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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】吸収式冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 15/00 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
F25B15/00 306Q
F25B15/00 303A
F25B15/00 306R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018082787
(22)【出願日】2018-04-24
(65)【公開番号】P2019190710
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石崎 修司
(72)【発明者】
【氏名】府内 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇浩
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-014792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温再生器、低温再生器、蒸発器、凝縮器および吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成してなる吸収式冷凍機において、
伝熱管に液体を散布するための分配箱を備え、
前記分配箱は、メイン貯留箱とサブ貯留箱とを備え、前記メイン貯留箱には、前記メイン貯留箱に貯留される液体が所定の水位になった場合に、前記液体を前記サブ貯留箱に供給する連通穴が形成され、
前記メイン貯留箱と前記サブ貯留箱のそれぞれの下面には、貯留される液体を滴下するための滴下用穴が形成されていることを特徴とする吸収式冷凍機。
【請求項2】
前記サブ貯留箱の上方に、前記連通穴に対して所定間隔をもって配置されるガイド板が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吸収式冷凍機。
【請求項3】
前記サブ貯留箱の上方に、前記連通穴から液体が流れる際に当該液体が前記サブ貯留箱の外側に飛び散ってしまうことを防止するためのガイド板が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吸収式冷凍機。
【請求項4】
冷房負荷が所定値を超えると、前記メイン貯留箱に貯留される液体の水位が前記連通穴に到達することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の吸収式冷凍機。
【請求項5】
伝熱管は、吸収器に設けられる伝熱管であり、前記液体は、吸収液であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の吸収式冷凍機。
【請求項6】
伝熱管は、蒸発器に設けられる伝熱管であり、前記液体は、冷媒であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の吸収式冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式冷凍機に係り、特に、冷房負荷が低い場合であっても、液体の均一な散布を行うことができ、部分負荷性能を向上させることを可能とした吸収式冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高温再生器、低温再生器、蒸発器、凝縮器および吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成した吸収式冷凍機が知られている。吸収式冷凍機は、例えば、オフィスビルのセントラル空調などに用いられている。
このような吸収式冷凍機として、従来、例えば、高温再生器と低温再生器とを連通する吸収溶液ライン又は低温再生器と吸収器とを連通する吸収溶液ラインに圧力調整手段及び中間再生器を介装し、該中間再生器は外部温熱源から供給される流体と吸収溶液ラインを流れる吸収溶液との間で顕熱・潜熱交換を行い、冷温水出口温度及び高温再生器の温度を測定する温度測定手段と、冷温水出口温度及び高温再生器の温度に基づいて高質燃料燃焼用バーナへの高質燃料供給量を調節する燃料供給量制御機構、とを備えたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3114850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、従来の技術においては、吸収器や蒸発器は、吸収器や蒸発器に設置された伝熱管に、吸収液や冷媒を滴下させて熱交換を行うものである。この場合に、従来、吸収液などの液体を分配箱に一時貯留し、分配箱からトレイを介して伝熱管に滴下させるようにしている。
分配箱は、冷房負荷が100%の場合を基準として、液体を滴下させる穴を設計しているため、冷房負荷が高い場合には、分配箱に供給される液体の高さを適正にすることができ、伝熱管に対する液体の散布を均一に行うことができる。
しかしながら、冷房負荷が、例えば、50%程度に低くなった場合には、分配箱に供給される液体の高さが不足してしまい、均一な液体散布を行うことができないという問題がある。その結果、部分負荷性能に悪影響があった。
【0005】
本発明は、前記した事情に鑑みてなされたものであり、冷房負荷が低い場合であっても、液体の均一な散布を行うことができ、部分負荷性能を向上させることのできる吸収式冷凍機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、高温再生器、低温再生器、蒸発器、凝縮器および吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成してなる吸収式冷凍機において、伝熱管に液体を散布するための分配箱を備え、前記分配箱は、メイン貯留箱とサブ貯留箱とを備え、前記メイン貯留箱には、前記メイン貯留箱に貯留される液体が所定の水位になった場合に、前記液体を前記サブ貯留箱に供給する連通穴が形成され、前記メイン貯留箱と前記サブ貯留箱のそれぞれの下面には、貯留される液体を滴下するための滴下用穴が形成されていることを特徴とする。
これによれば、冷房負荷が低い場合は、メイン貯留箱に貯留される液体のみを滴下して散布し、冷房負荷が高い場合は、メイン貯留箱から連通穴を介してサブ貯留箱に液体を送ることで、メイン貯留箱およびサブ貯留箱の液体を滴下して散布させるので、冷房負荷に応じて、液体の滴下量を調整することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷房負荷に応じて、液体の滴下量を調整することができる。その結果、冷房負荷に応じた均一な散布を行うことができ、部分負荷性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る吸収式冷凍機の概略構成図
図2】本実施の形態の吸収器の構造を示す概略側面図
図3】本実施の形態の吸収器の構造を示す概略平面図
図4】本実施の形態の分配箱の低冷房負荷での使用状態を示す概略図
図5】本実施の形態の分配箱の高冷房負荷での使用状態を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、高温再生器、低温再生器、蒸発器、凝縮器および吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成してなる吸収式冷凍機において、伝熱管に液体を散布するための分配箱を備え、前記分配箱は、メイン貯留箱とサブ貯留箱とを備え、メイン貯留箱に貯留される液体が所定の水位になった場合に、前記液体を前記サブ貯留箱に供給する連通穴を形成した。
これによれば、冷房負荷が低い場合は、メイン貯留箱に貯留される液体のみを滴下して散布し、冷房負荷が高い場合は、メイン貯留箱から連通穴を介してサブ貯留箱に液体を送ることで、メイン貯留箱およびサブ貯留箱の液体を滴下して散布させるので、冷房負荷に応じて、液体の滴下量を調整することができる。その結果、冷房負荷に応じた均一な散布を行うことができ、部分負荷性能を向上させることができる。
【0010】
第2の発明は、前記サブ貯留箱の上方に、前記連通穴に対して所定間隔をもって配置されるガイド板が設けられている。
これによれば、ガイド板を設けているので、連通穴から液体が流れる際に、液体がサブ貯留箱の外側に飛び散ってしまうことを確実に防止することができる。
【0011】
第3の発明は、伝熱管は、吸収器に設けられる伝熱管であり、前記液体は、吸収液である。
これによれば、冷房負荷に応じて、吸収器の伝熱管への吸収液の滴下量を調整することができ、その結果、冷房負荷に応じた均一な散布を行うことができ、部分負荷性能を向上させることができる。
【0012】
第4の発明は、伝熱管は、蒸発器に設けられる伝熱管であり、前記液体は、冷媒である。
これによれば、冷房負荷に応じて、蒸発器の伝熱管への冷媒の滴下量を調整することができ、その結果、冷房負荷に応じた均一な散布を行うことができ、部分負荷性能を向上させることができる。
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態を説明する。
図1は、本実施の形態に係る吸収式冷凍機の概略構成図である。吸収式冷凍機100は、冷媒に水を、吸収液に臭化リチウム(LiBr)水溶液を使用し、この吸収液を、ガス燃料で加熱する吸収冷温水機である。
【0014】
吸収式冷凍機100は、図1に示すように、蒸発器1と、この蒸発器1に並設された吸収器2と、これら蒸発器1および吸収器2を収納した蒸発器吸収器胴3と、ガスバーナ4を備えた高温再生器5と、低温再生器6と、この低温再生器6に並設された凝縮器7と、これら低温再生器6および凝縮器7を収納した低温再生器凝縮器胴8とを備える。
また、吸収式冷凍機100は、低温熱交換器12と、高温熱交換器13と、冷媒ドレン熱回収器17と、稀吸収液ポンプ45と、濃吸収液ポンプ47と、冷媒ポンプ48とを備え、これらの各機器が吸収液管21,23,24,25および冷媒管31,32,34,35などを介して配管接続されて循環経路が構成されている。
【0015】
蒸発器1には、蒸発器1内で冷媒と熱交換したブラインを、図示しない熱負荷(例えば、空気調和装置)に循環供給するための冷水管14が設けられており、この冷水管14の一部に形成された伝熱管14Aが蒸発器1内に配置されている。
吸収器2および凝縮器7には、吸収器2および凝縮器7に順次冷却水を流通させるための冷却水管15が設けられており、この冷却水管15の一部に形成された各伝熱管15A、15Bがそれぞれ吸収器2および凝縮器7内に配置されている。
【0016】
吸収器2は、蒸発器1で蒸発した冷媒蒸気を吸収液に吸収させ、蒸発器吸収器胴3内の圧力を高真空状態に保つ機能を有する。この吸収器2の下部には、冷媒蒸気を吸収して稀釈された稀吸収液が溜る稀吸収液溜り2Aが形成され、この稀吸収液溜り2Aには、稀吸収液ポンプ45を有する稀吸収液管21の一端が接続されている。稀吸収液管21は、稀吸収液ポンプ45の下流側で分岐する分岐稀吸収液管21Aを備える。稀吸収液ポンプ45は、インバータ制御可能なポンプとされており、インバータ周波数を制御することにより、稀吸収液ポンプ45の駆動量を可変することができるように構成されている。
この分岐稀吸収液管21Aは冷媒ドレン熱回収器17を経由した後に、稀吸収液管21の低温熱交換器12の下流側で再び稀吸収液管21に合流する。この稀吸収液管21の他端は、高温熱交換器13を経由した後、高温再生器5内に形成された熱交換部5Aの上方に位置する気層部5Bに開口している。
稀吸収液管21は、低温熱交換器12の下流側で第2分岐管21Bに分岐され、第2分岐管21Bは低温再生器6内に開口している。
【0017】
高温再生器5は、シェル60内にガスバーナ4を収容して構成され、このガスバーナ4の上方に当該ガスバーナ4の火炎を熱源として吸収液を加熱再生する熱交換部5Aが形成されている。この熱交換部5Aには、ガスバーナ4で燃焼された排気ガスが流通する排気経路40が接続され、この排気経路40には、排ガス熱交換器41が設けられている。また、ガスバーナ4には、燃料ガスが供給されるガス管61と、ブロワ62からの空気が供給される吸気管63とが接続され、これらガス管61および吸気管63には、燃料ガスおよび空気の量を制御する制御弁64が設けられている。ガス管61には、ガス流量計65が設けられている。
【0018】
熱交換部5Aの側方には、この熱交換部5Aで加熱再生された後に当該熱交換部5Aから流出した中間吸収液が溜る中間吸収液溜り5Cが形成されている。この中間吸収液溜り5Cの下端には第2中間吸収液管23の一端が接続され、この第2中間吸収液管23には高温熱交換器13が設けられている。この高温熱交換器13は、中間吸収液溜り5Cから流出した高温の中間吸収液の温熱で稀吸収液管21を流れる吸収液を加熱するものであり、高温再生器5におけるガスバーナ4の燃料消費量の低減を図っている。
第2中間吸収液管23の他端は、低温再生器6と吸収器2とを繋ぐ濃吸収液管25に接続されている。また、第2中間吸収液管23の高温熱交換器13上流側と吸収器2とは開閉弁V1が介在する吸収液管24により接続されている。
【0019】
低温再生器6は、高温再生器5で分離された冷媒蒸気を熱源として、低温再生器6内に形成された吸収液溜り6Aに溜った吸収液を加熱再生するものであり、吸収液溜り6Aには、高温再生器5の上端部から低温再生器6の底部に延びる冷媒管31の一部に形成される伝熱管31Aが配置されている。この冷媒管31に冷媒蒸気を流通させることにより、伝熱管31Aを介して、冷媒蒸気の温熱が吸収液溜り6Aに溜った吸収液に伝達され、この吸収液が更に濃縮される。
低温再生器6の吸収液溜り6Aには、濃吸収液管25の一端が接続され、この濃吸収液管25の他端は、吸収器2の気層部2B上部に設けられる濃液散布器2Cに接続されている。濃吸収液管25には濃吸収液ポンプ47および低温熱交換器12が設けられている。この低温熱交換器12は、低温再生器6の吸収液溜り6Bから流出した濃吸収液の温熱で稀吸収液管21を流れる稀吸収液を加熱するものである。
【0020】
また、濃吸収液管25には、濃吸収液ポンプ47および低温熱交換器12をバイパスするバイパス管27が設けられている。
濃吸収液ポンプ47の運転が停止した場合には、低温再生器6の吸収液溜り6Aに溜った吸収液は、濃吸収液管25およびバイパス管27を通じて吸収器2内に供給される。
【0021】
前述のように、高温再生器5の気層部5Bと凝縮器7の底部に形成された冷媒液溜り7Aとは、冷媒管31により接続される。この冷媒管31は、低温再生器6の吸収液溜り6Aに配管された伝熱管31Aおよび冷媒ドレン熱回収器17を備えている。この冷媒管31の伝熱管31Aの上流側と吸収器2の気層部2Bとは開閉弁V2が介在する冷媒管32により接続されている。
【0022】
また、凝縮器7の冷媒液溜り7Aには、この冷媒液溜り7Aから流出した冷媒が流れる冷媒管34の一端が接続され、この冷媒管34の他端は、下方に湾曲したUシール部34Aを介して蒸発器1の気層部1Aに接続されている。
蒸発器1の下方には、液化した冷媒が溜る冷媒液溜り1Bが形成され、この冷媒液溜り1Bと蒸発器1の気層部1Aの上部に配置される散布器1Cとは冷媒ポンプ48が介在するに冷媒管35により接続されている。
【0023】
また、本実施の形態の吸収式冷凍機100は、抽気装置70を備えており、抽気装置70は、タンク71を備えている。タンク71の上部には、吸収器2の気層部2Bに連通する抽気管72が接続されている。タンク71の底部には、吸収器2の下方に連通する戻り管73が接続されている。さらに、タンク71の上部には、エジェクタポンプ74を介して稀吸収液管21に接続される吸収液管75が接続されている。
そして、エジェクタポンプ74を駆動することにより、吸収液管75を介して稀吸収液管21の稀吸収液をタンク71に取り込む。吸収液管75により流れ込んだ稀吸収液により、タンク71の内部が負圧となり、これにより、吸収器2の上部に貯留されている不凝縮ガスのみならず冷媒蒸気、気化した吸収液などが抽気管72を通ってタンク71の上方に導かれる。
【0024】
タンク71に導かれたガスのうち、冷媒蒸気と気化した吸収液は、タンク71の下方に溜まっている吸収液に溶け込んで吸収されるが、不凝縮ガスは吸収液に溶け込むことができないので、タンク71の上方に溜められる。そして、タンク71の下方に溜まった吸収液は、戻り管73を通って吸収器2に戻される。
【0025】
次に、本実施の形態の吸収器の構造について説明する。
図2は、吸収器の構造を示す概略側面図である。図3は、吸収器の構造を示す概略平面図である。図4は、分配箱の低冷房負荷での使用状態を示す概略図である。図5は、分配箱の高冷房負荷での使用状態を示す概略図である。
図2および図3に示すように、吸収器2の内部には、多数の伝熱管15Aが配置されている。伝熱管15Aの内部には、冷却水が導通される。伝熱管15Aは、端部で折り返して蛇行するように形成されており、縦方向および横方向に複数の伝熱管15Aが配列するように構成されている。
【0026】
伝熱管15Aの上方には、複数の下トレイ51が配置されている。下トレイ51は、図において、奥行き方向に延在するように構成されており、下トレイ51の下面には、吸収液を伝熱管15Aに滴下させるための滴下用穴52が形成されている。
また、下トレイ51の上方には、下トレイ51に対して直交する方向に延在する複数(本実施の形態においては、3つ)の上トレイ53が配置されている。上トレイ53は、図2において、横方向に延在して配置されており、図3の横方向に所定間隔をもって配置されている。上トレイ53の下面には、上トレイ53に滴下された吸収液を下トレイ51に滴下するための滴下用穴54が形成されている。
【0027】
上トレイ53の上方には、分配箱55が配置されている。分配箱55は、吸収液が送られるメイン貯留箱56と、メイン貯留箱56の一側に一体に取り付けられたサブ貯留箱57とから構成されている。メイン貯留箱56の下面には、2つの滴下用穴58が形成されており、サブ貯留箱57の下面には、1つの滴下用穴59が形成されている。
【0028】
メイン貯留箱56の側面上方には、サブ貯留箱57に連通する連通穴80が形成されている。連通穴80は、メイン貯留箱56の下面から所定高さに設けられている。すなわち、メイン貯留箱56に吸収液が供給された場合に、吸収液の水位が連通穴80に達するまでは、メイン貯留箱56の滴下用穴58を介して上トレイ53に滴下される。
そして、吸収液の水位が連通穴80に達すると、連通穴80を介して、メイン貯留箱56の内部に貯留されている吸収液の一部がサブ貯留箱57に送られる。この状態で、吸収液は、メイン貯留箱56の滴下用穴58およびサブ貯留箱57の滴下用穴59の両方から上トレイ53に滴下されることになり、吸収液の滴下量を増大させることが可能となる。
【0029】
また、サブ貯留箱57の上方には、サブ貯留箱57の上面の一部を被覆する上部板81と、上部板81の先端部から下方に延在して連通穴80に対向するように配置される側部板82とからなるガイド板83が設けられている。
ガイド板83は、連通穴80に対して所定間隔をもって配置され、メイン貯留箱56からサブ貯留箱57に連通穴80を介して送られる吸収液の飛び跳ねを防止するものである。
【0030】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
冷房運転時においては、冷水管14を介して図示しない熱負荷にブライン(例えば、冷水)が循環供給される。
この場合、吸収器2からの稀吸収液は、稀吸収液管21を介して稀吸収液ポンプ45により低温熱交換器12および高温熱交換器13または排ガス熱交換器41を経由して加熱され高温再生器5に送られる。
高温再生器5に送られた吸収液は、この高温再生器5でガスバーナ4による火炎および高温の燃焼ガスにより加熱されるため、この吸収液中の冷媒が蒸発分離する。高温再生器5で冷媒を蒸発分離して濃度が上昇した中間吸収液は、高温熱交換器13を経由して濃吸収液管25に送られ、低温再生器6を経由した吸収液と合流する。
【0031】
一方、低温再生器6に送られた吸収液は、高温再生器5から冷媒管31を介して供給されて伝熱管31Aに流入する高温の冷媒蒸気により加熱され、さらに冷媒が分離して濃度が一段と高くなり、この濃吸収液が高温再生器5を経由した上記吸収液と合流し、濃吸収液ポンプ47により低温熱交換器12を経由して吸収器2に送られ、濃液散布器2Cから散布される。
【0032】
低温再生器6で分離生成した冷媒は、凝縮器7に入って凝縮して冷媒液溜り7Aに溜る。そして、冷媒液溜り7Aに冷媒液が多く溜まると、この冷媒液は冷媒液溜り7Aから流出し、冷媒管34を経由して蒸発器1に入り、冷媒ポンプ48の運転により揚液されて散布器1Cから冷水管14の伝熱管14Aの上に散布される。
伝熱管14Aの上に散布された冷媒液は、伝熱管14Aの内部を通るブラインから気化熱を奪って蒸発するため、伝熱管14Aの内部を通るブラインは冷却され、こうして温度を下げたブラインが冷水管14から熱負荷に供給されて冷房などの冷却運転が行われる。
そして、蒸発器1で蒸発した冷媒は吸収器2に入り、低温再生器6より供給されて上方から散布される濃吸収液に吸収されて、吸収器2の稀吸収液溜り2Aに溜り、稀吸収液ポンプ45によって高温再生器5に搬送される循環を繰り返す。
【0033】
本実施の形態においては、吸収器2において、分配箱55に吸収液が供給された場合、吸収液は、メイン貯留箱56に貯留される。この場合に、冷房負荷が、例えば、50%より低い場合は、図4に示すように、吸収液の水位は、連通穴80の設置高さに到達せず、メイン貯留箱56のみに貯留されることになる。
そして、メイン貯留箱56の吸収液は、滴下用穴58を介して上トレイ53に滴下され、さらに、滴下用穴54を介して上トレイ53から下トレイ51に滴下される。下トレイ51に滴下した吸収液は、滴下用穴52を介して下トレイ51から伝熱管15Aに滴下して散布される。
【0034】
また、冷房負荷が、例えば、50%を超えた場合には、メイン貯留箱56に供給される吸収液の量が増えるため、吸収液の水位が連通穴80に到達する。そのため、図5に示すように、メイン貯留箱56に貯留された吸収液の一部が連通穴80を介してサブ貯留箱57に流れる。
このとき、ガイド板83を設けているので、連通穴80から吸収液が流れる際に、吸収液がサブ貯留箱57の外側に飛び散ってしまうことを確実に防止することができる。
【0035】
そして、メイン貯留箱56およびサブ貯留箱57に貯留された吸収液は、それぞれ滴下用穴58,59を介して上トレイ53に滴下される。その後、吸収液は、同様に、上トレイ53から下トレイ51を介して、伝熱管15Aに散布される。これにより、吸収液は、メイン貯留箱56およびサブ貯留箱57から滴下されるので、吸収液の滴下量を増大させることが可能となる。
このように、本実施の形態においては、冷房負荷に応じて、吸収液の滴下量を調整することができ、冷房負荷に応じた均一な散布を行うことが可能となる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態においては、高温再生器5、低温再生器6、蒸発器1、凝縮器7および吸収器2を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成し、伝熱管15Aに吸収液(液体)を散布するための分配箱55を備え、分配箱55は、メイン貯留箱56とサブ貯留箱57とを備え、メイン貯留箱56に貯留される吸収液が所定の水位になった場合に、吸収液をサブ貯留箱57に供給する連通穴80を形成した。
これによれば、冷房負荷が低い場合は、メイン貯留箱56に貯留される吸収液のみを滴下して散布し、冷房負荷が高い場合は、メイン貯留箱56から連通穴80を介してサブ貯留箱57に吸収液を送ることで、メイン貯留箱56およびサブ貯留箱57の吸収液を滴下して散布させるので、冷房負荷に応じて、吸収液の滴下量を調整することができる。その結果、冷房負荷に応じた均一な散布を行うことができ、部分負荷性能を向上させることができる。
【0037】
また、本実施の形態においては、サブ貯留箱57の上方に、連通穴80に対して所定間隔をもって配置されるガイド板83が設けられている。
これによれば、ガイド板83を設けているので、連通穴80から吸収液(液体)が流れる際に、吸収液がサブ貯留箱57の外側に飛び散ってしまうことを確実に防止することができる。
【0038】
なお、本実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は前記実施の形態に限定されない。
例えば、本実施の形態では、吸収器2の伝熱管15Aに、液体として吸収液を散布する場合の例を示したが、例えば、蒸発器1の伝熱管14Aに、液体として冷媒を散布する場合に適用してもよい。
【0039】
また、高温再生器5にて吸収液を加熱する加熱手段として燃料ガスを燃焼させて加熱を行うガスバーナ4を備える構成について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、灯油やA重油を燃焼させるガスバーナを備える構成や、蒸気や排気ガスなどの温熱を用いて加熱する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 蒸発器
2 吸収器
4 ガスバーナ
5 高温再生器
6 低温再生器
7 凝縮器
51 下トレイ
52,54,58,59 滴下用穴
53 上トレイ
55 分配箱
56 メイン貯留箱
57 サブ貯留箱
70 抽気装置
80 連通穴
81 上部板
82 側部板
83 ガイド板
100 吸収式冷凍機
図1
図2
図3
図4
図5