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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】エネルギー売買装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230113BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018212911
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020080043
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-07-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、センター・オブ・イノベーション事業「持続的共進化地域創成拠点」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【弁理士】
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 広基
(72)【発明者】
【氏名】波多江 徹
(72)【発明者】
【氏名】川端 康晴
(72)【発明者】
【氏名】松崎 良雄
(72)【発明者】
【氏名】馬場 好孝
(72)【発明者】
【氏名】立川 雄也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一成
(72)【発明者】
【氏名】原田 達朗
(72)【発明者】
【氏名】豊村 祐士
【審査官】加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-022819(JP,A)
【文献】特開2011-150639(JP,A)
【文献】特開2010-086027(JP,A)
【文献】国際公開第2011/145650(WO,A1)
【文献】特開2015-015116(JP,A)
【文献】特開2005-122991(JP,A)
【文献】特開2002-112458(JP,A)
【文献】太陽電池モジュール パワーコンディショナ カラー電力モニタ JH-RWL3 住宅用太陽光発電システム 取扱説明書,日本,SHARP,2010年07月,PP.31-32、35
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備を有して発電する売電者から購入した電力量である買電量を把握する買電量把握部と、
前記買電量把握部が把握した前記買電量に応じたCO2排出権を算出する排出権算出部と、
前記排出権算出部が算出した前記CO2排出権に対応する燃料量を算出する燃料量算出部と、
前記燃料量算出部が算出した前記燃料量の内の少なくとも一部であって、特定需要家へ供給した当該燃料量を当該特定需要家に通知する通知部と、
を備えるエネルギー売買装置。
【請求項2】
前記特定需要家は、供給された燃料を用いて発電する発電装置を有する者である
請求項に記載のエネルギー売買装置。
【請求項3】
前記特定需要家は、供給された燃料を用いて発電する発電装置が発電した電気を用いて走行する電気自動車、供給された燃料を用いて水素を製造するとともに製造した水素を用いて発電した電気で走行する燃料電池自動車、又は、供給された燃料を燃焼させることにより作動する内燃機関若しくは外燃機関を搭載した自動車を有する者である
請求項に記載のエネルギー売買装置。
【請求項4】
発電設備を有して発電する売電者から購入した電力量である買電量を把握する買電量把握部と、
前記買電量把握部が把握した前記買電量に応じたCO2排出権を算出する排出権算出部と、
前記排出権算出部が算出した前記CO2排出権に対応する燃料量を算出する燃料量算出部と、
前記燃料量算出部が算出した前記燃料量の内の少なくとも一部を用いて発電した電力であって、特定需要家へ供給した電力量を当該特定需要家に通知する通知部と、
を備えるエネルギー売買装置。
【請求項5】
前記燃料量算出部が算出した前記燃料量の内の少なくとも一部の燃料を用いて発電する発電装置により発電された電力が前記特定需要家に供給される
請求項に記載のエネルギー売買装置。
【請求項6】
前記売電者は、再生可能エネルギーを用いて発電し、
前記特定需要家は、RE100を志向する需要家である
請求項からのいずれか1項に記載のエネルギー売買装置。
【請求項7】
コンピュータに、
発電設備を有して発電する売電者から購入した電力量である買電量を把握する機能と、
前記買電量に応じたCO2排出権を算出する機能と、
前記CO2排出権に対応する燃料量を算出する機能と、
前記燃料量の内の少なくとも一部であって、特定需要家へ供給した当該燃料量を当該特定需要家に通知する機能と、
を実現させるプログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
発電設備を有して発電する売電者から購入した電力量である買電量を把握する機能と、
前記買電量に応じたCO2排出権を算出する機能と、
前記CO2排出権に対応する燃料量を算出する機能と、
前記燃料量の内の少なくとも一部を用いて発電した電力であって、特定需要家へ供給した電力量を当該特定需要家に通知する機能と、
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー売買装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(以下、「FIT制度」と称する場合がある。)が終了することを踏まえた取り組みが提案されている。
例えば、非特許文献1に記載された「電気のお預かりサービス(仮称)」は、太陽光発電設備がある施設(例えば家)に蓄電池等の設備が無くても、余った電気をお預かりしたとみなし、その後に実際に使用する際に充当することができるサービスである。
また、近年、非化石価値取引市場が創設された。この非化石価値取引市場は、非化石価値を顕在化し、取引を可能とすることで、小売電気事業者の非化石電源調達目標の達成を後押しするとともに、需要家にとっての選択肢を拡大しつつ、FIT制度による国民負担の軽減に資する、新たな市場である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】東京電力エナジーパートナー株式会社、エネルギーとIoT技術を活用した「次世代スマートタウンプロジェクト」について、[2018年8月27日検索]、インターネット、〈URL:http://www.tepco.co.jp/ep/notice/pressrelease/2018/1477419_8663.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力をあまり使用しない者は預けた電気を使用する機会が多くないことから、非特許文献1に記載されたサービスは、発電設備を所有するが電力をあまり使用しない者にとっては好ましいサービスとは言えない。それゆえ、電力をあまり使用しない者にとっても有効な仕組みを構築することが望まれている。
また、非化石価値取引市場が創設されたように、非化石価値の電気を使いたいという需要家にとっての選択肢を拡大することが望まれている。
本発明は、発電設備を所有するが電力をあまり使用しない者も利益を享受することができるとともに、非化石価値の電力を使いたいという需要家の選択肢を拡大するシステムを実現することができるエネルギー売買装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、発電設備を有して発電する売電者から購入した電力量である買電量を把握する買電量把握部と、前記買電量把握部が把握した前記買電量に応じたCO排出権を算出する排出権算出部と、前記排出権算出部が算出した前記CO排出権に対応する燃料量を算出する燃料量算出部と、を備えるエネルギー売買装置である。
ここで、前記燃料量算出部が算出した前記燃料量の内の少なくとも一部であって、特定需要家へ供給した当該燃料量を当該特定需要家に通知する通知部をさらに備えても良い。
また、前記特定需要家は、供給された燃料を用いて発電する発電装置を有する者であっても良い。
また、前記特定需要家は、供給された燃料を用いて発電する発電装置が発電した電気を用いて走行する電気自動車、供給された燃料を用いて水素を製造するとともに製造した水素を用いて発電した電気で走行する燃料電池自動車、又は、供給された燃料を燃焼させることにより作動する内燃機関若しくは外燃機関を搭載した自動車を有する者であっても良い。
また、前記燃料量算出部が算出した前記燃料量の内の少なくとも一部を用いて発電した電力であって、特定需要家へ供給した電力量を当該特定需要家に通知する通知部をさらに備えても良い。
また、前記燃料量算出部が算出した前記燃料量の内の少なくとも一部の燃料を用いて発電する発電装置により発電された電力が前記特定需要家に供給されても良い。
また、前記売電者は、再生可能エネルギーを用いて発電し、前記特定需要家は、RE100を志向する需要家であっても良い。
また、かかる目的のもと完成させた本発明は、コンピュータに、発電設備を有して発電する売電者から購入した電力量である買電量を把握する機能と、前記買電量に応じたCO排出権を算出する機能と、前記CO排出権に対応する燃料量を算出する機能と、を実現させるプログラムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発電設備を所有するが電力をあまり使用しない者も利益を享受することができるとともに、非化石価値の電力を使いたいという需要家の選択肢を拡大するシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係るエネルギー売買システムの概略構成を例示した図である。
図2】エネルギー売買装置のハードウェア構成を例示したブロック図である。
図3】第1の実施形態に係るエネルギー売買装置の機能構成を例示したブロック図である。
図4】第1の実施形態に係るエネルギー売買装置が行う売買処理を示すフローチャートである。
図5】第1の実施形態に係るエネルギー売買装置が行う通知処理を示すフローチャートである。
図6】第2の実施形態に係るエネルギー売買システムの概略構成を例示した図である。
図7】第2の実施形態に係るエネルギー売買装置の機能構成を例示したブロック図である。
図8】第3の実施形態に係るエネルギー売買システムの概略構成を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るエネルギー売買システム1の概略構成を例示した図である。
第1の実施形態に係るエネルギー売買システム1は、電力及びガスを供給する事業者(以下、「事業者B」と称する場合がある。)が、自ら発電した電力を売る者(以下、「売電者G」と称する場合がある。)から、電力を購入するとともに、売電者Gから購入した電力量に応じたCO排出権に対応する燃料量の燃料を、特定の需要家である特定需要家Sに供給するシステムである。
【0009】
事業者Bは、売電者Gから電力を購入するとともに、売電者Gから購入した電力量に応じたCO排出権に対応する燃料量の燃料を、特定需要家Sに供給することを実現するエネルギー売買装置100を所有する。
また、事業者Bは、発電を行う発電設備11と、発電設備11に燃料を供給する燃料供給装置12とを所有している。
発電設備11は、燃料供給装置12から供給された燃料を使用して、火力発電により電力を生成する。発電設備11で発電された電力は、電力系統である電力グリッド60に供給される。電力グリッド60に供給された電力は、一般需要家Cに供給される。燃料は、都市ガス(主成分:メタンガス)、LPG、LNGであることを例示することができる。
燃料供給装置12は、配管ラインを介して発電設備11に燃料を供給する。また、燃料供給装置12は、例えばガス配管網を介して特定需要家Sに燃料を供給する。
【0010】
売電者Gは、例えば再生可能エネルギーを用いて自ら発電を行い、発電した電力を売る、自然人又は法人である。
売電者Gが行う再生可能エネルギーを用いた発電は、太陽光発電であることを例示することができる。また、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電でも良い。売電者Gが発電した電力は、電力グリッド60に供給される。
売電者Gは、再生可能エネルギーを用いて発電を行う発電設備21と、電力量を計測するとともにエネルギー売買装置100と通信する機能を有する公知の電力量計測機器22とを所有している。
【0011】
発電設備21は、太陽光発電設備(以下、「太陽電池」と称する場合がある。)であることを例示することができる。また、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電による設備でも良い。また、発電設備21は、再生可能エネルギーを用いた発電ではなくても良く、燃料電池発電装置(以下、「燃料電池」と称する場合がある。)等、火力発電の発電効率よりも高い効率で発電可能な設備であっても良い。
電力量計測機器22は、発電設備21で発電した電力の内、電力グリッド60に供給(逆潮流)された電力の量(以下、「逆潮流電力量」と称する場合がある。)を計測する。そして、電力量計測機器22は、計測した逆潮流電力量を、売電者Gを識別する情報として売電者Gと関連付けて予め記憶されたIDとともにエネルギー売買装置100に送信する。また、電力量計測機器22は、売電者Gの電力使用量を計測し、計測した電力使用量を売電者GのIDとともにエネルギー売買装置100に送信する。
なお、売電者Gは、単数であっても良いし、複数であっても良い。
【0012】
特定需要家Sは、例えば、事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業等、RE100を志向する需要家である。
特定需要家Sは、事業者Bの燃料供給装置12から供給された燃料を用いて発電する発電装置31と、事業者Bから供給された燃料の量を計測するとともにエネルギー売買装置100と通信する機能を有する公知の燃料量計測機器32とを所有している。
【0013】
発電装置31は、炭化水素(メタン、プロパン、ブタン等)や水素等の燃料と空気中の酸素との電気化学反応により電力を生成する公知の例えば、SOFC(固体酸化物形燃料電池)、PCFC(プロトン伝導固体酸化物形燃料電池)、又は、PEFC(固体高分子形燃料電池)等の燃料電池であることを例示することができる。あるいは、発電装置31は、ガスエンジンにて発電する装置やガスコジェネレーションシステムでも良い。発電効率の観点からは、発電装置31は、SOFC又はPCFCが最も望ましい。第1の実施形態では、発電装置31は、事業者Bから供給されるガスを燃料として使用する。
【0014】
燃料量計測機器32は、事業者Bの燃料供給装置12から発電装置31に供給された燃料量を計測する。そして、燃料量計測機器32は、計測した燃料量を、特定需要家Sを識別する情報として特定需要家Sと関連付けて予め記憶されたIDとともにエネルギー売買装置100に送信する。
【0015】
事業者Bの燃料供給装置12から発電装置31に供給される燃料量の内の少なくとも一部は、売電者Gから購入した電力量に応じたCO排出権に対応する燃料量である。CO排出権に対応する燃料量は、事業者Bと特定需要家Sとの間で予め定められた燃料量である。この燃料量は、月単位や年単位で定められることを例示することができる。
特定需要家Sは、発電装置31にて生成された電力を消費する。発電装置31に供給される燃料量の内の少なくとも一部はCO排出権に対応する燃料量であることから、発電装置31にて生成された電力は、CO排出権が紐づいた電力である。特定需要家Sが発電装置31にて生成された電力を消費する態様は特に限定されない。例えば、特定需要家Sは、事業運営に必要な照明器具、空調設備、PC等を作動するために電力を消費しても良い。また、特定需要家Sは、電気自動車(EV)を有し、発電装置31にて生成された電力を蓄えるとともに、蓄えた電力を用いて走行しても良い。
このように、特定需要家Sは、事業者Bとの間で予め定められた分の燃料の供給を受ける点で一般需要家Cとは異なる。
【0016】
また、特定需要家Sは、消費する電力量が発電装置31にて生成される電力量よりも多い場合には、電力グリッド60から電力の供給を受けても良い。特定需要家Sが、電力グリッド60から電力の供給を受ける場合には、特定需要家Sは、一般需要家Cでもあり得る。
なお、特定需要家Sは、単数であっても良いし、複数であっても良い。
【0017】
また、上述した実施形態においては、発電設備11で発電された電力、及び、発電設備21で発電した電力の内の消費されない電力が電力系統である電力グリッド60に供給される態様であるが、特にかかる態様に限定されない。例えば、一定の区域内に整備された、電力グリッド60とは別個の自営の送配電網に供給されても良い。
【0018】
以下、エネルギー売買装置100について詳述する。
図2は、エネルギー売買装置100のハードウェア構成を例示したブロック図である。
エネルギー売買装置100は、各種の情報処理を実行可能なコンピュータを有している。エネルギー売買装置100は、装置全体を制御する制御部101と、データ等の記憶に用いられる記憶部102と、操作受付画面や画像の表示に使用される表示部103と、ユーザの入力操作を受け付ける操作部104と、外部装置との通信に用いられる通信部105とを備えている。
【0019】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)101a、ROM(Read Only Memory)101b、RAM(Random Access Memory)101cにより構成される。ROM101bには、CPU101aにより実行される基本プログラム(オペレーションシステム)や各種の設定等が記憶されている。CPU101aは、RAM101cを作業エリアに使用し、ROM101bや記憶部102から読み出したアプリケーションプログラムを実行する。CPU101aがプログラムを実行することにより、エネルギー売買装置100の各部の機能が実現される。
【0020】
記憶部102は、半導体メモリなどの記憶装置であることを例示することができる。記憶部102は、HDD(Hard Disk Drive)であっても良い。
表示部103は、静止画像や動画像等を表示するディスプレイ装置である。表示部103は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイであることを例示することができる。
操作部104は、ユーザからの操作を受け付ける入力装置である。操作部104は、ボタン、スイッチ、タッチパネルであることを例示することができる。
【0021】
通信部105は、通信インターフェース(通信I/F)であることを例示することができる。エネルギー売買装置100は、売電者Gの電力量計測機器22や特定需要家Sの燃料量計測機器32と、ネットワークを介して互いに通信を行うことが可能となっている。ネットワークは、装置間のデータ通信に用いられる通信ネットワークであれば特に限定されず、例えばインターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)であることを例示することができる。データ通信に用いられる通信回線は、有線か無線かを問わず、これらを併用しても良い。また、ゲートウェイ装置やルータ等の中継装置を用い、複数のネットワークや通信回線を介して各装置を接続するように構成しても良い。
【0022】
なお、CPU101aによって実行されるプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク等)、光記録媒体(光ディスク等)、光磁気記録媒体、半導体メモリ等のコンピュータが読取可能な記録媒体に記憶した状態で提供し得る。また、インターネット等の通信手段を用いてエネルギー売買装置100にダウンロードさせてもよい。
【0023】
図3は、第1の実施形態に係るエネルギー売買装置100の機能構成を例示したブロック図である。
エネルギー売買装置100は、通信部105を介して、売電者Gの電力量計測機器22や特定需要家Sの燃料量計測機器32から送られてきた情報等を受信する受信部110を備えている。
また、エネルギー売買装置100は、受信部110が受信した情報を基に、電力量計測機器22が計測した逆潮流電力量を把握する逆潮流量把握部120を備えている。逆潮流電力量は、事業者Bが売電者Gから購入した電力量である買電量である。それゆえ、逆潮流量把握部120は、売電者Gから購入した電力量である買電量を把握する買電量把握部として機能する。
【0024】
また、エネルギー売買装置100は、逆潮流量把握部120が把握した逆潮流電力量(買電量)分のCO排出権を算出する排出権算出部130を備えている。
また、エネルギー売買装置100は、排出権算出部130が算出したCO排出権に対応する燃料量を算出する排出権対応燃料量算出部140を備えている。
また、エネルギー売買装置100は、燃料を特定需要家Sに供給するように燃料供給装置12に指示する供給指示部150を備えている。
また、エネルギー売買装置100は、受信部110が受信した情報を基に、特定需要家Sの燃料量計測機器32が計測した燃料量を把握する供給燃料量把握部160を備えている。
また、エネルギー売買装置100は、特定需要家Sに、燃料供給装置12により供給した燃料の量を通知する通知部170を備えている。
【0025】
逆潮流量把握部120は、受信部110が売電者Gの電力量計測機器22から送られてきた逆潮流電力量を受信した場合には、売電者Gの逆潮流電力量を把握するとともに、売電者GのIDに関連付けて逆潮流電力量を記憶部102に記憶する。逆潮流量把握部120は、電力量計測機器22から送られて来る度に逆潮流電力量の把握と記憶とを行っても良いし、例えば30分毎に送られて来る逆潮流電力量の累積値を、例えば日や月単位で把握し、記憶しても良い。
【0026】
排出権算出部130は、例えば、以下の算出式(1)を用いてCO排出権R(CO-kg)を算出する。
R=k×(1-x)×e・・・(1)
ここで、kは、発電設備21に対応するCO削減定数であり、単位は、CO-kg/kWhである。発電設備21が太陽電池である場合には、kは、電気事業者毎に毎年決められる値である。毎年、過去の実績より、公知の値に決められる数値である。発電設備21が太陽電池以外の発電機、例えば燃料電池の場合は以下の算出式(2)によりkを算出することを例示することができる。
k=(E1-E2)×C・・・(2)
ここで、E1は、燃料電池の発電効率、E2は、発電所の発電効率、Cは、大手電力会社の公表する二酸化炭素原単位である。なお、E1は、燃料電池の熱利用も含めた総合効率でも良い。
また、以下の算出式(3)によりkを算出しても良い。
k=E1×C1-E2×C2・・・(3)
ここで、C1は、燃料電池の二酸化炭素排出係数(CO-kg/kWh)、C2は、大手電力会社が公表する二酸化炭素原単位である。
【0027】
上記算出式(1)のxは、ライフサイクルCO2(LCCO2)を考慮する際(建物寿命1年あたりのCO排出量を算出して評価する際)に用いられる、発電設備21の製造時排出CO係数である。xは、0以上1以下の値(単位無し)であり、発電設備21の建設時にCOを多く排出するほど大きな値に決定される。製造時排出COを無視する場合は0である。
上記算出式(1)のeは、発電設備21が発電した電力量(kWh)である。
なお、算出式は一例であり、電力事業関係法令及びその実態に即す形に変化させることができる。
【0028】
排出権対応燃料量算出部140は、例えば、以下の算出式(4)を用いてCO排出権Rに対応する都市ガス(メタンガス)量M(m)を算出する。
M=R×12/44×V×l・・・(4)
ここで、Vは、体積への換算係数であり、標準状態であれば、V=0.224(m/mol)である。lは、ガス組成による補正係数である。例えばLPGで供給する場合には、都市ガスと組成が異なるために、補正係数を用いる。例えばlは1である。
【0029】
供給指示部150は、燃料供給装置12に、特定需要家Sに対して燃料を供給するように指示する。供給指示部150は、例えば、(i)事業者Bと特定需要家Sとの間に月単位や年単位の供給量が定められている場合には、月単位や年単位の供給量が定められた量となるように指示する。また、供給指示部150は、例えば、(ii)特定需要家Sが使用する燃料量の分を供給するように指示しても良い。また、供給指示部150は、例えば、(iii)特定の売電者G(複数であっても良い)から購入した電力に応じたCO排出権に対応する燃料量を供給するように指示しても良い。
【0030】
供給燃料量把握部160は、受信部110が特定需要家Sの燃料量計測機器32から送られてきた燃料量を受信した場合には、特定需要家Sに供給された燃料量(供給燃料量)を把握するとともに、特定需要家SのIDに関連付けて供給燃料量を記憶部102に記憶する。供給燃料量把握部160は、燃料量計測機器32から送られて来る度に供給燃料量の把握と記憶とを行っても良いし、例えば30分毎に送られて来る供給燃料量の累積値を、例えば日や月単位で把握し、記憶しても良い。
【0031】
通知部170は、特定需要家Sに、燃料供給装置12により供給した燃料の量(供給燃料量)を通知するとともに、供給燃料量の内のCO排出権Rに対応する燃料量(排出権対応燃料量)をも通知する。通知部170は、例えば、毎月の予め定められた日の予め定められた時刻や、毎年の予め定められた月の予め定められた日の予め定められた時刻に通知する。以下、これらを「通知時刻」と称する場合がある。
【0032】
例えば、上記(i)の場合には、供給量が予め定められているため、その全量を供給した場合には、予め定められた量が供給燃料量となる。また、上記(ii)の場合には、供給燃料量は、燃料量計測機器32にて計測された量である。上記(i)及び(ii)のいずれの場合も、事業者Bと特定需要家Sとの間で、月単位や年単位での排出権対応燃料量が予め定められている場合には、予め定められた量が排出権対応燃料量となる。事業者Bが売電者Gから購入した電力量が多く、供給燃料量を排出権対応燃料量にて賄うことができた場合には、排出権対応燃料量は供給燃料量と同じとなる。他方、事業者Bが売電者Gから購入した電力量が、供給燃料量を排出権対応燃料量にて賄うことができるほど多くない場合には、排出権対応燃料量は供給燃料量よりも少ない量となる。
また、上記(iii)の場合には、特定の売電者G(複数であっても良い)から購入した電力に応じたCO排出権に対応する分だけの燃料を特定需要家Sに供給することから、その分の燃料量が、排出権対応燃料量及び供給燃料量となる。
【0033】
図4は、第1の実施形態に係るエネルギー売買装置100が行う算出処理を示すフローチャートである。エネルギー売買装置100は、この算出処理を、予め設定された一定時間(例えば1分)ごとに繰り返し実行する。
【0034】
エネルギー売買装置100は、受信部110が売電者Gの電力量計測機器22から逆潮流電力量を受信したか否かを判断する(S401)。これは、逆潮流量把握部120が判断する処理である。そして、受信部110が逆潮流電力量を受信した場合(S401でYes)、エネルギー売買装置100は、売電者Gの逆潮流電力量を把握するとともに、売電者GのIDに関連付けて逆潮流電力量を記憶部102に記憶する(S402)。その後、エネルギー売買装置100は、S402にて把握した逆潮流電力量(買電量)に応じたCO排出権Rを算出する(S403)。これは、排出権算出部130が上記算出式(1)を用いて算出する処理である。その後、エネルギー売買装置100は、S403にて算出したCO排出権Rに対応する都市ガス(メタンガス)量M(m)を算出する(S404)。これは、排出権対応燃料量算出部140が上記算出式(4)を用いて算出する処理である。
S401にて、受信部110が逆潮流電力量を受信していない場合(S401でNo)、本処理を終了する。
【0035】
図5は、第1の実施形態に係るエネルギー売買装置100が行う通知処理を示すフローチャートである。エネルギー売買装置100は、この通知処理を、予め設定された一定時間(例えば1分)ごとに繰り返し実行する。なお、図5に例示した通知処理は、上記(ii)の場合、つまり、供給燃料量が燃料量計測機器32にて計測された量である場合の処理である。
エネルギー売買装置100は、受信部110が特定需要家Sの燃料量計測機器32から供給燃料量を受信したか否かを判断する(S501)。これは、供給燃料量把握部160が判断する処理である。そして、受信部110が供給燃料量を受信した場合(S501でYes)、供給燃料量把握部160は、特定需要家Sへの供給燃料量を把握するとともに、特定需要家SのIDに関連付けて供給燃料量を記憶部102に記憶する(S502)。
その後、通知部170が特定需要家Sに通知するべき上述した通知時刻になったか否かを判断する(S503)。そして、通知時刻になった場合(S503でYes)、エネルギー売買装置100は、供給燃料量及び排出権対応燃料量を特定需要家Sに通知する(S504)。他方、通知時刻になっていない場合(S503でNo)、本通知処理を終了する。
また、S501にて、受信部110が供給燃料量を受信していない場合(S501でNo)、S503の処理へ移行する。
なお、燃料量計測機器32が、特定需要家Sから事業者Bへ返還された燃料量をも計測する機能を有する機器である場合には、燃料量計測機器32にて計測した供給燃料量から、燃料量計測機器32にて計測した返還燃料量を減算することにより得た量を、最終的な供給燃料量として通知しても良い。あるいは、燃料量計測機器32とは別に、特定需要家Sから事業者Bへ返還された燃料量を計測する機器を有する場合には、その機器から受信した返還燃料量を、燃料量計測機器32にて計測した供給燃料量から減算することにより得た量を最終的な供給燃料量として通知しても良い。かかる場合には、例えば上述した通知時刻になったときに、一定期間(通知時刻が毎月の予め定められた日の予め定められた時刻に設定されている場合には1箇月間)の供給燃料量から、一定期間の返還燃料量を減算することにより得た量を、最終的な供給燃料量として通知しても良い。
【0036】
上述したように構成されたエネルギー売買システム1によれば、以下の利益を享受することが可能となる。
再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT制度)が終了した場合、例えば太陽光発電の余剰電力を蓄電池や水素貯蔵タンクに貯留し、自家消費することが考えられる。しかしながら、蓄電池や水素貯蔵タンクは高価であるため、蓄電池や水素貯蔵タンクの購入は、太陽光発電設備の所有者(例えば売電者G)には負担になる。また、例えば、蓄電池は10%程度の充放電ロスを伴うため、例えば余剰電力を蓄電池に充電した場合、太陽光発電設備の所有者(例えば売電者G)は余剰電力の90%の電力しか使用することができない。
これに対して、エネルギー売買システム1においては、事業者Bは、余剰電力に相当する燃料(例えば都市ガス)を供給することから、システム全体として、変換ロスを抑制することが可能となる。
【0037】
また、太陽光発電設備の所有者(例えば売電者G)が電力をあまり使用しない者である場合には余剰電力を貯留する必要はない。
エネルギー売買システム1においては、事業者Bが、FIT制度が終了した後においても余剰電力を購入することから、発電設備21で発電した電力を電力グリッド60に供給することが制限される可能性を低減することができる。それゆえ、売電者Gが太陽光発電の発電設備21を所有者するが電力をあまり使用しない者であっても利益を享受できる。また、事業者Bは、取引所での取引では(電源指定がないため)調達困難な「非化石価値」を調達することが可能になる。
【0038】
また、エネルギー売買システム1によれば、RE100を志向する特定需要家Sが排出権取引を含む形で燃料を取得するため、実質的なCOフリーメタンとしてガス(例えば都市ガス)を利用できる。それゆえ、特定需要家Sが、再生可能エネルギーを用いて発電する太陽光発電設備や風力発電設備を自ら所有して電力を生成する場合に比べて、安定的に電力を生成することができる。
また、通常、COフリーメタンを製造する場合には、余剰電力を用いて電解技術等によりHを生成させ、COと反応させているが、変換効率が低い点が問題である。これに対して、エネルギー売買システム1によれば、実態として変換反応を介さない変換を実施しているため、変換効率は発電分と等価であるので、100%にすることができる。
【0039】
燃料電池の発電効率は火力発電の発電効率よりも高く、火力発電の発電効率が例えば改良型コンバインドサイクル発電(AAC)なら約50%であるのに対して、高効率燃料電池であるSOFC、PCFCの場合は、発電効率は例えば約70%である。したがって、発電装置31としてSOFC又はPCFCを用いる場合、発電装置31の発電効率は火力発電の約1.4倍になる。それゆえ、非特許文献1に記載されたサービスにおける、預けた電力量を返還するために低効率の火力発電を用いて発電するのに比べて、エネルギー売買システム1においては、より効率の高い発電装置31を用いて発電するので、1.4倍の電力を得ることができる。
【0040】
以上のことより、エネルギー売買システム1によれば、特定需要家Sは、例えば再生可能エネルギーを用いて発電された電力をそのまま購入するよりも、CO排出権が紐づいた電力をより多く使用することができる。その結果、特定需要家Sは、同じ電力量を使用したとしても、その電力量に対するCO排出権が紐づいた電力量の割合を高めることができる。すなわち、エネルギー売買システム1によれば、非化石価値の電力をより多く使いたいという特定需要家Sのニーズに応えることができ、特定需要家Sの選択肢を拡大することが可能になる。
【0041】
上述したように、エネルギー売買装置100は、発電設備21を有して発電する売電者Gから購入した電力量である買電量(逆潮流電力量)を把握する買電量把握部の一例としての逆潮流量把握部120と、逆潮流量把握部120が把握した買電量に応じたCO排出権Rを算出する排出権算出部130と、を備えている。また、エネルギー売買装置100は、排出権算出部130が算出したCO排出権Rに対応する燃料量(排出権対応燃料量)を算出する燃料量算出部の一例としての排出権対応燃料量算出部140を備えている。これにより、エネルギー売買装置100は、売電者Gから購入した電力量を精度高く把握することができるとともに、購入した電力量に応じたCO排出権Rに対応する燃料量を精度高く算出することができる。その結果、売電者Gが発電設備21を所有するが電力をあまり使用しない者であっても利益を享受することができるとともに、非化石価値の電力を使いたいという特定需要家Sの選択肢を拡大するシステムを実現することができる。
【0042】
また、エネルギー売買装置100は、排出権対応燃料量算出部140が算出した排出権対応燃料量の内の少なくとも一部であって、特定需要家Sへ供給した排出権対応燃料量を特定需要家Sに通知する通知部170をさらに備えている。通知部170が特定需要家Sに排出権対応燃料量を通知することで、特定需要家Sは、CO排出権が紐づいた電力量を把握することが可能となる。その結果、特定需要家Sは、使用した電力量に対するCO排出権が紐づいた電力量の割合を知ることができる。
【0043】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態に係るエネルギー売買システム2の概略構成を例示した図である。
第2の実施形態に係るエネルギー売買システム2は、第1の実施形態に係るエネルギー売買システム1に対して、発電装置31の所有者が異なる。以下、第1の実施形態に係るエネルギー売買システム1と異なる点について説明する。第1の実施形態に係るエネルギー売買システム1と第2の実施形態に係るエネルギー売買システム2とで、同じ機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0044】
第2の実施形態に係るエネルギー売買システム2においては、事業者Bが発電装置31を所有し、発電装置31を用いて発電した電力を特定需要家Sに対して供給する。
また、特定需要家Sは、燃料量計測機器32の代わりに、電力量を計測するとともにエネルギー売買装置100と通信する機能を有する公知の電力量計測機器33を所有している。
【0045】
図7は、第2の実施形態に係るエネルギー売買装置200の機能構成を例示したブロック図である。
第2の実施形態に係るエネルギー売買装置200は、第1の実施形態に係るエネルギー売買装置100と同様に、受信部110と、逆潮流量把握部120、排出権算出部130、排出権対応燃料量算出部140とを備えている。
【0046】
そして、エネルギー売買装置200は、発電装置31を用いて発電した電力を特定需要家Sに供給するように指示する供給指示部250と、受信部110が受信した情報を基に、特定需要家Sの電力量計測機器33が計測した電力量を把握する電力量把握部260とを備えている。
また、エネルギー売買装置200は、特定需要家Sに供給した電力の量を通知する通知部270を備えている。
【0047】
供給指示部250は、特定需要家Sに対して電力を供給するように指示する。供給指示部250は、例えば、(i)事業者Bと特定需要家Sとの間に月単位や年単位の供給量が定められている場合には、月単位や年単位の供給量が定められた量となるように指示する。また、供給指示部250は、例えば、(ii)特定需要家Sが使用する電力の分を供給するように指示しても良い。また、供給指示部250は、例えば、(iii)特定の売電者G(複数であっても良い)から購入した電力に応じたCO排出権に対応する燃料量を用いて発電した電力を供給するように指示しても良い。
【0048】
電力量把握部260は、受信部110が特定需要家Sの電力量計測機器33から送られてきた電力量を受信した場合には、特定需要家Sに供給された電力量を把握するとともに、特定需要家SのIDに関連付けて供給電力を記憶部102に記憶する。電力量把握部260は、電力量計測機器33から送られて来る度に供給電力量の把握と記憶とを行っても良いし、例えば30分毎に送られて来る供給電力量の累積値を、例えば日や月単位で把握し、記憶しても良い。
【0049】
通知部270は、特定需要家Sに、供給した電力量(供給電力量)を通知するとともに、供給電力量の内のCO排出権Rに対応する燃料量(排出権対応燃料量)を用いて発電した電力量(排出権対応電力量)も通知する。通知部270は、例えば、上述した通知時刻に通知することを例示することができる。
【0050】
例えば、上記(i)の場合には、供給量が予め定められているため、その全量を供給した場合には、予め定められた量が供給電力量となる。また、上記(ii)の場合には、供給電力量は、電力量計測機器33にて計測された量である。上記(i)及び(ii)のいずれの場合も、事業者Bと特定需要家Sとの間で、月単位や年単位での、排出権対応燃料量、又は、排出権対応燃料量を用いて発電した電力の中から供給する電力量が予め定められている場合には、予め定められた排出権対応燃料量を用いて発電した電力量、又は、予め定められた電力量が排出権対応電力量として通知される。事業者Bが売電者Gから購入した電力量が多く、供給電力量を排出権対応電力量にて賄うことができた場合には、排出権対応電力量は供給電力量と同じとなる。他方、事業者Bが売電者Gから購入した電力量が、供給電力量を排出権対応電力量にて賄うことができるほど多くない場合には、排出権対応電力量は供給電力量よりも少ない量となる。
また、上記(iii)の場合には、特定の売電者G(複数であっても良い)から購入した電力に応じたCO排出権に対応する燃料を用いて発電された電力量を特定需要家Sに供給することから、その分の電力量が、排出権対応電力量及び供給電力量となる。
【0051】
かかる構成であっても、エネルギー売買システム2においては、事業者Bは、余剰電力に相当する燃料を用いて、発電設備11の発電効率よりも高い発電効率にて発電する発電装置31を用いて発電した電力を特定需要家Sに対して供給するので、システム全体として、変換ロスを抑制することが可能となる。また、エネルギー売買システム2においても、事業者Bが、FIT制度が終了した後に余剰電力を購入することから、発電設備21で発電した電力を電力グリッド60に供給することが制限される可能性を低減することができる。それゆえ、売電者Gが太陽光発電の発電設備21を所有者するが電力をあまり使用しない者であっても利益を享受できる。また、事業者Bは、取引所での取引では調達困難な「非化石価値」を調達することが可能になる。また、特定需要家Sは、例えば再生可能エネルギーを用いて発電された電力をそのまま購入するよりも、CO排出権が紐づいた電力をより多く使用することができ、同じ電力量を使用したとしても、その電力量に対するCO排出権が紐づいた電力量の割合を高めることができる。
【0052】
また、第2の実施形態に係るエネルギー売買システム2のエネルギー売買装置200は、逆潮流量把握部120と、逆潮流量把握部120が把握した買電量に応じたCO排出権Rを算出する排出権算出部130と、排出権対応燃料量算出部140とを備えている。また、エネルギー売買装置200は、排出権対応燃料量算出部140が算出した排出権対応燃料量の内の少なくとも一部を用いて発電した電力であって、特定需要家Sへ供給した電力量(排出権対応電力量)を特定需要家Sに通知する通知部270を備えている。通知部270が特定需要家Sに排出権対応電力量を通知することで、特定需要家Sは、CO排出権が紐づいた電力量を把握することが可能となる。その結果、特定需要家Sは、使用した電力量に対するCO排出権が紐づいた電力量の割合を知ることができる。
【0053】
<第3の実施形態>
図8は、第3の実施形態に係るエネルギー売買システム3の概略構成を例示した図である。
第3の実施形態に係るエネルギー売買システム3は、第1の実施形態に係るエネルギー売買システム1に対して、特定需要家Sが水素ステーション34と、燃料電池自動車35とを有している点が異なる。以下、第1の実施形態に係るエネルギー売買システム1と異なる点について説明する。第1の実施形態に係るエネルギー売買システム1と第3の実施形態に係るエネルギー売買システム3とで、同じ機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0054】
水素ステーション34は、事業者Bの燃料供給装置12から供給された燃料から水素を製造する水素製造装置と、水素を圧縮する圧縮機と、圧縮した水素を貯める蓄圧器と、燃料電池自動車35の燃料タンクに水素を充填するディスペンサとを有するオンサイト型の施設である。
燃料電池自動車35は、搭載した燃料電池で発電した電力でモータを駆動して走行する公知の燃料電池自動車である。
【0055】
上述したように構成された第3の実施形態に係るエネルギー売買システム3によれば、第1の実施形態に係るエネルギー売買システム1と同様に、事業者Bは、余剰電力に相当する燃料を供給することから、システム全体として、変換ロスを抑制することが可能となる。また、エネルギー売買システム3においても、事業者Bが、FIT制度が終了した後に余剰電力を購入することから、発電設備21で発電した電力を電力グリッド60に供給することが制限される可能性を低減することができる。それゆえ、売電者Gが太陽光発電の発電設備21を所有するが電力をあまり使用しない者であっても利益を享受できる。また、事業者Bは、取引所での取引では調達困難な「非化石価値」を調達することが可能になる。また、特定需要家Sは、例えば再生可能エネルギーを用いて発電された電力を用いて走行する電気自動車を所有するよりも、CO排出権が紐づいた電力をより多く使用することができる。その結果、特定需要家Sは、同じ電力量を使用したとしても、その電力量に対するCO排出権が紐づいた電力量の割合を高めることができる。
【0056】
また、第3の実施形態に係るエネルギー売買システム3は、第1の実施形態に係るエネルギー売買システム1と同様のエネルギー売買装置100を備える。エネルギー売買装置100は、売電者Gから購入した電力量を精度高く把握することができるとともに、購入した電力量に応じたCO排出権Rに対応する燃料量を精度高く算出することができる。また、通知部170が特定需要家Sに排出権対応燃料量を通知することで、特定需要家Sは、CO排出権が紐づいた電力量を把握することが可能となる。その結果、特定需要家Sは、使用した電力量に対するCO排出権が紐づいた電力量の割合を知ることができる。
【0057】
なお、第3の実施形態に係るエネルギー売買システム3においては、特定需要家Sが燃料電池自動車35を有しているが特にかかる態様に限定されない。例えば、特定需要家Sは、事業者Bの燃料供給装置12から供給された燃料を、機関内において燃焼させた燃焼ガスで作動する内燃機関を搭載した自動車、又は、機関外において燃焼させた燃焼ガスを用いて発生させた蒸気で作動する蒸気機関等の外燃機関を搭載した自動車を有していても良い。なお、事業者Bから供給される燃料は、燃料供給装置12から供給される燃料に限定されない。例えば、燃料は、容器に充填されて事業者Bから特定需要家Sへ供給されても良い。
【符号の説明】
【0058】
1,2,3…エネルギー売買システム、11…発電設備、12…燃料供給装置、21…発電設備、22…電力量計測機器、31…発電装置、32…燃料量計測機器、60…電力グリッド、100…エネルギー売買装置、120…逆潮流量把握部、130…排出権算出部、140…排出権対応燃料量算出部、170,270…通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8