(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】配送計画生成方法および配送計画生成装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/047 20230101AFI20230113BHJP
G06Q 10/083 20230101ALI20230113BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
G06Q10/04 310
G06Q10/08 300
B65G61/00 530
B65G61/00 544
(21)【出願番号】P 2017208407
(22)【出願日】2017-10-27
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃一郎
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-275348(JP,A)
【文献】国際公開第2005/108928(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0100780(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0069501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配送計画生成装置により、物品の配送範囲に関する配送範囲情報を取得し、
前記配送計画生成装置により、前記配送範囲情報に対応する各道路の特徴情報を取得し、
前記配送計画生成装置により、前記各道路の接続関係を示す道路ネットワーク情報を取得し、
前記配送計画生成装置により、
前記特徴情報毎に対応する学習情報を取得し、
前記配送計画生成装置により、前記学習情報を用いて、前記各道路に対応する特徴情報から前記物品の配送における前記各道路の良さを示す報酬を算出し、前記報酬を前記各道路における道路コストに変換し、
前記配送計画生成装置により、前記道路ネットワーク情報および道路コストを用いて配送計画を生成し、
前記学習情報は、前記物品を配送する配送車両のうち一部の配送車両の走行履歴と前記一部の配送車両の走行履歴に対応する各道路の特徴情報とをもとに生成される、
配送計画生成方法。
【請求項2】
前記走行履歴は、前記配送範囲と異なる範囲の走行履歴である、
請求項1に記載の配送計画生成方法。
【請求項3】
前記道路コストは、前記報酬の逆数を用いて算出される、
請求項1に記載の配送計画生成方法。
【請求項4】
前記走行履歴は、前記配送車両が物品を配送した時に走行した1つ以上の道路をそれぞれ識別する道路識別情報の集合である、
請求項1~3のうちいずれか1項に記載の配送計画生成方法。
【請求項5】
前記特徴情報は、道路の右左折情報を含む、
請求項1~4のうちいずれか1項に記載の配送計画生成方法。
【請求項6】
前記特徴情報は、道路の幅情報を含む、
請求項1~5のうちいずれか1項に記載の配送計画生成方法。
【請求項7】
前記特徴情報は、道路の中央分離帯情報を含む、
請求項1~6のうちいずれか1項に記載の配送計画生成方法。
【請求項8】
前記特徴情報は、道路の幹線道路横断情報を含む、
請求項1~7のうちいずれか1項に記載の配送計画生成方法。
【請求項9】
前記特徴情報は、道路の高低差情報を含む、
請求項1~8のうちいずれか1項に記載の配送計画生成方法。
【請求項10】
物品の配送範囲に関する配送範囲情報を取得する取得部と、
前記配送範囲情報に対応する各道路の特徴情報および前記各道路の接続関係を示す道路ネットワーク情報を記憶する道路情報記憶部と、
前記特徴情報毎に対応する学習情報を記憶する道路学習記憶部と、
前記学習情報を用いて、前記各道路に対応する特徴情報から前記物品の配送における前記各道路の良さを示す報酬を算出し、前記報酬を前記各道路における道路コストに変換する道路コスト算出部と、
前記道路ネットワーク情報および道路コストを用いて配送計画を算出する配送計画算出部と、を備え、
前記学習情報は、前記物品を配送する配送車両のうち一部の配送車両の走行履歴と前記一部の配送車両の走行履歴に対応する各道路の特徴情報とをもとに生成される、
配送計画生成装置。
【請求項11】
前記走行履歴は、前記配送範囲と異なる範囲の走行履歴である、
請求項10に記載の配送計画生成装置。
【請求項12】
前記道路コストは、前記報酬の逆数を用いて算出される、
請求項10に記載の配送計画生成装置。
【請求項13】
前記走行履歴は、前記配送車両が物品を配送した時に走行した1つ以上の道路をそれぞれ識別する道路識別情報の集合である、
請求項10~12のうちいずれか1項に記載の配送計画生成装置。
【請求項14】
前記特徴情報は、道路の右左折情報を含む、
請求項10~13のうちいずれか1項に記載の配送計画生成装置。
【請求項15】
前記特徴情報は、道路の幅情報を含む、
請求項10~14のうちいずれか1項に記載の配送計画生成装置。
【請求項16】
前記特徴情報は、道路の中央分離帯情報を含む、
請求項10~15のうちいずれか1項に記載の配送計画生成装置。
【請求項17】
前記特徴情報は、道路の幹線道路横断情報を含む、
請求項10~16のうちいずれか1項に記載の配送計画生成装置。
【請求項18】
前記特徴情報は、道路の高低差情報を含む、
請求項10~17のうちいずれか1項に記載の配送計画生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配送対象となる複数の荷物の配送を支援する配送計画生成方法および配送計画生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
輸送ビークルによる貨物の輸送を最適に行うことに関する先行技術として、特許文献1が提案されている。例えば特許文献1には、様々な地点に貨物を輸送する複数の輸送ビークル(例えば船舶)に関し、輸送スケジュールに関連する様々な輸送決定項目を最適化し、最適化された輸送決定項目に従って複数の輸送ビークルを移動させる方法が開示されている。この輸送決定項目には、少なくとも船舶の輸送ルート(即ち、航路)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、複数の荷物の配送において、配送先までの道路の状況に応じて最適な荷物の配送計画の策定を効果的に支援し、それぞれの荷物を配送するドライバーの負担を軽減する配送計画生成方法および配送計画生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
また、本開示は、物品の配送範囲に関する配送範囲情報を取得する取得部と、前記配送範囲情報に対応する各道路の特徴情報および前記各道路の接続関係を示す道路ネットワーク情報を記憶する道路情報記憶部と、前記特徴情報毎に対応する学習情報を記憶する道路学習記憶部と、前記学習情報を用いて、前記各道路に対応する特徴情報から前記物品の配送における前記各道路の良さを示す報酬を算出し、前記報酬を前記各道路における道路コストに変換する道路コスト算出部と、前記道路ネットワーク情報および道路コストを用いて配送計画を算出する配送計画算出部と、を備え、前記学習情報は前記物品を配送する配送車両のうち一部の配送車両の走行履歴と前記一部の配送車両の走行履歴に対応する各道路の特徴情報とをもとに生成される、配送計画生成装置を提供する。
【0008】
また、本開示は、配送計画生成装置により、物品の配送範囲に関する配送範囲情報を取得し、前記配送計画生成装置により、前記配送範囲情報に対応する各道路の特徴情報を取得し、前記配送計画生成装置により、前記各道路の接続関係を示す道路ネットワーク情報を取得し、前記配送計画生成装置により、前記特徴情報毎に対応する学習情報を取得し、前記配送計画生成装置により、前記学習情報を用いて前記各道路に対応する特徴情報から前記物品の配送における前記各道路の良さを示す報酬を算出し、前記報酬を前記各道路における道路コストに変換し、前記配送計画生成装置により、前記道路ネットワーク情報および道路コストを用いて配送計画を生成し、前記学習情報は前記物品を配送する配送車両のうち一部の配送車両の走行履歴と前記一部の配送車両の走行履歴に対応する各道路の特徴情報とをもとに生成される、配送計画生成方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、複数の荷物の配送において、配送先までの道路の状況に応じて最適な荷物の配送計画の策定を効果的に支援し、それぞれの荷物を配送するドライバーの負担を相当に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る道路学習モデル生成装置の内部構成の一例を詳細に示すブロック図
【
図2】走行履歴DBに記憶されている、拠点Sから配送先D1までの配送ルートの走行履歴の一例を示す説明図
【
図3】実施の形態1に係る道路学習モデル生成装置における道路学習モデルの生成手順の一例を詳細に示すフローチャート
【
図4】実施の形態2に係る配送計画生成装置の内部構成の一例を詳細に示すブロック図
【
図5A】学習前におけるそれぞれの配送先間の道路の距離の一例を示すテーブル
【
図5B】学習後におけるそれぞれの配送先間の道路に対応する配送コストの一例を示すテーブル
【
図6】配送先D1から配送先D3までの、学習前におけるそれぞれの道路の距離と学習後におけるそれぞれの道路に対応する配送コストの一例を示す説明図
【
図7】実施の形態2に係る配送計画生成装置における配送計画の生成手順の一例を詳細に示すフローチャート
【
図8】
図7のステップS16の配送計画算出手順の一例を詳細に示すフローチャート
【
図9】
図8のステップS22で用いられる3種類の改善法の一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(各実施の形態の内容に至る経緯)
上述した特許文献1では、輸送決定項目を最適化するために用いられる輸送ルートは、船舶の停泊地とその次の停泊地との間において船舶が航行可能な物理的な距離など予め固定された情報であった。特許文献1に記載の方法を上述した複数の荷物を配送するときの配送計画の生成に適用した場合、変化の無い静的な道路情報(例えばマップ上の配送先間において配送車両が走行可能な物理的な距離)を用いて配送計画が策定されることになる。このため、例えば配送先間の距離が短い道路が存在したとしてもその道路が混雑して渋滞が発生していた場合、計画通りに荷物の配送が行われない可能性があるという課題があった。
【0014】
また、複数の荷物の配送において、熟練ドライバー(つまり、相当の経験を積んだベテランのドライバー)は複数の荷物を効率的に配送することに慣れていると考えられているが、特許文献1を含む従来技術では、このような熟練ドライバーが走行した道路の走行履歴を用いて荷物の配送計画の生成に反映することは考慮されていなかった。従って、荷物の配送において、配送先までの道路の状況に応じて最適な荷物の配送計画を策定することが難しかった。
【0015】
そこで、以下の実施の形態では、複数の荷物の配送において、配送先までの道路の状況に応じて最適な荷物の配送計画の策定を効果的に支援し、それぞれの荷物を配送するドライバーの負担を軽減する道路学習モデル生成装置、道路学習モデル生成方法、配送計画生成装置及び配送計画生成方法の例を説明する。
【0016】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る道路学習モデル生成装置、道路学習モデル生成方法、配送計画生成装置及び配送計画生成方法を具体的に開示した各実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0017】
本実施の形態に係る道路学習モデル生成装置及び配送計画生成装置は、同一の装置で構成されてもよいし、それぞれ別々の装置で構成されてよい。同一の装置(例えば、サーバ装置)で構成される場合、そのサーバ装置は、道路学習モデル生成方法を構成する各処理(各ステップ)を実行することで、道路学習モデル生成装置として具現化される。また、そのサーバ装置は、上述した道路学習モデル生成方法の実行とは別のタイミングで配送計画生成方法を構成する各処理(各ステップ)を実行することで、配送計画生成装置として具現化される。
【0018】
(実施の形態1:道路学習モデル生成装置)
図1は、実施の形態1に係る道路学習モデル生成装置5の内部構成の一例を詳細に示すブロック図である。道路学習モデル生成装置5は、例えばPC(Personal Computer)もしくはサーバ装置などのコンピュータを用いて構成され、主にプロセッサ7と、ストレージ8と、通信部17とを含む構成である。
【0019】
プロセッサ7は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を用いて構成される。プロセッサ7は、走行履歴読込部11と、走行履歴学習部12と、道路NW(NW:Network(ネットワーク)の略称)及び配送向け道路特徴量読込部13とを含む機能的構成を有する。言い換えると、これらの各部(つまり、走行履歴読込部11、走行履歴学習部12、道路NW及び配送向け道路特徴量読込部13)は、プロセッサ7がそれぞれの各部に対応するプログラム及びデータを読み込むことで、プロセッサ7により実行される機能的構成である。
【0020】
ストレージ8は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)を用いて構成される。ストレージ8は、配送向け道路学習モデル記憶部14、道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部15、及び走行履歴DB(DB:Database(データベース)の略称)16を有する。
【0021】
次に、
図1に示す道路学習モデル生成装置5を構成する各部について説明する。
【0022】
走行履歴読込部11は、走行履歴DB16に登録されている走行履歴のデータを読み込む。走行履歴のデータとは、例えば熟練ドライバー(つまり、相当の経験を積んだベテランのドライバー)の乗車した配送車両(例えばトラック)が目的の配送先まで荷物を配送した時に走行した1つ以上の道路の履歴である。具体的には、走行履歴のデータは、熟練ドライバーの乗車した配送車両が目的の配送先まで荷物を配送した時に走行した1つ以上の道路をそれぞれ識別する道路ID(道路識別情報の一例)の集合である。道路IDの詳細については後述する。
【0023】
道路NW及び配送向け道路特徴量読込部13は、道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部15に登録(保存)されている道路ネットワーク情報と、現在位置から配送先までの経路を構成するそれぞれの道路の特徴量(以下、「道路特徴量」という)のデータとを読み込む。道路ネットワーク(NW)情報とは、いわゆる道路地図情報(マップデータ)であり、道路地図上のいずれかの道路とそのいずれかの道路に接続される他の道路との接続関係を示した情報である。
【0024】
走行履歴学習部12は、走行履歴読込部11により読み込まれた走行履歴のデータと、道路NW及び配送向け道路特徴量読込部13により読み込まれた道路ネットワーク情報と道路特徴量のデータとを基に、道路ネットワーク情報の該当する地域(言い換えると、荷物の配送範囲)に対応する道路学習モデルを生成する。道路学習モデルは、例えば走行履歴学習部12を構成する人口知能(AI:Artificial Intelligentの略称)の逆強化学習により生成される。道路学習モデルは、道路IDに対応する道路の道路特徴量(道路の特徴量情報の一例)のデータを入力データとして入力し、その道路に対応する道路コスト(後述参照)を出力データとして出力する。なお、道路コストの一例は、逆強化学習において得られた出力(つまり、報酬)の逆数(つまり、1/(逆強化学習の報酬))に相当する。
【0025】
ここで、逆強化学習(Inverse Reinforcement Learning(IRL)とは、例えば熟練者の行った行動を基に、どのような行動がどれくらい良いかを推定することである。この良さを定量的に求めることで、熟練者によく似た行動を生成できる。例えば複数の荷物を配送するために配送員であるドライバーが宅配車両を運転する場合、どの配送ルートを走行するべきかは、熟練ドライバーと非熟練ドライバー(つまり、経験の浅い一般ドライバー)とでは異なると推察される。
【0026】
そこで、本実施の形態に係る道路学習モデル生成装置5は、熟練ドライバーが選択した配送ルート(言い換えると、走行履歴)の良さを逆強化学習で求めることで、適切な配送計画を決定づけるための指標(例えば、後述する道路コスト)を得ることができ、熟練ドライバーのようなスムーズな配送が可能な配送計画の準備を支援できる。従って、逆強化学習は、例えば熟練ドライバーの走行履歴を教師データとする機械学習によって行われる。なお、機械学習は、熟練ドライバーの走行中にリアルタイムで行われてもよいし、熟練ドライバーの走行後に行われてもよい。また、熟練ドライバーの走行履歴は、1人の熟練ドライバーの走行履歴だけでなく、複数人の熟練ドライバーの走行履歴を対象としてもよい。
【0027】
また、本実施の形態に係る道路学習モデル生成装置5の走行履歴学習部12は、AIによることなく機械学習によって道路学習モデルを構成してよい。この場合、後述する配送向け道路コスト算出部31は、その道路学習モデルを用いて道路コストを決定してもよい。例えば、本実施の形態に係る道路学習モデル生成装置5の走行履歴学習部12は、熟練ドライバーが良く走る道路の道路コストを下げるように、熟練ドライバーが実際に走行した道路の走行履歴を学習する。つまり、走行履歴学習部12は、道路特徴量の1つである道路距離(つまり、道路を構成する2つのノード間のエッジ距離)を基に、対象道路を通った回数が多いほど低くなる道路コストを、式(1)に従って、算出してもよい。
【0028】
道路コスト = 道路距離× (1-対象道路の延べ通行回数/道路全体の延べ通行回数) …… (1)
【0029】
ここで、対象道路の延べ通行回数及び道路全体の延べ通行回数は、走行履歴DB16に記憶された走行履歴から得られる。また、対象道路の延べ通行回数は、ベクトル値であり、配送車両がその同じ対象道路を通行する時の方向が異なれば別々のカウント値として扱い、同一の方向を通行する時のみ同一のカウント値として扱う。例えば、配送車両が同じ対象道路を北から南に向かって通行した回数と南から北に向かって通行した回数とは別々のカウント値となり、加算されて使用されない。
【0030】
配送向け道路学習モデル記憶部14(道路学習モデル記憶部の一例)は、走行履歴学習部12により生成された配送向け道路学習モデル(以下、「道路学習モデル」という)を、荷物の配送範囲と関連付けて記憶する。道路学習モデルは、荷物の配送範囲ごとに生成され、入力データとして入力された道路特徴量を道路コストに変換して出力する。道路学習モデルは、配送範囲として、例えば盆地等の高い地域、平地等の低い地域、あまり行かない地域等、地域の特性に合わせて複数生成される。なお、道路学習モデルが生成されていない荷物の配送範囲に対して配送計画が生成される場合には、その荷物の配送範囲における道路の道路特徴量と同等の道路特徴量が似ている、既に生成された他の配送範囲に対応した道路学習モデルが代用されてよい。
【0031】
ここで、道路IDについて簡単に説明する。
【0032】
道路IDは、道路の識別情報であり、同じ道路であっても向きによって異なる識別情報となる(
図2参照)。1つの道路は、その道路の両端に対応する2つのノードとその2つのノードの間のエッジとで構成される。エッジの距離(言い換えると、2つのノード間の距離)は、道路の距離に相当する。道路コストは、道路IDにより特定される道路の道路特徴量(道路の距離情報を含む)が道路学習モデルによって換算(変換)された値であり、その道路を配送車両が走行する時の荷物(物品)の配送効率を示す。従って、道路コストが高いとその道路を配送車両が走行する時の配送効率は良好でなく、一方で、道路コストが低いとその道路を配送車両が走行する時の配送効率は良好である。
【0033】
道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部15(道路情報記憶部の一例)は、道路地図を含む道路ネットワーク情報と、道路地図上のそれぞれの道路に対応する道路特徴量とを記憶する。道路特徴量は、それぞれの道路に対応して、例えば道路の距離情報と、道路の右左折情報と、道路の幅情報と、道路の中央分離帯情報と、道路の幹線道路横断情報と、道路の高低差情報と、道路の道路IDとを有する。以下の説明において、道路特徴量は、それぞれの道路(つまり、道路ID)に対応した、距離情報を有するとともに、更に、右左折情報と幅情報と中央分離帯情報と幹線道路横断情報と高低差情報とのうち少なくとも1つとを有すればよい。なお、道路特徴量は、それぞれの道路(つまり、道路ID)に対応した、距離情報と右左折情報と幅情報と中央分離帯情報と幹線道路横断情報と高低差情報とを全て有してもよい。
【0034】
距離情報は、道路IDにより特定される道路の距離(言い換えると、1つの道路がその道路の両端に対応する2つのノードとその2つのノードの間のエッジとで構成される場合に、そのエッジの距離のこと)を表す。従って、距離情報は、具体的には道路の距離を示す数値で表される。
【0035】
右左折情報は、道路IDにより特定される道路が右折あるいは左折しているかを表す情報であり、具体的には、右左折の有無及び回数を含む。一般に、右左折がある場合、車両の制限速度が低く設定され、走行時間が長くなると判断されるので、道路コストが高くなる。逆に、右左折が無い直線道路の場合、車両の制限速度が低く設定されないことがあり、走行時間が短くなると判断されるので、道路コストが低くなる。なお、右左折情報は、直前の道路IDから対象の道路IDに右左折したかどうかを情報として持ってもよい。
【0036】
幅情報は、道路IDにより特定される道路の幅を表す情報であり、具体的には、数値で表される。道路の幅は、道路の幅方向における端から端までの距離でもよいし、車線ごとの幅方向の距離でもよい。一般に、道路の幅が狭い場合、走行速度が遅くなると判断されるので、道路コストが高くなる。逆に、道路の幅が広い場合、走行速度が速くなると判断されるので、道路コストが低くなる。
【0037】
中央分離帯情報は、道路IDにより特定される道路における中央分離帯の有無を表す。一般に、中央分離帯があると、車の流れが滑らかなり、走行速度が速くなると判断されるので、道路コストが低くなる。逆に、中央分離帯がないと、対向車とのすれ違いにより走行速度が遅くなると判断されるので、道路コストが高くなる。
【0038】
幹線道路横断情報は、道路IDにより特定される道路に対して幹線道路が横断(クロス)しているか否か、具体的には、幹線道路の横断の有無を表す。一般に、幹線道路が横断していると、交通量が多いと判断されるので、道路コストが高くなる。逆に、幹線道路が横断していないと、交通量が少ないと判断されるので、道路コストが低くなる。なお、幹線道路横断情報は、道路IDの終端ノードが幹線道路に接続されているかどうかを情報として持ってもよい。
【0039】
高低差情報は、道路IDにより特定される道路における上り坂や下り坂等の高低差の有無を表す。一般に、高低差があると、渋滞が起こり易くなると判断されるので、道路コストが高くなる。逆に、高低差がないと、車の流れが滑らかになり、道路コストが低くなる。
【0040】
なお、上述した道路特徴量は、あくまで一例であり、これらの他、道路に設置された信号機の数を表す信号機情報や、未舗装の路面等を表す路面情報等の情報を道路特徴量としてもよい。
【0041】
また、上述した道路特徴量に基づく判断は、一般的な判断の一例であり、実際に走行してみないと分からない。実際の走行によって上記判断とは異なる判断となる場合も、十分に想定される。本実施の形態では、走行履歴学習部12は、AI(人工知能)により道路学習モデルを生成する。従って、教師データとして熟練ドライバーが走行した走行履歴のデータに基づいて走行履歴学習部12の学習によって得られた道路学習モデルは、道路を通行した配送車両の実態を反映して道路特徴量を適正な道路コストに変換可能である。
【0042】
走行履歴DB16(走行履歴記憶部の一例)は、熟練ドライバーが走行した配送ルートの走行履歴を保存する。熟練ドライバーの配送ルートは、例えば車載器(GPS受信器、カーナビゲーションシステム、デジタルタコグラフ等)によってメモリカードに記憶される。走行後、熟練ドライバーがこのメモリカードに記憶された配送ルートのデータを道路学習モデル生成装置5に読み込ませて走行履歴DB16に保存してもよい。また、道路学習モデル生成装置5は、熟練ドライバーが乗車する配送車両(トラック等)に搭載されたGPS受信機と通信を行い、配送車両の現在位置を逐次取得し、走行中(リアルタイム)に配送ルートを走行履歴DB16に保存してもよい。
【0043】
ここで、熟練ドライバーが走行した配送ルートの走行履歴について説明する。
【0044】
図2は、走行履歴DB16に記憶されている、拠点Sから配送先D1までの配送ルートの走行履歴の一例を示す説明図である。拠点Sから配送先D1に配送車両が向かう場合、最短距離の配送ルートが優先されると、道路ID「1000」,「1500」,「3000」の3つの直線の道路が選ばれる。しかし、この最短距離の配送ルートでは、例えば道路ID「1500」の道路が時間帯によって渋滞が発生しやすい場合には、ドライバーがよりスムーズに荷物の配送を行う上では最適な配送ルートとはならない。熟練ドライバーではない一般ドライバーは、距離優先の3つの道路(上述参照)を選択して走行する傾向があった。
【0045】
しかしながら、熟練ドライバーは、拠点Sから配送先D1に向かう場合、拠点Sから配送先D1までの道路の特性(言い換えると、特徴量)を熟知しているので、道路ID「1000」,「1100」,「2000」,「2100」,「3000」の5つの道路を使って迂回した配送ルートを選択する。この迂回した配送ルートは、距離としては最短距離と比べて長くなるが、例えば道路ID「1500」の道路が渋滞によって混雑することを熟知している熟練ドライバーにとっては、よりスムーズに荷物の配送を行う上で最適な配送ルートである。従って、走行履歴DB16には、拠点S-配送先D1間の走行履歴のデータとして、熟練ドライバーが選択した迂回した配送ルートに含まれる全ての道路の道路IDの集合(具体的には、CSV形式のデータ「1000,1100,2000,2100,3000」)が記憶される。
【0046】
なお、同じ道路であっても、配送車両が走行した道路の向きが順方向と逆方向とで異なる場合、前述したように、道路IDは異なる。例えば、上述した迂回した配送ルートにおいて、配送先D1から拠点Sに向かう場合、その配送ルートを構成する道路IDは、「3001,2101,2001,1101,1001」となり、同じ迂回した配送ルートであっても、拠点Sから配送先D1に向かう配送ルートを構成する道路ID(具体的には、「1000,1100,2000,2100,3000」)とは異なる。
【0047】
通信部17は、例えば無線LAN(Local Area Network)を介してクライアント端末(図示略)と接続される。通信部17とクライアント端末との通信は、無線LANに限らず、有線LANで接続されてもよいし、シリアル通信/パラレル通信等のインターフェースを介して直接に接続されてもよい。通信部17(取得部の一例)は、道路学習モデル生成装置5と接続されるクライアント端末との間の通信を司る通信インターフェースとして機能し、例えばクライアント端末からのモデル生成要求(つまり、荷物の配送範囲に対応した道路学習モデルの生成要求)を受信する。
【0048】
次に、本実施の形態に係る道路学習モデル生成装置5の動作を説明する。
【0049】
図3は、実施の形態1に係る道路学習モデル生成装置5における道路学習モデルの生成手順の一例を詳細に示すフローチャートである。
【0050】
図3において、プロセッサ7は、クライアント端末から送信された、ユーザの操作によって入力された荷物の配送範囲に関する情報を受信して取得する(S1)。道路NW及び配送向け道路特徴量読込部13は、道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部15にアクセスし、ステップS1において取得された荷物の配送範囲に対応する道路ネットワーク情報を特定して読み込む(S2)。
【0051】
走行履歴読込部11は、ステップS2において特定された道路ネットワーク情報について、熟練ドライバーの1台分の走行履歴を走行履歴DB16から読み出して取得する(S3)。走行履歴読込部11は、取得された1台の走行履歴(つまり、その1台の配送車両が走行した配送ルートを構成する全ての道路の道路IDの集合)を走行履歴学習部12に渡す(S4)。走行履歴読込部11は、ステップS2において特定された道路ネットワーク情報について、熟練ドライバーの全台数分の走行履歴を走行履歴DB16から取得して走行履歴学習部12に渡したか否かを判別する(S5)。全台数分の走行履歴が渡されていない場合には(S5、NO)、道路学習モデル生成装置5の処理ステップS3の処理に戻る。
【0052】
一方、走行履歴読込部11が全台数分の走行履歴を取得して走行履歴学習部12に渡すと(S5、YES)、道路NW及び配送向け道路特徴量読込部13は、道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部15にアクセスし、ステップS1において取得された荷物の配送範囲を構成する個々の道路の道路特徴量を特定して読み込む(S6)。走行履歴学習部12は、ステップS6において道路NW及び配送向け道路特徴量読込部13によって読み込まれた道路特徴量と、ステップS4において走行履歴読込部11から渡された全台数分の走行履歴とを基にして、ステップS1において取得された荷物の配送範囲において熟練ドライバーが過去に走行した配送ルートの走行履歴を学習する(S7)。
【0053】
走行履歴学習部12は、ステップS7における学習結果として、ステップS1において取得された荷物の配送範囲に含まれる1つ以上の道路の走行中の配送効率を示す道路コストをそれぞれの道路ごとに演算するための道路学習モデルを生成する。走行履歴学習部12は、生成された道路学習モデルを、ステップS1において取得された荷物の配送範囲と関連付けて配送向け道路学習モデル記憶部14に記憶する(S8)。ステップS8の後、道路学習モデル生成装置5の処理は終了する。
【0054】
以上により、実施の形態1の道路学習モデル生成装置5では、走行履歴DB16は、熟練ドライバーが運転する配送車両における荷物(物品)の配送中の道路の走行履歴を記憶する。道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部15は、道路ネットワーク情報と道路特徴量(道路に関する情報の一例)とを記憶する。通信部17は、荷物の配送範囲に関する情報を取得する。走行履歴学習部12は、荷物の配送範囲に対応した、配送車両における荷物の配送中の道路の走行履歴と道路ネットワーク情報と道路特徴量とを基に、荷物の配送範囲に含まれる1つ以上の道路の走行中の配送効率を示す道路コストを1つ以上の道路ごとに演算するための道路学習モデルを生成する。配送向け道路学習モデル記憶部14は、生成された道路学習モデルを、荷物の配送範囲に関する情報と対応付けて保存する。
【0055】
これにより、道路学習モデル生成装置5は、熟練ドライバーや一般ドライバーの種別に拘わらず、ドライバーが複数の荷物を配送する時に配送効率の高い道路コストを演算可能な道路学習モデルを効率的に生成できる。また、道路学習モデル生成装置5は、熟練ドライバーが運転する配送車両の走行履歴を用いることで、道路学習モデルを用いた道路コストの演算精度を向上できるので、この道路学習モデルを用いることで、道路の実態の状況に合致する最適な配送計画の策定を支援できる。
【0056】
また、道路に関する情報は、道路NW(ネットワーク)情報と、道路の距離の情報を含む特徴量情報とを含む。これにより、道路学習モデル生成装置5は、道路の実態の状況を反映させた道路コストを演算可能な道路学習モデルを生成できる。
【0057】
また、走行履歴は、配送車両が荷物を配送した時に走行した1つ以上の道路をそれぞれ識別する道路IDの集合である。これにより、道路学習モデル生成装置5は、熟練ドライバーが過去に荷物の配送中に走行した配送ルートを示すそれぞれの道路の走行履歴を正確に取得できる。
【0058】
また、道路特徴量は、道路の右左折情報を含む。これにより、道路学習モデル生成装置5は、右左折の有無の違いに基づいた道路の実態の混雑状況又は空き状況を的確に反映させた道路コストを演算可能な道路学習モデルを生成できる。特に、右左折情報は、道路が右折あるいは左折しているかを表す情報であり、例えば右左折の有無及び回数を含む。一般に、右左折がある場合、車両の制限速度が低く設定され、走行時間が長くなると判断されるので、道路コストが高くなる。逆に、右左折が無い場合、車両の制限速度が低く設定され、走行時間が短くなると判断されるので、道路コストが低くなる。
【0059】
また、道路特徴量は、道路の幅情報を含む。これにより、道路学習モデル生成装置5は、道路の幅情報の違いに基づいた道路の実態の混雑状況又は空き状況を的確に反映させた道路コストを演算可能な道路学習モデルを生成できる。特に、幅情報は、道路の幅を表す情報であり、数値で表される。一般に、道路の幅が狭い場合、走行速度が遅くなると判断されるので、道路コストが高くなる。逆に、道路の幅が広い場合、走行速度が速くなると判断されるので、道路コストが低くなる。
【0060】
また、道路特徴量は、道路の中央分離帯情報を含む。これにより、道路学習モデル生成装置5は、道路の中央分離帯の有無の違いに基づいた道路の実態の混雑状況又は空き状況を的確に反映させた道路コストを演算可能な道路学習モデルを生成できる。特に、中央分離帯情報は、中央分離帯の有無を表す。一般に、中央分離帯があると、車の流れが滑らかなり、走行速度が速くなると判断されるので、道路コストが低くなる。逆に、中央分離帯がないと、対向車とすれ違いにより走行速度が遅くなると判断されるので、道路コストが高くなる。
【0061】
また、道路特徴量は、道路の幹線道路横断情報を含む。これにより、道路学習モデル生成装置5は、道路が幹線道路を横断しているかどうかの違いに基づいた道路の実態の混雑状況又は空き状況を的確に反映させた道路コストを演算可能な道路学習モデルを生成できる。特に、幹線道路横断情報は、幹線道路が横断しているか否かの有無を表す。一般に、幹線道路が横断していると、交通量が多いと判断されるので、道路コストが高くなる。逆に、幹線道路が横断していないと、交通量が少ないと判断されるので、道路コストが低くなる。
【0062】
また、道路特徴量は、道路の高低差情報を含む。これにより、道路学習モデル生成装置5は、道路の高低差の有無の違いに基づいた道路の実態の混雑状況又は空き状況を的確に反映させた道路コストを演算可能な道路学習モデルを生成できる。特に、高低差情報は、上り坂や下り坂等の高低差の有無もしくは高低差の程度(例えば数値で表される高さ情報)を表す。一般に、高低差があると、渋滞が起こり易くなると判断されるので、道路コストが高くなる。逆に、高低差がないと、車の流れが滑らかになり、道路コストが低くなる。
【0063】
また、道路学習モデル生成装置5は、自装置(つまり、道路学習モデル生成装置5)に接続されるクライアント端末(図示略)からの、ユーザの操作に基づいた荷物の配送範囲に関する情報を含むモデル生成要求に応じて、道路学習モデルを走行履歴学習部12において生成する。これにより、道路学習モデル生成装置5は、ユーザの操作をトリガとしたクライアント端末からのモデル生成要求に従って、道路学習モデルを生成できる。従って、ユーザは、新たな配送範囲(例えば未学習の配送範囲)もしくは既に一度学習済みの配送範囲)に対して、道路学習モデルの生成もしくは更新を容易に指示可能であり、道路学習モデルの生成もしくは更新を行う場合のユーザの使い勝手が向上する。
【0064】
(実施の形態2:配送計画生成装置)
次に、実施の形態1に係る道路学習モデル生成装置5によって生成された道路学習モデルを用いて、複数の荷物を配送する時の配送計画を策定(生成)する配送計画生成装置及び配送計画生成方法について説明する。
【0065】
実施の形態2において、配送計画とは、所定の期間内(例えば当日である1日の間)に、少なくとも1台の配送車両(例えばトラック)を用いて、拠点から複数の配送先に荷物(物品)を配送する際、できるだけ道路コストに基づく配送コスト(後述参照)を下げるように決定された配送ルート(つまり、複数ある配送先の走行順序)である。
【0066】
図4は、実施の形態2に係る配送計画生成装置30の内部構成の一例を詳細に示すブロック図である。配送計画生成装置30は、道路学習モデル生成装置5と同様に、例えばPCもしくはサーバ装置などのコンピュータを用いて構成され、主にプロセッサ37と、ストレージ38と、通信部47とを含む構成である。前述したように、配送計画生成装置30は、道路学習モデル生成装置5と同一のPCもしくはサーバ装置で構成されてもよいし、別々のPCもしくはサーバ装置としても構成されてよい。同一のPCもしくはサーバ装置で構成される場合、PCもしくはサーバ装置が道路学習モデル生成装置5として機能するタイミングと、配送計画生成装置30として機能するタイミングとは異なる。
【0067】
プロセッサ37は、例えばCPU、MPU、DSP又はFPGAを用いて構成される。プロセッサ37は、配送向け道路コスト算出部31と、配送コスト生成部32と、道路NW及び配送向け道路特徴量読込部33と、配送計画算出部34とを含む機能的構成を有する。言い換えると、これらの各部(つまり、配送向け道路コスト算出部31、配送コスト生成部32、道路NW及び配送向け道路特徴量読込部33、配送計画算出部34)は、プロセッサ37がそれぞれの各部に対応するプログラム及びデータを読み込むことで、プロセッサ37により実行される機能的構成である。
【0068】
ストレージ38は、例えばフラッシュメモリ、HDD又はSSDを用いて構成される。ストレージ38は、配送向け道路学習モデル記憶部44、道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部45、及び配送向け道路NW記憶部46を有する。
【0069】
次に、
図4に示す配送計画生成装置30を構成する各部について説明する。なお、配送計画生成装置30の各部において、道路学習モデル生成装置5の各部と同一の構成については、符号の対応関係を説明した上で、重複する説明は簡略化又は省略する。
【0070】
配送向け道路学習モデル記憶部44(道路学習モデル記憶部の一例)は、
図1の配送向け道路学習モデル記憶部14と同一の構成であり、道路学習モデル生成装置5により生成された道路学習モデルを、その生成の対象となった荷物の配送範囲に関する情報と関連付けて記憶する。
【0071】
道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部45(道路情報記憶部の一例)は、
図1の道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部と同一の構成であり、道路地図を含む道路ネットワーク情報と、道路地図上のそれぞれの道路に対応する道路特徴量とを記憶する。
【0072】
配送向け道路NW記憶部46は、配送向け道路学習モデル記憶部44に記憶された道路学習モデルを用いて配送向け道路コスト算出部31により算出された結果(つまり、道路IDにより特定される道路に対応する道路コスト)を道路IDと対応付けて記憶する。
【0073】
道路NW及び配送向け道路特徴量読込部33は、
図1の道路NW及び配送向け道路特徴量読込部13と同一の構成であり、道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部45に登録(保存)されている道路ネットワーク情報と、現在位置から配送先までの経路を構成するそれぞれの道路の道路特徴量とを読み込む。
【0074】
なお、本実施の形態に係る配送計画生成装置30は、ユーザの操作に基づくクライアント端末からの配送計画生成要求(後述参照)に基づいて、走行履歴学習部12による学習が実行されていない対象の地域(いわゆる、未学習の地域)の道路ネットワーク情報を用いる場合がある。道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部45には、上述した未学習の地域の道路ネットワーク情報と、その未学習の地域の道路に対応する道路特徴量とが記憶される。従って、道路NW及び配送向け道路特徴量読込部33は、未学習の地域における道路の道路特徴量(道路IDを除く)が学習済みの地域における道路の道路特徴量(道路IDを除く)と似ている場合、未学習の別地域の道路NWとして学習済みの地域の道路NWを読み込んでもよい。これにより、配送計画生成装置30は、未学習の別地域においても、熟練ドライバーが配送した学習済みの地域と同様の、配送計画を策定することができる。
【0075】
配送向け道路コスト算出部31(道路コスト算出部の一例)は、道路NW及び配送向け道路特徴量読込部33によって読み込まれた道路ネットワーク情報及び道路特徴量と、配送向け道路学習モデル記憶部44に記憶された道路学習モデルとに基づき、1つ以上の道路をそれぞれ識別する道路IDごとの道路コストを算出する。配送向け道路コスト算出部31は、道路IDごとの道路コストの算出結果を該当する道路IDと対応付けて配送向け道路NW記憶部46に保存する。
【0076】
配送コスト生成部32(配送コスト算出部の一例)は、配送向け道路NW記憶部46に記憶された道路IDに対応する道路コストのデータベースに基づき、例えば現在位置(つまり、起点)から次の配送先(つまり、目的地)までの配送コストを生成する。ここで、配送コストとは、1つ以上の道路が連結して成り立つ配送ルート(例えばある配送先と次の配送先とを繋いだ1つ以上の道路からなる配送ルート)を配送車両が走行する時の荷物の配送効率を示し、具体的には、その配送ルートを構成する道路ごとの道路コストの加算値である。例えば、配送コストは、配送ルートが「道路ID(=101)の道路 + 道路ID(=102)の道路 + 道路ID(=103)の道路」で成り立っており、それぞれの道路コストが10,15,20である場合、配送コストは45(=10+15+20)となる。
【0077】
図5Aは、学習前におけるそれぞれの配送先間の道路の距離の一例を示すテーブルである。
図5Bは、学習後におけるそれぞれの配送先間の道路に対応する配送コストの一例を示すテーブルである。
図5A及び
図5Bの説明において、拠点S並びに配送先D1,D2,D3,D4,D5,D6.D7,D8はいずれもノードを表す。また、縦方向の拠点S、配送先D1~D8は起点を表し、横方向の拠点S、配送先D1~D8は目的地を表す。学習前におけるそれぞれの配送先間の道路の距離を表すテーブルでは、配送先D1から配送先D3までの距離は「25」で表される。一方、走行履歴学習部12における学習後では、配送先D1から配送先D3までの配送コストは、「5」で表される。本実施の形態に係る配送計画生成装置30は、
図5Aのように現在位置から次の配送先までの道路の距離ではなく、その道路に対応する配送コストに基づいて、配送計画を生成する。このため、
図5Bに示す配送コスト(つまり、1つの道路に対応する道路コスト、もしくは複数の道路に対応する道路コストの加算値)が低い配送ルートが選択される。なお、
図5A,
図5Bの説明において、その他の2点間の配送コスト(距離)の値は同じであり、テーブル中に表記される「*」は任意の値であることを表す。
【0078】
図6は、配送先D1から配送先D3までの、学習前におけるそれぞれの道路の距離と学習後におけるそれぞれの道路に対応する配送コストの一例を示す説明図である。配送先D1から配送先D3まで走行する場合、学習前において最短距離である直線の配送ルートR1を走行すると、距離は「8+8+9」となり、「25」である。一方、熟練ドライバーが迂回した配送ルートR2の場合、距離の合計は「8+2+8+3+9」となり、「30」である。従って、学習前では、最短距離の配送ルートR1で走行した方が、迂回した配送ルートR2と比べ、距離が短いため、配送ルートR1を用いた走行の方が配送効率の観点で好ましいと一見考えられる。
【0079】
しかし、走行履歴学習部12による学習後、各道路IDの道路コストは、それぞれの道路の実態が反映された指標を指すために、静的な(つまり、予め固定された)距離の値とは異なり、その実態が反映された結果として動的に(つまり、タイミングによって)変化している。従って、配送先D1から配送先D3まで走行する場合、最短距離の配送ルートR1で走行すると、配送コストは「1+8+1」となり、「10」である。一方、熟練ドライバーが迂回した配送ルートR2の場合、配送コストの合計は「1+1+1+1+1」となり、「5」である。従って、学習後では、熟練ドライバーが迂回した配送ルートR2で走行した方が、最短距離の配送ルートR1と比べ、配送コストが低くなる。このように、配送ルートを単純な距離に基づいて選択するのではなく、配送コストに基づいて選択することで、ドライバーの配送効率を軽減可能な配送計画の生成(策定)が可能となる。
【0080】
配送計画算出部34は、配送コスト生成部32によって生成された、配送範囲における起点から目的地までの配送コストの算出結果に基づき、配送計画を算出する。
【0081】
なお、道路学習モデル生成装置5及び配送計画生成装置30が同一のPCもしくはサーバ装置で構成される場合、道路NW及び配送向け道路特徴量読込部13,33、配送向け道路学習モデル記憶部14,44、および道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部15,45は、それぞれ共用されてよい。
【0082】
通信部47は、例えば無線LAN(Local Area Network)を介してクライアント端末(図示略)と接続される。通信部47とクライアント端末との通信は、無線LANに限らず、有線LANで接続されてもよいし、シリアル通信/パラレル通信等のインターフェースを介して直接に接続されてもよい。通信部47(取得部の一例)は、配送計画生成装置30と接続されるクライアント端末との間の通信を司る通信インターフェースとして機能し、例えばクライアント端末からの配送計画生成要求(つまり、荷物の配送範囲に対応した配送計画の生成要求)を受信し、配送計画算出部34の出力をクライアント端末に対して応答する。なお、道路学習モデル生成装置5及び配送計画生成装置30が同一のPCもしくはサーバ装置で構成される場合、通信部47は、通信部17と共用されてよい。
【0083】
次に、本実施の形態に係る配送計画生成装置30の動作を説明する。
【0084】
この動作は、道路学習モデル生成装置5と配送計画生成装置30とが同一のPCもしくはサーバ装置で構成される場合、異なるタイミングで行われる。また、配送向け道路学習モデル記憶部44には、走行履歴学習部12によって学習済みの(つまり、走行履歴学習部12によって生成された)道路学習モデルが記憶される。
【0085】
図7は、実施の形態2に係る配送計画生成装置30における配送計画の生成手順の一例を詳細に示すフローチャートである。
【0086】
図7において、プロセッサ37は、クライアント端末から送信された、ユーザの操作によって入力された荷物の配送範囲に関する情報を受信して入力する(S11)。道路NW及び配送向け道路特徴量読込部33は、道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部45にアクセスし、ステップS11において取得された荷物の配送範囲に対応する道路ネットワーク情報及び道路特徴量を読み込む(S12)。
【0087】
配送向け道路コスト算出部31は、配送向け道路学習モデル記憶部44にアクセスし、ステップS12において道路NW及び配送向け道路特徴量読込部33によって読み込まれた道路ネットワーク情報に対応する学習済の道路学習モデルを取得する。配送向け道路コスト算出部31は、取得された学習済の道路学習モデルと、ステップS12において道路NW及び配送向け道路特徴量読込部33によって読み込まれた道路特徴量とを用いて、ステップS11において入力された荷物の配送範囲に含まれる1つ以上のそれぞれの道路に対応した道路コストをそれぞれ算出し、その算出結果を道路の道路IDと対応付けて配送向け道路NW記憶部46に記憶する(S13)。
【0088】
配送コスト生成部32は、ステップS12において読み込まれた荷物の配送範囲に対応する道路ネットワーク情報について、配送ルートを決定したい2つの配送先(拠点を含む)のノードを順次特定する(S14)。配送コスト生成部32は、ダイクストラ法を用いて、順次特定された2つの配送先のノードを持つ配送ルートを決定するとともに、その決定された配送ルートに対応する配送コストを算出する(S15)。
【0089】
配送計画算出部34は、ステップS15において決定された配送コストを用いて、配送計画を算出する(S16)。この配送計画の算出では、配送コストを基に、道路ネットワーク情報における配送ルートが決定される。なお、配送計画の算出の詳細については後述する。ステップS16の後、配送計画生成装置30の処理は終了する。
【0090】
図8は、
図7のステップS16の配送計画算出手順の一例を詳細に示すフローチャートである。
【0091】
図8において、配送計画算出部34は、ステップS15において決定された配送コストを用いて、配送計画の初期解を決定する(S21)。ここで、配送計画の初期解は、上述したステップS15で決定された配送ルート及び配送コストを含む配送計画である。なお、初期解は、上述したステップS15で決定された配送ルート及び配送コストを基にして熟練ドライバーが手動で策定した配送計画であってもよい。
【0092】
配送計画算出部34は、現時点の解である配送計画を基に、例えば
図9に示す3種類の改善法を全ての配送先の組合せに対して順番に行う(S22)。ここで、現時点の解は、ステップS21で決定された初期解、または、後述するステップS24で得られる改善できた解である。
【0093】
図9は、
図8のステップS22で用いられる3種類の改善法の一例を示す説明図である。3種類の改善法は、例えば置換、交換、移管である。置換は、配送先の順序を入れ替えることを表す。交換は、複数の配送ルートの間で配送先を入れ替えることを表す。移管は、別の配送ルートに配送先を移すことを表す。置換、交換、移管の具体例を下記(A),(B),(C)に示す。
【0094】
(A)置換
学習前の配送計画では、置換前においては、1台の配送車両に対し、拠点S → 配送先D1 → D2 → D3 → D4の配送順で配送が行われる。この学習前かつ置換前の配送計画では、配送コスト(言い換えると、距離)は、同じ1台目の配送車両に対応した「10+10+10=30」である。
【0095】
一方、学習前かつ置換後においては、同じ1台の配送車両に対し、拠点S → 配送先D1 → D3 → D2 → D4の配送順で配送が行われる。この学習前かつ置換後の配送計画では、配送コストは、同じ1台の配送車両に対応した「15+10+15=40」である。従って、学習前の時点で置換すると、配送コストが上がり、配送計画は改善されない。なお、学習前とは、学習を始める前であってもよいし、学習し始めた直後であってもよい。このことは、下記(B),(C)においても同様である。
【0096】
また、学習後の配送計画では、置換前においては、1台の配送車両に対し、拠点S → 配送先D1 → D2 → D3 → D4の配送順で配送が行われる。この学習後かつ置換前の配送計画では、配送コスト(言い換えると、距離)は、同じ1台目の配送車両に対応した「10+10+10=30」と学習前と同じである。
【0097】
一方、学習後かつ置換後においては、同じ1台の配送車両に対し、拠点S → 配送先D1 → D3 → D2 → D4の配送順で配送が行われる。この学習後かつ置換後の配送計画では、配送コストは、同じ1台目の配送車両に対応した「5+10+5=20」である。従って、学習後の時点で置換すると、配送コストが下がり、配送計画は改善される。なお、学習後とは、相当量の学習済みであることを表す。このことは、下記(B),(C)においても同様である。
【0098】
(B)交換
学習前の配送計画では、交換前においては、1台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D1 → D2 → D3 → D4の配送順の配送と、2台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D5 → D6 → D7 → D8の配送順の配送とが行われる。この学習前かつ交換前の配送計画では、配送コスト(言い換えると、距離)は、同じ1台目の配送車両に対応した「10+10+0=20」と同じ2台目の配送車両に対応した「10+10+0=20」とを加算して「40」である。
【0099】
一方、学習前かつ交換後においては、同じ1台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D1 → D6 → D3 → D4の配送順の配送と、同じ2台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D5 → D2 → D7 → D8の配送順の配送とが行われる。この学習前かつ交換後の配送計画では、配送コスト(言い換えると、距離)は、1台目の配送車両に対応した「15+10+0=25」と2台目の配送車両に対応した「10+10+0=20」とを加算して「45」である。従って、学習前の時点で交換すると、配送コストが総合で上がり、配送計画は改善されない。
【0100】
また、学習後の配送計画では、交換前においては、1台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D1 → D2 → D3 → D4の配送順で配送と、2台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D5 → D6 → D7 → D8の配送順の配送とが行われる。この学習後かつ交換前の配送計画では、配送コストは、1台目の配送車両に対応した「10+10+0=20」と2台目の配送車両に対応した「10+10+0=20」とを加算して「40」であり、学習前と同じである。
【0101】
一方、学習後かつ交換後においては、同じ1台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D1 → D6 → D3 → D4の配送順で配送と、同じ2台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D5 → D2 → D7 → D8の配送順の配送とが行われる。この学習後かつ交換後の配送計画では、配送コストは、同じ1台目の配送車両に対応した「5+10+0=15」と同じ2台目の配送車両に対応した「10+10+0=20」とを加算して「35」である。従って、学習後の時点で交換すると、学習後の配送コストが総合で下がり、配送計画は改善される。
【0102】
(C)移管
学習前の配送計画では、移管前においては、交換の場合と同様、1台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D1 → D2 → D3 → D4の配送順の配送と、2台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D5 → D6 → D7 → D8の配送順の配送とが行われる。この学習前かつ移管前の配送計画では、交換の場合と同様、配送コスト(言い換えると、距離)は、1台目の配送車両に対応した「10+10+0=20」と2台目の配送車両に対応した「10+10+0=20」とを加算して「40」である。
【0103】
一方、学習前かつ移管後においては、同じ1台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D1 → D3 → D4の配送順の配送と、同じ2台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D5 → D6 → D2 → D7 → D8の配送順の配送とが行われる。この学習前かつ移管後の配送計画では、配送コスト(言い換えると、距離)は、1台目の配送車両に対応した「25+0=25」と2台目の配送車両に対応した「10+10+10+0=30」とを加算して「55」である。従って、学習前の時点で移管すると、配送コストが総合で上がり、配送計画は改善されない。
【0104】
また、学習後の配送計画では、移管前においては、1台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D1 → D2 → D3 → D4の配送順で配送と、2台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D5 → D6 → D7 → D8の配送順の配送とが行われる。この学習後かつ移管前の配送計画では、配送コストは、1台目の配送車両に対応した「10+10+0=20」と2台目の配送車両に対応した「10+10+0=20」とを加算して「40」であり、学習前と同じである。
【0105】
一方、学習後かつ移管後においては、学習前の場合と同様、同じ1台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D1 → D3→ D4の配送順で配送と、同じ2台目の配送車両に対し、拠点S → 配送先D5 → D6 → D2 → D7 → D8の配送順の配送とが行われる。この学習後かつ移管後の配送計画では、配送コストは、同じ1台目の配送車両に対応した「5+0=5」と同じ2台目の配送車両に対応した「10+10+10+0=30」とを加算して「35」である。従って、学習後の時点で移管すると、学習後の配送コストが総合で下がり、配送計画は改善される。
【0106】
配送計画算出部34は、3種類の改善法を全ての配送先の組合せに対して行った結果、配送計画を改善することができたか否かを判別する(S23)。配送計画の改善は、配送コストを下げることに相当する。配送計画を改善できた場合、配送計画算出部34は、改善できた配送計画を現時点の解とする(S24)。配送計画算出部34の処理はステップS22に戻る。
【0107】
一方、ステップS23で配送計画を改善できなかった場合(S23、NO)、配送計画算出部34は、現時点の解を最終の配送計画として、通信部47からクライアント端末に応答(出力)する(S25)。クライアント端末は、モニタ(図示せず)に最終の配送計画を表示する。モニタには、例えば
図9に示す学習後の配送計画(配送コスト及び配送ルートを含む)が表示される。なお、本実施の形態では、3種類の改善法を用いて、配送計画の改善を検討したが、3種類の改善法を用いることなく、配送計画を算出してもよい。
【0108】
以上により、実施の形態2に係る配送計画生成装置30では、配送向け道路学習モデル記憶部44は、1つ以上の道路の走行中の配送効率を示す道路コストを1つ以上の道路ごとに演算するための道路学習モデルを、荷物(物品)の配送範囲に関する情報と対応付けて記憶する。道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部45は、道路ネットワーク情報と道路特徴量(道路に関する情報の一例)とを記憶する。配送向け道路コスト算出部31は、荷物の配送範囲に対応した、道路学習モデルと道路特徴量とを基に、荷物の配送範囲に含まれる1つ以上の道路ごとに道路コストを算出する。配送計画算出部34は、算出された道路コストを用いて、荷物の配送範囲内を走行する時の配送計画を算出する。
【0109】
これにより、配送計画生成装置30は、ドライバーが複数の荷物を配送する時に配送効率の高い道路コストを演算可能な道路学習モデルを用いて、配送先までの道路に対応する配送コストを演算できるため、道路の実態の状況に合致する最適な配送計画を策定できる。
【0110】
また、配送コスト生成部32は、算出された道路コストを用いて、荷物の配送範囲に含まれる複数の配送先に荷物を配送するための1つ以上の配送ルートごとの配送コストを算出する。配送計画算出部34は、算出された配送コストを基に、配送計画を算出する。これにより、配送計画生成装置30は、配送コストを下げる(言い換えると、ドライバーの配送時の配送効率を上げる)ように配送計画を策定でき、スムーズな荷物の配送時の配送効率を高めることが可能な配送計画を生成できる。
【0111】
また、通信部47(出力部の一例)は、算出された配送計画をクライアント端末のモニタに出力する。これにより、ユーザは、配送計画生成装置30により生成された配送計画を視覚的かつ直感的に確認できる。
【0112】
また、配送計画生成装置30は、自装置(つまり、配送計画生成装置30)に接続されるクライアント端末(図示略)からの、ユーザの操作に基づいた荷物の配送範囲に関する情報を含む配送計画生成要求に応じて、配送計画を算出でき、算出された配送計画をクライアント端末に応答する。これにより、ユーザは、クライアント端末を介して配送計画生成装置30に対して配送計画の生成を要求でき、クライアント端末のモニタ(図示略)を閲覧することで配送計画を把握でき、使い勝手が向上する。
【0113】
以上、図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0114】
例えば、上述した実施の形態2に係る配送計画生成装置30は、実施の形態1に係る道路学習モデル生成装置5の構成をさらに含む構成としてもよい。これにより、配送計画生成装置30は、配送計画生成装置30の構成による効果だけでなく、道路学習モデル生成装置5の構成による効果も得られる。例えば、配送計画生成装置30は、ドライバーが複数の荷物を配送する時に、道路の実態の状況に合致する最適な配送計画を策定できるだけでなく、熟練ドライバーや一般ドライバーの種別に拘わらず、ドライバーが複数の荷物を配送する時に配送効率の高い道路コストを演算可能な道路学習モデルを効率的に生成できる。
【0115】
例えば、上述した実施の形態では、同じ配送範囲であっても、配送先によって道路コストを使い分けることが可能なように、配送コストを表すテーブル(
図5B参照)を複数種類用意してもよい。例えば、よく配送する配送先とあまり配送しない配送先とを頻度で分けることで、テーブルを複数用意してもよい。
【0116】
また、上述した実施の形態では、最終的な配送計画は、クライアント端末に送信され、クライアント端末のモニタに表示されたが、配送計画生成装置30が自装置にモニタ及び出力用のインターフェースを有し、クライアント端末ではなく自装置のモニタに配送計画を表示させてもよい。
【0117】
また、上述した実施の形態では、配送計画算出部34は、配送コスト生成部32の配送コストを使用せず、配送向け道路コストを用いた別の方法で配送計画を算出してもよい。
【0118】
なお、上述した実施の形態では、走行履歴学習部12は、走行履歴の学習(例えば逆強化学習)を、個々の配送先の単位で行ってもよい。その際、走行履歴学習部12は、走行履歴として、目的の配送先へ配送を行う時の走行履歴のみを用いて、走行履歴の学習を行う。また、走行履歴学習部12は、走行履歴として、直前の配送先から次の配送先までに配送を行う時の走行履歴を用いて、走行履歴の学習を行ってよい。また、その際の道路ネットワーク情報は、該当する走行履歴が含まれる最小の配送範囲に相当するものとしてもよい。あるいは、配送先をエリア分けし、その分けられたエリア単位の道路ネットワーク情報を用いてよい。
【0119】
更に、上述した実施の形態では、走行履歴学習部12は、道路学習モデルとして、生成された複数の道路学習モデルを結合させて用いてもよい。例えば、走行履歴学習部12は、複数の道路学習モデルの平均値を用いればよい。
【0120】
また、本開示は、上述した実施の形態の装置の機能を実現するプログラムを、ネットワークあるいは各種記憶媒体を介して装置に供給し、この装置内のコンピュータが読み出して実行するプログラム及び記憶媒体も適用範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本開示は、複数の荷物の配送において、配送先までの道路の状況に応じて最適な荷物の配送計画の策定を効果的に支援し、それぞれの荷物を配送するドライバーの負担を相当に軽減する配送計画生成方法および配送計画生成装置として有用である。
【符号の説明】
【0122】
5 道路学習モデル生成装置
7,37 プロセッサ
8,38 ストレージ
11 走行履歴読込部
12 走行履歴学習部
13,33 道路NW及び配送向け道路特徴量読込部
14,44 配送向け道路学習モデル記憶部
15,45 道路NW及び配送向け道路特徴量記憶部
16 走行履歴DB
17,47 通信部
30 配送計画生成装置
31 配送向け道路コスト算出部
32 配送コスト生成部
34 配送計画算出部
46 配送向け道路NW記憶部