(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】水門監視システム、水門監視方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
E02B 7/20 20060101AFI20230113BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20230113BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E02B7/20 105
G08B25/00 510M
H04Q9/00 311J
(21)【出願番号】P 2018081438
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】神尾 崇
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳晴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰一
(72)【発明者】
【氏名】澤井 淳子
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-341121(JP,A)
【文献】特開平10-185657(JP,A)
【文献】特開2009-236638(JP,A)
【文献】特開平10-288504(JP,A)
【文献】特開2002-302926(JP,A)
【文献】特開平09-006414(JP,A)
【文献】特開平05-272970(JP,A)
【文献】特開2003-278122(JP,A)
【文献】特開2016-108827(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0074498(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20-7/54
E02B 8/02-8/04
G01F 23/292
G08B 23/00-31/00
H03J 9/00-9/06
H04Q 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
門扉を有する水門の近辺を撮像するカメラと水門監視装置とが通信可能に接続された水門監視システムであって、
前記カメラは、
前記水門の近辺の水位を示す水位計と水門とを被写体として含む撮像
画像を撮像して前記水門監視装置に繰り返し送信し、
前記水門監視装置は、
前記水門の開閉を制御する水門開閉装置と通信可能に接続され、前記撮像
画像に基づいて、前記水位を判定するとともに、その判定された前記水位に応じた前記水門の開閉制御信号を前記水門開閉装置に送信し、
前記撮像
画像に含まれる前記門扉に少なくとも1つ配置された情報コードの
前記撮像画像における位置に基づいて
、前記水門の開閉状況を判定する、
水門監視システム。
【請求項2】
記録部をさらに備え、
前記水門監視装置は、前記開閉制御後の前記水門の開閉状況の判定結果を前記記録部に保存する、
請求項1に記載の水門監視システム。
【請求項3】
前記水門監視装置は、判定された前記水位と、判定された前記水門の開閉状況と、前記撮像
画像とを含む監視状況画面を表示部に表示する、
請求項1に記載の水門監視システム。
【請求項4】
前記水門監視装置は、前記監視状況画面に、前記水門の開閉を指示するメッセージと、前記水門を開く操作を指示する開門指示アイコンと、前記水門を閉じる操作を指示する閉門指示アイコンとをさらに含めて表示する、
請求項3に記載の水門監視システム。
【請求項5】
前記カメラの画角内に、前記水位計の目盛りに沿った所定間隔ごとに高さ情報を有する複数の第2情報コードが配置され、
前記水門監視装置は、前記撮像
画像に含まれる、前記複数の第2情報コードのそれぞれの認識の可否に基づいて、前記水位を判定する、
請求項1に記載の水門監視システム。
【請求項6】
前記水門監視装置は、前記撮像画像に含まれる前記門扉に少なくとも1つ配置された情報コードの位置として前記情報コードの前記撮像画像における上下方向の高さに基づいて、前記水門の開閉状況を判定する、
請求項1に記載の水門監視システム。
【請求項7】
前記水門監視装置は、前記水門が開門状態であると判定するためのしきい値と、前記撮像
画像に含まれる前記情報コードの位置とに基づいて、前記情報コードの位置に対応する高さが前記しきい値以上である場合、前記水門の開門状態と判定し、前記しきい値未満である場合、前記水門の閉門状態と判定する、
請求項
1に記載の水門監視システム。
【請求項8】
複数の前記情報コードは、前記門扉の同一の高さに配置され、
前記水門監視装置は、複数の前記情報コードのうち少なくとも1つの高さが前記しきい値以上である場合、前記水門の開門状態と判定する、
請求項7に記載の水門監視システム。
【請求項9】
複数の前記情報コードは、前記門扉の同一の高さに配置され、
前記水門監視装置は、複数の前記情報コードのうち少なくとも1つの高さが前記しきい値未満である場合、前記水門の閉門状態と判定する、
請求項
7又は8に記載の水門監視システム。
【請求項10】
門扉を有する水門の近辺を撮像するカメラと水門監視装置とが通信可能に接続された水門監視システムにおける水門監視方法であって、
前記カメラは、
前記水門の近辺の水位を示す水位計と水門とを被写体として含む撮像
画像を撮像して前記水門監視装置に繰り返し送信し、
前記水門監視装置は、
前記水門の開閉を制御する水門開閉装置と通信可能に接続され、前記撮像
画像に基づいて、前記水位を判定するとともに、その判定された前記水位に応じた前記水門の開閉制御信号を前記水門開閉装置に送信し、
前記撮像
画像に含まれる前記門扉に少なくとも1つ配置された情報コードの
前記撮像画像における位置に基づいて
、前記水門の開閉状況を判定する、
水門監視方法。
【請求項11】
門扉を有する水門の近辺を撮像するカメラとの間で通信可能に接続された、コンピュータである水門監視装置に、
前記カメラから繰り返し送信される、前記水門の近辺の水位を示す水位計と水門とを被写体として含む撮像
画像に基づいて、前記水位を判定するとともに、その判定された前記水位に応じた前記水門の開閉制御信号を、前記水門の開閉を制御する水門開閉装置に送信するステップと、
前記撮像
画像に含まれる前記門扉に少なくとも1つ配置された情報コードの
前記撮像画像における位置に基づいて
、前記水門の開閉状況を判定するステップと、を実現させるための、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水門近辺の水位を監視する水門監視システム、水門監視方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水門監視支援システムにおいて、各水門に割り当てられた各水門を識別するための識別番号のうち少なくとも一つの識別番号が指定されると、その指定された識別番号の水門に設置された撮影部の映像を画面上に優先的に表示する技術が開示されている。この水門監視支援システムを構成する水門監視装置は、各水門近辺の水位の変動を水門毎に予測し、予測された水位の値がしきい値を超えたと判定した水門に割り当てられた識別番号を示す識別番号情報を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、水門に設置された撮影部の映像は、予測された水位の値がしきい値(例えば、警戒値)を超えたと判定された場合に優先的に表示装置に表示されるだけであり、例えば定常的な水位の予測または監視のために使用されることは考慮されていない。また、撮影部の映像を用いて、水門の開閉の判断を行うことは考慮されていなかった。
【0005】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、水門近辺の河川を画角内に含むように設定されたカメラの撮像映像を用いて、河川の水位の状況と水門の開閉の要否とを適応的に判別して効率的な水門監視の実行を支援する水門監視システム、水門監視方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、門扉を有する水門の近辺を撮像するカメラと水門監視装置とが通信可能に接続された水門監視システムであって、前記カメラは、前記水門の近辺の水位を示す水位計と水門とを被写体として含む撮像画像を撮像して前記水門監視装置に繰り返し送信し、前記水門監視装置は、前記水門の開閉を制御する水門開閉装置と通信可能に接続され、前記撮像画像に基づいて、前記水位を判定するとともに、その判定された前記水位に応じた前記水門の開閉制御信号を前記水門開閉装置に送信し、前記撮像画像に含まれる前記門扉に少なくとも1つ配置された情報コードの前記撮像画像における位置に基づいて、前記水門の開閉状況を判定する、水門監視システムを提供する。
【0007】
また、本開示は、門扉を有する水門の近辺を撮像するカメラと水門監視装置とが通信可能に接続された水門監視システムにおける水門監視方法であって、前記カメラは、前記水門の近辺の水位を示す水位計と水門とを被写体として含む撮像画像を撮像して前記水門監視装置に繰り返し送信し、前記水門監視装置は、前記水門の開閉を制御する水門開閉装置と通信可能に接続され、前記撮像画像に基づいて、前記水位を判定するとともに、その判定された前記水位に応じた前記水門の開閉制御信号を前記水門開閉装置に送信し、前記撮像画像に含まれる前記門扉に少なくとも1つ配置された情報コードの前記撮像画像における位置に基づいて、前記水門の開閉状況を判定する、水門監視方法を提供する。
【0008】
また、本開示は、門扉を有する水門の近辺を撮像するカメラとの間で通信可能に接続された、コンピュータである水門監視装置に、前記カメラから繰り返し送信される、前記水門の近辺の水位を示す水位計と水門とを被写体として含む撮像画像に基づいて、前記水位を判定するとともに、その判定された前記水位に応じた前記水門の開閉制御信号を、前記水門の開閉を制御する水門開閉装置に送信するステップと、前記撮像画像に含まれる前記門扉に少なくとも1つ配置された情報コードの前記撮像画像における位置に基づいて、前記水門の開閉状況を判定するステップと、を実現させるための、プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、水門近辺の河川を画角内に含むように設定されたカメラの撮像映像を用いて、河川の水位の状況と水門の開閉の要否とを適応的に判別でき、効率的な水門監視の実行を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る水門監視システムが設置された水門近辺の状況例を示す図
【
図5】水門の門柱に取り付けられた水位計の目盛りに沿って貼られた複数の水位用2次元コードの表記プレートの配置例を示す図
【
図6】高さ用2次元コードの表記プレートを支持する取付具の取付状態例を示す図
【
図7】実施の形態1に係る水位が上昇した場合の水門の開閉動作手順を示すフローチャート
【
図8】水位の上昇時、撮像エリアに含まれる複数枚の水位用2次元コードおよび高さ用2次元コードを撮像した撮像映像例を示す図
【
図9】門扉を上昇させる制御を行った後、撮像エリアに含まれる複数枚の水位用2次元コードおよび高さ用2次元コードを撮像した撮像映像例を示す図
【
図10】実施の形態1に係る水位が低下した場合の水門の開閉動作手順を示すフローチャート
【
図11】水位の低下時、撮像エリアに含まれる複数枚の水位用2次元コードおよび高さ用2次元コードを撮像した撮像映像例を示す図
【
図12】門扉を下降させる制御を行った後、撮像エリアに含まれる複数枚の水位用2次元コードおよび高さ用2次元コードを撮像した撮像映像例を示す図
【
図14】実施の形態2に係る監視カメラの画角内で門扉が開いている状態の撮像映像例を示す図
【
図15】監視カメラの画角内で門扉が閉じている状態の撮像映像例を示す図
【
図16】実施の形態2に係る水位が上昇した場合の水門の開閉動作および開閉判定手順を示すフローチャート
【
図17】開閉判定が行われる際の水門状況監視画面例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る水門監視システム、水門監視方法およびプログラムを具体的に開示した各実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
(実施の形態1)
河川では、支流や排水路等の合流地点に水門が設置される。水門は、河川の水位を一定の高さに保つために、開閉され、水の流出入を調節する。また、水門は、水の氾濫等を防ぐ堤防としても機能する。以下の実施の形態では、このような水門を監視カメラを用いて監視する水門監視システムの例を説明する。
【0013】
図1は、実施の形態1に係る水門監視システム5が設置された水門近辺の状況例を示す図である。
【0014】
水門100は、例えば河岸に沿って築かれた堤防400に設置された門形の構造物である。水門100は、堤防400の途中に介在する一対の門柱110と、一対の門柱110の上部に支持される建物120と、一対の門柱110の間を上下に可動自在なゲートの一例としての門扉150と、を含む。
【0015】
建物120の下面には、例えば吊り下げ式の門扉150を駆動するための水門開閉装置70が取り付けられる。建物120の内部には、水門100を監視する監視員が常駐する監視室200が配置される。監視室200には、水門監視システム5の一部の機器が配置される。
【0016】
水門の一例として、水門100の高さ(つまり、門柱110の底面から上端までの高さ)は、20mである。一対の門柱110の間を上下動する門扉150の高さ方向の長さは、10mである。水門100が全閉状態にある場合、門扉150の高さは、例えば4mに設定される。一方、水門100が全開状態にある場合、門扉150の高さは、例えば14mに設定される。つまり、門扉150を全開まで上げると、水門100は、高さ10mの開口を有する水路を形成する。なお、これらの数値は説明を分かり易くするために例示したものであって、限定されるものでないことは言うまでもない。
【0017】
図2は、水門監視システム5の構成例を示す図である。水門監視システム5は、監視カメラ10と、PC(Personal Computer)30と、レコーダ40と、ハブ50と、モニタ60と、水門開閉装置70とを含む構成である。
【0018】
水門開閉装置70は、吊り下げ方式の門扉150を上下動させる昇降機、およびこの昇降機を駆動するためのモータ(図示略)を有し、PC30からの指示に従ってモータを駆動し、門扉150の位置を所定の高さに移動させる。
【0019】
ハブ50は、監視カメラ10の通信ケーブルと、水門開閉装置70の通信ケーブルと、PC30の通信ケーブルとを集線し、相互にデータ通信可能に接続する。レコーダ40は、PC30からの指示に従って、監視カメラ10で撮像される撮像映像を記録し、また、記録した撮像映像を再生してPC30やモニタ60に出力する。モニタ60は、レコーダ40から出力される再生映像を表示する。また、モニタ60は、PC30から出力される撮像映像をリアルタイムに表示可能である。
【0020】
監視カメラ10は、例えば雨、風、気温の変化等が厳しい環境でも良好に撮像可能な対候性を有する屋外設置型カメラである。また、監視カメラ10は、パン・チルト・ズーム機能を有し、撮像エリアを任意に可変できるカメラである。監視カメラ10は、例えば、門扉150の上部および片側の門柱110の側面が画角内に収まるように撮像する。監視カメラ10は、通信ケーブルおよびハブ50を介してPC30に撮像映像のデータを送信する。監視カメラ10は、河川を撮像する他、河川の水位を適正な高さに保つために、門扉150や門柱110に貼られた2次元コードの表記プレートを撮像し、2次元コードを読み取って解読(いわゆる、デコード)する。
【0021】
なお、水門の形状や監視カメラ10の姿勢によっては、監視カメラ10が2次元コードの表記プレートを正面から撮像できず、撮像しても台形に歪んだ2次元コードの画像しか取得できない場合がある。このような場合、監視カメラ10は、射影変換を行って正方形の2次元コードの変換画像を生成して取得し、2次元コードを容易にデコードできるようにしてもよい。
【0022】
図3は、監視カメラ10のハードウェア構成例を示す図である。カメラの一例としての監視カメラ10は、CPU11と、記憶部12と、撮像部13と、映像処理部14と、通信部15と、パンチルト駆動部16と、加速度センサ18と、IR照射部19と、を含む構成である。
【0023】
パンチルト駆動部16は、撮像部13をパン方向およびチルト方向に駆動するものであり、チルト制御部21、パン制御部22、チルトモータ23およびパンモータ24を含む。チルト制御部21は、チルトモータ23の回転角を制御する。パン制御部22は、パンモータ24の回転角を制御する。
【0024】
加速度センサ18は、監視カメラ10の姿勢(パン角、チルト角)に対応する信号を出力する。CPU11は、加速度センサ18から出力される信号を基に、監視カメラ10の姿勢を制御する。加速度センサ18には、例えば半導体ピエゾ抵抗効果を利用した半導体式、回転質量体により可動接点と固定接点を開閉する機械式のものが用いられる。
【0025】
撮像部13は、撮像素子として、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を有する。撮像部13は、門扉150の上部に取り付けられた高さ用2次元コード85の表記プレート(
図5参照)、水位計93の目盛りに沿って貼られた複数枚の水位用2次元コード81の表記プレートを含む撮像エリア(被写体)を撮像し、撮像映像のデータを取得する。以下、高さ用2次元コード85の表記プレートを高さ用2次元コード85と略記する。また、水位用2次元コード81の表記プレートを水位用2次元コード81と略記する。
【0026】
映像処理部14は、撮像部13で撮像された撮像映像のデータ信号に対し、AD変換、色補正、雑音除去、輪郭強調等の各種の信号処理を行う。
【0027】
記憶部12は、監視カメラ10の画角に所定の撮像エリアが含まれるように、監視カメラ10のパラメータ(パン角、チルト角、ズーム倍率)をプリセット値として記憶している。記憶部12は、例えばRAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)を含み、監視カメラ10の動作の実行に必要なプログラムやデータ、更には、動作中に生成された情報またはデータ等を一時的に保存する。RAMは、例えばCPU11の動作時に使用されるワークメモリである。ROMは、例えばCPU11を制御するためのプログラム及びデータを予め記憶する。
【0028】
CPU11は、監視カメラ10の各部の動作を制御する。CPU11は、監視カメラ10の制御部として機能し、監視カメラ10の各部の動作を全体的に統括するための制御処理、監視カメラ10の各部との間のデータの入出力処理、データの演算(計算)処理およびデータの記憶処理を行う。CPU11は、記憶部12内のROMに記憶されたプログラムおよびデータに従って動作する。CPU11は、記憶部12に記憶されたプリセット値を読み出し、加速度センサ18から出力される信号を基に、監視カメラ10の姿勢をプリセット値に対応する位置に制御する。CPU11は、撮像部13で撮像され、映像処理部14で信号処理された撮像映像のデータを、通信部15を介してPC30に送信する。
【0029】
通信部15は、通信ケーブルでハブ50に接続され、有線LAN(Local Area Network)でPC30と通信可能に接続される。なお、通信部は、無線LANでPCと通信可能に接続されてもよい。
【0030】
IR照射部19は、高さ用2次元コード85および複数枚の水位用2次元コード81を含む撮像エリアに近赤外光(IR(infrared radiation )光)を照射する。これにより、夜間においても、撮像部13は、高さ用2次元コード85および複数枚の水位用2次元コード81を撮像可能である。ここでは、夜間に光の到達する距離が長く、非可視光であるIR光を照射する場合を示したが、撮像する場所が水門であるので、非可視光であるIR光に限らず、可視光を照射してもよい。
【0031】
図4は、PC30のハードウェア構成例を示す図である。水門監視装置の一例としてのPC30は、プロセッサ31、メモリ32、表示部33、操作部34、記録部35、入出力I/F36、通信I/F37およびスピーカ38を含む構成である。
【0032】
プロセッサ31は、例えばCPU(Central Processing unit)、DSP(Digital Signal Processor)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成され、PC30の各部の動作を制御する。プロセッサ31は、PC30の制御部として機能し、PC30の各部の動作を全体的に統括するための制御処理、PC30の各部との間のデータの入出力処理、データの演算(計算)処理およびデータの記憶処理を行う。プロセッサ31は、メモリ32に記憶されたプログラムおよびデータに従って動作する。
【0033】
メモリ32は、例えばRAMとROMを用いて構成され、PC30の動作の実行に必要なプログラムやデータ、更には、動作中に生成された情報またはデータ等を一時的に保存する。RAMは、例えばプロセッサ31の動作時に使用されるワークメモリである。ROMは、例えばプロセッサ31を制御するためのプログラム及びデータを予め記憶する。
【0034】
表示部33は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)もしくは有機EL(Electroluminescence)を用いて構成され、監視カメラ10で撮像された撮像映像もしくは各種の計測データ等を表示する。
【0035】
操作部34は、例えばキーボードもしくはマウス、またはこれらの組み合わせにより構成され、監視員の入力操作を受け付ける。
【0036】
記録部35は、監視カメラ10で撮像された映像を一時的に記録する他、水位や開閉判定結果等のデータを記録する。
【0037】
入出力I/F36には、レコーダ40が接続される。なお、映像の記録・再生が行われるレコーダ40は、PC30に内蔵されてもよい。この場合、PC30は、レコーダ40として、大容量のストレージと映像記録再生ソフトを搭載する。
【0038】
通信I/F37は、ハブ50に接続され、ハブ50に接続された監視カメラ10および水門開閉装置70との間でデータ通信を行う。
【0039】
スピーカ38は、監視員に対し、門扉150の開閉を促す音声等を発する。
【0040】
図5は、水門100の門柱110に取り付けられた水位計93の目盛りに沿って貼られた複数の水位用2次元コード81の表記プレートの配置例を示す図である。水位計93は、河川の水位を高さ方向1m間隔で刻む目盛りを有する。また、水位計93に隣接し、水位計93に刻まれた目盛りに沿うように、複数枚の水位用2次元コード81が1m間隔で貼られている。門柱110には、例えば水位0m~10mまでの範囲内に1m間隔で10枚の水位用2次元コード81が貼られている。
【0041】
水位用2次元コード81は、メートル単位の高さ、施工年月、水門の識別番号、位置情報(例えば、緯度、経度、高度等)の情報を含む。水位用2次元コード81の表記プレートには、風雨に耐えられるように、耐候性を有する材料を用いることが好ましい。例えば、水位用2次元コード81の表記プレートは、例えば、防水性かつ腐食性を有する紙、プラスチック板、金属板等であってもよい。また、水位用2次元コード81は、門柱110の側面に直接印刷されてもよい。また、水位用2次元コード81の表記プレートは、10cm~20cm程度のサイズを有する略正方形の板材である。上記仕様を有する2次元コードの表記プレートは、後述する高さ用2次元コードの表記プレートおよび開閉用2次元コードの表記プレートにおいても同様である。
【0042】
なお、監視カメラ10が読み取ってデコード可能な高さの指標は、2次元コードの代わりに、1次元バーコードであってもよい。また、2次元コードの場合、QRコード(登録商標)の他、データマトリックスコードやカラーコード等、各種のコードが用いられてもよい。また、高さの指標として、コード化されていない文字(例えば「高さ〇m」)が用いられてもよい。この場合、監視カメラ10は、OCR(Optical Character Recognition)機能を搭載し、撮像映像に含まれる高さ等の文字情報を読み取り判読可能である。監視カメラ10は、読み取った文字情報をPC30に送信する。
【0043】
一方、門扉150の上部には、門扉の高さを測定するために、2枚の高さ用2次元コード85がそれぞれ取付具300(
図6参照)によって固定される。2枚の高さ用2次元コード85は、それぞれ2次元コードの識別情報、施工年月、水門の識別番号、位置情報(例えば、緯度、経度、高度等)の情報を含む。監視カメラ10は、門扉150に取り付けられた2枚の高さ用2次元コード85、および門柱110に貼られた複数枚の水位用2次元コード81が画角SA内に収まるような姿勢で固定される。監視カメラ10は、門扉150が最低位(全閉)の高さから最高位(全開)の高さに至るまで1m間隔で映像を撮像し、それぞれの高さ位置で撮像された2枚の高さ用2次元コード85を含む画像を記憶部12に記憶しておく。なお、高さ用2次元コード85は、1枚であってもよいが、バックアップ用として、2枚用いられる。また、2枚の高さ用2次元コード85は、同一の内容を格納するのでなく、それぞれ異なる内容(例えば識別番号、位置情報)を格納しておくことが好ましい。
【0044】
PC30は、監視カメラ10による撮像画像に含まれる高さ用2次元コード85のサイズと、予め記憶部12に記憶された1m間隔の高さ用2次元コード85のそれぞれのサイズとを比較する。この比較の結果、PC30は、撮像映像を構成するそれぞれの撮像画像に含まれる高さ用2次元コード85のサイズに最も近いサイズを有する、記憶された高さ用2次元コード85の位置を、門扉150の高さとして取得する。
【0045】
なお、監視カメラ10は、予め記憶部12に記憶された高さ用2次元コード85のサイズを用いることなく、画角SAが固定された撮像映像に映る高さ用2次元コード85の位置(つまり、(x,y)座標)、サイズ、および監視カメラ10の姿勢(鉛直方向に対する傾斜角)を基に、高さ用2次元コード85の高さを幾何学的に算出してもよい。また、監視カメラ10もしくはPC30は、撮像映像に映る高さ用2次元コード85の位置(つまり、(x,y)座標)と、その位置に対応する高さ用2次元コード85の高さとを対応付けたテーブル(図示略)を用いて、撮像映像に映る高さ用2次元コード85の高さを算出してもよい。
【0046】
図6は、高さ用2次元コード85の表記プレートを支持する取付具300の取付状態例を示す図である。取付具300は、門扉150の正面の側方に固定された梯子250の上端部に取り付けられる。取付具300は、略コの字形の形状を有する固定部材310と、固定部材310の側面に取り付けられた可動部材320と有する。固定部材310は、その背面部材が梯子250の支柱にネジで取り付けられて固定される。可動部材320は、高さ用2次元コード85が固定される枠320aと、この枠320aの両側に形成され、枠320aを固定部材310の側面に対し回動自在な扇状のプレート320bとを含むように、成形される。可動部材320は、枠320aに取り付けられた高さ用2次元コード85が監視カメラ10の撮像方向(光軸方向)に対し正面を向くような所定の角度に調節される。例えば、可動部材320は、鉛直方向に対し、角度0°~45°の範囲で調節可能である。また、高さ用2次元コード85のサイズは、例えば300mm×300mmである。
【0047】
次に、上述した実施の形態1に係る水門監視システム5の動作を説明する。
【0048】
ここでは、河川の水位に応じて、門扉150の高さを調節し、水門100の開口を通過して流れる水量を増減させる場合を示す。始めに、河川の水位が上昇した場合を示す。
【0049】
図7は、実施の形態1に係る水位が上昇した場合の水門100の開閉動作手順を示すフローチャートである。監視カメラ10は、撮像エリア(撮像範囲)を示す画角SAを撮像可能な画角となるように、パン角、チルト角、およびズーム倍率を予め設定されたプリセット値に調節する。監視カメラ10は、撮像エリア(撮像範囲)を示す画角SAを常時撮像し、通信部15およびハブ50を介して、撮像映像をPC30に繰り返し送信する。
【0050】
PC30のプロセッサ31は、ハブ50および通信I/F37を介して、監視カメラ10から送信された撮像映像を取得する。プロセッサ31は、取得した映像を記録部35に一時的に記憶し、また、入出力I/F36を介してレコーダ40に記録する。
【0051】
プロセッサ31は、監視カメラ10の撮像映像に含まれる、高さの異なる複数枚の水位用2次元コード81のうち、例えば水没していない(つまり、認識され得る)最下位の水位用2次元コード81をデコードし、高さ情報を読み取る。プロセッサ31は、この高さが現在の水位であると判定する。なお、プロセッサ31は、最下位の水位用2次元コード81だけをデコードしたが、映像に映る全ての水位用2次元コード81をデコードし、デコードした全ての高さ情報のうち、最下位の高さを水位と判定してもよい。プロセッサ31は、最下位の水位用2次元コード81で読み取られた高さ情報が、水位の上昇と判断される水位上昇レベルに達しているか否かを判別する(S1)。水位上昇レベルは、例えば6mである。
【0052】
なお、ここでは、監視カメラ10が水位用2次元コード81をデコードして高さ情報を読み取ってPC30に送信しているが、監視カメラ10は撮像映像をPC30に送信するだけでもよい。プロセッサ31は、監視カメラ10から受信した撮像映像に含まれる水位用2次元コード81をデコードして高さ情報を読み取ってもよい。この場合、監視カメラは、デコードする処理を省くことができ、機器コストを下げることができる。
【0053】
図8は、水位の上昇時、撮像エリア(撮像範囲)を示す画角SAに含まれる複数枚の水位用2次元コード81および高さ用2次元コード85を撮像した撮像映像例を示す図である。水位が水位上昇レベルに達している場合、例えば水位が6mに上昇している場合、水位計93の目盛り6mの位置に貼られた水位用2次元コード81が水没してしまい、監視カメラ10の撮像映像には、この水位用2次元コード81が映らない。従って、プロセッサ31は、水位が6mまで上昇していると判定する。プロセッサ31は、表示部33に表示する水門状況監視画面GM1(
図13参照)に水位が6mであることを含める。水門状況監視画面GM1は、水門監視システム5が水門100を監視している状態にある場合、常時、プロセッサ31によって表示部33に表示される。
【0054】
プロセッサ31は、水位の上昇に応じて、水門100を開く制御を行う(S2)。プロセッサ31は、通信I/F37およびハブ50を介して、水門開閉装置70に対し開閉制御信号を送信し、門扉150を上げるように指示する。例えば、水位が6mである場合、門扉150の高さは7mになるように指示される。門扉150の高さが7mとなるように、指示が出された場合、門扉150の下端から底面までの高さは3mと長くなり、水路の開口は広くなる。なお、水位に対応する門扉150の高さは、水門の設置場所等によって異なるので、運用によって適切な値に決められる。水門開閉装置70は、ハブ50を介して、PC30からの指示を受信すると、門扉150の高さが7mになるように、門扉150を上昇させる。
【0055】
なお、ここでは、プロセッサ31は、水門100の開口を拡げるように、水門開閉装置70に対し門扉150を上げる指示を含む開閉制御信号を送信したが、監視員が手動で開く操作を行うように指示してもよい。この場合、プロセッサ31は、例えば表示部33に表示される水門状況監視画面GM1(
図13参照)に「1m開せよ」等の指示メッセージを追加する。監視員は、この指示メッセージに従って、水門開閉装置70に対し門扉150を上げる操作を行う。
【0056】
この場合も、プロセッサ31は、監視カメラ10の撮像映像を取得し、複数枚の水位用2次元コード81のうち、水没していない最下位の水位用2次元コード81の高さ情報を読み取る。プロセッサ31は、門扉150の高さが目標の高さ(例えば7m)になったか否かを判別する(S3)。目標の高さになった場合、プロセッサ31は、本処理を終了する。一方、目標の高さなっていない場合、プロセッサ31は、ステップS2の処理を繰り返す。
【0057】
図9は、門扉150を上昇させる制御を行った後、撮像エリア(撮像範囲)を示す画角SAに含まれる複数枚の水位用2次元コード81および高さ用2次元コード85を撮像した撮像映像例を示す図である。監視カメラ10の撮像映像には、水位計93の目盛り5mに貼られた水位用2次元コード81が水没して映っておらず、目盛り6mの位置に貼られた水位用2次元コード81が映っている。従って、プロセッサ31は、水位が5mまで低下したと判定する。
【0058】
次に、河川の水位が低下した場合を示す。
図10は、実施の形態1に係る水位が低下した場合の水門100の開閉動作手順を示すフローチャートである。PC30のプロセッサ31は、ハブ50および通信I/F37を介して、監視カメラ10から送信された撮像映像を取得する。プロセッサ31は、取得した撮像映像を記録部35に一時的に記憶し、また、入出力I/F36を介してレコーダ40に記録する。
【0059】
プロセッサ31は、監視カメラ10の撮像映像に含まれる、高さの異なる複数枚の水位用2次元コード81のうち、例えば水没していない(つまり、認識され得る)最下位の水位用2次元コード81をデコードし、高さ情報を読み取る。プロセッサ31は、この高さが現在の水位であると判定する。なお、プロセッサ31は、最下位の水位用2次元コード81だけをデコードしたが、映像に映る全ての水位用2次元コード81をデコードし、デコードした全ての高さのうち、最下位の高さを水位と判定してもよい。プロセッサ31は、最下位の水位用2次元コード81で読み取られた高さ情報が、水位の低下と判断される水位低下レベルに達しているか否かを判別する(S11)。水位低下レベルは、例えば4mである。
【0060】
なお、監視カメラ10は撮像映像だけをPC30に送信し、PC30が水位用2次元コード81をデコードして高さ情報を読み取ってもよいことは、水位の上昇の場合と同様である。
【0061】
図11は、水位の低下時、撮像エリア(撮像範囲)を示す画角SAに含まれる複数枚の水位用2次元コード81および高さ用2次元コード85を撮像した撮像映像例を示す図である。
【0062】
水位が水位低下レベルに達している場合、例えば水位が4mに低下している場合、水位計93の目盛り4mの位置に貼られた水位用2次元コード81は、水没しているので、この水位用2次元コード81は、監視カメラ10で撮像される映像に映らない。しかし、水位計93の目盛り5mの位置に貼られた水位用2次元コード81は、水上にあるので、監視カメラ10で撮像される映像に映る。従って、プロセッサ31は、水位が4mまで低下していると判定する。プロセッサ31は、表示部33に表示された水門状況監視画面GM1(
図13参照)に水位が4mであることを含める。
【0063】
プロセッサ31は、水位の低下によって水門100を閉じる制御を行う(S12)。プロセッサ31は、通信I/F37およびハブ50を介して、水門開閉装置70に対し開閉制御信号を送信し、門扉150の高さを下げるように指示する。例えば、水位が4mである場合、門扉150の高さは5mになるように、プロセッサ31は、閉制御を行う指示を出す。門扉150の高さが5mになるように指示が出された場合、門扉150の下端から底面までの高さは1mと短くなり、水路の開口は狭くなる。
【0064】
図12は、門扉150を下降させる制御を行った後、撮像エリア(撮像範囲)を示す画角SAに含まれる複数枚の水位用2次元コード81および高さ用2次元コード85を撮像した撮像映像例を示す図である。監視カメラ10の撮像映像には、水位計93の目盛り5mに貼られた水位用2次元コード81が水没して映っておらず、目盛り6mの位置に貼られた水位用2次元コード81が映っている。従って、プロセッサ31は、水位が5mまで上昇したと判断する。
【0065】
なお、ここでは、プロセッサ31は、水門100の開口を狭くするように、水門開閉装置70に門扉150を下げる指示を含む開閉制御信号を送信したが、監視員が手動で操作するように指示してもよい。この場合、プロセッサ31は、例えば表示部33に表示される水門状況監視画面GM1(
図13参照)に「1m閉じよ」等の指示メッセージを追加する。監視員は、この指示メッセージに従って、水門開閉装置70に対し門扉150を下げる操作を行う。
【0066】
この場合も、プロセッサ31は、監視カメラ10の撮像映像を取得し、複数枚の水位用2次元コード81のうち、水没していない最下位の水位用2次元コード81の高さ情報を読み取る。プロセッサ31は、門扉150の高さが目標の高さ(例えば5m)になったか否かを判別する(S13)。目標の高さになった場合、プロセッサ31は、本処理を終了する。一方、目標の高さなっていない場合、プロセッサ31は、ステップS12の処理を繰り返す。
【0067】
なお、ここでは、水位用2次元コードを1m間隔で貼付し、門扉150の高さを1m間隔で可変させる場合を示したが、任意の距離間隔(例えば50cm間隔)で水位用2次元コードを貼付し、門扉150の高さを任意の間隔(例えば50cm間隔)で可変させてもよい。間隔を狭くすることで、門扉の高さを細かく変更できる。
【0068】
図13は、水門状況監視画面GM1の例を示す図である。プロセッサ31は、監視カメラ10の撮像映像を基に、水門状況監視画面GM1を生成し、表示部33に表示する。水門状況監視画面GM1には、映像表示エリア351、水位表示エリア352、水門高さ表示エリア353、開閉判定アイコン355、開門指示アイコン356、閉門指示アイコン357、およびメッセージ表示エリア358が配置される。
【0069】
映像表示エリア351には、監視カメラ10の撮像映像の他、記録部35またはレコーダ40に記録された再生映像が表示される。水位表示エリア352には、河川の水位が表示される。水門高さ表示エリア353には、門扉150の高さが表示される。開閉判定アイコン355は、押下されることで、門扉150の開閉判定を行う操作を受け付ける。開門指示アイコン356は、押下されることで、門扉150を開く操作を受け付ける。閉門指示アイコン357は、押下されることで、門扉150を閉じる操作を受け付ける。メッセージ表示エリア358には、プロセッサ31が監視員に対して行う指示メッセージが表示される。
【0070】
以上により、実施の形態1に係る水門監視システム5は、水門100近辺を撮像する監視カメラ10(カメラの一例)とPC30(水門監視装置の一例)とが通信可能に接続される。監視カメラ10は、水門100近辺の水位を示す水位計93と水門100とを被写体として含む映像を撮像し、PC30に撮像映像を繰り返し送信する。PC30は、水門100の開閉を制御する水門開閉装置70と通信可能に接続される。PC30は、撮像映像に基づいて、水位を判定するとともに、その判定された水位に応じた水門100の開閉制御信号を水門開閉装置70に送信する。PC30は、撮像映像に基づいて、開閉制御後の水門100の開閉状況を判定する。
【0071】
これにより、水門監視システム5は、水門近辺の河川を含むように画角が設定された監視カメラ10の撮像映像を用いて、河川の水位の状況と水門の開閉の要否とを適応的に判別できる。従って、例えば建物120内もしくはリモートで水門100の状況を監視する監視員は、例えば単一の監視カメラ10の撮像映像によって、水位と水門の開閉要否とを容易に把握できるので、効率的な水門監視の実行を支援できる。
【0072】
また、水門監視システム5は、PC30に接続されたレコーダ40(記録部の一例)を備える。PC30は、開閉制御後の水門100の開閉状況の判定結果をレコーダ40に保存する。これにより、監視員は、水門の開閉の履歴を知ることができる。従って、水門の開閉操作に役立てることができる。
【0073】
また、水門監視システム5では、PC30は、判定された水位と、判定された水門100の開閉状況と、撮像映像とを含む水門状況監視画面GM1(監視状況画面の一例)を表示部33に表示する。これにより、監視員は、水位と、水門の映像と、水門の開閉状況を同一の画面で視覚的に把握できる。水位の急激な上昇や低下に際して、監視員が即応的に対処することが期待される。
【0074】
また、PC30は、水門状況監視画面GM1に、水門の開閉を指示する指示メッセージと、水門を開く操作を指示する開門指示アイコン356と、水門を閉じる操作を指示する閉門指示アイコン357とをさらに含めて表示する。これにより、監視員は、同一の画面上で、指示メッセージを確認し、開門あるいは閉門の操作を行うことができる。監視員は、画面が表示された場所から移動することなく、状況の確認から指示まで行うことが可能である。監視員の即応的な対処が期待されると共に、利便性が向上する。
【0075】
また、水門監視システム5では、監視カメラ10の画角内に、水位計93の目盛りに沿った1m間隔(所定間隔の一例)ごとに、高さ情報を有する複数枚の水位用2次元コード81の表記プレート(複数の情報コードの一例)を備える。PC30は、撮像映像に含まれる、水位用2次元コード81の表記プレートが有する最も低い高さ情報を基に、水位を判定する。これにより、撮像映像を用いて、水位の判定を自動で正確に行うことができる。
【0076】
また、水門100は、一対の門柱110に上下動自在に取り付けられた門扉150を有し、水門開閉装置70により、門扉150の高さに応じて開閉される。門扉150の上部(所定位置)には、門扉150の高さを判定するための高さ用2次元コード85の表記プレート(第2情報コードの一例)が少なくとも1つ配置される。PC30は、撮像映像に含まれる高さ用2次元コード85の表記プレートの高さに基づいて、水門の開閉状況を判定する。これにより、撮像映像を用いて、水門の開閉状況の判定を自動で正確に行うことができる。
【0077】
監視カメラ10は、水位計93と水門100を含む被写体に向けて光を照射するIR照射部19(光照射部の一例)を備える。監視カメラ10は、IR照射部19によって光が照射された状態で撮像映像を取得する。これにより、夜間でも撮像映像から水位および水門の開閉状況を判定できる。従って、監視員の作業の負荷を軽減できる。
【0078】
(実施の形態2)
実施の形態1では、水位用2次元コードを用いて水位を測定し、高さ用2次元コードを用いて門扉の高さが水位に対応する高さになるように、門扉を開閉する場合を示した。実施の形態2では、実施の形態1に係る門扉の開閉動作に加え、開閉用2次元コードの表記プレートを別に門扉に貼り付け、この開閉用2次元コードを用いて水門の開閉判定を行う場合を示す。
【0079】
実施の形態2に係る水門監視システムは、開閉用2次元コードの表記プレートを除き、実施の形態1とほぼ同一の構成を有する。実施の形態1と同一の構成要素については同一の符号を用いることで、その説明を省略する。
【0080】
図14は、実施の形態2に係る監視カメラ10の画角内で門扉150が開いている状態の撮像映像例を示す図である。門扉150の正面には、左右の2箇所に開閉用2次元コード88L,88Rの表記プレート(以下、単に開閉用2次元コード88L,88Rという)が貼られている。左右の開閉用2次元コード88L,88Rを特に区別しない場合、単に開閉用2次元コード88と称する。2枚の開閉用2次元コード88L,88Rは、それぞれ2次元コードの識別情報、施工年月、水門の識別番号、位置情報(例えば、緯度、経度、高度等)の情報を含む。2枚の開閉用2次元コード88L,88Rは、同一の内容を格納するのでなく、それぞれ異なる内容(例えば識別番号、位置情報)を格納しておくことが好ましい。
【0081】
監視カメラ10は、パン・チルト・ズーム動作を行って姿勢を変更し、門扉150の正面に貼られた左右の開閉用2次元コード88L,88Rが画角内に収まるような、前記実施の形態1とは異なる撮像エリアを撮像する。なお、監視カメラが開閉用2次元コードを正面から撮像できない場合、監視カメラは、射影変換を行って正方形の変換画像を取得し、2次元コードをデコードしてもよいことは、前記実施の形態1と同様である。
【0082】
図14では、門扉150が開かれた状態にある。門扉150が開かれていると、監視カメラ10の撮像映像では、左右の開閉用2次元コード88L,88Rは、いずれも上方に位置する。PC30のメモリ32には、水門の開閉状態を判定するためのしきい値Htが保持されている。画角内では、このしきい値Htは、所定の高さを有する水平ライン(図中、破線で示す)に想定される。
【0083】
PC30のプロセッサ31は、開閉用2次元コード88の高さとしきい値Htとを比較する。プロセッサ31は、開閉用2次元コード88の高さがしきい値Htを超える場合、水門の開門状態と判定し、開閉用2次元コード88の高さがしきい値Ht未満である場合、水門の閉門状態と判定する。一例として、
図14では、しきい値が2mである。この場合、開閉用2次元コード88の高さが2mを超えると、プロセッサ31は、開門状態と判定する。
【0084】
図15は、監視カメラ10の画角内で門扉150が閉じている状態の撮像映像例を示す図である。開閉用2次元コードの高さがしきい値2m未満である場合、プロセッサ31は、閉門状態と判定する。
【0085】
図16は、実施の形態2に係る水位が上昇した場合の水門100の開閉動作および開閉判定手順を示すフローチャートである。実施の形態1に係る
図7と同一のステップ処理については同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。PC30のプロセッサ31は、表示部33に表示されている水門状況監視画面GM1において、監視員が開閉判定アイコン355を選択したか否かを判別する(S1A)。開閉判定アイコン355が選択されない場合、プロセッサ31は、前記実施の形態1と同様の処理を行う。つまり、プロセッサ31は、水位に応じて門扉150の高さを調節する指示を、通信I/F37およびハブ50を介して水門開閉装置70に出力する。
【0086】
一方、開閉判定アイコン355が選択された場合、プロセッサ31は、水門100の開閉判定を行う(S4)。水門100の開閉判定では、始めに、プロセッサ31は、監視カメラ10のパラメータ(パン角、チルト角、ズーム倍率)を所定のプリセット値になるように、変更する。プロセッサ31は、通信I/F37およびハブ50を介して、監視カメラ10に対し、変更したパラメータ情報を送信する。これにより、監視カメラ10は、姿勢を変化させ、画角内に門扉150に貼られた左右の開閉用2次元コード88L,88Rが収まるようになる。
【0087】
監視カメラ10は、撮像し、開閉用2次元コード88を含む映像を、PC30に送信する。PC30のプロセッサ31は、受信した映像に含まれる開閉用2次元コード88の高さとしきい値Htとを比較することで、開閉判定を行う。
【0088】
判定条件の一例は、次の通りである。なお、「開」は、開閉用2次元コードがしきい値以上であることを表す。「閉」は、開閉用2次元コードがしきい値未満であることを表す。2枚の開閉用2次元コード88L,88Rのいずれもが「開」を示す場合、プロセッサ31は、水門の開門状態と判定する。2枚の開閉用2次元コード88L,88Rのいずれもが「閉」を示す場合、プロセッサ31は、水門の閉門状態と判定する。2枚の開閉用2次元コード88L,88Rのうち、一方が「開」であり、他方が「閉」である場合、プロセッサ31は、判定しない。2枚の開閉用2次元コード88L,88Rのいずれもが読取不可である場合、プロセッサ31は、判定しない。また、2枚の開閉用2次元コード88L,88Rのうち、一方が「開」であり、他方が読取不可である場合、プロセッサ31は、水門の開門状態と判定する。2枚の開閉用2次元コード88L,88Rのうち、一方が「閉」であり、他方が読取不可である場合、プロセッサ31は、水門の閉門状態と判定する。
【0089】
プロセッサ31は、この開閉判定を数秒間隔で繰り返し行う。プロセッサ31は、開閉判定の結果を記録部35に記録する。また、プロセッサ31は、判定の結果を含む水門状況監視画面GM2(
図17参照)を表示部33に表示する。開閉判定が終わると、プロセッサ31は、監視カメラ10のパラメータ(パン角、チルト角、ズーム倍率)を初期値に戻す。初期値に設定された、監視カメラ10の画角には、水位計93に隣接して貼られた複数枚の水位用2次元コード81および門扉150の上部に取り付けられた高さ用2次元コード85が収まる。プロセッサ31は、通信I/F37およびハブ50を介して、監視カメラ10に対し、パラメータの初期値を送信する。監視カメラ10は、初期状態の姿勢に戻る。この後、プロセッサ31は本処理を終了する。なお、
図16に示す開閉判定の処理は、水位が低下した場合の
図10に示す処理においても、同様に適用可能である。
【0090】
図17は、開閉判定が行われる際の水門状況監視画面GM2の例を示す図である。この水門状況監視画面GM2は、水門状況監視画面GM1において、開閉判定アイコン355が選択された場合に表示される。また、開閉判定が行われた後、水門状況監視画面GM2は、開閉判定の結果を含むように、更新される。水門状況監視画面GM2は、映像表示エリア451、左側の開閉用2次元コード88Lの高さエリア452、右側の開閉用2次元コード88Rの高さエリア453、開閉判定結果エリア454、および読取結果エリア455を含む。
【0091】
映像表示エリア451には、監視カメラ10の撮像映像が表示される。撮像映像は、門扉150および門扉150に貼られた2箇所の開閉用2次元コード88L,88Rを含む。なお、上述したように、2枚の開閉用2次元コード88L,88Rは、同一の内容を格納するのでなく、それぞれ異なる内容(例えば識別番号、位置情報)を格納しておくことが好ましい。なお、撮像映像の代わりに、撮像映像を模したイラストが描画されてもよい。
【0092】
左側の開閉用2次元コード88Lの高さエリア452、および右側の開閉用2次元コード88Rの高さエリア453には、それぞれ左側の開閉用2次元コード88Lの高さ、および右側の開閉用2次元コード88Rの高さが表示される。開閉判定結果エリア454には、開閉判定の結果が表示される。読取結果エリア455には、読取結果として、読取OKまたは読取不可が表示される。
【0093】
以上により、実施の形態2に係る水門監視システム5では、PC30は、水門100が開門状態であると判定するためのしきい値Htと、撮像映像に含まれる開閉用2次元コード88の表記プレートの高さとを比較する。PC30は、比較の結果、開閉用2次元コード88の表記プレートの高さがしきい値Ht以上である場合、水門の開門状態と判定する。PC30は、比較の結果、開閉用2次元コード88の表記プレートの高さがしきい値未満である場合、水門の閉門状態と判定する。これにより、水門監視システム5は、水門の開閉判定を容易に行うことができる。また、監視員は、水門が開いているか閉まっているか即座に知ることができる。
【0094】
また、複数枚の開閉用2次元コード88の表記プレートが門扉150の同一の高さに配置される。複数枚の開閉用2次元コード88の表記プレートのうち、少なくとも1つの高さがしきい値Ht以上である場合、PC30は、水門の開門状態と判定する。これにより、複数枚の開閉用2次元コードのうち、少なくとも1枚の開閉用2次元コードの表面が濁流によって泥が付着して読み取れない状態になっても、読み取れた開閉用2次元コードの高さを用いて水門の開門状態を判定できる。従って、水門の開門状態が判定できない状況を回避できる。
【0095】
複数枚の開閉用2次元コード88の表記プレートのうち、少なくとも1つの高さがしきい値Ht未満である場合、PC30は、水門の閉門状態と判定する。これにより、複数枚の開閉用2次元コードのうち、少なくとも1枚の開閉用2次元コードの表面が濁流によって泥が付着して読み取れない状態になっても、読み取れた開閉用2次元コードの高さを用いて水門の閉門状態を判定できる。従って、水門の閉門状態が判定できない状況を回避できる。
【0096】
なお、上述した実施の形態2では、開閉用2次元コードが2枚である場合を示したが、3枚以上であってもよい。また、上述した実施の形態2では、少なくとも1つの開閉用2次元コードが「開」と判定された場合、水門の開門状態と判定したが、3枚以上の場合においても同様である。また、3枚以上の場合、「開」と判定された開閉用2次元コードの数が、開と判定されない2次元コードの数よりも多い場合、PCは、水門の開門状態と判定してもよい。また、複数枚の開閉用2次元コードのうち、少なくとも1つの開閉用2次元コードが「閉」と判定された場合、水門の閉門状態と判定してもよい。3枚以上の場合、「閉」と判定された開閉用2次元コードの数が、「開」と判定されない2次元コードの数よりも多い場合、PCは、水門の閉門状態と判定してもよい。
【0097】
(実施の形態2の変形例)
上述した実施の形態2に係る水門監視システムでは、門扉150の正面に貼られた左右それぞれの開閉用2次元コード88を用いて水門の開閉を判定していたが、門扉150の上部に取り付けられた高さ用2次元コード85を用いて水門の開閉を判定してもよい。左右一対の開閉用2次元コード88が汚れや破損等により使用不可となった場合、バックアップとして、高さ用2次元コード85を使用して開閉判定を行うことができる。従って、開閉判定ができなくなる事態を回避できる。
【0098】
また、上述した実施の形態2に係る水門監視システムでは、実施の形態1に係る、水位に応じて門扉の高さを自動で調節する機能に追加するべく、開閉判定の機能を付加していたが、水門監視システム5は、開閉判定の機能だけを有してもよい。この場合、水位を測定するための水位用2次元コード81や、門扉の高さを求めるための高さ用2次元コード85を不要にできる。さらに、監視カメラをPTZ機能を有するカメラでなく、門扉の正面だけを撮像可能な固定カメラに変更できる。また、PC30が実行する水門監視システムの処理の負荷を軽減し、ソフトウェアを単純化できる。従って、水門の規模に適した、簡易な水門監視システムを構築することも可能である。
【0099】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0100】
また、本開示は、上記実施形態の水門監視装置(PC30)の機能を実現するプログラムを、ネットワークあるいは各種記憶媒体を介して装置に供給し、この装置内のコンピュータが読み出して実行するプログラムも適用範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本開示は、水門近辺の河川を画角内に含むように設定されたカメラの撮像映像を用いて、河川の水位の状況と水門の開閉の要否とを適応的に判別して効率的な水門監視の実行を支援する水門監視システム、水門監視方法およびプログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0102】
5 水門監視システム
10 監視カメラ
30 PC
70 水門開閉装置
81 水位用2次元コード
85 高さ用2次元コード
88 開閉用2次元コード
100 水門
150 門扉