(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】位置検出システム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/14 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
G01D5/14 F
(21)【出願番号】P 2019093990
(22)【出願日】2019-05-17
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植松 秀典
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-524142(JP,A)
【文献】特表2012-506553(JP,A)
【文献】特開2013-246135(JP,A)
【文献】特開2013-217855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00- 5/252
G01D 5/39- 5/62
G01R 33/02
G01B 7/00- 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界の方向に応じた検出信号を出力する磁気検出素子と、
一方向又は前記一方向とは反対方向において前記磁気検出素子に対して相対的に移動し、前記一方向と交差する方向において前記磁気検出素子と対向する永久磁石と、
前記永久磁石から見て前記磁気検出素子が配置された側と同じ側に配置されており、前記永久磁石によって生じる磁界が作用する複数のヨークと、を備え、
前記複数のヨークは、前記一方向に並んで
おり、
前記複数のヨークは、前記磁気検出素子と前記永久磁石との間に配置されており、
前記複数のヨークとしての複数の第1のヨークとは別の、第2のヨークを更に備え、
前記磁気検出素子は、前記複数の第1のヨークと前記第2のヨークとの間に配置されている、
位置検出システム。
【請求項2】
前記第2のヨークの透磁率は、前記複数の第1のヨークの透磁率の代表値よりも大きい、
請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
磁界の方向に応じた検出信号を出力する磁気検出素子と、
一方向又は前記一方向とは反対方向において前記磁気検出素子に対して相対的に移動し、前記一方向と交差する方向において前記磁気検出素子と対向する永久磁石と、
前記永久磁石から見て前記磁気検出素子が配置された側と同じ側に配置されており、前記永久磁石によって生じる磁界が作用する複数のヨークと、を備え、
前記複数のヨークは、前記一方向に並んでおり、
前記複数のヨークと前記永久磁石との相対的な位置関係は、固定されている、
位置検出システム。
【請求項4】
磁界の方向に応じた検出信号を出力する磁気検出素子と、
一方向又は前記一方向とは反対方向において前記磁気検出素子に対して相対的に移動し、前記一方向と交差する方向において前記磁気検出素子と対向する永久磁石と、
前記永久磁石から見て前記磁気検出素子が配置された側と同じ側に配置されており、前記永久磁石によって生じる磁界が作用する複数のヨークと、を備え、
前記複数のヨークは、前記一方向に並んでおり、
前記複数のヨークの各々は、前記一方向と交差する平面内で前記永久磁石から見て外方向に凸の湾曲部を含む、
位置検出システム。
【請求項5】
磁界の方向に応じた検出信号を出力する磁気検出素子と、
一方向又は前記一方向とは反対方向において前記磁気検出素子に対して相対的に移動し、前記一方向と交差する方向において前記磁気検出素子と対向する永久磁石と、
前記永久磁石から見て前記磁気検出素子が配置された側と同じ側に配置されており、前記永久磁石によって生じる磁界が作用する複数のヨークと、を備え、
前記複数のヨークは、前記一方向に並んでおり、
前記複数のヨークの各々は、前記一方向と交差する平面内で前記永久磁石の周囲に閉磁路を形成する、
位置検出システム。
【請求項6】
前記磁気検出素子は、前記複数のヨークと前記永久磁石との間に配置されている、
請求項3~5のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項7】
前記複数のヨークと前記磁気検出素子との相対的な位置関係は、固定されている、
請求項1、2、4、5のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項8】
前記複数のヨークの個数は、3つ以上である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項9】
前記複数のヨークは、前記一方向に等間隔に並んでいる、
請求項8に記載の位置検出システム。
【請求項10】
前記磁気検出素子から出力された前記検出信号に基づいて、前記磁気検出素子と前記永久磁石とのうちいずれか一方に対する他方の相対位置に関する値を演算する演算処理部を更に備える、
請求項1~9のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に位置検出システムに関し、より詳細には、磁気検出素子と永久磁石とを備える位置検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の磁気式位置検出装置は、バイアス磁石(永久磁石)と、軟磁性体(ヨーク)と、印加磁界の方向を検出する検磁素子(磁気検出素子)と、を備える。バイアス磁石に対する軟磁性体の相対移動により、検磁素子の位置における磁界の方向が変化する。磁気式位置検出装置は、検磁素子の出力に基づいて、バイアス磁石に対する軟磁性体の相対移動を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の磁気式位置検出装置では、軟磁性体を設けたことにより、磁力線が軟磁性体の周囲に偏在する。この結果、検磁素子とバイアス磁石との相対位置が一方向又は一方向とは反対方向に一定距離だけ変化したときの、検磁素子の位置における磁界の方向の変化量が小さくなるという課題があった。
【0005】
本開示は、磁気検出素子と永久磁石との相対位置が一方向又は一方向とは反対方向に一定距離だけ変化したときの、磁気検出素子の位置における磁界の方向の変化量を大きくすることができる位置検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る位置検出システムは、磁気検出素子と、永久磁石と、複数のヨークと、を備える。前記磁気検出素子は、磁界の方向に応じた検出信号を出力する。前記永久磁石は、一方向又は前記一方向とは反対方向において前記磁気検出素子に対して相対的に移動する。前記永久磁石は、前記一方向と交差する方向において前記磁気検出素子と対向する。前記複数のヨークは、前記永久磁石から見て前記磁気検出素子が配置された側と同じ側に配置されている。前記複数のヨークには、前記永久磁石によって生じる磁界が作用する。前記複数のヨークは、前記一方向に並んでいる。前記複数のヨークは、前記磁気検出素子と前記永久磁石との間に配置されている。前記複数のヨークとしての複数の第1のヨークとは別の、第2のヨークを更に備える。前記磁気検出素子は、前記複数の第1のヨークと前記第2のヨークとの間に配置されている。
本開示の別の一態様に係る位置検出システムは、磁気検出素子と、永久磁石と、複数のヨークと、を備える。前記磁気検出素子は、磁界の方向に応じた検出信号を出力する。前記永久磁石は、一方向又は前記一方向とは反対方向において前記磁気検出素子に対して相対的に移動する。前記永久磁石は、前記一方向と交差する方向において前記磁気検出素子と対向する。前記複数のヨークは、前記永久磁石から見て前記磁気検出素子が配置された側と同じ側に配置されている。前記複数のヨークには、前記永久磁石によって生じる磁界が作用する。前記複数のヨークは、前記一方向に並んでいる。前記複数のヨークと前記永久磁石との相対的な位置関係は、固定されている。
本開示の更に別の一態様に係る位置検出システムは、磁気検出素子と、永久磁石と、複数のヨークと、を備える。前記磁気検出素子は、磁界の方向に応じた検出信号を出力する。前記永久磁石は、一方向又は前記一方向とは反対方向において前記磁気検出素子に対して相対的に移動する。前記永久磁石は、前記一方向と交差する方向において前記磁気検出素子と対向する。前記複数のヨークは、前記永久磁石から見て前記磁気検出素子が配置された側と同じ側に配置されている。前記複数のヨークには、前記永久磁石によって生じる磁界が作用する。前記複数のヨークは、前記一方向に並んでいる。前記複数のヨークの各々は、前記一方向と交差する平面内で前記永久磁石から見て外方向に凸の湾曲部を含む。
本開示の更に別の一態様に係る位置検出システムは、磁気検出素子と、永久磁石と、複数のヨークと、を備える。前記磁気検出素子は、磁界の方向に応じた検出信号を出力する。前記永久磁石は、一方向又は前記一方向とは反対方向において前記磁気検出素子に対して相対的に移動する。前記永久磁石は、前記一方向と交差する方向において前記磁気検出素子と対向する。前記複数のヨークは、前記永久磁石から見て前記磁気検出素子が配置された側と同じ側に配置されている。前記複数のヨークには、前記永久磁石によって生じる磁界が作用する。前記複数のヨークは、前記一方向に並んでいる。前記複数のヨークの各々は、前記一方向と交差する平面内で前記永久磁石の周囲に閉磁路を形成する。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、磁気検出素子と永久磁石との相対位置が一方向又は一方向とは反対方向に一定距離だけ変化したときの、磁気検出素子の位置における磁界の方向の変化量を大きくすることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る位置検出システムの斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の位置検出システムの側面図である。
【
図3】
図3は、同上の位置検出システムの平面図である。
【
図4】
図4は、同上の位置検出システムの正面図である。
【
図5】
図5は、同上の位置検出システムの要部のブロック図である。
【
図6】
図6は、同上の位置検出システムの磁界強度のシミュレーション結果を含むグラフである。
【
図7】
図7は、同上の位置検出システムの磁界の方向のシミュレーション結果を含むグラフである。
【
図8】
図8は、同上の位置検出システムの磁界の方向の増減率のシミュレーション結果を含むグラフである。
【
図9】
図9は、比較例に係る位置検出システムの斜視図である。
【
図10】
図10は、別の比較例に係る位置検出システムの斜視図である。
【
図11】
図11は、変形例1に係る位置検出システムの側面図である。
【
図13】
図13は、変形例2に係る位置検出システムの正面図である。
【
図14】
図14は、変形例3に係る位置検出システムの正面図である。
【
図15】
図15は、変形例4に係る位置検出システムの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る位置検出システム1について、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0010】
(1)概要
本実施形態に係る位置検出システム1は、
図1、
図2に示すように、磁気検出素子2と、永久磁石3と、複数(
図2では8つ)のヨーク4と、を備える。磁気検出素子2は、磁界の方向に応じた検出信号S1(
図5参照)を出力する。永久磁石3は、一方向D1又は一方向D1とは反対方向において磁気検出素子2に対して相対的に移動する。永久磁石3は、一方向D1と交差する方向において磁気検出素子2と対向する。複数のヨーク4は、永久磁石3から見て磁気検出素子2が配置された側と同じ側に配置されている。複数のヨーク4には、永久磁石3によって生じる磁界が作用する。複数のヨーク4は、一方向D1に並んでいる。
【0011】
本実施形態によれば、位置検出システム1がヨーク4を1つも備えていない場合と比較して、複数のヨーク4の周囲の磁界の強度を大きくすることができる。これにより、磁界の方向の検出精度の向上を図ることができる。また、位置検出システム1がヨーク4を1つのみ備えている場合と比較して、磁気検出素子2と永久磁石3との相対位置が一方向D1又は一方向D1とは反対方向に一定距離だけ変化したときの、磁気検出素子2の位置における磁界の方向の変化量が大きくなる。これにより、磁界の方向の検出精度の更なる向上を図ることができる。
【0012】
(2)詳細
以下、位置検出システム1についての詳細を説明する。以下の説明では、一方向D1と直交し、かつ、永久磁石3と複数のヨーク4とが対向している方向に沿った方向を上下方向と規定し、永久磁石3から見て複数のヨーク4側を上と規定し、複数のヨーク4から見て永久磁石3側を下と規定する。
【0013】
位置検出システム1は、リニアポジションセンサとして用いられる。位置検出システム1は、例えば、自動車のブレーキペダル又はブレーキレバーの位置に関する値を求める用途に用いられる。すなわち、永久磁石3が連結されたブレーキペダル又はブレーキレバーが移動する(姿勢が変化する)と、これに応じて永久磁石3の位置が一方向D1又は一方向D1とは反対方向に変化する。永久磁石3の位置の変化により、磁気検出素子2の位置における磁界の方向が変化するので、これに応じて、磁気検出素子2から出力される検出信号S1(
図5参照)が変化する。後述する演算処理部6(
図5参照)は、検出信号S1に基づいた演算により、永久磁石3の位置、つまりブレーキペダル又はブレーキレバーの位置に関する値を求めることができる。
【0014】
(2-1)磁気検出素子
位置検出システム1の磁気検出素子2は、磁界の方向に応じた検出信号S1を出力する。より詳細には、検出信号S1は、磁界の方向と、磁界の強度とに応じた信号である。すなわち、磁気検出素子2は、磁気検出素子2の位置における磁界の方向及び強度を検出する。磁気検出素子2は、例えば、1又は複数のホール素子と、1又は複数の磁気抵抗素子とのうち、少なくとも一方を含んでいる。磁気検出素子2は、ホール素子及び/又は磁気抵抗素子から出力される信号を、検出信号S1として演算処理部6(
図5参照)に出力する。
【0015】
一方向D1から見て、磁気検出素子2は、複数のヨーク4と永久磁石3との間に配置されている(
図4参照)。
【0016】
上述の通り、複数のヨーク4は、一方向D1に並んでいる。磁気検出素子2は、一方向D1における複数のヨーク4の中心に配置されている。つまり、磁気検出素子2は、一方向D1に一列に並んだ複数のヨーク4の、一端から4番目のヨーク4と、5番目のヨーク4との間に配置されている。ここで、「中心」とは、厳密な中心だけを指すのではなく、厳密な中心を含む所定の領域を指す。所定の領域の一方向D1の長さは、例えば、互いに隣り合う複数のヨーク4間の距離に等しくてもよい。
【0017】
また、
図3に示すように、磁気検出素子2は、上下方向から見て、複数のヨーク4の各々の長手方向(
図3に示す方向D3)の中心に相当する位置に配置されている。ここでの「中心」も、厳密な中心だけを指すのではなく、厳密な中心を含む所定の領域を指す。
【0018】
(2-2)永久磁石
永久磁石3の形状は、
図1に示すように直方体状である。具体的には、永久磁石3は、上面31及び下面32(
図2参照)を有し、上面31は、一方向D1から見て円弧状である。より詳細には、一方向D1から見て、永久磁石3の上面31は、上面31の中央に近い部分ほど上に位置するような円弧状に形成されている。永久磁石3の下面32は、平面状である。
【0019】
永久磁石3は、一方向D1又は一方向D1とは反対方向において磁気検出素子2に対して相対的に移動する。永久磁石3と磁気検出素子2とのうちいずれか一方が移動してもよいし、永久磁石3と磁気検出素子2との各々の速度及び移動方向の少なくとも一方が互いに異なるようにして永久磁石3と磁気検出素子2との両方が移動してもよい。本実施形態では、位置検出システム1を備える自動車の本体に対する磁気検出素子2の位置は、固定されている。磁気検出素子2は、自動車(四輪車及び二輪車を含む)のブレーキペダルに接続されたスライド駆動部分を収容した筐体、又は二輪車のブレーキレバーに接続されたスライド駆動部分を収容した筐体に固定されている。本実施形態では、永久磁石3と磁気検出素子2とのうち永久磁石3のみが、自動車の本体に対して移動する。一方向D1及び一方向D1とは反対方向以外の方向への永久磁石3の移動は、規制されている。
【0020】
図2では、移動前の永久磁石3を実線で図示し、移動後の永久磁石3を二点鎖線で図示している。
図2では、一方向D1を矢印により図示している。また、永久磁石3は、一方向D1とは反対方向にも移動可能である。つまり、永久磁石3は、一方向D1と、一方向D1とは反対方向とにおいて磁気検出素子2に対して相対的に移動する。
【0021】
永久磁石3は、一方向D1と交差する方向において磁気検出素子2と対向する。「交差する方向」とは、直交する方向と、直交することなく交わる方向とを含む概念である。永久磁石3と磁気検出素子2との相対的な位置関係によって、永久磁石3が磁気検出素子2と対向する方向は異なる。
図2では、移動前の永久磁石3(実線で図示されている永久磁石3)は、
図2に図示された方向D2において磁気検出素子2と対向する。すなわち、ここでの永久磁石3と磁気検出素子2との対向する方向D2が一方向D1に対してなす角は、90度よりも小さい。なお、永久磁石3が磁気検出素子2の真下に位置するときは、方向D2が一方向D1に対してなす角は90度となる。
【0022】
永久磁石3のN極とS極とが並んでいる方向は、例えば、上下方向である。本実施形態では、永久磁石3の上面31を含む上部と下面32を含む下部とのうち、上部にN極が設けられており、下部にS極が設けられている。
【0023】
永久磁石3は、例えば、ブレーキペダル又はブレーキレバーに連結されている。永久磁石3は、ブレーキペダル又はブレーキレバーが操作されることに応じて、一方向D1又は一方向D1とは反対方向に移動する。これにより、永久磁石3と磁気検出素子2との相対的な位置関係が変化するので、磁気検出素子2の位置における磁界の方向が変化する。すなわち、磁気検出素子2で検出される磁界の方向が変化する。
【0024】
(2-3)ヨーク
複数のヨーク4の個数は、3つ以上であるのが好ましい。本実施形態では、複数のヨーク4の個数は、8つである。複数のヨーク4は、純鉄、パーマロイ又は珪素鋼等の磁性材料により形成されている。複数のヨーク4は、永久磁石3から見て磁気検出素子2が配置された側と同じ側に配置されている。つまり、複数のヨーク4は、一方向D1と交差する方向(ここでは、直交する方向)において、永久磁石3を挟んだ両側のうち、磁気検出素子2の側に配置されている。言い換えると、磁気検出素子2及び複数のヨーク4は、永久磁石3を基準として、上側と下側とのうち、上側に配置されている。
【0025】
複数のヨーク4には、永久磁石3によって生じる磁界が作用する。すなわち、複数のヨーク4は、永久磁石3から放射される磁束の経路に配置されている。複数のヨーク4は、一方向D1に等間隔に並んでいる。ここで、「等間隔」とは、間隔が厳密に等しいことに限定されず、許容される誤差の範囲内で異なっていてもよい。許容される誤差は、例えば、複数のヨーク4のうち、一方向D1の両端に配置された2つのヨーク4間の間隔の1~5%であってもよい。
【0026】
複数のヨーク4の各々は、板状である。複数のヨーク4の各々の厚さ方向は、一方向D1に沿っている。
図4に示すように、複数のヨーク4の各々は、湾曲部41を含む。湾曲部41は、一方向D1と交差する平面(ここでは、直交する平面)内で永久磁石3から見て外方向に凸の形状である。本実施形態では、複数のヨーク4の各々は、湾曲部41のみからなる。すなわち、複数のヨーク4の各々の形状は、一方向D1から見て円弧状である。より詳細には、一方向D1から見て、複数のヨーク4の各々は、その長手方向(方向D3)の中心に近い部分ほど上に位置するような円弧状に形成されている。複数のヨーク4は、一方向D1において重なり合う位置に配置されている。
【0027】
複数のヨーク4と磁気検出素子2との相対的な位置関係は、固定されている。すなわち、複数のヨーク4又は磁気検出素子2が移動する場合は、複数のヨーク4と磁気検出素子2とが一体的に移動する。一方で、複数のヨーク4及び磁気検出素子2と、永久磁石3との相対的な位置関係は、可変である。永久磁石3が一方向D1又は一方向D1とは反対方向に移動することにより、複数のヨーク4及び磁気検出素子2と、永久磁石3との相対的な位置関係が変化する。磁気検出素子2が複数のヨーク4に直接固定されることにより、複数のヨーク4と磁気検出素子2との相対的な位置関係が固定されていてもよい。あるいは、磁気検出素子2が所定の部材を介して複数のヨーク4に間接的に固定されることにより、複数のヨーク4と磁気検出素子2との相対的な位置関係が固定されていてもよい。
【0028】
複数のヨーク4が設けられていることにより、複数のヨーク4が設けられていない場合と比較して、永久磁石3で発生する磁束が複数のヨーク4の付近の空間に引き寄せられる。つまり、複数のヨーク4の付近の空間における磁界強度が大きくなる。ここで、複数のヨーク4は、永久磁石3から見て磁気検出素子2が配置された側と同じ側に配置されている。このように複数のヨーク4が設けられていることにより、複数のヨーク4が無い場合と比較して、磁気検出素子2の位置における磁界強度が大きくなる。そのため、本実施形態の位置検出システム1では、磁界強度が不足して磁気検出素子2による磁界の方向の検出精度が低下する可能性を、低減できる。例えば、本実施形態の位置検出システム1は、外部磁界が磁界の方向の検出精度に及ぼす影響を低減できる。
【0029】
(2-4)外部磁性材
図4に示すように、位置検出システム1は、外部磁性材5を更に備えている。なお、
図1~
図3では、外部磁性材5の図示を省略している。
【0030】
外部磁性材5は、純鉄、パーマロイ又は珪素鋼等の磁性材料により形成されている。外部磁性材5の形状は、筒状である。外部磁性材5の軸方向は、一方向D1に沿っている。一方向D1から見て、外部磁性材5の外縁の形状は、正方形状である。一方向D1から見て、外部磁性材5の内縁の形状は、円状である。
【0031】
外部磁性材5の内側には、磁気検出素子2と、永久磁石3と、複数のヨーク4とが配置されている。外部磁性材5の外部の空間の磁束については、外部磁性材5の内側への侵入が、外部磁性材5により遮られる。これにより、外部磁性材5の外部の空間の磁束によって磁気検出素子2の検出精度が低下する可能性を低減できる。
【0032】
(2-5)演算処理部
図5に示すように、位置検出システム1は、演算処理部6を更に備えている。演算処理部6は、磁気検出素子2から出力された検出信号S1に基づいて、磁気検出素子2と永久磁石3とのうちいずれか一方に対する、他方の相対位置に関する値を演算する。本実施形態では、演算処理部6は、検出信号S1に基づいて、磁気検出素子2に対する永久磁石3の相対位置に関する値を演算する。磁気検出素子2に対する永久磁石3の相対位置に関する値とは、例えば、磁気検出素子2の位置における磁界の方向を示す値である。すなわち、永久磁石3が一方向D1及び一方向D1とは反対方向に移動する場合に、磁気検出素子2の位置における磁界の方向と永久磁石3の位置とが対応する。そのため、磁気検出素子2の位置における磁界の方向は、磁気検出素子2に対する永久磁石3の相対位置に関する値である。なお、演算処理部6は、磁気検出素子2に対する永久磁石3の相対位置に関する値として、永久磁石3の座標を演算してもよい。
【0033】
本実施形態では、位置検出システム1は、磁気検出素子2及び演算処理部6を含むIC(Integrated Circuit)7を備えている。IC7は、磁気検出素子2及び演算処理部6を収容したパッケージを有している。IC7は、磁気検出素子2において磁界の方向及び強度に応じて出力される検出信号S1をデジタル化して演算処理部6に出力する回路を更に有している。
【0034】
(3)実施形態と比較例との対比
次に、
図6~
図8を参照して、位置検出システム1と比較例に係る位置検出システムとを対比する。
図6~
図8は、本実施形態に係る位置検出システム1、後述する第1、第2、第3の比較例に係る位置検出システム、及び、後述する変形例1に係る位置検出システムの各パラメータをシミュレーションにより求めた結果を表している。
【0035】
図6~
図8の横軸は、ある位置を基準位置とした場合の、一方向D1における永久磁石3の位置(座標)である。
図6~
図8の横軸に示されている座標は、磁気検出素子2に対する永久磁石3の相対位置に相当する。基準位置から一方向D1に永久磁石3が移動可能な範囲は、0~25mmの範囲に規制されている。12、5mmは、磁気検出素子2の真下に永久磁石3が位置するときの座標である。
【0036】
図6の縦軸は、磁気検出素子2の位置における磁界強度である。
図7の縦軸は、磁気検出素子2の位置における磁界の方向である。ここで、一方向D1と同じ方向を0度として、
図2の紙面と平行な平面内における磁界の方向を度数法で示している。
図6、
図7に示す結果は、位置検出システムが外部磁性材5を備えている場合の結果である。
【0037】
図8は、結果(A)と結果(B)とを比較した結果を示している。結果(A)は、位置検出システムが外部磁性材5を備えている場合の磁気検出素子2の位置における磁界の方向のシミュレーション結果である。結果(B)は、位置検出システムが外部磁性材5を備えていない場合の磁気検出素子2の位置における磁界の方向のシミュレーション結果である。
図8の縦軸は、結果(A)における磁界の方向に対応する度数が、結果(B)における磁界の方向に対応する度数に対して、何%増加又は減少しているかを表している。すなわち、
図8の縦軸において、増加を正の値で示し、減少を負の値で示している。
【0038】
まずは、
図6~
図8に示されている結果のうち、本実施形態に係る位置検出システム1についての結果と、第1の比較例に係る位置検出システムについての結果とに着目して説明する。
図6~
図8では、本実施形態に係る位置検出システム1についての結果を、破線E1で示し、第1の比較例に係る位置検出システムについての結果を、一点鎖線C1で示している。
【0039】
第1の比較例に係る位置検出システムの構成は、本実施形態に係る位置検出システム1の構成から、複数のヨーク4を除いた構成である。
【0040】
図6に示すように、本実施形態に係る位置検出システム1(破線E1参照)では、第1の比較例に係る位置検出システム(一点鎖線C1参照)と比較して、磁気検出素子2の位置における磁界強度が大きい。磁気検出素子2の位置における磁界強度が大きいほど、外部磁界が磁界の方向の検出精度に及ぼす影響を低減できる。したがって、本実施形態に係る位置検出システム1では、第1の比較例に係る位置検出システムと比較して、磁界の方向の検出精度の向上を図ることができる。
【0041】
図7に示すように、本実施形態に係る位置検出システム1と、第1の比較例に係る位置検出システムとではそれぞれ、永久磁石3の位置を表す値(座標)が大きくなるにつれて、磁界の方向に対応する度数が単調に減少している。そのため、永久磁石3の位置を表す値(座標)と磁界の方向に対応する度数とが一対一で対応している。つまり、本実施形態に係る位置検出システム1と、第1の比較例に係る位置検出システムとはそれぞれ、磁気検出素子2で検知された磁界の方向に基づいて、磁気検出素子2に対する永久磁石3の相対位置を検出することが可能である。磁気検出素子2に対する永久磁石3の相対位置は、例えば、磁気検出素子2で検知された磁界の方向に基づいて、演算処理部6による演算により求められる。
【0042】
なお、磁気検出素子2に対する永久磁石3の相対位置の検出精度を高くするためには、例えば、
図7に示す各結果を1次近似した場合に、近似式の傾きの絶対値が大きいほど好ましい。言い換えると、磁気検出素子2と永久磁石3との相対位置が一方向D1又は一方向D1とは反対方向に一定距離だけ変化したときの、磁気検出素子2の位置における磁界の方向の変化量が大きいほど好ましい。この変化量が大きいほど、外部磁界が検出精度に及ぼす影響を低減できる。本実施形態に係る位置検出システム1では、第1の比較例に係る位置検出システムと比較すると、近似式(図示せず)の傾きの絶対値は、小さい。
【0043】
ここで、
図8の縦軸に示す増減率の絶対値が小さいほど、磁界の方向の検出精度に対する外部磁性材5の影響が小さいため好ましい。例えば、
図8の縦軸に示す増減率の絶対値を、横軸の所定範囲(例えば、全範囲である0mm~25mm)で積分した値が小さいほど好ましい。本実施形態に係る位置検出システム1では、第1の比較例に係る位置検出システムと比較して、増減率の絶対値を0mm~25mmの範囲で積分した値が小さい。したがって、本実施形態に係る位置検出システム1では、第1の比較例に係る位置検出システムと比較して、磁界の方向の検出精度の向上を図ることができる。
【0044】
また、
図8に示すように、実施形態に係る位置検出システム1は、第1の比較例に係る位置検出システムと比較して、横軸の一部の範囲(例えば、5~17mm、22~25mmの範囲)において、増減率の絶対値が小さい。そのため、この範囲において、磁界の方向の検出精度に対する外部磁性材5の影響が小さい。
【0045】
本実施形態に係る位置検出システム1は、
図6、
図7のいずれの結果も所定の水準(例えば、ユーザの要求仕様により決まる水準)を満たすことが可能であるという点で、第1の比較例及び後述する第2、第3の比較例に係る位置検出システムよりも優れている。例えば、第1の比較例(一点鎖線C1参照)では、
図6の結果に関して必要な水準を満たさないことにより磁界の方向の検出に支障が生じる可能性がある。これに対して、本実施形態(破線E1参照)では、
図6の結果に関して必要な水準を満たすことが可能である。また、例えば、後述する第2の比較例(二点鎖線C2参照)及び第3の比較例(点線C3参照)では、
図7の結果に関して必要な水準を満たさないことにより磁界の方向の検出に支障が生じる可能性がある。これに対して、本実施形態(破線E1参照)では、
図7の結果に関して必要な水準を満たすことが可能である。すなわち、本実施形態に係る位置検出システム1では、第1~第3の比較例に係る位置検出システムでは満たすことが不可能な水準を満たすことが可能となる。
【0046】
次に、
図6~
図8に示されている結果のうち、本実施形態に係る位置検出システム1についての結果と、第2の比較例に係る位置検出システムについての結果とに着目して説明する。
図9に、第2の比較例に係る位置検出システム1Pを図示する。位置検出システム1Pは、本実施形態に係る位置検出システム1と比較して、複数のヨーク4に代えて、1つのヨーク4Pを有している点で、位置検出システム1と相違する。ヨーク4Pは、本実施形態の1つのヨーク4を一方向D1に延長した形状を有しており、ヨーク4と比較して長尺である。一方向D1におけるヨーク4Pの長さは、本実施形態の複数のヨーク4のうち一方向D1の両端に配置された2つのヨーク4のうちの一方のヨーク4の端面から他方のヨーク4の端面までの距離(
図2の長さL1)に等しい。
【0047】
図6~
図8では、第2の比較例に係る位置検出システム1Pについての結果を、二点鎖線C2で示している。
図6に示すように、本実施形態に係る位置検出システム1(破線E1参照)は、第2の比較例に係る位置検出システム1P(二点鎖線C2参照)と比較して、磁気検出素子2の位置における磁界強度が小さい。一方、
図7に示す各結果を、例えば1次近似した場合に、本実施形態に係る位置検出システム1は、第2の比較例に係る位置検出システム1Pと比較して、近似式の傾きの絶対値が大きい。
図8に示すように、本実施形態に係る位置検出システム1は、第2の比較例に係る位置検出システム1Pと比較して、横軸の一部の範囲(例えば、0~4mm、21~25mmの範囲)において、増減率の絶対値が小さい。
【0048】
そのため、例えば、
図7の結果が改善するという点で、第2の比較例に係る位置検出システム1Pよりも本実施形態に係る位置検出システム1を採用するメリットがある。
【0049】
次に、
図6~
図8に示されている結果のうち、本実施形態に係る位置検出システム1についての結果と、第3の比較例に係る位置検出システムについての結果とに着目して説明する。
図10に、第3の比較例に係る位置検出システム1Qを図示する。位置検出システム1Qは、本実施形態に係る位置検出システム1と比較して、ヨーク4を複数ではなく1つのみ有している点で、位置検出システム1と相違する。また、第3の比較例に係るヨーク4は、本実施形態のヨーク4よりも一方向D1に長い。
【0050】
図6~
図8では、第3の比較例に係る位置検出システム1Qについての結果を、点線C3で示している。
図6に示すように、本実施形態に係る位置検出システム1(破線E1参照)は、第3の比較例に係る位置検出システム1Q(点線C3参照)と比較して、磁気検出素子2の位置における磁界強度が小さい。一方、
図7に示す各結果を、例えば1次近似した場合に、本実施形態に係る位置検出システム1は、第3の比較例に係る位置検出システム1Qと比較して、近似式の傾きの絶対値が大きい。
図8に示すように、本実施形態に係る位置検出システム1は、第3の比較例に係る位置検出システム1Qと比較して、横軸の一部の範囲(例えば、22~25mmの範囲)において、増減率の絶対値が小さい。
【0051】
そのため、例えば、
図7の結果が改善するという点で、第3の比較例に係る位置検出システム1Qよりも本実施形態に係る位置検出システム1を採用するメリットがある。
【0052】
(変形例1)
以下、変形例1に係る位置検出システム1Aについて、
図11、
図12を用いて説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
位置検出システム1Aでは、磁気検出素子2の配置が、実施形態に係る位置検出システム1と相違する。また、位置検出システム1Aは、実施形態に係る位置検出システム1の構成に加えて、ヨーク8を更に備えている点で、位置検出システム1と相違する。ヨーク8は、複数のヨーク4とは別の部材である。以下では、複数のヨーク4とヨーク8とを区別するために、複数のヨーク4をそれぞれ第1のヨーク4と称し、ヨーク8を第2のヨーク8と称す。
【0054】
第2のヨーク8は、純鉄、パーマロイ又は珪素鋼等の磁性材料により形成されている。第2のヨーク8の形状は、立方体状である。なお、第2のヨーク8の形状は、立方体状に限定されない。第1のヨーク4の形状と第2のヨーク8の形状とが同じであってもよい。
【0055】
第2のヨーク8の透磁率は、複数の第1のヨーク4の透磁率の代表値よりも大きい。本変形例1では、複数の第1のヨーク4の透磁率の代表値とは、複数の第1のヨーク4の透磁率の平均値である。また、本変形例1では、複数の第1のヨーク4の透磁率は互いに等しい。一例として、複数の第1のヨーク4の各々の透磁率は、10[μH/m]である。また、一例として、第2のヨーク8の透磁率は、4000[μH/m]である。
【0056】
第2のヨーク8は、外部磁性材5の内側に配置されている。なお、
図11では外部磁性材5の図示を省略している。
【0057】
一方向D1から見て、複数の第1のヨーク4は、磁気検出素子2と永久磁石3との間に配置されている。一方向D1から見て、磁気検出素子2は、複数の第1のヨーク4と第2のヨーク8との間に配置されている。磁気検出素子2と第2のヨーク8とは、上下方向に並んでいる。
【0058】
一方向D1において、第2のヨーク8が配置された領域の長さ(第2のヨーク8の長さ)L2は、複数の第1のヨーク4が配置された領域の長さL1よりも短い。長さL1は、既に述べたように、複数のヨーク4のうち一方向D1の両端に配置された2つのヨーク4のうちの一方のヨーク4の端面から他方のヨーク4の端面までの距離に等しい。
【0059】
第2のヨーク8及び磁気検出素子2は、複数のヨーク4が配置された領域における一方向D1の中心付近に対向する位置に配置されている。具体的には、第2のヨーク8及び磁気検出素子2は、一方向D1に一列に並んだ複数のヨーク4の、一端(
図11における右端)から4番目のヨーク4に対向して配置されている。
【0060】
また、
図12に示すように、第2のヨーク8及び磁気検出素子2は、一方向D1から見て、複数のヨーク4の各々の長手方向(
図12に示す方向D3)の中心に対向する位置に配置されている。ここでの「中心」は、厳密な中心だけを指すのではなく、厳密な中心を含む所定の領域を指す。
【0061】
なお、磁気検出素子2は、第2のヨーク8の付近に配置されていればよい。磁気検出素子2は、例えば、本変形例1における位置から一方向D1にずれた位置に配置されていてもよい。
【0062】
本変形例1によれば、複数の第1のヨーク4から第2のヨーク8に向かう磁界が発生しやすい。つまり、典型的には、永久磁石3から放射された磁束の方向は、複数の第1のヨーク4と永久磁石3との間の領域では、複数の第1のヨーク4に向かう方向となり、複数の第1のヨーク4と第2のヨーク8との間の領域では、第2のヨーク8に向かう方向となる。したがって、複数の第1のヨーク4と第2のヨーク8との間に配置された磁気検出素子2の位置における磁界の強度を大きくすることができる。これにより、第2のヨーク8が無い場合と比較して、磁気検出素子2の位置における磁界の方向の検出精度の向上を図ることができる。
【0063】
図6~
図8では、本変形例1に係る位置検出システム1Aについての結果を、実線M1で示している。
図6に示すように、本変形例1に係る位置検出システム1Aは、実施形態に係る位置検出システム1(破線E1参照)及び第1の比較例に係る位置検出システム(一点鎖線C1参照)と比較して、磁気検出素子2の位置における磁界強度が大きい。
図7に示す各結果を、例えば1次近似した場合に、近似式の傾きの絶対値は、本変形例1に係る位置検出システム1Aと実施形態に係る位置検出システム1とで同程度の大きさである。
図8に示すように、本変形例1に係る位置検出システム1Aは、実施形態に係る位置検出システム1と比較して、横軸の一部の範囲(例えば、9~20mmの範囲)において、増減率の絶対値が小さい。また、本変形例1に係る位置検出システム1Aは、第1の比較例に係る位置検出システムと比較して、横軸の一部の範囲(例えば、7~20mmの範囲)において、増減率の絶対値が小さい。
【0064】
そのため、例えば、
図6の結果が改善するという点で、実施形態に係る位置検出システム1及び第1の比較例に係る位置検出システムよりも本変形例1に係る位置検出システム1Aを採用するメリットがある。また、
図8の横軸の一部の範囲における結果が改善するという点で、実施形態に係る位置検出システム1及び第1の比較例に係る位置検出システムよりも本変形例1に係る位置検出システム1Aを採用するメリットがある。
【0065】
なお、実施形態でも、本変形例1と同様に、複数の第1のヨーク4は、磁気検出素子2と永久磁石3との間に配置されていてもよい。
【0066】
また、位置検出システム1Aは、第2のヨーク8を複数備えていてもよい。一方向D1において、複数の第2のヨーク8が配置された領域の長さは、複数の第1のヨーク4が配置された領域の長さL1よりも短いことが好ましい。
【0067】
また、複数の第1のヨーク4の透磁率の代表値とは、複数の第1のヨーク4の透磁率の最大値であってもよいし、最小値であってもよい。
【0068】
また、位置検出システム1Aが第2のヨーク8を複数備えている場合は、複数の第2のヨーク8の透磁率の代表値は、複数の第1のヨーク4の透磁率の代表値よりも大きいことが好ましい。複数の第2のヨーク8の透磁率の代表値と、複数の第1のヨーク4の透磁率の代表値とは、同じ指標である。具体例として、複数の第2のヨーク8の透磁率の代表値が平均値という指標である場合は、複数の第1のヨーク4の透磁率の代表値も平均値という指標である。
【0069】
(変形例2)
以下、変形例2に係る位置検出システム1Bについて、
図13を用いて説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
位置検出システム1Bでは、複数のヨーク4B(第1のヨーク)の各々の形状が、実施形態の複数のヨーク4の各々の形状と相違する。なお、
図13では、複数のヨーク4Bのうち1つのみを図示している。複数のヨーク4Bは、一方向D1に並んでいる。
【0071】
複数のヨーク4Bの各々は、湾曲部41Bを含む。湾曲部41Bは、一方向D1と交差する平面(ここでは、直交する平面)内で永久磁石3から見て外方向に凸の形状である。本実施形態では、複数のヨーク4Bの各々は、湾曲部41Bのみからなる。一方向D1から見て、湾曲部41Bの形状は、円弧状である。
【0072】
一方向D1(
図2参照)から見て、磁気検出素子2及び永久磁石3の対向方向と直交する方向(方向D3及びその反対方向)において、湾曲部41Bは、永久磁石3と対向している。そのため、永久磁石3から方向D3及びその反対方向に放射される磁束のうち、複数のヨーク4Bよりも外側へ漏れる磁束の量を低減できる。すなわち、本変形例2によれば、磁束漏れを低減できるので、磁気検出素子2の位置における磁界強度の向上を図ることができる。
【0073】
なお、位置検出システム1Bは、外部磁性材5を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0074】
また、位置検出システム1Bは、第2のヨーク8を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0075】
(変形例3)
以下、変形例3に係る位置検出システム1Cについて、
図14を用いて説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
位置検出システム1Cでは、複数のヨーク4C(第1のヨーク)の各々の形状が、実施形態の複数のヨーク4の各々の形状と相違する。なお、
図14では、複数のヨーク4Cのうち1つのみを図示している。複数のヨーク4Cは、一方向D1に並んでいる。
【0077】
複数のヨーク4Cの各々は、湾曲部41Cと、弦部42Cと、を含む。湾曲部41Cは、一方向D1と交差する平面(ここでは、直交する平面)内で永久磁石3から見て外方向に凸の形状である。一方向D1から見て、湾曲部41Cの形状は、円弧状である。弦部42Cは、湾曲部41Cの両端を結んでいる。一方向D1から見て、弦部42Cの形状は、直線状である。
【0078】
複数のヨーク4Cの各々は、一方向D1と交差する平面(ここでは、直交する平面)内で永久磁石3の周囲に閉磁路を形成する。つまり、一方向D1から見て、複数のヨーク4Cの各々は、永久磁石3を囲んでいる。そのため、永久磁石3から放射される磁束のうち、複数のヨーク4Cよりも外側へ漏れる磁束の量を低減できる。すなわち、本変形例3によれば、磁束漏れを低減できるので、磁気検出素子2の位置における磁界強度の向上を図ることができる。
【0079】
なお、位置検出システム1Cは、外部磁性材5を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0080】
また、位置検出システム1Cは、第2のヨーク8を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0081】
(変形例4)
以下、変形例4に係る位置検出システム1Dについて、
図15を用いて説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
位置検出システム1Dでは、複数のヨーク4D(第1のヨーク)の各々の形状が、実施形態の複数のヨーク4の各々の形状と相違する。なお、
図15では、複数のヨーク4Dのうち1つのみを図示している。複数のヨーク4Dは、一方向D1に並んでいる。
【0083】
一方向D1から見て、複数のヨーク4Dの各々の形状は、円状である。一方向D1から見て、永久磁石3は、この円の中心と円弧との間に配置されている。そして、この円弧と永久磁石3との間に、磁気検出素子2が配置されている。
【0084】
複数のヨーク4Dの各々は、湾曲部41Dを含んでいる。湾曲部41Dは、複数のヨーク4Dの各々のうち、永久磁石3の周囲の部位である。湾曲部41Dは、一方向D1と交差する平面(ここでは、直交する平面)内で永久磁石3から見て外方向に凸の形状である。一方向D1から見て、湾曲部41Dの形状は、円弧状である。
【0085】
複数のヨーク4Dの各々は、一方向D1と交差する平面(ここでは、直交する平面)内で永久磁石3の周囲に閉磁路を形成する。つまり、一方向D1から見て、複数のヨーク4Dの各々は、永久磁石3を囲んでいる。そのため、永久磁石3から放射される磁束のうち、複数のヨーク4Dよりも外側へ漏れる磁束の量を低減できる。すなわち、本変形例4によれば、磁束漏れを低減できるので、磁気検出素子2の位置における磁界強度の向上を図ることができる。
【0086】
なお、位置検出システム1Dは、外部磁性材5を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0087】
また、位置検出システム1Dは、第2のヨーク8を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0088】
(実施形態のその他の変形例)
以下、実施形態のその他の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。また、以下の変形例は、変形例1~4と適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0089】
実施形態では、複数のヨーク4と磁気検出素子2との相対的な位置関係は、固定されている。この構成に代えて、複数のヨーク4と永久磁石3との相対的な位置関係が固定された構成を採用してもよい。複数のヨーク4と永久磁石3との相対的な位置関係が固定されている場合は、複数のヨーク4及び永久磁石3と、磁気検出素子2との位置関係は、可変にする必要がある。そして、複数のヨーク4及び永久磁石3が一体的に、磁気検出素子2に対して一方向D1又は一方向D1とは反対方向に移動することで、磁気検出素子2と永久磁石3との相対的な位置関係が変化する。あるいは、磁気検出素子2が複数のヨーク4及び永久磁石3に対して一方向D1又は一方向D1とは反対方向に移動することで、磁気検出素子2と永久磁石3との相対的な位置関係が変化する。
【0090】
永久磁石3のN極とS極とが並んでいる方向は、上下方向に限定されない。例えば、永久磁石3のN極とS極とが並んでいる方向は、一方向D1に沿った方向であってもよい。
【0091】
位置検出システム1は、永久磁石3を複数備えていてもよい。また、位置検出システム1は、N極とS極とが並んでいる方向がそれぞれ異なる複数の永久磁石3を備えていてもよい。
【0092】
位置検出システム1は、磁気検出素子2を複数備えていてもよい。1つの永久磁石3に対して、1つの磁気検出素子2が対向して配置されていてもよいし、複数の磁気検出素子2が対向して配置されていてもよい。
【0093】
位置検出システム1は、外部磁性材5を備えていなくてもよい。また、位置検出システム1は、演算処理部6を備えていなくてもよい。
【0094】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0095】
第1の態様に係る位置検出システム1(又は1A、1B、1C、1D)は、磁気検出素子2と、永久磁石3と、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)と、を備える。磁気検出素子2は、磁界の方向に応じた検出信号S1を出力する。永久磁石3は、一方向D1又は一方向D1とは反対方向において磁気検出素子2に対して相対的に移動する。永久磁石3は、一方向D1と交差する方向において磁気検出素子2と対向する。複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)は、永久磁石3から見て磁気検出素子2が配置された側と同じ側に配置されている。複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)には、永久磁石3によって生じる磁界が作用する。複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)は、一方向D1に並んでいる。
【0096】
上記の構成によれば、位置検出システム1(又は1A、1B、1C、1D)がヨーク4(又は4B、4C、4D)を1つも備えていない場合と比較して、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)の周囲の磁界の強度を大きくすることができる。これにより、磁界の方向の検出精度の向上を図ることができる。また、位置検出システム1(又は1A、1B、1C、1D)がヨーク4(又は4B、4C、4D)を1つのみ備えている場合と比較して、磁気検出素子2と永久磁石3との相対位置が一方向D1又は一方向D1とは反対方向に一定距離だけ変化したときの、磁気検出素子2の位置における磁界の方向の変化量が大きくなる。これにより、磁界の方向の検出精度の更なる向上を図ることができる。
【0097】
また、第2の態様に係る位置検出システム1(又は1B、1C、1D)では、第1の態様において、磁気検出素子2は、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)と永久磁石3との間に配置されている。
【0098】
上記の構成によれば、例えば、磁気検出素子2が複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)と永久磁石3との間の位置から一方向D1にずれた位置に配置されている場合と比較して、磁気検出素子2の周囲の磁界の強度を大きくすることができる。
【0099】
また、第3の態様に係る位置検出システム1Aでは、第1の態様において、複数のヨーク4は、磁気検出素子2と永久磁石3との間に配置されている。
【0100】
上記の構成によれば、例えば、複数のヨーク4が磁気検出素子2と永久磁石3との間の位置から一方向D1にずれた位置に配置されている場合と比較して、磁気検出素子2の周囲の磁界の強度を大きくすることができる。
【0101】
また、第4の態様に係る位置検出システム1Aでは、第3の態様において、複数のヨークとしての複数の第1のヨーク4とは別の、第2のヨーク8を更に備える。磁気検出素子2は、複数の第1のヨーク4と第2のヨーク8との間に配置されている。
【0102】
上記の構成によれば、位置検出システム1Aが第2のヨーク8を備えていない場合と比較して、磁気検出素子2の周囲の磁界の強度を大きくすることができる。
【0103】
また、第5の態様に係る位置検出システム1Aでは、第4の態様において、第2のヨーク8の透磁率は、複数の第1のヨーク4の透磁率の代表値よりも大きい。
【0104】
上記の構成によれば、複数の第1のヨーク4から第2のヨーク8に向かう磁界が発生しやすい。したがって、複数の第1のヨーク4と第2のヨーク8との間に配置された磁気検出素子2の位置における磁界の強度を大きくすることができる。
【0105】
また、第6の態様に係る位置検出システム1(又は1A、1B、1C、1D)では、第1~5の態様のいずれか1つにおいて、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)と磁気検出素子2との相対的な位置関係は、固定されている。
【0106】
上記の構成によれば、永久磁石3と、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)及び磁気検出素子2との相対位置に応じた検出信号S1を出力する位置検出システム1(又は1A、1B、1C、1D)を提供できる。
【0107】
また、第7の態様に係る位置検出システム1(又は1A、1B、1C、1D)では、第1~5の態様のいずれか1つにおいて、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)と永久磁石3との相対的な位置関係は、固定されている。
【0108】
上記の構成によれば、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)及び永久磁石3と、磁気検出素子2との相対位置に応じた検出信号S1を出力する位置検出システム1(又は1A、1B、1C、1D)を提供できる。
【0109】
また、第8の態様に係る位置検出システム1(又は1A、1B、1C、1D)では、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)の個数は、3つ以上である。
【0110】
上記の構成によれば、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)の個数が2つの場合と比較して、磁気検出素子2と永久磁石3との相対位置が一方向D1又は一方向D1とは反対方向に一定距離だけ変化したときの、磁気検出素子2の位置における磁界の方向の変化量の増加を図ることができる。
【0111】
また、第9の態様に係る位置検出システム1(又は1A、1B、1C、1D)では、第8の態様において、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)は、一方向D1に等間隔に並んでいる。
【0112】
上記の構成によれば、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)が一方向D1に等間隔に並んでいない場合と比較して、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)の各々が周囲の磁界に及ぼす影響の均一性を改善できる。
【0113】
また、第10の態様に係る位置検出システム1(又は1A、1B、1C、1D)では、第1~9の態様のいずれか1つにおいて、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)の各々は、湾曲部41(又は41B、41C、41D)を含む。湾曲部41(又は41B、41C、41D)は、一方向D1と交差する平面内で永久磁石3から見て外方向に凸である。
【0114】
上記の構成によれば、永久磁石3から発生した磁束のうち、複数のヨーク4(又は4B、4C、4D)の外側へ向かう漏れ磁束を減少させることができる。
【0115】
また、第11の態様に係る位置検出システム1C(又は1D)では、第1~10の態様のいずれか1つにおいて、複数のヨーク4C(又は4D)の各々は、一方向D1と交差する平面内で永久磁石3の周囲に閉磁路を形成する。
【0116】
上記の構成によれば、永久磁石3から発生した磁束のうち、複数のヨーク4C(又は4D)の外側へ向かう漏れ磁束を減少させることができる。
【0117】
また、第12の態様に係る位置検出システム1(又は1A、1B、1C、1D)は、第1~11の態様のいずれか1つにおいて、演算処理部6を更に備える。演算処理部6は、磁気検出素子2から出力された検出信号S1に基づいて、磁気検出素子2と永久磁石3とのうちいずれか一方に対する他方の相対位置に関する値を演算する。
【0118】
上記の構成によれば、演算処理部6を一体に備えた位置検出システム1(又は1A、1B、1C、1D)を提供できる。
【0119】
第1の態様以外の構成については、位置検出システム1(又は1A、1B、1C、1D)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0120】
1、1A、1B、1C、1D 位置検出システム
2 磁気検出素子
3 永久磁石
4、4B、4C、4D ヨーク(第1のヨーク)
41、41B、41C、41D 湾曲部
6 演算処理部
8 第2のヨーク
S1 検出信号
D1 一方向