(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】粉体焼結装置
(51)【国際特許分類】
B22F 3/18 20060101AFI20230113BHJP
B30B 3/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B22F3/18
B30B3/00 B
(21)【出願番号】P 2019032650
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】福田 一人
(72)【発明者】
【氏名】畑中 基
(72)【発明者】
【氏名】宍田 佳謙
(72)【発明者】
【氏名】平松 俊哉
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-268816(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0149641(KR,A)
【文献】特開2018-094586(JP,A)
【文献】特開2006-005117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/18
B30B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体材料を搬送方向に搬送する粉体搬送機構と、
隙間を空けて互いに対向する一対のロール
を有し、前記粉体搬送機構によって搬送される前記粉体材料を
前記一対のロールの前記隙間に配置して
、前記粉体材料を加熱しながら加圧して焼結体を生成する加圧加熱機構と、
前記一対のロール
の前記隙間において前記粉体材料の搬送経路
を部分的に
塞ぎ、前記焼結体に前記搬送方向に沿って空隙を形成する空隙形成部と、
前記搬送方向に沿って形成された前記空隙に沿って前記焼結体を切断する切断部と、を備える、粉体焼結装置。
【請求項2】
前記空隙形成部は、前記一対のロールの前記隙間を前記搬送方向に横断するワイヤを備える、請求項1に記載の粉体焼結装置。
【請求項3】
前記空隙形成部は、前記隙間よりも前記搬送方向の上流側で前記ワイヤを上方から支持する第1支持部と、前記隙間よりも前記搬送方向の下流側で前記ワイヤを上方から支持する第2支持部と、をさらに備える、請求項2に記載の粉体焼結装置。
【請求項4】
前記第1支持部と前記第2支持部は、前記ワイヤを巻き取り可能に構成される、請求項3に記載の粉体焼結装置。
【請求項5】
前記ワイヤは、前記搬送方向に搬送されている前記粉体材料の幅方向の一方側に配置される第1ワイヤと、前記幅方向の他方側に配置される第2ワイヤとを備える、請求項2から4のいずれか1つに記載の粉体焼結装置。
【請求項6】
前記ワイヤの直径は、前記一対のロールの前記隙間の間隔よりも小さい、請求項2から5のいずれか1つに記載の粉体焼結装置。
【請求項7】
前記空隙形成部は、前記空隙として前記焼結体の表面に前記搬送方向に沿って延びる溝を形成する、請求項1から6のいずれか1つに記載の粉体焼結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体を焼結する粉体焼結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスや金属の粉末を加圧成形した後、融点以下の温度で熱処理することで、粉体間の結合が生じ、焼結体を得ることができる。この方法は、窯業製品、セラミックス、粉末冶金、サーメットなどを製造する主要な方法である。
【0003】
焼結方法としては、常圧焼結法、ガス圧焼結法、ホットプレス法、熱間静水圧法(HIP)、通電加圧法、ミリ波法等がある。
【0004】
より緻密な焼結体を得るためには、ガス圧焼結法、ホットプレス法、熱間静水圧法、通電加圧法などで、粉末成形体を加圧状態で加熱することが有効である。
【0005】
これらの方法はバッチ処理であり、生産性を高めるためには連続的に処理することが有効である。例えば、特許文献1には、金属粉末を加熱し、一対の圧延ロールで加圧することでシートを形成できることが示されている。
【0006】
ここで、ロールでの加圧では、圧延時に粉末材料の幅方向端部でロールの加圧力が低下しやすく、幅方向中央部と比較して未焼結部分が多く生じ、密度が低くなりやすい。このため、焼結体の幅方向の密度が不均一になってしまう。このような問題を解決するために、特許文献2では、一方のロールに突起部を設け、他方のロールに溝部を設けた一対のロールを用いる方法が提案されている。
【0007】
特許文献2で開示される一対のロールでは、突起部及び溝部のそれぞれ両端にテーパ部が設けられている。このようなテーパ部を有するロール突起とロール溝部を組み合わせることで、粉末材料の幅方向端部でロールの加圧力が低下することを防止し、焼結体の幅方向端部の密度の低下を抑制しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2003-520292
【文献】特開2000-234105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示される方法では、粉末材料がロールの溝部に食い込んでしまい、焼結体を離型することが困難となる。またロールを分割方式にし、スペーサの間隔を調整することで、粉末材料の幅が変わっても対応可能とすることが開示されているが、分割方式用のロールを設置する必要があり、ロールの交換を伴うために稼働率が低下してしまう。このため、高い生産性を実現することは困難である。
【0010】
従って、本発明の目的は、焼結体の幅方向の密度の均一性を高めつつ、連続生産による高い生産性を実現することができる粉体焼結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の粉体焼結装置は、粉体材料を搬送方向に搬送する粉体搬送機構と、隙間を空けて互いに対向する一対のロールであって、前記粉体搬送機構によって搬送される前記粉体材料を前記隙間に配置して加熱加圧する一対のロールと、前記一対のロールで加熱加圧されている前記粉体材料の搬送経路を前記隙間において部分的に遮ることで、前記粉体材料による焼結体に前記搬送方向に沿って空隙を形成する空隙形成部と、前記空隙形成部によって形成された前記空隙に沿って前記焼結体を切断する切断部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粉体焼結装置によれば、焼結体の幅方向の密度の均一性を高めつつ、連続生産による高い生産性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】実施形態における一対のロールとワイヤの位置関係を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1態様によれば、粉体材料を搬送方向に搬送する粉体搬送機構と、隙間を空けて互いに対向する一対のロールであって、前記粉体搬送機構によって搬送される前記粉体材料を前記隙間に配置して加熱加圧する一対のロールと、前記一対のロールで加熱加圧されている前記粉体材料の搬送経路を前記隙間において部分的に遮ることで、前記粉体材料による焼結体に前記搬送方向に沿って空隙を形成する空隙形成部と、前記空隙形成部によって形成された前記空隙に沿って前記焼結体を切断する切断部と、を備える、粉体焼結装置を提供する。
【0015】
本発明の第2態様によれば、前記空隙形成部は、前記一対のロールの前記隙間を前記搬送方向に横断するワイヤを備える、第1態様に記載の粉体焼結装置を提供する。
【0016】
本発明の第3態様によれば、前記空隙形成部は、前記隙間よりも前記搬送方向の上流側で前記ワイヤを上方から支持する第1支持部と、前記隙間よりも前記搬送方向の下流側で前記ワイヤを上方から支持する第2支持部と、をさらに備える、第2態様に記載の粉体焼結装置を提供する。
【0017】
本発明の第4態様によれば、前記第1支持部と前記第2支持部は、前記ワイヤを巻き取り可能に構成される、第3態様に記載の粉体焼結装置を提供する。
【0018】
本発明の第5態様によれば、前記ワイヤは、前記搬送方向に搬送されている前記粉体材料の幅方向の一方側に配置される第1ワイヤと、前記幅方向の他方側に配置される第2ワイヤとを備える、第2態様から第4態様のいずれか1つに記載の粉体焼結装置を提供する。
【0019】
本発明の第6態様によれば、前記ワイヤの直径は、前記一対のロールの前記隙間の間隔よりも小さい、第2態様から第5態様のいずれか1つに記載の粉体焼結装置を提供する。
【0020】
本発明の第7態様によれば、前記空隙形成部は、前記空隙として前記焼結体の表面に前記搬送方向に沿って延びる溝を形成する、第1態様から第6態様のいずれか1つに記載の粉体焼結装置を提供する。
【0021】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、実施形態における粉体焼結装置50の概略構成を示す図である。
図1に示す粉体焼結装置50は、粉体材料1を焼結して焼結体2を得る装置である。粉体焼結装置50は、粉体搬送機構101と、加熱加圧機構201と、空隙形成部301と、切断部401と、材料回収機構501とを備える。
【0023】
粉体材料1は、例えば、粒子径100μmより小さい粒子の集合体であり、その粒径分布はなんら制限されるものではない。粉体材料1は、事前に厚みや幅をそろえるための成形処理が施されてもよい。成形処理としては例えば、一対のロールを用いて粉体をシート状に圧縮成形する方法や、金型を用いて粉体をプレスすることができる。
【0024】
粉体搬送機構101は、粉体材料1を搬送方向Xに搬送する機構である。粉体搬送機構101は、粉体材料1を加熱加圧機構201へ供給する機能を有する。実施形態における搬送方向Xは水平方向である。粉体搬送機構101は例えば、ベルトコンベアで構成されている。ベルトコンベアとしては、スチールベルト、メッシュベルト等を用いることができる。
【0025】
加熱加圧機構201は、粉体材料1を加熱しながら加圧する機構である。加熱加圧機構201は、一対のロールとして、第1ロール11と、第2ロール12とを備える。第1ロール11および第2ロール12は、搬送方向Xに搬送されている粉体材料1を両側から挟みながら加熱加圧する。実施形態では、第1ロール11および第2ロール12は上下に配置されており、上側の第1ロール11と下側の第2ロール12によって粉体材料1を上下に挟んで加熱加圧する。
【0026】
第1ロール11と第2ロール12の間には隙間52が形成されている。隙間52は、第1ロール11と第2ロール12が最も近接する近接点である。隙間52において、粉体材料1が第1ロール11と第2ロール12により加熱加圧され、焼結体2が生成される。
【0027】
前述した粉体搬送機構101は、焼結体2を切断部401および材料回収機構501へ供給する機能を有する。
【0028】
ロール11、12の材質としては、特に限定するものではないが、ステンレス鋼、炭素鋼、高速度工具鋼等の金属や、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ、サイアロン、ジルコニア等のセラミックスを用いることができる。さらに、これらの材料を組合せた構造を用いることもできる。
【0029】
ロール11、12の加熱温度は例えば、400℃以上700℃以下に設定してもよい。400℃以上に設定することで、粉体材料1の温度を十分に上昇させることができ、高い密度の焼結体2を得ることができる。また、700℃以下に設定することで、ロール11、12の軸部の温度上昇を抑制し、軸部を支えるベアリングの寿命を延ばすことができる。
【0030】
また、図示していないが、加熱加圧機構201に到達する前に粉体材料1を予備加熱しておくことも可能である。予備加熱手段としては、特に限定するものではないが、加熱炉、シーズヒータ、セラミックヒータ、ハロゲンランプヒータ、カーボンヒータ、フラッシュランプヒータなどを用いることができる。
【0031】
加熱加圧機構201はさらに、ロール11、12を加熱するための部材として、第1加熱装置13と、第2加熱装置14とを備える。第1加熱装置13は、第1ロール11を加熱する部材であり、第2加熱装置14は、第2ロール12を加熱する部材である。加熱装置13、14としては、特に限定するものではないが、誘導加熱コイル、シーズヒータ、ハロゲンランプヒータ、カーボンヒータ、フラッシュランプヒータなどを用いることができる。
【0032】
粉体材料1を加熱する雰囲気においては、必要に応じて、窒素(N2)等を用いて不活性雰囲気に制御することができる。
【0033】
空隙形成部301は、ロール11、12により加熱加圧されている粉体材料1の搬送経路を部分的に塞ぐことにより、焼結体2に空隙を形成する部材である。このような空隙を形成することで、後述する切断部401によって焼結体2の幅方向の端部を容易に切断することができる。密度の低くなりやすい焼結体2の幅方向端部を切断することで、焼結体2の幅方向の密度のバラつきを抑制することができ、密度のより均一な焼結体2を得ることができる。空隙形成部301の詳細な構成については後述する。
【0034】
切断部401は、空隙形成部301によって形成された空隙に沿って焼結体2を切断する部材である。切断部401としては、ハンマー、回転刃、エアジェット、サンドブラスト、ドライアイスブラスト等の機械的衝撃にて分離する手段や、レーザーカット、フラッシュランプ等の非接触で熱衝撃を与える手段などを用いることができる。切断部401は、焼結体2の幅方向端部を分離する端部分離機構として機能する。
【0035】
材料回収機構501は、切断部401によって切断された後の焼結体2を回収する機構である。材料回収機構501は例えば、焼結体2を一定の長さに切断してから、シート状で回収してもよい。また、焼結体2をシート状よりさらに細かく粉砕してフレーク状にしてから回収することもできる。
【0036】
次に、空隙形成部301の詳細な構成について説明する。
【0037】
図1に示すように、空隙形成部301は、ワイヤ21と、巻取り機構22と、巻出し機構23と、ガイドロール24、25とを備える。
【0038】
ワイヤ21は、一対のロール11、12の間の隙間52に通される線状の部材である。ワイヤ21が隙間52で粉体材料1の搬送経路を部分的に塞ぐことにより、焼結体2に空隙が形成される。
【0039】
本実施形態のワイヤ21は金属製の金属ワイヤである。金属ワイヤの材質としては、特に限定されるものではないが、ステンレス鋼を用いることができる。
【0040】
巻取り機構22および巻出し機構23は、ワイヤ21を巻き取り可能とする部材である。巻出し機構23によって巻き出されるワイヤ21が、巻取り機構22によって巻き取られる。
【0041】
巻取り機構22および巻出し機構23はそれぞれ、ワイヤ21を支持する第1支持部および第2支持部として機能する。巻取り機構22は、隙間52よりも搬送方向Xの上流側でワイヤ21を上方から支持する第1支持部である。巻出し機構23は、隙間52よりも搬送方向Xの下流側でワイヤ21を上方から支持する第2支持部である。ワイヤ21は、巻取り機構22および巻出し機構23によって上方から吊るされた状態で隙間52に通される。このように設けられたワイヤ21は、隙間52を搬送方向Xに横断する。
【0042】
ガイドロール24、25は、ワイヤ21をガイドするロールである。
【0043】
一対のロール11、12とワイヤ21の位置関係について、
図2を用いて説明する。
図2は、搬送方向Xから見たときの隙間52における一対のロール11、12とワイヤ21を示す断面図である。
【0044】
図2では、隙間52に配置される粉体材料1を点線で示している。
【0045】
図2に示すように、本実施形態のワイヤ21は、一対のワイヤとして、第1ワイヤ21Aと第2ワイヤ21Bとを備える。第1ワイヤ21Aは、幅方向Yにおける一方側に設けられたワイヤであり、第2ワイヤ21Bは、幅方向Yにおける他方側に設けられたワイヤである。第1ワイヤ21Aは、粉体材料1の幅方向Yの一端部近傍に配置され、第2ワイヤ21Bは、粉体材料1の幅方向Yの他端部近傍に配置される。このような一対の第1ワイヤ21Aおよび第2ワイヤ21Bを設けることで、焼結体2の幅方向Yの両端部に空隙を形成することができる。
【0046】
図2に示すように、2本のワイヤ21A、21Bは、第1ロール11の最下面に接触するように配置されている。これにより、焼結体2に形成される空隙は、焼結体2の表面に露出する溝となる。なお、第1ロール11の最下面に接触する場合に限らず、第1ロール11の最下面から間隔を空けてワイヤ21を配置した場合でも焼結体2の表面に露出する溝を形成することもできる。
【0047】
ロール11、12同士の距離である隙間52の間隔D1に対して、ワイヤ21の直径D2は間隔D1よりも小さくなるように設計されている。これにより、ワイヤ21を隙間52に確実に配置することができる。またワイヤ21をメンテナンスする際にも、ロール11、12の位置等を変更せずにロール11、12の間からワイヤ21を取り出すことができる。
【0048】
ここで、
図1に示すA-A’断面、B-B’断面、C-C’断面、D-D’断面を、
図3A~
図3Dに示す。
図3AはA-A’断面を示し、
図3BはB-B’断面を示し、
図3CはC-C’断面を示し、
図3DはD-D’断面を示す。
【0049】
図3Aに示すように、粉体搬送機構101によって隙間52へ搬送される粉体材料1は、断面が矩形のシート状の形態で搬送される。粉体材料1の厚みは幅方向Yにおいて略一定である。
【0050】
図3Bに示す断面は、隙間52に対応しており、隙間52ではロール11、12による粉体材料1への加熱加圧が行われる。粉体材料1はロール11、12により加熱加圧されて焼結体2となる。
図3Bに示すように、粉体材料1の搬送経路を部分的に遮るように2本のワイヤ21A、21Bが設けられている。ワイヤ21A、21Bが位置する箇所に焼結体2の空隙54が形成される。このような空隙54を形成することにより、焼結体2は、幅方向Yの端部31、32と、端部31、32の間に位置する中央部33とに分けられる。
【0051】
図3Bに示すように、焼結体2は厚みD3を有する。ワイヤ21の直径D2は、焼結体2の厚みD3の1/2以上に設定されている。これにより、所望の大きさの空隙54を形成することができる。
【0052】
図3Cに示す断面は、隙間52よりも下流側かつ切断部401よりも上流側の位置に対応する。
図3Cに示すように、ワイヤ21A、21Bは焼結体2から離脱しているものの、隙間52で形成された空隙54が連続的に形成されている。粉体材料1および焼結体2を搬送方向Xに連続的に送ることで、搬送方向Xに沿って連続して延びる空隙54が焼結体2に形成される。
【0053】
空隙54は、前述した切断部401(
図1)による切断のために利用される。具体的には、切断部401が空隙54に沿って焼結体2を切断する。
【0054】
図3Dでは、切断部401による切断後の状態が示される。
図3Dに示すように、焼結体2の幅方向Yの端部31、32が中央部33から切断されて分離されている。幅方向Yの端部31、32には粉体材料1が外側に逃げるスペースがあり、ロール11、12による加圧力が弱くなる箇所である。このため、端部31、32には十分に焼結されなかった未焼結部分が生じやすく、中央部33に比べて密度が低くなりやすい。これに対して、焼結体2の幅方向Yの両端近傍に空隙54を形成し、空隙54に沿って端部31、32を切断することで、密度の低い焼結体2の端部31、32を取り除くことができる。これにより、未焼結部分の少ない密度がより均一な中央部33を焼結体2として回収することができる。
【0055】
本実施形態では、ロール11、12の間にワイヤ21を配置するだけで空隙54を形成している。このため、ロール11、12による連続生産の過程で空隙54を形成することができ、高い生産性を実現することができる。また、切断部401による切断も連続生産の過程で行っているため、高い生産性を実現することができる。
【0056】
なお、隙間52よりも上流側で粉体材料1に空隙を形成した場合、その後の加熱加圧処理時の材料流動によって空隙が埋没してしまうため、空隙を形成することができない。本実施形態では、加熱加圧処理が行われる隙間52にワイヤ21を通すことで、焼結体2に空隙54を形成するようにしている。
【0057】
上述したように、本実施形態の粉体焼結装置50は、粉体搬送機構101と、一対のロール11、12と、空隙形成部301と、切断部401とを備える。空隙形成部301は、一対のロール11、12で加熱加圧されている粉体材料1の搬送経路を隙間52で部分的に遮ることで、焼結体2に搬送方向Xに沿って空隙54を形成する。切断部401は、空隙形成部301によって形成された空隙54に沿って焼結体2を切断する。このような構成によれば、空隙54に沿って焼結体2を切断することで、焼結体2において密度が低くなりやすい幅方向Yの端部31、32の部分を取り除くことができる。これにより、幅方向Yの密度のバラつきが少ない部分である中央部33を焼結体2として回収することができる。また、一対のロール11、12を用いた連続生産の過程で空隙54を形成して切断できるため、高い生産性を実現することができる。
【0058】
また実施形態の粉体焼結装置50によれば、空隙形成部301は、一対のロール11、12の隙間52を搬送方向Xに横断するワイヤ21を備える。このような構成によれば、簡単な構成により空隙54を形成することができる。
【0059】
また実施形態の粉体焼結装置50によれば、空隙形成部301は、巻取り機構22と、巻出し機構23とを備える。巻取り機構22は、隙間52よりも搬送方向Xの上流側でワイヤ21を上方から支持する第1支持部であり、巻出し機構23は、隙間52よりも搬送方向Xの下流側でワイヤ21を上方から支持する第2支持部である。このような構成によれば、ワイヤ21を上方から吊るす構成とすることができ、ワイヤ21が他の部材と干渉することを抑制することができる。
【0060】
また実施形態の粉体焼結装置50によれば、巻取り機構22と巻出し機構23は、ワイヤ21を巻き取り可能に構成される。このようにワイヤ21を巻き取り可能に構成することで、ワイヤ21の使用度合い等に応じてワイヤ21が粉体材料1に接触する長手方向の位置を可変とすることができる。
【0061】
また実施形態の粉体焼結装置50によれば、ワイヤ21は、第1ワイヤ21Aと、第2ワイヤ21Bとを備える。第1ワイヤ21Aは、粉体材料1の幅方向Yの一方側に配置され、第2ワイヤ21Bは、幅方向Yの他方側に配置される。このような一対のワイヤ21を設けることで、焼結体2の幅方向Yの両側に空隙54を形成することができ、密度が低くなりやすい幅方向Yの両端部(端部31、32)を切断することができる。これにより、切断後における焼結体2の密度のバラつきをさらに抑制することができる。
【0062】
また実施形態の粉体焼結装置50によれば、ワイヤ21の直径D2は、一対のロール11、12の隙間52の間隔D1よりも小さい。このような構成によれば、ロール11、12の隙間52にワイヤ21を容易かつ確実に配置することができる。
【0063】
また実施形態の粉体焼結装置50によれば、ワイヤ21の直径D2は、焼結体2の厚みD3の1/2以上に設定している。このような設定によれば、空隙54を大きく設けることができ、焼結体2の切断を容易に行うことができる。
【0064】
また実施形態の粉体焼結装置50によれば、空隙形成部301は、空隙54として焼結体2の表面に搬送方向Xに沿って延びる溝を形成する。このように空隙54として溝を形成することで、空隙54を外部から容易に確認することができ、切断もしやすくなる。
【0065】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、空隙形成部301がワイヤ21を備える場合について説明したが、このような場合に限らない。ワイヤ21以外にも、搬送方向Xに沿って焼結体2に空隙を形成できるものであれば、任意の構成を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の粉体焼結装置は、粉体材料を焼結して焼結体を得る粉体焼結装置に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 粉体材料
2 焼結体
11 第1ロール(上ロール)
12 第2ロール(下ロール)
13 第1加熱装置
14 第2加熱装置
21 ワイヤ(金属ワイヤ)
21A 第1ワイヤ
21B 第2ワイヤ
22 巻取り機構(第1支持部)
23 巻出し機構(第2支持部)
24、25 ガイドロール
31、32 端部
33 中央部
50 粉体焼結装置
52 隙間(近接点)
54 空隙(溝)
101 粉体搬送機構
201 加熱加圧機構
301 空隙形成部(溝形成機構)
401 切断部(端部分離機構)
501 材料回収機構
D1 間隔
D2 直径
D3 厚み
X 搬送方向
Y 幅方向