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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】全館空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/044 20060101AFI20230113BHJP
   F24F 1/0047 20190101ALI20230113BHJP
   F24F 1/0038 20190101ALI20230113BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20230113BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20230113BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20230113BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20230113BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20230113BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
F24F3/044
F24F1/0047
F24F1/0038 441
F24F13/02 C
F24F7/08 Z
F24F7/08 101Z
F24F7/10 101Z
F24F7/10 Z
F24F7/06 Z
F24F5/00 K
E04B1/76 200A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020082067
(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公開番号】P2021177104
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2021-06-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展覧会名:TBSハウジング 開催日:2019年12月15日~
(73)【特許権者】
【識別番号】520158609
【氏名又は名称】株式会社グットハウス
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】小池 広晃
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-044435(JP,A)
【文献】特開平11-108394(JP,A)
【文献】特開2016-033448(JP,A)
【文献】特開2012-021730(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01923643(EP,A2)
【文献】特開平09-041506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/044
F24F 1/0047
F24F 1/0038
F24F 13/02
F24F 7/08
F24F 7/10
F24F 7/06
F24F 5/00
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内部に配設される複数の空調機と、
前記建物の内部に配設され、前記建物の外部から取り込んだ外気と前記建物の内部の内気とを熱交換させた後、前記外気を前記空調機に供給すると共に、前記内気を前記建物の外部へと排出する熱交換機と、
前記建物の床下空間内に一方の開口部を有し、前記建物の小屋裏空間に他方の開口部を有し、前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させるダクトと、
前記ダクトの中間部に配設され、前記床下空間の前記内気を前記小屋裏空間へと送風し、あるいは前記小屋裏空間の前記内気を前記床下空間へと送風する正逆転ファンと、を備え、
前記建物には、複数の居室及び複数の非居室が配置され、
少なくとも1つの前記非居室の天井には、前記小屋裏空間の前記内気が流通する第1の空気流通部と、前記熱交換機の排気口と、が形成され、
少なくとも1つの前記居室の床には、前記床下空間の前記内気が流通する第2の空気流通部が形成されることを特徴とする全館空調システム。
【請求項2】
前記建物は2階建であり、
前記小屋裏空間に配設された前記空調機は、少なくとも前記建物の2階の前記居室または前記非居室に配設された給気口を介して空調風を供給し、
前記建物の天井裏空間に配設された前記空調機は、少なくとも前記建物の1階の前記居室または前記非居室に配設された給気口を介して空調風を供給することを特徴とする請求項1に記載の全館空調システム。
【請求項3】
前記建物の2階の前記居室には、前記第1の空気流通部が形成されないことを特徴とする請求項2に記載の全館空調システム。
【請求項4】
前記空調機の暖房運転時には、前記正逆転ファンは、前記ダクトを介して前記小屋裏空間の前記内気を前記床下空間へと送風することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の全館空調システム。
【請求項5】
前記空調機の冷房運転時及び送風運転時には、前記正逆転ファンは、前記ダクトを介して前記床下空間の前記内気を前記小屋裏空間へと送風することを特徴とする請求項4に記載の全館空調システム。
【請求項6】
前記空調機の停止時には、前記正逆転ファンは、前記床下空間の前記内気を前記小屋裏空間へと送風し、
前記熱交換機により取り込んだ前記外気は、前記空調機を介して前記建物の内部に送風されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の全館空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下空間及び小屋裏空間を有する建物の全館空調システムに関し、特に、床下空間と小屋裏空間との内気を適宜相互に流入させ空調機の空調効率を向上させると共に、床下空間の嫌な臭いが建物内に充満することを防止する全館空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建築物の冷暖房装置100(以下、「冷暖房装置100」と呼ぶ。)として、図6に示す構造が知られている。図6は、従来の冷暖房装置100の冷房時の状態を説明する概略図である。
【0003】
図6に示す如く、冷暖房装置100では、住宅101の外壁パネル102の室内側に面する部分であり、床下103及び小屋裏104に入る箇所にそれぞれ通風孔105,106が配設される。そして、床下103には、通風孔105と連通する様にファン107及びダクト108が配設される。つまり、冷暖房装置100では、床下103と小屋裏104とは、外壁パネル102内の空間を介して連通する。
【0004】
この構造により、冷暖房装置100では、夏場には矢印109にて示すように、ファン107を稼働させることで、床下103の冷気が外壁パネル102内を介して小屋裏104へと送風される。そして、小屋裏104では、日射による屋根110からの熱気を上記冷気により屋外へと追い出すことができると共に、小屋裏104の温度を低下させることで、住宅101全体の冷房効率が向上される。
【0005】
一方、冷暖房装置100では、冬場には、ファン107を逆駆動させることで、小屋裏104の暖気を床下103に充満させ、床暖房の効果を得ると共に、床下103の湿気を一掃することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公昭55-29374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、冷暖房装置100では、ファン107の駆動方向を、適宜、正転、逆転させることで、床下103の空気と小屋裏104の空気とを外壁パネル102内を介して相互に流入させることができる。
【0008】
上述したように、冷暖房装置100では、夏場には、小屋裏104の温度を低下させるために、ファン107にて床下103の冷気を小屋裏104へと送風するが、床下103の冷気量にも限界があり、連続稼働することで、屋外の空気を床下103と吸い込むため、次第に、小屋裏104空間の温度が、屋外の温度と同等に近づいてしまうという課題がある。
【0009】
また、冷暖房装置100では、特に、夏場には、床下103の湿気等による嫌な臭いの空気が、小屋裏104へと送風されると共に、その嫌な臭いの空気が、天井の隙間等を介して小屋裏104から居室111へと流入する場合もある。この場合には、上記嫌な臭いが居室111内に充満することで、住人に不快感を与えるという課題がある。同様に、冬場においても、床下103の湿気が一掃されるまでは、上記嫌な臭いの空気が、床の隙間等から床下103から居室111へと流入する場合もあり、住人に不快感を与えるという課題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、床下空間と小屋裏空間との内気を適宜相互に流入させ空調機の空調効率を向上させると共に、床下空間の嫌な臭いが建物内に充満することを防止する全館空調システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の全館空調システムは、建物の内部に配設される複数の空調機と、前記建物の内部に配設され、前記建物の外部から取り込んだ外気と前記建物の内部の内気とを熱交換させた後、前記外気を前記空調機に供給すると共に、前記内気を前記建物の外部へと排出する熱交換機と、前記建物の床下空間内に一方の開口部を有し、前記建物の小屋裏空間に他方の開口部を有し、前記床下空間と前記小屋裏空間とを連通させるダクトと、前記ダクトの中間部に配設され、前記床下空間の前記内気を前記小屋裏空間へと送風し、あるいは前記小屋裏空間の前記内気を前記床下空間へと送風する正逆転ファンと、を備え、前記建物には、複数の居室及び複数の非居室が配置され、少なくとも1つの前記非居室の天井には、前記小屋裏空間の前記内気が流通する第1の空気流通部と、前記熱交換機の排気口と、が形成され、少なくとも1つの前記居室の床には、前記床下空間の前記内気が流通する第2の空気流通部が形成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の全館空調システムでは、前記建物は2階建であり、前記小屋裏空間に配設された前記空調機は、少なくとも前記建物の2階の前記居室または前記非居室に配設された給気口を介して空調風を供給し、前記建物の天井裏空間に配設された前記空調機は、少なくとも前記建物の1階の前記居室または前記非居室に配設された給気口を介して空調風を供給することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の全館空調システムでは、前記建物の2階の前記居室には、前記第1の空気流通部が形成されないことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の全館空調システムでは、前記空調機の暖房運転時には、前記正逆転ファンは、前記ダクトを介して前記小屋裏空間の前記内気を前記床下空間へと送風することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の全館空調システムでは、前記空調機の冷房運転時及び送風運転時には、前記正逆転ファンは、前記ダクトを介して前記床下空間の前記内気を前記小屋裏空間へと送風することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の全館空調システムでは、前記空調機の停止時には、前記正逆転ファンは、前記床下空間の前記内気を前記小屋裏空間へと送風し、前記熱交換機により取り込んだ前記外気は、前記空調機を介して前記建物の内部に送風されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の全館空調システムは、床下空間と小屋裏空間とを連通させるダクトと、ダクトを介して床下空間の内気を小屋裏空間へと送風し、あるいは小屋裏空間の内気を床下空間へと送風する正逆転ファンと、が備えられた天地対流システムを有する。そして、天地対流システムでは、空調機からの空調風を含む内気が、第1及び第2の空気流通部を介して建物内を循環する。この空調システムにより、夏季や冬季においても、床下空間の内気や小屋裏空間の内気を適温に維持することができ、空調機の空調効率を向上させると共に、住人の快適性を向上させることができる。また、小屋裏空間から非居室へと流れ出す内気の一部が、直ぐに熱交換機にて排出されることで、床下空間の嫌な臭いの内気が、居室内に流れ込み難くなり、住人への不快感が防止される。
【0018】
また、本発明の全館空調システムでは、空調機が配設される小屋裏空間の内気を適温に維持すると共に、内気の流れを作り、内気の篭りを防止することで、小屋裏空間の空調機の空調効率が向上し、全館空調システムでありながら、1階や2階の居室毎にそれぞれ住人の所望の空調温度にて対応することができる。
【0019】
また、本発明の全館空調システムでは、2階の居室には、第1の空気流通部が配設されないことで、他の居室の会話や音楽等が聞こえ難くなり、居室毎に静音性を保ち易くなり、住人の快適性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の全館空調システムでは、冬季等の空調機の暖房運転時には、天地対流システムにて小屋裏空間の内気を床下空間へと送風することで、小屋裏空間の温度が上昇し過ぎることが防止される。この空調システムにより、小屋裏空間の空調機が適正に稼働し、2階の居室を住人の所望の温度に保つことが出来る。また、床下空間では、床暖房効果や第2の空気流通部を介して温かい内気が1階の居室や非居室へと供給され、ヒートショックの防止効果も得られる。
【0021】
また、本発明の全館空調システムでは、空調機の冷房運転時や送風運転時には、天地対流システムにて床下空間の内気を小屋裏空間へと送風する。この空調システムにより、夏季等の冷房運転時には、空調機からの冷気も含めて小屋裏空間へと送風することで、小屋裏空間の内気を冷却し、空調機の空調効率を向上させることができる。また、送風運転時にも、天地対流システムを稼働させることで、建物内の内気が循環し、床下空間の湿度調整も行われ、床下空間の内気が湿気等により嫌な臭いになり難くなる。
【0022】
また、本発明の全館空調システムでは、空調機の停止時においても天地対流システムを稼働させると共に、熱交換機により外気を建物内へと取り込み、また、建物内の内気を外部へと排気する。この空調システムにより、床下空間の内気が湿気等により嫌な臭いになり難くなると共に、小屋裏空間からの内気の一部を常時排気することで、建物内の内気を常時入れ替えることで、住人の快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態の全館空調システム及び全館空調システムが配設される建物の概略を説明する立面図である。
図2】本発明の一実施形態の全館空調システムの概略を説明する平面図である。
図3】本発明の一実施形態の全館空調システムの概略を説明する平面図である。
図4】本発明の一実施形態の全館空調システムの概略を説明する平面図である。
図5】本発明の他の実施形態の全館空調システム及び全館空調システムが配設される建物の概略を説明する立面図である。
図6】従来の冷暖房装置の冷房時の状態を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る全館空調システム10を図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0025】
また、以下の説明では、上下方向は全館空調システム10が配設される建物11の高さ方向を示し、左右方向は建物11を前方から見た場合の横幅方向を示し、前後方向は上記建物11の奥行方向を示す。また、建物11の外部の空気や建物11の外部から内部へと取り込む空気を外気と呼び、建物11の内部にて循環する空気や建物11の内部から外部へと排出する空気を内気と呼ぶ。
【0026】
図1は、本実施形態の全館空調システム10及び全館空調システム10が配設される建物11の概略を説明する立面図である。図2は、本実施形態の建物11の床下空間12における全館空調システム10の概略を説明する平面図である。図3は、本実施形態の建物11の小屋裏空間13における全館空調システム10の概略を説明する平面図である。図4は、本実施形態の建物11の1Fの天井裏空間61における全館空調システム10の概略を説明する平面図である。
【0027】
図1では、全館空調システム10が、建物11に配設された状態を示し、建物11は、例えば、2階建ての住宅である。そして、全館空調システム10は、主に、床下空間12の内気と小屋裏空間13の内気とを相互に強制的に送り込む天地対流システム14と、第一種換気設備である熱交換機15と、建物11の内部に配設される2台の空調機16,17と、建物11の1Fの床26に配設される床下ガラリ20と、建物11の2Fの天井27に配設させる天井ガラリ21と、を備える。尚、熱交換機15や空調機16,17には、外気、内気や空調風が流れる複数のダクトが接続され、全館空調システム10が構成される。
【0028】
ここで、本実施形態の居室18とは、建物11の住人や入居者等が継続して居住する空間であり、建物11が住宅の場合には、例えば、リビングL、ダイニングD、リビングダイニングキッチンLDK、寝室R、書斎Rや子供部屋R等が居室18に該当する。また、建物11が事務所の場合には、例えば、執務室、事務室や会議室等が居室18に該当する。また、建物11が病院の場合には、例えば、待合室、処置室や診察室が居室18に該当する。また、建物11が飲食店の場合には、例えば、客室や厨房が居室18に該当する。
【0029】
一方、本実施形態の非居室19とは、建物11の上記居室18に該当しない空間であり、建物11が住宅の場合には、例えば、トイレWC、脱衣所M、浴室B、廊下H、階段S、玄関ホールE、キッチンK(ダイニングキッチンは除く)、ウォークインクローゼットWICや納戸STR等が非居室19に該当する。また、建物11が事務所の場合、病院の場合や飲食店の場合には、例えば、トイレ、廊下、倉庫や更衣室等が非居室19に該当する。
【0030】
図示したように、砂状のハッチング22にて示すように、建物11の外壁等、外気と接する建物11の部材が、断熱性部材から構成されることで、建物11全体が、外気等から断熱された断熱構造体として形成される。この構造により、床下空間12、小屋裏空間13、居室18や非居室19等の建物11の内部空間は、断熱空間として形成される。尚、建物11の床下空間12の基礎コンクリートも断熱材と組み合わせて形成されることで、床下空間12の断熱効率が更に向上する。
【0031】
天地対流システム14は、主に、床下空間12と小屋裏空間13とを連通させるダクト23と、ダクト23の中間部に配設され、床下空間12の内気を小屋裏空間13へと送風し、あるいは、小屋裏空間13の内気を床下空間12へと送風する正逆転ファン24と、を有する。そして、床下空間12や小屋裏空間13に配設されるダクト23は、それらの空間内にて分岐して複数の開口部を有することで、それらの空間内に出来る限り均一に内気を供給し、あるいは、それらの空間内から出来る限り均一に内気を吸い込むことができる。
【0032】
複数の両方向の矢印25にて示すように、天地対流システム14では、正逆転ファン24が正転方向に駆動することで、床下空間12の内気がダクト23に吸い込まれ、強制的に小屋裏空間13へと送風される。そして、小屋裏空間13には、ダクト23から送風された床下空間12の内気が充満すると共に、元から小屋裏空間13に存在した内気は、天井ガラリ21を介して建物11の非居室19や居室18へと流れ出す。
【0033】
一方、正逆転ファン24が逆転方向に駆動することで、小屋裏空間13の内気がダクト23に吸い込まれ、強制的に床下空間12へと送風される。そして、床下空間12には、ダクト23から送風された小屋裏空間13の内気が充満すると共に、元から床下空間12に存在した内気は、床下ガラリ20を介して建物11の居室18や非居室19へと流れ出す。
【0034】
本実施形態では、夏季等、外気が内気よりも高温状態にある場合には、小屋裏空間13の内気は、日射による屋根29からの熱により温められ、床下空間12の内気よりも高温状態となる。この場合には、通常、建物11の住人は、空調機16,17を冷房運転にて稼働させ、全館空調にて建物11内を冷却する。このとき、空調機16,17からの冷気は、居室18や非居室19の下方へと流れるため、小屋裏空間13の内気は、空調機16,17の稼働では冷却され難くなる。一方、床下空間12には、上記冷気の一部が床下ガラリ20を介して流れ込むことで、また、床下空間12の内気が建物11の床26や基礎コンクリートを介して冷却されることで、床下空間12の内気は、小屋裏空間13の内気よりも低温状態となる。
【0035】
そこで、上述したように、天地対流システム14の正逆転ファン24を正転方向に駆動させ、床下空間12の低温状態の内気を小屋裏空間13へと送風することで、小屋裏空間13を低温状態の内気にて充満させることができる。その結果、建物11の居室18や非居室19が、上記小屋裏空間13の低温状態の内気により、高温状態の建物11の屋根29等から遮られると共に、建物11の天井27が、上記低温状態の内気により冷却されることで、建物11全体が冷却され、空調機16,17の冷房効率が大幅に向上される。更には、小屋裏空間13の低温状態の内気が篭ることなく適度に流れることで、小屋裏空間13に配設される空調機16の結露の発生が防止され、その製品寿命も長くなる。
【0036】
一方、冬季や春秋季の夜間や早朝等、外気が内気よりも低温状態にある場合には、通常、建物11の住人は、空調機16,17を暖房運転にて稼働させ、全館空調にて建物11内を暖房する。このとき、空調機16,17からの暖気は、居室18や非居室19の上方へと流れ、その一部は天井ガラリ21を介して小屋裏空間13へと流れ込むことで、小屋裏空間13の内気は、空調機16,17の稼働により温められた状態となる。また、小屋裏空間13の内気は、上記暖気により温められた天井27を介しても温められる。
【0037】
このとき、特に、小屋裏空間13に配設された空調機16では、小屋裏空間13の温かい内気をセンシングし、2階の居室18や非居室19内が設定温度または設定温度付近まで温められていると誤認識することで、空調機16からの空調風が微風となり、あるいは停止する。その結果、主に、2階の居室18や非居室19は、空調機16により暖房され難く、寒い状態は改善されないため、住人の快適性が損なわれる。
【0038】
そこで、上述したように、天地対流システム14の正逆転ファン24を逆転方向に駆動させ、小屋裏空間13の温かい内気を床下空間12へと送風することで、小屋裏空間13では、空調機16,17により温められた内気が篭ることがなく、小屋裏空間13の内気は外気や屋根29によりある程度の低温状態となる。その結果、空調機16では上記誤認識が発生しなくなり、空調機16から適正な風量の暖気が、2階の居室18や非居室19へ供給され、2階の居室18や非居室19内は所望の温度まで温められ、住人の快適性が向上される。
【0039】
また、床下空間12では、小屋裏空間13から温かい内気が送風されることで、床下空間12が温かい内気にて充満される。その結果、建物11の1階の床26や床下空間12の基礎コンクリートが温められ、1階の居室18や非居室19では、床暖房の効果が得られる。
【0040】
尚、天地対流システム14では、空調機16,17の送風運転時及び空調機16,17の停止時には、正逆転ファン24は正転方向に駆動し、床下空間12の内気を小屋裏空間13へと送風する。このシステムにより、ダクト23内には、常時、室温に近い床下空間12の内気または小屋裏空間13の内気が流れることで、ダクト23に結露が発生し難くなり、ダクト23のカビ防止効果が得られる。また、床下空間12の内気が篭り難くなると共に、床下空間12内の湿度調整が行われ、床下空間12の内気が、湿気等により嫌な臭いとなり難くなる効果が得られる。
【0041】
図2では、床下空間12におけるダクト23等の配管状況及び建物11の床26への床下ガラリ20の配置状況を示す。尚、図2では、説明の都合上、床下空間12及びその上部に位置する建物11の1階の構造に関して共に実線にて示す。
【0042】
図2に示す如く、天地対流システム14の正逆転ファン24は、床下空間12に配管されるダクト23の中間に配設される。また、床下空間12には、その略中心部に分岐器31が配設され、ダクト23は、分岐器31の1つの接続口へと接続する。図示したように、分岐器31には、例えば、4本のダクト32,33,34,35が接続すると共に、分岐器31の2つの接続口36,37には、ダクトが接続されない。
【0043】
また、ダクト32,33は、非居室19である廊下Hに沿って、紙面左側の居室18であるリビングダイニングキッチンLDK側へと延在する。分岐器31の接続口36,37は、紙面前後方向に向けて配置される。そして、ダクト34,35は、非居室19である廊下Hに沿って、紙面右側の非居室19である玄関ホールEや階段S側へと延在する。
【0044】
上記配管構造により、床下空間12では、ダクトの非接続状態の分岐器31の接続口36,37やダクト32~35の先端開口部が、床下空間12の略全方向に向けて配置される。床下空間12は、建物11の基礎コンクリートにより細かく区画されるが、天地対流システム14では、出来る限り均一に床下空間12の内気を吸い込み、あるいは、小屋裏空間13の内気を床下空間12に充満させることができる。その結果、冬季には、基礎コンクリートを含め、床下空間12の略全体を温めることができ、建物11の床26の略全体に渡り、床暖房効果が得られる。
【0045】
また、建物11の1階の居室18や非居室19の床26には、複数の床下ガラリ20が配設される。図示したように、床下ガラリ20は、主に、上記分岐器31やダクト32~35の先端開口部の先に配置される。この構造により、天地対流システム14では、冬季には、床下空間12の温かい内気が、床下ガラリ20を介して建物11の1階の居室18や非居室19に送風される。例えば、非居室19のトイレWC、脱衣所Mや浴室Bでは、上記床暖房効果と併せて、床下空間12からの温かい内気が送風されることで、ヒートショックを防止する効果も得られる。
【0046】
一方、天地対流システム14では、夏季には、1階の居室18や非居室19の床26近傍に溜まる冷気を床下ガラリ20を介して床下空間12へと吸い込むと共に、上記冷気を小屋裏空間13へと送風し、空調機16,17からの冷気を建物11内にて循環させることができる。その結果、1階の居室18の住人の足元が冷え過ぎることが防止され、住人の快適性が向上される。尚、床下ガラリ20としては、例えば、PP(PolyproPylene)等の樹脂製の床用換気材が用いられ、本願発明の第2の空気流通部に対応する。
【0047】
図3では、小屋裏空間13におけるダクト23等の配管状況及び建物11の天井27への天井ガラリ21の配置状況を示す。尚、図3では、説明の都合上、小屋裏空間13及びその下部に位置する建物11の2階の構造に関して共に実線にて示す。
【0048】
図3に示す如く、小屋裏空間13には、主に、ダクト方式の熱交換機15、空調機16及び天地対流システム14のダクト23等が配設される。熱交換機15は、建物11の外部の外気を吸い込み、空調機16,17に供給する給気ダクト41と、建物11の内部の内気を吸い込み、建物11の外部へと排出する排気ダクト42と、を有する。尚、熱交換機15としては、例えば、三菱電機株式会社製の製品番号V-150CRL-Dを採用することができる。尚、空調機16は、主に、建物11の2階の居室18や非居室19を冷暖房するために用いられる。
【0049】
熱交換機15では、その装置内にて、給気ダクト41内の外気と排気ダクト42内の内気との間にて熱交換を行う。そして、熱交換機15は、夏季等、外気が内気より高温の場合には、外気をある程度冷却し、室温に近い状態にて空調機16,17へと供給すると共に、冬季等、外気が内気より低温の場合には、外気をある程度温め、室温に近い状態にて空調機16,17へと供給することで、空調機16,17の空調効率が向上する。尚、本実施形態の全館空調システム10では、熱交換機15が、空調機16,17の稼働状態に関わらず、常時、稼働することで、建築基準法の換気要件を満たす。
【0050】
図示したように、小屋裏空間13には、空調機16の空調風送りダクト43,44と接続する分岐器45,46が配設される。分岐器45,46には、それぞれ複数の空調風送りダクト47,48が接続し、空調風送りダクト47,48は、建物11の天井27に配設される複数の給気口49,50にそれぞれ接続する。そして、空調機16から供給される空調風は、給気口49,50を介して建物11の居室18や非居室19へと送風される。また、少なくとも建物11の2階の各居室18の天井27には、それぞれ排気口51,52が配設され、排気口51,52と接続する空調風戻りダクト53は、空調機16と接続する。
【0051】
また、天地対流システム14のダクト23は、小屋裏空間13の紙面前後方向の略中央領域を非居室19である廊下Hに沿って紙面左右方向へ延在して配設される。そして、小屋裏空間13のダクト23では、二重丸印54にて示すように、3つの先端開口部から小屋裏空間13の内気を吸い込み、あるいは、床下空間12の内気を小屋裏空間13に充満させる。小屋裏空間13は、特にその空間を区画する壁等なく略一体の空間であり、先端開口部を上記3箇所に配置することで、夏季には小屋裏空間13の略全体を出来る限り均一に冷却すると共に、内気の篭る領域の発生を防止することができる。
【0052】
また、建物11の2階の非居室19である廊下Hの天井27には、天井ガラリ21が配設されると共に、天井ガラリ21の近くには排気口55が配設され、排気口55には、熱交換機15の排気ダクト42が接続される。そして、天地対流システム14を稼働させ、床下空間12から小屋裏空間13へと強制的に内気を送風することで、小屋裏空間13の内気の一部は、天井ガラリ21を介して非居室19である廊下Hへと流れ出す。
【0053】
このとき、天地対流システム14の稼働直後や梅雨時期等湿気の多い時期等では、床下空間12の内気が、カビ臭さ等の嫌な臭いとなり、その嫌な臭いの内気が、天井ガラリ21を介して非居室19である廊下Hへと流れ出してしまう場合もある。
【0054】
そこで、本実施形態では、天井ガラリ21は、建物11の2階の居室18ではなく非居室19に対して配設することで、居室18内の住人が、上記嫌な臭いにて不快感を受け難くなる。更には、小屋裏空間13から流れ出す内気が、非居室19である廊下Hにて直ぐに排気口55を介して熱交換機15の排気ダクト42内へと吸い込まれ、建物11の外部へと排出されることでも、居室18内の住人が、上記嫌な臭いにて不快感を受け難くなる。
【0055】
また、天井ガラリ21は、建物11の2階の居室18に配設されることなく、非居室19に配設される。この構造により、建物11の2階に設けられる居室18である寝室R、子供部屋Rや書斎R等との間において、ある居室18内での会話や音楽等の音が、天井ガラリ21及び小屋裏空間13を介して他の居室18へと漏れることが防止され、音漏れによる住人の不快感を取り除くことができる。
【0056】
尚、天井ガラリ21としては、例えば、ファイヤーダンパー付きのステンレス鋼製の天井用換気材が用いられ、本願発明の第1の空気流通部に対応する。また、本実施形態では、天井ガラリ21は、居室18であるリビングダイニングキッチンLDKの吹き抜け空間の天井27にも配設されるが、住人の活動領域から遠方であると共に、その下方には床下ガラリ20が配設されることで、天井ガラリ21から送風された内気は、建物11の壁に沿って下方に流れ、住人の活動領域と交差し難くなり、住人が上記不快感を受け難くなる。
【0057】
図4では、建物11の1階の天井28裏の天井裏空間61における空調機17等の配管状況を示す。尚、図4では、説明の都合上、天井裏空間61及びその下部に位置する建物11の1階の構造に関して実線にて示す。
【0058】
図4に示す如く、天井裏空間61には、主に、空調機17が配設され、空調機17には、給気ダクト62を介して建物11の外部からの外気が供給される。給気ダクト62は、連結ダクト73を介して小屋裏空間13に配設された熱交換機15(図3参照)の給気ダクト41(図3参照)と連結する。そして、空調機17は、主に、建物11の1階の居室18や非居室19を冷暖房するために用いられる。
【0059】
また、天井裏空間61には、空調機17の空調風送りダクト63,64と接続する分岐器65,66が配設される。分岐器65,66には、それぞれ複数の空調風送りダクト67,68が接続し、空調風送りダクト67,68は、建物11の1階の天井28に配設される複数の給気口69,70にそれぞれ接続する。そして、空調機17から供給される空調風は、給気口69,70を介して建物11の1階の居室18や非居室19へと送風される。また、建物11の1階の居室18であるリビングダイニングキッチンLDKの天井28には、排気口71が配設され、排気口71と接続する空調風戻りダクト72は、空調機17と接続する。
【0060】
また、建物11の1階の非居室19である廊下Hの天井28には、排気ダクト75と接続する排気口74が配設される。そして、排気ダクト75は連結ダクト76を介して熱交換機15(図3参照)の排気ダクト42(図3参照)と接続する。この構造により、リビングダイニングキッチンLDKのドアをオープン状態にした場合には、リビングダイニングキッチンLDK内の内気を建物11の外部へと排出することができる。
【0061】
また、上述したように、天地対流システム14の稼働直後等、天井ガラリ21(図3参照)から嫌な臭いの内気が流れ出る場合には、リビングダイニングキッチンLDKのドアをオープン状態することで、住人の活動領域の上方にて嫌な臭いの内気を排気口74にて吸い込み、建物11の外部へと排出することもできる。
【0062】
本実施形態では、小屋裏空間13に配設された空調機16は、主に、建物11の2階の居室18や非居室19を冷暖房するために用いられ、天井裏空間61に配設された空調機17は、主に、建物11の1階の居室18や非居室19を冷暖房するために用いられる。上述したように、天地対流システム14を用いて建物11内の内気を循環させることで、天井裏空間61の内気を適温とすると共に、流動させることができる。
【0063】
このシステムにより、冬季等、空調機16,17の暖房運転時には、空調機16が、小屋裏空間13の温められた内気により上記誤認識を起こすことがなく、住人の設定温度に合わせて適正に稼働する。同様に、夏季等、空調機16,17の冷房運転時には、空調機16が、小屋裏空間13の高温状態の内気により上記誤認識を起こすことがなく、常時、強風状態にて稼働することが防止されると共に、住人の設定温度に合わせて適正に稼働する。
【0064】
その結果、建物11の1階の居室18に両親が生活し、2階の居室18に子供が生活することで、それぞれの快適温度が異なる場合でも、全館空調システム10でありながら、空調機16,17が複数台配設されることで、それぞれの住人の快適性を満足させることができる。
【0065】
尚、本実施形態では、図1から図4を用いて、2階建て住宅である建物11に対して、天地対流システム14を用いた全館空調システム10が導入され、小屋裏空間13に配設された空調機16が、主に、建物11の2階の居室18や非居室19を冷暖房し、天井裏空間61に配設された空調機17が、主に、建物11の1階の居室18や非居室19を冷暖房する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、建物11が、平屋の住宅である場合でも良く、3階建て以上の住宅やビル等の場合でも、上述した天地対流システム14を用いた全館空調システム10が導入されることで、上記説明と同様な効果を得ることができる。
【0066】
例えば、図5は、本実施形態の全館空調システム10が導入される建物81の概略を説明する立面図である。そして、建物81にも、天地対流システム14を用いた全館空調システム10が導入されるため、図1図4を用いて説明した建物11の説明と同一の構成部材には同一の符番を付し、ここではその説明を省略する。また、建物81においても、上記建物11と同一の構成部材を用いることで同様な効果を得ることができる。
【0067】
図5に示す如く、建物81の床下空間82には、天地対流システム14の正逆転ファン24が配設される。そして、天地対流システム14のダクト23は、分岐器83及び分岐器83と接続する複数のダクト87と連通し、それらのダクト87の先端開口部が、床下空間82の略全方向に向けて配置される。上記配管構造により、床下空間82は、建物81の基礎コンクリートにより細かく区画されるが、天地対流システム14では、出来る限り均一に床下空間82の内気を吸い込み、あるいは、小屋裏空間84の内気を床下空間82に充満させることができる。
【0068】
建物81の小屋裏空間84には、天地対流システム14のダクト23が配管されると共に、全館空調システム10を構成する熱交換機15及び2台の空調機16,17が配設される。また、建物81の床85には、床下ガラリ20が配設され、建物81の天井86には、天井ガラリ21、熱交換機15の排気口55、空調機16,17の給気口49,50及び排気口51,52が配設される。
【0069】
図示したように、非居室19の天井86には、天井ガラリ21の近傍に排気口55が配設されることで、小屋裏空間84から流れ出す内気が、非居室19にて排気口55を介して熱交換機15の排気ダクト42内へと吸い込まれ、建物11の外部へと排出されることで、居室18内の住人が、上記嫌な臭いにて不快感を受け難くなる。
【0070】
また、例えば、空調機16が、主に、建物81の南側の居室18や非居室19を冷暖房し、空調機17が、主に、建物81の北側の居室18や非居室19を冷暖房する。そして、夏季には、建物81の南側の居室18や非居室19は、日当たりが良く、暑くなり過ぎることで、冷房運転の設定温度を低く設定し、一方、建物81の北側の居室18や非居室19では、南側程、冷房運転の設定温度を低くする必要がない場合もある。その様な場合でも、全館空調システム10でありながら、空調機16,17が複数台配設されることで、それぞれの住人の快適性を満足させることができる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 全館空調システム
11,81 建物
12,82 床下空間
13,84 小屋裏空間
14 天地対流システム
15 熱交換機
16,17 空調機
18 居室
19 非居室
20 床下ガラリ
21 天井ガラリ
23 ダクト
24 正逆転ファン
26,85 床
27,28,86 天井
49,50,69,70 給気口
61 天井裏空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6