(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】移動体の群制御装置及び群制御方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20230113BHJP
【FI】
G05D1/02 Z
G05D1/02 P
(21)【出願番号】P 2019561674
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2018047381
(87)【国際公開番号】W WO2019131557
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2017254499
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517405884
【氏名又は名称】クラスターダイナミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】高岡 秀年
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-031309(JP,A)
【文献】特開2017-142551(JP,A)
【文献】特開平06-110999(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0209849(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の実空間における複数の移動体を協調させながら集団として制御する移動体の群制御装置であって、
前記所定の実空間の構成に関する情報を、実空間構成情報として取得する第1取得手段と、
前記実空間構成情報に基づいて、前記所定の実空間の構成を、仮想空間として構成する構成手段と、
前記仮想空間
を分割した各格子の力のベクトルを算出する第1算出手段と、
前記力のベクトルの総体である流れ場に基づいて、前記複数の移動体の軌道変化を算出する第2算出手段と、
前記軌道変化に基づいて、前記実空間における前記複数の移動体の夫々に対する軌道の変更を指示する指示手段と
を備える
移動体の群制御装置。
【請求項2】
前記実空間における
前記複数の移動体の夫々の状態を示す情報を、移動体情報として取得する第2取得手段と、
前記移動体情報に基づいて、前記仮想空間における前記複数の移動体の夫々に関する物理量を算出する第
3算出手段と、
前記物理量に基づいて、前記仮想空間における前記複数の移動体の軌道変化を算出する第
4算出手段と
をさらに備え
、
前記指示手段は、前記第2算出手段及び前記第4算出手段によって算出された前記軌道変化に基づいて、前記実空間における前記複数の移動体の夫々に対する軌道の変更を指示する、
請求項1に記載の
移動体の群制御装置。
【請求項3】
所定の実空間における複数の移動体を協調させながら集団として制御する移動体の群制御方法であって、
前記所定の実空間の構成に関する情報に基づいて構成された仮想空間を分割した各格子の力のベクトルを算出し、
前記力のベクトルの総体である流れ場に基づいて、前記複数の移動体の軌道変化を算出し、
前記軌道変化に基づいて、前記実空間における前記複数の移動体の夫々に対する軌道の変更を指示する、
移動体の群制御方法。
【請求項4】
コンピュータに、所定の実空間における複数の移動体を協調させながら集団として制御する群制御を実行させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記所定の実空間の構成に関する情報に基づいて構成された仮想空間を分割した各格子の力のベクトルを算出する手順と、
前記力のベクトルの総体である流れ場に基づいて、前記複数の移動体の軌道変化を算出する手順と、
前記軌道変化に基づいて、前記実空間における前記複数の移動体の夫々に対する軌道の変更を指示する手順と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、ドローン等の無人の移動体を制御する技術が進められている。しかし、このような制御技術は、移動体単体の制御であり、相互作用も一対一で考慮しているため、群れ全体を安定的にコントロールすることは困難である。
そこで、複数の移動体を同時に制御する、即ち、複数の移動体を組織化して、集団として制御する、いわゆる群制御と呼ばれる技術が存在する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の技術を含む従来技術のみでは、移動体相互の衝突回避や協調運動を制御することは可能であるが、集団を集団的に誘導する方法は示されていない。
【0005】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、特定のエリアにおける移動体の集団を、粒子法による協調を保ちながら集団として誘導することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の情報処理装置は、
所定の実空間の構成に関する情報を、実空間構成情報として取得する第1報取得手段と、
前記実空間構成情報に基づいて、前記所定の実空間の構成を、仮想空間として構成する構成手段と、
前記仮想空間の各点の力のベクトルを算出する第1算出手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定のエリアにおける移動体の集団を、粒子法による協調を保ちながら集団として誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の基礎技術である粒子法による群制御の一例の概要を示すイメージ図である。
【
図2】粒子法と格子法を用いた群制御での仮想空間の状態の例を示すイメージ図である。
【
図3】
図1及び
図2の群制御を実現可能な情報処理システムであって、本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3の情報処理システムのうち、本発明の情報処理装置の一実施形態に係るサーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図4のサーバの機能的構成のうち、粒子法と格子法を連成した群制御が可能となる機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図5のサーバにより実行される群制御の結果の一例を示す図である。
【
図7】
図5のサーバにより実行される群制御の結果の一例であって、
図6とは異なる例を示す図である。
【
図8】
図5のサーバにより実行される群制御の結果の一例であって、
図6や
図7とは異なる例を示す図である。
【
図9】
図5のサーバにより実行される群制御の結果の一例であって、
図6乃至
図8とは異なる例を示す図である。
【
図10】
図5のサーバにより実行される群制御の結果の一例であって、
図6乃至
図9とは異なる例を示す図である。
【
図11】
図5のサーバにより実行される群制御の計算手法の一例を示すイメージ図である。
【
図12】
図5のサーバにより実行される群制御の計算手法の一例を示すイメージ図であり、
図11とは異なる例を示す図である。
【
図13】
図5のサーバにより実行される群制御の計算手法の一例を示すイメージ図であり、
図11や
図12とは異なる例を示す図である。
【
図14】
図5のサーバにより実行される群制御の計算手法の一例を示すイメージ図であり、
図11乃至13とは異なる例を示す図である。
【
図15】
図5のサーバにより実行される群制御の計算手法の一例を示すイメージ図であり、
図11乃至14とは異なる例を示す図である。
【
図16】
図5のサーバにより実行される群制御の結果の一例であって、
図6乃至
図10とは異なる例を示す図である。
【
図17】既存手法の1つである「高精度地図・ウェイポイント」の概要を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
図1は本発明の基礎技術である粒子法による群制御の一例の概要を示すイメージ図である。
本明細書等において粒子法とは、各移動体を1つの粒子とみなして制御する、群制御の手法の一種類である。粒子法による群制御では、実空間で各移動体の物理量の情報を取得し、仮想空間で当該物理量の情報を入力として物理法則に則った所定のモデル計算を実行し、再び実空間で当該モデル計算の出力に基づいて各移動体の軌道に変更を加えることで、群を制御する。
【0011】
実空間とは、物体が存在する通常の空間を指し、後述の仮想空間と区別するために用いられる。ここで、実空間において移動する物体を、特に「移動体」と呼ぶ。
また、物理量の情報とは移動体の物理的状態を記述する情報であり、例えば、移動体の位置、速度、加速度がある。
また、各移動体は、実空間で物理量の情報を取得するセンシング手段と、当該物理量の情報を実空間で送信する送信手段と、仮想空間で実行されたモデル計算の出力の情報を実空間で受信する受信手段と、当該モデル計算の結果に基づいて実空間で自身の軌道に変更を加える軌道変更手段とを備えるものとする。
【0012】
仮想空間とは、モデル計算を行うために構成される仮想的な空間をいう。
ここで、モデル計算とは、実空間で取得された物理量の情報を入力とし、実空間の物理法則に則った所定のモデルに基づく計算を行い、所定の物理量の情報を算出する計算をいう。
なおここで、モデル計算には、実空間には存在しない、群の制御に有用な仮想の要素を付加することができる。具体的には例えば、移動体間の距離に応じて引力や斥力を発生させる仮想的なバネ(以下、「仮想バネ」と呼ぶ)を、各移動体間に付加するモデルがある(以下、そのような仮想バネを付加するモデルを「バネモデル」と呼ぶ)。
【0013】
バネモデルでは、例えば、二つの移動体間の距離が近いときには、斥力を発生して両者を遠ざけることを試みる。また、逆に、二つの移動体間の距離が遠いときには、引力を発生して各移動体が群から分離することを防ぐことを試みる。
このようにすることで、移動体同士の衝突や、移動体の群からの離脱を回避することができる。
【0014】
図1を適宜参照して、バネモデルを用いた粒子法による群制御の概要について説明する。
ステップSS1において、実空間RSを移動する移動体VRは、自身を中心とする所定の半径の球状空間Sph内に含まれる(自身を含む)移動体の位置情報を取得する。
なおここで、
図1は、2次元平面を移動する車両を例にとって説明しているため、球状空間Sphは、円として描かれている。
【0015】
ステップSS2において、移動体VRは、ステップSS1において取得した位置情報を所定の情報処理装置(例えば後述の
図3のサーバ1)へと送信する。
【0016】
ステップSS3において、情報処理装置は、ステップSS2において送信された位置情報を受信し、当該情報を入力として、仮想空間CSに各移動体の位置関係を再構成する。具体的に例えば、移動体VCは、仮想空間CSに再構成された、移動体VRである。
さらに、情報処理装置は、バネモデルを用いた数値解析により、各移動体に作用する力のベクトルを算出する。
ここで、力のベクトルとは、各移動体に作用する力の向きと大きさを特定する情報である。力のベクトルは、移動体を1つの剛体とみなし、その重心に作用する力を特定するように、移動体に付与される。
【0017】
ステップSS4において、情報処理装置は、ステップSS3において算出された力のベクトルを用いた運動方程式に基づいた数値解析により、次の時間ステップでの各移動体の軌道変化を算出する。なお、次の時間ステップとは、ステップSS1において実空間での移動体の位置情報が取得された時刻よりも、所定の時間(典型的には50ミリ秒から1秒程度)後の時刻をいう。
【0018】
ステップSS5において、情報処理装置は、ステップSS4において算出した各移動体の軌道変化の情報を、対象となる移動体へと送信する。
【0019】
ステップSS6において、情報処理装置は、各移動体に、ステップSS5において送信された軌道変化の情報に基づいた軌道の変更を指示する。
これにより、各移動体は、自身の軌道に変更を加える。
【0020】
ステップSS1乃至ステップSS6の処理は、群に含まれる全ての移動体に実行される。結果として、仮想バネの効果により、実空間での移動体同士の衝突や、移動体の群からの離脱を回避することができる。
【0021】
図2は、粒子法と格子法を用いた群制御での仮想空間の状態の例を示すイメージ図である。
具体的には、
図2は、前述のバネモデルに基づいた粒子法による群制御での仮想空間の状態と、粒子法と「格子法」とを連成した群制御での仮想空間の状態を示す図である。
そのため、
図2は、粒子法と「格子法」とを連成した群制御の利点である、後述する仮想空間の「流れ場」による群の誘導の原理を示す。
【0022】
仮想空間CS-1は、前述のバネモデルを用いた粒子法による群制御が実行された場合の、仮想空間の状態の一例を示す。
仮想空間CS-1には複数の移動体(例えば、移動体Mo-1)を含む群G-1と、障害物O-1とが存在する。群G-1は、バネモデルを用いた粒子法による群制御により、集団としてのまとまりを保ち、移動体同士の衝突や、移動体の群からの離脱を回避することができる。
【0023】
しかしながら、バネモデルは、群G-1の内部の各移動体の、相対的な関係を制御する手法である。即ち、バネモデルを用いた粒子法による群制御では、群G-1を、集団として所定の目的地へと誘導することはできない。換言すると、
図2のように障害物O-1が存在する場合、群G-1は、Z方向に、当該障害物O-1より先に進むことができない。
なおここではバネモデルを例とって説明したが、粒子法による群制御一般について、所定の群を、集団として、所定の目的地へと誘導することはできない。
粒子法による群制御で、群を集団として目的地に誘導するには、群の中の一又は複数の移動体を常に操縦する必要があるため、例えば、操縦者の人件費が必要となるという問題が生じる。
【0024】
仮想空間CS-2は、前述のバネモデルを用いた粒子法によって制御される群G-2aと群G-2bとがさらに、格子法によって生成された「流れ場」に沿って誘導される一例を示す。
【0025】
格子法による「流れ場」の生成について説明する。
格子法では、実空間の構成に関する情報に基づいて、仮想空間が構成される。さらに、当該仮想空間を細かな「格子」に分割する。換言すると、本明細書等において「格子」とは、格子法での仮想空間分割の最小単位を指す。ここで、複数の「格子」が連続的に一体となったものを「メッシュ」呼び、「格子」とは区別して用いる。
「流れ場」とは、各格子の代表点の夫々に付与される、仮想流体が移動体に及ぼす力のベクトルの総体をいう。格子法では、数値流体力学に基づいた数値解析により、仮想空間を流れる仮想的な流れを流れ場として生成する。
またここで、格子法では、例えば流れ場を形成する仮想的な流体(以下、「仮想流体」と呼ぶ)の粘性度を可変設定したり、所定の格子の仮想流体の圧力を可変設定して、群制御の目的に好適な流れ場を生成することができる。
【0026】
仮想空間CS-2には、群G-2aと、群G-2bと、障害物O-2が存在する。
仮想空間CS-2では、流れ場がZ方向に向かって流れるように生成されている。より正確には、例えば三角形の格子T-2には、当該流れ場を構成する要素の1つとして、矢印A-2で示される力のベクトルが生成されている。このような仮想空間CS-2内の各格子に生成された力のベクトルの総体として、Z方向に流れる流れ場が生成されている。
またここで、領域R-2内の仮想空間の流れ場は、障害物O-2を回避するように生成されている。
【0027】
前述のように生成された流れ場により、各移動体は、仮想空間CS-2を、川の流れに乗った落ち葉のように、障害物を回避しながら移動することができる。
例えば、群G-2aと群G-2bとは、Z=0付近でもともと1つの群であったが、流れ場によって誘導され、障害物O-2付近で群G-2aと群G-2bとに分裂することで、障害物O-2を回避している。
【0028】
群G-2aと群G-2bはまた、バネモデルを用いた粒子法によって群制御されるため、各群の中での移動体の衝突や、移動体の群からの離脱を回避できる。
即ち、粒子法と格子法を連成した群制御によれば、粒子法によって集団としてのまとまりを保ち、移動体同士の衝突や、移動体の群からの離脱を回避しつつ、さらに格子法によって群を集団として誘導し、障害物を回避することができる。
即ち、粒子法と格子法を連成した群制御によれば、操縦者を必要とせず、群を集団として目的地に誘導することが可能となる。
【0029】
図3は、
図1及び
図2の群制御を実現可能な情報処理システムであって、本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成を示すブロック図である。
図3の情報処理システムは、サーバ1と、M台(Mは1以上の任意の整数値)の移動体2-1乃至2-Mとを含むように構成されている。
【0030】
サーバ1と移動体2-1乃至2-Mの夫々とは、インターネット等の所定のネットワークNを介して相互に接続されている。
ただし、以下、移動体2-1乃至2-Mを個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて単に「移動体2」と呼ぶ。
【0031】
前述のように、移動体2は、センシング手段と、送信手段と、受信手段と、起動変更手段とを備えるものとする。
センシング手段は、実空間で物理量の情報を取得する。送信手段は、当該物理量の情報をネットワークNを介してサーバ1へと送信する。受信手段は、仮想空間でのモデル計算の出力の情報を、実空間でネットワークNを介してサーバ1から受信する。軌道変更手段は、当該モデル計算の結果に基づいて実空間で自身の軌道に変更を加える。
【0032】
図4は、
図3の情報処理システムのうち、本発明の情報処理装置の一実施形態に係るサーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0033】
サーバ1は、CPU(Central Processing Unit)11とROM(Read Only Memory)12とRAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、入力部16と、出力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20とを備えている。
【0034】
CPU11はROM12に記録されている各種プログラム、又は、記憶部18からRAM13にロードされた各種プログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM13には、CPU11が各種の処理を実行するにおいて必要なデータ等も適宜記憶される。
【0035】
CPU11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。入出力インターフェース15には、入力部16、出力部17、記憶部18、通信部19及びドライブ20が接続されている。
【0036】
入力部16は、各種ハードウェア等で構成され、各種情報を入力する。
出力部17は、各種液晶ディスプレイ等で構成され、各種情報を出力する。
記憶部18は、ハードディスクやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。
通信部19は、インターネット等のネットワークNを介して他の装置(例えば、
図3の移動体2)との間の通信を制御する。
【0037】
ドライブ20は、必要に応じて設けられる。ドライブ20には磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア21が適宜装着される。ドライブ20によってリムーバブルメディア21から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。またリムーバブルメディア21は、記憶部18に記憶されている各種データも、記憶部18と同様に記憶することができる。
【0038】
図5は、
図4のサーバ1の機能的構成のうち、粒子法と格子法を連成した群制御が可能となる機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
サーバ1のCPU11においては、粒子法と格子法を連成した群制御が実行される場合、格子法制御部101と、粒子法制御部102とが機能する。
【0039】
格子法制御部101においては、実空間構成情報取得部111と、仮想空間構成部112と、流れ場算出部113と、受付部114とが機能する。
【0040】
実空間構成情報取得部111は、所定の実空間の構成に関する情報を、移動体2-1乃至2-Mの夫々から、実空間構成情報として取得する。
なおここでいう実空間の構成に関する情報とは、例えば実空間を構成する、床、壁、天井等の配置に関する情報の他、実空間に存在する物体の形状及び配位に関する情報を含む情報である。
【0041】
仮想空間構成部112は、実空間構成情報取得部111で取得された実空間構成情報に基づいて、前述の所定の実空間の構成を、仮想空間として構成する。
なおここでいう仮想空間として構成するとは、実空間構成情報に基づいて仮想空間内の流れ場の流路を構成することの他に、仮想空間を離散化することを含む。
ここでいう仮想空間を離散化するとは、本来連続体である仮想空間を、数値流体力学に基づいた計算を可能とするために、当該計算において連続体を記述するに十分に細かい構成単位(格子)へと分割する作業をいう。
なおここで、仮想空間の離散化における具体的なパラメータ、例えば格子の形状、大きさ、配位については特に限定せず、後述する受付部114を介して取得された所定の入力情報に基づき、適宜好適なパラメータの値が設定されるものとする。
【0042】
流れ場算出部113は、例えば
図2の矢印A-2のように、仮想空間を分割した各格子の代表点における力のベクトルを算出して流れ場を生成する。
ここで、力のベクトルの算出とは、方程式を解析的に解くこと加えてさらに、数値流体力学に基づいたシミュレーションを反復して用いて、数値解析的に解を求めることを含む。
なおここで、前述のように、流れ場算出部113は、各種パラメータを可変設定することができる。例えば、流れ場算出部113は、仮想流体の粘性度を可変設定したり、所定の格子の仮想流体の圧力を可変設定して、群制御の目的に好適な流れ場を生成することができる。そのような設定に必要な情報は、後述する受付部114を介して取得されるものであるとする。
【0043】
受付部114は、前述の仮想空間構成部112や流れ場算出部113で用いられるパラメータの値を受け付ける。
【0044】
粒子法制御部102においては、移動体情報取得部121と、物理量算出部122と、軌道変化算出部123と、軌道変更指示部124とが機能する。
【0045】
移動体情報取得部121は、実空間における複数の移動体2-1乃至2-Mの状態を示す情報を、移動体2-1乃至2-Mから、移動体情報として取得する。
なおここで、移動体情報は、移動体の物理量の情報、例えば移動体の位置、速度、加速度を含む情報である。
【0046】
物理量算出部122は、移動体情報取得部121で取得された移動体情報を入力として、所定のモデル計算により、仮想空間での、移動体2-1乃至2-Mの夫々に働く力のベクトルを算出する。
具体的には例えば、当該移動体情報を入力とし、前述のバネモデルに基づいて、仮想バネから移動体2-1乃至2-Mの夫々に働く力のベクトルを算出する。
【0047】
軌道変化算出部123は、流れ場算出部113で算出された各格子の力のベクトルと、物理量算出部122で算出された移動体2-1乃至2-Mの夫々に働く力のベクトルとの少なくとも一方を入力に用いた運動方程式に基づいて、仮想空間構成部112で構成された仮想空間における、移動体2-1乃至2-Mの夫々の次の時間ステップでの軌道変化を算出する。
【0048】
軌道変更指示部124は、軌道変化算出部123で算出された軌道変化の情報を移動体2-1乃至2-Mに送信する。
軌道変更指示部124はさらに、実空間における移動体2-1乃至2-Mの夫々に、当該軌道変化の情報に基づいた軌道の変更を指示する。
【0049】
図6は、
図5のサーバ1により実行される群制御の結果の一例を示す図である。
具体的には、
図6には、粒子法と格子法を連成した群制御により、所定の仮想空間を移動する群が障害物を回避する一例を経時的に示す図である。
【0050】
図6において、仮想空間CS-61乃至CS-65は各時間ステップt-61乃至t-65の夫々の時刻における同一の仮想空間の状態を示す。
【0051】
仮想空間CS-61では、群G-6が、Z=0付近に二列に整列している。
ここで、仮想空間CS-61では、全体としてZ方向に流れる流れ場が生成されている。
また、領域R-6内には、障害物O-6を回避するように流れる流れ場が生成されている。
【0052】
仮想空間CS-62では、群G-6が障害物O-6の付近に達し、分裂を始めている。
【0053】
仮想空間CS-63では、群G-6aと群G-6bに分裂した群が、流れ場に沿って障害物O-6を回避している。
【0054】
仮想空間CS-64では、障害物O-6を回避した群G-6aと群G-6bが、合流を始めている。
【0055】
仮想空間CS-65では、群G-6が、Z=Zd付近に達し、二列に整列している。
【0056】
このように、粒子法と格子法を連成した群制御によれば、粒子法によって集団としてのまとまりを保ち、移動体同士の衝突や、移動体の群からの離脱を回避しつつ、さらに格子法によって群を集団として誘導し、障害物を回避することができる。
【0057】
図7は、
図5のサーバ1により実行される群制御の結果の一例であって、
図6とは異なる例を示す図である。
具体的には、
図7には、粒子法と格子法を連成した群制御により、所定の仮想空間を移動する群が障害物を回避して、所定の目標地に到達する一例を経時的に示す図である。
【0058】
仮想空間CS-7には、群G-7と障害物O-7と目的地D-7が存在する。
ここで、領域R1内側には、群G-7が、障害物O-7を回避するように流れる流れ場が生成されている。
また、領域R2内には、群G-7が、目的地D-7へと誘導されるように流れる流れ場が生成されている。
【0059】
図7において、仮想空間CS-71乃至CS-710の夫々は、各時間ステップt-71乃至t-710の夫々の時刻における仮想空間CS-7の状態を示す。
【0060】
仮想空間CS-71では、群G-7が、二列に整列している。
【0061】
仮想空間CS-72では、群G-7が、Z方向に進行し-2つの群への分裂を開始している。
【0062】
仮想空間CS-73では、群G-7aと群G-7bとに分裂した群が、障害物O-7を回避する軌道を取りながら、さらにZ方向に進行している。
【0063】
仮想空間CS-74では、群G-7aと群G-7bとが、障害物O-7の両脇の流路に差し掛かっている。
【0064】
仮想空間CS-75では、群G-7aと群G-7bとが、障害物O-7の両脇の流路を進行している。
【0065】
仮想空間CS-76では、群G-7aと群G-7bとが、障害物O-7の両脇の流路の出口に差し掛かっている。
【0066】
仮想空間CS-77では、障害物を回避した群G-7aと群G-7bとが、合流のために接近を開始している。
【0067】
仮想空間CS-78では、群G-7aと群G-7bとが、さらに接近している。
【0068】
仮想空間CS-79では、分裂していた群G-7が再び1つの群となり、Z方向へ進行している。
【0069】
仮想空間CS-710では、群G-7が目的地D-7に到達している。
【0070】
なおここで、目的地D-7の位置は容易に変更可能であるため、目的地D-7の位置を変更しながら、群G-7を集団として誘導することも可能である。
即ち、粒子法によって、群G-7の集団としてのまとまりを保ち、群G-7に含まれる移動体同士の衝突や、移動体の群からの離脱を回避しつつ、さらに格子法によって群G-7を集団として様々な目的地へと誘導することができる。
【0071】
図8は、
図5のサーバ1により実行される群制御の結果の一例であって、
図6や
図7とは異なる例を示す図である。
具体的には、
図8は、格子法を用いて生成した、同一の始点と独立な終点を持つ二つのメッシュを合成し、1つの始点と二つの終点を持つメッシュを生成する一例を示す図である。
【0072】
メッシュM1は、始点Sと、終点Dbを持つメッシュである。
ここで、始点S付近の流れ場の向きは矢印Aaのようになり、終点Dbの付近の流れ場の向きは矢印Abのようになる。即ち、メッシュM1の各格子に生成された力のベクトルの方向は、始点Sの付近では矢印Aaと、終点Dbの付近では矢印Abと同一である。
【0073】
同様に、メッシュM2は、始点Sと、終点Dcを持つメッシュであり、始点Sの付近の流れ場の向きは矢印Aaのようになり、終点Dcの付近の流れ場の向きは矢印Acのようになる。
【0074】
メッシュM3は、メッシュM1と、メッシュM2とを合成したメッシュであり、一の始点Sと、二つの終点Dbと終点Dcとを持つ。
始点S付近の流れ場の向きは矢印Aaのようになり、終点Db付近の流れ場の向きは矢印Abのようになり、終点Dc付近の流れ場の向きは矢印Acのようになる。
また、メッシュM3には、メッシュM1と、メッシュM2の夫々が違う方向へと分岐する分岐点Brが形成される。
【0075】
図9は、
図5のサーバ1により実行される群制御の結果の一例であって、
図6乃至8とは異なる例を示す図である。
具体的には、
図9には、
図8の例のように、二つのメッシュの合成により生成された、所定の分岐点を持つメッシュ上を進行する群が、粒子法と格子法を連成した群制御により、当該分岐点において滑らかに分離する一例を示す図である。
【0076】
ここで、
図9で、黒丸で示される移動体は、メッシュM-9aの流れ場によって誘導され、白丸で示される移動体は、メッシュM-9bの流れ場によって誘導されるものとする。
また、
図9で、仮想空間CS-91乃至CS-94は各時間ステップt-91乃至t-94の夫々の時刻における同一の仮想の状態を示す。
【0077】
仮想空間CS-91において、群G-9は、矢印A-9cの方向へと誘導される。
なおここで、群G-9の中には、黒丸で示される移動体と、白丸で示される移動体が混合する。メッシュM-9aとメッシュM-9bの、始点S-9の付近での流れ場の方向は矢印A-9cと同一であるため、群G-9に含まれる全移動体は矢印A-9aの方向へ誘導される。
【0078】
仮想空間CS-92において、群G-9は、分岐点Br-9に差し掛かる。ここで、当該分岐点Br-9以降は、黒丸で示される移動体は、矢印A-9aの方向へ、白丸で示される移動体は、矢印A-9bの方向へ移動する。即ち、群G-9は、分岐点Br-9で分離する。
ここで、群G-9の各移動体は、粒子法による制御を受けているので、分岐点Br-9においても、異なる方向に向かう移動体同士が衝突することはなく、群G-9の滑らかな分離が実現する。
【0079】
仮想空間CS-93において、分岐点Br-9以降、黒丸で示される移動体は群G-9aを、白丸で示される移動体は群G-9bを形成する。
【0080】
仮想空間CS-94において、群G-9aと群G-9bとは、夫々の進行方向に沿ってさらに進行する。
【0081】
図9の例の群制御の手法によれば、例えば、道路や空路の本線から分岐線への移動体の流出を制御することができる。即ち、前述のように本線と分岐線を別々のメッシュとし、夫々に独立した流れ場を生成することで、本線を進む移動体は本線のメッシュの流れ場に沿って、分岐線へと流出する移動体は分岐線のメッシュの流れ場に沿って誘導される。ここで、各移動体は粒子法による制御を受けるため、分岐において、衝突、渋滞、混雑等の問題を回避することができる。
【0082】
図10は、
図5のサーバ1により実行される群制御の結果の一例であって、
図6乃至9とは異なる例を示す図である。
具体的には、
図10は、所定の合流点を持つ二つの仮想空路上を進行する飛行体の群が、粒子法と格子法を連成した群制御により、当該合流点において滑らかに合流する一例を示す図である。
【0083】
ここで、仮想空路とは、格子法により生成されたメッシュ上の流れ場により、上空を飛行する飛行体の飛行経路を制御する仮想的な空路をいう。またここで、
図10は実空間の図なので、メッシュや流れ場は露わには描かれていない。
またここで、飛行体とは、飛行機能を備えた
図3の移動体2をいい、粒子法や格子法により制御される。
【0084】
図10では、始点Saと目的地D-10を結ぶ仮想空路が、白い飛行体(例えば飛行体Foa)を、矢印Aaの方向へと誘導している。
また、始点Sbと目的地D-10を結ぶ仮想空路が、斜線の飛行体(例えば飛行体Fob)を矢印Abの方向へ誘導している。
なおここでは、案内装置Gdは、例えばビーコン機能により、飛行体の想空路からの脱を防ぐ。
【0085】
図10では、白い飛行体と、斜線の飛行体が、合流点Coにおいて合流する。
ここで、各飛行体は粒子法による制御を受けるので、合流点Coにおいて、互いに衝突することなく、滑らかな合流が可能になる。
合流後の各飛行体、例えば飛行体Focは、矢印Acの方向へ誘導される。
【0086】
このように、粒子法と格子法を連成した群制御により、衝突を回避しつつ、滑らかな合流が可能となる。結果として、合流点Coにおける、衝突、渋滞、混雑等の発生を回避することができ、飛行体を用いた輸送密度や輸送速度の向上につながる。
【0087】
図11は、
図5のサーバ1により実行される群制御の計算手法の一例を示すイメージ図である。
具体的には、
図11は、格子法での数値流体力学に基づいた数値解析で、移動体の位置にある格子の仮想流体に対する圧力(以下、「格子の圧力」と略記する)を高く設定し、目的地の格子の圧力を低く設定することで、移動体を目的地へと誘導する流れ場を生成する計算手法の概要を示すイメージ図である。
【0088】
実空間RS-11において、移動体V-1を目的地D-11aへと誘導するには、経路P-1a、経路P-1b、経路P-1cを含む複数の選択肢がある。
このような場合に、対応する仮想空間において、移動体V-1の位置の格子の圧力を高く設定し、目的地D-11の格子の圧力を低く設定することで、移動体V-1を目的地D-11aへと誘導する一の経路が、数値流体力学に基づいた数値解析によって決定される。
【0089】
仮想空間CS-11は、前述のように仮想流体に対する圧力差を設定して移動体の経路を決定する例であり、移動体V-2aの位置の格子の圧力は高く、目的地D-11bを含む領域R-11内の格子の圧力は低く設定されている。
このような設定で、数値流体力学に基づいた数値解析を行うことにより、通路Cor内で移動体V-2aを目的地D-11に誘導する経路P-2aが決定される。
【0090】
図12は、
図5のサーバ1により実行される群制御の計算手法の一例を示すイメージ図であり、
図11とは異なる例を示す図である。
具体的には、
図12は、格子法での流れ場生成で、移動体の渋滞や混雑が発生したエリアの圧力を高く設定することで、渋滞や混雑を回避する経路を決定する手法の概要を示すイメージ図である。
【0091】
実空間RS-12では、移動体V-1dは経路P-1dに沿って、移動体V-1eは経路P-1eに沿って、移動体V-1fは経路P-1fに沿って移動している。
即ち、実空間RS-12の領域Are-1は混雑している。
【0092】
仮想空間CS-12では、実空間RS-12の領域Are-1に対応する領域Are-2の圧力が高く設定される。その結果、移動体V-2bは、当該領域Are-2を避ける経路P-2bを選択し、混雑を避けることができる。
【0093】
図13は、
図5のサーバ1により実行される群制御の計算手法の一例を示すイメージ図であり、
図11や
図12とは異なる例を示す図である。
具体的には、
図13は、格子法での流れ場生成で、移動体の進行方向に障害物が存在する場合に、当該障害物が存在する通路の幅によって、異なる方法で障害物を回避する手法の概要を示すイメージ図である。
【0094】
仮想空間CS-13aにおいて、人H-1を目的地D-13aへと誘導する際に、障害物O-13aが、通路Cor-1内の、人H-1の進路を塞いでいるものとする。
このような場合は、障害物O-13aの位置の圧力を高く設定することにより、通路Cor-1は通行不能となり、通路Cor-1を迂回する経路P-13aが選択される。
【0095】
仮想空間CS-13bにおいて、人H-2を目的地D-13bへと誘導する際に、障害物O-13bは、通路Cor-2内にあるが、通路Cor-2を完全には塞いでいないものとする。
このような場合は、障害物O-13bの位置の圧力を高く設定しても、通路Cor-2はまだ通行可能であり、結果として通路Cor-2内で障害物O-13bを迂回する経路P-13bが選択される。
【0096】
図14は、
図5のサーバ1により実行される群制御の計算手法の一例を示すイメージ図であり、
図12乃至
図13とは異なる例を示す図である。
具体的には、
図14は、実空間の交差点のある領域を通行する一群の車両の制御のために、仮想空間において地図座標系から車両座標系へと視点変換を行う手法の概要を示すイメージ図である。
【0097】
地図座標系とは1乃至3次元の互いに直交する空間方向の軸を持つ座標系のうち、全ての軸が仮想空間に固定されたものをいう。
車両座標系とは、原点が固定された特定の移動体(以下、「自車」と呼ぶ)と、他の移動体(以下、「他車」と呼ぶ)との相対距離を座標軸とする、一次元の座標系をいう。ここで、自車の進行方向を正の方向、逆を負の方向に取る。
なおここで、「車両座標系」、「自車」、「他車」の名称は、本説明での移動体が車両であるため便宜上用いられるものであり、特にこれに限定されない。具体的には例えば、移動体が飛行機である場合は「飛行機座標」、「自機」、「他機」の名称を用いてもよい。
【0098】
自然界には、粒子法による移動体の交差や右左折合流のモデル計算に適した物理現象が存在しない。即ち、交差点がある場合、通常の地図座標系を用いた粒子法では、移動体同士の交差や右左折合流を制御することができない。
しかしながら、仮想空間で用いる座標系を車両座標系へと変換し、実空間で自車の前後を移動する移動体に加えてさらに、交差や合流の可能性のある移動体を含めて粒子法による制御を行うことで、交差や右左折合流の制御を可能とすることができる。
【0099】
地図座標系から車両座標系への変換を、
図14を適宜用いて説明する。
座標系Ax-Mは、交差点CRのある所定の仮想空間CS-14の状態を、地図座標系を用いて表示する一例を示している。
自車Vsは、経路Psに沿って移動している。
他車Vo-1は経路Po-1に沿って移動している。ここで、経路Po-1は、交差点CRでの右折を含み、当該右折後は経路Psと合流する。
他車Vo-2は経路Po-2に沿って移動している。ここで、経路Po-2は、交差点CRでの右折を含み、その際、経路Po-2と経路Psとは交差する。
他車Vo-3は経路Po-3に沿って移動している。ここで、経路Po-3は、交差点CRを直進し、その際、経路Po-3と経路Psとは交差する。
【0100】
座標系Ax-Voは、前述の座標軸Ax-Mでの仮想空間CS-14の状態を、車両座標系に変換した結果の一例を示している。
座標軸Axの原点は自車Vsに固定されており、前後を移動する他車が、夫々の自車Vsからの相対距離と方向で特定される位置に表示されている。
ここで、前述の他車Vo-1、他車Vo-2、他車Vo-3等の、交差や合流する可能性のある車両も、座標軸Ax-Voに表示されている。
またここで、自車Vsと他車との距離が影響半径Reffよりも大きい場合は、両者は互いに相互作用を及ぼさない。即ち、両者の間に力は働かない。
【0101】
このような座標軸Ax-Voを用いて粒子法による制御を行うことで、交差点CRにおける滑らかな交差や左右折合流を制御することができる。
バネモデルを適用する場合での一例を挙げれば、座標軸Ax-Vo上で自車Vsと他車Vo-3の距離が近くなり過ぎた場合は、両者の間に斥力が発生され、(例えば実空間で他車Vo-3が加速されることにより)交差点CRでの衝突を回避することができる。
また、他車Vo-3と、他車Vo-4との間にも仮想バネが付加される。
さらに、自車Vsと他車Vo-4との間にも、同様に仮想バネが付加される。
そして、自車Vsと他車Vo-3との間に付加される仮想バネと、自車Vsと他車Vo-4との間に付加される仮想バネと、他車Vo-3と他車Vo-4との間に付加される仮想バネとに発生する力が、物理法則に則り衝突や分離を防ぐように調整される。
そのため、自車Vs、他車Vo-3、及び他車Vo-4の三者間の衝突や分離を回避することができる。
【0102】
図15は、
図5のサーバ1により実行される群制御の計算手法の一例を示すイメージ図であり、
図12乃至
図14とは異なる例を示す図である。
具体的には、
図15は、
図14で説明した車両座標系において、自車と他車を繋ぐ仮想バネにより自車に働く力の、自車と他車の位置関係による変化の概要を示すイメージ図である。
【0103】
図15のグラフGrは、縦軸が自車Vsに働く力、横軸が座標軸Ax上の距離Dijを取るグラフである。
ここで、縦軸がプラスの場合は、自車に働く力の向きは、ダイアグラムDgに示される座標軸Axの正の方向であり、縦軸がマイナスの場合は、自車に働く力の向きは座標軸Axの負の方向であることを示す。
またここで、自車Vsと他車Voとの距離が影響半径Reffよりも大きい場合は、両者は互いに相互作用を及ぼさない。即ち、両者の間に力は働かない。
【0104】
グラフ中の太線F1及び太線F2は、自車Vsに働く力の、距離Dij依存性を示す。
他車が座標軸Ax上で、位置Veffmと位置Vstdmとの間にある場合、自車Vsと当該他車の間には引力が働き、自車Vsは負の方向への力を受ける。ここで、自車Vsが受け得る力の大きさは、Dijが小さいほど大きくなるが、所定の最大値(MAX)が設定され、それより大きくならない。
他車が座標軸Ax上で、位置Vstdmと位置VLimmとの間にある場合、自車Vsと当該他車の間には斥力が働き、自車Vsは正の方向への力を受ける。ここで、自車Vsが受ける力の大きさはDijが大きいほど大きくなる。
他車が座標軸Ax上で、位置VLimmと原点との間にある場合、自車Vsと他車Voの間には斥力が働き、自車Vsは正の方向への力を受ける。ここで、自車Vsが受ける力の大きさは所定の一定値(MAX)となる。
【0105】
他車が座標軸Ax上で、原点と位置VLimとの間にある場合、自車Vsと他車Voの間には斥力が働き、自車Vsは負の方向への力を受ける。ここで、自車Vsが受ける力の大きさは所定の一定値(MAX)となる。
他車が座標軸Ax上で、位置VLimと位置Vstdとの間にある場合、自車Vsと当該他車の間には斥力が働き、自車Vsは負の方向への力を受ける。ここで、自車Vsが受ける力の大きさはDijが大きいほど小さくなる。
他車が座標軸Ax上で、位置Vstdと位置Veffとの間に居る場合、自車Vsと当該他車の間には引力が働き、自車Vsは正の方向への力を受ける。ここで、自車Vsが受け得る力の大きさは、Dijが大きいほど大きくなるが、所定の最大値(MAX)が設定され、それより大きくならない。
【0106】
図16は、
図5のサーバ1により実行される群制御の結果の一例であって、
図6乃至
図10とは異なる例を示す図である。
より正確には、
図16は、粒子法と格子法を連成した群制御により、倉庫内の物流の制御を行い、移動体同士の衝突や、移動体と人との衝突を回避する一例を示す図である。
【0107】
図16の、移動体の夫々の制御について説明する。
実空間RS-16の移動体C-Raを目的地D-Raへと誘導する場合には、実空間RS-16の移動体C-Raと、目的地D-Raと、人H-Raとを、移動体C-Caと、目的地D-Caと、人H-Caとして仮想空間CS-16に再現する。
ここで、格子法の数値解析において、
図11や
図12で示したように、移動体C-Caの出発点の位置の格子の圧力と、人H-Caの存在する領域の格子の圧力とを高く設定し、目的地D-Caの格子の圧力を低く設定するすることで、人H-Caを迂回する適切な経路P-Caが決定される。
つまり、実空間RSにおいては、人H-Raによって塞がれている経路P-Rbではなく、経路P-Raが選択される。
【0108】
実空間RS-16の移動体C-Rdを目的地D-Rdへと誘導する場合、実空間RS-16の移動体C-Rdと、目的地D-Rdと、人H-Rdとを、移動体C-Cdと、目的地D-Cdと、人H-Rdとして仮想空間CS-16に再現する。
ここで、格子法の数値解析において、
図11や
図12で示した例のように、移動体C-Cdの出発点の位置の格子の圧力と、人H-Cdの存在する領域の格子の圧力を高く設定し、目的地D-Cdの格子の圧力を低く設定することで、人H-Cdを迂回する適切な経路P-Cdが選択される。
つまり、実空間RS-16においては、人H-Rdによって塞がれている経路P-Reではなく、経路P-Rdが決定される。
【0109】
なおここで、移動体C-Rdが選択した経路P-Rdは、移動体C-Rcの経路P-Rcと、交差点CR-Rで接近する。
そのため、ここでは、
図14や
図15で示した例のように、車両座標系を用いた粒子法によって、移動体C-Rdと移動体C-Rcが衝突しないように制御する。
【0110】
図17は、既存手法の1つである「高精度地図・ウェイポイント」の概要を示すイメージ図である。
具体的には、
図17は、所定の高精度地図に埋め込まれたウェイポイントによって、車両の経路選択や進路変更を制御する手法である「高精度地図・ウェイポイント」の概要を、異なる三つの視点から説明した図である。
【0111】
視点VP-1では、鉄道のレールのように、車両が走行する方向を示すウェイポイント、例えばウェイポイントWPaが、仮想空間で固定されている。
ここで、個々の車両は、ウェイポイントの列に沿うように誘導される。
また、夫々のウェイポイントは、位置、向き、目標速度の情報を保持する。
【0112】
視点VP-2では、隣合う二つの経路と、両者の間に生成され得る車線変更用経路が示されている。
経路Paは車両V-17が進行している経路であり、経路Pbは経路Paに隣接する経路である。ここで、経路Pa上には、所定の右折フラグが設定されることで、車線変更用経路Pcの起点となるウェイポイントWPbがある。なおここで、当該右折フラグは設定されておらず、車線変更用経路Pcはアクティブではない。
【0113】
視点VP-3では、前述の右折フラグが設定された場合を示す。経路Paを進行する車両V-17がウェイポイントWPbに差し掛かると、車線変更用経路Pcがアクティブになり、さらに経路Paに隣接する経路Pbが次の経路として設定される。
【0114】
ここで、ウェイポイントは、仮想空間に固定されているため、例えば、停止車両や駐車車両でウェイポイントが塞がれた場合、ウェイポイントによって誘導される他の車両の交通の流れが阻害されるという問題がある。
これに対し、粒子法と格子法を連成した群制御によれば、誘導される車両が、車線に囚われず、流水プールに人が浮き輪に乗って流れるように、停止車両や駐車車両を回避することで、車両の交通の流れが阻害されること防ぐことができる。
【0115】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものとみなす。
【0116】
また例えば、上述の実施形態では、仮想空間の流れ場の生成は格子法を用いて実行されるとしたが、特にこれに限定されない。即ち、仮想空間の流れ場の生成に用いる手法は、仮想空間の流れ場を、数値解析を用いて生成する手法であれば足る。
【0117】
また例えば、上述の実施形態では、移動体情報は、移動体2によって取得されるとして説明したが、特にこれに限定されない。即ち、移動体情報は、何らかの情報取得機器や情報取得手段によって取得されれば足る。
具体的には例えば、案内装置Gd等の外部の装置によって取得されてもよい。
【0118】
また例えば、上述の実施形態では、移動体情報は、移動体2によってサーバ1に送信されるとして説明したが、特にこれに限定されない。即ち、移動体情報は、何らかの送信機器や送信手段によってサーバ1に送信されれば足る。
具体的には例えば、案内装置Gd等の外部の装置によってサーバ1に送信されてもよい。
【0119】
また例えば、上述の実施形態では、実空間構成情報は、移動体2によって取得されるとして説明したが、特にこれに限定されない。即ち、実空間構成情報は、何らかの情報取得機器や情報取得手段によって取得されれば足る。
具体的には例えば、案内装置Gd等の外部の装置によって取得されてもよい。
【0120】
また例えば、上述の実施形態では、実空間構成情報は、移動体2によってサーバ1に送信されるとして説明したが、特にこれに限定されない。即ち、実空間構成情報は、何らかの送信機器や送信手段によってサーバ1に送信されれば足る。
具体的には例えば、案内装置Gd等の外部の装置によってサーバ1に送信されてもよい。
【0121】
また例えば、上述の実施形態では、粒子法に用いる物理モデルとして、バネモデルを例にとって説明したが、特にこれに限定されない。即ち、実施の目的に沿った、適当な物理モデルであれば足る。
具体的には例えば、所定の領域内の移動体を気体分子とみなし、移動体の密度から当該気体の圧力を求めるモデルを採用してもよい。また例えば、所定の領域内の移動体を固体分子とみなし、各移動体の所定の位置からのずれ(固体の歪みに相当する)に基づいて、当該固体の応力を求めるモデルを採用してもよい。
【0122】
また例えば、上述の実施形態では、移動体2として、車両や飛行体を例にとって説明したが、特にこれに限定されない。即ち、移動体2としての機能を持った移動体であれば足る。
具体的には例えば、船舶、潜水艦、宇宙船であってもよい。
【0123】
また例えば、上述の実施形態では、移動体2は、軌道変更手段を備えるとして説明したが、特にこれに限定されない。即ち、何らかの手段により移動体2の軌道の変更が可能であるならば、移動体2は軌道変更手段を備える必要はない。
具体的には例えば、小型の手術用ロボットである移動体2を、患者の体の外側から、磁場を発生する所定の装置を用いて操作してもよい。
【0124】
また例えば、実空間構成情報取得部111が取得する実空間構成情報の種類は、上述の実施形態の例に特に限定されない。即ち、実空間構成情報とは、仮想空間構成部112の仮想空間の構成や、流れ場算出部113の流れ場の生成に使用され得る情報であれば足る。
具体的には例えば、実空間構成情報は、周辺環境から移動体に作用し得る外力に関する情報である、海上での船舶の群制御における周辺の波浪の情報や、海中での潜水艦の群制御における周辺の海流の情報を含んでもよい。また例えば、実空間構成情報は、移動体の通行が危険な領域の情報、例えば宇宙空間での宇宙船の群制御における宇宙線のフラックスが大きな領域の情報を含んでもよい。
【0125】
また例えば、仮想空間構成部112の仮想空間の離散化で設定可能なパラメータの種類は、上述の実施形態の例に特に限定されない。即ち、仮想空間の離散化で設定されるパラメータは、仮想空間の離散化に使用され得るパラメータであれば足る。
具体的には例えば、ある一定の大きさの領域内での格子の密度の、より広い領域での分布をパラメータの一種類としてもよい。また例えば、格子の形状と大きさの相関をパラメータの一種類としてもよい。
【0126】
また例えば、流れ場算出部113の流れ場の生成において可変設定されるパラメータの種類は、上述の実施形態の例に特に限定されない。即ち、流れ場の生成において可変設定されるパラメータは、流れ場の生成に使用され得るパラメータであれば足る。
具体的には例えば、流れ場の生成において許容される最大の局所的な流速をパラメータの一種類としてもよい。また例えば、流れ場の生成において許容される最大の渦度をパラメータの一種類としてもよい。
【0127】
また例えば、移動体情報取得部121が取得する移動体情報の種類は、上述の実施形態の例に特に限定されない。即ち、物理量算出部122の計算に使用され得る情報や、軌道変化算出部123の計算に使用され得る情報や、軌道変更指示部124での軌道の変更の指示に使用され得る情報であれば足る。
具体的には例えば、移動体の重量、強度、燃料の残量や、移動体の材質の情報(例えば、透磁率、誘電率、放射線に対する遮蔽の度合い)の情報を含んでいてもよい。
【0128】
また例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、
図5の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。
即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理システムに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に
図5の例に限定されない。また、機能ブロックの存在場所も、
図5に特に限定されず、任意でよい。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0129】
また例えば、一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであっても良い。
また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他、スマートフォンやパーソナルコンピュータ、又は各種デバイス等であってもよい。
【0130】
また例えば、このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。
【0131】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
【0132】
以上まとめると、本発明が適用される情報処理装置は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される情報処理装置は、
所定の実空間の構成に関する情報を、実空間構成情報として取得する第1取得手段(例えば、
図5の実空間構成情報取得部111)と、
前記実空間構成情報に基づいて、前記所定の実空間の構成を、仮想空間として構成する構成手段(例えば、
図5の仮想空間構成部112)と、
前記仮想空間の各点の力のベクトルを算出する第1算出手段(例えば、
図5の流れ場算出部113)と、
を備えることができる。
本発明が適用される情報処理装置によれば、格子法によって仮想空間の流れ場を生成し、複数の移動体を当該流れ場に沿って誘導することが可能となる。
即ち、特定のエリアにおける移動体の集団を、粒子法による協調を保ちながら集団として誘導することができる。
【0133】
また、本発明が適用される情報処理装置は、
前記実空間における複数の移動体の夫々の状態を示す情報を、移動体情報として取得する第2取得手段(例えば、
図5の移動体情報取得部121)と、
前記移動体情報に基づいて、前記仮想空間における前記複数の移動体の夫々に関する物理量を算出する第2算出手段(例えば、
図5の物理量算出部122)と、
前記力のベクトルと、前記移動体情報及び前記物理量とのうち少なくとも一方に基づいて、前記仮想空間における前記複数の移動体の軌道変化を算出する第3算出手段(例えば、
図5の軌道変化算出部123)と、
前記軌道変化に基づいて、前記実空間における前記複数の移動体の夫々に対する軌道の変更を指示する指示手段(例えば、
図5の軌道変更指示部124)と、
をさらに備えることができる。
本発明が適用される情報処理装置によれば、粒子法と格子法を連成した群制御によって、複数の移動体を制御することが可能となる。
即ち、粒子法によって集団としてのまとまりを保ち、移動体同士の衝突や、移動体の群からの離脱を回避しつつ、さらに格子法によって群を集団として誘導することができる。
【符号の説明】
【0134】
1・・・サーバ、2・・・移動体、11・・・CPU、101・・・格子法制御部、102・・・粒子法制御部、111・・・空間構成情報取得部、112・・・仮想空間構成部、113・・・流れ場算出部、114・・・受付部、111・・・移動体情報取得部、112・・・物理量算出部、113・・・軌道変化算出部、114・・・軌道変更指示部