(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 17/18 20210101AFI20230113BHJP
G03B 17/00 20210101ALI20230113BHJP
G03B 17/20 20210101ALI20230113BHJP
H04N 23/40 20230101ALI20230113BHJP
H04N 23/53 20230101ALI20230113BHJP
【FI】
G03B17/18 Z
G03B17/00 Q
G03B17/18 D
G03B17/20
H04N5/225 000
H04N5/225 450
(21)【出願番号】P 2019552293
(86)(22)【出願日】2019-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2019022943
(87)【国際公開番号】W WO2019244695
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2018116373
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】春日井 宏樹
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-162075(JP,A)
【文献】特開2007-41393(JP,A)
【文献】国際公開第2006/117972(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/00
G03B 17/18 - 17/20
G03B 17/26 - 17/34
G03B 17/36 - 17/46
H04N 5/222 - 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表示装置と、
第2の表示装置と、
所定の操作に対する効果音を出力するスピーカと、
前記スピーカからの前記効果音の出力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1の表示装置が動作可能に設定されている場合に、前記所定の操作に対して、第1の周波数特性を持つ効果音をスピーカから出力し、
前記第2の表示装置が動作可能に設定されている場合に、前記所定の操作に対して、前記第1の周波数特性と異なる第2の周波数特性を持つ効果音をスピーカから出力させる、
撮像装置。
【請求項2】
前記第1の周波数特性は、所定周波数よりも高域において、前記第2の周波数特性よりも、より減衰が大きい特性である、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記効果音は、メカニカルシャッタを動作させた時に発生するシャッタ音を模擬した音であり、
前記第1の周波数特性は、前記撮像装置の背面から第1の距離だけ離れた位置で収音されたメカニカルシャッタのシャッタ音に基づき設定され、
前記第2の周波数特性は、前記撮像装置の背面から第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離れた位置で収音されたメカニカルシャッタのシャッタ音に基づき設定される、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記効果音は、合焦時に出力する音、セルフタイマ設定時に出力する音、及び動画記録の開始操作または終了操作時に出力する音の少なくともいずれか1つを含む、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の周波数特性を有する効果音を示す第1の音声データと、前記第2の周波数特性を有する効果音を示す第2の音声データとを格納する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1の音声データに基づき前記第1の周波数特性を有する効果音を生成し、前記第2の音声データに基づき前記第2の周波数特性を有する効果音を生成する、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の周波数特性の一方を有する効果音を示す音声データを格納する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記音声データに基づき前記第1及び第2の周波数特性の前記一方を有する効果音を生成し、
前記音声データに所定のフィルタ処理を行って前記第1及び第2の周波数特性の他方を有する効果音を生成する、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第1の表示装置は、画像を表示する表示デバイスを備え、ユーザが窓を覗き込むことで前記表示デバイスに表示された画像を視認できる表示装置であり、前記第2の表示装置は、露出した表示画面に画像を表示する表示装置である、
請求項1から6のいずれかに記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シャッタ操作のような所定の操作に応じて電子的な効果音を発する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、所定の音を出力する撮影装置を開示する。この撮影装置は、被写体を撮像する撮像手段と、撮影者により覗かれて前記撮像手段により撮像される被写体が視認されるファインダと、所定の音を出力する出音手段と、前記ファインダの接眼部に人体が接近したことを検出する、前記接眼部の周辺に設けられた検出手段と、前記接眼部に人体が接近したことが前記検出手段によって検出されると、前記出音手段から出力される音の音量を変更する制御を行う音量変更制御手段とを備える。この撮影装置により、撮影者は、出音手段から出力される音の音量を、メニュー画面に表示されるメニュー項目を選択して調節する手間をかけることなく、容易に調節できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
撮像装置からはシャッタ音、セルフタイマ音のような種々の効果音が電子的に生成されて、発せられる。例えば、シャッタ音は機械的に動作するメカニカルシャッタ(例えばフォーカルプレーンシャッタ)を模した電子音を発生しユーザに撮影したことを認識させるが、一定の電子音を発するため、ユーザの撮影位置(例えばファインダ撮影時とモニタ撮影時)によってユーザは聴感上違和感を覚える場合がある。
【0005】
本開示は、電子的に生成される、シャッタ音のような効果音を出力する撮像装置において、ユーザの撮影位置によってユーザが聴感上違和感を覚えない効果音を出力可能な撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様において、第1の表示装置と、第2の表示装置と、所定の操作に対する効果音を出力するスピーカと、スピーカからの効果音の出力を制御する制御部と、を備える。制御部は、第1の表示装置が動作可能に設定されている場合に、所定の操作に対して、第1の周波数特性を持つ効果音をスピーカから出力し、第2の表示装置が動作可能に設定されている場合に、所定の操作に対して、第1の周波数特性と異なる第2の周波数特性を持つ効果音をスピーカから出力させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の撮像装置によれば、ユーザが撮像装置に顔を近づけた状態で撮影する場合と、ユーザが撮像装置から顔を離した状態で撮影する場合とで、電子的に生成される効果音の周波数特性を異ならせる。これにより、ユーザに対して、ユーザが聴感上違和感を覚えない効果音を出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態1におけるデジタルカメラにおけるメカニカルシャッタ、スピーカ等の位置関係を説明した図
【
図3】シャッタ音の周波数特性の測定時の収音位置を説明した図
【
図4】2つの収音位置で測定したメカニカルシャッタのシャッタ音の周波数特性を示す図
【
図5】2つの収音位置で測定した従来の電子シャッタのシャッタ音(効果音)の周波数特性を示す図
【
図6】実施の形態1のデジタルカメラにおける電子シャッタの効果音の周波数特性を示す図
【
図7】実施の形態1のデジタルカメラにおいてメカニカルシャッタを使用する場合の動作を説明するための図
【
図8】実施の形態1のデジタルカメラにおいて電子シャッタを使用する場合の動作を説明するための図
【
図9】実施の形態1における電子シャッタの効果音の出力処理を示すフローチャート
【
図10】本開示の実施の形態2における電子シャッタ以外の所定の効果音の出力処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0010】
(実施の形態1)
[1-1.構成]
図1は、本開示の一実施の形態におけるデジタルカメラにおけるメカニカルシャッタ、スピーカ等の位置関係を説明した図である。本実施の形態のデジタルカメラ100はレンズ交換式のカメラであり、交換レンズ110とカメラ本体120とで構成される。
【0011】
交換レンズ110は、図示していないが、フォーカスレンズ、ズームレンズ及び手振れ補正用のレンズ及び絞りを含む光学系、光学系を駆動する駆動部(モータ、アクチュエータ等)、及び駆動部を制御するコントローラを備えている。
【0012】
カメラ本体120は内部に、交換レンズ110を介して結像した被写体像を撮像するイメージセンサ11と、イメージセンサ11に対する露光を行うメカニカルシャッタ13と、効果音等の音声を出力するスピーカ21とを備える。メカニカルシャッタ13はイメージセンサ11の前方に配置されており、カメラ本体120内の比較的前方に配置されている。これに対して、スピーカ21はカメラ本体120の後方に配置されている。
【0013】
また、カメラ本体120は、外部に、ライブビュー画像及び種々の情報を表示する表示装置として、ファインダ31とモニタ33を備える。ユーザは、ユーザの顔すなわち眼をファインダ31に近接させてファインダ31を覗き込むことで、ファインダ31の内部に配置された表示デバイスに表示されたライブビュー画像及び種々の情報を視認することができる。また、ユーザは、モニタ33を使用することでデジタルカメラ100から顔を離した状態でも、モニタ33に表示されたライブビュー画像及び種々の情報を視認することができる。
【0014】
図2は、デジタルカメラ100のカメラ本体120の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、カメラ本体120は、画像を撮像するイメージセンサ11と、イメージセンサ11に対する露光を行うメカニカルシャッタ13と、ファインダ31と、モニタ33とに加えて、デジタルカメラ100全体の動作を制御するコントローラ15と、シャッタ音等の効果音を出力するスピーカ21と、音声信号を増幅する回路であるアンプ19と、音声データ(デジタル音声信号)をアナログ音声信号に変換するDAコンバータ17と、音声データ等を格納するROM23とを備える。さらに、カメラ本体120は、ユーザがデジタルカメラ100に対する指示や設定の操作を行うための操作部25を備える。また、カメラ本体120は、ファインダ31の近傍に、物体の近接を検出するアイセンサ35を備える。このアイセンサ35は主としてユーザの顔がファインダ31へ近接したか否かを検出することを目的としている。
【0015】
イメージセンサ11は、交換レンズ110を介して入射される被写体像を撮像してアナログ画像信号を生成するセンサである。イメージセンサ11は、例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサで構成されるが、これらに限定されるものではない。イメージセンサ11で生成されたアナログ画像信号はデジタル画像データに変換される。変換により得られた画像データは、コントローラ15により、様々な画像処理が施される。例えば、画像処理は、ガンマ補正処理、ホワイトバランス補正処理、キズ補正処理、YC変換処理、電子ズーム処理、JPEG圧縮処理などの画像圧縮処理等である。
【0016】
モニタ33は、イメージセンサ11で生成された画像信号が示す画像、及び、各種の設定情報や、設定を行うためのメニュー画面等を表示する装置である。モニタ33は、
図1に示すようにカメラ本体120の背面に設けられる。モニタ33はカメラ本体120に対して向き及び/または角度が変更できるように可動に取り付けられている。モニタ33は液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイ等で構成される。
【0017】
ファインダ31はカメラ本体120の背面の上部に配置される。ファインダ31は内部に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示デバイス31aを備えている。ファインダ31はさらに透明部材で構成される窓31bを備えている。ファインダ31はカメラ本体120に対して向き及び/または角度が変更できるように可動に取り付けられてもよい。ユーザは、窓31bからファインダ31の内部を覗き込むことで表示デバイス31aに表示された画像を視認できる。これに対して、モニタ33は画面が露出しており、ユーザはモニタ33から顔を離した状態でも、モニタ33の画面に表示された画像を視認することができる。
【0018】
アイセンサ35は物体の近接を検出するセンサである。アイセンサ35はファインダ31の窓31bの近傍に設けられる。アイセンサ35は、ファインダ31の窓31bへのユーザの顔の近接を検出する。
【0019】
コントローラ15は、CPUやMPUのようなプログラムを実行することで所定の機能を実現するプロセッサで構成される。または、コントローラ15は、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路で構成されるプロセッサでもよい。すなわち、コントローラ15は、CPU、MPU、GPU、DSU、FPGA、ASIC等の種々のプロセッサで実現できる。コントローラ15を1つまたは複数のプロセッサで構成してもよい。
【0020】
ROM23は読み出し専用の不揮発性のメモリである。ROM23は例えばフラッシュメモリである。
【0021】
操作部25は、ユーザがデジタルカメラ100に対して指示や設定を行うための操作部材を含む。例えば、操作部25は、レリーズ釦、動画記録釦、カーソルキー、ジョグダイヤル、モードダイヤル、タッチパネル等を含む。
【0022】
メカニカルシャッタ13は、機械的に動作してイメージセンサ11を露光する時間を調整する装置である。例えば、メカニカルシャッタ13は、フォーカルプレーンシャッタまたはレンズシャッタで構成される。このようなメカニカルシャッタ13とは別に、イメージセンサ11の露光を行う機能として、本実施の形態のデジタルカメラ100は電子シャッタを備える。電子シャッタは、イメージセンサ11に蓄積される電荷の充電時間を制御することで、イメージセンサ11に対する露光を電子的に行う機能である。なお、シャッタとして、メカニカルシャッタ13及び電子シャッタのいずれを使用するかについては、デジタルカメラ100において、所定のボタンやメニュー画面によりユーザが任意に設定できるようになっている。
【0023】
DAコンバータ17は、音声データをアナログ音声信号に変換する回路である。アンプ19は、DAコンバータ17で生成されたアナログ音声信号を増幅する。スピーカ21は、アンプ19で増幅された音声信号に基づき音を出力する。スピーカ21は、ステレオ音声を出力してもよいし、モノラル音声を出力してもよい。DAコンバータ17で変換される音声データはフラッシュメモリ23に格納される。
【0024】
デジタルカメラ100は撮像装置の一例である。ファインダ31は第1の表示装置の一例である。モニタ33は第2の表示装置の一例である。コントローラ15は制御部の一例である。ROM23は記憶部の一例である。
【0025】
[1-2.動作]
以上のように構成されるデジタルカメラ100について、特に、電子的なシャッタ音の出力動作について説明する。
【0026】
デジタルカメラ100において、メカニカルシャッタ13の動作時には、先幕や後幕または遮光する羽等の機械的部品が物理的に動作するため、シャッタ音が発生する。これに対して電子シャッタは電子的な動作であるため、本来シャッタ音は発生しない。しかし、ユーザの利便性を考慮して、電子シャッタの動作時には電子的に合成した効果音をシャッタ音としてスピーカ21から出力している。本実施の形態では、電子シャッタのシャッタ音を示す音声データは、メカニカルシャッタ13のシャッタ音をサンプリングして生成される。
【0027】
また、本実施の形態のデジタルカメラ100は、ファインダ31とモニタ33の2つの表示装置を備えている。ユーザはファインダ31とモニタ33のいずれか一方を用いて撮影を行うことができる。ユーザはファインダ31を覗いて撮影(以下「ファインダ撮影」という)を行うときは、ファインダ31に眼を近づけて(すなわち、カメラ本体120に顔を近づけて)撮影を行う。一方、ユーザはモニタ33を見ながら撮影(以下「モニタ撮影」という)を行うときは、カメラ本体120から顔を離して撮影を行う。このようにファインダ撮影とモニタ撮影では、カメラ本体120からユーザの顔、すなわち、耳までの間の距離が異なる。このため、ファインダ撮影を行う場合と、モニタ撮影を行う場合とでは、ユーザのカメラ本体120から発せられるシャッタ音の聴こえ方が異なると考えられる。
【0028】
本願発明者はこの点を検証するため、メカニカルシャッタ13によるシャッタ音と、電子シャッタ動作時に出力される電子的なシャッタ音とについて、2つの収音位置における周波数特性を測定した。2つの収音位置はそれぞれ、ファインダ撮影時及びモニタ撮影時にユーザがシャッタ音を聴くと想定される位置である。
【0029】
図3は、シャッタ音の周波数特性の測定時の収音用マイクの位置を説明した図である。収音位置Aは、ファインダ撮影時にユーザがシャッタ音を聴くと想定される位置であり、ファインダ31から後方に1cm離れた位置である。収音位置Bは、モニタ撮影時にユーザがシャッタ音を聴くと想定される位置であり、モニタ33から後方に30cm離れた位置に設定した。
【0030】
図4は、収音位置A及び収音位置Bで測定したメカニカルシャッタ13のシャッタ音の周波数特性を示す図である。
図5は、収音位置A及び収音位置Bで測定した電子シャッタの従来のシャッタ音の周波数特性を示す図である。
図4及び
図5において、横軸は周波数であり、縦軸は、収音用マイクからの音声信号のレベルである。また、
図4及び
図5において、実線はファインダ撮影時を想定した収音位置Aでの測定結果を示し、破線はモニタ撮影時を想定した収音位置Bでの測定結果を示す。
【0031】
従来のデジタルカメラにおいては、通常、デジタルカメラとユーザの距離に応じて、スピーカから出力させる電子シャッタのシャッタ音を変動させることはない。よって、
図5においては、同じ音声データから合成した同じシャッタ音がスピーカ21から出力され、収音位置Aと収音位置Bで測定された結果を示している。
【0032】
図4及び
図5において、収音位置Aでの測定結果の方が収音位置Bでの測定結果よりも全体的に高いレベルを示しているが、これは、収音位置Bが収音位置Aよりもスピーカ21からより離れているため、収音位置Bに到達する音が距離により減衰しているためである。
図4を参照すると、メカニカルシャッタ13の場合、収音位置Aと収音位置Bとで周波数特性が異なっているのが分かる。一方、
図5を参照すると、電子シャッタの場合、収音位置Aと収音位置Bとで、レベルに差はあるが、周波数特性はほぼ同じである。
【0033】
さらに、
図4及び
図5を参照すると、メカニカルシャッタ13のシャッタ音と電子シャッタのシャッタ音は、収音位置B(モニタ撮影想定位置)では、両者の周波数特性はよく類似しているが、収音位置A(ファインダ撮影想定位置)では、両者の周波数特性が大きく異なっている。すなわち、収音位置Aについて着目すると、メカニカルシャッタ13のシャッタ音(
図4)の方が、電子シャッタのシャッタ音(
図5)よりも、低域においてはレベルが大きいが、高域においてはレベルが小さくなっていることが分かる。
【0034】
このように、メカニカルシャッタ13のシャッタ音と電子シャッタのシャッタ音は、ファインダ撮影を想定した収音位置Aと、モニタ撮影を想定した収音位置Bとで周波数特性の変化の仕方が異なっている。本来、電子シャッタのシャッタ音はメカニカルシャッタの実際のシャッタ音を模したものであり、聴感上実際のメカニカルシャッタのシャッタ音にできるだけ近づけるのが好ましい。
【0035】
本願発明者は、上述した測定結果に基づき、電子シャッタのシャッタ音について、収音位置Aと収音位置Bとでの周波数特性の変化の仕方がメカニカルシャッタのものと異なっているという事実に到達し、さらに、そのことが、電子シャッタのリアリティを阻害する1つの要因であるという知見を得た。
【0036】
そこで、本願発明者は、ファインダ撮影時に電子シャッタのシャッタ音の周波数特性を、デジタルカメラとユーザの間の距離に応じて変更することでより、メカニカルシャッタのシャッタ音に近い聴感を提供できる撮像装置を考案した。
【0037】
図6は、本実施の形態のデジタルカメラ100における、収音位置A及び収音位置Bで測定された電子シャッタのシャッタ音の周波数特性を示す図である。
図6に示す本実施の形態の電子シャッタのシャッタ音の周波数特性は、
図5に示す従来の電子シャッタのシャッタ音の周波数特性と比較して、収音位置Bでの周波数特性は同じであるが、収音位置Aでの周波数特性が異なる。すなわち、収音位置Aでの周波数特性と収音位置Bでの周波数特性との相対的な関係が、メカニカルシャッタ13におけるそれらの相対的な関係と同様になるように、収音位置Aの特性を設定している。具体的には、
図6に示す収音位置Aでの周波数特性では、高域(例えば、10000Hz以上)において、
図5に示す収音位置Aでの周波数特性よりも減衰が大きくなるように設定されている。
【0038】
このため、本実施の形態のデジタルカメラ100では、ROM23において、電子シャッタのシャッタ音の音声データを格納している。特に、ROM23は、ファインダ撮影時に再生する電子シャッタのシャッタ音の第1の音声データと、モニタ撮影時に再生する電子シャッタのシャッタ音の第2の音声データとをそれぞれ格納している。例えば、第1の音声データは収音位置Aで収音されたメカニカルシャッタ13のシャッタ音をサンプリングして生成され、第2の音声データは収音位置Bで収音されたメカニカルシャッタ13のシャッタ音をサンプリングして生成される。ファインダ撮影時には、第1の音声データに基づき再生されたシャッタ音がスピーカ21から出力され、モニタ撮影時には、第2の音声データに基づき再生されたシャッタ音がスピーカ21から出力される。
【0039】
図7は、デジタルカメラ100において、メカニカルシャッタ13を使用する場合の動作を説明するための図である。ここでは、デジタルカメラ100において、シャッタとしてメカニカルシャッタ13を使用することが設定されているとする。
【0040】
ユーザにより操作部25のレリーズ釦が押されると、コントローラ15はイメージセンサ11に露光開始命令を送信する。イメージセンサ11はコントローラ15からの露光開始命令を受けて露光を開始する。コントローラ15はさらにメカニカルシャッタ13に動作開始命令を送信する。メカニカルシャッタ13は、設定されたシャッタースピードで先幕、後幕の開閉を行い、イメージセンサ11を露光する。メカニカルシャッタ13のシャッタ動作を終了後、イメージセンサ11は全画素の露光を完了させる。その後、イメージセンサ11で生成された画像信号は所定の画像処理が施されて、メモリカードのような記録媒体(図示せず)に記録される。
【0041】
メカニカルシャッタ13はそれ自体がシャッタ音を発生させるため、メカニカルシャッタ13の動作時は、デジタルカメラ100は電子的なシャッタ音をスピーカ21から出力することはない。フラッシュメモリ23から、シャッタ音の音声データが読み出され、DAコンバータ17等で処理されることはない。
【0042】
図8は、デジタルカメラ100において、電子シャッタを使用する場合の動作を説明するための図である。ここでは、デジタルカメラ100において、シャッタとして電子シャッタを使用することが設定されているとする。
【0043】
ユーザにより操作部25のレリーズ釦が押されると、コントローラ15はイメージセンサ11に露光開始命令を送信する。イメージセンサ11はコントローラ15からの露光開始命令を受けて露光を開始する。コントローラ15はROM23からシャッタ音の音声データを読み出す。このとき、ファインダ撮影かモニタ撮影かに応じてROM23から第1の音声データまたは第2の音声データが読み出される。読み出した音声データはDAコンバータ17においてアナログ音声信号に変換される。アンプ19はアナログ音声信号を増幅してスピーカ21に送信する。これにより、スピーカ21はシャッタ音を出力する。イメージセンサ11で生成された画像信号は所定の画像処理が施されて、メモリカードのような記録媒体(図示せず)に記録される。
【0044】
図9は、デジタルカメラ100において電子シャッタの効果音の出力処理を示すフローチャートである。
図9のフローチャートを用いて電子シャッタの効果音の出力処理を説明する。
【0045】
コントローラ15はユーザにより操作部25のレリーズ釦が押されたか否かを検出している(S11)。ユーザにより操作部25のレリーズ釦が押されると(S11でYES)、コントローラ15は、シャッタとして、メカニカルシャッタ13と電子シャッタのうちのいずれが設定されているかを判断する(S12)。メカニカルシャッタ13に設定されている場合(S12でNO)、コントローラ15は本処理を終了する。
【0046】
電子シャッタが設定されている場合(S12でYES)、コントローラ15は、デジタルカメラ100がファインダ撮影モードに設定されているか、モニタ撮影モードに設定されているかを判断する(S13)。
【0047】
コントローラ15は、アイセンサ35からの検出信号に基づきファインダ撮影モードまたはモニタ撮影モードに設定する。具体的には、コントローラ15は、アイセンサ35が物体の近接を検出している場合、デジタルカメラ100をファインダ撮影モードに設定し、そうでない場合、モニタ撮影モードに設定する。ユーザはファインダ31を用いて撮影を行う場合、ファインダ31を覗くためにその顔をファインダ31に近づける。このため、アイセンサ35により、ユーザが顔をファインダ31に近づけたことを検出し、自動でファインダ撮影モードに設定している。
【0048】
ファインダ撮影モードでは、動作(機能)させる表示装置としてファインダ31が設定される。すなわち、ファインダ撮影モードでは、ファインダ31を動作させ、ファインダ31の内部の表示デバイスにライブビュー画像を表示し、モニタ33は動作させず、モニタ33にライブビュー画像は表示しないようにする。一方、モニタ撮影モードに設定された場合、動作(機能)させる表示装置としてモニタ33が設定される。すなわち、モニタ撮影モードでは、モニタ33を動作させ、モニタ33にライブビュー画像を表示し、ファインダ31は動作させずにファインダ31の内部の表示デバイスにライブビュー画像は表示しないようにする。
【0049】
なお、ファインダ撮影モードまたはモニタ撮影モードは、ユーザによる設定に基づき設定されることもできる。例えば、ユーザによる所定のボタンまたは設定メニューの操作により、デジタルカメラ100がファインダ撮影モードまたはモニタ撮影モードに設定することができる。ユーザ設定によりモードが設定された場合、アイセンサ35は無効に設定されるか、または、アイセンサ35による検出信号が無視される。
【0050】
ファインダ撮影モードであると判断した場合(S13でYES)、コントローラ15は、ファインダ撮影用のシャッタ音をスピーカ21から出力させる(S14)。この場合、コントローラ15はROM23から、ファインダ撮影時に再生される第1の音声データを読み出す。読み出された第1の音声データは、DAコンバータ17及びアンプ19で信号処理が施され、スピーカ21から、ファインダ撮影用のシャッタ音として出力される。
【0051】
一方、モニタ撮影モードであると判断した場合(S13でNO)、コントローラ15は、モニタ撮影用のシャッタ音をスピーカ21から出力させる(S15)。この場合、コントローラ15はROM23から、モニタ撮影時に再生される第2の音声データを読み出す。読み出された第2の音声データは、DAコンバータ17及びアンプ19で信号処理が施され、スピーカ21から、モニタ撮影用のシャッタ音として出力される。なお、ファインダ撮影用のシャッタ音とモニタ撮影用のシャッタ音とは同じレベル(音量)でスピーカ21から出力される。
【0052】
以上のように、本実施の形態のデジタルカメラ100によれば、電子シャッタの動作時においては、ファインダ撮影とモニタ撮影との間で異なるシャッタ音がスピーカ21から出力される。これにより、メカニカルシャッタ13の動作時に聴かれるシャッタ音に近い音を再現することができる。
【0053】
[1-3.効果、等]
以上のように、本実施の形態のデジタルカメラ100は、ファインダ31と、モニタ33と、レリーズ釦操作に対するシャッタ音(効果音)を出力するスピーカ21と、スピーカ21からのシャッタ音(効果音)の出力を制御するコントローラ15と、を備える。コントローラ15は、ファインダ31が動作可能に設定されている場合に、レリーズ釦の押下に対して、第1の周波数特性を持つシャッタ音をスピーカ21から出力し、モニタ33が動作可能に設定されている場合に、レリーズ釦の押下に対して、第1の周波数特性と異なる第2の周波数特性を持つシャッタ音をスピーカ21から出力させる。
【0054】
以上のように、ファインダ31が動作可能に設定されている場合、すなわち、ユーザがファインダ撮影を行っていると想定される場合と、モニタ33が動作可能に設定されている場合、すなわち、ユーザがモニタ撮影を行っていると想定される場合とで、スピーカ21から出力されるシャッタ音の周波数特性を異ならせる。これにより、デジタルカメラ100は、ファインダ撮影及びモニタ撮影の双方の場合において、メカニカルシャッタ13から発せられるシャッタ音に近い聴感をユーザに提供することができる。すなわち、デジタルカメラ100は、ユーザが聴感上違和感を覚えない効果音を出力することができる。
【0055】
第1の周波数特性は、所定周波数(例えば、10000Hz)よりも高域において、第2の周波数特性よりも、より減衰が大きい特性を有する。このような周波数特性にすることで、ユーザがデジタルカメラ100に顔を近づけた状態でスピーカ21からのシャッタ音を聴く際に、高音域が低減されるため、ユーザに対して甲高い音が耳につくことを低減できる。
【0056】
第1の周波数特性は、デジタルカメラ100の背面から第1の距離(例えば、ファインダ31から1cm)だけ離れた位置Aで収音されたメカニカルシャッタ13のシャッタ音に基づき設定されてもよい。第2の周波数特性は、デジタルカメラ100の背面から第1の距離よりも大きい第2の距離(例えば、モニタ33から30cm)だけ離れた位置Bで収音されたメカニカルシャッタ13のシャッタ音に基づき設定されてもよい。これにより、ユーザがデジタルカメラ100に顔を近づけた状態及びデジタルカメラ100から顔を離した状態の双方においてスピーカ21からのシャッタ音を聴く際に、メカニカルシャッタ13から発せられるシャッタ音に近い聴感をユーザに提供することができる。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態1では、電子シャッタの効果音(シャッタ音)について、ファインダ撮影とモニタ撮影とで音を異ならせた。ファインダ撮影とモニタ撮影とで周波数特性を異ならせる効果音は、シャッタ音に限定されない。デジタルカメラ100においてスピーカ21から出力される所定の効果音について、ファインダ撮影とモニタ撮影とで周波数特性を異ならせてもよい。所定の効果音は、例えば、合焦時に出力される合焦音、セルフタイマ設定時に出力されるタイマ音である。または、所定の効果音は、動画記録の開始または停止させるための動画記録釦の押下時に出力される音でもよい。
【0058】
この場合、所定の効果音について、ROM23に、ファインダ撮影用の第1の音声データとモニタ撮影用の第2の音声データとを予め格納しておく。例えば、合焦音及びセルフタイマのタイマ音について、ファインダ撮影用の第1の音声データと、モニタ撮影用の第2の音声データとをROM23に格納しておく
【0059】
図10は、電子シャッタ以外の効果音の出力処理を示すフローチャートである。コントローラ15は、所定の効果音が出力される状態になったか否かを検出している(S21)。ここで、所定の効果音とは、合焦時に出力される合焦音、または、セルフタイマ設定時に出力されるタイマ音等である。
【0060】
所定の効果音が出力される状態になったことが検出されると(S21でYES)、コントローラ15は、デジタルカメラ100がファインダ撮影モードかモニタ撮影モードかを判断する(S22)。
【0061】
ファインダ撮影モードであると判断した場合(S22でYES)、コントローラ15は、検出した操作に関連したファインダ撮影用の効果音をスピーカ21から出力させる(S23)。この場合、コントローラ15はROM23から、検出した操作に関連し、ファインダ撮影時に再生される第1の音声データを読み出す。読み出された第1の音声データは、DAコンバータ17及びアンプ19で信号処理が施され、スピーカ21から、ファインダ撮影用の効果音として出力される。
【0062】
一方、モニタ撮影モードであると判断した場合(S22でNO)、コントローラ15は、検出した操作に関連したモニタ撮影用の効果音をスピーカ21から出力させる(S24)。この場合、コントローラ15はROM23から、検出した操作に関連し、モニタ撮影時に再生される第2の音声データを読み出す。読み出された第2の音声データは、DAコンバータ17及びアンプ19で信号処理が施され、スピーカ21から、モニタ撮影用の効果音として出力される。
【0063】
例えば、合焦音について、ファインダ撮影用の第1の音声データにおいて、モニタ撮影用の第2の音声データと比較して、高域の音のレベルを小さくすることで、より近い位置で効果音を聴く際に甲高い音が耳につくことを和らげる効果が得られる。このように、デジタルカメラ100は、ユーザが聴感上違和感を覚えない効果音を出力することができる。
【0064】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1、2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態1、2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0065】
上記の実施の形態では、ファインダ撮影時には、第1の音声データを用いて効果音を生成してスピーカ21から出力し、モニタ撮影時には、第2の音声データを用いて効果音を生成してスピーカ21から出力した。このように、ファインダ撮影時とモニタ撮影時とで異なる音声データを用いて効果音を生成していたが、ファインダ撮影時とモニタ撮影時とで同じ音声データを用いて効果音を生成してもよい。例えば、ROM23にモニタ撮影用の効果音の音声データのみを格納しておいてもよい。この場合、モニタ撮影時には、ROM23に格納された音声データを用い、ファインダ撮影時には、ROM23に格納された音声データに所定のフィルタ処理を行い、ファインダ撮影用の効果音の音声データを生成してもよい。または、ROM23にファインダ撮影用の効果音の音声データのみを格納し、モニタ撮影時には、ROM23に格納された音声データに所定のフィルタ処理を行い、モニタ撮影用の効果音の音声データを生成してもよい。
【0066】
上記の実施の形態において、ファインダ撮影時の効果音に関連した収音位置Aをファインダ31から1cm離れた位置に、モニタ撮影時の効果音に関連した収音位置Bをモニタ33から30cm離れた位置にそれぞれ設定したが、これらの値は一例であり、他の値でもよい。
【0067】
上記の実施の形態では、メカニカルシャッタを備えた撮像装置を説明したが、撮像装置は、電子シャッタ機能を備えていれば、メカニカルシャッタを備えていなくてもよい。また、撮像装置は、効果音を出力可能なものであれば、ミラーを備えた一眼レフタイプであってもよいし、ミラーレスタイプであってもよい。
【0068】
上記の実施の形態では、レンズ交換が可能なデジタルカメラを撮像装置の例として用いて説明したが、撮像装置はレンズとボディが一体型のものであってもよい。
【0069】
撮像装置の一例として上記のデジタルカメラを説明したが、本開示の思想は、画像撮像機能を有し、スピーカから効果音を出力する他の種類の撮像装置にも適用できる。
【0070】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0071】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0072】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本開示は、所定の操作に基づきスピーカから効果音(例えば、シャッタ音)を出力する撮像装置に有用である。