(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】画像検査用移動具及び移動方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
G01N21/84 C
(21)【出願番号】P 2020025101
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】595139646
【氏名又は名称】東京技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】横山 和久
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-168852(JP,U)
【文献】国際公開第2019/130777(WO,A1)
【文献】特開2001-050901(JP,A)
【文献】特開2012-007895(JP,A)
【文献】特開2007-246214(JP,A)
【文献】特開2007-285844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下から透過光を照射し、ねじやカラー等の転がり易い棒状のワークの輪郭を撮像して検査する画像検査装置に備えられ、連続供給されるワークを検査位置に移動する画像検査用移動具であって、
ガラスやプラスチック等の透明な材質で上面が平らな円盤にて構成された移動盤と、該移動盤の円周に沿った上面で検査位置を通過する位置に設けられた回転溝と、を備え、
回転溝はアール溝状を成し、底部の中央に停止凹部が形成され、
回転する回転溝内に供給された棒状のワークが停止凹部上で直列状に並んで静止するように構成したことを特徴とする画像検査用移動具。
【請求項2】
請求項1に記載の画像検査用移動具でワークを検査位置に移動する移動方法において、
供給された棒状のワークを、回転する回転溝内の停止凹部上で直列状に並べて静止させ、
静止したワークを検査位置に移動することを特徴とする画像検査用移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじやナットなどの転がり易い製品を画像処理で検査するのに好適な画像検査用移動具及び移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当発明者は、先に特許文献1に記載のねじ類の検査方法を発明している。この検査は、2本のワイヤーから成る移動具にねじやナット等の検査対象品(以下、ワークと称する)の軸部を挟み、移動する間に撮像したワークの画像から検査する方法である。特に、ワーク全体の画像を画像処理して検査画面上に表示し、この画像と予め設定登録された製品データとに基づいてワークの良否を判定するので、短時間での検査が可能になり、大量のワークを高速で処理することが可能になっている。
【0003】
一方、移動具にワイヤー等を使用せず、ワークを把持しない状態で移動する粒状物品位判別装置が特許文献2に記載されている。この特許文献2には、移動手段にガラス状円盤を使用した構成が記載されている。すなわち、回転する円盤の一方側に粒状物を供給し、円盤の回転により粒状物を他方側の撮影ポイントに移動し、この撮影ポイントで粒状物を判別する構成である。
【0004】
また、この特許文献2には、アクリル樹脂で形成したスライド板を使用する移動手段も記載されている。このスライド板には、粒状物が単層状態で複数列に並ぶ溝部を予め複数列設けてある。そして、このスライド板を一方向にスライド移動することで溝に並べた粒状物を撮影ポイントまで運び、測定後、スライド板を反対方向にスライド移動して粒状物を溝から排出する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6360782号公報
【文献】特開2001-33391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のねじ類の検査方法によると、2本のワイヤーにワークを挟んで移動することで大量のワークを高速で処理することが可能になっている。ところが、ワークの形状は2本のワイヤーで移動可能な形状に限られる不都合があった。
【0007】
また、特許文献2におけるガラス状円盤を使用する移動手段では、平板な円盤上に粒状物を供給して円盤を回転させるものであるから、米粒などの食品等を移動するのに適しているとしても、ねじやナットなどの転がり易いワークを移動することは困難になる。すなわち、回転する円盤上にねじなどのワークを供給すると、供給されたワークが停止するのに時間がかかり、撮影ポイントでもワークの位置が定まらなくなる虞がある。しかも、転がりやすいワークでは、円盤が回転している間、転がり続ける可能性もある。
【0008】
一方、特許文献2におけるスライド板を使用する移動手段によると、スライド板を一方から他方に往復移動させる機構が必要になるので、装置の構成が複雑になる不都合がある。しかも、スライド板のスライド移動に伴って溝内の粒状物を排出する構成なので、移動物は米粒等のように軽量なものは溝から排出できるとしても、ねじやナットのような比較的重いワークでは、溝から簡単に排出することは困難である。
【0009】
このように、従来の画像検査には、ワークの種類に応じて移動手段が選択されているが、ねじやナットなどの転がり易いワークを画像検査する際に、ワークの形状に左右されずに転がりを抑止できる移動手段が望まれている。
【0010】
そこで本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、ワークの転がりを抑制しながら移動することで、画像処理による検査時間を早めると共に、検査精度を高めることが可能な画像検査用移動具及び移動方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、下から透過光を照射し、ねじやカラー等の転がり易い棒状のワークWの輪郭を撮像して検査する画像検査装置に備えられ、連続供給されるワークWを検査位置に移動する画像検査用移動具であって、ガラスやプラスチック等の透明な材質で上面が平らな円盤にて構成された移動盤11と、該移動盤11の円周に沿った上面で検査位置を通過する位置に設けられた回転溝12と、を備え、
回転溝12はアール溝状を成し、底部の中央に停止凹部12Aが形成され、回転する回転溝12内に供給された棒状のワークWが停止凹部12A上で直列状に並んで静止するように構成したことにある。
【0014】
第2の手段は、請求項1に記載の画像検査用移動具でワークWを検査位置に移動する移動方法において、供給された棒状のワークWを、回転する回転溝12内の停止凹部12A上で直列状に並べて静止させ、静止したワークWを検査位置に移動する移動方法にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載のごとく、回転溝12はアール溝状を成し、底部の中央に停止凹部12Aが形成され、回転する回転溝12内に供給された棒状のワークWが停止凹部12A上で直列状に並んで静止するように構成したことにより、画像検査用の移動具として、ねじやカラー等の転がり易い棒状を成すワークWの転がりを止めながら移動することができる。この結果、画像処理による検査時間を早めることが可能になる。しかも、極めてシンプルな構成で安価な提供ができるものである。
【0017】
また、前記回転溝12はアール溝状を成し、底部の中央に停止凹部12Aを形成し、前記回転溝12内に供給された棒状のワークWが該停止凹部12A上で直列状に並ぶように構成することで、検査するワークWが、ねじなどの棒状を成した転がり易い形状であっても、回転する回転溝12内の停止凹部12Aに自然に集まって直列状に並んで静止するようになる。したがって、ねじやカラーなどのワークWの転がりを短時間で停止させることができ、画像処理による検査精度を高めることが可能になる。
【0018】
請求項2のような移動方法によると、供給された棒状のワークWを、回転する回転溝12内の停止凹部12A上で直列状に並べて静止させ、静止したワークWを検査位置に移動するので、供給されたワークWの静止から撮影までの時間を短縮すると共に、画像処理による検査精度を高めることができるものである。
【0019】
このように本発明によると、供給されたワークWの停止から撮影までの時間を短縮すると共に、画像処理による検査精度を高め、しかも、極めてシンプルな構成で安価な提供ができるなどといった本発明独自の効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明で使用する検査装置の一実施例を示す斜視図である。
【
図2】本発明で使用する検査装置の一実施例を示す正面図である。
【
図3】本発明の移動盤の一実施例を示す平面図である。
【
図4】本発明の移動盤の一実施例を示す側面図である。
【
図5】本発明の
回転溝の一実施例を示す側断面図である。
【
図6】本発明の
回転溝にワークを供給する状態を示す要部斜視図である。
【
図7】(イ)
は本発明の回転溝の一実施例を示し、(ロ)、(ハ)は参考例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の移動具10は、画像処理手段50やパーツフィーダー60を備えた画像検査装置に備えられるもので、ワークWを画像検査するために、供給されたワークWを停止させて撮像位置まで移動するものである(
図1参照)。
【0022】
すなわち、移動具10は、
移動盤11と回転溝12とで構成する(
図3参照)。
移動盤11は、上面が平らな円盤状の部材であり、回転溝12は、この移動盤11の上面に円周に沿って形成された平面が円形の帯状を成した凹部状の部位である(
図4参照)。
【0023】
図示の回転溝12は、M2~M4の長さ6~20mm程度の小ねじ等(ナット、ワッシャー、カラー等を含む)を供給する回転溝12の例を示している(
図5参照)。すなわち、直径300 mmの外周に沿って、幅12mm、深さ0.5mmの円弧状の回転溝12を形成している。この回転溝12の深さや幅は、図示例に限定されるものではない。回転溝12のサイズは、移動するワークWのサイズと相対的な関係を有しており、ワークWが大きくなるほど、回転溝12の深さや幅も大きくなる。
【0024】
そして、移動盤11の
回転溝12上に順次供給されたワークWを回転する回転溝12内で
静止させると共に、
静止したワークWを検査位置に移動し、画像検査装置で検査するものである(
図6参照)。したがって、移動具10の
回転溝12は、常に検査位置を通過する位置に設置されるものである。
【0025】
また、回転溝12の断面形状は適宜変更することが可能である(
図7参照)。同図の(イ)は、断面形状をなだらかな湾曲面を有する形状に形成した
回転溝12である。また、
(ロ)、(ハ)は参考例である。また、
回転溝12の表面処理として、梨地処理や溝部磨き処理などの選択が可能であり、ワークWの形状や材質により選択する。
【0026】
また、この回転溝12の底部に停止凹部12Aを形成することで、ねじやカラー等の棒状のワークWを直列状に並べることが可能になる。すなわち、停止凹部12Aは、回転溝12の横幅中央側に、横幅端部側より低く形成した部位である(
図7(ロ)参照)。したがって、この停止凹部12Aは、
図5に示す円弧状の底部中央も停止凹部12Aの作用を有しワークWを整列させることができる。
【0027】
画像検査装置の基本構成は、この移動具10の他に、撮像視野域20、照明装置30、上部カメラ40、画像処理手段50、パーツフィーダー60を備えている(
図2参照)。そして、パーツフィーダー60から移動具10の上に載置したワークWを撮像視野域20まで移動して、画像処理手段50で検査する装置である(
図6参照)。
【0028】
図示の
移動盤11は、ガラスやプラスチック等の透明な材質を使用し、
回転溝12に載置したワークWの下から投光するように構成している。すなわち、撮像視野域20において、
移動盤11の下から照明装置30で透過光を照射し、
回転溝12上のワークWの輪郭を投影し、このワークWの輪郭を上からカメラ40で撮像する(
図6参照)。そして、ワークWの画像を画像処理手段50で処理してワークWを検査する構成である(
図2参照)。
【0029】
照明装置30は、撮像視野域20において、パーツフィーダー60の下方に配置されるLEDライトである(
図6参照)。また、カメラ40は、撮像視野域20で、パーツフィーダー60上のワークWを撮像するCCDカメラである。
【0031】
画像処理手段50は、撮像視野域20で撮像したワークWの輪郭画像を処理して表示する検査画面51を備えている(
図1参照)。更に、この検査画面51に表示された画像と、予め画像処理手段50に設定登録されたワークWの輪郭データとに基づいてワークWの形状を検査する。
【0032】
検査後のワークWは、分別手段70にて良品と不良品とに選別する(
図1参照)。図示の分別手段70は、回転溝12の内側からワークW側面に圧縮空気を吹き付けて回転溝12内からワークWを取り出すものである。
【0033】
すなわち、ワークWの良品は、良品分別機71のノズルで回転溝12内から噴き出して良品受け箱72に収納し、不良品は不良品分別機73のノズルで噴き出して不良品受け箱74に収納する。尤も、この分別手段70においても任意の分別手段を選択できるも。例えば、分別手段を自動化せず、手作業で分別するように構成することも可能である。
【0034】
尚、本発明の構成は図示例に限定されるものではなく、移動具10の移動盤11や回転溝12の形状、構造、材質等の設計変更は任意に行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
W ワーク
10 移動具
11 移動盤
12 回転溝
12A 停止凹部
20 撮像視野域
30 照明装置
40 カメラ
50 画像処理手段
51 検査画面
60 パーツフィーダー
70 分別手段
71 良品分別機
72 良品受け箱
73 不良品分別機
74 不良品受け箱