(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】連結構造体
(51)【国際特許分類】
E02B 3/20 20060101AFI20230113BHJP
B63B 21/00 20060101ALI20230113BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20230113BHJP
F16F 15/067 20060101ALI20230113BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20230113BHJP
E02B 7/02 20060101ALN20230113BHJP
【FI】
E02B3/20 Z
B63B21/00 A
F16F7/00 B
F16F7/00 C
F16F15/067
F16F15/08 E
E02B7/02 B
(21)【出願番号】P 2021147012
(22)【出願日】2021-09-09
(62)【分割の表示】P 2017130773の分割
【原出願日】2017-07-04
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000106955
【氏名又は名称】シバタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【氏名又は名称】山本 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100175385
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【氏名又は名称】山本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】西本 安志
(72)【発明者】
【氏名】西村 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】西野 好生
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-062684(JP,A)
【文献】特開2005-313849(JP,A)
【文献】特開平01-127481(JP,A)
【文献】特開昭51-018089(JP,A)
【文献】特表平05-507247(JP,A)
【文献】特開平09-240577(JP,A)
【文献】特開平11-037197(JP,A)
【文献】特開昭59-197264(JP,A)
【文献】特開平10-115123(JP,A)
【文献】米国特許第5524566(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/20
B63B 21/00
F16F 7/00
F16F 15/067
F16F 15/08
E02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物同士を連結するための連結構造体であって、
前記対象物の一方に接続される第1接続部と、
前記対象物の他方に接続される第2接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部との間に配置接続される連結部とを備え、
前記連結部は、
前記第1接続部と前記第2接続部とが離れる方向が仮想水平面上である場合の、前記仮想水平面における断面形状が前記第1接続部と前記第2接続部との直線距離より長く、且つ、変形に伴って抵抗を生じる可撓性材料にて形成される、連結構造体。
【請求項2】
前記連結部は、
前記断面形状が4つ以上の頂点を有する多角形であって、第1の頂点とこれに隣接する頂点を除く第2の頂点とに前記第1接続部及び前記第2接続部の各々が接続される、請求項1記載の連結構造体。
【請求項3】
前記連結部は、
前記断面形状がひし形となるように4つの板状体を一体化してなり、前記ひし形の4つの頂点のうち対頂点の一方に前記第1接続部及び前記第2接続部が配置される、請求項1記載の連結構造体。
【請求項4】
前記連結部は、その内方に、前記第1接続部と前記第2接続部とが離れる方向に引張力が加わった際に前記連結部の
前記断面が直線状態に近づく変形に対して抵抗を生じる緩衝手段を備えた、請求項1から請求項3のいずれかに記載の連結構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は連結構造体に関し、特に、岸壁等と船舶等とを連結する目的や、防護柵における水平ロープ材と支柱とを連結する目的に用いられる連結構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図12は従来の連結構造体の使用状態を示す概略図である。
【0003】
同図を参照して、海洋84上に浮かぶ複数の船舶83a~83cの各々は、岸壁85に所定間隔で固定設置された複数の係船柱86a~86cの各々と、ワイヤーロープ等の係留索87a~87cの各々及びこれの中間位置に配置接続された連結構造体81a~81cの各々を介して連結されている。
【0004】
このようにして係留された船舶83a~83cの各々は、強風や荒波等により大きく動揺する場合があり、その際係留索87a~87cの各々に大きな引張力が加わる。このとき、後述するように連結構造体81a~81cの各々が引張力を緩和する緩衝機能を有することにより、係留索87a~87cが切断することを防止している。
【0005】
次に、連結構造体81aの構造について説明する。
【0006】
図13は
図12で示したXIII-XIIIラインの断面図である。
【0007】
図12及び
図13を併せて参照して、連結構造体81aは外観形状が略円柱状であり両端部において係船柱86a側の係留索87aと船舶83a側の係留索87aとに接続されている。連結構造体81aの内部は、金属製の複数の環88a~88eが、隣接する環88同士が直接的に接触しないようにスペース90a~90dを設けた状態でゴム等の弾性体89に埋設されて構成されている。
【0008】
これによって、
図12で示した船舶83aの動揺によって係留索87aに引張力(矢印82a、82bの方向に加わる引張力)が加わった際には、主として環88a~88e間のスペース90a~90dに充填された弾性体89が引張力によって圧縮されて弾性変形し、それによって連結構造体81aの全体が伸びるように変形することで係留索87aに加わった引張力が緩衝され、係留索87aの切断が防止される。
【0009】
連結構造体の他の態様として、特許文献1には、係留索に加わる引張力をねじり変形して緩衝する弾性体と、引張力を弾性体に対するねじり力に変換するリンク機構とを組み合わせた係留用ダンパ装置が提案されている。
【0010】
又、特許文献2には、係留索に加わる引張力を、圧縮により変形することで緩衝する弾性体と、引張力を弾性体に対する圧縮力に変換するリンク機構とを組み合わせた係留用ダンパ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平9-217330号公報
【文献】特開平9-221734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した従来の連結構造体はいずれも、連結構造体の伸びる方向が一方向であるため、複数の船舶を係留する場合には個別に複数の連結構造体を必要とする問題が存在していた。
【0013】
又、複数の方向に対応するため、連結構造体を弾性体そのものの環状体として連結した場合には、変形し易いために初期の小さな荷重でも係留索が動いてしまい、設計荷重を大きくすることが困難であった。
【0014】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、引張力への対応性が向上した連結構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、対象物同士を連結するための連結構造体であって、対象物の一方に接続される第1接続部と、対象物の他方に接続される第2接続部と、第1接続部と第2接続部との間に配置接続される連結部とを備え、連結部は、第1接続部と第2接続部とが離れる方向が仮想水平面上である場合の、仮想水平面における断面形状が第1接続部と第2接続部との直線距離より長く、且つ、変形に伴って抵抗を生じる可撓性材料にて形成されるものである。
【0028】
このように構成すると、第1接続部と第2接続部とが離れる方向に引張力が加わると、連結部の断面が直線状態に近づくように変形する。
【0029】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、連結部は、断面形状が4つ以上の頂点を有する多角形であって、第1の頂点とこれに隣接する頂点を除く第2の頂点とに第1接続部及び第2接続部の各々が接続されるものである。
【0030】
このように構成すると、第1接続部と第2接続部とが離れる方向に引張力が加わると、第1の頂点及び第2の頂点以外の頂点において変形し易くなる。
【0031】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、連結部は、断面形状がひし形となるように4つの板状体を一体化してなり、ひし形の4つの頂点のうち対頂点の一方に第1接続部及び第2接続部が配置されるものである。
【0032】
このように構成すると、引張力の加わる箇所を対称な位置関係とすることができる。
【0033】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、連結部は、その内方に、第1接続部と第2接続部とが離れる方向に引張力が加わった際に連結部の断面が直線状態に近づく変形に対して抵抗を生じる緩衝手段を備えたものである。
【0034】
このように構成すると、緩衝手段が変形に抵抗する。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、第1接続部と第2接続部とが離れる方向に引張力が加わると、連結部の断面が直線状態に近づくように変形するため、変形に伴って引張力のエネルギーが吸収され、その衝撃が緩和される。
【0042】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、第1接続部と第2接続部とが離れる方向に引張力が加わると、第1の頂点及び第2の頂点以外の頂点において変形し易くなるため、連結部の緩衝機能が向上する。
【0043】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、引張力の加わる箇所を対称な位置関係とすることができるため、連結部の緩衝機能の安定性が向上する。
【0044】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、緩衝手段が変形に抵抗するため、連結部の緩衝機能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】この発明の第1の実施の形態による連結構造体の使用状態を示す概略図である。
【
図2】この発明の第1の実施の形態による連結構造体の構造を示す概略図である。
【
図3】
図2で示したIII-IIIラインの断面図である。
【
図4】
図2で示した連結構造体の他の態様を示す概略図であって、(1)は第3接続部を更に備えるものであって
図1で示した“X”箇所に用いられるものであり、(2)は第4接続部を更に備えるものである。
【
図5】この発明の第2の実施の形態による連結構造体の構造を示す概略図であって、
図2に対応するものである。
【
図6】
図5で示した連結構造体の他の態様を示す概略図である。
【
図7】この発明の第3の実施の形態による連結構造体の構造を示す概略図であって、
図2に対応するものである。
【
図8】この発明の第4の実施の形態による連結構造体の構造を示す概略図であって、
図2に対応するものである。
【
図9】
図8で示した連結構造体の他の態様を示す概略図である。
【
図10】
図8で示した連結構造体の更に他の態様を示す概略図である。
【
図11】この発明の各実施の形態による連結構造体の他の使用状態を示す正面図である。
【
図12】従来の連結構造体の使用状態を示す概略図である。
【
図13】
図12で示したXIII-XIIIラインの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1はこの発明の第1の実施の形態による連結構造体の使用状態を示す概略図である。
【0047】
同図を参照して、対象物の一方としての海洋4上に浮かぶ複数の船舶3a、3bは、対象物の他方としての岸壁5に固定設置された係船柱6と、ワイヤーロープ等の係留索7a~7c及び船舶3a、3bと係船柱6との中間位置に配置接続された連結構造体1(後述する連結構造体9)を介して同時に連結されている。即ち、対象物同士を連結する連結構造体1は、その端部において、係船柱6側の係留索7aと接続されると共に、船舶3a、3b側の係留索7b、7cと接続されている。
【0048】
係留された船舶3a、3bの動揺により係留索7a~7cに引張力が加わった際には、後述するように連結構造体1が引張力を緩和する緩衝機能を有することにより、係留索7a~7cが切断することを防止している。
【0049】
次に、連結構造体の基本的な構成について説明する。
【0050】
図2はこの発明の第1の実施の形態による連結構造体の構造を示す概略図であり、
図3は
図2で示したIII-IIIラインの断面図である。
【0051】
これらの図を参照して、連結構造体1は、金属製の環状体である第1接続部11と、同様に金属製の環状体である第2接続部12と、第1接続部11と第2接続部12とに鎖状に接続される金属製の円環状の連結部13と、連結部13の内周18全面に設けられた緩衝手段としてのゴム等の弾性体14とから主に構成されている。
【0052】
第1接続部11は、矢印15aの方向に位置する対象物の一方に接続される。又、第2接続部12は、矢印15bの方向に位置する対象物の他方に接続される。例えば
図1で示した態様に対応すれば、第1接続部11は係船柱6に係留索7aを介して接続されることとなり、第2接続部12は船舶3a、3bのいずれかに係留索7b、7cのいずれかを介して接続されることとなる。更に、連結部13は、金属製であるため変形に抵抗する非弾性を有する。更に、第1接続部11及び第2接続部12は共に環状体であるため、連結部13の周方向(弾性体14の設けられている連結部13の内径)に沿って移動自在である。
【0053】
このように構成することで、第1接続部11と第2接続部12とが離れる方向(矢印15a、15bの方向)に引張力が加わると、第1接続部11、連結部13及び第2接続部12が相対的に移動し、引張力の方向に対応した位置関係(
図2の場合、これらが直線状に並んだ位置関係)に移行する。そして、第1接続部11及び第2接続部12が連結部13に及ぼす引張力は、弾性体14が圧縮され弾性変形することにより緩衝され、係留索の切断が防止される。
【0054】
又、連結部13は変形に抵抗する非弾性を有するため、初期の小さな引張力が加わった際に連結構造体1自体が大きく伸びてしまうことを防止し、連結部13が弾性体そのものからなる場合に比して設計荷重を大きくすることができる。
【0055】
又、連結部13が円環状であることにより、連結部13の周方向のどの位置であっても、第1接続部11や第2接続部12の周方向の移動に要する抵抗が一定となるため、第1接続部11や第2接続部12が移動し易く、使用勝手が向上する。
【0056】
次に、
図4は
図2で示した連結構造体の他の態様を示す概略図であって、(1)は第3接続部を更に備えるものであって
図1で示した“X”箇所に用いられるものであり、(2)は第4接続部を更に備えるものである。
【0057】
まず同図の(1)を参照して、連結構造体9は、
図2で示した連結構造体1と基本的に同様の構成であり、第3接続部16を付加したものである。第3接続部16は、第1接続部11又は第2接続部12と基本的に同様の構成であり、
図1に示したように船舶3bに係留索7cを介して接続されている。
【0058】
これによって、引張力が矢印15a~15cの3つの方向から加わった場合でも、第1接続部11、連結部13、第2接続部12及び第3接続部16が相対的に移動し、引張力の方向に対応した位置関係(同図の(1)の場合、連結部13を中心として第1接続部11と第2接続部12と第3接続部16とが互いに120°離れた状態)に移行し弾性体14によって引張力を緩衝する。
【0059】
又、同図の(2)を参照して、連結構造体10は、上述した連結構造体9と基本的に同様の構成であり、更に第4接続部17(第3接続部16と同様の構成)を付加したものである。
【0060】
これによって、連結構造体10は、引張力が矢印15a~15dの4つの方向から加わった場合でも、引張力の方向に対応した位置関係(同図の(2)の場合、連結部13を中心として第1接続部11と第2接続部12と第3接続部16と第4接続部17とが互いに90°離れた状態)に移行し対応することが可能である。
【0061】
このように、この発明の第1の実施の形態による連結構造体1は、連結構造体1に作用する種々の方向の引張力に対応することができるものである。
【0062】
又、弾性体14は連結部13側に設けられているため、連結部13に、第2接続部12に加え弾性体14が設けられていない他の接続部(第3接続部16や第4接続部17を含む。)を接続することが容易となるため、連結部13に第2接続部12に加え他の接続部が接続される場合にコスト面で有利となる。
【0063】
次に、
図5はこの発明の第2の実施の形態による連結構造体の構造を示す概略図であって、
図2に対応するものである。
【0064】
この連結構造体20の構造は第1の実施の形態による連結構造体1と基本的に同様であるため、相違点を中心に以下説明する。
【0065】
同図を参照して、連結構造体20において、緩衝手段としての弾性体24a、24bは、第1接続部21の内周の連結部23側の半分の面、及び、第2接続部22の内周の連結部23側の半分の面に設けられている。
【0066】
これによって、上述した連結構造体1と同様に、引張力15a、15bが加わった際に第1接続部21及び第2接続部22が連結部23に及ぼす引張力が弾性体24a、24bにより緩衝されるため、連結構造体に作用する種々の方向の引張力に対応することができる。
【0067】
又、弾性体24a、24bが第1接続部21及び第2接続部22側に設けられていることにより、連結部23には複数の接続部(第1接続部21、第2接続部22等)が接続されるのに対し、第1接続部21及び第2接続部22の各々は連結部23のみと接続されるので、設置後に使用を続け弾性体24が劣化した際には、連結構造体20全体を分解することなく劣化した弾性体24が設けられた第1接続部21又は第2接続部22のみを交換すれば良く、補修が容易となるため、コスト面で有利となる。
【0068】
次に、
図6は
図5で示した連結構造体の他の態様を示す概略図である。
【0069】
この連結構造体25の構造は、第2の実施の形態による連結構造体20と基本的に同様であるため、相違点を中心に以下説明する。
【0070】
同図を参照して、連結構造体25において、弾性体24a~24dの各々は、第1接続部21、第2接続部22、第3接続部26及び第4接続部27の内周全面に設けられている。そのため、これらの接続部が不用意に回転する事態が生じても連結構造体25の緩衝機能が損なわれることを防止し、連結構造体25の安定性が向上している。
【0071】
又、連結部29は楕円環状である。これによって、同図に示すように第1接続部21と第2接続部22とが連結部29の楕円の短軸位置に接続される場合、長軸位置(同図では第3接続部26及び第4接続部27の位置関係)に接続される場合に比して緩衝できるエネルギーが大きくなる。即ち、連結部29における第1接続部21及び第2接続部22の接続される位置によって、同じ引張力でも変形の程度が異なるものとなるため、連結しようとする対象物への対応性が向上する。例えば、重量の異なる船舶を対象物とするとき、重量に応じて接続位置を変更して対応することが可能である。
【0072】
次に、
図7はこの発明の第3の実施の形態による連結構造体の構造を示す概略図であって、
図2に対応するものである。
【0073】
この連結構造体30の構造は、第1の実施の形態による連結構造体10と基本的に同様である。
【0074】
同図を参照して、対象物の一(
図1で示した係船柱6に対応)に接続される第1接続部31と、対象物の他(
図1で示した船舶3a、3b等に対応)に接続される3つの他の接続部(第2接続部32、第3接続部36及び第4接続部37)と、第1接続部31、第2接続部32、第3接続部36及び第4接続部37の各々に鎖状に接続される連結部33と、第1接続部31、第2接続部32、第3接続部36及び第4接続部37の各々と連結部33との間にスペース38a~38dを設けた状態で連結部33並びに第1接続部31、第2接続部32、第3接続部36及び第4接続部37の各々の一部が埋設される弾性体34とから主に構成されている。
【0075】
このように構成すると、第1接続部31と他の接続部32、36、37の各々とが離れる方向(同図の矢印15a~15dで示す方向)に引張力が加わると、主にスペース38a~38dに充填された弾性体34が圧縮され弾性変形することで引張力が緩衝されるため、複数の対象物を同時に連結することが可能となる。又、第1接続部31、他の接続部32、36、37及び連結部33の位置関係が弾性体34により固定され全体的に保護されるため、連結部33の耐久力が向上する。
【0076】
次に、
図8はこの発明の第4の実施の形態による連結構造体の構造を示す概略図であって、
図2に対応するものである。
【0077】
この連結構造体40は、第1の実施の形態による連結構造体1と同様の場面で使用される。
【0078】
同図を参照して、連結構造体40は、断面形状がひし形となるように4つの板状体42a~42dを組み合わせ、隣接する板状体42a~42dの端部同士を固定具43a~43dで固定することで一体化してなる連結部45と、連結部45のひし形の4つの頂点位置に形成された係止部46a~46dとから主に構成されている。
【0079】
同図の場合、係止部46aが第1接続部に相当し、又、係止部46aと隣接しない頂点位置(対頂点の位置)にある係止部46bが第2接続部に相当する。そのため、第1接続部(係止部46a)と第2接続部(係止部46b)との間に配置接続される連結部45は、断面形状がひし形であり、第1接続部と第2接続部との直線距離より長く構成されている。
【0080】
又、連結部45を構成する板状体42a~42dは、変形に伴って抵抗を生じる可撓性材料にて形成されている。
【0081】
したがって、同図の矢印15a、15bで示すように、第1接続部(係止部46a)と第2接続部(係止部46b)とが離れる方向に引張力が加わると、連結部45の断面が直線状態に近づくように変形するため、変形に伴って引張力のエネルギーが吸収され、その衝撃が緩和される。
【0082】
更に、連結部45の断面形状をひし形としたことにより、引張力の加わる箇所を対称な位置関係とすることができるため、連結部45の緩衝機能の安定性が向上する。
【0083】
次に、
図9は
図8で示した連結構造体の他の態様を示す概略図である。
【0084】
この連結構造体41の構造は、第4の実施の形態による連結構造体40と基本的に同様であるため、相違点を中心に以下説明する。尚、
図8で示した固定具43a~43d及び係止部46a~46dの描写は繰り返さない。
【0085】
同図を参照して、連結部45は、その内方に、第1接続部と第2接続部とが離れる方向(同図の矢印15a、15bで示す方向)に引張力が加わった際に連結部45の断面が直線状態に近づく変形(同図の矢印50a、50bで示す方向)に対して抵抗を生じる緩衝手段としての弾性体48を備えている。弾性体48は、コスト面を考慮して設けられた開口49部分を除いて、連結部45の内方に充填されている。
【0086】
これによって、緩衝手段としての弾性体48が変形に抵抗するため、連結部45の緩衝機能が向上する。
【0087】
次に、
図10は
図8で示した連結構造体の更に他の態様を示す概略図である。
【0088】
この連結構造体51の構造は、第4の実施の形態による連結構造体41と基本的に同様であるため、相違点を中心に以下説明する。
【0089】
同図を参照して、連結部45のひし形の対向する頂点を結ぶように緩衝手段としてのスプリング52が設けられている。スプリング52は、上述した連結構造体41における弾性体48と同様の作用効果を奏する。
【0090】
以上説明したように、本発明の連結構造体は、連結構造体に作用する種々の方向の引張力に対応することができ、引張力への対応性が向上したものである。したがって、
図1で示したような複数の船舶、浮体構造物、浮遊式防舷材等を同時に係留する場面で好適に用いることができる。又、次に説明するような砂防ダム等における雪崩、落石等に対する防護柵においても好適に用いることができる。
【0091】
図11はこの発明の各実施の形態による連結構造体の他の使用状態を示す正面図である。
【0092】
同図を参照して、砂防ダム55の上流側法面58a、58bに垂直方向(正面視上下方向)に設けられたスリット部57において、雪崩、落石等に対する防護柵56が設置されている。防護柵56にあっては、上流側法面58a、58bの各々に、スリット部57に沿うように固定基材59a、59bが取り付けられている。又、スリット部57を水平方向に跨ぐように、水平ロープ材等の索条体の横材61が垂直方向所定間隔で複数配置され、複数の横材61の各々の両端は固定基材59a、59bに対して連結構造体60a、60cを用いて連結されている。更に、複数の横材61と交差するように垂直方向に延びる支柱としての縦材62が水平方向所定間隔で複数配置され、複数の横材61の各々の中間位置において、横材61と縦材62とが連結構造体60bを用いて連結されている。
【0093】
連結構造体60a~60cの各々は上述した本発明の各実施の形態による連結構造体であるため、交差する横材61と縦材62とを同時に連結することができ、設計荷重を大きくすることができるため防護柵56に対して雪崩、落石、土石流等が衝突した際の衝撃を効果的に緩和することができる。
【0094】
尚、上記の各実施の形態では、第1接続部、第2接続部、他の接続部及び連結部が特定の素材からなる特定形状のものであったが、他の素材からなるものであっても良い。又、他の形状であっても良い。
【0095】
又、上記の各実施の形態では、緩衝手段はゴム等の弾性体やスプリングであったが、第1接続部と第2接続部とが離れる方向に引張力が加わった際に、第1接続部及び第2接続部が連結部に及ぼす引張力を緩衝する緩衝機能を有するものであれば他のものであっても良い。
【0096】
更に、上記の各実施の形態では、船舶を洋上に係留する場面や砂防ダムの防護柵において連結構造体を用いていたが、使用場所はこれらに限定されない。
【0097】
更に、上記の第1の実施の形態では、連結部の内周全面に弾性体が設けられていたが、内周とは、上述した引張力が加わった際に連結部において第1接続部及び第2接続部が接触する面を少なくとも含んでいれば良い。
【0098】
更に、上記の各実施の形態では、接続部と対象物とが係留索を介して接続されていたが、これらは係留索以外の手段で接続されていても良いし、直接的に接続しても良い。
【0099】
更に、上記の第1から第3の実施の形態では、第1接続部及び第2接続部に加えて他の接続部が付加された態様が存在していたが、第1接続部及び第2接続部が存在すれば本発明に含まれる。又、他の接続部の個数は限定されない。
【0100】
更に、上記の第1、第2の実施の形態では、第1接続部、第2接続部及び他の接続部が連結部の周方向に沿って移動自在であったが、これらは引張力への対応に必要な範囲で移動自在であれば良い。例えば、
図4の(1)に示した態様において、第2接続部と第3接続部とが絡みあうことを防止する目的で、各々の移動自在な範囲を制限するように、連結部の内周面において周方向120°毎に内方に突出する凸部が形成されていても良い。
【0101】
更に、上記の第1、第2の実施の形態では、第1接続部、第2接続部及び他の接続部が連結部の周方向に沿って移動自在であったが、例えば第1接続部の接続位置が固定されたものもこれらの接続部の位置関係が相対的に移動するため実質的に発明の概念に含まれる。
【0102】
更に、上記の第1、第2の実施の形態では、連結部か、第1接続部及び第2接続部かの一方に緩衝手段が設けられていたが、連結部及び各接続部の全てに緩衝手段が設けられていても良い。
【0103】
更に、上記の各実施の形態では、各接続部、連結部及び係止部は単なる環状であったが、スタッドリンク状であっても良い。
【0104】
更に、上記の各実施の形態では、連結部は円環状又は楕円環状であったが、環状であれば円環状や楕円環状でなくとも良い。又、第3、第4の実施の形態にあっては、連結部は環状でなくとも良い。
【0105】
更に、上記の第2の実施の形態では、弾性体は第1接続部及び第2接続部の特定箇所に設けられていたが、少なくとも一部に設けられていれば良い。
【0106】
更に、上記の第3の実施の形態では、他の接続部は3つ存在していたが、個数は使用用途に応じて適宜変更可能であり、少なくとも2つあれば良い。他の接続部が3つ以上存在する場合には、第2接続部及び第3接続部に相当する構成要素が存在すれば本発明に含まれる。
【0107】
更に、上記の各実施の形態では、連結部は1つであったが、複数の連結部を用いても良い。
【0108】
更に、上記の第4の実施の形態では、係止部が第1接続部及び第2接続部であって特定の形状であったが、他の形状であっても良い。
【0109】
更に、上記の第4の実施の形態では、弾性体が連結部の内方に充填されていたが、少なくとも連結部の内方に充填されていれば良く、例えば連結部が弾性体に埋設されていても良い。
【0110】
更に、上記の第4の実施の形態では、係止部のうち対頂点の一方の位置を第1接続部及び第2接続部としていたが、対頂点の他方の位置を第1接続部及び第2接続部としても良い。又、全ての係止部を第1から第4の接続部としても良い。
【0111】
更に、上記の第4の実施の形態では、連結部は特定形状のものであったが、連結部は、第1接続部と第2接続部との間に配置接続され、断面形状が第1接続部と第2接続部との直線距離より長く、且つ、変形に伴って抵抗を生じる可撓性材料にて形成されるものであれば良い。又、4つの板状体を一体化したものでなくとも良い。
【0112】
このとき、連結部は、断面形状が4つ以上の頂点を有する多角形であって、第1の頂点とこれに隣接する頂点を除く第2の頂点とに第1接続部及び第2接続部の各々が接続されるものも他の態様として好ましい。
【0113】
このように構成した場合、第1接続部と第2接続部とが離れる方向に引張力が加わると、第1の頂点及び第2の頂点以外の頂点において変形し易くなるため、連結部の緩衝機能が向上する。
【0114】
更に、上記の第4の実施の形態では、板状体(変形に伴って抵抗を生じる可撓性材料からなるものであって、例えば金属製や合成樹脂製)が露出して使用されていたが、耐摩耗性、耐腐食性を上げるために、板状体にゴムを被覆しても良い。
【符号の説明】
【0115】
1、9、10、20、25、30、40、41、51、60…連結構造体
3…船舶
6…係船柱
11、21、31…第1接続部
12、22、32…第2接続部
13、23、29、33、45…連結部
14、24、34、48…弾性体
16、26、36…第3接続部
17、27、37…第4接続部
18、28…内周
38…スペース
42…板状体
46…係止部
52…スプリング
59…固定基材
61…横材
62…縦材
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。