(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】線状体設置装置及び線状体設置方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/00 20060101AFI20230113BHJP
G02B 6/50 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E02D1/00
G02B6/50 311
(21)【出願番号】P 2019113111
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303021609
【氏名又は名称】ニューブレクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 道男
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 昭治
(72)【発明者】
【氏名】石神 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岸田 欣増
(72)【発明者】
【氏名】木村 純一
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-099355(JP,A)
【文献】特開2004-027522(JP,A)
【文献】特開2000-019332(JP,A)
【文献】特開2000-303481(JP,A)
【文献】実開昭58-160235(JP,U)
【文献】特開平08-199623(JP,A)
【文献】特開平09-229264(JP,A)
【文献】特開2003-148959(JP,A)
【文献】実開平02-120042(JP,U)
【文献】特開2012-250452(JP,A)
【文献】特開2010-247163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00- 3/115
E02D 17/00-17/20
G02B 6/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状体を地中に設置する線状体設置装置であって、
第1棒状部材をその軸方向に地中に送出する送出部と、
前記送出部により送出される前記第1棒状部材の外周に前記線状体を繰出す繰出部と、
前記繰出部を前記第1棒状部材の周りを相対回転させる駆動部と、を備える
線状体設置装置。
【請求項2】
前記線状体は、光ファイバケーブルであり、
前記繰出部は、複数設けられ、それぞれが前記光ファイバケーブルを前記第1棒状部材の外周に繰り出す、
請求項1に記載の線状体設置装置。
【請求項3】
前記送出部による前記第1棒状部材の送出速度を検出する検出部と、
前記検出部により検出された送出速度に基づいて前記駆動部による前記繰出部の相対回転速度を制御する制御部と、を更に備える
請求項1
または2に記載の線状体設置装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記駆動部による前記繰出部の回転速度が、前記検出部により検出された送出速度を予め定められた螺旋ピッチで除した値となるように、前記駆動部を制御する、
請求項3に記載の線状体設置装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記検出部により検出された送出速度に基づいて前記繰出部による前記線状体の繰出速度を制御する
請求項
3または4に記載の線状体設置装置。
【請求項6】
線状体を地中に設置する線状体設置方法であって、
第1棒状部材をその軸方向に地中に送出すると共に、繰出部から前記線状体を前記第1棒状部材の外周に繰出しつつ前記繰出部を前記第1棒状部材の周りを相対回転させる
線状体設置方法。
【請求項7】
前記線状体は、光ファイバケーブルであり、
複数の前記光ファイバケーブルを前記第1棒状部材の外周に繰り出す、
請求項6に記載の線状体設置方法。
【請求項8】
前記第1棒状部材をその軸方向に鉛直方向に地中に送出する、
請求項6または7に記載の線状体設置方法。
【請求項9】
前記第1棒状部材の送出速度を検出し、検出された送出速度に基づいて前記繰出部の相対回転速度を制御する
請求項
6から8のいずれか1項に記載の線状体設置方法。
【請求項10】
前記第1棒状部材の外周に繰出された前記線状体の螺旋ピッチが予め定められた螺旋ピッチとなるように、前記繰出部の相対回転速度を制御する、
請求項9に記載の線状体設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状体を地中に設置する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木構造物を構築する際に、地中の状態を検出するための線状体を地中に設置することがある。特許文献1には、地盤の変形を監視するための光ファイバケーブルを管を利用して地中に設置する方法が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示される方法では、まず、管の外周面に光ファイバケーブルを螺旋状に配置し、接着剤等を使用して管の外周面に固定する。次に、地中に当該管を送出し、管の底部を地中に固定する。以上の手順により、光ファイバケーブルが地中に螺旋状に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、光ファイバケーブルを管の外周に配置する具体的な方法は開示されていない。光ファイバケーブルが管の外周に螺旋状に精度良く配置されていない場合には、光ファイバケーブルを精度良く螺旋状に地中に設置することができない。このような場合、光ファイバケーブルにおける歪みが生じた位置を正確に検出することができず、地盤の変形を誤って把握するおそれがある。このような理由から、光ファイバケーブルを精度良く螺旋状に地中に設置することが求められている。
【0006】
また、地中の状態を検出するための他の線状体においても、精度良く螺旋状に地中に設置することが求められている。
【0007】
本発明は、線状体を精度良く螺旋状に地中に設置することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、線状体を地中に設置する線状体設置装置であって、第1棒状部材をその軸方向に地中に送出する送出部と、送出部により送出される第1棒状部材の外周に線状体を繰出す繰出部と、繰出部を第1棒状部材の周りを相対回転させる駆動部と、を備える。
【0009】
また、本発明は、線状体を地中に設置する線状体設置方法であって、第1棒状部材をその軸方向に地中に送出すると共に、繰出部から線状体を第1棒状部材の外周に繰出しつつ繰出部を第1棒状部材の周りを相対回転させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、線状体を精度良く螺旋状に地中に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る線状体設置装置の概略図である。
【
図2】
図1に示す繰出部、モータ及び検出部の拡大図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る線状体設置装置の概略図であり、別の棒状部材を吊り上げた状態を示す。
【
図4】(a)は、棒状部材に取り付けられた位置決め部材の正面図であり、(b)は、
図4(a)に示すIVB-IVB線に沿う断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る線状体設置装置の図であり、
図2に対応して示す。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る線状体設置方法を説明するための図である。
【
図7】棒状部材に取り付けられた位置決め部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る線状体設置装置及び線状体設置方法について説明する。
【0014】
<第1実施形態>
まず、
図1から
図4を参照して、第1実施形態に係る線状体設置装置及び線状体設置方法について説明する。ここでは、線状体が光ファイバケーブルである場合について説明する。
【0015】
土木構造物の構築において、地滑り等の地盤の状態を把握することは重要である。地盤の状態を把握するには地中歪みを複数位置で計測するのが有効であり、地中歪みを計測するための光ファイバケーブルを地中に設置することがある。
【0016】
光ファイバケーブルには入射されたパルス光を僅かに後方に散乱させる性質があり、この性質を利用することにより、光ファイバケーブルにおける複数位置での歪みを計測することができる。具体的には、散乱光の周波数は光ファイバケーブルの歪みに依存するため、パルス光を光ファイバケーブルに入射して散乱光の周波数を計測することにより光ファイバケーブルの歪みを計測することができる。また、光ファイバケーブルにパルス光を入射してから光ファイバケーブル内で発生した散乱光が入射位置に戻るまでの時間を測定することにより、散乱光が発生した位置、すなわち光ファイバケーブルにおける歪みと歪みが生じた位置を計測することができる。
【0017】
光ファイバケーブルを地中に螺旋状に配置した場合には、螺旋の周方向における複数の位置で光ファイバケーブルの歪みを計測することができ、地盤の状態をより正確に把握することができる。このような理由から、光ファイバケーブルを地中に螺旋状に配置することが求められている。本実施形態に係る線状体設置装置100及び線状体設置方法は、光ファイバケーブル1を地中に螺旋状に設置する際に用いられる。
【0018】
図1に示すように、線状体設置装置100は、パイプ(棒状部材)2をその軸方向に地中に送出するウインチ(送出部)10と、ウインチ10により送出されるパイプ2の外周に光ファイバケーブル1を繰出す繰出部20と、繰出部20をパイプ2の周りに回転させるモータ(駆動部)30と、を備える。
【0019】
ウインチ10は、ワイヤ11を巻き取り可能に形成されている。ワイヤ11は、地上に構築された架台3の頂部に設けられた滑車12に掛けられている。ワイヤ11の一端をパイプ2の端部に取り付けてウインチ10を用いてワイヤ11を巻き取ることにより、パイプ2が吊り上げられる。この状態でウインチ10を逆方向に駆動することにより、ウインチ10からワイヤ11が引き出され、パイプ2が降下する。
【0020】
地盤にはボーリング穴4が予め形成されており、パイプ2をボーリング穴4の上方から降下させることによりパイプ2が地中に送出される。ボーリング穴4は、例えば、削孔ロッド(図示省略)により地盤を削孔しながら削孔ロッドを降下させることにより形成される。
【0021】
ボーリング穴4は地盤に予め形成されていなくてもよく、ボーリング穴4を形成しつつパイプ2を地中に送出してもよい。具体的には、パイプ2の先端に削孔ビットを取り付け当該削孔ビットを用いて地盤を掘削しながらパイプ2を地中に送出してもよい。
【0022】
繰出部20は、
図2に示すように、光ファイバケーブル1が巻回されたボビン21と、ボビン21からその軸方向に突出するシャフト22と、シャフト22を回転自在に支持する支持部材23と、支持部材23に取り付けられた案内部材24と、を備えている。案内部材24には案内孔24aが形成されており、ボビン21に巻回された光ファイバケーブル1は、案内孔24aから繰出される。
【0023】
繰出部20の支持部材23は、架台3の足場板3aに支持された回転台40に保持されており、鉛直方向の移動が拘束されている。そのため、ボビン21に巻回された光ファイバケーブル1の先端をパイプ2に固定した状態でパイプ2を降下させることにより、光ファイバケーブル1が引っ張られる。その結果、ボビン21が回転し、光ファイバケーブル1がボビン21から繰出される。
【0024】
回転台40は、パイプ2が挿通する環状の上側テーブル41及び下側テーブル42を備えている。上側テーブル41は、足場板3aの上方に配置されており、足場板3aに環状のベアリング3bを介してパイプ2の周りに回転自在に支持されている。下側テーブル42は、ベアリング3bを挿通する連結棒43を介して上側テーブル41と連結されており、上側テーブル41と共にパイプ2の周りに回転する。換言すると、上側テーブル41及び下側テーブル42は、架台3に回転自在に支持されていて、パイプ2の周りを回転する。
【0025】
下側テーブル42の下面には下方に延びる第1支持棒44が取り付けられている。第1支持棒44の下端には第2支持棒45の一端が連結されており、第2支持棒45の他端に繰出部20の支持部材23が取り付けられている。そのため、繰出部20は、下側テーブル42と共にパイプ2の周りに回転する。
【0026】
回転台40の上側テーブル41の上面には環状のギア31が取り付けられている。モータ30は、ギア31と噛み合うギア32に減速機33を介して連結されており、モータ30の駆動力はギア31を通じて回転台40に伝達される。モータ30の駆動により上側テーブル41及び下側テーブル42が回転し、繰出部20がパイプ2の周りを回転する。
【0027】
図1に示すように、ウインチ10とモータ30との両方を駆動したときには、パイプ2が地中に送出されると共に繰出部20がパイプ2の周りを回転する。そのため、繰出部20から繰出される光ファイバケーブル1は、パイプ2の外周に螺旋状に配置される。パイプ2の送出速度を一定としつつ繰出部20の送出速度を一定とした場合には、螺旋ピッチPは、送出速度を回転速度で除した値となり、螺旋ピッチを制御することができる。
【0028】
このように、線状体設置装置100では、ウインチ10(
図1参照)がパイプ2を地中に送出し、モータ30が繰出部20をパイプ2の周りに回転させる。そのため、繰出部20から繰出される光ファイバケーブル1は、パイプ2の送出速度と繰出部20の回転速度とによって決まる螺旋ピッチPでパイプ2の外周に螺旋状に配置される。したがって、パイプ2の外周に光ファイバケーブル1を精度良く配置することができる。光ファイバケーブル1は、パイプ2の外周に配置された状態でパイプ2と共に地中に送出されるため、光ファイバケーブル1を精度良く螺旋状に地中に設置することができる。
【0029】
図2では繰出部20が2つ示されているが、線状体設置装置100は、4つの繰出部20を備えており、モータ30は、4つの繰出部20を同時にパイプ2の周りに回転させる。そのため、4本の光ファイバケーブル1をパイプ2の外周に同時に螺旋状に配置することができ、4本の光ファイバケーブル1を螺旋状に地中に設置することができる。4本の光ファイバケーブル1を螺旋状に地中に設置した場合には、パイプ2の断面形状を変化させるような地盤の変形を把握することができる。
【0030】
なお、地中に設置される光ファイバケーブル1の本数は4本に限られず、1本、2本、3本、又は5本以上であってもよい。繰出部20は、地中に設置される光ファイバケーブル1の数だけあればよい。
【0031】
第1支持棒44と第2支持棒45との間の角度は変更可能である。当該角度を変更することにより、案内部材24の向きを変更することができる。したがって、繰出部20から繰出される光ファイバケーブル1の方向を変更することができる。
【0032】
繰出部20の支持部材23には、シャフト22に負荷トルクを作用させるトルク制御装置25が取り付けられている。シャフト22は、ボビン21に固定されており、トルク制御装置25は、ボビン21の加減速に応じて負荷トルクを変化させるように形成されている。したがって、ボビン21の加減速に起因する光ファイバケーブル1の張力の変動を軽減することができる。
【0033】
線状体設置装置100は、ウインチ10(
図1参照)によるパイプ2の送出速度を検出する検出部50と、モータ30による繰出部20の回転速度を制御するコントローラ(制御部)60と、を備えている。
【0034】
検出部50は、パイプ2を挟むように配置される第1ローラ51及び第2ローラ52と、第1ローラ51及び第2ローラ52からそれらの軸方向に突出する第1シャフト53及び第2シャフト54と、第1シャフト53の回転速度を測定するロータリエンコーダ55と、を備えている。第1シャフト53は、第1ローラ51に固定されており、第1ローラ51と共に回転する。
【0035】
第1シャフト53及び第2シャフト54は、第1アーム57及び第2アーム58に回転自在に支持されている。第1アーム57及び第2アーム58は、足場板3aに取り付けられたフレーム3cに揺動自在に取り付けられている。
【0036】
第1アーム57及び第2アーム58には第1ローラ51及び第2ローラ52の間隔を狭める方向に付勢するコイルばね59が取り付けられており、コイルばね59によって第1ローラ51及び第2ローラ52がパイプ2の外周面に押付けられている。そのため、第1ローラ51は、パイプ2の送出に同期して回転する。
【0037】
第1ローラ51の回転に伴って第1シャフト53が回転するため、第1シャフト53の回転速度をロータリエンコーダ55を用いて測定することにより、第1ローラ51の回転速度を測定することができる。第1ローラ51の外径は既知の値であるため、第1ローラ51の回転速度を測定することにより、パイプ2の送出速度を検出することができる。
【0038】
検出部50から出力される信号は、コントローラ60に送信される。コントローラ60は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUにより実行される制御プログラム等を記憶するROM(Read-Only Memory)と、CPUの演算結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)と、を備えるマイクロコンピュータである。コントローラ60は、1つのマイクロコンピュータによって構成されていてもよいし、複数のマイクロコンピュータによって構成されていてもよい。
【0039】
コントローラ60は、検出部50により検出された送出速度に基づいて、モータ30による繰出部20の回転速度を制御する。そのため、モータ30による繰出部20の回転速度は、ウインチ10(
図1参照)によるパイプ2の送出速度に応じて変化する。したがって、繰出部20から繰出される光ファイバケーブル1を所望の螺旋ピッチでパイプ2に螺旋状に配置することができ、光ファイバケーブル1をより精度良く螺旋状に地中に設置することができる。なお、コントローラ60(制御部)は電気信号等により繰出速度を制御するものに限定されず、歯車やギアを組み合わせた機械式のものであってもよい。
【0040】
図3に示すように、線状体設置装置100は、繰出部20から繰出された光ファイバケーブル1が外周に配置された最初のパイプ2に別のパイプ2を連結する連結器70を備える。以下において、当該最初のパイプ2を「第1パイプ2a」とも称し、当該別のパイプ2を「第2パイプ2b」とも称する。
【0041】
第2パイプ2bは、第1パイプ2aの下端が繰出部20よりも下方に移動した後に第1パイプ2aに連結される。したがって、第1パイプ2aの外周に光ファイバケーブル1を配置する前に第1パイプ2aと第2パイプ2bを連結して吊り上げる場合と比較して、第2パイプ2bの吊り上げ高さを低くすることができる。これにより、搬送や吊り上げ等のパイプ2の扱いを容易にすることができると共に、線状体設置装置100の大型化を防止することができる。
【0042】
連結器70は、例えばパイプ2の端部どうしを溶接する溶接機などの連結機である。連結器70は、パイプ2どうしを連結するための連結具をパイプ2の端部に取り付ける装置であってもよい。パイプ2の端部にはパイプ2どうしを連結する連結部を備えたパイプを用いてもよい。なお、連結器70は溶接機等の電気機器に限定されるものではなく、連結工具(例えば、パイプレンチ、パイプ固定装置)のような簡便なものであってもよい。
【0043】
第2パイプ2bは、第1パイプ2aと同様に、ウインチ10を駆動することにより第1パイプ2aと共に降下して地中に送出される。繰出部20は、第2パイプ2bの外周に光ファイバケーブル1を繰出し、モータ30は、繰出部20を第2パイプ2bの周りに回転させる。そのため、光ファイバケーブル1は、第1パイプ2aの外周に続いて第2パイプ2bの外周に螺旋状に配置される。したがって、第1パイプ2aと第2パイプ2bとに渡って光ファイバケーブル1を螺旋状に配置することができ、地中における光ファイバケーブル1の設置範囲を拡大することができる。
【0044】
繰出部20の下方には、作業員が作業するためのスペース(以下、「作業スペース」と称する)が設けられている。作業スペースにおいて、ボーリング穴4の径方向におけるパイプ2の位置を定めるセントラライザ(位置決め部材)80がパイプ2の外周に作業員によって取り付けられる。
【0045】
図4(a)に示すように、セントラライザ80は、第1環状体81と、第1環状体81とその軸方向に間隔を空けて配置される第2環状体82と、第1環状体81と第2環状体82とを連結する複数の連結板83と、を備えている。第1環状体81及び第2環状体82は半割構造を有しており、パイプ2を外側から覆うようにパイプ2に取り付けられる。
【0046】
連結板83は、第1環状体81及び第2環状体82の径方向に隆起するように形成されている。セントラライザ80がパイプ2と共に地中に送出されると、連結板83はボーリング穴4(
図1及び
図4参照)の内周面によって押圧される。そのため、第1環状体81及び第2環状体82がボーリング穴4と略同軸に保たれ、パイプ2が位置決めされる。
【0047】
セントラライザ80は、繰出部20(
図1及び
図3参照)の下方においてパイプ2に取り付けられる。そのため、パイプ2の外周に配置された光ファイバケーブル1は、セントラライザ80によって覆われる。したがって、光ファイバケーブル1がずれるのを防止することができ、また、パイプ2はボーリング穴4の中心に配置される。したがって、光ファイバケーブル1をより精度良く螺旋状に地中に設置することができる。
【0048】
図4(b)に示すように、第1環状体81の内周面には、複数の円弧状のスペーサ84が第1環状体81の周方向に間隔を空けて接着剤を用いて固着されている。スペーサ84の内周面には接着剤が塗布されており、スペーサ84はパイプ2の外周面に固着される。図示を省略するが、第1環状体81と同様に、第2環状体82の内周面に複数の円弧状のスペーサ84が固着されている。
【0049】
スペーサ84の厚みは光ファイバケーブル1の外径と略等しく、セントラライザ80は、光ファイバケーブル1がスペーサ84どうしの間隔を通過するようにパイプ2の外周面に取り付けられる。したがって、光ファイバケーブル1の損傷を防止しつつ光ファイバケーブル1のずれを防止することができる。また、パイプ2はボーリング穴4の中心に配置される。
【0050】
次に、線状体設置方法について説明する。
【0051】
まず、削孔ロッド(図示省略)を用いて、
図1に示すボーリング穴4を地盤に形成する。次に、ワイヤ11の一端を1本目のパイプ2の端部に取り付け、ウインチ10を駆動してパイプ2を検出部50の上方に吊り上げる。
【0052】
次に、ウインチ10を逆方向に駆動してパイプ2を降下させる。このとき、検出部50の第1ローラ51及び第2ローラ52(
図2参照)の間にパイプ2を通す。パイプ2の下端が繰出部20の下方の作業スペースに到達したところで、ウインチ10を停止してパイプ2の降下を停止する。
【0053】
次に、繰出部20から繰出された光ファイバケーブル1の先端をパイプ2の下端に固定すると共に、セントラライザ80をパイプ2に取り付ける。再びウインチ10を駆動してパイプ2を降下させる。このとき、モータ30を用いて繰出部20をパイプ2の周りに回転させる。これにより、パイプ2の外周に光ファイバケーブル1が螺旋状に配置される。
【0054】
図3に示すように、パイプ2を地中に予め定められた距離、送出したところで、セントラライザ80をパイプ2に取り付ける。
【0055】
第1パイプ2aの上端が連結器70まで降下したところで、第1パイプ2aの送出を停止する。次に、不図示の保持機構を用いて第1パイプ2aを保持し、ワイヤ11を第1パイプ2aから外す。次に、ワイヤ11を第2パイプ2bの端部に取り付け、ウインチ10を駆動して第2パイプ2bを連結器70の上方に吊り上げる。第2パイプ2bの下端を第1パイプ2aの上端に合わせ、第2パイプ2bを第1パイプ2aに連結する。
【0056】
次に、再びウインチ10を駆動して第2パイプ2bを降下させる。このとき、モータ30を用いて繰出部20を第2パイプ2bの周りに回転させ、第2パイプ2bの外周に光ファイバケーブル1を螺旋状に配置する。図示を省略するが、第2パイプ2bにセントラライザ80を取り付ける。
【0057】
第1パイプ2aの下端がボーリング穴4の底部、または所定の深度に到達するまで、パイプ2を継ぎ足し地中に送出する。継ぎ足されたパイプ2にも光ファイバケーブル1を螺旋状に配置することにより、ボーリング穴4の底部と地表との間に渡って光ファイバケーブル1を螺旋状に設置することができる。
【0058】
第1パイプ2aの下端がボーリング穴4の底部、または所定の深度に到達したところで、不図示の注入機を用いて、パイプ2の外周面とボーリング穴4の内周面との間にグラウト材を注入する。グラウト材が固化すると、パイプ2及び光ファイバケーブル1がボーリング穴4の内周面に固着される。
【0059】
以上により、光ファイバケーブル1の設置が完了する。
【0060】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0061】
線状体設置装置100及び線状体設置方法では、パイプ2を地中に送出すると共に、繰出部20から光ファイバケーブル1をパイプ2の外周に繰出しつつ繰出部20をパイプ2の周りに回転させる。そのため、繰出部20から繰出される光ファイバケーブル1は、パイプ2の送出速度と繰出部20の回転速度とによって決まる螺旋ピッチPでパイプ2の外周に螺旋状に配置される。したがって、パイプ2の外周に光ファイバケーブル1を精度良く配置することができる。光ファイバケーブル1は、パイプ2の外周に精度良く配置された状態でパイプ2と共に地中に送出されるため、光ファイバケーブル1を精度良く螺旋状に地中に設置することができる。
【0062】
また、線状体設置装置100及び線状体設置方法では、パイプ2の送出速度を検出し、検出された送出速度に基づいて繰出部20の回転速度を制御する。そのため、繰出部20の回転速度は、パイプ2の送出速度に応じて変化する。したがって、繰出部20から繰出される光ファイバケーブル1を所望の螺旋ピッチでパイプ2に螺旋状に配置することができ、光ファイバケーブル1をより精度良く螺旋状に地中に設置することができる。
【0063】
また、線状体設置装置100及び線状体設置方法では、光ファイバケーブル1が外周に配置された第1パイプ2aの後端に第2パイプ2bを連結し、第2パイプ2bをその軸方向に地中に送出すると共に、繰出部20から光ファイバケーブル1を第2パイプ2bの外周に繰出しつつ繰出部20を第2パイプ2bの周りを相対回転させる。そのため、光ファイバケーブル1は、第1パイプ2aの外周に続いて第2パイプ2bの外周に螺旋状に配置される。したがって、第1パイプ2aと第2パイプ2bに渡って光ファイバケーブル1を螺旋状に配置することができ、地中における光ファイバケーブル1の設置範囲を拡大することができる。
【0064】
また、線状体設置方法では、セントラライザ80を、光ファイバケーブル1が外周に配置されたパイプ2の外周に取り付ける。そのため、パイプ2の外周に配置された光ファイバケーブル1は、セントラライザ80によって覆われる。したがって、光ファイバケーブル1がずれるのを防止することができ、光ファイバケーブル1をより精度良く螺旋状に地中に設置することができる。
【0065】
本実施形態では、モータ30は、繰出部20をパイプ2の周りに回転させるが、本発明は、この形態に限られない。繰出部20を架台3に移動不能に固定しモータ30を用いてパイプ2をその軸周りに回転させてもよい。すなわち、モータ30は、繰出部20をパイプ2の周りを相対回転させるように構成されていればよい。また、コントローラ60は、モータ30による繰出部20の相対回転速度を制御するように構成されていればよい。
【0066】
<第2実施形態>
次に、
図5を参照して本発明の第2実施形態に係る線状体設置装置200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
線状体設置装置200では、繰出部220は、線状体設置装置100におけるトルク制御装置25(
図2参照)に代えて、繰出部220のシャフト22を回転させるモータ225を備えている。モータ225は、支持部材23に取り付けられており、モータ225の駆動によりボビン21が回転し、光ファイバケーブル1がボビン21から繰出される。
【0068】
モータ225は、コントローラ60と無線により接続されている。コントローラ60は、検出部50により検出された送出速度に基づいて、モータ225による光ファイバケーブル1の繰出速度を制御する。そのため、光ファイバケーブル1の繰出速度は、ウインチ10(
図1参照)によるパイプ2の送出速度に応じて変化する。したがって、パイプ2の送出に同期して光ファイバケーブル1を繰出すことができ、光ファイバケーブル1の張力の変動を軽減することができる。なお、コントローラ60(制御部)は電気信号等により繰出速度を制御するものに限定されず、歯車やギアを組み合わせた機械式のものであってもよい。
【0069】
本実施形態に係る線状体設置方法は、第1実施形態に係る線状体設置方法と略同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0070】
<第3実施形態>
次に、
図6及び
図7参照して本発明の第3実施形態に係る線状体設置方法について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
本実施形態に係る線状体設置方法は、パイプ2の外周に光ファイバケーブル1を配置する配置工程と、パイプ2を地中に送出する送出工程と、を備える。配置工程では、複数のセントラライザ380をパイプ2にその軸方向に間隔を空けて取り付け、その後に、セントラライザ380間に渡って光ファイバケーブル1をパイプ2の外周に螺旋状に配置する。そのため、複数のセントラライザ380を目安に螺旋ピッチPを定めることができる。したがって、光ファイバケーブル1をパイプ2に所望の螺旋ピッチで螺旋状に配置した状態で地中に送出することができ、光ファイバケーブル1を精度良く螺旋状に地中に設置することができる。
【0072】
図7に示すように、セントラライザ380は、パイプ2の外周を覆う円筒体381と、円筒体381の外周に取り付けられる複数の羽根体382と、を有する。羽根体382は、円筒体381の径方向に隆起するように形成されている。セントラライザ380がパイプ2と共に地中に送出されると、羽根体382はボーリング穴4(6参照)の内周面によって押圧される。そのため、円筒体381がボーリング穴4と略同軸に保たれ、パイプ2が位置決めされる。
【0073】
光ファイバケーブル1は、円筒体381の周方向に隣り合う羽根体382の間に配置される。羽根体382は、円筒体381の軸方向に対して所定の角度、傾斜して延びている。そのため、羽根体382に沿って光ファイバケーブル1を円筒体381の外周に配置することにより、光ファイバケーブル1をパイプ2の軸方向に対して所定の角度、傾斜して配置することができ、光ファイバケーブル1をより精度良くパイプ2の外周に配置することができる。
【0074】
セントラライザ380の取り付けピッチは、要求される光ファイバケーブル1の螺旋ピッチPに設定されることが好ましい。この場合には、セントラライザ380間で光ファイバケーブル1をパイプ2の周りを1周させればよく、光ファイバケーブル1を所望の螺旋ピッチで螺旋状にパイプ2の外周に容易に配置することができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0076】
上記実施形態では、パイプ2を用いているが、パイプ2に代えて、中実の棒を用いてもよい。
【0077】
上記実施形態では、ウインチ10を用いてパイプ2を降下させることによりパイプ2を地中に送出しているが、一対のローラでパイプ2を挟持し一対のローラを回転させることによりパイプ2を地中に送出してもよい。
【0078】
光ファイバケーブル1をパイプ2の外周に配置する際に、接着剤を用いて光ファイバケーブル1をパイプ2の外周に仮固定してもよい。
【0079】
上記実施形態では、螺旋形状の中心軸が鉛直方向に沿うように光ファイバケーブル1を地中に設置するが、螺旋形状の中心軸が水平になるように光ファイバケーブル1を地中に設置してもよい。この場合には、ボーリング穴4を水平に形成し、パイプ2を水平に送出すればよい。螺旋形状の中心軸が水平になるように設置された光ファイバケーブル1は、トンネル掘削工事などにおける地盤変位の測定に有効である。
【0080】
光ファイバケーブル1の断面は、
図4(b)に示すように円形であってもよいし、略矩形(長方形)であってもよい。光ファイバケーブル1の断面が略矩形である場合には、光ファイバケーブル1の捻れを防止することができる。
【0081】
本発明は、光ファイバケーブル1を地中に設置する形態に限られず、電線等を地中に設置する場合にも有効である。
【符号の説明】
【0082】
100,200・・・線状体設置装置
1・・・光ファイバケーブル(線状体)
2・・・パイプ(棒状部材)
2a・・・第1パイプ(第1棒状部材)
2b・・・第2パイプ(第2棒状部材)
4・・・ボーリング穴
10・・・ウインチ(送出部)
20,220・・・繰出部
30・・・モータ(駆動部)
50・・・検出部
60・・・コントローラ(制御部)
70・・・連結器
80,380・・・セントラライザ(位置決め部材)