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  • 特許-ゲート装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ゲート装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/40 20060101AFI20230113BHJP
   E02B 7/20 20060101ALI20230113BHJP
   F04D 13/08 20060101ALI20230113BHJP
   F04D 29/64 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E02B7/40
E02B7/20 104
F04D13/08 M
F04D29/64 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019092299
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020186589
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591073337
【氏名又は名称】株式会社丸島アクアシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】矢延 孝也
(72)【発明者】
【氏名】半田 英明
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-712604(KR,B1)
【文献】特開平11-229359(JP,A)
【文献】実公昭51-12286(JP,Y1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-130586(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/24859(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20-7/54
8/02-8/04
E03F 1/00-11/00
F04D 1/00-13/16
17/00-19/02
21/00-25/16
29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路を開閉するためのゲート装置であって、
前記水路における内水側と外水側との連通口を開閉する扉部と、前記水路に沿った方向であって前記内水側から前記外水側に向かう方向を第1方向と定義したときに、前記扉部の上端から前記第1方向に延びるアーム部と、を備えた側面視L字型のゲート本体と、
前記第1方向における前記アーム部の端部を支点として、前記扉部が前記連通口を閉塞する閉塞位置と前記連通口を開放する開放位置とに亘って前記ゲート本体を水平軸回りに揺動自在に支持する支持体と、
閉塞位置から開放位置に前記ゲート本体を変位させる駆動装置と、を備え、
前記ゲート本体は、その自重で前記閉塞位置に留まることが可能で、かつ、当該閉塞位置に配置された状態において、前記支点から前記扉部の重心位置までの水路に沿った水平方向の長さが、前記扉部の下端部と同一高さ位置に降ろした前記支点からの垂線の長さ以上である、ことを特徴とするゲート装置。
【請求項2】
請求項1に記載のゲート装置において、
前記ゲート本体が閉塞位置に配置されたときの前記支点から前記扉部の重心位置までの水路に沿った水平方向の長さをL1、前記扉部の重量をW1、前記閉塞位置において前記扉部と前記連通口の周縁部との間に介在するシール部材が前記扉部を開放位置に向かって押圧する押圧力をPr、前記外水側から前記扉部に作用する、水路に沿った水平方向の水圧をP、当該水圧Pが作用する位置の中心を通る、水路に沿った水平な直線上に前記支点から降ろした垂線の長さをYと定義したときに、前記ゲート本体は、下記式を充足する、ことを特徴とするゲート装置。
(W1×L1)≧{(P+Pr)×Y}
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゲート装置において、
前記扉部は、前記ゲート本体が閉塞位置に配置された状態で、内水側から外水側への送水を可能とする水中ポンプを備えている、ことを特徴とするゲート装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のゲート装置において、
前記駆動装置は、前記支点より前記第1方向側の位置にワイヤ巻取部を有し、前記扉部又は前記アーム部をワイヤで引き上げることにより、前記ゲート本体を変位させるウインチである、ことを特徴とするゲート装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のゲート装置において、
前記ゲート装置において、前記ゲート本体は、錘を着脱可能な錘載置部を備えている、ことを特徴とするゲート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路を開閉するゲート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水路の内水側と外水側との連通口を開閉するゲート装置は、従来から知られており、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示されたゲート装置は、水路の連通口を開閉する扉部を有するゲート本体と、扉部が前記連通口を閉塞する閉塞位置と前記連通口を開放する開放位置とに亘って前記ゲート本体を水平軸回りに揺動自在になるように前記扉部の上端部を支持する支持体と、閉塞位置から開放位置に前記扉部を変位させる扉開閉用の駆動装置としての油圧シリンダとを備えている。油圧シリンダは、シリンダ本体からピストンロッドを突出させたロッド突出駆動状態と、シリンダ本体にピストンロッドを引き込んだロッド引き込み駆動状態とに切り替えが可能であり、油圧シリンダがロッド突出駆動状態に制御されることにより、扉部(ゲート本体)が開放位置から閉塞位置に変位し、扉部が閉塞位置に保たれるように油圧シリンダがロッド突出駆動状態に制御されることにより、連通路が閉塞状態に保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4115380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1のゲート装置では、扉部が閉塞位置に配置させている状態、すなわち油圧シリンダのロッド突出駆動状態において当該油圧シリンダに不具合が生じる場合も起こり得る。油圧シリンダに不具合が生じると、ロッド突出駆動状態を維持できなくなり、その結果、扉部が外水側からの水圧によって閉塞位置から揺動し、意図せず連通口が開口するおそれがある。
【0005】
本発明は、外水側からの水圧によって意図せず連通口が開くことを抑制できるゲート装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、水路を開閉するためのゲート装置であって、前記水路における内水側と外水側との連通口を開閉する扉部と、前記水路に沿った方向であって前記内水側から前記外水側に向かう方向を第1方向と定義したときに、前記扉部の上端から前記第1方向に延びるアーム部と、を備えた側面視L字型のゲート本体と、前記第1方向における前記アーム部の端部を支点として、前記扉部が前記連通口を閉塞する閉塞位置と前記連通口を開放する開放位置とに亘って前記ゲート本体を水平軸回りに揺動自在に支持する支持体と、閉塞位置から開放位置に前記ゲート本体を変位させる駆動装置と、を備え、前記ゲート本体は、その自重で前記閉塞位置に留まることが可能で、かつ、当該閉塞位置に配置された状態において、前記支点から前記扉部の重心位置までの水路に沿った水平方向の長さが、前記扉部の下端部と同一高さ位置に降ろした前記支点からの垂線の長さ以上である、ことを特徴とする。
【0007】
このゲート装置によれば、ゲート本体は、その自重で閉塞位置に留まることが可能で、かつ、当該閉塞位置に配置された状態において、支点から扉部の重心位置までの水路に沿った水平方向の長さが、扉部の下端部と同一高さ位置に降ろした前記支点からの垂線の長さ以上であるため、閉塞位置の扉部に外水側から大きな水圧がかかった場合でも、ゲート本体がその自重によって閉塞位置に留まり易い。そのため、駆動装置に不具合等が生じた場合に、外水側からの水圧によって連通口が開くことが抑制される。
【0008】
また、ゲート本体は、その自重で閉塞位置に留まることが可能なため、駆動装置については、ゲート本体を開放位置に変位させるためだけの機能で済む。よって、駆動装置の構成を簡素化することが可能となる。
【0009】
また、第1方向(内水側から外水側に向かう方向)におけるアーム部の端部を支点として揺動するため、扉部の上端部分を支点としてゲート本体が変位する従来のゲート装置に比べて、同一開度における扉部の変位量が小さくなる。そのため、ゲート本体作動時の安定性及び安全性を確保する上で優れたものになる。
【0010】
前記ゲート装置において、前記ゲート本体が閉塞位置に配置されたときの前記支点から前記扉部の重心位置までの水路に沿った水平方向の長さをL1、前記扉部の重量をW1、前記閉塞位置において前記扉部と前記連通口の周縁部との間に介在するシール部材が前記扉部を開放位置に向かって押圧する押圧力をPr、前記外水側から前記扉部に作用する、水路に沿った水平方向の水圧をP、当該水圧Pが作用する位置の中心を通る、水路に沿った水平な直線上に前記支点から降ろした垂線の長さをYと定義したときに、前記ゲート本体は、(W1×L1)≧{(P+Pr)×Y}を充足するものであるのが望ましい。
【0011】
ゲート本体が閉塞位置に配置されたときに、ゲート本体には、自重による閉方向のモーメント(W1×L1)が扉部にかかる一方、水路における水圧及びシール部材の弾発力による開モーメント{(P+Pr)×Y}が扉部にかかるが、上記式を充足する構成によれば、自重による閉モーメントが水圧及びシール部材の弾発力による開モーメントよりも大きいものになる。よって、水路の流量に拘わらず、ゲート本体を常に自重で閉塞位置に止めることが可能となる。なお、上記「水圧P」は、当該水路において想定される水圧の最大値である。
【0012】
上記各態様のゲート装置において、前記扉部は、前記ゲート本体が閉塞位置に配置された状態で、内水側から外水側への送水を可能とする水中ポンプを備えている、構成とできる。
【0013】
本発明のゲート装置は、上述した通り、同一開度における扉部の変位量を従来装置よりも小さく抑えることが可能なため、ゲート本体作動時の安定性及び安全性を確保するという観点から、扉部に水中ポンプが搭載される上記のようなゲート装置に特に有用となる。
【0014】
前記ゲート装置において、前記駆動装置は、前記支点より前記第1方向側の位置にワイヤ巻取部を有し、前記扉部又は前記アーム部をワイヤで引き上げることにより、前記ゲート本体を変位させるウインチである、構成とできる。
【0015】
この構成によれば、比較的簡素かつ安価な構成でゲート本体を開閉操作することが可能となる。すなわち、上述の通り、ゲート本体はその自重で閉塞位置に留まることが可能なため、駆動装置としては、主にゲート本体を引き上げるためのウインチを用いた比較的簡素な構成でゲート本体を開閉操作する事が可能となる。
【0016】
しかも、ウインチを用いた上記のような駆動装置によれば、ワイヤの引き回しの仕方などの自由度が高いため、駆動装置の設置位置の自由度が向上する。
【0017】
前記ゲート装置において、前記ゲート本体は、錘を着脱可能な錘載置部を備えているものであってもよい。
【0018】
この構成によれば、洪水時等のように扉部に外水側から大きな水圧がかかるおそれのある場合や、メンテナンスによる部品交換等の事情によりゲート本体の重量が軽減された場合に、錘載置部に錘をセットすることによりゲート本体の重量を補うことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した本発明のゲート装置によれば、外水側からの水圧によって意図せず連通口が開くことを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るゲート装置が、水路に設置された状態の側面図である。
図2図1のゲート装置の寸法関係を説明するための概略側面図である。
図3】他の実施形態のゲート装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るゲート装置が、水路に設置された状態の側面図である。
【0022】
本発明のゲート装置1は、水路100における内水側Aと外水側Bとの境界部に形成された連通口111を開閉するためのもので、この実施形態では、ゲート装置1は、水路100に設けられたコンクリート製の基礎110に設置されている。この基礎110は、この実施形態においては、水路100における内水側Aと外水側Bとを連通するように形成された連通口111と、連通口111における、下縁を除く周縁部に形成された被扉押圧部112とを備えている。この被扉押圧部112には、合成ゴム等の弾性材から構成されたシール部材112a(本発明のシール部材に相当する)が付設されている。
【0023】
この実施形態のゲート装置1は、図1に示すように、ゲート本体2と、ゲート本体2を揺動自在に支持する支持体3と、ゲート本体2を変位させる駆動装置6とを備えている。
【0024】
ゲート本体2は、水路100の連通口111を開閉する扉部4と、この扉部4を保持したアーム部5とを備えている。
【0025】
扉部4は、略矩形板状の扉本体41と、扉本体41に付設された水中ポンプ42とを備えている。
【0026】
扉本体41は、水路100の連通口111よりも大きく、かつ、基礎110の被扉押圧部112の全体を押圧できる大きさを有し、扉本体41が水路100の連通口111を閉塞した図1に示す閉塞位置で被扉押圧部112の全体を押圧して水密状態になるように構成されている。図示を省略するが、扉本体41の下面には、前記閉鎖位置において、当該扉本体41の下面と水路100との間を水密状態にするシール部が設けられている。
【0027】
水中ポンプ42は、扉部4が閉塞位置にある状態で作動することにより、扉本体41に設けられた図示しない通水用貫通孔を介して水路100の内水側Aから外水側Bに強制的に送水を行うためのものである。なお、水中ポンプ42は、外水側Bから内水側Aに水の逆流を防止するための逆止弁421を備えている。
【0028】
アーム部5は、この実施形態では、扉部4(扉本体41)の幅方向の両側に各々配設された一対構造を有する(図1では1つだけ示されている)。各アーム部5の一端部は、扉本体41の上端部に固定的に連結されている。
【0029】
また、このアーム部5の他端部は、扉部4の閉塞位置で、内水側Aから外水側Bに向かう方向(第1方向)に水路100に沿って扉本体41の上端部から延びており、ゲート本体2は、このアーム部5と扉部4とで側面視略L字型を呈している。そして、このアーム部5の他端部に、支持体3に連結される軸支部52が設けられている。
【0030】
支持体3は、アーム部5の軸支部52を回動自在に支持した支持軸31を備えている。この支持軸31は、水路100に沿う方向と直交する水路幅方向に、水平状に延びるように配設されて基礎110に回動自在に支持されている。
【0031】
この支持軸31にアーム部5の軸支部52が支持されることにより、扉部4が水路100の連通口111を閉塞する閉塞位置(図1中の実線で示す位置)と連通口111を開放する開放位置(図1中の二点鎖線で示す位置)とに亘ってゲート本体2が支持軸31を支点にして支持軸31(水平軸)回りに揺動自在に支持される。
【0032】
また、図2に示すように、上記支点となる支持軸31から扉部4の重心位置O1までの水路100に沿った水平方向の長さL1は、扉部4が閉塞位置に配置された状態において、扉部4(扉本体41)の下端部と同一高さ位置に降ろした前記支持軸31からの垂線の長さL2以上とされている。当例では、L1>L2となっている。
【0033】
また、扉部4が閉塞位置にある状態において、当該扉部4の重量によってゲート本体2にかかる、図の反時計方向の閉モーメントM2が、水圧によってゲート本体2にかかる、図の時計方向の開モーメントM1よりも大きくなるように設定されている。
【0034】
詳しくは、自重によってゲート本体2にかかる、図の反時計方向の閉モーメントM2は、扉部4の重量をW1とすると、M2=L1×W1となる。一方、水圧によってゲート本体2にかかる、図の時計方向の開モーメントM1は、シール部材112aが扉部4を開放位置に向かって押圧する押圧力をPr、外水側Bから扉部4に作用する、水路に沿った水平方向の水圧をP、水圧Pが作用する位置の中心(扉本体41のうち水圧Pが作用する面の中心位置)を通る、水路に沿った水平な直線上に支持軸31から降ろした垂線の長さをYとすると、M1=(P+Pr)×Yとなる。そして、自重による閉モーメントM2が水圧による開モーメントM1よりも大きくなるように、即ち、(L1×W1)≧{(P+Pr)×Y}となるように設定されている。なお、上記「水圧P」は、当該水路100において想定される水圧の最大値である。
【0035】
駆動装置6は、この実施形態では、ウインチから構成されており、図1に示すように駆動装置本体61と、ワイヤ巻取部62と、ワイヤ巻取部62に巻き取られるワイヤ63とを備えている。
【0036】
ワイヤ63は、先端部が駆動装置本体61から、アーム部5に回転自在に設けられたアーム係合用プーリ53に巻回され、アーム係合用プーリ53で折り返されて駆動装置本体61に戻されている。そして、その戻されたワイヤ63の先端部が駆動装置本体61に設けられたワイヤ係止部611に係止されている。
【0037】
次に、実施形態のゲート装置1の動作について説明する。ゲート本体2を閉塞位置に配置するには、例えば、駆動装置6のワイヤ巻取部62からワイヤ63を送り出す。これにより、ゲート本体2は扉部4の自重W1によって図の反時計方向に揺動し、自ずと閉塞位置に配置される。
【0038】
扉本体41が閉塞位置にある状態において、例えば、従来例のように扉本体41の上端部が支持軸131(図2中に一点鎖線で示す仮想軸)で支持されていると仮定した場合には、扉部4の重量W1による閉モーメントM3は、扉部4の重心位置O1から支持軸131までの水平距離をL3とすると、M3=L3×W1となる。一方、本実施形態では、扉部4の重量W1によってゲート本体2にかかる閉モーメントM2は、L1×W1である。L1は、L3よりも十分に大きいので、閉モーメントM2は従来例に較べて十分に大きくなる。したがって、ゲート本体2は、扉部4の自重W1で閉塞位置に留まることが可能であり、かつ、閉塞位置の扉部4に水路100の外水側Bから大きな水圧がかかった場合でも、扉部4の自重W1によって揺動し難く、閉塞位置に留まり易い。よって、駆動装置6については、ゲート本体2を開放位置に変位させるためだけの機能で済む、すなわち、従来のようにゲート本体2を閉塞位置に保つために引き込み駆動する必要がなく、よって、駆動装置6の構成を簡素化することが可能となる。
【0039】
また、ゲート本体2が閉塞位置にある状態で、水中ポンプ42を作動させることにより、図示しない通水用貫通孔を介して、水路100の内水側Aから外水側Bへ強制的に適宜量の水を送水することが可能となる。
【0040】
ゲート本体2を開放位置に配置して連通口111を開放するには、駆動装置6を作動させてワイヤ巻取部62にワイヤ63を巻き取る。この巻き取りに際して、図1中に点線で示すように、ワイヤ63が巻回されたアーム係合用プーリ53が駆動装置本体61側に引き寄せられる。これにより、ゲート本体2が支持軸31を支点として揺動し、開放位置にゲート本体2が配置される。
【0041】
ここで、ゲート本体2の揺動に際し、仮に、扉本体41の上端部が支持軸131(図2に一点鎖線で示す)で支持されているとした場合、すなわち従来例のゲート装置を想定した場合、連通口111を開放すべく扉部4(下端44)を水路100の底面から高さhの位置まで変位させたときの当該扉部4の移動軌跡は符号L5で示す通りである。一方、上記実施形態のゲート本体2を、前記支持軸31を支点として同様に水路100の底面から高さhの位置まで変位させた場合の当該扉部4の移動軌跡は符号L4で示す通りである。これらの軌跡L4、L5からも明らかなように、同じ開度であっても、上記実施形態のゲート装置1によれば、従来例のゲート装置に比べて扉部4の変位量(重心位置の変位量)を小さく抑えることができる。したがって、上記実施形態のゲート装置1によれば、ゲート本体2の作動時の安定性及び安全性を確保する上で有利なものとなる。
【0042】
なお、上記実施形態では、ゲート本体2の閉モーメントM2は、主に扉部4の自重(W1)によるものであるが、例えば、図3に示すように、錘7を着脱可能な錘載置部8を扉部4に設け、扉部4の自重と錘7の重量とよる閉モーメントM2が得られるようにゲート装置1を構成してもよい。この場合にゲート本体2に働く閉モーメントM2は、M2=L1×W1+L6×W2となる。ここで、L6は、支持軸31から(錘7を含む)錘載置部8の重心位置O2までの水平方向の長さである。すなわち、この構成の場合いは、ゲート装置1は、(W1×L1+L6×W2)≧{(P+Pr)×Y}を充足すれば良い。
【0043】
この構成によれば、ゲート本体2に働く閉モーメントM2がより大きくなる。したがって、例えば洪水時等のように扉部4に外水側Bから大きな水圧がかかるおそれのある場合や、メンテナンスによる部品交換等の事情によりゲート本体の重量が軽減された場合等に、状況に応じて錘載置部8に適宜重さの錘7を載置することで、確実に扉部4を閉塞位置に維持することが可能となる。
【0044】
また、このように扉部4が錘載置部8を備える構成において、錘載置部8の位置は、支持軸31から(錘7を含む)錘載置部8の重心位置O2までの水平方向の長さL6が、支持軸31から扉部4の重心位置O1までの長さL1よりも大きくなる位置が好ましい。これにより、扉部4に働く閉モーメントM2を効率良く大きくすることができる。但し、錘載置部8の位置は、支持軸31から(錘7を含む)錘載置部8の重心位置O2までの水平方向の長さL6が、支持軸31から扉部4の重心位置O1までの長さL1よりも小さくなる位置又は同じ位置でも支障はない。
【0045】
また、上記実施形態では、駆動装置6はウインチにより構成されているが、駆動装置6は、例えば油圧シリンダなどから構成されていてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、アーム部5にアーム係合用プーリ53が備えられ、このアーム係合用プーリ53に巻回されたワイヤ63を駆動装置6によって巻き取ることによりアーム部5を引き上げる、すなわちゲート本体2を揺動させるが、例えば扉部4(扉本体41)の上方に駆動装置6を配置し、アーム係合用プーリ53を介さずに、駆動装置6によって扉部4を直接引き上げることでゲート本体2を揺動させるようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、アーム部5は、扉部4(扉本体41)の幅方向の両側に各々配設された一対構造であるが、例えばアーム部5は、扉部4の幅方向の中央部に一つだけ配設された構成、或いは、扉部4の幅方向に沿って3つ以上のものが設けられた構成であってもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、扉部4に水中ポンプ42が設けられているが、本発明は、扉部4に水中ポンプ42が設けられていないタイプのゲート装置についても適用可能である。なお、設計上、扉部42に水中ポンプ42が備えられる上記ゲート装置1と水中ポンプを備えない扉部を有するゲート装置との間で扉部が共通使いされるような場合には、図3に示すような錘載置部を備えた扉部の構成を採用することにより、水中ポンプ42を備えない扉部においては、錘によって重量を補うことが可能となる。
【0049】
また、洪水時等のように扉部4に外水側Bから大きな水圧がかかることが予想される場合には、ゲート本体2を変位させる駆動装置として、上述した駆動装置6に加えて、油圧シリンダ式の駆動装置を設けておくようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ゲート装置
2 ゲート本体
3 支持体
4 扉部
5 アーム部
6 駆動装置
31 支持軸
42 水中ポンプ
100 水路
A 内水側
B 外水側
図1
図2
図3