(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】認知症判定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
A61B10/00 H
(21)【出願番号】P 2021533949
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2020027117
(87)【国際公開番号】W WO2021015017
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019136354
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中島 博文
(72)【発明者】
【氏名】阿部 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】赤司 陽介
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104289(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082691(WO,A1)
【文献】特開2013-134657(JP,A)
【文献】特開2015-138488(JP,A)
【文献】特開2014-018341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に対する操作にユーザが用いる操作装置のボタンが押された押下回数に対す
る連続押し回数の割合である連続押し割合を取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記連続押し割合に基づいて、前記ユーザの認知症レベルを判定する判定部と、
前記判定部で判定された前記認知症レベルを示す認知症情報を出力する出力部とを備え、
前記判定部は、前記連続押し割合が高いほど、前記認知症レベルをより重度と判定
し、
前記連続押し回数は、前記操作装置のボタン押下間の時間間隔が基準時間間隔以下となる前記ボタン押下の回数である
認知症判定システム。
【請求項2】
前記判定部は、
前記連続押し割合が閾値以上である場合、前記認知症レベルを軽度認知障害及び認知症の範囲に対応する異常レベルと判定し、
前記連続押し割合が前記閾値よりも低い場合、前記認知症レベルを健常者の範囲に対応する正常レベルと判定する
請求項1に記載の認知症判定システム。
【請求項3】
前記出力部は、前記認知症情報を出力することにより、前記認知症情報を前記電気機器の画面に表示させる
請求項1又は2に記載の認知症判定システム。
【請求項4】
前記出力部は、前記判定部で判定された前記認知症レベルに基づいて、前記操作装置が用いられる操作の訓練コンテンツを出力することにより、前記訓練コンテンツを前記電気機器の画面に表示させる
請求項1~3のいずれか1項に記載の認知症判定システム。
【請求項5】
前記出力部は、前記判定部で判定された前記認知症レベルが基準レベルよりも重度である場合に前記訓練コンテンツを出力することにより、前記訓練コンテンツを前記画面に表示させる
請求項4に記載の認知症判定システム。
【請求項6】
前記出力部は、前記判定部で判定された前記認知症レベルに対して定められる前記訓練コンテンツを出力することにより、前記訓練コンテンツを前記画面に表示させる
請求項4又は5に記載の認知症判定システム。
【請求項7】
前記取得部は、前記訓練コンテンツが表示されている訓練期間を含む判定対象期間における前記連続押し割合を新たに取得し、
前記判定部は、前記取得部で新たに取得された前記連続押し割合に基づいて、前記認知症レベルを新たに判定する
請求項4~6のいずれか1項に記載の認知症判定システム。
【請求項8】
前記連続押し回数を判定する際には、ボタンの同一性は問われない
請求項1~7のいずれか1項に記載の認知症判定システム。
【請求項9】
コンピュータに認知症判定処理を実行させるためのプログラムであって、
前記認知症判定処理は、
電気機器に対する操作にユーザが用いる操作装置のボタンが押された押下回数に対す
る連続押し回数の割合である連続押し割合を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された前記連続押し割合に基づいて、前記ユーザの認知症レベルを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで判定された前記認知症レベルを示す認知症情報を出力する出力ステップとを含み、
前記判定ステップでは、前記連続押し割合が高いほど、前記認知症レベルをより重度と判定
し、
前記連続押し回数は、前記操作装置のボタン押下間の時間間隔が基準時間間隔以下となる前記ボタン押下の回数である
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知症レベルを判定する認知症判定システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、全人口に占める高齢者の割合が高まっている。このような高齢化社会の到来により、認知症の問題が顕在化すると考えられる。このような認知症の問題は、テレビ番組などマスメディアでも盛んに取り上げられている。
【0003】
認知症には、軽度から重度に至るまで様々なレベルがあり、認知症になる前の軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)の段階であることがわかれば、リハビリトレーニングなどによって認知症の発症を抑えられる可能性がある。特許文献1には、被験者のデュアルタスクを遂行する能力を評価できるデュアルタスク遂行能力評価方法が開示されている。デュアルタスクとは、認知症のリハビリメニューの一つであり、体を動かしながら頭を使うことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電気機器に対する操作の履歴に基づいて認知症レベルを判定することができる認知症判定システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様における認知症判定システムは、電気機器に対する操作にユーザが用いる操作装置のボタンが押された押下回数に対する、前記操作装置のボタンが基準時間間隔以下の時間間隔で押された連続押し回数の割合である連続押し割合を取得する取得部と、前記取得部で取得された前記連続押し割合に基づいて、前記ユーザの認知症レベルを判定する判定部と、前記判定部で判定された前記認知症レベルを示す認知症情報を出力する出力部とを備え、前記判定部は、前記連続押し割合が高いほど、前記認知症レベルをより重度と判定する。
【0007】
本発明の一態様におけるプログラムは、コンピュータに認知症判定処理を実行させるためのプログラムであって、前記認知症判定処理は、電気機器に対する操作にユーザが用いる操作装置のボタンが押された押下回数に対する、前記操作装置のボタンが基準時間間隔以下の時間間隔で押された連続押し回数の割合である連続押し割合を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得された前記連続押し割合に基づいて、前記ユーザの認知症レベルを判定する判定ステップと、前記判定ステップで判定された前記認知症レベルを示す認知症情報を出力する出力ステップとを含み、前記判定ステップでは、前記連続押し割合が高いほど、前記認知症レベルをより重度と判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様における認知症判定システム等は、電気機器に対する操作の履歴に基づいて認知症レベルを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態における認知症判定システムの構成を示す概念図である。
【
図2】
図2は、実施の形態における認知症判定装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態における操作装置が信号を発信するタイミングを示すタイムチャートである。
【
図4】
図4は、実施の形態における信号の検知結果を示すデータ構成図である。
【
図5】
図5は、1回のボタン押下の特定方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、連続押しの判定基準を説明するための図である。
【
図7】
図7は、連続押し割合を説明するための図である。
【
図8】
図8は、複数のユーザを対象とした、連続押し割合と物忘れ相談プログラム(MSP)のスコアとの相関関係を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態における認知症判定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、変形例における認知症判定システムの構成を示す概念図である。
【
図11】
図11は、変形例における電気機器の画面に表示される情報の遷移を示す画面遷移図である。
【
図12】
図12は、変形例における電気機器の画面に表示される情報の表示領域を示す画面構成図である。
【
図13】
図13は、変形例における認知症判定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示す。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、動作の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素は、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、以下の説明に用いられる複数の図面のそれぞれは、模式図であり、必ずしも厳密に正確な値等を示していない。
【0012】
(実施の形態)
[構成]
まず、実施の形態における認知症判定システムの構成について説明する。
図1は、実施の形態における認知症判定システムの構成を示す概念図である。
図1に示された認知症判定システム100は、認知症レベルを判定するシステムであって、認知症判定装置110、端末装置120、電気機器130、操作装置140及びセンサ装置150等を備える。
【0013】
ここで、認知症レベルは、認知症の度合いに対応する。認知症レベルは、認知症の疑いの度合いであってもよいし、認知症の可能性であってもよい。また、健常者の範囲に対応するレベル、及び、認知症よりも軽度である軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)の範囲に対応するレベル等が、それぞれ、認知症レベルとして規定されてもよい。
【0014】
また、認知症レベルは、健常者の範囲に対応する正常レベルと、軽度認知障害及び認知症の範囲に対応する異常レベルとの2段階で規定されてもよい。そして、異常レベルは、さらに、軽度認知障害、軽度の認知症、中度の認知症、及び、重度の認知症などのように、より細かい複数のサブレベルに細分化されてもよい。
【0015】
認知症判定装置110は、認知症レベルを判定する装置である。すなわち、認知症判定システム100における認知症判定は、実質的に、認知症判定装置110において行われる。例えば、認知症判定装置110は、情報処理を行うコンピュータである。認知症判定装置110は、単一の装置であってもよいし、複数の補助装置を備えていてもよい。また、認知症判定装置110は、ユーザ環境に設置されていてもよいし、ユーザ環境とは異なる位置に設置されていてもよい。
【0016】
図1の例において、認知症判定装置110は、ユーザ環境とは異なる位置に設置されている。そして、認知症判定装置110は、ユーザ環境に設置されたセンサ装置150に、通信ネットワーク160を介して接続される。そして、認知症判定装置110は、センサ装置150から検知結果を取得する。
【0017】
また、認知症判定装置110は、通信ネットワーク160を介して、端末装置120に接続される。例えば、認知症判定装置110は、認知症レベルを示す認知症情報を端末装置120へ送信することにより、認知症情報を出力する。
【0018】
端末装置120は、認知症判定装置110から送信された認知症情報を受信する装置である。例えば、端末装置120は、情報の通信を行うコンピュータであって、具体的には、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話又はパーソナルコンピュータ等である。端末装置120は、固定的に設置されていてもよいし、持ち運び可能であってもよい。
【0019】
また、端末装置120は、ユーザ環境に設置されていてもよいし、ユーザ環境とは異なる位置に設置されていてもよい。例えば、端末装置120は、ユーザ環境におけるユーザの介護者等によって利用される。端末装置120は、ユーザ環境におけるユーザによって利用されてもよい。
【0020】
電気機器130は、ユーザが操作装置140を用いて操作する機器である。例えば、電気機器130は、家電機器であって、基本的には、テレビジョン受像機である。テレビジョン受像機は、単にテレビとも呼ばれる。電気機器130は、音響機器、エアコンディショナー、照明装置、冷蔵庫、炊飯器又は多機能電話機等であってもよい。電気機器130は、電動トイレ便座であってもよい。また、電気機器130は、画面を備える機器であってもよい。
図1の例において、電気機器130は、テレビである。また、電気機器130は、基本的に、ユーザ環境に設置される。
【0021】
操作装置140は、電気機器130を操作するための装置である。例えば、操作装置140は、電気機器130に対するリモートコントローラであって、電気機器130を操作するためのボタンを備える。操作装置140は、電気機器130を操作するためのスマートフォン等であってもよい。そして、操作装置140が備える画面に、電気機器130を操作するためのボタンがGUIによって表示されてもよい。また、操作装置140は、電気機器130に一体化された操作パネルでもよい。
【0022】
具体的には、
図1の例において、操作装置140は、テレビである電気機器130に対するリモートコントローラである。そして、操作装置140は、赤外線で信号を発信する。これにより、テレビである電気機器130が操作される。また、操作装置140は、基本的に、ユーザ環境において用いられる。なお、電気機器130が電動トイレ便座である場合、操作装置140は、例えば、電動トイレ便座である電気機器130を指押しボタンで遠隔操作するためのリモートコントローラである。
【0023】
センサ装置150は、操作装置140から発信された信号を検知する装置である。例えば、センサ装置150は、赤外線センサである。センサ装置150は、基本的に、電気機器130の近傍に設置される。これにより、センサ装置150は、操作装置140から発信された信号を適切に検知することができる。また、例えば、センサ装置150は、検知結果を認知症判定装置110へ送信する。センサ装置150は、信号を検知する度に、認知症判定装置110へ検知結果を送信してもよい。
【0024】
あるいは、センサ装置150は、内部のメモリに検知結果を記録し蓄積してもよい。そして、センサ装置150は、認知症判定装置110から検知結果の送信要求を受信した際に、内部のメモリに記録され蓄積されている検知結果を送信してもよい。
【0025】
通信ネットワーク160は、認知症判定装置110、端末装置120及びセンサ装置150等が通信を行うためのネットワークである。例えば、通信ネットワーク160は、インターネットである。通信ネットワーク160は、LAN(ローカルエリアネットワーク)等であってもよい。
【0026】
なお、認知症判定装置110が、認知症判定システム100であってもよい。言い換えれば、認知症判定システム100は、認知症判定装置110の構成要素を備え、その他の構成要素を備えなくてもよい。そして、その他の構成要素は、その他のシステムに含まれていてもよい。また、構成要素間の通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。そして、通信ネットワーク160は、有線のネットワークであってもよいし、無線のネットワークであってもよい。
【0027】
また、
図1では、1つのユーザ環境が示されているが、複数のユーザに対応する複数のユーザ環境が存在していてもよい。そして、各ユーザ環境において、電気機器130、操作装置140及びセンサ装置150に対応する構成要素が含まれていてもよい。そして、認知症判定装置110は、各ユーザの認知症レベルを判定してもよい。
【0028】
また、例えば、1つのユーザ環境が、高齢者向け集合住宅における高齢者向けの1つの部屋に対応していてもよい。そして、高齢者向け集合住宅の管理室に端末装置120が設置されていてもよい。認知症判定装置110は、高齢者向け集合住宅の管理室に設置されていてもよいし、複数の高齢者向け集合住宅における各ユーザの認知症レベルを判定するため、複数の高齢者向け集合住宅の外部に設置されていてもよい。
【0029】
図2は、
図1に示された認知症判定装置110の構成を示すブロック図である。認知症判定装置110は、取得部111、判定部112及び出力部113を備える。
【0030】
取得部111は、情報を取得する処理部であって、具体的には、認知症レベルを判定するための情報を取得する。取得部111は、汎用又は専用の電気回路であってもよい。
【0031】
例えば、取得部111は、有線又は無線の通信で情報を受信することによって情報を取得してもよい。この場合、取得部111は、通信のための端子又はアンテナを備えていてもよい。具体的には、取得部111は、操作装置140から発信された信号の検知結果をセンサ装置150から情報として受信することにより、操作装置140から発信された信号の検知結果を情報として取得してもよい。
【0032】
また、例えば、取得部111は、操作装置140から発信された信号の検知結果をセンサ装置150から受信し、認知症レベルを判定するための情報を検知結果から取得してもよい。
【0033】
また、例えば、取得部111は、マウス、キーボード又はタッチパネル等の入力インタフェースを介して情報を取得してもよい。また、取得部111は、このような入力インタフェースを備えていてもよい。また、取得部111は、記録媒体などのメモリから情報を取得してもよい。また、取得部111は、記録媒体などに接続するための接続インタフェースを備えていてもよい。また、取得部111は、取得された情報に対して情報処理を行い、情報処理の結果を新たな情報として取得してもよい。
【0034】
より具体的には、取得部111は、認知症レベルを判定するための情報として、操作装置140に対する連続押し割合を取得する。連続押し割合は、押下回数に対する連続押し回数の割合である。押下回数は、操作装置140のボタンが押された回数である。連続押し回数は、操作装置140のボタンが所定の基準時間間隔よりも短い時間間隔で押された回数である。基準時間間隔は、例えば、5秒であるが、その他の時間であってもよい。基準時間間隔は、経験的または実験的に適宜定められればよい。基準時間間隔は、固定の時間であってもよいし、動的に定められる時間であってもよい。なお、連続押しの詳細については後述する。
【0035】
また、例えば、取得部111は、押下回数を取得してもよいし、連続押し回数を取得してもよい。具体的には、取得部111は、センサ装置150から得られる検知結果から、押下回数及び連続押し回数を取得してもよい。そして、取得部111は、押下回数及び連続押し回数から連続押し割合を算出することにより、連続押し割合を取得してもよい。
【0036】
判定部112は、認知症レベルを判定する処理部であって、具体的には、取得部111で取得された情報に従って、認知症レベルを判定する。判定部112は、汎用又は専用の電気回路であってもよい。
【0037】
具体的には、判定部112は、取得部111で取得された連続押し割合に基づいて、認知症レベルを判定する。特に、判定部112は、連続押し割合が高いほど、相対的に認知症レベルをより重度と判定する。例えば、判定部112は、連続押し割合が第1の割合である場合、認知症レベルを第1のレベルと判定し、連続押し割合が第1の割合よりも高い第2の割合である場合、認知症レベルを第1のレベルよりも重度である第2のレベルと判定する。
【0038】
また、判定部112は、連続押し割合が高いほど、認知症レベルをより重度と常に判定しなくてもよい。判定部112は、他の条件等に従って、例外的に、連続押し割合が高いほど、認知症レベルをより重度と判定しなくてもよい。また、例えば、判定部112は、連続押し割合が所定の範囲内である場合、認知症レベルを同じレベルと判定してもよい。
【0039】
また、例えば、判定部112は、連続押し割合が所定の閾値未満である場合、認知症レベルを健常者の範囲に対応する正常レベルと判定してもよい。そして、判定部112は、連続押し割合が所定の閾値以上である場合、認知症レベルを軽度認知障害及び認知症の範囲に対応する異常レベルと判定してもよい。
【0040】
また、判定部112は、連続押し割合に限らず、他のパラメータを認知症レベルの判定に用いてもよい。すなわち、判定部112は、連続押し割合及び他のパラメータに基づいて、認知症レベルを判定してもよい。
【0041】
他のパラメータは、例えば、取得部111で取得された押下回数である。例えば、判定部112は、押下回数が少ないほど、認知症レベルをより重度と判定する。判定部112は、連続押し割合と押下回数との重み付け加算によって得られる評価値に基づいて、連続押し割合が高いほど、かつ、押下回数が少ないほど、認知症レベルをより重度と判定してもよい。
【0042】
なお、認知症レベル(健常レベル)と押下回数との関係、及び、認知症レベル(健常レベル)と連続押し割合との関係は、
図8を用いて後述する。
【0043】
出力部113は、情報を出力する処理部であって、具体的には、判定部112で判定された認知症レベルを示す認知症情報等を出力する。出力部113は、汎用又は専用の電気回路であってもよい。
【0044】
例えば、出力部113は、有線又は無線の通信で情報を送信することによって情報を出力してもよい。この場合、出力部113は、通信のための端子又はアンテナを備えていてもよい。そして、出力部113は、端末装置120へ認知症情報を送信することにより、認知症情報を出力してもよい。
【0045】
また、例えば、出力部113は、ディスプレイ、スピーカ又はタッチパネル等の出力インタフェースを介して情報を出力してもよい。具体的には、出力部113は、情報をディスプレイに表示することにより情報を出力してもよいし、情報をスピーカから音声として出力してもよい。また、出力部113は、このような出力インタフェースを備えていてもよい。
【0046】
また、出力部113は、記録媒体などのメモリへ情報を出力してもよい。また、出力部113は、記録媒体などに接続するための接続インタフェースを備えていてもよい。
【0047】
また、取得部111における端子、アンテナ、入力インタフェース又は接続インタフェース等の構成と、出力部113における端子、アンテナ、入力インタフェース又は接続インタフェース等の構成とは、部分的又は全体的に、共通化されていてもよい。
【0048】
[発明者らの知見]
健常なユーザがMCIの状態に変化する場合、実行機能障害または見当識障害などの様々な障害が症状として現れる。認知機能の低下時には意識的部分の能力低下が大きく、ユーザがMCIの状態に変化する傾向をつかむためには、見当識障害のようなユーザの判断力の低下を検出する必要がある。
【0049】
そこで、発明者らは、操作装置140のボタンの連続押しに着目した。一般的に、ユーザが目的もなくテレビを見ているとき、ユーザが何をしているのかわからなくなりただ操作装置140のボタンを押しているときなどには、操作装置140のボタンの連続押しが発生する。発明者らは、操作装置140のボタンの連続押しによって主に見当識障害による認知機能の低下を検出する構成を見出した。以下、このような操作装置140のボタンの連続押しに基づく認知症判定システム100の認知症レベルの判定動作について説明する。
【0050】
[連続押し割合の特定方法]
まず、センサ装置150による操作装置140から発信された信号に基づいて連続押し割合を特定する方法について説明する。
図3は、
図1に示された操作装置140が信号を発信するタイミングを示すタイムチャートである。
【0051】
ユーザの指によって操作装置140のボタンが押されている間において、ボタンがオン状態になり、信号が繰り返して発信される。特に、ボタンが押され始めてから、ボタンが元に戻るまで、ボタンがオン状態になる。したがって、ボタンが押され始めてから元に戻るまでの間において、信号が繰り返して発信される。例えば、この信号は、ボタンがオン状態において、約200ms毎に赤外線で発信される。したがって、ボタンが押され始めてから元に戻るまでの時間が1~2秒間であれば、信号が5~10回発信される。
【0052】
電気機器130は、操作装置140から発信された信号を受信し、受信された信号に従って動作する。例えば、その際、電気機器130は、信号を受信してから数秒間において、信号の受信を停止する。あるいは、電気機器130は、その数秒間において受信される信号を破棄する。これにより、電気機器130は、二重の動作を抑制する。
【0053】
センサ装置150も、電気機器130と同様に、操作装置140から発信された信号を受信する。すなわち、センサ装置150は、操作装置140から発信された信号を検知する。ただし、センサ装置150は、信号を検知した後も、検知を停止せずに、信号を検知する。そして、センサ装置150は、後に検知された信号も破棄せずに、後に検知された信号を示す情報も検知結果に含める。
【0054】
これにより、1回の押下に対して複数回発信された信号を示す情報が、検知結果に含められる。
【0055】
図4は、
図2等に示された認知症判定装置110が認知症レベルを判定するための信号の検知結果を示すデータ構成図である。
図4の左側に示される検知結果は、センサ装置150によって得られる検知結果の例である。
【0056】
例えば、検知結果は、検知時刻とボタン名称とを含む。検知時刻は、センサ装置150が信号を検知した時刻であって、センサ装置150が操作装置140から発信された信号を受信した時刻である。ボタン名称は、検知された信号によって押下されたボタンとして識別されるボタンの名称である。
【0057】
なお、説明が複雑にならないように、
図4の例において、電源ボタンが押下されたことにより発信される信号の検知結果が示されている。センサ装置150によって得られる検知結果には、その他のボタンが押下されたことにより発信される信号の検知結果が含まれていてもよい。また、検知結果は、その他の形式で表現されてもよい。例えば、ボタンの名称の代わりに、ボタンの識別子が用いられてもよい。
【0058】
センサ装置150は、およそ200ミリ秒単位で、操作装置140から発信された信号を検知する。したがって、元の検知結果は、200ミリ秒単位の検知結果である。そして、センサ装置150から認知症判定装置110へ200ミリ秒単位の検知結果が送信される。認知症判定装置110の取得部111は、センサ装置150から送信された検知結果を受信することにより、検知結果を取得する。
【0059】
そして、取得部111は、200ミリ秒単位の検知結果を集約することにより、1回のボタン押下を特定する。
図5は、1回のボタン押下の特定方法を説明するための図である。
図5の(a)に示されるように、1秒間に信号が複数回検知されることがあるが、認知症レベルが判定されるユーザが1秒間にボタンを複数回押下することは困難である。
【0060】
そこで、例えば、時間間隔が1秒以下の複数回の信号検知は、1回のボタン押下であるとみなされる。
図5の(a)に示される2回の信号検知(各々200ミリ秒)の時間間隔が1秒以下の300ミリ秒である場合、
図5の(b)に示されるように、2回の信号検知は、長さ700msの1回のボタン押下であるとみなされる。
【0061】
このように、1回のボタン押下が特定された後、取得部111は、連続押し回数を特定する。
図6は、連続押しの判定基準を説明するための図である。
【0062】
図6に示されるように。1回目のボタン押下に続いて2回目のボタン押下が行われた場合に、1回目のボタン押下の終了時刻から2回目のボタン押下の開始時刻までの時間間隔をTとする。時間間隔Tが基準時間間隔以下である場合に、1回目のボタン押下と2回目のボタン押下のそれぞれは、連続押しであると判定される。つまり、
図6には、2回分の連続押しが示されている。なお、
図6で時間間隔Tが基準時間間隔以下であるケースが1回の連続押しであると判定されてもよい。基準時間間隔は、例えば、5秒であるが、その他の時間であってもよい。基準時間間隔は、経験的または実験的に適宜定められればよい。基準時間間隔は、固定の時間であってもよいし、動的に定められる時間であってもよい。
【0063】
なお、連続押しの判定において、1回目に押されるボタンと2回目に押されるボタンが同一であるか否かは問われない。言い換えれば、1回目に押されるボタンと2回目に押されるボタンとは同一のボタンであってもよいし、異なるボタンであってもよい。
【0064】
そして、取得部111は、ボタンの押下回数に対する、ボタンの長押し回数の割合を連続押し割合として取得する。
図7は、連続押し割合を説明するための図である。
【0065】
図7において、1つの棒グラフは、1回のボタン押下を示し、ハッチングされた棒グラフは、連続押しであると判定されたボタン押下を示す。
図7に示されるように、例えば、対象期間(例えば、1日)において、10回のボタン押下が特定され、そのうちの5回が連続押しであると判定された場合、5/10=1/2が連続押し割合として取得される。
【0066】
なお、上記において説明された検知結果の形式、押下回数の取得方法、連続押し回数の取得方法、及び、連続押し割合の取得方法は、一例であって、これらは上記の例に限定されない。
【0067】
このように特定される連続押し割合は、ユーザの認知機能と相関関係を有する。
図8は、複数のユーザを対象とした、連続押し割合と物忘れ相談プログラム(MSP)のスコアとの相関関係を示す図である。なお、物忘れ相談プログラムは、AD(Alzheimer’s Disease)患者を発見するためのスクリーニングテストプログラムである。なお、
図8にプロットされている1つの点は、
1人のユーザの連続押し割合の平均値(例えば、1日を対象期間とした連続押し割合の1か月の平均値)を示す。
【0068】
図8に示されるように、上記連続押し割合とMSPのスコアとの相関係数Rは、R=-0.488(R
2=0.2379)である。また、この場合のp値は、p=0.000であり、有意水準である0.05よりも極めて低い。つまり、連続押し割合とMSPのスコアとは、明確な相関関係を有するといえる。なお、連続押し割合は、数値が高いほど認知機能が低下していることを示すのに対し、MSPのスコアは数値が低いほど認知機能が低下していることを示すため、両者は負の相関を有している。
【0069】
なお、
図8では、MSPスコアが9以上のユーザを対象として相関係数が算出されているが、MSPスコアが低い中度ADのユーザ、及び、重度ADのユーザを含めて相関係数が算出されたとしても、連続押し割合とMSPのスコアとは明確な相関関係を有している。つまり、連続押し割合を用いた認知機能の判定は、重度ADのユーザから健常なユーザまでを区別することができる。しかしながら、MSPスコアが高いユーザのみを対象として相関係数が算出された場合のほうが相関性が強いことから、連続押し割合を用いた認知機能の判定は、軽度ADのユーザ、MCIのユーザ、及び、健常なユーザの区別により適しているといえる。
【0070】
[連続押し割合の特定方法]
以上のような連続押し割合を用いた、認知症判定装置110の動作について説明する。
図9は、
図2等に示された認知症判定装置110の動作を示すフローチャートである。認知症判定装置110は、ユーザの認知症レベルの判定において、
図9に示された動作を行う。
【0071】
まず、認知症判定装置110の取得部111は、連続押し割合を取得する(S101)。連続押し割合は、電気機器130に対する操作にユーザが用いる操作装置140のボタンが押された押下回数に対する、操作装置140のボタンが基準時間間隔以下の時間間隔で押された連続押し回数の割合である。例えば、取得部111は、操作装置140から発信された信号を検知するセンサ装置150から検知結果を取得し、検知結果から連続押し割合を取得してもよい。
【0072】
次に、認知症判定装置110の判定部112は、取得部111で取得された連続押し割合に基づいて、ユーザの認知症レベルを判定する(S102)。その際、判定部112は、連続押し割合が高いほど、認知症レベルをより重度と判定する。例えば、連続押し割合が閾値以上である場合、判定部112は、認知症レベルを軽度認知障害及び認知症の範囲に対応する異常レベルと判定してもよい。そして、連続押し割合が閾値よりも低い場合、判定部112は、認知症レベルを健常者の範囲に対応する正常レベルと判定してもよい。
【0073】
そして、認知症判定装置110の出力部113は、判定部112で判定された認知症レベルを示す認知症情報を出力する(S103)。例えば、出力部113は、端末装置120へ認知症情報を送信することにより、認知症情報を出力してもよい。
【0074】
これにより、認知症判定装置110は、ユーザによって行われる日常の作業に従って、認知症レベルを判定することができる。また、認知症レベルを判定するための連続押し割合は、正しい操作か誤った操作かとは無関係に定められ、かつ、ユーザの嗜好の影響を受けにくい。そして、認知能力が低下することにより、連続押し割合が増加すると推定される。したがって、認知症判定装置110は、連続押し割合に基づいて、適切に認知症レベルを判定することができる。
【0075】
(変形例)
図10は、
図1に示された認知症判定システム100の変形構成を示す概念図である。本変形例において、センサ装置150は、電気機器130に接続され、電気機器130と通信を行うことにより、電気機器130の動作を制御する。すなわち、センサ装置150は、電気機器130の動作を制御する制御装置として動作する。
【0076】
例えば、認知症判定装置110の出力部113は、認知症情報を出力することにより、センサ装置150を介して、認知症情報を電気機器130の画面に表示させてもよい。具体的には、認知症判定装置110の出力部113は、センサ装置150へ認知症情報を出力する。そして、センサ装置150は、認知症判定装置110から認知症情報を受信し、認知症情報を電気機器130へ送信する。そして、電気機器130は、センサ装置150から認知症情報を受信し、画面に認知症情報を表示する。
【0077】
これにより、認知症判定装置110は、電気機器130のユーザに、認知症レベルを通知することができる。
【0078】
また、例えば、認知症判定装置110の出力部113は、ユーザの認知能力を向上させるための訓練コンテンツを出力することにより、センサ装置150を介して、訓練コンテンツを電気機器130の画面に表示させてもよい。
【0079】
具体的には、認知症情報の例と同様に、認知症判定装置110の出力部113は、認知症レベルに基づいて、センサ装置150へ訓練コンテンツを出力する。そして、センサ装置150は、認知症判定装置110から訓練コンテンツを受信し、訓練コンテンツを電気機器130へ送信する。そして、電気機器130は、センサ装置150から訓練コンテンツを受信し、画面に認知症情報を表示する。
【0080】
これにより、認知症判定装置110は、電気機器130のユーザに、認知能力の向上のための訓練を促すことができる。電気機器130の画面に表示される訓練コンテンツは、操作装置140が用いられる操作の訓練コンテンツである。例えば、操作装置140を用いて電気機器130に対する操作を訓練コンテンツに従って行うことで、認知能力の向上のための訓練が実施される。このような操作は、ユーザの指の運動を伴うため、認知能力の向上に有効である。
【0081】
また、訓練コンテンツは、各認知症レベルに対して定められていてもよい。これにより、ユーザの認知症レベルに対して定められる訓練コンテンツに従って、ユーザの認知能力を改善するための訓練が実施される。訓練コンテンツは、認知症判定装置110の内部又は外部のメモリに予め記録されていてもよい。
【0082】
また、ユーザの認知症レベルが、軽度認知障害又は認知症に対応するレベルと判定された場合に、認知症判定装置110の出力部113が、電気機器130の画面に表示させてもよい。つまり、判定された認知症レベルが所定の基準レベルよりも重度である場合に、認知症判定装置110の出力部113が、電気機器130の画面に表示させてもよい。これにより、認知症判定装置110が、訓練が不要な場合に、訓練コンテンツの表示を抑制することができる。
【0083】
図11は、
図10に示された電気機器130の画面に表示される情報の遷移を示す画面遷移図である。例えば、認知症情報及び訓練コンテンツは、
図11のように表示される。
【0084】
図11の例において、電気機器130であるテレビがオンされた場合、テレビの画面に、軽度認知障害の疑いがある旨の通知が表示される。この通知は、日毎に最初にテレビがオンされた際に表示され、2回目以降において、表示されなくてもよい。また、この通知は、過去の操作に基づいて判定された認知症レベルを示す認知症情報に対応する。例えば、この通知は、過去1日間、過去1週間、又は、過去1ヵ月等の操作に基づいて判定された認知症レベルを示していてもよい。
【0085】
そして、訓練を開始する場合、1チャンネルボタンを押すことが促される。ここで、所定時間内に1チャンネルボタンが押下されることで、訓練が開始される。すなわち、訓練コンテンツが表示される。
【0086】
例えば、所定時間内に1チャンネルボタンが押下された場合、次に、訓練を開始する旨が通知され、2チャンネルボタンを押すことが促される。所定時間内に2チャンネルボタンが押下された場合、OKの旨が通知され、次に、5チャンネルボタンを押すことが促される。所定時間内に5チャンネルボタンが押下されなかった場合、NGの旨が通知され、次に、12チャンネルボタンを押すことが促される。所定時間内に12チャンネルボタンが押下された場合、OKの旨が通知される。
【0087】
そして、訓練結果が点数で表示される。その際、訓練コンテンツが示す指示に従って操作が適切に行われたか回数に従って、点数が定められてもよい。また、訓練中の連続押し割合が点数に反映されてもよい。その後、通常通り、テレビ番組の表示が開始される。
【0088】
なお、認知症判定装置110は、訓練中の連続押し割合を認知症レベルの判定に反映させてもよい。また、認知症判定装置110は、訓練期間を含む判定対象期間における連続押し割合に基づいて認知症レベルを新たに判定し、新たに判定された認知症レベルを示す認知症情報を訓練後に画面に表示させてもよい。
【0089】
また、チャンネルボタンを押すための所定時間は、ユーザの認知症レベルに対して定められてもよい。また、上記では、訓練においてチャンネルボタンの押下が3回繰り返されているが、繰り返しの回数は、ユーザの認知症レベルに対して定められてもよい。
【0090】
例えば、ボタン押下のための所定時間、及び、繰り返しの回数が異なる複数の訓練コンテンツが、複数の認知症レベルに対して予め定められてもよい。そして、複数の認知症レベルに対して予め定められた複数の訓練コンテンツのうち、ユーザの認知症レベルに対して定められた訓練コンテンツに従って、訓練が実施されてもよい。
【0091】
図12は、
図10に示された電気機器130の画面に表示される情報の表示領域を示す画面構成図である。認知症情報及び訓練コンテンツは、画面の全体ではなく、画面の一部の領域に表示されてもよい。
図12の例では、画面の右下の領域に、認知症情報及び訓練コンテンツが表示される。そして、画面の他の領域に、テレビ番組が表示される。
【0092】
なお、訓練に用いられるボタン、及び、訓練の開始に用いられるボタンとして、あまり使用されないボタンが用いられてもよい。これにより、テレビ番組を視聴するための操作を妨げることが抑制される。
【0093】
図13は、
図10等に示された認知症判定システム100の動作を示すフローチャートである。変形例における認知症判定装置110は、ユーザの認知症レベルの判定において、
図13に示された動作を行う。
【0094】
まず、認知症判定装置110の取得部111は、連続押し割合を取得する(S101)。次に、認知症判定装置110の判定部112は、取得部111で取得された連続押し割合に基づいて、ユーザの認知症レベルを判定する(S102)。そして、認知症判定装置110の出力部113は、判定部112で判定された認知症レベルを示す認知症情報を出力する(S103)。
【0095】
これらの処理は、基本的に、
図9の例と同様である。本変形例において、認知症判定装置110の出力部113は、認知症情報を出力することにより、電気機器130の画面に認知症情報を表示させてもよい。
【0096】
また、本変形例において、認知症判定装置110の出力部113は、判定部112で判定された認知症レベルに基づいて、訓練コンテンツを出力することにより、訓練コンテンツを電気機器130の画面に表示させる(S104)。例えば、認知症判定装置110の出力部113は、判定部112で判定された認知症レベルに対して定められる訓練コンテンツを出力することにより、認知症レベルに対して定められる訓練コンテンツを電気機器130の画面に表示させてもよい。
【0097】
これにより、認知症判定装置110は、認知症レベルの判定に用いられた電気機器130を介して、認知症レベルの判定結果をユーザに通知することができる。そして、これにより、認知症判定装置110は、生活リズムの改善などをユーザに促すことができる。また、認知症判定装置110は、訓練コンテンツを電気機器130の画面に表示させることにより、認知能力の改善を促すことができる。
【0098】
また、例えば、訓練コンテンツに従って、操作装置140を用いて電気機器130に対する操作が行われる。認知症判定装置110は、訓練コンテンツに従って行われる操作を次回の判定に反映させてもよい。
【0099】
具体的には、次回の判定において、認知症判定装置110の取得部111は、訓練コンテンツが表示されている訓練期間を含む判定対象期間における連続押し割合を新たに取得する。そして、認知症判定装置110の判定部112は、取得部111で新たに取得された連続押し割合に基づいて、認知症レベルを新たに判定する。
【0100】
これにより、認知症判定装置110は、訓練によって改善された認知症レベルを適切に判定することができる。
【0101】
なお、上記の実施の形態及び変形例において、センサ装置150は、電気機器130に組み込まれていてもよい。そして、電気機器130が、センサ装置150の役割を有していてもよい。さらに、認知症判定装置110が、電気機器130に組み込まれていてもよいし、認知症判定装置110に含まれる複数の構成要素が、電気機器130に組み込まれていてもよい。そして、電気機器130が、認知症判定装置110の役割を有していてもよい。
【0102】
また、認知症判定システム100は、ユーザ環境における複数のユーザの中から、各ユーザを認証し、複数のユーザの中から認証されたユーザの認知症レベルを判定してもよい。例えば、複数のユーザに対して、複数の操作装置がそれぞれ割り当てられていてもよい。そして、複数の操作装置のうち、操作に用いられた操作装置に従って、ユーザが認証されてもよい。あるいは、1つの操作装置が、指紋認証によって、各ユーザを認証してもよい。
【0103】
また、認知症判定システム100は、連続押し割合に基づいて認知症レベルを判定する際に、ユーザが健常な過去の状態における連続押し割合と、現在の状態における連続押し割合とを比較してもよい。そして、認知症判定システム100は、現在の状態における連続押し割合が、過去の状態における連続押し割合よりも高い場合、現在の状態における認知症レベルを過去の状態における認知症レベルよりも重度と判定してもよい。
【0104】
すなわち、現在の状態におけるユーザの認知症レベルを判定するための連続押し割合に対する閾値は、ユーザが健常な過去の状態における連続押し割合に基づいて定められてもよい。あるいは、このような閾値を定めるため、ユーザが健常な過去の状態における連続押し割合の代わりに、複数のユーザの健常な状態における平均的な連続押し割合が用いられてもよい。
【0105】
また、認知症判定システム100は、連続押し割合に基づいて認知症レベルを判定する際に、連続押し割合だけでなく、他の判定基準を用いてもよい。すなわち、認知症判定システム100は、連続押し割合及び他のパラメータに基づいて、認知症レベルを判定してもよい。
【0106】
以上、本発明の一態様における認知症判定システム100について、実施の形態等に従って説明したが、本発明は、実施の形態等に限定されない。実施の形態等に対して当業者が思いつく変形を施して得られる形態、及び、実施の形態等における複数の構成要素を任意に組み合わせて実現される別の形態も本発明に含まれる。
【0107】
例えば、特定の構成要素が実行する処理を別の構成要素が実行してもよい。また、処理を実行する順番が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0108】
また、本発明は、認知症判定システム100として実現できるだけでなく、認知症判定システム100を構成する各構成要素が行うステップを含む認知症判定方法として実現できる。例えば、それらのステップは、プロセッサ、メモリ及び入出力回路等を備えるコンピュータシステムによって実行される。そして、本発明は、それらの方法に含まれるステップを、コンピュータシステムに実行させるためのプログラムとして実現できる。なお、コンピュータシステムは、単にコンピュータと表現される場合がある。
【0109】
また、本発明は、上記のプログラムを記録した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。記録媒体は、CD-ROM等の光ディスクでもよいし、ハードディスドライブ等の磁気ディスクでもよいし、光磁気ディスク(MO)でもよいし、フラッシュメモリ等の半導体メモリでもよいし、他の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体でもよい。また、プログラムは、記録媒体に予め記録されていてもよいし、通信ネットワークを介して記録媒体に供給されることで記録媒体に記録されてもよい。
【0110】
例えば、本発明が、プログラムで実現される場合には、コンピュータシステムのプロセッサ、メモリ及び入出力回路等のハードウェア資源を利用してプログラムが実行されることによって、各ステップが実行される。つまり、プロセッサがデータをメモリ又は入出力回路等から取得して演算したり、演算結果をメモリ又は入出力回路等に出力したりすることによって、各ステップが実行される。プログラムを実行するためのプロセッサとして、任意の種類のプロセッサが利用可能である。
【0111】
また、認知症判定システム100等に含まれる複数の構成要素は、それぞれ、専用又は汎用の回路として実現されてもよい。これらの構成要素は、1つの回路として実現されてもよいし、複数の回路として実現されてもよい。
【0112】
また、認知症判定システム100等に含まれる複数の構成要素は、集積回路(IC:Integrated Circuit)であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。これらの構成要素は、個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。これらの構成要素が、1つの装置の1以上のチップに設けられてもよいし、複数の装置の複数のチップに設けられてもよい。
【0113】
また、LSIは、集積度の違いにより、システムLSI、スーパーLSI又はウルトラLSIと呼称される場合がある。また、集積回路は、専用回路又は汎用プロセッサで実現されてもよい。プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、内部の回路セルの接続及び設定が再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサが、利用されてもよい。
【0114】
さらに、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて、認知症判定システム100に含まれる複数の構成要素の集積回路化が行われてもよい。
【0115】
最後に、認知症判定システム100等の複数の態様を例として示す。これらの態様は、適宜、組み合わされてもよい。また、上記の実施の形態等に示された任意の構成等が追加されてもよい。
【0116】
(第1態様)
本発明の一態様における認知症判定システム100は、取得部111と、判定部112と、出力部113とを備える。
【0117】
取得部111は、電気機器130に対する操作にユーザが用いる操作装置140のボタンが押された押下回数に対する、操作装置140のボタンが基準時間間隔以下の時間間隔で押された連続押し回数の割合である連続押し割合を取得する。判定部112は、取得部111で取得された連続押し割合に基づいて、ユーザの認知症レベルを判定する。その際、判定部112は、連続押し割合が高いほど、認知症レベルをより重度と判定する。出力部113は、判定部112で判定された認知症レベルを示す認知症情報を出力する。
【0118】
これにより、認知症判定システム100は、ユーザによって行われる日常の作業に従って、認知症レベルを判定することができる。また、認知症レベルを判定するための連続押し割合は、正しい操作か誤った操作かとは無関係に定められ、かつ、ユーザの嗜好の影響を受けにくい。そして、認知能力が低下することにより、連続押し割合が増加すると推定される。したがって、認知症判定システム100は、連続押し割合に基づいて、適切に認知症レベルを判定することができる。
【0119】
(第2態様)
例えば、判定部112は、連続押し割合が閾値以上である場合、認知症レベルを軽度認知障害及び認知症の範囲に対応する異常レベルと判定してもよい。そして、判定部112は、連続押し割合が閾値よりも低い場合、認知症レベルを健常者の範囲に対応する正常レベルと判定してもよい。これにより、認知症判定システム100は、ユーザの認知症レベルが正常レベルであるか異常レベルであるかを適切に判定することができる。
【0120】
(第3態様)
例えば、出力部113は、認知症情報を出力することにより、認知症情報を電気機器130の画面に表示させてもよい。これにより、認知症判定システム100は、ユーザの認知症レベルをユーザに通知することができる。したがって、認知症判定システム100は、生活リズムの改善などをユーザに促すことができる。
【0121】
(第4態様)
例えば、出力部113は、判定部112で判定された認知症レベルに基づいて、操作装置140が用いられる操作の訓練コンテンツを出力することにより、訓練コンテンツを電気機器130の画面に表示させてもよい。これにより、認知症判定システム100は、判定された認知症レベルに基づいて、ユーザに訓練を促すことができる。
【0122】
(第5態様)
例えば、出力部113は、判定部112で判定された認知症レベルが基準レベルよりも重度である場合に訓練コンテンツを出力することにより、訓練コンテンツを電気機器130の画面に表示させてもよい。これにより、認知症判定システム100は、ユーザが軽度認知障害又は認知症と判定された場合等において、ユーザに訓練を促すことができる。
【0123】
(第6態様)
例えば、出力部113は、判定部112で判定された認知症レベルに対して定められる訓練コンテンツを出力することにより、訓練コンテンツを電気機器130の画面に表示させてもよい。これにより、認知症判定システム100は、判定された認知症レベルに適した訓練をユーザに促すことができる。
【0124】
(第7態様)
例えば、取得部111は、訓練コンテンツが表示されている訓練期間を含む判定対象期間における連続押し割合を新たに取得してもよい。判定部112は、取得部111で新たに取得された連続押し割合に基づいて、認知症レベルを新たに判定してもよい。これにより、認知症判定システム100は、情報をより多くの収集し、認知症レベルを判定することができる。また、認知症判定システム100は、訓練によって改善される認知症レベルを判定することができる。
【0125】
(第8態様)
本発明の一態様におけるプログラムは、取得ステップ(S101)と、判定ステップ(S102)と、出力ステップ(S103)とを含む認知症判定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0126】
取得ステップ(S101)では、電気機器130に対する操作にユーザが用いる操作装置140のボタンが押された押下回数に対する、操作装置140のボタンが基準時間間隔以下の時間間隔で押された連続押し回数の割合である連続押し割合を取得する。
【0127】
判定ステップ(S102)では、取得ステップ(S101)で取得された連続押し割合に基づいて、ユーザの認知症レベルを判定する。また、判定ステップ(S102)では、連続押し割合が高いほど、認知症レベルをより重度と判定する。出力ステップ(S103)では、判定ステップ(S102)で判定された認知症レベルを示す認知症情報を出力する。
【0128】
これにより、プログラムは、認知症レベルの適切な判定をコンピュータに実行させることができる。
【符号の説明】
【0129】
100 認知症判定システム
111 取得部
112 判定部
113 出力部
130 電気機器
140 操作装置