度であってよく、特に20μm~50μm程度であってよい。
情報記録媒体100の厚さをBD規格の媒体と同等の厚さとする場合、中間分離層2および3ならびにカバー層4の厚さの総和は100μmに設定してよい。例えば、中間分離層2を約25μm厚、中間分離層3を約18μm厚、カバー層4を約57μm厚に設定してよい。
【0029】
本発明の適用がより好ましいL2層30が第1情報層である場合の、L2層30の構成から順に説明する。
L2層30は、中間分離層3の表面上に、少なくとも第1誘電体膜31および記録膜32がこの順に積層されることにより形成される。さらに、記録膜32の表面上に、第2誘電体膜33が積層されてもよい。
L2層30が第1情報層である場合、本実施形態にかかる第1誘電体膜31は、スパッタ中に中間分離層3から揮発した有機物(光重合開始剤の一部の未硬化成分や低分子成分)が、第1誘電体膜31に混入しても、L2層の再生耐久性を劣化させない、優れた誘電体材料である。この理由について、本発明者らは、第1誘電体膜31が特定の組成を有することにより、第1誘電体膜31に有機物(C等)が混入しても、再生パワーのレーザ光6を連続照射している間に、有機物と、第1誘電体膜31中の成分とが結合しないため、再生耐久性が低下しないと推察している。
【0030】
情報記録媒体100における情報層の再生耐久性は、予め最適なパワーのレーザ光6で記録された記録マークに、再生パワーのレーザ光6を連続照射することにより評価することができる。具体的には、100万回(100万パス)再生できる最大再生パワーとして定義される。100万パスの再生が可能か否かは、100万パス後の記録信号のd-MLSE値の悪化量で判断することができる。d-MLSE値の悪化が1パス後から1.5%以下であれば、その再生パワーで100万パス再生できたと判断してよい。最大再生パワーが高いほど再生耐久性が優れている、と判断される。ここで、d-MLSEは500GB容量のアーカイバル・ディスクの、記録信号品質の評価指標であり、Distribution Derived-Maximum Likelihood Sequence Error Estimationの略号である。
【0031】
再生耐久性が課題になることを先に述べたが、記録マークのサイズを小さくすると、再生するためのレーザ光6が記録マークに多数パス照射された場合、大きいサイズの記録マークと比較して、d-MLSE値の悪化量がより大きくなる。記録マークが小さいほど、劣化面積が記録マークを占める割合が大きくなるからである。
【0032】
L2層30が第1情報層である場合、本実施形態にかかる第1誘電体膜31は、少なくともZrと酸素とを含み、さらに、ZnおよびSnより選ばれる少なくとも一つの元素D1を含み、Zrと酸素と元素D1の原子数を合わせて100原子%とした場合、Zrを3原子%以上26原子%以下含み、元素D1を10原子%以上43原子%以下含む。
第1誘電体膜31としては、Zr-O-Zn、Zr-O-Sn、Zr-O-Zn-Sn、等を用いてよく、Zr-O-Zn-Snを用いることが好ましい。Oは酸素である。ここで、「-」は「混合」を意味する。したがって、Zr-O-Znは、Zrと酸素とZnが混合されていることを意味する。Zr鉱物中にはHfが少量含まれているので、第1誘電体膜31にHfが含まれていてもよい。
【0033】
本実施形態にかかる第1誘電体膜31は、Zrと酸素と元素D1を含むことにより、Zrと酸素がZrの酸化物を形成し、元素D1と酸素が元素D1の酸化物を形成していることが好ましい。その場合、Zrの酸化物を10モル%以上70モル%以下含み、元素D1の酸化物を30モル%以上90モル%以下含むことが好ましい。
Zrの酸化物を10モル%以上含むことにより、L2層30は優れた再生耐久性を実現できる。Zrの酸化物を70モル%より多く含むと、比抵抗値が大きくなり、パルスDCスパッタができなくなる。また、成膜速度も顕著に遅くなるため、生産性が低下する。Zrの酸化物が10モル%よりも少なくなると、再生耐久性が悪化する。
Zrの酸化物に、さらに元素D1の酸化物を30モル%以上含ませることにより、ターゲットの比抵抗値を下げ、導電性を持たせることができる。それによって、パルスDCスパッタが可能になる。高周波スパッタ法よりも成膜速度が速くなる。さらに元素D1の酸化物を40モル%以上含ませることにより、さらにターゲットの比抵抗値を下げることができ、DCスパッタが可能になる。パルスDCスパッタ法よりも成膜速度が速くなり、生産性が上がる。
【0034】
元素D1の酸化物はZnの酸化物およびSnの酸化物のうちの少なくとも一つであってよい。Znの酸化物は、導電性を持たせる機能を有する。Snの酸化物は、成膜速度を高める機能を有する。
Zrの酸化物としてはZrOを含んでよい。さらに、元素D1の酸化物としてはZnO、SnOおよびSnOより選ばれる少なくとも一つを含んでよい。Snの酸化物は、融点が高く透明な、SnOを含ませることがより好ましい。
第1誘電体膜31は、これらの酸化物から選択される2以上の酸化物の混合物から成ってよく、あるいは2以上の酸化物で形成された複合酸化物から成ってよい。例えば、ZrO-ZnOであってよい。
Zr鉱物中にはHfが少量含まれているので、第1誘電体膜31にHfの酸化物が含まれていてもよい。
【0035】
第1誘電体膜31としては、
ZrO-ZnO、ZrO-SnO、ZrO-ZnO-SnO等を用いてよく、ZrO-ZnO-SnOが好ましい。
元素D1の酸化物を70モル%(ZnOを40モル%とSnOを30モル%)含ませた場合、(ZrO30(ZnO)40(SnO30モル%、と表記される組成比になる。
本発明の実施形態にかかる第1誘電体膜31は、さらに、Si、Y、CaおよびMgより選ばれる少なくとも一つの元素D2を含んでいてもよく、Mgを含むことが好ましい。元素D2としてMgを含むことにより、後述のとおり生産効率が向上するためである。
第1誘電体膜31としては、
Zr-Y-O-Zn、Zr-Ca-O-Zn、Zr-Mg-O-Zn、
Zr-Y-O-Sn、Zr-Ca-O-Sn、Zr-Mg-O-Sn、
Zr-Y-O-Zn-Sn、Zr-Ca-O-Zn-Sn、Zr-Mg-O-Zn-Sn、
Zr-Si-O-Zn、Zr-Si-O-Sn、Zr-Si-O-Zn-Sn、
等を用いてよく、Zr-Mg-O-Zn、Zr-Mg-O-Sn、又はZr-Mg-O-Zn-Snが好ましく、Zr-Mg-O-Zn-Snがより好ましい。
【0036】
本発明の実施形態にかかる第1誘電体膜31は、さらに元素D2を含むことにより、元素D2と酸素が元素D2の酸化物を形成していることが好ましい。元素D2の酸化物は、Siの酸化物、Yの酸化物、Caの酸化物およびMgの酸化物のうちの少なくとも一つであってよい。
ZrOは1000℃付近で、低温型(単斜晶系)の結晶構造から高温型(立方晶系)の結晶構造に可逆的に相転移する。この際、体積変化を伴う。ZrOに希土類酸化物、CaO、MgO等を数%添加すると、立方晶系の結晶構造となり相転移を生じなくなる。これを安定化ジルコニアまたは部分安定化ジルコニアという。
本発明の実施形態にかかる第1誘電体膜31においても、Zrの酸化物と元素D2の酸化物が安定化ジルコニアまたは部分安定化ジルコニアを形成していることが好ましい。これにより、高パワー(高電流、高電圧)を投入して量産してもターゲットが割れにくくなる。希土類元素の酸化物である元素D2の中でもYの酸化物がより好ましいが、Ceの酸化物など、他の希土類元素の酸化物を用いてもよい。Yの酸化物としてはY、Caの酸化物としてはCaO、Mgの酸化物としてはMgOを含んでよい。
【0037】
ターゲットが、Zrの酸化物を安定化ジルコニアまたは部分安定化ジルコニアとして含有することにより、スパッタ中に高温となるターゲット表面での、相転移に伴う可逆的な体積変化を抑えることができる。生産性を上げるために、高パワーを投入してDCスパッタまたはパルスDCスパッタを繰り返しても、ターゲット表面からクラックが発生し難くなるため、ターゲットを最後まで使い切ることができる。元素D2の酸化物の中でも、Yを添加した安定化ジルコニアまたは部分安定化ジルコニアは、イオン伝導性に優れているので、DCスパッタまたはパルスDCスパッタを実施する場合はより好ましい。
【0038】
また、本発明者らの検討により、第1誘電体膜31を形成する際に、高スパッタパワーを投入してDCスパッタまたはパルスDCスパッタを実施する場合、Mgの酸化物を含むターゲットは、Yの酸化物を含むターゲット、およびCaの酸化物を含むターゲットに比べて、より高いスパッタパワーでも、ターゲット表面にクラックが発生し難いことを見出した。
そのため、第1誘電体膜31に対応したターゲット材料として、Mgの酸化物を添加した安定化ジルコニアまたは部分安定化ジルコニアを含ませることにより、生産効率が向上するため、より好ましい。
後述する第2誘電体膜33、L1層20の第1誘電体膜21、第2誘電体膜23、L0層10の第1誘電体膜11および第2誘電体膜13に、各々対応したターゲット材料においても同様に、Mgの酸化物を添加した安定化ジルコニアまたは部分安定化ジルコニアを含むことが好ましい。
【0039】
ZrOに対して、元素D2の酸化物を1モル%から10モル%の割合で添加してよい。
10%を超えると、相転移が再現する。
例えば、第1誘電体膜31が、ZrOに対してYを10モル%含有する場合、
(ZrO27.3(Y2.7(ZnO)40(SnO30モル%、と表記される組成比になる。
例えば、第1誘電体膜31が、ZrOに対してMgOを8.7モル%含有する場合、
(ZrO23(MgO)(ZnO)50(SnO25モル%、と表記される組成比になる。
あるいはSiの酸化物として、SiOを含んでよく、ZrOと、複合酸化物ZrSiOを形成してよい。安定な正方晶系の結晶構造をとり、1700℃ぐらいまで相転移は生じない。また、この複合酸化物にもわずかにHfが含まれていてもよい。
SiOは、ZrOとモル比で1:1の割合で含まれていることが好ましく、モル比で3%以上35%以下であることが好ましい。例えば、第1誘電体膜31は、(ZrO30(ZnO)40(SnO30モル%にSiOを含有する場合は、(ZrO15(SiO15(ZnO)40(SnO30モル%、と表記される組成比が好ましい。
SiOが、ZrOとモル比で1:1の割合から外れてもよく、その場合はSiOとZrOより選ばれる少なくとも一つと、ZrSiOとが存在してよい。
【0040】
第1誘電体膜31としては、
ZrO-Y-ZnO、
ZrO-CaO-ZnO、
ZrO-MgO-ZnO、
ZrO-Y-SnO
ZrO-CaO-SnO
ZrO-MgO-SnO
ZrO-Y-ZnO-SnO
ZrO-CaO-ZnO-SnO
ZrO-MgO-ZnO-SnO
ZrO-SiO-ZnO、
ZrO-SiO-SnO
ZrO-SiO-ZnO-SnO
ZrSiO-ZnO、
ZrSiO-SnO
ZrSiO-ZnO-SnO
等を用いてよい。
第1誘電体膜31は、生産効率の観点からMgOを含むことが好ましく、ZrO-MgO-ZnO、ZrO-MgO-SnO、又はZrO-MgO-ZnO-SnOを含むことがより好ましく、ZrO-MgO-ZnO-SnOを含むことが更に好ましい。
【0041】
HfはZrと化学的性質が似ているので、第1誘電体膜31のZrOの一部または全部をHfOに置き換えてもよい。HfOの相構造変化は1700℃付近であり、ZrOよりも高温相は安定である。よって、ZrOの一部または全部をHfOに置き換えることにより、ターゲットが割れにくくなることを期待できる。ただし、Hfは地殻存在度が少ないため、HfOの方がZrOよりも、かなり高価格である。
本発明の実施形態にかかる第1誘電体膜31は、さらに、GaおよびAlより選ばれる少なくとも一つの元素D3を含み、Zrと、酸素と、元素D1と、元素D2および元素D3の原子数を合わせて100原子%とした場合、元素D3を7原子%以下含んでいてもよい。元素D3としてはGaが好ましい。
【0042】
第1誘電体膜31としては、含まれる元素は、
Zr-O-Zn-Ga、Zr-O-Zn-Al、
Zr-O-Sn-Ga、Zr-O-Sn-Al、
Zr-O-Zn-Sn-Ga、Zr-O-Zn-Sn-Al、
Zr-Y-O-Zn-Ga、Zr-Y-O-Zn-Al、
Zr-Ca-O-Zn-Ga、Zr-Ca-O-Zn-Al、
Zr-Mg-O-Zn-Ga、Zr-Mg-O-Zn-Al、
Zr-Y-O-Sn-Ga、Zr-Y-O-Sn-Al
Zr-Ca-O-Sn-Ga、Zr-Ca-O-Sn-Al、
Zr-Mg-O-Sn-Ga、Zr-Mg-O-Sn-Al、
Zr-Y-O-Zn-Sn-Ga、Zr-Y-O-Zn-Sn-Al、
Zr-Ca-O-Zn-Sn-Ga、Zr-Ca-O-Zn-Sn-Al、
Zr-Mg-O-Zn-Sn-Ga、Zr-Mg-O-Zn-Sn-Al、
Zr-Si-O-Zn-Ga、Zr-Si-O-Zn-Al、
Zr-Si-O-Sn-Ga、Zr-Si-O-Sn-Al、
Zr-Si-O-Zn-Sn-Ga、Zr-Si-O-Zn-Sn-Al、
等を用いてよい。
第1誘電体膜31は、生産効率の観点からMgを含むことが好ましく、Mg及びGaを含むことがより好ましい。第1誘電体膜31は、Zr-Mg-O-Zn-Ga、Zr-Mg-O-Zn-Al、Zr-Mg-O-Sn-Ga、Zr-Mg-O-Sn-Al、Zr-Mg-O-Zn-Sn-Ga、又はZr-Mg-O-Zn-Sn-Alを含むことが好ましく、Zr-Mg-O-Zn-Sn-Gaを含むことがより好ましい。
【0043】
本発明の実施形態にかかる第1誘電体膜31は、さらに元素D3を含むことにより、元素D3と酸素が元素D3の酸化物を形成していることが好ましい。元素D3の酸化物は、Gaの酸化物およびAlの酸化物のうちの少なくとも一つであってよい。Gaの酸化物はGaであってよく、Alの酸化物はAlであってよい。
本実施形態にかかる第1誘電体膜31は、元素D3を7原子%以下含む場合、Zrの酸化物と、元素D1の酸化物と、元素D2の酸化物および元素D3の酸化物のモル数を合わせて100モル%とした場合、元素D3の酸化物を8モル%以下含む。
元素D3をZnの酸化物に添加すると、Znの酸化物の比抵抗値が下がる。すなわち、元素D3は、Znの酸化物の導電性を向上させる役割を担う。さらには系全体の導電性が向上するので、ターゲットはDCスパッタしやすくなる。成膜速度が速くなり、生産性が上がる。元素D3の酸化物は、Znの酸化物の一部を置換する形で添加してよい。
元素D3の酸化物の添加量としては少量で効果が得られ、8モル%以下が好ましい。8モル%より多いと比抵抗値は下がらなくなる。
【0044】
第1誘電体膜31としては、
ZrO-ZnO-Ga
ZrO-ZnO-Al
ZrO-SnO-Ga
ZrO-SnO-Al
ZrO-ZnO-Ga-SnO
ZrO-ZnO-Al-SnO
等を用いてよい。
【0045】
あるいは、第1誘電体膜31としては、元素D2の酸化物と混合して、
ZrO-Y-ZnO-Ga
ZrO-Y-ZnO-Al
ZrO-CaO-ZnO-Ga
ZrO-CaO-ZnO-Al
ZrO-MgO-ZnO-Ga
ZrO-MgO-ZnO-Al
ZrO-Y-SnO-Ga
ZrO-Y-SnO-Al
ZrO-CaO-SnO-Ga
ZrO-CaO-SnO-Al
ZrO-MgO-SnO-Ga
ZrO-MgO-SnO-Al
ZrO-Y-ZnO-Ga-SnO
ZrO-Y-ZnO-Al-SnO
ZrO-CaO-ZnO-Ga-SnO
ZrO-CaO-ZnO-Al-SnO
ZrO-MgO-ZnO-Ga-SnO
ZrO-MgO-ZnO-Al-SnO
ZrO-SiO-ZnO-Ga
ZrO-SiO-ZnO-Al
ZrO-SiO-SnO-Ga
ZrO-SiO-SnO-Al
ZrO-SiO-ZnO-Ga-SnO
ZrO-SiO-ZnO-Al-SnO
ZrSiO-ZnO-Ga
ZrSiO-ZnO-Al
ZrSiO-SnO-Ga
ZrSiO-SnO-Al
ZrSiO-ZnO-Ga-SnO
ZrSiO-ZnO-Al-SnO
ZrSiO-SiO-ZnO-Ga-SnO
ZrSiO-ZrO-ZnO-Ga-SnO
等を用いてよい。
第1誘電体膜31は、生産効率の観点からMgOを含むことが好ましく、MgO及びGaを含むことが好ましい。第1誘電体膜31は、ZrO-MgO-ZnO-Ga、ZrO-MgO-ZnO-Al、ZrO-MgO-SnO-Ga、ZrO-MgO-SnO-Al、ZrO-MgO-ZnO-Ga-SnO、又はZrO-MgO-ZnO-Al-SnOを含むことが好ましく、ZrO-MgO-ZnO-Ga-SnOを含むことがより好ましい。
【0046】
例えば、第1誘電体膜31が、Gaを2モル%含有する場合、
(ZrO30(ZnO)38(Ga(SnO30モル%、あるいは、
(ZrO27.3(Y2.7(ZnO)38(Ga(SnO30モル%、
と表記される組成比になる。
例えば、第1誘電体膜31が、Gaを1.1モル%含有する場合、
(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(Ga1.1(SnO25モル%、
と表記される組成比を用いてよい。
【0047】
第1誘電体膜31の厚さは、例えば、5nm以上40nm以下であってよい。より好ましくは8nm以上30nm以下である。5nm未満であると、保護機能が低下し、記録膜32への水分の侵入を抑制できないことがある。40nmを超えると、L2層30の反射率が低下することがある。また、第1誘電体膜31の厚さが40nmを超えると、第1誘電体膜31の成膜に要する時間(スパッタ時間)が長くなり生産性が低下することがある。
【0048】
第1誘電体膜31の組成は、例えば、X線マイクロアナライザー(XMA)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)、EDS(エネルギー分散型X線分析)、またはラザフォード後方散乱分析法(RBS)で分析することができる。後述する第1誘電体膜21、11、記録膜32、22、12、および第2誘電体膜33、23、13も、同様にこれらの手法で含まれる元素、およびその組成を分析することができる。
【0049】
例えばXMAの場合、本発明の実施形態にかかる第1誘電体膜31を分析すると、元素ごとの組成を分析することができる。例えば、下記(a)組成(モル%)の第1誘電体膜31をXMAで分析すると、おおよそ(b)組成(原子%)が得られる。
【0050】
(ZrO30(ZnO)40(SnO30モル% -(a)、
Zr11.5Zn15.4Sn11.561.6原子% -(b)。
【0051】
あるいは(c)組成(モル%)を分析すると、おおよそ(d)組成(原子%)が得られる。
【0052】
(ZrO27.3(Y2.7(ZnO)38(Ga(SnO30モル% -(c)、
Zr10.12.0Zn14.0Ga1.5Sn11.161.3原子% -(d)。
あるいは(r)組成(モル%)を分析すると、おおよそ(s)組成(原子%)が得られる。
(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(Ga1.1(SnO25モル% -(r)、
Zr9.2Mg0.8Zn19.5Ga0.9Sn10。059.6原子% -(s)。
Zrを含む場合、Hfも検出される場合がある。
【0053】
アモルファス膜の場合、形成されている酸化物を特定することは困難なので、元素ごとの組成となる。第1誘電体膜31の膜中で、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成していることも考えられ、(b)、(d)および(s)の計算値と実際の分析値が合わない場合もある。
【0054】
上述したように、中間分離層3の表面に第1誘電体膜31をスパッタで形成すると、スパッタの輻射熱で中間分離層3から有機物が揮発する場合がある。この場合、第1誘電体膜31の中間分離層3との境界付近には、有機物が混入してしまう。これは、二次イオン質量分析法により、膜厚方向に元素分析したところ、炭素が検出されたことにより、検証することができる。
本発明の実施形態にかかる第1誘電体膜31は、光学的な位相差を調節してグルーブとランドの信号振幅を制御する働き、剛性を調節して記録マークの膨らみを制御する働き、L2層30の反射率や透過率を制御する働き、を有する。また、第1誘電体膜31は、記録膜32への水分の侵入を抑制する働き、および記録膜32中の酸素が外部へ逃避するのを抑制する働きを有する。
【0055】
ターゲットの導電性は、従来のInを使わず、元素D1の酸化物、必要に応じて元素D3の酸化物を使用して確保した。ターゲットの比抵抗値は、1Ω・cm以下であることが好ましい。これは後述する第1誘電体膜21、11についても同様である。
第1誘電体膜31は、例えば、スパッタにより形成されるナノメータオーダの薄膜である。そのため、第1誘電体膜31に含まれる酸化物は、スパッタ中の酸素および/または金属の欠損、ならびに不可避的な不純物の混入により、厳密に言えば、化学量論組成とならないことがある。この理由により、本実施の形態および他の実施の形態において、第1誘電体膜31に含まれる酸化物は必ずしも化学量論組成のものでなくてもよい。また、本明細書において化学量論組成で表された材料には、酸素および/または金属の欠損、ならびに不純物の混入等により、厳密に言えば化学量論組成のものではないものも含まれることとする。これは後述する第1誘電体膜21、11についても同様である。
【0056】
第1誘電体膜31は、Zrと酸素と元素D1から実質的に成っていてよい。
ここで「実質的に」という用語は、第1誘電体膜31が例えばスパッタにより形成される場合には、スパッタ雰囲気に存在する希ガス(Ar、Kr、Xe)、水分、有機物(C)、空気、スパッタ室に配置された冶具およびターゲットに含まれる不純物に由来する他の元素が不可避に含まれる場合があることを考慮して使用されている。これら不可避の成分は第1誘電体膜31に含まれる全原子を100原子%とした場合、10原子%を上限として含まれていてもよい。これは、元素D2、元素D3を含む場合も適用される。また、後述する第1誘電体膜21、11に関して、「実質的に」という用語を用いる場合に同様に適用される。
【0057】
L2層30が第1情報層である場合、本発明の実施形態にかかる記録膜32は、少なくともWと、Cuと、Mnと、酸素とを含み、さらに、Zn、Nb、Mo、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素Mを含む。
記録膜32は、少なくともWと、Cuと、Mnと、酸素とを含むので、例えば、レーザ光6の照射によって酸素(O)が分離し、また、O同士が結合して、記録マークとなる膨張部を形成する。この膨張部の形成は非可逆的な変化であるため、この記録膜32を備えたL2層は追記型のものとなる。
記録膜32において、W、CuおよびMnは、各々W-O、Cu-O、Mn-Oの酸化物の形態で存在していてよい。
【0058】
記録膜32中のW-Oは透明な酸化物で、レーザ光6が記録膜32に照射された際に、酸素を発生して記録膜32を膨張させる機能を有する。また、Wを含むターゲットを用いて記録膜32をDCスパッタで形成する際に、ターゲット中のWは安定的にDCスパッタを持続させる機能を有する。記録膜32中にWを含有しなければ、記録膜32が膨張せず、記録マークの形成が困難になる。Wが含まれるターゲットを用い、酸素を導入しながらスパッタにより記録膜32を形成すると、Wは、記録膜32中ではW-Oとなるか、あるいは他の元素と結合して少なくとも一部が複合酸化物となる。
記録膜32中のCu-Oは光吸収性を有する酸化物であり、記録膜32にレーザ光6を吸収させる役割を担う。また、ターゲット中のCuはターゲットに導電性を付与し、記録膜32をDCスパッタで形成する際に、安定的にDCスパッタを持続させる機能を有する。記録膜32にCuを含有しないターゲットを用いると、DCスパッタが非常に困難になる。記録膜32にCuが含まれるターゲットを用い、酸素を導入しながらスパッタにより記録膜32を形成すると、Cuは、記録膜32中ではCu-Oとなるか、あるいは他の元素と結合して少なくとも一部が複合酸化物になる。
【0059】
記録膜32中のMn-Oは光吸収性を有する酸化物であり、レーザ光6が記録膜32に照射された際に、酸素を発生して記録膜32を膨張させる機能を有する。記録膜32中のMn-Oの含有量が多いほど変調度は大きくなり、信号品質は向上する。記録膜32にMn-Oを含有しなければ、品質のよい記録マークは形成できない。記録膜32にMn-Oが含まれるターゲットを用い、酸素を導入しながらスパッタにより記録膜32を形成すると、Mn-Oは記録膜32中でそのまま存在するか、あるいは他の元素と結合して少なくとも一部が複合酸化物となる。
記録膜32は、さらに、Zn、Nb、Mo、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素Mを含むことにより、大きな変調度が得られる。
【0060】
記録膜32において、Znは、Zn-Oの酸化物の形態で存在していてよい。
記録膜32中のZn-Oは導電性を有する酸化物であり、これを含むターゲットを用いてDCスパッタにより記録膜32を形成すると、DCスパッタの持続性がより安定する。また、Zn-Oの量を調整することで、記録膜32の透過率や光吸収率を調整することができる。ただし、ターゲット中にZn-Oが含まれていなくてもDCスパッタは可能である。Zn-Oが含まれるターゲットを用いて、酸素を導入しながらスパッタにより記録膜32を形成すると、Zn-Oは記録膜32中でそのまま存在するか、あるいは他の元素と結合して少なくとも一部が複合酸化物となる。
記録膜32において、Nb、Mo、Ta、およびTiは、Nb-O、Mo-O、Ta-OおよびTi-Oの酸化物の形態で存在していてよい。Nb、Mo、Ta、およびTiはそれぞれ、酸化数の異なる複数の酸化物を形成し得る。一般に酸素の多い酸化物は透明である。例えば、NbO(ニオブ2価)とNbO(ニオブ4価)は黒色であるが、Nb(ニオブ5価)は無色である。マグネリ相の酸化物Nb3n+18n-2も存在する。MoO(モリブデン4価)は黒色であるが、MoO(モリブデン6価)は無色である。MoOを還元して得られる青色のマグネリ相の酸化物も存在する。TaO(タンタル4価)は黒色であるが、Ta(タンタル5価)は無色である。TiO(チタン2価)は黒色、Ti(チタン3価)は黒紫色であるが、TiO(チタン4価)は無色である。
【0061】
さらに本発明の実施形態にかかる記録膜32は、W、Cu、Mn、および元素Mが、
下記の式(1):
CuMn100-x-y-z(原子%) (1)
(前記式(1)中、
15≦x<60、0<y≦30、10≦z≦40、且つ、10≦100-x-y-z≦50)、
【0062】
を満たすことが好ましい。
【0063】
W、Cu、Mn、および元素Mが上記式を満たす記録膜32は、L2層30の記録再生特性を良好にする。
式(1)中、x(W量)は、15以上60以下であることが好ましい。xがこの範囲内にあれば記録膜32を安定なDCスパッタにより形成でき、良好な記録再生特性を有するL2層が得られる。15≦xであると、DCスパッタを良好に実施できる。また、記録マークが容易に形成され、良好な記録再生特性が得られる。
xが15未満であると、DCスパッタを実施する場合に、スパッタが不安定となることがあり、異常放電が生じやすくなる。また、記録膜32が膨張しにくくなり、記録マークの形成が困難になる。xが60を超えると、L2層30の記録に大きなレーザパワーが必要となることがある。
【0064】
y(Cu量)は0<y≦30を満たす。記録膜32の場合、5≦y≦25がより好ましい。yを25以下とすることにより、記録膜32の光吸収率を調整し、L2層の記録感度を最適化し、規格を満たす再生パワーで良好な再生耐久性を得ることができる。yを0より大にすることにより、記録膜32のパルスDCスパッタが実施しやすくなる。さらに5以上にすることにより、記録膜32のDCスパッタが実施しやすくなる。yが30を超えると、記録膜32の光吸収が増え、記録感度が良くなり記録パワーが下がる。同時に最大再生パワーも下がるため、再生耐久性が劣ることになる。
z(Mn量)は10≦z≦40を満たす。L2層30はレーザ光6が照射される面に最も近い位置にあるので、光学的には高い透過率を確保することが優先される。よって、L2層30の記録膜32は、L0層10の記録膜12およびL1層20の記録膜22よりも、zの値が小さい組成比で形成してよい。記録膜32の場合、10≦z≦25がより好ましい。この範囲であれば、L2層30の光吸収率を抑え、高い透過率を確保し、再生パワーを上げることができる。
【0065】
100-x-y-z(元素M量)は10≦100-x-y-z≦50を満たす。10≦100-x-y-z≦50であると、L2層30の記録再生特性が良好なものとなる。また、10≦100-x-y-z≦50であると、記録膜32の屈折率と消衰係数が最適化されて、L2層30の透過率を上げるとともに、吸収率を小さくして再生パワーを上げることができる。元素Mは酸素をより多く分離したり、結合させたり、記録膜32のレーザ光6の照射部の、膨張を促進する機能も有する。100-x-y-zが50より大きいと、元素Mが多くなりすぎて、記録膜32の記録マークが過度に膨張して、記録マークが隣接トラックの記録マークの振幅を小さくしてしまう可能性がある。その結果、L2層30の記録再生特性が悪化する。また、100-x-y-zが10以上であれば、元素Mの割合が十分となり、記録膜32の記録マークが膨張しやすくなり、記録再生特性が向上する。
また、元素MはTaとZnより選ばれる少なくとも一つであってよい。
TaはTa-Oとして存在した場合、元素Mの中では記録マークを膨張させる機能に最も優れた、より好ましい材料である。
【0066】
Znについては、Znを含ませることにより、記録膜32をDCスパッタで形成する際にスパッタの安定性をさらに向上させることができる。そのため、スパッタパワーを上げたり、Arガスを少なくしたりしても、異常放電が発生しにくくなり、生産性が向上する。あるいは、L2層30の透過率を高くする機能も有する。
元素MがTaおよびZnの場合、TaおよびZnの原子数を合わせて、10≦100-x-y-z≦50であってよい。
【0067】
記録膜32の膜厚は、15nm以上50nm以下としてよく、特に25nm以上45nm以下としてよい。15nmより薄いと記録膜32が十分に膨張せず、良好な記録マークが形成されないので、d-MLSEが悪化する。50nmを超えると、記録感度が良くなって記録パワーが小さくなり、その分再生パワーが低下して、再生光量が小さくなることがある。また、記録膜32の厚さが50nmを超えると、記録膜32の成膜に要する時間(スパッタ時間)が長くなり生産性が低下することがある。
【0068】
記録膜32の組成は、例えば、
W-Cu-Mn-Zn-O(O:酸素)、
W-Cu-Mn-Nb-O、
W-Cu-Mn-Nb-Zn-O、
W-Cu-Mn-Nb-Ta-O、
W-Cu-Mn-Nb-Ta-Zn-O、
W-Cu-Mn-Mo-O、
W-Cu-Mn-Mo-Zn-O、
W-Cu-Mn-Mo-Ta-O、
W-Cu-Mn-Mo-Ta-Zn-O、
W-Cu-Mn-Ta-O、
W-Cu-Mn-Ta-Zn-O、
W-Cu-Mn-Ti-O、
W-Cu-Mn-Ti-Zn-O、
W-Cu-Mn-Ti-Ta-O、
W-Cu-Mn-Ti-Ta-Zn-O、
等であってよい。
【0069】
記録膜32中のWは、透明性の高いWOの形態で存在していてよい。記録膜32には、金属W、WO、WOとWOの中間の酸化物(W1849、W2058、W50148、W40119など)、またはマグネリ相(W3nー1)が含まれていてもよい。
記録膜32中のCuは、CuOまたはCuOの形態で存在していてよい。記録膜32には、金属Cuが含まれていてもよい。
記録膜32の膜中のMnは、MnO、Mn、Mn、およびMnOから選ばれる少なくとも一つの酸化物の形態で存在していてよい。記録膜32には、金属Mnが含まれていてもよい。
記録膜32中のNbは、無色のNbまたはNbOの形態で存在していてよい。NbとNbOが混在していてもよい。記録膜32には、NbO、NbO、またはマグネリ相(Nb3n+18n-2)が含まれていてもよい。記録膜32には、金属Nbが含まれていてもよい。
記録膜32中のMoは、無色のMoOの形態で存在していてよい。記録膜32には、MoO、MoOとMoOの中間の酸化物(Mo、Mo11、Mo14、Mo23、Mo26、Mo1747など)、またはマグネリ相(Mo3n-2)が含まれていてもよい。記録膜32には、金属Moが含まれていてもよい。
記録膜32中のTaは、無色のTaの形態で存在していてよい。記録膜32には、TaOが含まれていてもよい。記録膜32には、金属Taが含まれていてもよい。
記録膜32中のTiは、無色のTiOまたはTiOの形態で存在していてよい。TiOとTiOが混在していてもよい。記録膜32には、TiO、Ti、Ti、またはマグネリ相(Ti2n-1)が含まれていてもよい。記録膜32には、金属Tiが含まれていてもよい。
【0070】
記録膜32中には、W、Cu、Mn、および元素Mから選択される2以上の金属を含む複合酸化物が存在してもよい。
【0071】
記録膜32の組成が、例えば、W-Cu-Mn-Zn-Oである場合、記録膜32の系は、WO-CuO-MnO-ZnO、WO-CuO-Mn-ZnO、
WO-CuO-Mn-ZnO、WO-CuO-MnO-ZnO、
WO-CuO-MnO-ZnO、WO-CuO-Mn-ZnO、
WO-CuO-Mn-ZnO、およびWO-CuO-MnO-ZnO、
等であってよい。あるいは酸化タングステンのマグネリ相を含んでもよい。これらの系において、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成してよい。
【0072】
記録膜32の組成が、例えば、W-Cu-Mn-Nb-Oである場合、記録膜32の系は、WO-CuO-MnO-Nb、WO-CuO-Mn-Nb
WO-CuO-Mn-Nb、WO-CuO-MnO-Nb
WO-CuO-MnO-Nb、WO-CuO-Mn-Nb
WO-CuO-Mn-Nb、WO-CuO-MnO-Nb
WO-CuO-MnO-NbO、WO-CuO-Mn-NbO、
WO-CuO-Mn-NbO、WO-CuO-MnO-NbO、
WO-CuO-MnO-NbO、WO-CuO-Mn-NbO、
WO-CuO-Mn-NbO、WO-CuO-MnO-NbO、
WO-CuO-MnO-NbO、WO-CuO-Mn-NbO
WO-CuO-Mn-NbO、WO-CuO-MnO-NbO
WO-CuO-MnO-NbO、WO-CuO-Mn-NbO
WO-CuO-Mn-NbO、WO-CuO-MnO-NbO
等であってよい。ここに示した系において、Nbに代えてNbOが存在していてもよく、NbおよびNbOが混在していてもよい。あるいは酸化タングステン、酸化ニオブのマグネリ相を含んでもよい。これらの系において、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成してよい。さらに、ここに示した系において、ZnOを含んでもよい。
【0073】
記録膜32の組成が、例えば、W-Cu-Mn-Mo-Oである場合、記録膜32の系は、WO-CuO-MnO-MoO、WO-CuO-Mn-MoO
WO-CuO-Mn-MoO、WO-CuO-MnO-MoO
WO-CuO-MnO-MoO、WO-CuO-Mn-MoO
WO-CuO-Mn-MoO、WO-CuO-MnO-MoO
WO-CuO-MnO-MoO、WO-CuO-Mn-MoO
WO-CuO-Mn-MoO、WO-CuO-MnO-MoO
WO-CuO-MnO-MoO、WO-CuO-Mn-MoO
WO-CuO-Mn-MoO、WO-CuO-MnO-MoO
等であってよい。あるいは酸化タングステン、酸化モリブデンのマグネリ相を含んでもよい。これらの系において、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成してよい。さらに、ここに示した系において、ZnOを含んでもよい。
【0074】
記録膜32の組成が、例えば、W-Cu-Mn-Ta-Oである場合、記録膜32の系は、WO-CuO-MnO-Ta、WO-CuO-Mn-Ta
WO-CuO-Mn-Ta、WO-CuO-MnO-Ta
WO-CuO-MnO-Ta、WO-CuO-Mn-Ta
WO-CuO-Mn-Ta、WO-CuO-MnO-Ta
WO-CuO-MnO-TaO、WO-CuO-Mn-TaO
WO-CuO-Mn-TaO、WO-CuO-MnO-TaO
WO-CuO-MnO-TaO、WO-CuO-Mn-TaO
WO-CuO-Mn-TaO、およびWO-CuO-MnO-TaO
等であってよい。あるいは酸化タングステンのマグネリ相を含んでもよい。これらの系において、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成してよい。
【0075】
記録膜32の組成が、例えば、W-Cu-Mn-Ti-Oである場合、記録膜32の系は、WO-CuO-MnO-TiO、WO-CuO-Mn-TiO
WO-CuO-Mn-TiO、WO-CuO-MnO-TiO
WO-CuO-MnO-TiO、WO-CuO-Mn-TiO
WO-CuO-Mn-TiO、WO-CuO-MnO-TiO
等であってよい。TiOに代えてTiOが存在していてもよく、TiOおよびTiOが混在していてもよい。あるいは酸化タングステン、酸化チタンのマグネリ相を含んでもよい。これらの系において、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成してよい。さらに、ここに示した系において、ZnOを含んでもよい。
【0076】
記録膜32の組成が、例えば、W-Cu-Mn-Ta-Zn-Oである場合、記録膜32の系は、WO-CuO-MnO-Ta-ZnO、WO-CuO-Mn-Ta-ZnO、WO-CuO-Mn-Ta-ZnO、WO-CuO-MnO-Ta-ZnO、WO-CuO-MnO-Ta-ZnO、WO-CuO-Mn-Ta-ZnO、WO-CuO-Mn-Ta-ZnO、WO-CuO-MnO-Ta-ZnO、
WO-CuO-MnO-TaO-ZnO、WO-CuO-Mn-TaO-ZnO、WO-CuO-Mn-TaO-ZnO、WO-CuO-MnO-TaO-ZnO、WO-CuO-MnO-TaO-ZnO、WO-CuO-Mn-TaO-ZnO、WO-CuO-Mn-TaO-ZnO、WO-CuO-MnO-TaO-ZnO、
等であってよい。あるいは酸化タングステンのマグネリ相を含んでもよい。これらの系において、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成してよい。
【0077】
このように、記録膜32が複数の酸化物を含み、酸素以外の元素であるW、Cu、Mn、およびMの組成が、下記の式(1):
CuMn100-x-y-z(原子%) (1)
(式中、x、yおよびzが、15≦x≦60、0<y≦30、10≦z≦40、且つ、10≦100-x-y-z≦50)
を満たせば、大容量(例えば、1ディスクあたり500GB)の情報の記録再生に必要なS/Nを確保できる再生光量が得られる。
記録膜32に含まれる酸素の割合は、金属元素と酸素の原子数の合計を100原子%としたときに、60原子%以上80原子%以下であってよい。酸素の割合が60原子%未満であると、記録感度が良くなって記録パワーが小さくなり、その分再生パワーが低下して、再生光量が小さくなることがある。酸素の割合が80原子%を超えると、記録感度が悪くなりすぎて、記録に大きなパワーが必要になり、高速記録も困難になる。
【0078】
記録膜32は、W、Cu、Mn、酸素、および元素Mから実質的になっていてよい。ここで、「実質的に」という用語は、記録膜32が例えばスパッタにより形成される場合には、スパッタ雰囲気に存在する希ガス(Ar、Kr、Xe)、水分、有機物(C)、空気、スパッタ室に配置された冶具およびターゲットに含まれる不純物に由来する他の元素が不可避に含まれる場合があることを考慮して使用されている。これら不可避の成分は記録膜32に含まれる全原子を100原子%とした場合、10原子%を上限として含まれていてもよい。これは、後述する記録膜22、12に関して、「実質的に」という用語を用いる場合に同様に適用される。
記録膜32は、例えばスパッタにより形成されるナノメータオーダの薄膜である。そのため、記録膜32に含まれる酸化物は、スパッタ中の酸素および/または金属の欠損、ならびに不可避的な不純物の混入により、厳密に言えば、化学量論組成とならないことがある。この理由により、本実施の形態および他の実施の形態において、記録膜32に含まれる酸化物は必ずしも化学量論組成のものでなくてもよい。また、本明細書において化学量論組成で表された材料には、酸素および/または金属の欠損、ならびに不純物の混入等により、厳密に言えば化学量論組成のものではないものも含まれることとする。また、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成してよい。これは後述する記録膜22、12についても同様である。
【0079】
本実施形態にかかる第2誘電体膜33は、記録膜32のレーザ光6が照射される面側に配置されてよい。
L2層30が第1情報層である場合、第1情報層が、レーザ光6が照射される面から遠い方から近い方に向かって、第1誘電体膜31、記録膜32、および第2誘電体膜33をこの順に含み、第2誘電体膜33が、少なくともZrと酸素とを含み、さらに、ZnおよびSnより選ばれる少なくとも一つの元素D1を含み、Zrと、酸素と、前記元素D1の原子数とを合わせて100原子%とした場合、Zrを3原子%以上26原子%以下含み、前記元素D1を10原子%以上43原子%以下含むことが好ましい。
【0080】
本実施形態にかかる第2誘電体膜33としては、第1誘電体膜31と同様に、Zr-O-Zn、Zr-O-Sn、Zr-O-Zn-Sn、等を用いてよく、Zr-O-Zn-Snを用いることが好ましい。Oは酸素である。ここで、「-」は「混合」を意味する。したがって、Zr-O-Znは、Zrと酸素とZnが混合されていることを意味する。Zr鉱物中にはHfが少量含まれているので、第2誘電体膜33にHfが含まれていてもよい。
第2誘電体膜33は、Zrと酸素と元素D1とを含むことにより、Zrと酸素がZrの酸化物を形成し、元素D1と酸素が元素D1の酸化物を形成していることが好ましい。その場合、Zrの酸化物を10モル%以上70モル%以下含み、元素D1の酸化物を30モル%以上90モル%以下含むことが好ましい。
Zrの酸化物を10モル%以上含むことにより、L2層30は優れた再生耐久性を実現できる。Zrの酸化物を70モル%より多く含むと、比抵抗値が大きくなり、パルスDCスパッタができなくなる。また、成膜速度も顕著に遅くなるため、生産性が低下する。Zrの酸化物が10モル%よりも少なくなると、再生耐久性が悪化する。
Zrの酸化物に、さらに元素D1の酸化物を30モル%以上含ませることにより、ターゲットの比抵抗値を下げ、導電性を持たせることができる。それによって、パルスDCスパッタが可能になる。高周波スパッタ法よりも成膜速度が速くなる。さらに元素D1の酸化物を40モル%以上含ませることにより、さらにターゲットの比抵抗値を下げることができ、DCスパッタが可能になる。パルスDCスパッタ法よりも成膜速度が速くなり、生産性が上がる。
【0081】
元素D1の酸化物はZnの酸化物およびSnの酸化物のうちの少なくとも一つであってよい。Znの酸化物は、導電性を持たせる機能を有する。Snの酸化物は、成膜速度を高める機能を有する。
Zrの酸化物としてはZrOを含んでよい。さらに、元素D1の酸化物としてはZnO、SnOおよびSnOより選ばれる少なくとも一つを含んでよい。Snの酸化物は、融点が高く透明な、SnOを含ませることがより好ましい。
第2誘電体膜33は、これらの酸化物から選択される2以上の酸化物の混合物から成ってよく、あるいは2以上の酸化物で形成された複合酸化物から成ってよい。例えば、ZrO-ZnOであってよい。
Zr鉱物中にはHfが少量含まれているので、第2誘電体膜33は、Hfの酸化物を含んでいてもよい。
【0082】
第2誘電体膜33としては、第1誘電体膜31と同様、
ZrO-ZnO、ZrO-SnO、ZrO-ZnO-SnO、等を用いてよい。
元素D1の酸化物を70モル%(ZnOを40モル%とSnOを30モル%)含ませた場合、(ZrO30(ZnO)40(SnO30モル%、と表記される組成比になる。
第2誘電体膜33は、さらに、Si、Y、CaおよびMgより選ばれる少なくとも一つの元素D2を含んでいてもよい。
【0083】
第2誘電体膜33としては、
Zr-Y-O-Zn、Zr-Ca-O-Zn、Zr-Mg-O-Zn、
Zr-Y-O-Sn、Zr-Ca-O-Sn、Zr-Mg-O-Sn、
Zr-Y-O-Zn-Sn、Zr-Ca-O-Zn-Sn、Zr-Mg-O-Zn-Sn、
Zr-Si-O-Zn、Zr-Si-O-Sn、Zr-Si-O-Zn-Sn、
等を用いてよい。
第2誘電体膜33は、生産効率の観点からMgを含むことが好ましい。第2誘電体膜33は、Zr-Mg-O-Zn、Zr-Mg-O-Sn、又はZr-Mg-O-Zn-Snを含むことが好ましく、Zr-Mg-O-Zn-Snを含むことがより好ましい。
【0084】
第2誘電体膜33は、さらに元素D2を含むことにより、元素D2と酸素が元素D2の酸化物を形成していることが好ましい。元素D2の酸化物は、Siの酸化物、Yの酸化物、Caの酸化物およびMgの酸化物のうちの少なくとも一つであってよい。
第2誘電体膜33においても、Zrの酸化物と元素D2の酸化物が安定化ジルコニアまたは部分安定化ジルコニアを形成していることが好ましい。これにより、高パワーを投入して量産してもターゲットが割れにくくなる。希土類元素の酸化物の中でもYの酸化物がより好ましいが、Ceの酸化物など、他の希土類元素の酸化物を用いてもよい。Yの酸化物としてはY、Caの酸化物としてはCaO、Mgの酸化物としてはMgOを含んでよい。
ターゲットが、Zrの酸化物を安定化ジルコニアまたは部分安定化ジルコニアとして含有することにより、スパッタ中に高温となるターゲット表面での、相転移に伴う可逆的な体積変化を抑えることができる。生産性を上げるために、高パワーを投入してDCスパッタまたはパルスDCスパッタを繰り返しても、ターゲット表面からクラックが発生し難くなるため、ターゲットを最後まで使い切ることができる。元素D2の酸化物の中でも、Yを添加した安定化ジルコニアまたは部分安定化ジルコニアは、イオン伝導性に優れているので、DCスパッタまたはパルスDCスパッタを実施する場合はより好ましい。
また、生産効率の観点から、Mgの酸化物を添加した安定化ジルコニアまたは部分安定化ジルコニアを含むことが好ましい。
【0085】
第2誘電体膜33には、ZrOに対して、元素D2の酸化物を1モル%から10モル%の割合で添加してよい。例えば、第2誘電体膜33が、ZrOに対してYを10モル%含有する場合、(ZrO27.3(Y2.7(ZnO)40(SnO30モル%、と表記される組成比になる。
例えば、第2誘電体膜33が、ZrOに対してMgOを8.7モル%含有する場合、(ZrO23(MgO)(ZnO)50(SnO25モル%、と表記される組成比になる。
【0086】
第2誘電体膜33としては、
ZrO-Y-ZnO、
ZrO-CaO-ZnO、
ZrO-MgO-ZnO、
ZrO-Y-SnO
ZrO-CaO-SnO
ZrO-MgO-SnO
ZrO-Y-ZnO-SnO
ZrO-CaO-ZnO-SnO
ZrO-MgO-ZnO-SnO
ZrO-SiO-ZnO、
ZrO-SiO-SnO
ZrO-SiO-ZnO-SnO
ZrSiO-ZnO、
ZrSiO-SnO
ZrSiO-ZnO-SnO
等を用いてよい。
第2誘電体膜33は、生産効率の観点からMgOを含むことが好ましい、第2誘電体膜33は、ZrO-MgO-ZnO、ZrO-MgO-SnO、又はZrO-MgO-ZnO-SnOを含むことがより好ましく、ZrO-MgO-ZnO-SnOを含むことがより好ましい。
【0087】
HfはZrと化学的性質が似ているので、第2誘電体膜33のZrOの一部または全部をHfOに置き換えてもよい。HfOについては第1誘電体膜31において説明したので、省略する。
第2誘電体膜33は、さらに、GaおよびAlより選ばれる少なくとも一つの元素D3を含み、Zrと、酸素と、元素D1と、元素D2および元素D3の原子数を合わせて100原子%とした場合、元素D3を7原子%以下含んでいてもよい。
【0088】
第2誘電体膜33としては、含まれる元素は、
Zr-O-Zn-Ga、Zr-O-Zn-Al、
Zr-O-Sn-Ga、Zr-O-Sn-Al、
Zr-O-Zn-Sn-Ga、Zr-O-Zn-Sn-Al、
Zr-Y-O-Zn-Ga、Zr-Y-O-Zn-Al、
Zr-Ca-O-Zn-Ga、Zr-Ca-O-Zn-Al、
Zr-Mg-O-Zn-Ga、Zr-Mg-O-Zn-Al、
Zr-Y-O-Sn-Ga、Zr-Y-O-Sn-Al
Zr-Ca-O-Sn-Ga、Zr-Ca-O-Sn-Al、
Zr-Mg-O-Sn-Ga、Zr-Mg-O-Sn-Al、
Zr-Y-O-Zn-Sn-Ga、Zr-Y-O-Zn-Sn-Al、
Zr-Ca-O-Zn-Sn-Ga、Zr-Ca-O-Zn-Sn-Al、
Zr-Mg-O-Zn-Sn-Ga、Zr-Mg-O-Zn-Sn-Al、
Zr-Si-O-Zn-Ga、Zr-Si-O-Zn-Al、
Zr-Si-O-Sn-Ga、Zr-Si-O-Sn-Al、
Zr-Si-O-Zn-Sn-Ga、Zr-Si-O-Zn-Sn-Al
等を用いてよい。
第2誘電体膜33は、生産効率の観点からMgを含むことが好ましく、MgとGaを含むことがより好ましい。第2誘電体膜33は、Zr-Mg-O-Zn-Ga、Zr-Mg-O-Zn-Al、Zr-Mg-O-Sn-Ga、Zr-Mg-O-Sn-Al、Zr-Mg-O-Zn-Sn-Ga、又はZr-Mg-O-Zn-Sn-Alを含むことが好ましく、Zr-Mg-O-Zn-Sn-Gaを含むことがより好ましい。
【0089】
本発明の実施形態にかかる第2誘電体膜33は、さらに元素D3を含むことにより、元素D3と酸素が元素D3の酸化物を形成していることが好ましい。元素D3の酸化物は、Gaの酸化物およびAlの酸化物のうちの少なくとも一つであってよい。Gaの酸化物はGaであってよく、Alの酸化物はAlであってよい。
第2誘電体膜33は、元素D3を7原子%以下含む場合、Zrの酸化物と、元素D1の酸化物と、元素D2の酸化物および元素D3の酸化物のモル数を合わせて100モル%とした場合、元素D3の酸化物を8モル%以下含む。
元素D3をZnの酸化物に添加すると、Znの酸化物の比抵抗値が下がる。すなわち、元素D3は、Znの酸化物の導電性を向上させる役割を担う。さらには系全体の導電性が向上するので、ターゲットはDCスパッタしやすくなる。成膜速度が速くなり、生産性が上がる。Znの酸化物の一部を置換する形で添加してよい。
元素D3の酸化物の添加量としては少量で効果が得られ、8モル%以下が好ましい。8モル%より多いと比抵抗値は下がらなくなる。
【0090】
第2誘電体膜33としては、
ZrO-ZnO-Ga
ZrO-ZnO-Al
ZrO-SnO-Ga
ZrO-SnO-Al
ZrO-ZnO-Ga-SnO
ZrO-ZnO-Al-SnO
等を用いてよい。
【0091】
あるいは、第2誘電体膜33としては、元素D2の酸化物と混合して、
ZrO-Y-ZnO-Ga
ZrO-Y-ZnO-Al
ZrO-CaO-ZnO-Ga
ZrO-CaO-ZnO-Al
ZrO-MgO-ZnO-Ga
ZrO-MgO-ZnO-Al
ZrO-Y-SnO-Ga
ZrO-Y-SnO-Al
ZrO-CaO-SnO-Ga
ZrO-CaO-SnO-Al
ZrO-MgO-SnO-Ga
ZrO-MgO-SnO-Al
ZrO-Y-ZnO-Ga-SnO
ZrO-Y-ZnO-Al-SnO
ZrO-CaO-ZnO-Ga-SnO
ZrO-CaO-ZnO-Al-SnO
ZrO-MgO-ZnO-Ga-SnO
ZrO-MgO-ZnO-Al-SnO
ZrO-SiO-ZnO-Ga
ZrO-SiO-ZnO-Al
ZrO-SiO-SnO-Ga
ZrO-SiO-SnO-Al
ZrO-SiO-ZnO-Ga-SnO
ZrO-SiO-ZnO-Al-SnO
ZrSiO-ZnO-Ga
ZrSiO-ZnO-Al
ZrSiO-SnO-Ga
ZrSiO-SnO-Al
ZrSiO-ZnO-Ga-SnO
ZrSiO-ZnO-Al-SnO
ZrSiO-SiO-ZnO-Ga-SnO
ZrSiO-ZrO-ZnO-Ga-SnO
等を用いてよい。
第2誘電体膜33は、MgOを含むことが好ましく、MgOとGaを含むことがより好ましい。第2誘電体膜33は、ZrO-MgO-ZnO-Ga、ZrO-MgO-ZnO-Al、ZrO-MgO-SnO-Ga、ZrO-MgO-SnO-Al、ZrO-MgO-ZnO-Ga-SnO、又はZrO-MgO-ZnO-Al-SnOを含むことがより好ましく、ZrO-MgO-ZnO-Ga-SnOを含むことがより好ましい。
【0092】
例えば、第2誘電体膜33が、Gaを2モル%含有する場合、
(ZrO30(ZnO)38(Ga(SnO30モル%、あるいは、
(ZrO27.3(Y2.7(ZnO)38(Ga(SnO30モル%、と表記される組成比になる。
例えば、第2誘電体膜33が、Gaを1.1モル%含有する場合、
(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(Ga1.1(SnO25モル%、
と表記される組成比を用いてよい。
【0093】
第2誘電体膜33は第1誘電体膜31と同様に、光学的な位相差を調節して信号振幅を制御する働き、および記録ピットの膨らみを制御して信号振幅を制御する働き、L2層30の反射率や透過率を制御する働き、を有する。
また、第2誘電体膜33は、カバー層4側からの記録膜32への水分の侵入を抑制する働き、および記録膜32中の酸素が外部へ逃避するのを抑制する働きを有する。第2誘電体膜33はまた、カバー層4から記録膜32への有機物の混入を抑制したり、L2層30とカバー層4との密着性を確保したりする機能も併せ持つ。
【0094】
第2誘電体膜33は記録膜32の表面にスパッタで形成するので、中間分離層3から揮発する有機物の量は、第1誘電体膜31と比較すると少ない。第1誘電体膜31、記録膜32、と順にスパッタする間に、真空排気により、揮発する有機物も排気されていくからである。実際に第2誘電体膜33スパッタ中に、真空室のガス成分を四重極質量分析計で計測したところ、第1誘電体膜31スパッタ中よりも、炭素(C)の量が少なかった。したがって、第2誘電体膜33は有機物の影響が少ないので、その材料は第1誘電体膜31の材料と同じ材料でもよいし、異なる材料でもよい。
【0095】
第2誘電体膜33の厚さは、例えば、5nm以上40nm以下であってよい。より好ましくは5nm以上30nm以下である。5nm未満であると、保護機能が低下し、記録膜32への水分の侵入を抑制できないことがある。40nmを超えると、L2層30の反射率が低下することがある。
例えばXMAの場合、本発明の実施形態にかかる第2誘電体膜33を分析すると、元素ごとの組成を分析することができる。例えば、下記(e)組成(モル%)の第2誘電体膜33をXMAで分析すると、おおよそ(f)組成(原子%)が得られる。
【0096】
(ZrO25(ZnO)50(SnO25モル% -(e)、
Zr10Zn20Sn1060原子% -(f)。
【0097】
あるいは(g)組成(モル%)を分析すると、おおよそ(h)組成(原子%)が得られる。
【0098】
{(ZrO0.95(Y0.0525(ZnO)46(Al(SnO25モル% -(g)、
Zr9.00.9Zn17.4Al3.0Sn9.560.2原子% -(h)。
あるいは(t)組成(モル%)を分析すると、おおよそ(u)組成(原子%)が得られる。
(ZrO23(MgO)(ZnO)47.5(Ga2.5(SnO25モル% -(t)、
Zr9.0Mg0.8Zn18.6Ga2.0Sn9.859.8原子% -(u)。
Zrを含む場合、Hfも検出される場合がある。
【0099】
アモルファス膜の場合、形成されている酸化物を特定することは困難なので、元素ごとの組成となる。第2誘電体膜33の膜中で、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成していることも考えられ、(f)、(h)および(u)の計算値と実際の分析値が合わない場合もある。
ターゲットの導電性は、従来のInを使わず、元素D1、必要に応じて元素D3を使用して確保した。ターゲットの比抵抗値は、1Ω・cm以下であることが好ましい。これは後述する第2誘電体膜23、13についても同様である。
第2誘電体膜33は、Zrの酸化物と元素D1から実質的に成っていてよい。ここで「実質的に」という用語は、第2誘電体膜33が例えばスパッタにより形成される場合には、スパッタ雰囲気に存在する希ガス(Ar、Kr、Xe)、水分、有機物(C)、空気、スパッタ室に配置された冶具およびターゲットに含まれる不純物に由来する他の元素が不可避に含まれる場合があることを考慮して使用されている。これら不可避の成分は第2誘電体膜33に含まれる全原子を100原子%とした場合、10原子%を上限として含まれていてもよい。これは、元素D2、元素D3を含む場合も適用される。また、後述する第2誘電体膜23、13に関して、「実質的に」という用語を用いる場合に同様に適用される。
【0100】
第2誘電体膜33は、第1誘電体膜31と異なる材料を用いてもよく、その場合、少なくともZrと酸素とInとを含んでよい。上述したように、第2誘電体膜33は、中間分離層3から揮発する有機物の影響は、第1誘電体膜31と比較すると小さいので、Inを含ませてもよい。Zr鉱物中にはHfが少量含まれているので、第2誘電体膜33にHfが含まれていてもよい。
第2誘電体膜33としては、Zr-O-In、を用いてよい。
第2誘電体膜33は、Zrと酸素がZrの酸化物を形成し、Inと酸素がInの酸化物を形成していることが好ましい。Inの酸化物はターゲットの導電性を向上させるために有用である。
【0101】
Zrの酸化物はZrOであってよく、Inの酸化物はInであってよい。Zrの酸化物およびInの酸化物は透明な酸化物で、第2誘電体膜33とカバー層4との密着性を高めることができる。Zr鉱物中にはHfが少量含まれているので、第2誘電体膜33にHfOが含まれていてもよい。
第2誘電体膜33としては、ZrO-In、を用いてよい。
第2誘電体膜33は、さらに、Si、Y、CaおよびMgより選ばれる少なくとも一つの元素D2を含んでいてもよい。
【0102】
第2誘電体膜33としては、
Zr-O-In-Si、
Zr-O-In-Y、
Zr-O-In-Ca、
Zr-O-In-Mg、
等を用いてよい。
【0103】
第2誘電体膜33は、元素D2の酸化物を形成していることが好ましい。元素D2の酸化物は、Siの酸化物と、Yの酸化物と、Caの酸化物およびMgの酸化物のうちの少なくとも一つであってよい。
Siの酸化物はSiOであってよく、Yの酸化物はYであってよく、Caの酸化物はCaOであってよく、Mgの酸化物はMgOであってよい。
元素D2の酸化物が、Siの酸化物、Yの酸化物、Caの酸化物、およびMgの酸化物より選ばれる少なくとも一つの酸化物の場合、Zrの酸化物に添加した形態で、安定化ジルコニアまたは部分安定化ジルコニアが形成されていることが好ましい。Y以外の希土類金属の酸化物を用いてもよい。例えばCeOを用いてもよい。
【0104】
第2誘電体膜33としては、
ZrO-In-SiO
(ZrO-Y)-In
(ZrO-CaO)-In
(ZrO-MgO)-In
(ZrO-Y)-In-SiO
(ZrO-CaO)-In-SiO
(ZrO-MgO)-In-SiO
等を用いてよい。
【0105】
例えばXMAの場合、本発明の実施形態にかかる第2誘電体膜33を分析すると、元素ごとの組成を分析することができる。例えば、下記(i)組成(モル%)の第2誘電体膜33をXMAで分析すると、おおよそ(j)組成(原子%)が得られる。
【0106】
(ZrO25(In50(SiO25モル% -(i)、
Zr6.3In25Si6.362.4原子% -(j)。
【0107】
あるいは(k)組成(モル%)を分析すると、おおよそ(m)組成(原子%)が得られる。
【0108】
(ZrO22.7(Y2.3(In50(SiO25モル% -(k)、
Zr5.61.1In24.7Si6.262.4原子% -(m)。
【0109】
アモルファス膜の場合、形成されている酸化物を特定することは困難なので、元素ごとの組成となる。第2誘電体膜33の膜中で、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成していることも考えられ、(j)および(m)の計算値と実際の分析値が合わない場合もある。
第2誘電体膜33にInを含ませることにより、ターゲットの比抵抗値を下げて、導電性を高めることができる。あるいは、第2誘電体膜33に含まれるInを減らして、元素D1を含ませてもよい。
【0110】
例えば、ZrO-In-ZnO、
ZrO-In-SnO
ZrO-In-ZnO-SnO
ZrO-In-ZnO-SiO
ZrO-In-SnO-SiO
ZrO-In-ZnO-SnO-SiO
等を用いてよい。
【0111】
あるいは、第2誘電体膜33はInの酸化物とSnの酸化物を含んでよく、
たとえば、In-SnO、(In90(SnO10重量%(ITO)等を用いてよい。
第2誘電体膜33は、少なくともZrと、酸素と、Inとを含んでいてもよく、Zrの酸化物とInの酸化物から実質的に成っていてよい。これは、元素D2を含む場合も適用される。また、後述する第2誘電体膜23、13に関しても同様に適用される。
第2誘電体膜33は、例えばスパッタにより形成されるナノメータオーダの薄膜である。そのため、第2誘電体膜33に含まれる酸化物は、スパッタ中の酸素および/または金属の欠損、ならびに不可避的な不純物の混入により、厳密に言えば、化学量論組成とならないことがある。この理由により、本実施の形態および他の実施の形態において、第2誘電体膜33に含まれる酸化物は必ずしも化学量論組成のものでなくてもよい。また、前述のとおり、本明細書において化学量論組成で表された材料には、酸素および/または金属の欠損、ならびに不純物の混入等により、厳密に言えば化学量論組成のものではないものも含まれることとする。これは、第1誘電体膜31の材料と同じ材料でも適用されるし、異なる材料でも適用される。これは後述する第2誘電体膜23、13についても同様である。
【0112】
第1誘電体膜31、記録膜32、および第2誘電体膜33の具体的な厚さは、マトリクス法(例えば、久保田広著「波動光学」岩波書店、1971年、第3章参照。)に基づく計算により設計できる。各膜の厚さを調整することにより、記録膜32が未記録の場合と記録の場合の各反射率、および記録部-未記録部間での反射光の位相差を調整して、再生信号の信号品質を最適化することが可能である。
【0113】
次にL1層20の構成について説明する。L1層20は、中間分離層2の表面上に、少なくとも第1誘電体膜21および記録膜22がこの順に積層されることにより形成される。さらに、記録膜22の表面上に、第2誘電体膜23が積層されてもよい。
本発明の実施形態にかかる第1誘電体膜21の機能は、前述したL2層30の第1誘電体膜31の機能と同様である。また、第1誘電体膜21は、中間分離層2とL1層20とを密着させる役割も有する。第1誘電体膜21の材料は、第1誘電体膜31と同様の材料を用いることがより好ましい。これは、L1層20も、中間分離層2の表面上に第1誘電体膜21をスパッタで形成するため、第1誘電体膜21が中間分離層2から揮発する有機物の影響を受けるからである。
【0114】
したがって、第1誘電体膜21は、少なくともZrと酸素とを含み、さらに元素D1を含み、Zrと酸素と元素D1の原子数を合わせて100原子%とした場合、Zrを3原子%以上26原子%以下含み、元素D1を10原子%以上43原子%以下含んでいてもよい。さらに、元素D2を含んでよく、さらに元素D3を含んでよく、Zrと、元素D1と、元素D2および元素D3の原子数を合わせて100原子%とした場合、元素D3を7原子%以下含んでよい。
この形態により、L1層20も、L2層30と同様に、第1誘電体膜21のスパッタ中に、中間分離層2から有機物が揮発しても、良好な再生耐久性を得ることができる。
第1誘電体膜21の厚さは、5nm以上40nm以下であってよい。5nm未満であると、中間分離層2との密着性が低下して、記録膜22への水分の侵入を抑制する保護機能が低下することがある。40nmを超えると、L1層20の反射率が低下することがある。また、第1誘電体膜21の厚さが40nmを超えると、第1誘電体膜21の成膜に要する時間(スパッタ時間)が長くなり生産性が低下することがある。
【0115】
記録膜22の機能は、前述したL2層30の記録膜32のそれと同様である。また、記録膜22は、少なくともWと、Cuと、Mnと、酸素とを含み、さらに、元素Mを含むことが好ましい。
記録膜22は、少なくともWと、Cuと、Mnと、酸素とを含むので、例えば、レーザ光6の照射によって酸素(O)が分離し、また、O同士が結合して、記録マークとなる膨張部を形成してもよい。この膨張部の形成は非可逆的な変化であるため、この記録膜22を備えたL1層20は追記型のものとなる。
記録膜22の材料は、記録膜32と同様であることが好ましい。L1層20は、中間分離層2および3に挟まれているため、両者が硬い場合は、記録膜22の記録マークは膨張しにくくなる。その場合は、記録膜22は、記録マークを膨張させる機能に最も優れたTaを、元素Mとして含むことがより好ましい。
記録膜22に含まれる酸素の割合は、金属元素と酸素の原子数の合計を100原子%としたときに、例えば60原子%以上80原子%以下であってよい。
記録膜22の膜厚は、好ましくは15nm以上50nm以下としてよく、更に好ましくは25nm以上45nm以下としてよい。膜厚が15nmより薄いと記録膜22が十分に膨張せず、良好な記録マークが形成されないので、d-MLSEが悪化する。膜厚が50nmを超えると、記録感度が良くなって記録パワーが小さくなり、その分再生パワーが低下して、再生光量が小さくなることがある。また、記録膜22の厚さが50nmを超えると、記録膜22の成膜に要する時間(スパッタ時間)が長くなり生産性が低下することがある。
【0116】
第2誘電体膜23の機能は、前述したL2層30の第2誘電体膜33のそれと同様である。第2誘電体膜23の材料は、第2誘電体膜33と同様の材料を用いてよい。また、第1誘電体膜21と同じ材料でもよいし、異なる材料でもよい。
第2誘電体膜23の厚さは、5nm以上30nm以下であってよい。5nm未満であると、保護機能が低下して、記録膜22への水分の侵入を抑制できなくなることがあり、30nmを超えると、L1層20の反射率が下がることがある。
【0117】
次に、L0層10の構成について説明する。L0層10は基板1の表面上に、少なくとも第1誘電体膜11および記録膜12がこの順に積層されることにより形成される。
さらに、記録膜12の表面上に第2誘電体膜13が積層されてもよい。
第1誘電体膜11は、光学的な位相差を調節して信号振幅を制御する働きや、記録マークの膨らみを調整して信号振幅を制御する働きを有する。また、第1誘電体膜11は、記録膜12への水分の侵入を抑制する働き、および記録膜12中の酸素が外部へ逃避するのを抑制する働きを有する。また、第1誘電体膜11は、基板1とL0層10とを密着させる役割も有する。
第1誘電体膜11は、基板1の表面上にスパッタで形成してもよい。基板1は成形基板であり、例えば、ポリカーボネートが好ましく用いられる。ポリカーボネートは熱可塑性樹脂であって、光重合開始剤は含んでいない。また、低分子成分も少ないため、第1誘電体膜11のスパッタ中に、揮発する可能性がある成分が少ないので、第1誘電体膜11は、第1誘電体膜21および31と違って、有機物の影響を受けにくい。よって、第1誘電体膜11は、第1誘電体膜31と同じ材料を用いてもよく、第2誘電体膜33と同じ材料を用いてもよい。
第1誘電体膜11は、例えば、Zrと酸素と元素D1を含む、
【0118】
さらに、本発明者らの検討により、L0層10は、第1誘電体膜11にZrと、酸素と、元素D1とを含む材料を用いると、Zrと、酸素と、Inとを含む材料を用いた場合に比べて、再生耐久性がより良好になることを見出した。
例えば、第1誘電体膜11は、Zr-O-Zn-Sn、
等を用いてよい。
材料が酸化物を形成している場合は、第1誘電体膜11は、ZrO-ZnO-SnOを用いることが好ましい。
あるいは、元素D2を含んでよく、第1誘電体膜11は、
Zr-O-Zn-Sn-Y、
等を用いてよい。
第1誘電体膜21および31と同様に、ターゲットのクラック発生を抑制できるので、第1誘電体膜11は、Mgを含む、Zr-O-Zn-Sn-Mgを用いることがより好ましい。
材料が酸化物を形成している場合は、第1誘電体膜11は、ZrO-MgO-ZnO-SnOを用いることがより好ましい。
あるいは、第1誘電体膜11は、元素D3を含んでよく、
Zr-O-Zn-Sn-Y-Ga、
等を用いてよい。
第1誘電体膜21および31と同様に、第1誘電体膜11は、さらに導電性を向上できるGaを添加して、Zr-O-Zn-Sn-Mg-Gaを用いることがさらに好ましい。
材料が酸化物を形成している場合には、第1誘電体膜11は、ZrO-MgO-ZnO-Ga-SnOを用いることがさらに好ましい。
あるいは、Zrと酸素とInとを含んでよく、
Zr-O-In、
等を用いてよい。
あるいは元素D2を含んでよく、
Zr-O-In-Si、
Zr-O-In-Y、
Zr-O-In-Y-Si、
等を用いてよい。
あるいは、Zrと酸素とInと元素D1とを含んでよく、
Zr-O-In-Zn、
Zr-O-In-Sn、
Zr-O-In-Zn-Sn、
等を用いてよい。
あるいはSiOを含んでよく、
Zr-O-In-Zn-Si、
Zr-O-In-Sn-Si、
Zr-O-In-Zn-Sn-Si、
等を用いてよい。
第1誘電体膜11も、第1誘電体膜21および31と同様に、上記の系にHfが含まれていてもよい。
【0119】
第1誘電体膜11の厚さは、例えば、5nm以上40nm以下であってよい。5nm未満であると、保護機能が低下し、記録膜12への水分の侵入を抑制できないことがある。40nmを超えると、L0層10の反射率が低下することがある。
レーザ光6が入射する面(カバー層4の表面)から最も遠い位置にあるL0層10は、その再生光量が最も小さくなる傾向にある。
【0120】
記録膜12は、記録膜32と同様の機能を持ち、用いる材料も同様である。
記録膜12におけるW、Cu、Mn、および前記元素Mが、
下記の式(1):
CuMn100-x-y-z(原子%) (1)
(前記式(1)中、
15≦x<60、0<y≦30、10≦z≦40、且つ、10≦100-x-y-z≦50)、
を満たすことが好ましい。
【0121】
L0層10は、レーザ光6が入射する面(カバー層4の表面)から最も遠い位置にあるため、L2層30やL1層20と比較して、光学的にはより高い反射率とより大きな吸収率を確保することが優先される。よって、L0層10の記録膜12は、L2層30の記録膜32およびL1層20の記録膜22よりも、式(1)におけるxの値が小さい組成比で形成してよい。
【0122】
式(1)中、x(W量)は、15≦x≦40であることがより好ましい。xがこの範囲内にあれば記録膜12の光吸収を調整して、L0層10の記録パワーを最適化することができる。15≦xであると、DCスパッタを良好に実施できる。また、記録マークが容易に形成され、良好な記録再生特性が得られる。
xが15未満であると、DCスパッタを実施する場合に、スパッタが不安定となることがあり、異常放電が生じやすくなる。また、記録膜12が膨張しにくくなり、記録マークの形成が困難になる。xが40を超えると、記録膜12の光吸収が減り、L0層10の記録に大きなレーザパワーが必要となることがある。
【0123】
記録膜12の場合、記録膜32および記録膜22よりも、yの値が大きい組成比で形成してよい。y(Cu量)は10≦y≦30であることがより好ましい。yを30以下とすることにより、記録膜12の光吸収率を調整し、L0層10の記録感度を最適化し、規格を満たす再生パワーで良好な再生耐久性を得ることができる。yを10以上にすることにより、記録膜12の光吸収が増え、記録パワーを最適化できる。yが30を超えると、記録感度が良くなり、再生パワーを下げることとなり、L0層10の再生光量が減る。yが10より小さいと、記録感度が悪化し、L0層10の記録に大きなレーザパワーが必要となることがある。
記録膜12の場合、記録膜32および記録膜22よりも、zの値が大きい組成比で形成してよい。z(Mn量)は15≦z≦40であることがより好ましい。この範囲であれば、L0層10の光吸収率を調整して、記録パワーを最適化し、高い反射率を確保し、再生光量を上げることができる。
【0124】
100-x-y-z(元素M量)は10≦100-x-y-z≦50を満たす。10≦100-x-y-z≦50であると、L0層10の記録再生特性が良好なものとなる。また、10≦100-x-y-z≦50であると、記録膜12の屈折率と消衰係数が最適化されて、L0層10の反射率を上げるとともに、光吸収率を最適化して、再生光量を上げることができる。元素Mは酸素をより多く分離したり、結合させたり、記録膜12のレーザ光6の照射部の、膨張を促進する機能も有する。また、NbやTiは屈折率が大きいので、反射率を上げる効果がある。100-x-y-zが50より大きいと、元素Mが多くなりすぎて、記録膜12の記録マークが過度に膨張して、記録マークが隣接トラックの記録マークの振幅を小さくしてしまう可能性がある。その結果、L0層10の記録再生特性が悪化する。また、100-x-y-zが10より小さいと、元素Mの割合が少なくなって、記録膜12の記録マークが膨張しにくくなり、記録再生特性が悪化する。
【0125】
記録膜12に含まれる酸素の割合は、金属元素と酸素の原子数の合計を100原子%としたときに、例えば60原子%以上80原子%以下であってよい。
記録膜12の膜厚は、15nm以上50nm以下としてよく、特に25nm以上45nm以下としてよい。15nmより薄いと記録膜12が十分に膨張せず、良好な記録マークが形成されないので、d-MLSEが悪化する。50nmを超えると、記録感度が良くなって記録パワーが小さくなり、その分再生パワーが低下して、再生光量が小さくなることがある。また、記録膜12の厚さが50nmを超えると、記録膜12の成膜に要する時間(スパッタ時間)が長くなり生産性が低下することがある。
【0126】
第2誘電体膜13の機能は、前述したL2層30の第2誘電体膜33のそれと同様である。第2誘電体膜13の材料は、第2誘電体膜33と同様の材料を用いてよい。また、第1誘電体膜11と同じ材料でもよいし、異なる材料でもよい。
第2誘電体膜13の厚さは、5nm以上30nm以下であってよい。5nm未満であると、保護機能が低下して、記録膜12への水分の侵入を抑制できなくなることがあり、30nmを超えると、L0層10の反射率が下がることがある。
本発明の実施形態にかかる第1誘電体膜31、21、11、記録膜32、22、12、および第2誘電体膜33、23、13は、500GBのアーカイバル・ディスクに限らず、500GBよりも容量の小さい300GB、100GB容量のアーカイバル・ディスクにも、必要に応じて適用してよい。記録膜32、22、12の少なくとも一つに、元素MをZnとして、W-Cu-Mn-Zn―Oを用いてよい。
【0127】
本発明の実施形態にかかる第1誘電体膜11、21、31、本発明の実施形態にかかる記録膜12、22、32、および本発明の実施形態にかかる第2誘電体膜13、23、33の組み合わせにおいて、レーザ光6の光源から最も遠いL0層10を除く、L1層20とL2層30の少なくともいずれか一層が第1情報層であればよい。4以上の情報層を含む場合も同様に、L0層10を除く、レーザ光6の光源に、より近い情報層のうちの少なくともいずれか一層が第1情報層であればよい。
本発明の実施形態にかかる第1誘電体膜11、21、31、記録膜12、22、32、および第2誘電体膜13、23、33の組み合わせは、中間分離層2、3から揮発する有機物の影響を克服して、再生耐久性を向上させるのに効果的である。よって、L1層20およびL2層30のように、中間分離層2、及び3上に形成される情報層を第1情報層とすることにより、より優れた効果を示す。
当然ながら、L0層10の第1誘電体膜11のスパッタ中に、基板1から炭素を含む成分が揮発する場合には、L0層10に本発明の実施形態にかかる第1誘電体膜11を適用すれば、優れた再生耐久性を得ることができる。
【0128】
波長405nmにおける、第1誘電体膜31、21、11の屈折率は、1.90以上2.30以下であることが好ましく、消衰係数は、0.20以下が好ましい。同様に記録膜32、22の屈折率は、2.00以上2.40以下であることが好ましく、消衰係数は、0.30以下が好ましい。同様に記録膜12の屈折率は、2.10以上2.50以下であることが好ましく、消衰係数は、0.40以下が好ましい。第2誘電体膜33、23、13の屈折率は、1.90以上2.30以下であることが好ましく、消衰係数は、0.20以下が好ましい。
【0129】
第1誘電体膜11、21、31、記録膜12、22、32、および第2誘電体膜13、23,33は、これらを構成する酸化物を混合したターゲットを用いて、RFスパッタまたはDCスパッタにより形成してよい。あるいは、これらの膜は、酸素を含まない合金ターゲットを用いて、酸素導入下でのRFスパッタ、または酸素導入下でのDCスパッタにより形成してよい。あるいはまた、各酸化物のターゲットをそれぞれ個別の電源に取り付けて、同時にRFスパッタまたはDCスパッタに付す方法で、これらの膜を形成してよい(マルチスパッタリング法)。RFスパッタとDCスパッタは同時に実施してもよい。さらに別の膜形成方法としては、金属の単体もしくは合金からなるターゲット、または酸化物のターゲットをそれぞれ個別の電源に取り付けて、必要に応じて酸素を導入しなら同時にRFスパッタする方法や、同時にDCスパッタする方法が挙げられる。あるいは、金属と酸化物を混合してなるターゲットを用い、酸素を導入しながら、RFスパッタまたはDCスパッタする方法で、これらの膜を形成してよい。
【0130】
実施の形態1の変形例においては、本実施の形態に示す情報記録媒体100において、第1情報層以外のいずれかの情報層の記録膜が、Te-O-PdまたはGe-Bi-O等の他の記録膜、すなわち本発明の実施形態にかかるW-O系記録膜以外の記録膜であってもよい。あるいは、他の変形例においては、必要に応じて、反射膜および上記において例示していない材料から成る誘電体膜を設けてもよい。本開示に係る技術の効果は、これらの変形例においても達成される。
情報記録媒体100の記録方式は、線速度一定のConstant Linear Velocity(CLV)、回転数一定のConstant Angular Velocity(CAV)、Zoned CLVおよびZoned CAVのいずれであってよい。使用できるデータビット長は47.7nmである。また、多値記録方式にも使うことができる。
本実施の形態の情報記録媒体100への情報の記録および再生は、対物レンズの開口数NAが0.91である光学系で実施してよく、あるいはNA>1の光学系で実施してよい。光学系としてはSolid Immersion Lens(SIL)、またはSolid Immersion Mirror(SIM)を使用してもよい。この場合、中間分離層2および3、ならびにカバー層4は5μm以下の厚さとしてよい。あるいは、近接場光を利用した光学系を用いてもよい。
【0131】
(実施の形態2)
次に、実施の形態1で説明した情報記録媒体100の製造方法を、実施の形態2として説明する。
本発明の実施形態にかかる情報記録媒体の製造方法は、2以上の情報層を含む情報記録媒体の製造方法であって、
上記2以上の情報層の各々を形成する工程を含み、
上記2以上の情報層のうちの少なくとも一つの情報層を第1情報層とし、上記第1情報層を形成する工程が、少なくとも、第1誘電体膜を形成する工程と、記録膜を形成する工程とを含み、
上記第1誘電体膜を形成する工程が、少なくともZrと酸素とを含み、さらに、ZnおよびSnより選ばれる少なくとも一つの元素D1を含む第1誘電体膜を形成し、
上記記録膜を形成する工程が、少なくともWと、Cuと、Mnとを含み、さらに、Zn、Nb、Mo、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素Mを含む記録膜を形成し、
上記第1誘電体膜を形成する工程と、上記記録膜を形成する工程が、DC電源を用いたスパッタリングにより実施される。
【0132】
L0層10を構成する第1誘電体膜11、記録膜12および第2誘電体膜13は、気相成膜法の一つであるスパッタリング法(スパッタ)により形成できる。
本発明の実施形態にかかる情報記録媒体100は基板1を有していてもよい。
まず、基板1(例えば、厚み0.5mm、直径120mm)を成膜装置内に配置する。
続けて、まず第1誘電体膜11を成膜する。この際、基板1に螺旋状の案内溝が形成されている場合は、この案内溝側に第1誘電体膜11を成膜する。
第1誘電体膜11は、得ようとする組成に応じたスパッタリングターゲットを用いて、希ガス雰囲気、または希ガスと反応ガス(例えば、酸素ガス)との混合ガス雰囲気中でスパッタすることにより形成できる。希ガスは、例えば、Arガス、Krガス、またはXeガスであるが、コスト面ではArガスが有利である。これはスパッタの雰囲気ガスを希ガスまたはその混合ガスとする、いずれのスパッタについてもあてはまる。
【0133】
ターゲットは、酸化物の形態で含んでよく、あるいは単体金属または合金の形態で含んでよい。金属(合金含む)からなるターゲットを使用する場合には、酸素ガスを含む雰囲気中で実施する反応性スパッタにより酸化物を形成してよい。
ターゲットの比抵抗値は好ましくは1Ω・cm以下である。これによりDCスパッタ、またはパルスDCスパッタを実施しやすくなる。
元素D1を含む組成のターゲットは、導電性が高く、DCスパッタによって安定的に第1誘電体膜11を形成しやすくなる。よって、第1誘電体膜11の形成時に高い成膜レートを期待できる。
所望の第1誘電体膜11の組成が得られるよう、ターゲットの組成を調整してよい。
続いて、第1誘電体膜11上に記録膜12を成膜する。
記録膜12は、その組成に応じて、金属合金または金属-酸化物の混合物からなるターゲットを用いて、希ガス雰囲気中または希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中におけるスパッタリングを実施することにより形成できる。記録膜12の厚さが第1誘電体膜11などの誘電体膜より厚いので、生産性を考慮し、記録膜12は、RFスパッタリングより高い成膜レートが期待できるDCスパッタリング、またはパルスDCスパッタリングを用いて成膜することが好ましい。記録膜12中に多くの酸素を含有させるため、雰囲気ガス中に多量の酸素ガスを混合することが好ましい。記録膜12はマルチスパッタリングを実施して形成してよい。
【0134】
具体的には、記録膜12の成膜に際して合金ターゲットまたは混合物ターゲットを用いる場合、ターゲットの組成は、
W-Cu-Mn-Nb、
W-Cu-Mn-Zn、
W-Cu-Mn-Mo、
W-Cu-Mn-Ta、
W-Cu-Mn-Ti、W-Cu-Mn-Nb、
W-Cu-Mn-ZnO、
W-Cu-Mn-Mo、
W-Cu-Mn-Ta、
W-Cu-Mn-Ti、
W-Cu-Mn-Ta、
W-Cu-Mn-Ta-ZnO、
等であってよい。
【0135】
続いて、記録膜12上に第2誘電体膜13を成膜する。第2誘電体膜13は、第2誘電体膜13の組成に応じたターゲットを用いて、希ガス雰囲気、または希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気でスパッタリングを実施することにより形成できる。また、第2誘電体膜13はマルチスパッタリングを実施して形成してよい。
第2誘電体膜13の形成に用いるターゲットとしては、前述した第1誘電体膜11を形成するターゲットを用いてよい。
続いて、第2誘電体膜13上に中間分離層2を形成する。中間分離層2は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂(例えばアクリル系樹脂)を、L0層10上に塗布しスピンコートした後に、樹脂を硬化させることにより形成できる。中間分離層2に案内溝を設ける場合、表面に所定の形状の溝が形成された転写用基板(型)を硬化前の樹脂に密着させた状態でスピンコートした後に樹脂を硬化させ、さらにその後、転写用基板を硬化した樹脂から剥がす方法で中間分離層2を形成してよい。また、中間分離層2は二段階で形成してよく、具体的には、厚みの大部分を占める部分を先にスピンコート法で形成し、次に案内溝を有する部分を、スピンコート法と転写用基板による転写との組み合わせにより形成してよい。
【0136】
続いて、L1層20を形成する。具体的には、まず、第1誘電体膜21を中間分離層2の上に形成する。第1誘電体膜21は、前述した第1誘電体膜11と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。続いて、第1誘電体膜21上に記録膜22を形成する。記録膜22は、前述した記録膜12と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。続いて、記録膜22上に第2誘電体膜23を形成する。第2誘電体膜23は、前述した第2誘電体膜13と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。続いて、第2誘電体膜23上に中間分離層3を形成する。中間分離層3は、前述した中間分離層2と同様の方法で形成できる。
続いて、L2層30を形成する。L2層30は、基本的には前述したL1層20と同様の方法で形成できる。まず、中間分離層3上に第1誘電体膜31を形成する。第1誘電体膜31は、前述した第1誘電体膜11と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。
【0137】
例えば、第1誘電体膜31を形成するためのターゲットの組成は、
Zr-O-Zn-Sn、
Zr-O-Zn-Sn-Y、
Zr-O-Zn-Sn-Mg、
Zr-O-Zn-Sn-Ga、
Zr-O-Zn-Sn-Y-Ga、
Zr-O-Zn-Sn-Mg-Ga、
等が好ましく用いられる。
【0138】
また、第1誘電体膜31を形成する際に、高スパッタパワーを投入してDCスパッタまたはパルスDCスパッタを実施する場合、Mgの酸化物を含むターゲットは、Yの酸化物を含むターゲット、およびCaの酸化物を含むターゲットに比べて、より高いスパッタパワーでも、ターゲット表面にクラックが発生し難い。ターゲットを最後まで使い切ってもクラックが発生し難い。クラックの抑制にはMgの酸化物を用いることがより好ましい。
本実施の形態では、第1誘電体膜31に対応したターゲット材料として、Mgの酸化物を添加した安定化ジルコニアまたは部分安定化ジルコニアを含むターゲットを用いることがより好ましい。
第2誘電体膜33、L1層20の第1誘電体膜21、第2誘電体膜23、L0層10の第1誘電体膜11および第2誘電体膜13に、各々対応したターゲット材料においても同様、Mgの酸化物を添加した安定化ジルコニアまたは部分安定化ジルコニアを含むことが好ましい。
【0139】
よって、第1誘電体膜31を形成するためのターゲットの組成としては、
Zr-O-Zn-Sn-Mgを用いることがより好ましく、
Zr-O-Zn-Sn-Mg-Gaを用いることがさらに好ましい。
【0140】
あるいはこれらがターゲット中の組織の中で、酸化物を形成していることが好ましく、
第1誘電体膜31を形成するためのターゲットの組成としては、例えば、
ZrO-ZnO-SnO
ZrO-Y-ZnO-SnO
ZrO-MgO-ZnO-SnO
ZrO-ZnO-Ga-SnO
ZrO-Y-ZnO-Ga-SnO
ZrO-MgO-ZnO-Ga-SnO
等が好ましく用いられる。
第1誘電体膜31を形成するためのターゲットの組成としては、MgOを含む、ZrO-MgO-ZnO-SnOを用いることがより好ましく、MgOとGaを含む、ZrO-MgO-ZnO-Ga-SnOを用いることがさらに好ましい。
【0141】
ターゲットは、粉末や焼結体が結晶相であれば、例えば、X線回折でターゲットに含まれる酸化物を調べることができる。また、ターゲットの組織には、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物が含まれていてよい。これは、第1誘電体膜11、21、記録膜12、22、32、および第2誘電体膜13、23、33を形成するためのターゲットについても同様に適用される。
続いて、第1誘電体膜31上に記録膜32を形成する。記録膜32は、前述した記録膜12と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。続いて、記録膜32上に第2誘電体膜33を形成する。第2誘電体膜33は、前述した第2誘電体膜13と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。
いずれの誘電体膜および記録膜12、22、32も、スパッタリング時の供給電力を10W~10kWとし、成膜室の圧力を0.01Pa~10Paとして形成してよい。
【0142】
続いて、第2誘電体膜33上にカバー層4を形成する。カバー層4は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)または遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、樹脂を硬化させることにより形成できる。あるいは、カバー層4は、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、もしくはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、またはガラスから成る円盤状の基板1を貼り合わせる方法で形成してよい。具体的には、第2誘電体膜33に光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)または遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を塗布し、塗布した樹脂に基板1を密着させた状態でスピンコートを実施して樹脂を均一に延ばし、その後、樹脂を硬化させる方法でカバー層4を形成できる。
なお、各層の成膜方法として、スパッタリング法以外に、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相堆積法(CVD法:Chemical Vapor Deposition)および分子線エピタキシー法(MBE法:Molecular Beam Epitaxy)を用いることも可能である。
【0143】
このようにしてA面情報記録媒体101を製造することができる。また必要に応じ、基板1およびL0層10に、ディスクの識別コード(例えば、BCA(Burst Cutting Area))が含まれるようにしてもよい。例えば、ポリカーボネート製の基板1に識別コードを付ける場合、基板1を成形した後に、COレーザなどを用いて、ポリカーボネートを溶解・気化することにより、識別コードを付けることができる。また、L0層10に識別コードを付ける場合、半導体レーザなどを用いて、記録膜12に記録を行う、または記録膜12を分解することによって、識別コードを付けることができる。L0層10に識別コードを付ける工程は、第2誘電体膜13の形成後、中間分離層2の形成後、カバー層4の形成後、または後述する貼り合わせ層5の形成後に実施してよい。
【0144】
同様にしてB面情報記録媒体102の製造も可能である。B面情報記録媒体102の基板1に案内溝を設ける場合、螺旋の回転方向は前述したA面情報記録媒体101の基板1の案内溝のそれと逆向きでもよいし、または同じ向きでもよい。
最後に、A面情報記録媒体101において、基板1の案内溝が設けられた面とは反対の面に、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対の面を、塗布した樹脂に貼り付ける。その後、樹脂に光を照射して硬化させることにより、貼り合わせ層5を形成する。あるいは、遅行性硬化型の光硬化型樹脂を、A面情報記録媒体101に均一に塗布した後に光を当て、その後、B面情報記録媒体102を貼り付けて、貼り合わせ層5を形成してもよい。このようにして、実施の形態1に係る、両面に情報層を有する情報記録媒体100を製造することができる。
【0145】
以上のように、本開示に係る技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必要な必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面または詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
次に、実施例を用いて本開示の技術を詳細に説明する。
【実施例
【0146】
本発明のより具体的な実施の形態について、実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0147】
(実施例1)
本実施例では、図1に示す情報記録媒体100の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。基板1として、螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.5mm)を用意した。その基板1上に、L0層10を形成した。第1誘電体膜11として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、記録膜12として実質的にW25Cu21Ta21ZnMn28-Oからなるターゲットを用いて、W25Cu21Ta21ZnMn28-Oを34nm、第2誘電体膜13として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
ここで記録膜12の表記に関して、元素比としては金属元素比(原子%)のみを記載した形で表記し、以降についても同様に表記する。例えば、W19Cu25Zn20Mn36(原子%)の酸化物であればW19Cu25Zn20Mn36-Oと表記する。
波長405nmのレーザ光6において、L1層20およびL2層30がない場合のL0層10の反射率が、未記録状態でR≒8.0%、R≒8.5%である。
第1誘電体膜11の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、DC電源(3kW)を用いて行った。記録膜12の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+30sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜13の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、DC電源(2kW)を用いて行った。
【0148】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2は、まず母体の厚みを形成する紫外線硬化樹脂をスピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させた。次に、案内溝を転写する紫外線硬化樹脂をスピンコートし、その上に案内溝が形成されたポリカーボネートからなるスタンパ基板を貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させた後、スタンパ基板を剥離することで、中間分離層2が形成される。中間分離層2の厚みは約25μmである。
【0149】
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の第1誘電体膜21として表1に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を17nm、記録膜22として、本発明の実施形態における実質的にW31Cu18Ta21Zn11Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu18Ta21Zn11Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6において、L2層30がない場合のL1層20の反射率が、記録膜22が未記録状態でR≒6.0%、R≒6.3%、透過率が約77%である。
また、第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス(流量:12+36sccm)雰囲気でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
【0150】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3は、まず母体の厚みを形成する紫外線硬化樹脂をスピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させる。次に、案内溝を転写する紫外線硬化樹脂をスピンコートし、その上に案内溝が形成されたポリカーボネートからなるスタンパ基板を貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させた後、スタンパ基板を剥離することで、中間分離層3が形成された。中間分離層3の厚みは約18μmである。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として、表1に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて、本発明の実施形態にかかる誘電体を15nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0151】
波長405nmのレーザ光6において、L2層30の反射率が、記録膜32が未記録状態でR≒5.8%、R≒6.1%、透過率が約80%となるように設定した。
また、第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源を用いて行った。第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に、紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
【0152】
次に、B面情報記録媒体102の構成を説明する。基板1として、螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)が形成されたポリカーボネート基板(厚さ0.5mm)を用意した。案内溝の螺旋の回転方向は前述したA面情報記録媒体101の基板1とは逆の方向とした。その基板1上に、L0層10を形成した。第1誘電体膜11として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、記録膜12として実質的にW25Cu21Ta21ZnMn28-Oからなるターゲットを用いて、W25Cu21Ta21ZnMn28-Oを34nm、第2誘電体膜13として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6において、L1層20およびL2層30がない場合のL0層10の反射率が、未記録状態でR≒8.0%、R≒8.5%である。
第1誘電体膜11は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、DC電源(3kW)を用いて行った。記録膜12の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+30sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜13の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、DC電源(2kW)を用いて行った。
【0153】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の形成方法は前述したA面情報記録媒体101の中間分離層2と同様であるが、案内溝の螺旋の回転方向は前述したA面情報記録媒体101の中間分離層2とは逆の方向とした。これにより両面の同時再生が可能となる。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の第1誘電体膜21として表2に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を17nm、記録膜22として、本発明の実施形態における実質的にW31Cu18Ta21Zn11Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu18Ta21Zn11Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6において、L2層30がない場合のL1層20の反射率が、記録膜22が未記録状態でR≒6.0%、R≒6.3%、透過率が約77%である。
また、第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス(流量:12+36sccm)雰囲気でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
【0154】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3は、まず母体の厚みを形成する紫外線硬化樹脂をスピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させる。次に、案内溝を転写する紫外線硬化樹脂をスピンコートし、その上に案内溝が形成されたポリカーボネートからなるスタンパ基板を貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させた後、スタンパ基板を剥離することで、中間分離層3が形成された。中間分離層3の厚みは約18μmである。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として、表2に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて、本発明の実施形態にかかる誘電体を15nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、波長405nmのレーザ光6において、L2層30の反射率が、記録膜32が未記録状態でR≒5.8%、R≒6.1%、透過率が約80%となるように設定した。
また、第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0155】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に、紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
【0156】
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜21および第1誘電体膜31に、
Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、
Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%)、
Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)
Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%)、
Zr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%)
およびZrSiZn20Sn1060 (原子%)
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ1-101~1-106とする。また比較例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜21および第1誘電体膜31にZr3.4Si3.4In31.861.4 (原子%)を適用したディスクNo.比較例1-1を作製した。
【0157】
これらの1-101~1-106および比較例1-1において8倍速の再生耐久性の評価を行った。再生耐久性の評価はパルステック製評価機(ODU-1000)を用いて行った。
評価機のレーザ光6の波長は405nm、対物レンズの開口数NAは0.91であり、グルーブおよびランドに情報の記録を行った。記録の線速度は18.06m/s(500GB-8倍速)および再生の線速度は18.06m/s(500GB-8倍速)で行った。データビット長を47.7nmとし、1情報層あたり83.4GB密度の記録を行った。また再生光は2:1で高周波重畳(変調)されたレーザ光6を用いた。ランダム信号(2T~12T)による記録を行い、信号品質はd-MLSE(Distribution Derived-Maximum Likelihood Sequence Error Estimation)として評価した。
【0158】
L2層30の再生耐久性の評価は、隣接するグルーブおよびランドにランダム信号を記録し、記録を行ったトラックの中央に位置するグルーブのランダム信号を再生パワー2.3mW、線速度18.06m/sで再生し、繰り返しの再生回数が1回目と100万回目のd-MLSEの変化量により良否を判定した。またL1層20の再生耐久性の評価方法については再生パワーを3.1mWとした実施した。
具体的には、変化量をΔd-MLSEと定義すると、0.5%以下をA(非常に良好)、0.5%より大きく1.0%以下をB(良好)、1.0%より大きく1.5%以下をC(実用レベル)、1.5%より大きいものをD(実用不可)とした。
尚、ランドではなくグルーブ再生による評価を行ったのは、本実施例ではグルーブのほうが光吸収率が高く、再生耐久性が悪くなるためである。また、以下の実施例でも同様で、グルーブにおける再生耐久性の評価を行った。
A面情報記録媒体101における結果を表1に示す。
【0159】
【表1】
【0160】
ディスクNo.1-101~1-106において、比較例1-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表2に示す。
【0161】
【表2】
【0162】
ディスクNo.1-101~1-106において、比較例1-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
【0163】
(実施例2)
本実施例では、図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0164】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0165】
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の第1誘電体膜21として実質的に(ZrO30(SiO30(In40(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO30(SiO30(In40(mol%)を17nm、記録膜22として、本発明の実施形態における実質的にW31Cu18Ta21Zn11Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu18Ta21Zn11Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6において、L2層30がない場合のL1層20の反射率が、記録膜22が未記録状態でR≒6.0%、R≒6.3%、透過率が約77%である。
また、第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス(流量:12+36sccm)雰囲気でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
【0166】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として、表3、5に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて、本発明の実施形態にかかる誘電体を11~17nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を9~15nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0167】
第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、波長405nmのレーザ光6において、L2層30の反射率が、記録膜32が未記録状態でR≒5.8%、R≒6.1%、透過率が約80%となるように設定した。
また、第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源を用いて行った。第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に、紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
【0168】
次に、B面情報記録媒体102の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0169】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の第1誘電体膜21として本発明の実施形態における実質的に(ZrO30(SiO30(In40(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO30(SiO30(In40(mol%)を17nm、記録膜22として本発明における実質的にW31Cu18Ta21Zn11Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu18Ta21Zn11Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6において、L2層30がない場合のL1層20の反射率が、記録膜22が未記録状態でR≒6.0%、R≒6.3%、透過率が約77%である。
また、第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
【0170】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の形成方法は前述したA面情報記録媒体101の中間分離層3と同様であるが、案内溝の螺旋の回転方向は前述したA面情報記録媒体101の中間分離層3とは逆の方向とした。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として表4、6に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を11~17nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いてW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を9~15nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の膜厚は、実施例1と同様にマトリクス法に基づく計算により決定した。
また、第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0171】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に、紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
【0172】
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜31に、
Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、
Zr20Zn2060 (原子%)、
Zr16.7Zn16.766.6 (原子%)、
Zr18.42.3Zn19.559.8 (原子%)、
Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%)、
Zr9.5Ca0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、
Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、
Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%)、
Zr9.7Zn18.5Sn9.7Al1.960.2 (原子%)
Zr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%)
ZrSiZn20Sn1060(ZrOとSiOを含む)(原子%)
およびZrSiZn20Sn1060(ZrSiOを含む)(原子%)
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ2-101~2-112とする。
【0173】
これらの2-101~2-112および比較例1-1において実施例1で説明した再生耐久性の評価を行った。
【0174】
L2層30の再生耐久性の評価は、隣接するグルーブおよびランドにランダム信号を記録し、記録を行ったトラックの中央に位置するグルーブのランダム信号を再生パワー2.3mW、線速度18.06m/sで再生し、繰り返しの再生回数が1回目と100万回目のd-MLSEの変化量により良否を判定した。
具体的には、変化量をΔd-MLSEと定義すると、0.5%以下をA(非常に良好)、0.5%より大きく1.0%以下をB(良好)、1.0%より大きく1.5%以下をC(実用レベル)、1.5%より大きいものをD(実用不可)とした。
尚、ランドではなくグルーブ再生による評価を行ったのは、本実施例ではグルーブのほうが光吸収率が高く、再生耐久性が悪くなるためである。また、以下の実施例でも同様で、グルーブにおける再生耐久性の評価を行った。
A面情報記録媒体101における結果を表3に示す。
【0175】
【表3】
【0176】
ディスクNo.2-101~2-112において、比較例1-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表4に示す。
【0177】
【表4】
【0178】
ディスクNo.2-101~2-112において、比較例1-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
また2-105、2-106および2-107の第1誘電体膜31の成膜に用いたターゲットについて、より高いスパッタパワーを投入し、ターゲットにクラックが生じるパワーの評価を行った。その結果、2-107のターゲットが最も高いパワーを投入するとこができた。つまり、MgOを含むターゲットが最も高いパワーを投入できるため、より高い成膜速度を得ることができ、情報記録媒体の生産性を高めることができる。
【0179】
さらに本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜31に、
Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、
Zr7.4Zn23.5Sn10.358.8 (原子%)、
Zr3.3Sn30.066.7 (原子%)、
Zr2.3Sn31.066.7 (原子%)、
Zr17.8Zn6.7Sn11.164.4 (原子%)、
Zr25.9Zn11.163.0 (原子%)、
Zr26.5Zn10.363.2 (原子%)、
Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%)、
Zr6.71.2Zn23.2Sn10.258.7 (原子%)、
Zr12.71.1Zn15.2Sn9.561.5 (原子%)、
Zr17.51.1Zn9.0Sn9.063.4 (原子%)、
Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%)、
Zr7.2Zn21.8Sn10.0Ga2.059.0 (原子%)、
Zr13.1Zn14.0Sn9.4Ga1.961.6 (原子%)、
Zr17.7Zn8.0Sn8.9Ga1.863.7 (原子%)、
Zr9.4Zn17.0Sn9.4Ga3.860.4 (原子%)、
Zr9.1Zn15.3Sn9.1Ga5.860.7 (原子%)、
およびZr8.9Zn14.0Sn8.9Ga7.560.7 (原子%)、
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ2-201~2-218とする。ディスクNo.2-204、及び2-207は比較例である。
【0180】
これらの2-201~2-218において8倍速の再生耐久性の評価を行った。評価の方法は前述した方法と同じである。
さらに、2-201~2-218において500GB密度8倍速記録におけるd-MLSEの評価を行った。d-MLSEの評価においては14.0%以下をA(非常に良好)、14.0%より大きく14.5%以下をB(良好)、14.5%より大きく15.0%以下をC(実用レベル)、15%より大きいものをD(実用不可)とした。
【0181】
さらに、2-201~2-218の第1誘電体膜31に適用した誘電体材料の成膜速度の評価を行った。成膜速度は、ガラス基板上に第1誘電体膜31を成膜し、段差計により膜厚を測定することで算出した。情報記録媒体100を製造する上で定められたディスク1枚を製造する時間内で第1誘電体膜31の成膜可能とする成膜速度が得られるものをA、成膜速度が不十分なものをD(実用不可)とした。
総合的に、再生耐久性、d-MLSE、および成膜速度の評価において、Dが含まれるものをD(実用不可)、DがなくCが含まれるものをC(実用レベル)、CやDがなくBが2つ以上のものをB(良好)、CやDがなくAが2つ以上のものをA(非常に良好)と判定した。
A面情報記録媒体101における結果を表5に示す。
【0182】
【表5】
【0183】
ディスクNo.2-204において、Zr量が3原子%より少なくなるとd-MLSEに悪化が見られ実用不可であることから、Zr量は3原子%以上である必要がある。また2-207において、Zr量が26原子%より多くなると成膜速度に低下が見られ実用不可であることから、Zr量は26原子%以下である必要がある。
また2-218において、Ga量が7原子%より多くなるとd-MLSEに悪化が見られることから、Ga量は7原子%以下であることが好ましい。
B面情報記録媒体102における結果を表6に示す。
【0184】
【表6】
【0185】
B面情報記録媒体102においてもA面情報記録媒体101と同様の結果が得られた。
また第1誘電体膜31としてZr16.84.6Zn19.159.5(原子%)(=(ZrO44(Y(ZnO)50(mol%))を適用すると、第1誘電体膜31の成膜工程においてターゲットに割れが生じ、安定した製造が困難であった。このことからY量はZrO量に対して、10%以下のモル濃度が好ましい。
【0186】
(実施例3)
本実施例では図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
続けて、L0層10上に、螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例2と同様である。
【0187】
続けて、L1層20上に、螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として実質的に(ZrO25(ZnO)50(SnO25(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(ZnO)50(SnO25(mol%)を15nm、記録膜32として表7に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて、34nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。また、第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に、紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
【0188】
次にB面情報記録媒体102の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
続けて、L0層10上に、螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例2と同様である。
【0189】
続けて、L1層20上に、螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として実質的に(ZrO25(ZnO)50(SnO25(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(ZnO)50(SnO25(mol%)を15nm、記録膜32として表8に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて34nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。また、第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0190】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
【0191】
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の記録膜32に、
32Cu17Zn33Mn18 (原子%)、
32Cu17Nb33Mn18 (原子%)、
32Cu17Mo33Mn18 (原子%)、
32Cu17Ta33Mn18 (原子%)、
32Cu17Ti33Mn18 (原子%)、
32Cu17Nb22Zn11Mn18 (原子%)、
32Cu17Ta22Zn11Mn18 (原子%)、
15Cu22Ta40Mn23 (原子%)、
14Cu23Ta40Mn23 (原子%)、
59Cu20Ta10Mn21 (原子%)、
60Cu20Ta10Mn20 (原子%)、
32Ta33Mn35 (原子%)、
32Cu30Ta28Mn10 (原子%)、
32Cu31Ta27Mn10 (原子%)、
32Cu30Ta29Mn (原子%)、
29CuTa30Mn40 (原子%)、
29CuTa29Mn41 (原子%)、
55Cu17Ta10Mn18 (原子%)、
56Cu17TaMn18 (原子%)、
15Cu17Zn25Ta25Mn18 (原子%)、
およびW15Cu17Zn25Ta26Mn17 (原子%)
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ2-301~2-321とする。ディスクNo.2-312は比較例である。
【0192】
これらの2-301~2-321において、実施例1で説明した再生耐久性、d-MLSE、成膜速度の評価を行った。
さらに、透過率の評価を行った。透過率の評価においては、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板上にそれぞれの記録膜材料を適用したL2層30を形成しカバー層4を形成したサンプルにおいて、分光光度計を用いて測定した。透過率が67%以上のものをA、60%以上67%未満のものをB、50%以上60%未満のものをC、50%未満のものをD(実用不可)、と判定した。
総合的に、Dが含まれるものをD(実用不可)、DがなくCが含まれるものをC(実用レベル)、CやDがなくBが2つ以上のものをB(良好)、それ以外をA(非常に良好)と判定した。
A面情報記録媒体101における結果を表7に示す。
【0193】
【表7】
【0194】
ディスクNo.2-309においてWが少なくなると再生耐久性や透過率が悪化し、また2-311においてWが多くなるとd-MLSEが悪化する傾向がみられる。このことからW量は15原子%以上、60原子%未満であることが好ましい。
また、2-312においてCuが含まれないと安定した成膜ができず成膜速度が悪化、また再生耐久性が悪化することから、Cuは記録膜32中に含まれている必要がある。また2-314においてCuが多くなると再生耐久性が悪化する傾向がみられる。このことからCu量は30原子%以下であることが好ましい。
また、2-315においてMnが少なくなると再生耐久性やd-MLSEが悪化し、また2-317においてMnが多くなると再生耐久性や成膜速度が悪化する傾向がみられる。このことからMn量は10原子%以上、40原子%以下であることが好ましい。
B面情報記録媒体102における結果を表8に示す。
【0195】
【表8】
【0196】
B面情報記録媒体102においてもA面情報記録媒体101と同様の結果が得られた。
【0197】
(実施例4)
本実施例では、図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例2と同様である。
【0198】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として、表9及び表10に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を13~17nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いてW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として表9及び表10に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を11~15nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。また、第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
【0199】
次にB面情報記録媒体102の構成を説明する。
基板1として、実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例2と同様である。
【0200】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として、表11及び表12に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を13~17nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いてW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として、表11及び表12に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を11~15nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。また、第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0201】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に、紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
【0202】
本実施例の実施形態にかかる情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜31および第2誘電体膜33に、
(第1誘電体膜31、第2誘電体膜33)の順に、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%)、Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%))、
(Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%)、Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%))、
(Zr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%)、Zr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%))、
(Zr20Zn2060 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr16.7Zn16.766.6 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr18.42.3Zn19.559.8 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.5Ca0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.7Zn18.5Sn9.7Al1.960.2 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr20Zn2060 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr16.7Zn16.766.6 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr18.42.3Zn19.559.8 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr9.5Ca0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr9.7Zn18.5Sn9.7Al1.960.2 (原子%))、
および(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%))
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ2-401~2-422とする。
【0203】
これらの2-401~2-422、および実施例1で示した比較例1-1において、実施例1で説明した再生耐久性の評価を行った。
A面情報記録媒体101における結果を表9及び10に示す。
【0204】
【表9】
【0205】
【表10】
【0206】
ディスクNo.2-401~2-422おいて、比較例1-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表11及び12に示す。
【0207】
【表11】
【0208】
【表12】
【0209】
ディスクNo.2-401~2-422において、比較例1-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
【0210】
(実施例5)
本実施例では図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。第1誘電体膜21として表13、15に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて、本発明の実施形態にかかる誘電体を13~19nm、記録膜22として実質的にW31Cu18Ta21Zn11Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu18Ta21Zn11Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を9~15nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。また、第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
続けて、L1層20上に、螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0211】
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として実質的に(ZrO30(SiO30(In40(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO30(SiO30(In40(mol%)(を14nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を12nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜32の成膜はAr+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。また、第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
【0212】
次にB面情報記録媒体102の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
続けて、L0層10上に、螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。第1誘電体膜21として、表12、14に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて13~19nm、記録膜22として実質的にW31Cu18Ta21Zn11Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu18Ta21Zn11Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を9~15nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。また、第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
【0213】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として実質的に(ZrO30(SiO30(In40(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO30(SiO30(In40(mol%)を14nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を12nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。また、第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0214】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に、紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
【0215】
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102のL1層20の第1誘電体膜21に、
Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、
Zr20Zn2060 (原子%)、
Zr16.7Zn16.766.6 (原子%)、
Zr18.42.3Zn19.559.8 (原子%)、
Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%)、
Zr9.5Ca0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、
Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、
Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%)、
Zr9.7Zn18.5Sn9.7Al1.960.2 (原子%)
Zr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%)
ZrSiZn20Sn1060(ZrOとSiOを含む)(原子%)
およびZrSiZn20Sn1060(ZrSiOを含む)(原子%)
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ3-101~3-112とする。また比較例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜21にZr3.4Si3.4In31.861.4 (原子%)を適用したディスクNo.比較例2-1を作製した。
【0216】
これらの3-101~3-112および比較例2-1において8倍速の再生耐久性の評価を行った。再生耐久性の評価はパルステック製評価機(ODU-1000)を用いて行った。評価方法についてはL1層20における再生パワーを3.1mWとした以外は実施例1と同様の方法で行った。
A面情報記録媒体101における結果を表13に示す。
【0217】
【表13】
【0218】
ディスクNo.3-101~3-112において、比較例2-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表14に示す。
【0219】
【表14】
【0220】
ディスクNo.3-101~3-112において、比較例2-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
【0221】
さらに本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜21に、
Zr10Zn20Sn60 (原子%)、
Zr7.4Zn23.5Sn10.358.8 (原子%)、
Zr3.3Sn30.066.7 (原子%)、
Zr2.3Sn31.066.7 (原子%)、
Zr17.8Zn6.7Sn11.164.4 (原子%)、
Zr25.9Zn11.163.0 (原子%)、
Zr26.5Zn10.363.2 (原子%)、
Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%)、
Zr6.71.2Zn23.2Sn10.258.7 (原子%)、
Zr12.71.1Zn15.2Sn9.561.5 (原子%)、
Zr17.51.1Zn9.0Sn9.063.4 (原子%)、
Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%)、
Zr7.2Zn21.8Sn10.0Ga2.059.0 (原子%)、
Zr13.1Zn14.0Sn9.4Ga1.961.6 (原子%)、
Zr17.7Zn8.0Sn8.9Ga1.863.7 (原子%)、
Zr9.4Zn17.0Sn9.4Ga3.860.4 (原子%)、
Zr9.1Zn15.3Sn9.1Ga5.860.7 (原子%)、
およびZr8.9Zn14.0Sn8.9Ga7.560.7 (原子%)、
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ3-201~3-218とする。ディスクNo.3-204及び3-207は比較例である。
【0222】
これらの3-201~3-218において8倍速の再生耐久性の評価を行った。評価の方法は前述した方法と同じである。
さらに、3-201~3-218において500GB密度8倍速記録におけるd-MLSEの評価を行った。d-MLSEの評価においては、14.0%以下をA(非常に良好)、14.0%より大きく14.5%以下をB(良好)、14.5%より大きく15.0%以下をC(実用レベル)、15%より大きいものをD(実用不可)とした。
【0223】
さらに、3-201~3-218の第1誘電体膜21に適用した誘電体材料の成膜速度の評価を行った。成膜速度はガラス基板上に第1誘電体膜21を成膜し、段差計により膜厚を測定することで算出した。情報記録媒体100を製造する上で定められたディスク1枚を製造する時間内で第1誘電体膜21の成膜可能とする成膜速度が得られるものをA、成膜速度が不十分なものをD(実用不可)とした。
総合的に、再生耐久性、d-MLSE、および成膜速度の評価において、Dが含まれるものをD(実用不可)、DがなくCが含まれるものをC(実用レベル)、CやDがなくBが2つ以上のものをB(良好)、CやDがなくAが2つ以上のものをA(非常に良好)と判定した。
A面情報記録媒体101における結果を表15に示す。
【0224】
【表15】
【0225】
ディスクNo.3-204において、Zr量が3原子%より少なくなるとd-MLSEに悪化が見られ実用不可であることから、Zr量は3原子%以上である必要がある。また3-207において、Zr量が26原子%より多くなると成膜速度に低下が見られ実用不可であることから、Zr量は26原子%以下である必要がある。
また3-218において、Ga量が7原子%より多くなるとd-MLSEに悪化が見られることから、Ga量は7原子%以下であることが好ましい。
B面情報記録媒体102における結果を表16に示す。
【0226】
【表16】
【0227】
B面情報記録媒体102においてもA面情報記録媒体101と同様の結果が得られた。
【0228】
(実施例6)
本実施例では図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0229】
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。第1誘電体膜21として、表17及び表18に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を13~19nm、記録膜22として、実質的にW31Cu17Ta22Zn11Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu17Ta22Zn11Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として、表17及び表18に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を11~15nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。また、第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(2kW)を用いて行った。
続けて、L1層20上に、螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。L2層30の構成および製造方法は実施例4と同様である。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
次にB面情報記録媒体102の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0230】
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。第1誘電体膜21として、表19及び表20に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を13~19nm、記録膜22として実質的にW31Cu17Ta22Zn11Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu17Ta22Zn11Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として、表19および表20に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を11~15nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。また、第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(2kW)を用いて行った。
続けて、L1層20上に、螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。L2層30の構成および製造方法は実施例5と同様である。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0231】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜21および第2誘電体膜23に、
(第1誘電体膜21、第2誘電体膜23)の順に、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%)、Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%))、
(Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%)、Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%))、
(Zr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%)、Zr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%))、
(Zr20Zn2060 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr16.7Zn16.766.6 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr18.42.3Zn19.559.8 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.5Ca0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.7Zn18.5Sn9.7Al1.960.2 (原子%)、Zr10Zn20Sn1060 (原子%))、
(Zr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%)、Zr10Zn20 Sn1060 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr20Zn2060 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr16.7Zn16.766.6 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr18.42.3Zn19.559.8 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr9.5Ca0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%))、
(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr9.7Zn18.5Sn9.7Al1.960.2 (原子%))
および(Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、Zr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%))
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ3-301~3-322とする。
これらの3-301~3-322、および実施例5で示した比較例2-1において、実施例5で説明した再生耐久性の評価を行った。
A面情報記録媒体101における結果を表17及び18に示す。
【0232】
【表17】
【0233】
【表18】
【0234】
ディスクNo.3-301~3-322おいて、比較例2-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表19及び20に示す。
【0235】
【表19】
【0236】
【表20】
【0237】
ディスクNo.3-301~3-322において、比較例2-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
【0238】
(実施例7)
本実施例では、図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。
続けて、基板1上にL0層10を形成した。第1誘電体膜11として、表21に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を13nm、記録膜12として実質的にW25Cu21Ta21ZnMn28-Oからなるターゲットを用いて、W25Cu21Ta21ZnMn28-Oを35nm、第2誘電体膜13として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜11の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜12の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+30sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。また、第2誘電体膜13の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
【0239】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例2と同様である。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。L2層30の構成および製造方法は実施例5と同様である。
【0240】
その後に、紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
次にB面情報記録媒体102の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。
続けて、基板1上にL0層10を形成した。第1誘電体膜11として表22に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を13nm、記録膜12として実質的にW25Cu21Ta21ZnMn28-Oからなるターゲットを用いて、W25Cu21Ta21ZnMn28-Oを35nm、第2誘電体膜13として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜11の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜12の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+30sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。また、第2誘電体膜13の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
【0241】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例2と同様である。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。L2層30の構成および製造方法は実施例5と同様である。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0242】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
【0243】
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102のL0層10の第1誘電体膜11に、
Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、
Zr20Zn2060 (原子%)、
Zr16.7Zn16.766.6 (原子%)、
Zr18.42.3Zn19.559.8 (原子%)、
Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%)、
Zr9.5Ca0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、
Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、
Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%)、
Zr9.7Zn18.5Sn9.7Al1.960.2 (原子%)
Zr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%)
ZrSiZn20Sn1060(ZrOとSiOを含む)(原子%)
およびZrSiZn20Sn1060(ZrSiOを含む)(原子%)
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ4-101~4-112とする。また比較例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜11にZr3.4Si3.4In31.861.4 (原子%)を適用したディスクNo.比較例3-1を作製した。
【0244】
これらの4-101~4-112および比較例3-1において8倍速の再生耐久性の評価を行った。再生耐久性の評価はパルステック製評価機(ODU-1000)を用いて行った。評価方法については、L0層10における再生パワーを3.5mWとした以外は実施例2と同様の方法で行った。
A面情報記録媒体101における結果を表21に示す。
【0245】
【表21】
【0246】
ディスクNo.4-101~4-112において、比較例3-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表22に示す。
【0247】
【表22】
【0248】
ディスクNo.4-101~4-112において、比較例3-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
【0249】
(実施例8)
本実施例では、図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。
基板1として、実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例2と同様である。
【0250】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として表23に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を17nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、順次スパッタリング法により成膜した。本実施例においては、第2誘電体膜33は設けていない。
第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を記録膜32上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
【0251】
次にB面情報記録媒体102の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例2と同様である。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として表24に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を17nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、順次スパッタリング法により成膜した。本実施例においては、第2誘電体膜33は設けていない。
第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を記録膜32上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0252】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
【0253】
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜31に、
Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、
Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%)、
Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%)、
およびZr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%)
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ5-101~5-104とする。
これらの5-101~5-104において、実施例1で説明した再生耐久性の評価を行った。
A面情報記録媒体101における結果を表23に示す。
【0254】
【表23】
【0255】
ディスクNo.5-101~5-104おいて、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表24に示す。
【0256】
【表24】
【0257】
ディスクNo.5-101~5-104において、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
【0258】
(実施例9)
本実施例では図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。本実施例の情報記録媒体100は片面にL0層10とL1層20の2つの情報層を有する情報記録媒体である。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。基板1として実施例1と同様の基板を用いた。
続けて、基板1上にL0層10を形成した。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。第1誘電体膜21として表25に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を16nm、記録膜22として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を14nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源を用いて行った。また、第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気でDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜23上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約75μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
次にB面情報記録媒体102の構成を説明する。基板1として実施例1と同様の基板を用いた。
【0259】
続けて、基板1上にL0層10を形成した。L0層10の構成および製造方法は実施例1と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。第1誘電体膜21として、表26に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を16nm、記録膜22として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を14nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。また、記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。また、第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気でDC電源を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜23上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約75μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0260】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜21に、
Zr10Zn20Sn1060 (原子%)、
Zr9.31.2Zn19.8Sn9.959.8 (原子%)、
Zr9.7Zn18.5Sn9.7Ga1.960.2 (原子%)、
およびZr9.01.2Zn18.2Sn9.6Ga1.960.1 (原子%)
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ6-101~6-104とする。
これらの6-101~6-104において、実施例1で説明した再生耐久性の評価を行った。
A面情報記録媒体101における結果を表25に示す。
【0261】
【表25】
【0262】
ディスクNo.6-101~6-104おいて、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表26に示す。
【0263】
【表26】
【0264】
ディスクNo.6-101~6-104において、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態における誘電体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
【0265】
(実施例10)
本実施例では、図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。基板1として、螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.5mm)を用意した。その基板1上に、L0層10を形成した。第1誘電体膜11として実質的に(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(SnO25(Ga1.1(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(SnO25(Ga1.1(mol%)を13nm、記録膜12として実質的にW31Cu19Ta22ZnMn23-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu19Ta22ZnMn23-Oを34nm、第2誘電体膜13として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0266】
波長405nmのレーザ光6において、L1層20およびL2層30がない場合のL0層10の反射率が、未記録状態でR≒8.0%、R≒8.5%である。
第1誘電体膜11の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、パルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜12の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+30sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜13の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、DC電源(2kW)を用いて行った。
【0267】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の第1誘電体膜21として実質的に(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(SnO25(Ga1.1(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(SnO25(Ga1.1(mol%)を17nm、記録膜22として、本発明の実施形態における実質的にW31Cu18Ta16Zn16Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu18Ta16Zn16Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0268】
波長405nmのレーザ光6において、L2層30がない場合のL1層20の反射率が、記録膜22が未記録状態でR≒6.0%、R≒6.3%、透過率が約77%である。
また、第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス(流量:12+36sccm)雰囲気でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
【0269】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として、表27に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を15nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta16Zn17Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta16Zn17Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0270】
波長405nmのレーザ光6において、L2層30の反射率が、記録膜32が未記録状態でR≒5.8%、R≒6.1%、透過率が約80%となるように設定した。
また、第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源を用いて行った。第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に、紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
【0271】
次に、B面情報記録媒体102の構成を説明する。基板1として、螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)が形成されたポリカーボネート基板(厚さ0.5mm)を用意した。案内溝の螺旋の回転方向は前述したA面情報記録媒体101の基板1とは逆の方向とした。その基板1上に、L0層10を形成した。第1誘電体膜11として実質的に(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(SnO25(Ga1.1(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(SnO25(Ga1.1(mol%)を13nm、記録膜12として実質的にW31Cu19Ta22ZnMn23-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu19Ta22ZnMn23-Oを34nm、第2誘電体膜13として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0272】
波長405nmのレーザ光6において、L1層20およびL2層30がない場合のL0層10の反射率が、未記録状態でR≒8.0%、R≒8.5%である。
第1誘電体膜11は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、パルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜12の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+30sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜13の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、DC電源(2kW)を用いて行った。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0273】
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の第1誘電体膜21として実質的に(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(SnO25(Ga1.1(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(SnO25(Ga1.1(mol%)を17nm、記録膜22として、本発明の実施形態における実質的にW31Cu18Ta16Zn16Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu18Ta16Zn16Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6において、L2層30がない場合のL1層20の反射率が、記録膜22が未記録状態でR≒6.0%、R≒6.3%、透過率が約77%である。
【0274】
また、第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス(流量:12+36sccm)雰囲気でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0275】
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として、表28に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を15nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta16Zn17Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta16Zn17Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0276】
第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、波長405nmのレーザ光6において、L2層30の反射率が、記録膜32が未記録状態でR≒5.8%、R≒6.1%、透過率が約80%となるように設定した。
また、第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0277】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に、紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
【0278】
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜31に、
Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、
Zr9.0Mg0.6Zn14.4Sn14.461.6 (原子%)
Zr9.2Mg0.6Zn18.6Sn9.8Ga2.059.8 (原子%)
Zr8.8Mg0.6Zn13.0Sn14.0Ga2.061.6 (原子%)
Zr9.2Mg0.8Zn19.5Sn10.0Ga0.959.6 (原子%)
Zr8.8Mg0.8Zn14.0Sn14.3Ga0.861.3 (原子%)
Zr13.2Mg1.2Zn14.0Sn9.6Ga0.661.4 (原子%)
Zr7.3Mg0.6Zn19.4Sn11.9Ga0.959.9 (原子%)
Zr11.0Mg1.0Zn19.5Sn8.0Ga0.959.6 (原子%)
Zr9.2Ca0.8Zn19.5Sn10.0Ga0.959.6 (原子%)
およびZr9.2Mg0.8Zn19.5Sn10.0Al0.959.6 (原子%)
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ10-101~10-111とする。
これらの10-101~10-111および比較例1-1において実施例2で説明した8倍速の再生耐久性の評価を行った。
A面情報記録媒体101における結果を表27に示す。
【0279】
【表27】
【0280】
ディスクNo.10-101~10-111において、比較例1-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明における誘電体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表28に示す。
【0281】
【表28】
【0282】
ディスクNo.10-101~10-111において、比較例1-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
【0283】
(実施例11)
本実施例では、図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例10と同様である。
【0284】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例10と同様である。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0285】
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として、表29及び表30に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を15nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として、表29及び表30に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、波長405nmのレーザ光6において、L2層30の反射率が、記録膜32が未記録状態でR≒5.8%、R≒6.1%、透過率が約80%となるように設定した。
【0286】
また、第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源を用いて行った。第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。
その後に、紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
【0287】
次に、B面情報記録媒体102の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例10と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例10と同様である。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0288】
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として、表31及び表32に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を15nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oからなるターゲットを用いてW32Cu17Ta22Zn11Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として、表31及び表32に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を11nm、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、波長405nmのレーザ光6において、L2層30の反射率が、記録膜32が未記録状態でR≒5.8%、R≒6.1%、透過率が約80%となるように設定した。
【0289】
また、第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0290】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に、紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
【0291】
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜31および第2誘電体膜33に、
Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、
Zr9.0Mg0.6Zn14.4Sn14.461.6 (原子%)
Zr9.2Mg0.6Zn18.6Sn9.8Ga2.059.8 (原子%)
Zr8.8Mg0.6Zn13.0Sn14.0Ga2.061.6 (原子%)
Zr9.2Mg0.8Zn19.5Sn10.0Ga0.959.6 (原子%)
Zr8.8Mg0.8Zn14.0Sn14.3Ga0.861.3 (原子%)
Zr13.2Mg1.2Zn14.0Sn9.6Ga0.661.4 (原子%)
Zr7.3Mg0.6Zn19.4Sn11.9Ga0.959.9 (原子%)
Zr11.0Mg1.0Zn19.5Sn8.0Ga0.959.6 (原子%)
Zr9.2Ca0.8Zn19.5Sn10.0Ga0.959.6 (原子%)
およびZr9.2Mg0.8Zn19.5Sn10.0Al0.959.6 (原子%)
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ10-201~10-211とする。
【0292】
これらの10-201~10-211および比較例1-1において実施例2で説明した8倍速の再生耐久性の評価を行った。
A面情報記録媒体101における結果を表29及び30に示す。
【0293】
【表29】
【0294】
【表30】
【0295】
ディスクNo.10-201~10-211において、比較例1-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表31及び32に示す。
【0296】
【表31】
【0297】
【表32】
ディスクNo.10-201~10-211において、比較例1-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
【0298】
(実施例12)
本実施例では、図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例10と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の第1誘電体膜21として表33に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を17nm、記録膜22として、本発明の実施形態における実質的にW31Cu18Ta16Zn16Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu18Ta16Zn16Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0299】
波長405nmのレーザ光6において、L2層30がない場合のL1層20の反射率が、記録膜22が未記録状態でR≒6.0%、R≒6.3%、透過率が約77%である。
また、第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス(流量:12+36sccm)雰囲気でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0300】
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として実質的に(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(SnO25(Ga1.1(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(SnO25(Ga1.1(mol%)を15nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta16Zn17Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta16Zn17Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6において、L2層30の反射率が、記録膜32が未記録状態でR≒5.8%、R≒6.1%、透過率が約80%となるように設定した。
【0301】
また、第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源を用いて行った。第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に、紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
【0302】
次に、B面情報記録媒体102の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例10と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の第1誘電体膜21として表34に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を17nm、記録膜22として、本発明の実施形態における実質的にW31Cu18Ta16Zn16Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu18Ta16Zn16Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0303】
波長405nmのレーザ光6において、L2層30がない場合のL1層20の反射率が、記録膜22が未記録状態でR≒6.0%、R≒6.3%、透過率が約77%である。
また、第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス(流量:12+36sccm)雰囲気でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0304】
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として実質的に(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(SnO25(Ga1.1 (mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO23(MgO)(ZnO)48.9(SnO25(Ga1.1(mol%)を15nm、記録膜32として実質的にW32Cu17Ta16Zn17Mn18-Oからなるターゲットを用いて、W32Cu17Ta16Zn17Mn18-Oを34nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0305】
第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、波長405nmのレーザ光6において、L2層30の反射率が、記録膜32が未記録状態でR≒5.8%、R≒6.1%、透過率が約80%となるように設定した。
また、第1誘電体膜31の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+36sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でDC電源(2kW)を用いて行った。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に、紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
【0306】
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜21に、
Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、
Zr9.0Mg0.6Zn14.4Sn14.461.6 (原子%)
Zr9.2Mg0.6Zn18.6Sn9.8Ga2.059.8 (原子%)
Zr8.8Mg0.6Zn13.0Sn14.0Ga2.061.6 (原子%)
Zr9.2Mg0.8Zn19.5Sn10.0Ga0.959.6 (原子%)
Zr8.8Mg0.8Zn14.0Sn14.3Ga0.861.3 (原子%)
Zr13.2Mg1.2Zn14.0Sn9.6Ga0.661.4 (原子%)
Zr7.3Mg0.6Zn19.4Sn11.9Ga0.959.9 (原子%)
Zr11.0Mg1.0Zn19.5Sn8.0Ga0.959.6 (原子%)
Zr9.2Ca0.8Zn19.5Sn10.0Ga0.959.6 (原子%)
およびZr9.2Mg0.8Zn19.5Sn10.0Al0.959.6 (原子%)
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ11-101~11-111とする。
【0307】
これらの11-101~11-111および比較例2-1において実施例5で説明した8倍速の再生耐久性の評価を行った。
A面情報記録媒体101における結果を表33に示す。
【0308】
【表33】
【0309】
ディスクNo.11-101~11-111において、比較例2-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表34に示す。
【0310】
【表34】
【0311】
ディスクNo.11-101~11-111において、比較例2-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
【0312】
(実施例13)
本実施例では、図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例10と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0313】
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の第1誘電体膜21として表35及び表36に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を17nm、記録膜22として、本発明の実施形態における実質的にW31Cu18Ta16Zn16Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu18Ta16Zn16Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として表35及び表36に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6において、L2層30がない場合のL1層20の反射率が、記録膜22が未記録状態でR≒6.0%、R≒6.3%、透過率が約77%である。
また、第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス(流量:12+36sccm)雰囲気でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。
【0314】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。L2層30の構成および製造方法は実施例12と同様である。
その後に、紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
次に、B面情報記録媒体102の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。L0層10の構成および製造方法は実施例10と同様である。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0315】
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の第1誘電体膜21として表37及び表38に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を17nm、記録膜22として、本発明の実施形態における実質的にW31Cu18Ta16Zn16Mn19-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu18Ta16Zn16Mn19-Oを35nm、第2誘電体膜23として表37及び表38に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を13nm、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6において、L2層30がない場合のL1層20の反射率が、記録膜22が未記録状態でR≒6.0%、R≒6.3%、透過率が約77%である。
また、第1誘電体膜21の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス(流量:12+36sccm)雰囲気でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)でパルスDC電源(3kW)を用いて行った。
【0316】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。L2層30の構成および製造方法は実施例12と同様である。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0317】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に、紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
【0318】
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜21および第2誘電体膜23に、
Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、
Zr9.0Mg0.6Zn14.4Sn14.461.6 (原子%)
Zr9.2Mg0.6Zn18.6Sn9.8Ga2.059.8 (原子%)
Zr8.8Mg0.6Zn13.0Sn14.0Ga2.061.6 (原子%)
Zr9.2Mg0.8Zn19.5Sn10.0Ga0.959.6 (原子%)
Zr8.8Mg0.8Zn14.0Sn14.3Ga0.861.3 (原子%)
Zr13.2Mg1.2Zn14.0Sn9.6Ga0.661.4 (原子%)
Zr7.3Mg0.6Zn19.4Sn11.9Ga0.959.9 (原子%)
Zr11.0Mg1.0Zn19.5Sn8.0Ga0.959.6 (原子%)
Zr9.2Ca0.8Zn19.5Sn10.0Ga0.959.6 (原子%)
およびZr9.2Mg0.8Zn19.5Sn10.0Al0.959.6 (原子%)
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ11-201~11-211とする。
【0319】
これらの11-201~11-211および比較例2-1において実施例5で説明した8倍速の再生耐久性の評価を行った。
A面情報記録媒体101における結果を表35及び36に示す。
【0320】
【表35】
【0321】
【表36】
【0322】
ディスクNo.11-201~11-211において、比較例2-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表37及び38に示す。
【0323】
【表37】
【0324】
【表38】
【0325】
ディスクNo.11-201~11-211において、比較例2-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
【0326】
(実施例14)
本実施例では、図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。
その基板1上に、L0層10を形成した。第1誘電体膜11として表39に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を13nm、記録膜12として実質的にW31Cu19Ta22ZnMn23-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu19Ta22ZnMn23-Oを34nm、第2誘電体膜13として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0327】
波長405nmのレーザ光6において、L1層20およびL2層30がない場合のL0層10の反射率が、未記録状態でR≒8.0%、R≒8.5%である。
第1誘電体膜11の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、パルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜12の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+30sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜13の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、DC電源(2kW)を用いて行った。
【0328】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例10と同様である。
【0329】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。L2層30の構成および製造方法は実施例12と同様である。
その後に、紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
【0330】
次に、B面情報記録媒体102の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。
その基板1上に、L0層10を形成した。第1誘電体膜11として表40に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を13nm、記録膜12として実質的にW31Cu19Ta22ZnMn23-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu19Ta22ZnMn23-Oを34nm、第2誘電体膜13として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて、(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6において、L1層20およびL2層30がない場合のL0層10の反射率が、未記録状態でR≒8.0%、R≒8.5%である。
第1誘電体膜11の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、パルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜12の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+30sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜13の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、DC電源(2kW)を用いて行った。
【0331】
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例10と同様である。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。L2層30の構成および製造方法は実施例12と同様である。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に、紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
【0332】
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜11に、
Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、
Zr9.0Mg0.6Zn14.4Sn14.461.6 (原子%)
Zr9.2Mg0.6Zn18.6Sn9.8Ga2.059.8 (原子%)
Zr8.8Mg0.6Zn13.0Sn14.0Ga2.061.6 (原子%)
Zr9.2Mg0.8Zn19.5Sn10.0Ga0.959.6 (原子%)
Zr8.8Mg0.8Zn14.0Sn14.3Ga0.861.3 (原子%)
Zr13.2Mg1.2Zn14.0Sn9.6Ga0.661.4 (原子%)
Zr7.3Mg0.6Zn19.4Sn11.9Ga0.959.9 (原子%)
Zr11.0Mg1.0Zn19.5Sn8.0Ga0.959.6 (原子%)
Zr9.2Ca0.8Zn19.5Sn10.0Ga0.959.6 (原子%)
およびZr9.2Mg0.8Zn19.5Sn10.0Al0.959.6 (原子%)
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ12-101~12-111とする。
【0333】
これらの12-101~12-111および比較例3-1において実施例7で説明した8倍速の再生耐久性の評価を行った。
A面情報記録媒体101における結果を表39に示す。
【0334】
【表39】
【0335】
ディスクNo.12-101~12-111において、比較例3-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表40に示す。
【0336】
【表40】
【0337】
ディスクNo.12-101~12-111において、比較例3-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
【0338】
(実施例15)
本実施例では、図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。
その基板1上に、L0層10を形成した。第1誘電体膜11として表41及び表42に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を13nm、記録膜12として実質的にW31Cu19Ta22ZnMn23-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu19Ta22ZnMn23-Oを34nm、第2誘電体膜13として表41及び表42に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6において、L1層20およびL2層30がない場合のL0層10の反射率が、未記録状態でR≒8.0%、R≒8.5%である。
第1誘電体膜11の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、パルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜12の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+30sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜13の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、パルスDC電源(3kW)を用いて行った。
【0339】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例10と同様である。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。L2層30の構成および製造方法は実施例12と同様である。
その後に、紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
【0340】
次に、B面情報記録媒体102の構成を説明する。
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。
その基板1上に、L0層10を形成した。第1誘電体膜11として表43に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を13nm、記録膜12として実質的にW31Cu19Ta22ZnMn23-Oからなるターゲットを用いて、W31Cu19Ta22ZnMn23-Oを34nm、第2誘電体膜13として表44に記載のそれぞれの組成に対応したターゲットを用いて本発明の実施形態にかかる誘電体を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6において、L1層20およびL2層30がない場合のL0層10の反射率が、未記録状態でR≒8.0%、R≒8.5%である。
第1誘電体膜11の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、パルスDC電源(4kW)を用いて行った。記録膜12の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気(流量:12+30sccm)でパルスDC電源(5kW)を用いて行った。第2誘電体膜13の成膜は、Ar雰囲気(流量:12sccm)で、パルスDC電源(3kW)を用いて行った。
【0341】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層2を形成した。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
次に、中間分離層2上にL1層20を形成した。L1層20の構成および製造方法は実施例10と同様である。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ27nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.225μm)の設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
中間分離層3上にL2層30を形成した。L2層30の構成および製造方法は実施例12と同様である。
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層4を約57μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面に、紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対側の面と貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層5(厚み約35μm)を形成した。
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
【0342】
本実施例の情報記録媒体100の一例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜11および第2誘電体膜13に、
Zr9.5Mg0.6Zn20.1Sn10.159.7 (原子%)、
Zr9.0Mg0.6Zn14.4Sn14.461.6 (原子%)
Zr9.2Mg0.6Zn18.6Sn9.8Ga2.059.8 (原子%)
Zr8.8Mg0.6Zn13.0Sn14.0Ga2.061.6 (原子%)
Zr9.2Mg0.8Zn19.5Sn10.0Ga0.959.6 (原子%)
Zr8.8Mg0.8Zn14.0Sn14.3Ga0.861.3 (原子%)
Zr13.2Mg1.2Zn14.0Sn9.6Ga0.661.4 (原子%)
Zr7.3Mg0.6Zn19.4Sn11.9Ga0.959.9 (原子%)
Zr11.0Mg1.0Zn19.5Sn8.0Ga0.959.6 (原子%)
Zr9.2Ca0.8Zn19.5Sn10.0Ga0.959.6 (原子%)
およびZr9.2Mg0.8Zn19.5Sn10.0Al0.959.6 (原子%)
を適用した情報記録媒体100を作製した。これらのディスクNo.をそれぞれ12-201~12-211とする。
【0343】
これらの12-201~12-211および比較例3-1において実施例7で説明した8倍速の再生耐久性の評価を行った。
A面情報記録媒体101における結果を表41及び42に示す。
【0344】
【表41】
【0345】
【表42】
【0346】
ディスクNo.12-201~12-211において、比較例3-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
B面情報記録媒体102における結果を表43及び44に示す。
【0347】
【表43】
【0348】
【表44】
【0349】
ディスクNo.12-201~12-211において、比較例3-1に対し、いずれも再生耐久性が非常に良好な結果が得られ、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体による再生耐久性向上の効果が確認できた。
以上の実施例において、記録再生の評価はデータビット長47.7nmの信号により行ったが、10%程度であればデータビット長が異なる信号を用いてもいずれの実施例においても、同様の評価結果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0350】
本開示の情報記録媒体とその製造方法は、より高い再生光量を与える示す情報層を有するように構成されるので、高記録密度で情報を記録するのに適しており、大容量のコンテンツを記録する光ディスクに有用である。具体的にはアーカイバル・ディスク規格に準じて両面に3層ないし4層の情報層を備える、次世代の光ディスク(例えば、記録容量500GB)に有用である。
【0351】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2018年8月9日出願の日本特許出願(特願2018-150255)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0352】
100 情報記録媒体
101 A面情報記録媒体
102 B面情報記録媒体
10 L0層
20 L1層
30 L2層
11、21、31 第1誘電体膜
12、22、32 記録膜
13、23、33 第2誘電体膜
1 基板
2、3 中間分離層
4 カバー層
5 貼り合わせ層
6 レーザ光
図1