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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】半導体素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/06 20100101AFI20230113BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230113BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20230113BHJP
   H01L 33/14 20100101ALI20230113BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20230113BHJP
【FI】
H01L33/06
H01L21/205
H01L31/10 A
H01L33/14
H01L33/32
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018530837
(86)(22)【出願日】2017-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 KR2017012345
(87)【国際公開番号】W WO2018212416
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】10-2017-0062513
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521268118
【氏名又は名称】スージョウ レキン セミコンダクター カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】ペク,カンソン
(72)【発明者】
【氏名】ナ,チョンホ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,テソプ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,チョンヒョン
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0062944(KR,A)
【文献】米国特許第08669585(US,B1)
【文献】特開2012-069901(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103972334(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0270436(US,A1)
【文献】特開2015-050247(JP,A)
【文献】特開2013-008931(JP,A)
【文献】特開2008-103721(JP,A)
【文献】特開2006-128607(JP,A)
【文献】特開2002-299685(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0046666(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子は、
基板、
前記基板上に配置される第一導電型半導体層、
前記第一導電型半導体層上に配置される第一半導体層、
前記第一半導体層上に配置される活性層、及び
前記活性層上に配置される第二導電型半導体層を備え、
前記第一半導体層は、前記活性層から前記第一導電型半導体層に向かって順次配置される第一層、第二層、及び第三層を有し、
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF‐SIMS)を用いて、前記半導体素子上に一次イオンを照射し、二次イオンを放出し、前記二次イオンとして検出されたInイオンの強度及びSiイオンの強度を獲得すると、
前記活性層は、前記Inイオンの第一ピーク強度を含み、
前記第二層は、前記Inイオンの第二ピーク強度を含み、
前記第三層は、前記Inイオンの第三ピーク強度を含み、
前記Inイオンの第一ピーク強度は、前記半導体素子のInイオン強度のうち、最も高いピーク強度を含み、
前記第二層は、前記第一層と接触し、
前記Inイオンの第二ピーク強度は、前記Inイオンの第一ピーク強度及び前記Inイオンの第三ピーク強度の間に位置し、
前記活性層におけるInイオンの第一ピーク強度は、前記第一層におけるInイオンの強度のうち、最も高いイオン強度よりも高く、
前記第一層におけるInイオンの強度のうち、最も高いイオン強度は、前記第二層におけるInイオンの第二ピーク強度よりも高く、
前記活性層におけるInイオンの強度は、複数のピークを有し、
前記活性層におけるInイオン強度の複数のピークの値は、前記活性層におけるInイオンの第一ピーク強度の値に近似し、
前記第一層におけるInイオンの強度は、複数のピークを有し、
前記第一層におけるInイオン強度の複数のピークの値は、前記第一層におけるInイオンの強度のうち、最も高いイオン強度の値に近似し、
前記第二層におけるInイオンの強度は、複数のピークを有し、
前記第二層におけるInイオン強度の複数のピークの値は、前記第二層におけるInイオンの第二ピーク強度の値に近似
前記第一導電型半導体層におけるSiイオン強度は、前記半導体素子における最も高いSiイオン強度であり、
前記第三層におけるSiイオン強度は、前記第一導電型半導体層におけるSiイオン強度より低く、
前記活性層におけるSiイオン強度は、前記第三層におけるSiイオン強度より低い、
半導体素子。
【請求項2】
前記活性層における前記Inイオンの第一ピーク強度は、前記半導体素子のInイオン強度のうち、最も高い強度である請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記飛行時間型二次イオン質量分析法において、
一次イオンの加速電圧は20~30keVであり、
一次イオンの電流は0.1pA~5.0pAであり、
前記半導体素子上に照射する一次イオンの照射面積は20nm×20nmである請求項1に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記第三層におけるInイオンの強度は、複数のピークを有し、
前記第三層におけるInイオン強度の複数のピークの値は、前記第三層におけるInイオンの第三ピーク強度の値に近似する、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項5】
前記Inイオンの第一ピーク強度と前記Inイオンの第二ピーク強度の差である第一差は、D1であり、
前記Inイオンの第一ピーク強度と前記Inイオンの第三ピーク強度の差である第二差は、D2であり、
前記D1とD2の比率は、1:2である、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項6】
前記第一層のIn含有量は、前記活性層のIn含有量の60%~80%である、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項7】
前記第二層のIn含有量は、前記活性層のIn含有量の20%~30%である、又は前記第一層のIn含有量の30%~40%である、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項8】
前記第三層のIn含有量は、前記活性層のIn含有量の5%~10%である、又は前記第二層のIn含有量の20%~30%である、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項9】
前記活性層は、InGaN/GaNの超格子構造であり、In含有量が9%~14%である、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項10】
前記第一層は、InGaN/GaNの超格子構造であり、In含有量が6%~9%である、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項11】
前記第一層におけるInGaN層の厚さとGaN層の厚さの比率は1:7~1:25である、請求項10に記載の半導体素子。
【請求項12】
前記第二層は、InGaN/GaNの超格子構造であり、In含有量が3%~6%である、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項13】
前記第二層におけるInGaN層の厚さとGaN層の厚さの比率は1:1~1:2である、請求項12に記載の半導体素子。
【請求項14】
前記第三層は、InGaN/GaNの超格子構造であり、In含有量が1%~3%である、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項15】
前記第三層におけるInGaN層の厚さとGaN層の厚さの比率は1:3~1:8である、請求項14に記載の半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子及びそれを含む半導体素子パッケージに係り、さらに詳しくは、半導体素子の結晶性を改善して、光特性、電気的特性、及び信頼性を向上させ、ブルーシフトを防止可能な半導体素子及びそれを含む半導体素子パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
GaN、AlGaN等の化合物を含む窒化物半導体は、広くて調整が容易なバンドギャップエネルギーを有するなどの多くの利点を有し、半導体素子、受光素子、及び各種のダイオード等として多様に用いられる。
【0003】
特に、半導体のIII‐V族またはII‐VI族化合物半導体物質を用いた発光ダイオード(Light Emitting Diode)やレーザーダイオードのような発光素子は、薄膜成長技術及び素子材料の開発により、赤色、緑色、青色及び紫外線等の様々な色を具現することができ、蛍光物質を用いたり、色を組み合わせたりすることによって効率の良い白色光線も具現可能であり、蛍光灯、白熱灯等の既存の光源に比べて低消費電力、半永久的な寿命、速い応答速度、安全性、環境親和性の利点を有する。
【0004】
例えば、窒化物半導体は、高い熱的安定性と幅広いバンドギャップエネルギーにより、光素子及び高出力電子素子の開発分野で大きな関心を集めている。特に、窒化物半導体を用いた青色(Blue)発光素子、緑色(Green)発光素子、紫外線(UV)発光素子等は、商用化されて広く用いられている。
【0005】
加えて、光検出器や太陽電池のような受光素子も、半導体のIII‐V族またはII‐VI族化合物半導体物質を用いて作製する場合、素子材料の開発により、多様な波長領域の光を吸収して、光電流を生成することにより、ガンマ線からラジオ波長領域まで、多様な波長領域の光を用いることができる。また、速い応答速度、安全性、環境親和性、及び素子材料の調節が容易であるという利点を有し、電力制御または超高周波回路や通信用モジュールにも容易に用いることができる。
【0006】
最近、高効率LEDの需要が増加するにつれて、光度の改善が争点となっている。発光素子の光度を改善する方法として、活性層にキャリアを集中させることが重要である。モビリティの高い電子を活性層内に閉じ込めるために、エネルギー準位の高い電子障壁層(EBL)を導入する技術が提案されている。
【0007】
しかしながら、依然として、ブルーシフト現象によって効率が低下する等の問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ブルーシフト現象を防止することができる半導体素子を提供することを目的とする。
【0009】
また、活性層に加えられる応力を漸進的に減少させることのできる半導体素子を提供し、前記半導体素子の光学的、電気的特性、及び信頼性を改善することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明による半導体素子は、基板、前記基板上に配置される第一導電型半導体層、前記第一導電型半導体層上に配置される活性層、及び前記活性層上に配置される第二導電型半導体層を備え、前記第一導電型半導体層は、インジウム(In)組成比が相違した第一層、第二層、及び第三層を有し、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF‐SIMS)により、前記第一導電型半導体層及び前記活性層を測定するとき、インジウム(In)イオンの規格化した二次イオン強度が複数の変曲点を有し、前記変曲点は、前記活性層に現れる第一高点と第一低点、前記第一層に現れる第二高点と第二低点、前記第二層に現れる第三高点と第三低点、及び前記第三層に現れる第四高点と第四低点を有し、前記第一高点は、前記第二高点よりも高く、前記第二高点は、前記第三高点よりも高く、前記第三高点は、前記第四高点よりも高い。
【0011】
本発明の実施例において、前記第一層の第二高点は、前記活性層の第一低点よりもインジウム(In)イオンの規格化した二次イオン強度が高く、前記第二層の第三高点は、前記第一層の第二低点よりもインジウム(In)イオンの規格化した二次イオン強度が高く、前記第三層の第四高点は、前記第二層の第三低点よりもインジウム(In)イオンの規格化した二次イオン強度が高くてもよい。
【0012】
本発明の実施例において、前記第一層のインジウム含有量は、前記活性層のインジウム含有量の60~80%であってもよい。
【0013】
本発明の実施例において、前記第二層のインジウム含有量は、前記活性層のインジウム含有量の20~30%であり、または第一層のインジウム含有量の30~40%であってもよい。
【0014】
本発明の実施例において、前記第三層のインジウム含有量は、前記活性層のインジウム含有量の5~10%であり、または第二層のインジウム含有量の20~30%であってもよい。
【0015】
本発明の実施例において、前記活性層の第一高点を基準として、前記第二層の第三高点と前記活性層の第一高点との差は、前記第三層の第四高点と前記活性層の第一高点との差の0.5倍であってもよい。
【0016】
本発明の実施例において、前記活性層は、InGaN/GaNの超格子構造であり、インジウム(In)組成比は14%であってもよい。
【0017】
本発明の実施例において、前記第一層は、InGaN/GaNの超格子構造であり、インジウム(In)組成比は6~9%であってもよい。
【0018】
本発明の実施例において、前記第二層は、InGaN/GaNの超格子構造であり、インジウム(In)組成比は3~6%であってもよい。
【0019】
本発明の実施例において、前記第三層は、InGaN/GaNの超格子構造であり、インジウム(In)組成比は1~3%であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、活性層に加えられる応力を漸進的に減少させ、光出力を改善し、光効率を向上させることができる。
【0021】
また、ブルーシフトを防止し、光効率を向上させることができる。
【0022】
また、応力を漸進的に減少させ、電気的特性及び半導体素子の信頼性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例による半導体素子を示す断面図である。
図2】本発明の実施例による半導体素子の第一層を示す断面図である。
図3】本発明の実施例による半導体素子の第二層を示す断面図である。
図4】本発明の実施例による半導体素子の第三層を示す断面図である。
図5】本発明の他の実施例による半導体素子を示す断面図である。
図6】本発明の実施例による半導体素子において、活性層150から第三層までのインジウム含有量の比率を示す図である。
図7】本発明の実施例による半導体素子の飛行時間型二次イオン質量分析法(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry、SIMS)の結果を示す図である。
図8】本発明の実施例による半導体素子の飛行時間型二次イオン質量分析法(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry、SIMS)の結果を示す図である。
図9】本発明の実施例による半導体素子パッケージを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施例は、他の形態に変更され、またはいくつかの実施例が互いに組み合わせられてもよく、本発明の範囲が後述するそれぞれの実施例に限定されるものではない。
【0025】
特定の実施例で説明された事項が、他の実施例において説明されていなくても、他の実施例において、その事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の実施例に関連した説明と理解され得る。
【0026】
例えば、特定の実施例において、構成Aについての特徴を説明し、他の実施例において、構成Bについての特徴を説明していれば、構成Aと構成Bが結合された実施例が明示的に記載されていなくても、反対または矛盾する説明がない限り、本発明の権利範囲に属するものと理解されなければならない。
【0027】
以下、添付した図面を参照して、上記した目的を具体的に実現可能な本発明の実施例について説明する。
【0028】
本発明による実施例の説明において、各構成要素の「上または下」に形成されるものと記載された場合、上または下とは、2つの構成要素が互いに直接接触し、または1つ以上の他の構成要素が前記2つの構成要素間に配置されて形成されることを全て含む。また、「上または下」と表現される場合、1つの構成要素を基準として、上方方向のみならず、下方方向の意味も含まれる。
【0029】
図1は、本発明の一実施例による半導体素子100を示す断面図である。
【0030】
図1を参照すると、半導体素子100は、基板110、基板上に配置され、第一導電型半導体層130、第二導電型半導体層170、及び第一導電型半導体層130と第二導電型半導体層170との間に配置される活性層150を有する半導体構造物200と、半導体構造物200と電気的に連結される第一電極192及び第二電極194とを備えてもよい。
【0031】
また、第一導電型半導体層130と活性層150との間には、多数の半導体層が配置され、活性層150と第二導電型半導体層170との間には、遮断層160が配置され、第一導電型半導体層130上には、第一電極192が配置され、第二導電型半導体層170上には、投光性電極層180及び第二電極194が配置されている。
【0032】
基板110は、熱伝導性に優れた物質で形成され、伝導性基板または絶縁性基板であってもよい。例えば、基板110は、サファイア(AlО)、SiC、Si、GaAs、GaN、ZnO、GaP、InP、Ge、及びGaの少なくとも一つを用いてもよい。基板110は、例えば、AlNテンプレートであってもよい。基板110の上面及び/または下面には、複数の突出部(図示せず)が形成されてもよく、複数の突出部のそれぞれは、側断面が半球状、多角形状、楕円状の少なくとも一つを含み、ストライプ状またはマトリクス状に配列されてもよい。突出部は、光抽出効率を改善させることができる。
【0033】
基板110上には、半導体構造物200が配置され、半導体構造物200を配置するための装備は、電子ビーム蒸着機、PVD(physical vapor deposition)、CVD(chemical vapor deposition)、PLD(plasma laser deposition)、二重型の熱蒸着機(dual‐type thermal evaporator)、スパッタリング(sputtering)、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)等があるが、これに限定されるものではない。
【0034】
一方、半導体構造物200は、バッファ層120、第一導電型半導体層130、第一半導体層142、第二半導体層144、第三半導体層146、活性層150、第二導電型半導体層170、及び遮断層160を有しているが、これらの構成については後述する。
【0035】
基板110上には、バッファ層120が配置されている。
【0036】
バッファ層120は、基板110と第一導電型半導体層130との間の格子不整合を緩和し、導電型半導体が成長されやすくする。バッファ層120は、III‐V族化合物半導体、例えば、GaN、InN、AlN、InGaN、AlGaN、InAlGaN、AlInNの少なくとも一つで形成されてもよい。バッファ層の上には、アンドープ半導体層(図示せず)が形成されてもよい。
【0037】
バッファ層120上には、第一導電型半導体層130が配置されている。
【0038】
第一導電型半導体層130は、III-V族、II-VI族等の化合物半導体で具現され、第一ドーパントがドープされてもよい。第一導電型半導体層130は、AlGa1‐xN(0≦x≦1)の組成式を有する半導体材料で具現され得る。第一導電型半導体層130は、例えば、GaN、AlN、AlGaN、InGaN、InN、InAlGaN、AlInN、AlGaAs、GaP、GaAs、GaAsP、AlGaInP等から選ばれてもよい。また、第一ドーパントは、Si、Ge、Sn、Se、Teのようなn型ドーパントであってもよい。第一ドーパントがn型ドーパントである場合、第一導電型半導体層130は、n型半導体層であってもよい。
【0039】
第一導電型半導体層130上には、活性層150が配置されている。
【0040】
活性層150は、第一導電型半導体層130から注入される電子(または正孔)と、第二導電型半導体層170から注入される正孔(または電子)が出会う層である。活性層150は、電子と正孔が再結合することにより、低いエネルギー準位に遷移し、特定の波長を有する光を生成することができる。
【0041】
活性層150は、単一井戸構造、多重井戸構造、単一量子井戸構造、多重量子井戸(Multi Quantum Well;MQW)構造、量子点構造、または量子線構造のいずれか一つの構造を有してもよく、活性層150の構造は、これに限定されない。
【0042】
活性層150は、化合物半導体で具現され得る。活性層150は、例えば、II‐VI族及びIII‐V族化合物半導体の少なくとも一つで具現され得る。
【0043】
活性層150が多重井戸構造で具現された場合、活性層150は、複数の井戸層と複数の障壁層を有する。このとき、井戸層と障壁層が交互に配置されてもよく、井戸層と障壁層のペアを2~30周期で形成してもよい。活性層150は、InGaN/GaN、InAlGaN/GaN、GaAs(InGaAs)/AlGaAs、GaP(InGaP)/AlGaPのいずれか一つ以上のペア構造であってもよい。活性層150は、InGaN/GaN積層構造またはInGaN/InGaN積層構造であってもよく、InGaNのインジウム(In)含量は、9%以上~14%以下であってもよい。活性層150は、発光しようとする光の波長に対応するインジウム含量を含んでもよい。実施例では、フォトルミネセンス(photo luminescence、以下PLという)または積分球等のような光検出器で発光構造物を測定するとき、410nm以上~470nm以下の波長において、光の相対的強度が最も高い主波長を有する半導体構造物200を例示として、他の構成要素との関係について説明する。
【0044】
第一導電型半導体層130と活性層150との間には、多数の半導体層が配置されている。活性層150に隣接して第一半導体層142が配置され、第一半導体層の下に第二半導体層144が配置され、第二半導体層の下に第三半導体層146が配置されている。第一半導体層、第二半導体層、第三半導体層は超格子層であってもよく、AlGaN、InGaN層とGaN層が繰り返して積層されたInGaN/GaN、AlGaN/GaN、InGaN/AlGaN構造を含んでもよく、これに限定されない。
【0045】
半導体構造物200は、インジウム(In)を含み、Inの含量は、基板110から半導体構造物200の表面方向に行くほど漸進的に増加する。例えば、半導体構造物200の下部から上部に行くほどInの含量は増加され、第一半導体層142のIn含量が第三半導体層146のIn含量よりも多い。半導体構造物200が、GaN基盤で構成される物質である場合、電子の移動度と正孔の移動度が相違している。電子の移動度が正孔の移動度よりも10倍以上~1000倍以下と高い。例えば、第一導電型半導体層130がn型ドーパントを含むn型半導体であり、第二導電型半導体層170がp型ドーパントを含むp型半導体であると、第一導電型半導体層130から活性層150に注入される電子の移動度が、第二導電型半導体層170から活性層150に注入される正孔の移動度よりも高いので、電子が活性層150において発光性再結合する確率に比べて、活性層150を経て第二導電型半導体層170に注入され、非発光性再結合する確率が高く、活性層150内に注入される電子と正孔の均衡が取れず、それにより半導体素子100の光学的特性が低下してしまう。また、GaN基盤の物質で構成される半導体物質は、Inを多く含むほど、伝導帯(Ec)と値電子帯(Ev)の差であるエネルギーバンドギャップ(Eg)が小さくなる。したがって、基板110から活性層150への第一方向に行くほど、In含量が多くなるというのは、第一方向に沿ってエネルギーバンドギャップ(Eg)が小さくなるという意味を含んでいる。実施例において、半導体構造物200がGaN基盤の物質で構成される場合、電子の移動度は、正孔の移動度に比べて大きいので、第一方向に行くほど小さくなるエネルギーバンドギャップ(Eg)により、基板110と活性層150との間の応力も大きくなる。したがって、本実施例では、半導体素子100から活性層150に行くほどIn含量が多くなるように複数の半導体層を配置することにより、第一方向に沿って電子が有するエネルギーが低くなり、それにより、電子の移動度と正孔の移動度の均衡が取れ、活性層150において発光性再結合を行う確率を高めることができる。また、活性層150に直接印加される応力を複数の半導体層に分散することにより、活性層150の結晶性を改善することもできる。
【0046】
活性層150のIn含量が9%以上~14%以下であれば、第一半導体層142のIn含量は6%以上~9%以下、第二半導体層144のIn含量は3%以上~6%以下、第三半導体層146のIn含量は、1%以上~3%であってもよい。上述したように、活性層150を基準として、第一半導体層142、第二半導体層144、及び第三半導体層146のIn含量は少なくなければならない。
【0047】
第一半導体層142は、第二半導体層144、第三半導体層146に比べて、活性層150の最も近くに配置されている。活性層150のIn含量が9%以上~14%以下である場合、第一半導体層142のIn含量が6%以上でなければ、活性層150と第一導電型半導体層130との間に発生した応力を緩和させず、活性層150で発光する光の波長が印加する電流や電圧により変わる現象を防止することができない。また、PLまたは積分球等のような光検出器で半導体構造物200を測定するとき、活性層150で発光する光の相対的強度が最も強いが、第一半導体層142のIn含量が9%以上であれば、活性層150で発光する光の強度に比べて、第一半導体層142の相対的な光強度が弱い。第一半導体層142の相対的な光強度が活性層150で発光する光の強度に比べて大きいと、半導体構造物200をPLまたは積分球等のような光検出器で測定するとき、活性層150で発光する主波長よりも短い波長領域において変曲点を有する。変曲点が活性層150で発光する波長の半値幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)に該当する波長よりも、相対的に強い光強度を有すると、半導体素子100の色再現率が低下する。したがって、活性層150のIn含量が9%以上~14%以下であるとき、第一半導体層142のIn含量は6%以上~9%以下で配置されなければ、半導体構造物200の応力を緩和することができず、半導体素子100の色再現率を確保することができない。
【0048】
第二半導体層144は、超格子層で配置されている。第二半導体層144は、活性層150と第一導電型半導体層130との間の応力を緩和するために、活性層150のIn含量が9%以上~14%以下であるとき、第二半導体層144のIn含量は3%以上~6%以下であることがいい。基板110が、半導体構造物200のような物質で構成されていなければ、基板110と半導体構造物200との間には、格子定数の差による応力が発生する。例えば、基板110が、サファイア基板が用いられ、半導体構造物200が、GaN基盤の物質で構成されれば、半導体構造物200と基板との間には大きな応力が発生することになる。したがって、半導体構造物200において、最も高いIn含量を有する活性層150は、半導体構造物200において格子定数が大きく、基板110と活性層150との間では大きな応力が発生する。したがって、第二半導体層144が3%以上~6%以下のInを含むようにし、活性層150と基板110との間の応力を緩和することができる。第二半導体層144は、上述したように、3%以上のIn組成を含まなければ、応力を緩和することができない。また、6%超過であれば、第一半導体層142のIn組成よりも高いので、第二半導体層144のエネルギーバンドギャップ(Eg)が第一半導体層142のエネルギーバンドギャップ(Eg)よりも大きい。第二半導体層144のエネルギーバンドギャップ(Eg)が第一半導体層142のエネルギーバンドギャップ(Eg)よりも大きいと、エネルギーバンドギャップ(Eg)に対応する伝導帯(Ec)以上のエネルギーを有する電子が、第二半導体層144から第一半導体層142に注入されない。したがって、半導体素子100の光学的及び/または電気的特性を確保するために、活性層150のIn含量が9%以上~14%以下であるとき、第二半導体層144のIn組成は3%以上~6%以下であることがいい。
【0049】
活性層150のIn含量が9%以上~14%以下であるとき、第三半導体層146のIn組成は1%以上~3%以下である。第三半導体層のIn組成が1%以上であれば、活性層150と第一導電型半導体層130との間の応力を緩和することができる。また、3%以下であれば、第二半導体層144への電子注入特性を確保し、半導体素子100の光学的及び/または電気的特性を確保することができる。
【0050】
図2乃至図4は、第一乃至第三の半導体層142、144、146をさらに詳しく示した断面図である。
【0051】
図2を参照すると、第一半導体層142はInGaN/GaNが1ペア以上~4ペア以下で積層された構造であり、InGaN層142aとGaN層142bの厚さは相違してもよい。第一半導体層142が1ペア以上であれば、活性層150と基板110との間の応力を緩和し、4ペア以下であれば、活性層150で発光する光の半値幅に該当する光の相対的強度よりも大きな相対的強度を有する光の発生を防止し、半導体素子100の色再現率を確保することができる。上述したように、光の相対的強度と半値幅は、PLまたは積分球等のような光検出器で半導体構造物200を測定したとき、半導体素子100が放出する光の波長のうち、相対的に最も大きな強度を有する波長領域である。
【0052】
InGaN層142aの厚さT1とGaN層142bの厚さT2の比率は、1:7~1:25の比率の範囲内で形成される。例えば、InGaN層の厚さT1は、2nm~3nmであり、GaN層の厚さT2は、20nm~50nmである。第一半導体層142におけるInGaN層142aの厚さT1とGaN層142bの厚さT2の比率が1:7以上であれば、活性層150に印加される圧電分極(piezoelectric field)を減らし、活性層150の発光波長の波長変化現象を抑制することができる。また、1:25以下であれば、活性層150に注入される電流拡散特性を確保し、半導体素子100の電気的及び/または光学的特性を確保することができる。
【0053】
図3を参照すると、第二半導体層144は、InGaN/GaNが積層された超格子構造である。第二半導体層144のInGaN層とGaN層の厚さは、同一であり、またはGaN層がさらに厚く形成されてもよい。InGaN層144aの厚さT3とGaN層144bの厚さT4の比率は、1:1~1:2の比率の範囲内で形成される。例えば、InGaN層144aの厚さT3は、2nm~3nmであり、GaN層144bの厚さT4は、2nm~6nmである。第二半導体層144におけるInGaN層144aの厚さT3とGaN層144bの厚さT4の比率が1:1以上であれば、活性層150に加えられる応力緩和特性を確保することができ、InGaN層144aの厚さT3とGaN層144bの厚さT4の比率が1:2以下であれば、活性層150と基板110との間の格子不整合による応力を効果的に緩和させることができる。第二半導体層144は、InGaN/GaNが3ペア以上~20ペア以下で配置される。第二半導体層144のInGaN/GaN積層構造が、3ペア以上で配置されなければ、活性層150と基板110との間の応力を緩和せず、基板110と半導体構造物200との間において、格子定数の差に起因する電位欠陥が活性層150にまで延長される問題を抑える機能を確保することができない。電位欠陥は、半導体素子100の電気的、光学的特性及び信頼性を低下させる問題を有する。第二半導体層144のInGaN/GaN積層構造が、3ペア以上であれば、電位欠陥問題を解決できるが、20ペアを超えると、第二半導体層144の抵抗が大きくなるので、半導体素子100の光学的、電気的特性を確保し難くなる。したがって、第二半導体層144がInGaN/GaN積層構造で配置される場合、第二半導体層144のInGaN/GaN積層構造は、3ペア以上~20ペアで配置することが好ましい。
【0054】
図4を参照すると、第三半導体層146は、InGaN/GaN構造で積層されてもよく、InGaN/GaN構造が積層される場合、1ペア以上~5ペア以下で配置される。InGaN層とGaN層の厚さが相違してもよく、GaN層がInGaN層よりも厚く形成されてもよい。
【0055】
InGaN層146aの厚さT5とGaN層146bの厚さT6の比率が1:3~1:8の比率の範囲内で形成される。例えば、第三半導体層146のInGaN層146aの厚さT5は、2nm~3nmであり、GaN層146bの厚さT6は、10nm~15nmである。第三半導体層146を配置する工程において、第三半導体層146におけるInGaN層146aの厚さT5とGaN層146bの厚さT6の比率が1:3以上であれば、第三半導体層146の上面と側面との間の傾斜面の成長比率を制御し、リセス構成にしやすくなる。リセスは、第三半導体層146の上面と底面との間において、低点と傾斜面を含めて谷を構成する形状であってもよく、第三半導体層146の単位面積に対するリセスの密度は、基板110と活性層150との間の応力を緩和させ、半導体構造物200の結晶性を改善することができる程度、それにより、半導体素子100が発光する波長の変移防止、及び半導体素子100の光特性、電気的特性、及び信頼性を向上させることができる程度の密度であれば、当業者に公知された密度であればよい。
【0056】
図5は、リセスが含まれた半導体素子100を示す断面図である。
【0057】
リセスRは、第二半導体層144、第一半導体層142、及び活性層150にまで延長されてもよく、リセスは、半導体素子100の光学的、電気的特性を改善できるが、あまりにも多く配置すると、半導体素子100の電気的、光学的特性、及び信頼性が低下してしまう。また、第三半導体層146におけるInGaN層146aの厚さT5とGaN層146bの厚さT6の比率が1:8以下で配置されると、第一導電型半導体層130から第三半導体層146を介して活性層150に注入される電流の電流注入特性を確保することができる。
【0058】
以上のように、In含量は、第一半導体層142、第二半導体層144、第三半導体層146、及び活性層150に行くほど徐々に減少する構造である。このように、In含量を調節することにより、応力を調節し、ブルーシフトを防止することができる。活性層150がIn含有量を9%以上~14%以下とすることにより、活性層150は、410nm以上~470nm以下の波長において、相対的な光強度が最も大きい青色波長を放出することができる。また、第一半導体層142、第二半導体層144、第三半導体層146のIn含有量が活性層に行くほど高くなることにより、活性層150内にかかる応力を漸進的に減少させることができ、第一導電型半導体層130から活性層150に注入される電子の移動度と、第二導電型半導体層170から活性層150に注入される正孔の移動度との均衡を取れ、半導体素子100の光学的、電気的特性を確保することができる。
【0059】
活性層150は、410nm以上~470nm以下の波長において、相対的な光強度が最も大きい青色波長を発光することに限定されるものではない。したがって、活性層150のIn含量を100%とすれば、第一半導体層142のIn含量は、活性層150のIn含量の60%~80%で構成され、第二半導体層144のIn含量は、第三半導体層146のIn含量に対して30%~40%で構成され、活性層150のIn含量の20%~30%で構成されてもよい。
【0060】
第三半導体層146のIn含量は、第二半導体層144のIn含量の20%~30%で構成されてもよく、活性層150のIn含量の5%~10%で構成されてもよい。
【0061】
第一半導体層142、第二半導体層144、及び第三半導体層146のIn含量は、活性層150を基準としてその範囲内で含んでもよく、その効果は、上述した通りである。
【0062】
図6は、活性層150から第三半導体層146までのIn含有量の比率を示す図である。
【0063】
図6を参照すると、活性層のIn含量を100%とすれば、活性層を基準として、第一半導体層、第二半導体層、第三半導体層のIn含量が60%~80%、20%~30%、5%~10%に漸進的に減少することが確認される。
【0064】
また、半導体構造物200がGaN基盤の物質で構成される場合、活性層150と第二導電型半導体層170との間には遮断層160が配置される。
【0065】
半導体構造物200がGaN基盤の物質で構成される場合、電子の移動度と正孔の移動度が相違し、電子の移動度が正孔の移動度よりも高いので、遮断層160は、電子障壁及び活性層のクラッディング(cladding)の役割を行い、それにより発光効率を向上させることができる。但し、これに限定されず、遮断層160は、移動度が相対的に高い搬送子が、活性層150を経て第一導電型半導体層130または第二導電型半導体層170に注入されることを防止することができ、ここで、搬送子は電子または正孔であってもよいが、これに限定されず、移動度の高い搬送子を選択してもよいことは言うまでもない。遮断層160は、InAlN/GaN層が少なくとも1ペア以上積層された構造に構成されてもよい。遮断層160のInAlN層には、第二導電型ドーパントが含まれてもよい。遮断層160は、Inの組成を制御することにより、格子不整合による応力を制御することができる。
【0066】
第二導電型半導体層170は、活性層150の上に形成され、III-V族、II-VI族等の化合物半導体で具現され、第二導電型半導体層170に第二ドーパントがドープされてもよい。第二導電型半導体層170は、AlGa1‐xN(0≦x≦1)の組成式を有する半導体物質、またはAlInN、AlGaAs、GaP、GaAs、GaAsP、AlGaInPから選ばれた物質で形成されてもよい。第二ドーパントが、Mg、Zn、Ca、Sr、Ba等のようなp型ドーパントであれば、第二ドーパントがドープされた第二導電型半導体層170は、p型半導体層である。
【0067】
第二導電型半導体層170上には、投光性電極層180が配置されている。
【0068】
投光性電極層180は、キャリアを効率よく注入することができ、活性層150から放出する光が透過されるように、単一金属または金属合金、金属酸化物、及び金属窒化物等を多重に積層してもよい。例えば、投光性電極層180は、半導体との電気的な接触に優れた物質で形成されてもよく、投光性電極層180は、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、IZTO(indium zinc tin oxide)、IAZO(indium aluminum zinc oxide)、IGZO(indium gallium zinc oxide)、IGTO(indium gallium tin oxide)、AZO(aluminum zinc oxide)、ATO(antimony tin oxide)、GZO(gallium zinc oxide)、IZON(IZO Nitride)、AGZO(Al‐Ga ZnO)、IGZO(In‐Ga ZnO)、ZnO、IrOx、RuOx、NiO、RuOx/ITO、Ni/IrOx/Au、及びNi/IrOx/Au/ITO、Ag、Ni、Cr、Ti、Al、Rh、Pd、Ir、Ru、Mg、Zn、Pt、Au、Hfの少なくとも一つを含んで形成されてもよく、これらの材料に限定されない。
【0069】
投光性電極層180上には第二電極194が配置され、上部の一部が露出した第一導電型半導体層120上には第一電極192が配置される。第一電極192及び第二電極194としては、例えば、Cr、Ti、Ag、Ni、RH、Pd、Ir、Ru、Mg、Zn、Pt、Cu、Au、Hfのいずれか一つを含む金属または合金で形成されてもよい。以降、最終的に第一電極192及び第二電極194が互いに電気的に連結されることにより、発光素子の作製が完了する。
【0070】
図7及び図8は、本発明のまた他の実施例を示す図であって、半導体構造物200を飛行時間型二次イオン質量分析法(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry、TOF‐SIMS、以下、「シムス」という。)を通じて、厚さに対する二次イオンの相対的強度を示すスペクトルである。シムスデータは、一次イオンを発光構造物の表面に照射し、放出される二次イオンの個数をカウントして分析することができ、このとき、一次イオンは、O 、Cs、Bi等から選ばれ、加速電圧は20~30keV内で、照射電流は0.1pA~5.0pA内で調節され、照射面積は20nm×20nmであってもよい。二次イオンは、半導体構造物200を構成する物質が放出されるものであって、In、Al、Ga、Si、Mg、C等の物質を指す。前記分析条件は、窒化物系化合物半導体で構成される構造物を分析するための条件であるが、これに限定されず、半導体で構成される構造物を分析するための測定条件であれば、いずれも自由に用いることができる。
【0071】
図7及び図8を参照すると、左縦軸は、二次イオンで検出されるInイオンの強度を相対的に示し、右縦軸は、二次イオンで検出されるSi及びC原子の濃度を相対的に示したものであり、左右の縦軸は共に、ログスケールを基準とする。先ず、図7に示されたシムスデータに基づいた第一実施例について説明する。第一実施例は、半導体構造物200を基礎とし、それによる半導体構造物200は、Si原子及び/またはC原子を含む第一導電型半導体層130、第一半導体層142、第二半導体層144、第三半導体層146、活性層150、及び第二導電型半導体層170を有している。
【0072】
第三半導体層146のSi原子量は、第一導電型半導体層130のSi原子量の0.05倍以上~0.2倍以下である。第三半導体層146のSi原子量が第一導電型半導体層130のSi原子量の0.05倍以上であれば、第一導電型半導体層130から第三半導体層146を介して活性層150への電流注入特性を確保し、第三半導体層146のSi原子量が第一導電型半導体層130のSi原子量の0.2倍以下であれば、第三半導体層146の電流拡散特性を確保することができる。電流注入特性及び電流拡散特性を確保できれば、半導体素子100の電気的、光学的特性も確保することができるので、第三半導体層146のSi原子量は、第一導電型半導体層130のSi原子量の0.05倍以上~0.2倍以下の範囲で含むことが好ましい。また、第三半導体層146のC原子量が第一導電型半導体層130のC原子量よりも高くてもよい。半導体構造物200がGaN基盤の物質で構成される場合、C原子を多く含有するほど抵抗が高くなる特性を有する。したがって、第三半導体層146のC原子量が第一導電型半導体層130のC原子量よりも多く、Si原子量が第一導電型半導体層130のSi原子量よりも少ないと、第三半導体層146の抵抗が高くなり、電流拡散特性を確保することができる。また、上述したように、第三半導体層146のSi原子量が範囲内で含まれていなければ、第一導電型半導体層130から第三半導体層146を介して活性層150への電流注入特性を確保することができない。
【0073】
活性層150、第一半導体層142、第二半導体層144、及び第三半導体層146のInイオンの含量が相違するので、シムスによるイオン強度が異なってくる。
【0074】
Si原子の濃度は、第一導電型半導体層130におけるSi原子の濃度を基準として、第二導電型半導体層170に行くほど低くなる。Si原子は、第一導電型半導体層130内においてドーパントとして作用し、第一導電型半導体層130の極性がn型となるように構成することができ、半導体構造物200の結晶質を向上させる機能も有するので、Si原子は、半導体構造物200内において全体的に分布することができる。但し、実施例のように、第一導電型半導体層130がn型半導体層で構成される場合、第一導電型半導体層130が含むSi原子の濃度は、半導体構造物200内において最も高い。
【0075】
第三半導体層146が含むSi原子の濃度は、第一導電型半導体層130よりも低く、活性層150が含むSi原子の濃度よりも高くなければ、第一導電型半導体層130から第三半導体層146を介して活性層150に電流を注入する特性を確保することができない。また、第二半導体層144は、半導体構造物200内においてSi原子を最も少なく含む。したがって、第三半導体層146のSi原子の濃度、第一半導体層142のSi原子の濃度及び第二半導体層144のSi原子の濃度に対するスペクトルが、第二半導体層144内において変曲点を有する。第二半導体層144が、上述した構造のように、InGaN/GaNが積層された構造で構成されると、第二半導体層144は、電流拡散特性を確保するために、半導体構造物200内においてSi原子量の濃度が最も低く配置される。
【0076】
活性層150、第一半導体層142、第二半導体層144、及び第三半導体層146のInイオンの濃度が相違しているので、シムスによるInイオンの強度が異なってくる。すなわち、活性層150におけるInイオンの含有量が最も高いので、Inイオン強度も活性層150において最も高く現れ、第一半導体層142、第二半導体層144、第三半導体層146に行くほど漸進的に低くなる。活性層150、第一半導体層142、第二半導体層144、及び第三半導体層146は、Inイオンを含む層と含まない層が交互に積層され、多数の変曲点が構成される。Inイオン強度は、一次イオンが半導体素子に照射されるとき、二次イオンとして放出されるInイオンの強度を意味する。すなわち、Inイオン強度は、In二次イオンの強度である。それぞれの層には、多数のInイオン強度に対する変曲点を含み、多数の突出部(ピーク)が形成されることが確認される。
【0077】
変曲点は、Inイオン強度が周囲地点よりも高い高点と、Inイオン強度が周囲地点よりも低い低点とを含んでいる。高点/低点は、周囲のInイオン強度よりも高くまたは低くてグラフの傾きが変わる地点である。したがって、一つの層では、多数の高点と低点が現れる。すなわち、活性層150、第一半導体層142、第二半導体層144、及び第三半導体層146は、多数の高点と低点を含み、同一層に含まれた多数の高点は、それぞれのイオン強度が異なる。同様に、同一層に含まれた多数の低点も、それぞれイオン強度が異なる。
【0078】
高点と低点は、活性層150、第一半導体層142、第二半導体層144、及び第三半導体層146の領域に現れる変曲点を意味し、各層間の境界において現れる変曲点は含まれない。例えば、第一半導体層142と第二半導体層144との間の境界面において、Inイオン強度の傾きが、周辺の他の地点よりも低い地点が現れ得るが、これは、実施例において定義する低点には含まれない。
【0079】
活性層150のInイオンの含有量が最も多いので、イオン化強度も活性層において最も強く現れる。すなわち、活性層に現れる高点が、第一半導体層、第二半導体層、第三半導体層の高点よりも高く、活性層に現れる低点が、第一半導体層、第二半導体層、第三半導体層の低点よりも高くてもよい。
【0080】
活性層150には、多数の第一高点と多数の第一低点が現れ、第一半導体層142には、多数の第二高点と多数の第二低点が現れ、第二半導体層144には、多数の第三高点と多数の第三低点が現れ、第三半導体層146には、多数の第四高点と多数の第四低点が現れる。
【0081】
第二高点は第一高点よりも低く、第三高点は第二高点より低く、第四高点は第三高点よりも低く現れる。
【0082】
第二高点は第一低点よりも高く、第三高点は第二低点より高く、第四高点は第三低点よりも高く現れる。
【0083】
第一半導体層142のInイオンの含量は、活性層に対して60%~80%であり、第二半導体層144のInイオンの含量は、活性層に対して30%~40%であり、第三半導体層146のInイオンの含量は、活性層に対して20%~30%であるので、シムス分析値もほぼ同じ数値で現れることと確認される。
【0084】
活性層150のInイオン強度を基準として、第一半導体層142のInイオン強度は、活性層150に対して60%以上でなければ、活性層150と第一導電型半導体層130との間に発生した応力を緩和させず、活性層150で発光する光の波長が印加する電流や電圧により変わる現象を防止することができない。また、PLまたは積分球等のような光検出器で半導体構造物200を測定するとき、活性層150で発光する光の相対的強度が最も強いが、第一半導体層142のInイオン強度が活性層150に対して80%以下であれば、活性層150で発光する光の強度に比べて、第一半導体層142の相対的な光強度が弱くなる。第一半導体層142の相対的な光強度が、活性層150で発光する光の強度に比べて大きければ、半導体構造物200をPLまたは積分球等のような光検出器で測定するとき、活性層150で発光する主波長よりも短い波長領域において変曲点を有する。変曲点が、活性層150で発光する波長の半値幅に該当する波長よりも相対的に強い光強度を有すると、半導体素子100の色再現率が低下してしまう。したがって、活性層150のInイオン強度を基準として、第一半導体層142のInイオン強度が60%以上~80%以下でなければ、半導体構造物200の応力を緩和することができず、半導体素子100の色再現率を確保することができない。
【0085】
第二半導体層144は、活性層150と第一導電型半導体層130との間の応力を緩和するために、第二半導体層144のInイオン強度は、活性層150のInイオン強度に対して30%以上~40%以下である。基板110が半導体構造物200と同じ物質で構成されていなければ、基板110と半導体構造物200との間には格子定数の差による応力が発生する。例えば、基板110が、サファイア基板が用いられ、半導体構造物200がGaN基盤の物質で構成されれば、半導体構造物200と基板との間には大きな応力が発生してしまう。したがって、半導体構造物200において最も高いInイオン強度を有する活性層150は、半導体構造物200において格子定数が大きく、基板110と活性層150との間では大きな応力が発生する。したがって、第二半導体層144が活性層150に対して30%以上~40%以下のInイオン強度となるようにし、活性層150と基板110との間の応力を緩和することができる。第二半導体層144は、上述したように、活性層に対して30%以上のInイオン強度でなければ、応力を緩和することができない。また、活性層150に対してInイオン強度が40%を超えると、第一半導体層142のInイオン強度よりも高いので、第二半導体層144のエネルギーバンドギャップ(Eg)が第一半導体層142のエネルギーバンドギャップ(Eg)よりも大きい。第二半導体層144のエネルギーバンドギャップ(Eg)が第一半導体層142のエネルギーバンドギャップ(Eg)よりも大きいと、エネルギーバンドギャップ(Eg)に対応する伝導帯(Ec)以上のエネルギーを有する電子が、第二半導体層144から第一半導体層142に注入されない。したがって、半導体素子100の光学的及び/または電気的特性を確保するために、活性層150を基準として、第二半導体層144のInイオン強度は30%以上~40%以下であってもよい。
【0086】
第三半導体層146のInイオン強度は、活性層150のInイオン強度に対して20%以上~30%以下である。第三半導体層のInイオン強度が活性層150に対して20%以上であれば、活性層150と第一導電型半導体層130と間の応力を緩和することができる。また、活性層150に対して30%以下であれば、第二半導体層144への電子注入特性を確保し、半導体素子100の光学的及び/または電気的特性を確保することができる。
【0087】
活性層150の第一高点と第二半導体層144の第二高点との差D1は、活性層の第一高点と第三半導体層146の第二高点との差D2の0.5倍である。すなわち、D1=0.5D2の関係が成立する。
【0088】
以下、図8に示されたシムスデータに基づいた第二実施例について説明する。
【0089】
第二実施例は、半導体構造物200を基礎としているが、これに限定されず、この場合、半導体で構成される全ての構造物に普遍的に適用され得る。したがって、第一実施例において、説明のために用いた用語である第一導電型半導体層130、第一半導体層142、第二半導体層144、第三半導体層146、活性層150、第二導電型半導体層170、及び半導体構造物200等は、第二実施例についての説明においては使わず、半導体構造物200を代替する用語として、発光構造物という用語を用いることにする。したがって、発光構造物は、半導体構造物200となり、さらに広範囲では半導体素子100ともなり得る。
【0090】
発光構造物は、Si原子の濃度が発光構造物内において相対的に最も高い第一領域を含み、第一領域から第一方向に最も近い距離には、Si原子の濃度が第一領域の0.05倍以上~0.2倍以下である第二領域が配置されている。ここで、第一方向は、第一領域から発光構造物の表面に向かう方向である。第二領域のSi原子の濃度が第一領域の0.05倍以上であれば、第一領域から第二領域を介して活性領域に注入される電流注入効率を確保し、第二領域のSi原子の濃度が第一領域の0.2倍以下であれば、第二領域の電流拡散特性を確保することができる。電流注入特性及び電流拡散特性を確保すると、発光構造物の電気的、光学的特性も確保できるので、第二領域のSi原子の濃度は、第一領域のSi原子の濃度の0.005倍以上~0.2倍以下の範囲を有することが好ましい。また、第一領域と第二領域のそれぞれは、Si原子の濃度が最も低い地点を基準として10%以内の比較的に均一な濃度を有し、第一領域と第二領域のSi原子の濃度が相違しているので、第一領域と第二領域が接する領域において、Si原子の濃度が急に低下する。本実施例において、第一領域及び第二領域は、上述のように、Si原子の濃度が最も低い地点を基準として10%以内である比較的に均一の濃度を有する場合を基準として説明する。
【0091】
また、第二領域のC原子の濃度は、第一領域のC原子の濃度よりも高い。発光構造物がGaN基盤の物質で構成される場合、C原子を多く含有するほど抵抗が高くなる特性を有するので、第二領域のC原子の濃度が第一領域のC原子の濃度よりも高く、Si原子の濃度が第一領域のSi原子の濃度よりも低いと、第二領域の抵抗が高くなるように制御し、それにより電流拡散特性を確保することができる。また、上述のように、第二領域のSi原子の濃度が前記範囲内に含まなければ、活性領域への電流注入特性を確保することができない。
【0092】
上述した第二領域から第一方向に最も近くに第三領域、第四領域が順次配置されている。また、第四領域から第一方向に最も近くに活性領域が配置され、活性領域と表面との間には第二導電型半導体層が配置される。また、第一領域乃至第四領域は、活性領域に電流を注入するための第二導電型半導体層である。したがって、本実施例による発光構造物も、上述した第一実施例による半導体構造物200のように、第一導電型半導体層の役割を行う第一導電型半導体領域、第二導電型半導体層の役割を行う第二導電型半導体領域、及び第一導電型半導体層と第二導電型半導体層との間の活性層150の役割を行う活性領域を有し、第一導電型半導体領域から活性領域に注入される電子と、第二導電型半導体領域から活性領域に注入される正孔との再結合を通じて光を放出する発光素子を構成することができる。
【0093】
第二領域から第一領域に離隔され、第二領域のSi原子の濃度のうち、最も低い濃度と同じSi原子の濃度を有する第一地点が配置され、第二領域と第一地点との間に第三領域が配置される。第三領域は、第一方向にSi原子の濃度が減少する区間と、Si原子の濃度が増加する区間を有し、両区間の間にSi原子の濃度が最も低い第二地点をさらに含んでいる。第二地点は、発光構造物内において、最も低いSi原子の濃度である。第三領域が第二地点を含むことにより、活性領域に注入される電流が一部の領域に密集することを防止し、電流の拡散特性をさらに大きく確保し、それにより発光構造物が劣化する問題を解決することができる。また、発光構造物の光学的、電気的特性も改善することができる。
【0094】
第一地点から第一方向に離隔され、第一地点のSi原子の濃度と同じSi原子の濃度を有する第三地点が配置され、第一地点と第三地点との間には第四領域が配置される。第四領域は、第二領域のSi原子の濃度よりも高く、第一領域のSi原子の濃度よりも低いSi原子の濃度を有する。また、第一方向にSi原子の濃度が増加する区間と減少する区間とをさらに含む。第四領域は、電流拡散特性を確保するために、第一乃至第三領域から活性領域に注入するための電子の注入効率を補償するために、第三領域と活性領域との間に配置される。
【0095】
以下、シムスで検出した二次イオンがInイオンである場合、上述した第一乃至第四領域と活性領域のInイオン強度について説明する。
【0096】
発光構造物内において、Inイオン強度は、活性領域において最も大きい。活性領域のInイオン強度は、発光する光の波長により異なるが、発光構造物と基板のそれぞれの格子定数が異なる場合、活性領域に印加される応力を緩和し、発光構造物の結晶質を改善するために、活性領域と基板との間にInイオン強度が相違した複数の半導体領域が配置される。より具体的に、発光構造物がGaN基盤の化合物半導体で構成され、基板がサファイア等の物質で構成される場合、発光構造物と基板のそれぞれの格子定数が相違し、発光構造物に応力が印加される。このとき、発光構造物が含む半導体領域間のInイオン強度が相違すると、各半導体領域の格子定数も異なり、活性領域にも応力が印加される。活性領域に応力が印加されると、発光する光の波長が遷移される。すなわち、GaN基盤の化合物半導体層で構成される発光構造物が、活性領域においてのみInイオン強度を有すると、活性領域の結晶質が低下し、または活性領域で発光する光の波長が変移する等、光学的、電気的特性と、発光構造物の信頼性が低下する。したがって、活性領域のInイオン強度よりも低いInイオン強度を有する半導体領域を、活性領域と基板との間に配置することにより、活性領域に印加される応力の大きさを減らし、活性領域の結晶質を確保することにより、発光構造物の光学的、電気的特性と信頼性を改善することができる。
【0097】
活性領域のInイオン強度は、発光構造物内において最も高いInイオン強度を有する。また、第一方向に行くほどInイオン強度が低くなる領域と高くなる領域が複数個配置される。したがって、活性領域のInイオン強度は、複数個の変曲点を有し、複数個の変曲点は、複数個の第一高点と複数個の第一低点を有する。Inイオン強度が最も強い第一高点は、電子と正孔が発光性再結合を行う井戸層である。ここで、複数個の第一高点は、同一なInイオン強度を有するが、これに限定されず、相違してもよい。しかしながら、複数個の第一高点が互いに同じInイオン強度を有すると、工程偏差により、5%以内の相違したInイオン強度を有し、相違したInイオン強度を有すると、第一方向に沿ってInイオン強度が高くなりまたは低くなるが、これに限定されない。
【0098】
活性領域は、複数個の高点間に複数個の第一低点を有する。複数個の第一低点は、Inイオンの含量が比較的に少ない領域であり、障壁層として作用し得る。また、複数個の第一低点は、第一方向に行くほど漸進的に低くなり、互いに同じInイオン強度を有する。第一方向に行くほど漸進的に低くなると、第一領域から注入される電子と活性領域に注入される正孔との間の移動度の差のため、電子が活性領域内において発光性再結合を行わず、表面方向に通り過ぎ得るが、複数の第一低点が第一方向に行くほど漸進的に低くなることにより、活性領域に注入された電子のエネルギーを低くし、活性領域内における発光性再結合率を高めることができる。
【0099】
活性領域の第一高点のうち、表面から第二方向に最も遠く離れた高点と、第四領域との間には、第五領域が形成され、ここで、第二方向は、第一方向と反対方向であってもよい。第五領域は、第四領域から第一方向に行くほどInイオン強度が高くなる領域と、低くなる領域とを含み、両領域が接する領域において、複数の変曲点が配置される。複数の変曲点は、複数の第二高点と複数の第二低点で構成される。第五領域の第二高点のInイオン強度は、活性層の第一低点のInイオン強度よりも大きく、第一高点のInイオン強度よりも小さい。発光しようとする光の波長により、活性領域のInイオン強度が決定され、第五領域は、活性領域のInイオン強度により活性領域に応力が印加され、または結晶性が低下し、または活性領域に注入される電子を、一つの層に最大限均一に分布させるために、第一高点よりも低く、第一低点よりも高い第二高点を含む。
【0100】
第四領域は、第一方向に沿って低くなる区間とさらに高くなる区間を有し、その間に配置される変曲点を含む。変曲点は、高点がなく、第三低点のみを有する。第三低点は、第四領域のInイオンの組成を低くし、第一領域を構成する半導体物質と最大限類似するように配置した区間である。第四領域は、上述のように、活性領域に電子を注入する役割を行い、このとき、Inイオン強度による応力を緩和させるために、第三低点を有するように配置する。
【0101】
第三領域は、第二領域に隣接した領域において、第一方向に沿ってInイオン強度が高くなる領域と低くなる領域を有し、両領域間に配置される複数個の変曲点を有する。複数個の変曲点は、少なくとも一つ以上の第四高点と、少なくとも一つ以上の第四低点とで構成されても、一つの第四高点のみを有してもよい。第三領域のInイオン強度は、第五領域と第一領域との間の応力を制御し、第一領域から第一方向に沿って延長される欠陥{貫通転位(Threading Dislocation)}を防ぐ機能を有する。第四高点のInイオン強度は、相違しても、同一であってもよいが、これに限定されない。第四高点は、上述した第五領域の第二低点のうち、最も低い低点よりも高く、第二高点よりも低いInイオン強度を有することにより、活性領域に印加される応力を制御することができる。第四高点と第四低点との間の間隔は、活性領域の第一高点と第一低点との間の最小間隔、第五領域の第二高点と第二低点との間の最小間隔よりも狭い。したがって、第三領域は、格子定数の差を有する極めて薄い半導体物質が積層された構造であってもよく、例えば、超格子層であってもよい。第三領域が超格子層で構成されると、電流拡散特性を改善し、第一領域において活性領域に延長される欠陥密度を減らす機能を有することができる。
【0102】
第二領域は、第一領域に隣接した領域において第一方向に沿ってInイオン強度が高くなる区間と低くなる区間を有し、複数個の変曲点を有し、複数個の変曲点は、第五高点と第五低点で構成される。第二領域は、活性領域に印加される応力を緩和し、結晶性を確保するために、複数個の第五高点を有し、第五高点は、上述した第一乃至第四高点よりも低いInイオン強度を有する。第五高点は、Si原子の濃度が均一な領域内に配置される。
【0103】
第一高点は、活性領域が発光する光の波長により決定され、第二乃至第五高点は、活性領域に印加される応力を緩和し、結晶性を改善するために、第二方向に漸進的に低くなるInイオン強度を有する。活性領域の第一高点に対する第三領域の第四高点との間のInイオン強度の第一比率は、0.3倍以上~0.4倍以下である。第四高点のInイオン強度が0.3倍よりも低いと、活性領域に印加される応力が大きくなり、活性領域の結晶性も低下してしまう。また、0.4倍よりも高いと、第三領域の結晶性が低下し、第三領域において第一方向に配置される複数の半導体層の結晶性が全て低下するという問題が発生する。
【0104】
活性領域の第一高点に対する第二領域の第五高点の第二比率は、0.2倍以上~0.3倍以下である。第五高点のInイオン強度が0.2倍よりも低いと、活性領域に印加される応力が大きくなり、活性領域の結晶性も低下してしまう。また、0.3倍よりも高いと、第二領域の結晶性が低下し、第二領域において第一方向に配置される複数の半導体層の結晶性が全て低下するという問題が発生する。
【0105】
以上、図7及び図8に示したシムスデータに基づいた第一実施例及び第二実施例について説明した。ここで、第一実施例は半導体構造物200に基づき説明し、第二実施例は発光構造物に基づき説明していたが、上述したように、第二実施例も半導体構造物200に適用され得ることは言うまでもない。
【0106】
以下、図7及び図8に示したシムスデータに基づき、各層に対する図面符号と領域が表示されていないと仮定し、シムスデータを通じて各層を区分する方法について説明する。
【0107】
一方、説明の便宜のために、図7を説明しながら用いた用語をそのまま用いるが、これは、図8を説明しながら用いた用語にそのまま適用され得ることは言うまでもない。
【0108】
活性層150は、Inイオンの相対的強度スペクトルを通じて区分することができる。より具体的に、Inイオンの相対的強度が最も高い地点から縦軸を基準として、約-70%~-90%、好ましくは約-80%内に属する地点のうち、相対的強度が最も低い地点から表面方向(左側)に沿って移動したとき、最初に出会う相対的強度が同じ地点と、深さ方向(右側)に沿って移動したとき、最初に出会う相対的強度が同じ地点との間に活性層150が位置する。
【0109】
例えば、Inイオンの相対的強度が最も高い地点から、縦軸を基準として約-80%内に属する地点のうち、相対的強度が最も低い地点をa地点とすれば、a地点におけるInイオンの相対的強度と同じ相対的強度を有する最初の表面方向地点と深さ方向地点との間に、活性層150が位置する。
【0110】
図7を基準として説明すると、Inイオンの相対的強度が最も高い地点は、Inという文字の右側の二番目の高点であり、当該高点から縦軸を基準として約-80%内に属する地点のうち、相対的強度が最も低い地点は、Inという文字の右側の九番目の低点である。したがって、当該低点を基準として表面方向に沿って、また深さ方向に沿って移動したとき、最初に出会う相対的強度が同じ地点との間に活性層150が位置し、これは、当該地点間に、図7に一緒に示した活性層150が含まれることにより確認される。
【0111】
一方、Inイオンの相対的強度が最も高い地点から、縦軸を基準として-80%内に属する地点のうち、相対的強度が最も低い地点を選択する場合、シムスデータの縦軸がログスケールで示されていることに注意しなければならない。したがって、縦軸を基準として約-80%内に属する地点であっても、スペクトル上においてInイオンの相対的強度が最も高い地点から大きく下がらないこともある。
【0112】
第三半導体層146は、Inイオンの相対的強度スペクトルとSi原子の相対的濃度スペクトルを通じて区分することができる。より具体的に、Si原子の相対的濃度スペクトルは、深さ方向において高く現れることが確認され、Si原子の相対的濃度が最も高い地点から縦軸を基準として約-80%~-90%、好ましくは約-87%内に属する地点のうち、また相対的濃度が最も低い地点のうち、深さ方向に最も深い地点と、当該地点から横軸を基準として約-20%~-30%、好ましくは約-25%内に属するInイオンの相対的強度が最も高い地点から表面方向に沿って移動したとき、最初に出会う相対的強度が同じ地点との間に、第三半導体層146が位置する。
【0113】
例えば、Si原子の相対的濃度が最も高い地点から、縦軸を基準として約-87%に属する地点のうち、相対的強度が最も低い地点のうち、深さ方向に最も深い地点をb地点とし、b地点から横軸を基準として約-25%内に属するInイオンの相対的強度が最も高い地点をc地点とし、c地点におけるInイオンの相対的強度と同じ相対的強度を有する最初の表面方向への地点間に第三半導体層146が位置する。
【0114】
図7を基準として説明すると、Si原子の相対的濃度が最も高い地点は、Siという文字が記載された地点であり、当該地点において、縦軸を基準として約-87%内に属する地点のうち、相対的強度が最も低い地点のうち、深さ方向に最も深い地点は、D2の下側矢印が位置する部分と、Si原子のスペクトルとが出会う地点である。また、当該地点において、横軸を基準として約-25%内に属するInイオンの相対的強度が最も高い地点は、D2の下側矢印が位置する部分と、Inイオンのスペクトルとが出会う地点であり、当該地点におけるInイオンの相対的強度と同じ相対的強度を有する最初の表面方向の地点は、図面符号144の最後の4が位置する地点であり、これらの間に第三半導体層146が位置し、これは、当該地点間に、図7に一緒に示した第三半導体層146が含まれることにより確認され、第三半導体層146は、MT‐GaNとみなしてもよい。
【0115】
一方、Si原子の相対的濃度が最も高い地点から、縦軸を基準として約-87%内に属する地点のうち、相対的強度が最も低い地点を選択する場合、シムスデータの縦軸がログスケールで示されていることに注意しなければならない。したがって、縦軸を基準として約-87%内に属する地点であっても、スペクトル上においてSi原子の相対的濃度が最も高い地点から大きく下がらないこともある。
【0116】
第一半導体層142は、Si原子の相対的濃度スペクトルを通じて区分することができる。より具体的に、先に区分した第三半導体層146におけるSi原子の相対的濃度が最も高い地点から表面方向に沿って移動したとき、活性層150を除いて表面方向に最も近い地点と、当該地点から深さ方向に沿って移動したとき、最初に出会う相対的濃度が同じ地点との間に、第一半導体層142が位置する。
【0117】
例えば、第三半導体層146において、Si原子の相対的濃度が最も高い地点をdとし、d地点から表面方向に沿って移動したとき、活性層150を除いて表面方向に最も近い地点をe地点とし、e地点におけるSi原子の相対的濃度と同じ相対的濃度を有する最初の表面方向への地点間に第一半導体層142が位置する。
【0118】
図7を基準として説明すると、第三半導体層146においてSi原子の相対的濃度が最も高い地点は、Inイオンスペクトルの最右側の高点に該当し、当該高点を基準として表面方向に沿って移動したとき、活性層150を除いて表面方向に最も近い地点は、InイオンスペクトルとSi原子スペクトルとが交差する地点である。また、当該地点におけるSi原子の相対的濃度と同じ相対的濃度を有する最初の深さ方向の地点は、当該地点の最右側のInイオンスペクトルとSi原子スペクトルが交差する地点であるので、これらの間に第一半導体層142が位置し、これは、図7に一緒に示した第一半導体層142が含まれることから確認され、第一半導体層142は、n‐インジェクタとみなしてもよい。
【0119】
以上、シムスデータに示したスペクトルにより、実施例による半導体構造物200の各層、より具体的に、活性層150、第一半導体層142、及び第三半導体層146を区分する方法について説明しており、第一半導体層142と第三半導体層146との間は、第二半導体層144とみなし、第二半導体層144は、Si原子が殆ど存在しないun‐InGaNとみなすことができる。
【0120】
一方、活性層150、第一半導体層142、及び第三半導体層146の区分を、図7を基準として説明する部分において、各層の深さが、図7に一緒に示した活性層150、第一半導体層142、及び第三半導体層146の深さとは一部異なるが、これは、図7に一緒に示された各層の深さが例示的なものであるので発生したものであり、実施例による半導体構造物200の各層は、上述した方法により区分され、これは、他の半導体構造物にも普遍的に適用され得る。
【0121】
図9は、本発明の実施例による半導体素子100が備えられた半導体素子パッケージを示した断面図である。
【0122】
図9を参照すると、半導体素子パッケージ10は、パッケージ胴体部1と、パッケージ胴体部1に設けられた第一リード電極2及び第二リード電極3と、第一リード電極2及び第二リード電極3と電気的に連結される半導体素子100と、半導体素子100を取り囲むモールド部材4と、を備える。
【0123】
パッケージ胴体部1は、シリコン材質、合成樹脂材質、または金属材質を含めて形成されてもよく、半導体素子100の上に傾斜面が形成されてもよい。
【0124】
第一リード電極2及び第二リード電極3は、互いに電気的に分離され、半導体素子100に電源を提供する役割を行う。また、第一リード電極2及び第二リード電極3は、半導体素子100で発生した光を反射させ、光効率を増加させる役割を行い、半導体素子100で発生した熱を外部に排出させる役割を行うこともできる。
【0125】
半導体素子100は、パッケージ胴体部1上に配置され、または第一リード電極2または第二リード電極3の上に配置されてもよい。
【0126】
半導体素子100は、第一リード電極2及び第二リード電極3と、ワイヤ方式、フリップチップ方式、またはダイボンディング方式のいずれか一つにより電気的に連結されてもよい。実施例では、半導体素子100が第一リード電極2及び第二リード電極3とそれぞれワイヤを介して電気的に連結されたものが例示されているが、これに限定されるものではない。
【0127】
モールド部材4は、半導体素子100を取り囲んで半導体素子100を保護することができる。また、モールド部材4には、蛍光体5が含まれ、半導体素子100から放出された光の波長を変化させることができる。
【0128】
上述した半導体素子は、発光素子パッケージで構成され、照明システムの光源として用いられるが、例えば、映像表示装置の光源や照明装置等の光源として用いられ得る。
【0129】
映像表示装置のバックライトユニットとして使用されるとき、エッジ型のバックライトユニットとして用いられ、または直下型のバックライトユニットとして用いられてもよく、照明装置の光源として用いられるとき、灯器具やバルブ型として用いられてもよく、また携帯端末の光源として用いられてもよい。
【0130】
発光素子は、上述した発光ダイオードのほかにレーザダイオードがある。
【0131】
レーザダイオードは、発光素子と同様に、上述した構造の第一導電型半導体層、活性層、及び第二導電型半導体層を有してもよい。また、p型の第一導電型半導体とn型の第二導電型半導体とを接合させた後、電流を流したとき光が放出される電界発光(electro‐luminescence)現象を用いるが、放出される光の方向性と位相において差がある。すなわち、レーザダイオードは誘導放出(stimulated emission)という現象と補強干渉現象等を用いて、一つの特定の波長(単色ビーム、monochromatic beam)を有する光が、同一の位相を有して同一の方向に放出され、このような特性により、光通信や医療用装備及び半導体工程装備等に用いられ得る。
【0132】
受光素子としては、光を検出しその強度を電気信号に変換する一種のトランスデューサである光検出器(photodetector)を例に挙げることができる。このような光検出器として、光電池(シリコン、セレン)、光導電素子(硫化カドミウム、セレン化カドミウム)、フォトダイオード{例えば、可視ブラインドスペクトル領域(visible blind spectral region)やツルーブラインドスペクトル領域(true blind spectral region)においてピーク波長を有するフォトダイオード(PD)}、フォトトランジスタ、光電子増倍管、光電管(真空、ガス封入)、IR(Infra‐Red)検出器等があるが、実施例は、これらに限定されない。
【0133】
また、光検出器のような半導体素子は、一般に光変換効率が優れた直接遷移型半導体(direct bandgap semiconductor)を用いて製作される。または、光検出器は構造が多様であるので、最も一般的な構造としてはp‐n接合を用いるpin型光検出器と、ショットキー接合(Schottky junction)を用いるショットキー型光検出器と、MSM(Metal Semiconductor Metal、金属-半導体-金属)型光検出器がある。
【0134】
フォトダイオードは、発光素子と同様に、上述した構造の第一導電型半導体層、活性層、及び第二導電型半導体層を有してもよく、pn接合またはpin構造からなる。フォトダイオードは、逆バイアスあるいはゼロバイアスを加えて動作することになり、光がフォトダイオードに入射されると、電子と正孔が生成され、電流が流れる。このとき、電流の大きさは、フォトダイオードに入射される光の強度にほぼ比例する。
【0135】
光電池または太陽電池は、フォトダイオードの一種で、光を電流に変換することができる。太陽電池は、発光素子と同様に、上述した構造の第一導電型半導体層、活性層、及び第二導電型半導体層を備えてもよい。
【0136】
また、p‐n接合を用いた一般のダイオードの整流特性を通じて電子回路の整流器として用いられ、超高周波回路に適用されて発振回路等に適用されてもよい。
【0137】
また、上述した半導体素子は、必ずしも半導体のみで具現されるものではなく、場合に応じて金属物質をさらに含んでもよい。例えば、受光素子のような半導体素子は、Ag、Al、Au、In、Ga、N、Zn、Se、P、またはAsの少なくとも一つを用いて具現されてもよく、p型やn型ドーパントによりドープされた半導体物質や真性半導体物質を用いて具現されてもよい。
【0138】
以上、実施例を中心に説明したが、これらは単なる例示であり、本発明を限定するものでなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、本実施例の本質的な特性を逸脱しない範囲内で、以上に例示されていない様々な変形と応用が可能であることが理解されるだろう。例えば、実施例に具体的に示された各構成要素を変形して実施することができる。また、このような変形と応用に係る差異点は、添付の特許請求の範囲で規定する本発明の範囲に含まれるものと解析されるべきである。
【符号の説明】
【0139】
100 半導体素子
110 基板
120 バッファ層
130 第一導電型半導体層
142 第一半導体層
144 第二半導体層
146 第三半導体層
150 活性層
160 遮断層
170 第二導電型半導体層
180 投光性電極層
192 第一電極
194 第二電極
200 半導体構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9