IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社の特許一覧 ▶ ワールドエンジニアリング株式会社の特許一覧 ▶ 三井造船鉄構エンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-護岸構造及び護岸構築方法 図1
  • 特許-護岸構造及び護岸構築方法 図2
  • 特許-護岸構造及び護岸構築方法 図3
  • 特許-護岸構造及び護岸構築方法 図4
  • 特許-護岸構造及び護岸構築方法 図5
  • 特許-護岸構造及び護岸構築方法 図6
  • 特許-護岸構造及び護岸構築方法 図7
  • 特許-護岸構造及び護岸構築方法 図8
  • 特許-護岸構造及び護岸構築方法 図9
  • 特許-護岸構造及び護岸構築方法 図10
  • 特許-護岸構造及び護岸構築方法 図11
  • 特許-護岸構造及び護岸構築方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】護岸構造及び護岸構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/12 20060101AFI20230113BHJP
   E02B 3/06 20060101ALI20230113BHJP
   E02D 23/00 20060101ALI20230113BHJP
   E02D 19/16 20060101ALI20230113BHJP
   B09B 1/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E02B3/12 ZAB
E02B3/06 301
E02D23/00 C
E02D19/16
B09B1/00 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019039901
(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2020143484
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】506122246
【氏名又は名称】エム・エムブリッジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594067368
【氏名又は名称】ワールドエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592242822
【氏名又は名称】三井住友建設鉄構エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木原 一禎
(72)【発明者】
【氏名】和木 多克
(72)【発明者】
【氏名】西 和宏
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特許第5099709(JP,B2)
【文献】特開2018-188882(JP,A)
【文献】特開2013-249689(JP,A)
【文献】特許第4293435(JP,B2)
【文献】特開2015-040440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/12
E02B 3/06
E02D 23/00
E02D 19/16
B09B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面に沿った底部と水平面に垂直な側壁とを有する溝部が上面に形成される海底の遮水基盤と、
前記溝部の底部に当該溝部の側壁との間に間隔を空けた状態で配置される護岸構造物と、
前記護岸構造物と前記溝部の側壁との間隔を埋めるように配置される遮水層と、
前記護岸構造物と前記溝部の側壁との間隔を埋めるように配置され、前記護岸構造物からの水平力を前記側壁に対してせん断力として伝達可能な荷重伝達材を有し、前記水平力を前記側壁に伝達する場合に垂直方向に座屈しないように前記垂直方向の厚さが設定された荷重伝達層と
を備える護岸構造。
【請求項2】
前記荷重伝達層は、前記垂直方向に複数層に配置される
請求項1に記載の護岸構造。
【請求項3】
前記遮水層及び前記荷重伝達層は、同一の層として形成される
請求項1又は請求項2に記載の護岸構造。
【請求項4】
前記遮水層は、変形非追随性遮水材を用いて形成される
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の護岸構造。
【請求項5】
前記側壁は、アンカーにより前記遮水基盤に固定される
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の護岸構造。
【請求項6】
前記溝部は、前記底部に形成される凹凸を覆う被覆層を有する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の護岸構造。
【請求項7】
前記被覆層は、水中コンクリートからなる層、捨石を用いた基礎捨石マウンド、並びに、前記基礎捨石マウンドに用いられる前記捨石間の空隙を水中コンクリート系材料、アスファルト混合物系材料又は土質系材料により充填させたハイブリッド基礎マウンド、のいずれかである
請求項6に記載の護岸構造。
【請求項8】
海底の遮水基盤の上面に水平面に沿った底部と水平面に垂直な側壁とを有する溝部を形成する工程と、
前記溝部の底部に当該溝部の側壁との間に間隔を空けた状態で護岸構造物を配置する工程と、
前記護岸構造物と前記溝部の側壁との間隔を埋めるように遮水層を配置する工程と、
前記護岸構造物からの水平力を前記側壁に対してせん断力として伝達可能な荷重伝達材を有し、前記水平力を前記側壁に伝達する場合に垂直方向に座屈しないように前記垂直方向の厚さが設定された荷重伝達層を、前記護岸構造物と前記溝部の側壁との間隔を埋めるように配置する工程と
を含む護岸構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、護岸構造及び護岸構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業廃棄物や一般廃棄物の排出量が急増している。これに対して、廃棄物を一旦焼却処理して残留物や不燃物等の最終処分量を減少させる方法がとられている。一方、最終処分量(埋立量)は今後益々増大することが予想され、これに見合うだけの処分場を陸地に求めるのが困難な状況となっている。そこで、今後は沿岸海域に海面処分場を建設する気運が大きくなっている。
【0003】
このような海面処分場は、所定の海域に管理型護岸を築造し、護岸で囲まれた領域又は沿岸と護岸とで囲まれた領域に埋め立てる構成である。このような管理型護岸は、例えば遮水基盤の上面に溝部が設けられ、溝部の底部に護岸構造物が配置され、溝部の側壁と護岸構造物との間に遮水層が配置される構成である(例えば、特許文献1及び特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5099709号公報
【文献】特許第4293435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2の構成においては、護岸構造物の安定性に関する要求性能を満たす範囲内での水平移動を許容した構成となっている。したがって、遮水層を構成する材料としては、アスファルト混合物等、護岸構造物の水平移動に追随して変形する変形追随性遮水材に限定される。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、護岸構造物の水平移動を規制することにより遮水層の材料選択の幅を拡大させつつ、安定した遮水性を確保することが可能な護岸構造及び護岸構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る護岸構造は、水平面に沿った底部と水平面に垂直な側壁とを有する溝部が上面に形成される海底の遮水基盤と、前記溝部の底部に当該溝部の側壁との間に間隔を空けた状態で配置される護岸構造物と、前記護岸構造物と前記溝部の側壁との間隔を埋めるように配置される遮水層と、前記護岸構造物と前記溝部の側壁との間隔を埋めるように配置され、前記護岸構造物からの水平力を前記側壁に対してせん断力として伝達可能な荷重伝達材を有し、前記水平力を前記側壁に伝達する場合に垂直方向に座屈しないように前記垂直方向の厚さが設定された荷重伝達層とを備える。
【0008】
この構成では、荷重伝達層が座屈することなく、護岸構造物からの水平力を側壁に対してせん断力として伝達するため、護岸構造物の水平移動を規制することができる。このように護岸構造物の水平移動を規制することにより、遮水層の材料が変形追随性遮水材に限定されないため、遮水層の材料選択の幅を拡大させることができる。また、選択した材料を用いた遮水層により、安定した遮水性を確保することが可能となる。
【0009】
また、前記荷重伝達層は、前記垂直方向に複数層に配置されてもよい。
【0010】
従って、護岸構造物からの水平力が垂直方向に分散されるため、側壁の一部分にせん断力が集中することを抑制できる。
【0011】
また、前記遮水層及び前記荷重伝達層は、同一の層として形成されてもよい。
【0012】
従って、遮水層及び荷重伝達層を容易に形成することができる。
【0013】
また、前記遮水層は、変形非追随性遮水材を用いて形成されてもよい。
【0014】
従って、遮水層が例えばコンクリート系遮水材又は土質系遮水材等のような変形非追随性遮水材を用いることにより、低コストで短工期にて施工を行うことが可能となる。
【0015】
また、前記側壁は、アンカーにより前記遮水基盤に固定されてもよい。
【0016】
従って、荷重伝達材からのせん断力を側壁において確実に受けることができる。
【0017】
また、前記溝部は、前記底部に形成される凹凸を覆う被覆層を有してもよい。
【0018】
従って、遮水基盤における許容支持力(許容端趾圧)が高められるため、護岸構造物を細くすることができる。したがって、護岸構造物のコンパクト化を図ることができる。また、護岸構造物と被覆層との間の摩擦力を高めることができるため、護岸構造物が水平方向に移動することを抑制できる。
【0019】
また、前記被覆層は、水中コンクリートからなる層、捨石を用いた基礎捨石マウンド、並びに、前記基礎捨石マウンドに用いられる前記捨石間の空隙を水中コンクリート系材料、アスファルト混合物系材料又は土質系材料により充填させたハイブリッド基礎マウンド、のいずれかであってもよい。
【0020】
従って、被覆層として、水中コンクリート、基礎捨石マウンド、ハイブリッド基礎マウンドのいずれかを採用することで、護岸構造物のコンパクト化を図り、護岸構造物が水平方向に移動することを抑制できる。
【0021】
本発明の態様に係る護岸構築方法は、海底の遮水基盤の上面に水平面に沿った底部と水平面に垂直な側壁とを有する溝部を形成する工程と、前記溝部の底部に当該溝部の側壁との間に間隔を空けた状態で護岸構造物を配置する工程と、前記護岸構造物と前記溝部の側壁との間隔を埋めるように遮水層を配置する工程と、前記護岸構造物からの水平力を前記側壁に伝達可能な荷重伝達材を有し、前記水平力を前記側壁に伝達する場合に垂直方向に座屈しないように前記垂直方向の厚さが設定された荷重伝達層を、前記護岸構造物と前記溝部の側壁との間隔を埋めるように配置する工程とを含む。
【0022】
この構成では、荷重伝達層が座屈することなく、護岸構造物からの水平力を側壁に対してせん断力として伝達するため、護岸構造物の水平移動を規制することができる。このように護岸構造物の水平移動を規制することにより、遮水層の材料が護岸構造物の水平移動に追随可能な材料に限定されないため、遮水層の材料選択の幅を拡大させることができる。また、選択した材料を用いた遮水層により、安定した遮水性を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、護岸構造物の水平移動を抑制し、安定した遮水性を確保することが可能な護岸構造及び護岸構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本実施形態に係る護岸構造の一例を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る護岸構築方法の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、護岸構造の他の例を示す図である。
図4図4は、護岸構造の他の例を示す図である。
図5図5は、護岸構造の他の例を示す図である。
図6図6は、護岸構造の他の例を示す図である。
図7図7は、護岸構造の他の例を示す図である。
図8図8は、護岸構造の他の例を示す図である。
図9図9は、護岸構造の他の例を示す図である。
図10図10は、護岸構造の他の例を示す図である。
図11図11は、護岸構造の他の例を示す図である。
図12図12は、護岸構造の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る護岸構造及び護岸構築方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、以下の各構成は、適宜組み合わせることが可能である。
【0026】
図1は、本実施形態に係る護岸構造の一例を示す図である。図1に示す護岸構造100は、例えば管理型護岸、安定型埋立護岸等の護岸構造及び防波堤構造に適用可能である。護岸構造100は、遮水基盤10と、護岸構造物20と、遮水層30と、荷重伝達層40とを備えている。本実施形態では、護岸構造100は、例えば廃棄物の海面処分場を構成する管理型護岸である場合を例に挙げて説明する。したがって、護岸構造100は、所定の埋立区域を囲うように、当該埋立区域の外周部に沿って延びた状態で設けられる。以下、護岸構造を示す各図においては、左側が海面処分場の外側(海域側)を示し、の右側が海面処分場の内側(埋立区域側)を示している。
【0027】
遮水基盤10は、例えば海底の軟弱地盤GをCDM(Cement Deep Mixing)工法等によって不透水性基板改良がなされた遮水基盤である。なお、遮水基盤10は、改良地盤に限定されず、例えば海底の岩盤部等であってもよい。この場合、岩盤部は、保有水等の浸出を防止するために必要な遮水の効力を有する遮水基盤である。遮水基盤10の上部には、溝部11が形成される。溝部11は、護岸構造100が延びる長手方向に沿って形成される。溝部11は、底部12及び側壁13を有する。底部12は、水平面に沿って形成される。底部12には、当該底部12の凹凸を覆う被覆層14が形成される。被覆層14により、底部12の平面度が高められた状態となる。被覆層14としては、例えば水中コンクリート等を用いることができるが、他の材料が用いられてもよい。側壁13は、護岸構造100の長手方向の直交する幅方向の両端に形成される。側壁13は、水平面に垂直又はほぼ垂直に形成される。
【0028】
護岸構造物20は、溝部11の底部12上、つまり本実施形態では被覆層14の上面に配置される。護岸構造物20としては、例えばケーソン、セル、L字ブロック等が挙げられる。護岸構造物20は、護岸構造100の長手方向に複数並んだ状態で配置される。護岸構造100の長手方向に隣り合う護岸構造物20同士の間は、例えば不図示の目地構造等によって接続される。各護岸構造物20は、幅方向の両端の側壁13との間に間隔を空けて配置される。
【0029】
遮水層30は、護岸構造物20と側壁13との間隔を埋めるように配置される。遮水層30は、例えばアスファルト混合物等の変形追随性遮水材が用いられるが、これに限定されず、コンクリート系材料又は土質系材料等のような変形非追随性遮水材が用いられてもよい。本実施形態において、遮水層30は、後述する荷重伝達層40の上層に配置されるが、これに限定されない。
【0030】
荷重伝達層40は、護岸構造物20と側壁13との間隔を埋めるように配置される。荷重伝達層40は、護岸構造物20からの水平力を側壁13に伝達可能な荷重伝達材を有する。本実施形態における水平力は、護岸構造物20からの力のうち護岸構造100の幅方向の成分を有する力である。つまり、水平力は、護岸構造物20から海域側に向けた力、及び護岸構造物20から埋立区域側に向けた力を含む。荷重伝達材としては、例えば水中コンクリートが用いられるが、これに限定されず、他の材料が用いられてもよい。本実施形態において、荷重伝達層40は、例えば被覆層14上に直接設けられる構成であるが、これに限定されず、被覆層14との間に他の層を挟んで配置されてもよい。
【0031】
荷重伝達層40は、護岸構造物20からの水平力を側壁13に伝達する。この場合、荷重伝達層40は、護岸構造物20からの水平力を側壁13に対するせん断力として当該側壁13に伝達する。側壁13は、この荷重伝達層40からのせん断力を支持する。つまり、側壁13は、護岸構造物20からの水平力を、荷重伝達層40からのせん断力として受け、当該せん断力を支持することにより、護岸構造物20からの水平力を支持する。
【0032】
荷重伝達層40は、護岸構造物20からの水平力を側壁13に伝達する場合において垂直方向に座屈しないように垂直方向の厚さtが設定されている。荷重伝達層40の厚さtは、例えばオイラーの公式又はテトマイヤーの公式等を用いて算出される所定の閾値よりも大きくなるように設定することができる。荷重伝達層40が水平力の伝達時に垂直方向に座屈しないように厚さtが設定されるため、遮水層30の変形が抑制される。なお、厚さtは、護岸構造物20の海側の荷重伝達層40と埋立区域側の荷重伝達層40との間で同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
次に、上記のように構成された護岸構造100を構築する護岸構築方法を説明する。図2は、本実施形態に係る護岸構築方法の一例を示すフローチャートである。図2に示すように、護岸構築方法は、溝部形成工程(ステップS10)と、護岸構造物配置工程(ステップS20)と、遮水層配置工程(ステップS30)と、荷重伝達層配置工程(ステップS40)とを含む。
【0034】
溝部形成工程S10は、遮水基盤10の上面に、水平面に沿った底部12と水平面に垂直な側壁13とを有する溝部11を形成する。本実施形態において、溝部形成工程S10では、遮水基盤10に溝部11を形成した後、溝部11の底部12の凹凸を覆うように被覆層14を形成する。
【0035】
護岸構造物配置工程S20は、溝部11の底部12に、当該溝部11の側壁13との間に間隔を空けた状態で護岸構造物20を配置する。護岸構造物配置工程S20では、護岸構造100の幅方向の両側の側壁13との間に間隔を空けるように、被覆層14の上面に護岸構造物20を配置する。
【0036】
遮水層配置工程S30は、護岸構造物20と溝部11の側壁13との間隔を埋めるように遮水層30を配置する。本実施形態において、遮水層30は、荷重伝達層40の上層に配置されるため、後述する荷重伝達層配置工程S40を行った後、当該遮水層配置工程S30を行う。このように、遮水層30と荷重伝達層40との位置関係に応じて、遮水層配置工程S30と荷重伝達層配置工程S40との順序を前後させたり、交互に行ったり、少なくとも一方を繰り返し行ったりすることができる。
【0037】
荷重伝達層配置工程S40は、護岸構造物20からの水平力を側壁13に伝達可能な荷重伝達材を有し、水平力を側壁13に伝達する場合に垂直方向に座屈しないように垂直方向の厚さtが設定された荷重伝達層40を、護岸構造物20と溝部11の側壁13との間隔を埋めるように配置する。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る護岸構造100は、水平面に沿った底部12と水平面に垂直な側壁13とを有する溝部11が上面に形成される海底の遮水基盤10と、溝部11の底部12に当該溝部11の側壁13との間に間隔を空けた状態で配置される護岸構造物20と、護岸構造物20と溝部11の側壁13との間隔を埋めるように配置される遮水層30と、護岸構造物20と溝部11の側壁13との間隔を埋めるように配置され、護岸構造物20からの水平力を側壁13に対してせん断力として伝達可能な荷重伝達材を有し、水平力を側壁13に伝達する場合に垂直方向に座屈しないように垂直方向の厚さtが設定された荷重伝達層40とを備える。
【0039】
また、本実施形態に係る護岸構築方法は、海底の遮水基盤10の上面に水平面に沿った底部12と水平面に垂直な側壁13とを有する溝部11を形成する工程と、溝部11の底部12に当該溝部11の側壁13との間に間隔を空けた状態で護岸構造物20を配置する工程と、護岸構造物20と溝部11の側壁13との間隔を埋めるように遮水層30を配置する工程と、護岸構造物20からの水平力を側壁13に伝達可能な荷重伝達材を有し、水平力を側壁13に伝達する場合に垂直方向に座屈しないように垂直方向の厚さtが設定された荷重伝達層40を、護岸構造物20と溝部11の側壁13との間隔を埋めるように配置する工程とを含む。
【0040】
この構成では、荷重伝達層40が座屈することなく、護岸構造物20からの水平力を側壁13に対してせん断力として伝達するため、護岸構造物20の水平移動を規制することができる。このように護岸構造物20の水平移動を規制することにより、遮水層30の材料が変形追随性遮水材に限定されないため、遮水層30の材料選択の幅を拡大させることができる。また、選択した材料を用いた遮水層30により、安定した遮水性を確保することが可能となる。
【0041】
本実施形態に係る護岸構造100において、溝部11は、底部12に形成される凹凸を覆う被覆層14を有する。従って、遮水基盤10における許容支持力(許容端趾圧)が高められるため、護岸構造物20を細くすることができる。したがって、護岸構造物20のコンパクト化を図ることができる。また、護岸構造物20と、底部12の被覆層14との間の摩擦力を高めることができるため、護岸構造物20が水平方向に移動することを抑制できる。
【0042】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、遮水層30及び荷重伝達層40が1層ずつ設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0043】
図3は、護岸構造の他の例を示す図である。図3に示す護岸構造100Aは、遮水層30が複数層(例えば、2層)設けられ、垂直方向に荷重伝達層40を挟んだ状態で配置される点で、上記実施形態に係る護岸構造100とは異なっている。このように、遮水層30を複数設けることで、より安定した遮水性が確保される。
【0044】
図4は、護岸構造の他の例を示す図である。図4に示す護岸構造100Bは、荷重伝達層40が複数層(例えば、2層)設けられ、垂直方向に遮水層30を挟んだ状態で配置される点で、上記実施形態に係る護岸構造100とは異なっている。この場合、水平力を側壁13に伝達する場合に垂直方向に座屈しないように、各荷重伝達層40の垂直方向の厚さが設定される。この場合、2層の荷重伝達層40の合計の厚さが、例えばオイラーの公式又はテトマイヤーの公式等を用いて算出される所定の閾値よりも大きくなるように設定すればよい。このように、複数の荷重伝達層40を垂直方向に複数配置することにより、護岸構造物20からの水平力が垂直方向に分散される。このため、側壁13の一部分にせん断力が集中することを抑制できる。
【0045】
図5は、護岸構造の他の例を示す図である。図5に示す護岸構造100Cは、遮水層30及び荷重伝達層40がそれぞれ複数層(例えば、2層)設けられ、垂直方向に交互に配置される点で、上記実施形態に係る護岸構造100とは異なっている。この場合においても、2層の荷重伝達層40の合計の厚さが、例えばオイラーの公式又はテトマイヤーの公式等を用いて算出される所定の閾値よりも大きくなるように設定すればよい。このように、複数の遮水層30及び荷重伝達層40を垂直方向に交互に配置することで、より安定した遮水性が確保され、側壁13の一部分にせん断力が集中することを抑制できる。
【0046】
上記実施形態では、護岸構造物20に対して海域側と埋立区域側とで、遮水層30及び荷重伝達層40が対称に配置された構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。図6は、護岸構造の他の例を示す図である。図6に示す護岸構造100Dは、護岸構造物20に対して海域側と埋立区域側とで、遮水層30及び荷重伝達層40の数及び配置が非対称となっている。つまり、海域側では、遮水層30が1層配置され、荷重伝達層40が2層配置され、垂直方向について2層の荷重伝達層40の間に遮水層30が配置された構成である。一方、埋立区域側では、荷重伝達層40が1層配置され、遮水層30が2層配置され、垂直方向について2層の遮水層30の間に荷重伝達層40が配置された構成である。この場合、海域側では、2層の荷重伝達層40の合計の厚さが、例えばオイラーの公式又はテトマイヤーの公式等を用いて算出される所定の閾値よりも大きくなるように設定すればよい。また、埋立区域側では、1層の荷重伝達層40の厚さが、例えばオイラーの公式又はテトマイヤーの公式等を用いて算出される所定の閾値よりも大きくなるように設定すればよい。このように、護岸構造物20に対して海域側と埋立区域側とで、遮水層30及び荷重伝達層40の数及び配置が非対称であっても、安定した遮水性が確保され、側壁13の一部分にせん断力が集中することを抑制できる。
【0047】
上記実施形態では、遮水層30と荷重伝達層40とが別個の層として設けられる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。図7は、護岸構造の他の例を示す図である。図7に示す護岸構造100Eは、遮水層30及び荷重伝達層40が、同一の遮水・荷重伝達層50として形成されている。遮水・荷重伝達層50は、遮水層30を構成する遮水材31と、荷重伝達層40を構成する荷重伝達材41とを有する。遮水材31としては、例えばプレパックドコンクリート等のコンクリート系の遮水材が用いられる。また、荷重伝達材41としては、例えば複数の石材等が用いられる。遮水・荷重伝達層50は、荷重伝達材41を構成する石材同士の隙間を埋めるように遮水材31が配置される。
【0048】
また、図8は、護岸構造の他の例を示す図である。図8に示す護岸構造100Fは、遮水層30及び荷重伝達層40が、同一の遮水・荷重伝達層60として形成されている。遮水・荷重伝達層60は、遮水層30を構成する遮水材と、荷重伝達層40を構成する荷重伝達材とが共通の土質系材料を用いて形成される。
【0049】
このように、遮水層30と荷重伝達層40とが1つの遮水・荷重伝達層50、60として形成されるため、幅広い材料から遮水材及び荷重伝達材を選択し、遮水層30及び荷重伝達層40を容易に形成できる。
【0050】
上記実施形態では、遮水基盤10の上面に溝部11を掘ることで、底部12及び側壁13を形成する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。図9は、護岸構造の他の例を示す図である。図9に示す護岸構造100Gは、岩盤で構成される遮水基盤10G上に被覆層14Gが形成され、被覆層14Gの上面に側壁部材15が配置され、側壁部材15がアンカー16によって被覆層14Gに固定されることで溝部11Gが形成された構成である。この構成において、側壁部材15のうち護岸構造物20側に向けられた部分が側壁13Gを構成する。そして、護岸構造物20と側壁13Gとの間には、遮水層30及び荷重伝達層40が配置される。また、図9に示す例において、荷重伝達層40は、アンカー16によって被覆層14Gに固定される。この構成では、側壁部材15及び荷重伝達層40がアンカー16により被覆層14Gに固定される構成であるため、荷重伝達層40からのせん断力を側壁13Gにおいて確実に受けることができる。なお、アンカー16は、側壁部材15及び荷重伝達層40のいずれか一方に配置された構成であってもよい。
【0051】
上記実施形態では、遮水基盤10の溝部11の底部12上に水中コンクリートからなる被覆層14が配置される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。図10は、護岸構造の他の例を示す図である。図10に示す護岸構造100Hは、底部12上に基礎捨石マウンドからなる被覆層17が配置され、被覆層17上に護岸構造物20、遮水層30及び荷重伝達層40が配置された構成である。このように、基礎捨石マウンドからなる被覆層17を用いた構成であっても、遮水層30及び荷重伝達層40を配置することができる。なお、基礎捨石マウンドからなる被覆層17の上面に遮水シートを配置することで、被覆層17を介する水漏れを抑制してもよい。なお、被覆層は、上記の水中コンクリート及び基礎捨石マウンドからなる構成の他に、例えばハイブリッド基礎マウンドからなる構成であってもよい。ハイブリッド基礎マウンドは、基礎捨石マウンドに用いられる捨石間の空隙を水中コンクリート系材料、アスファルト混合物系材料又は土質系材料により充填させた構成である。
【0052】
上記実施形態では、護岸構造物20の海域側及び埋立区域側の両側に荷重伝達層40を配置する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。図11は、護岸構造の他の例を示す図である。図11に示す護岸構造100Iは、護岸構造物20の海域側及び埋立区域側のいずれか一方のみ(例えば、海域側)に荷重伝達層40及び遮水層30が配置される構成である。この場合、護岸構造物20の埋立区域側では、遮水層70のみが配置され、荷重伝達層40は配置されない。このように、護岸構造物20を基準とした海域側及び埋立区域側のいずれか一方のみに荷重伝達層40が配置される場合、荷重伝達層40が配置される側に向けた護岸構造物20の水平力については、荷重伝達層40を介して側壁13に伝達することができる。
【0053】
上記実施形態では、護岸構造物20の海域側及び埋立区域側の両側に配置される遮水基盤10の高さが等しい又はほぼ等しい構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。図12は、護岸構造の他の例を示す図である。図12に示す護岸構造100Jは、護岸構造物20の海域側及び埋立区域側の一方(例えば、海域側)における遮水基盤10の高さが、他方(例えば、埋立区域側)よりも高くなっている構成である。このように、護岸構造物20の海域側及び埋立区域側の一方における遮水基盤10の高さが、他方よりも高くなっている構成であっても、安定した遮水性が確保される。
【符号の説明】
【0054】
10,10G 遮水基盤
11,11G 溝部
12 底部
13,13G 側壁
14,14G 被覆層
15 側壁部材
16 アンカー
17 基礎捨石マウンド
20 護岸構造物
30,70 遮水層
31 遮水材
40 荷重伝達層
41 荷重伝達材
50,60 遮水・荷重伝達層
100,100A,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100H,100I,100J 護岸構造
G 軟弱地盤
S10 溝部形成工程
S20 護岸構造物配置工程
S30 遮水層配置工程
S40 荷重伝達層配置工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12