IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社新川の特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置の製造装置および製造方法 図1
  • 特許-半導体装置の製造装置および製造方法 図2
  • 特許-半導体装置の製造装置および製造方法 図3
  • 特許-半導体装置の製造装置および製造方法 図4
  • 特許-半導体装置の製造装置および製造方法 図5
  • 特許-半導体装置の製造装置および製造方法 図6
  • 特許-半導体装置の製造装置および製造方法 図7
  • 特許-半導体装置の製造装置および製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】半導体装置の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021558328
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2020042204
(87)【国際公開番号】W WO2021100591
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019209095
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 耕平
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-124972(JP,A)
【文献】特開2007-258483(JP,A)
【文献】特開2019-033188(JP,A)
【文献】特開2015-233138(JP,A)
【文献】特開平09-289152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60-21/607
H01L 21/50-21/52
H05K 3/32- 3/34
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置されるステージと、
前記ステージと対向配置され、前記基板に半導体チップをボンディングするボンディングヘッドと、
コントローラと、
を備え、前記ボンディングヘッドは、
前記半導体チップを吸引保持するアタッチメントと、
前記アタッチメントを着脱自在に保持し、前記アタッチメントを加熱する加熱部であって、第一加熱エリアと、前記第一加熱エリアを水平方向に囲む第二加熱エリアと、を有する加熱部と、
前記第一加熱エリア及び前記第二加熱エリアそれぞれの温度を検出する温度センサと、
を含み、
前記コントローラは、前記第一加熱エリア及び前記第二加熱エリアのエリア目標温度を予めそれぞれ記憶しており、前記記憶されたエリア目標温度と、前記温度センサでのエリア検出温度との差分に応じて、前記第一加熱エリアと第二加熱エリアの発熱量を独立して制御し、
前記コントローラは、前記半導体チップのボンディングに先立って、前記エリア目標温度を取得する目標取得処理を実行するように構成され、
前記目標取得処理において、前記コントローラは、サンプルチップを前記ボンディングヘッドでボンディングさせるとともに、その際の前記サンプルチップの温度分布と前記第一加熱エリアおよび前記第二加熱エリアそれぞれのエリア検出温度とを取得し、得られたチップの温度分布およびエリア検出温度に基づいて前記第一加熱エリアおよび前記第二加熱エリアのエリア目標温度を算出する、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記ボンディングヘッドは、さらに、前記第一加熱エリア、前記第二加熱エリアに対応して設けられるとともに互いに独立した冷却経路であって、冷媒が流れることで対応する前記第一加熱エリア及び前記第二加熱エリアを冷却する冷却経路を有しており、
前記コントローラは、前記記憶されたエリア目標温度と、前記温度センサでのエリア検出温度との差分に応じて、前記発熱量及び前記冷媒の流量を制御する、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項3】
基板が載置されるステージと、
前記ステージと対向配置され、前記基板に半導体チップをボンディングするボンディングヘッドと、
コントローラと、
を備え、前記ボンディングヘッドは、
前記半導体チップを吸引保持するアタッチメントと、
前記アタッチメントを着脱自在に保持し、前記アタッチメントを加熱する加熱部であって、第一加熱エリアと、前記第一加熱エリアを水平方向に囲む第二加熱エリアと、を有する加熱部と、
冷媒が流れることで前記第一加熱エリアを冷却する第一冷却経路と、
前記第一冷却経路と独立して設けられ、冷媒が流れることで前記第二加熱エリアを冷却する第二冷却経路と、
を含み、前記コントローラは、前記第一加熱エリアと前記第二加熱エリアの発熱量、および、前記第一冷却経路および前記第二冷却経路に流れる冷媒量を独立して制御する、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記ボンディングヘッドは、さらに、前記第一加熱エリア及び前記第二加熱エリアの温度を検出する温度センサをそれぞれ有しており、
前記コントローラは、前記第一加熱エリア及び前記第二加熱エリアのエリア目標温度を予めそれぞれ記憶しており、前記記憶されたエリア目標温度と、前記温度センサでのエリア検出温度との差分に応じて、前記第一加熱エリアと第二加熱エリアの発熱量を制御する、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記コントローラは、ボンディング実行時に前記半導体チップの面内温度分布が均一になるように、前記第一加熱エリアと第二加熱エリアの発熱量を制御する、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項6】
請求項1,2,4,5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記第一加熱エリアの前記エリア目標温度は、前記第二加熱エリアの前記エリア目標温度よりも低い、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項7】
半導体装置の製造方法であって、
ステージに基板を載置するステップと、
前記ステージに対して移動を可能なボンディングヘッドを駆動して、前記基板に半導体チップをボンディングするステップと、
を含み、
前記ボンディングヘッドは、
前記半導体チップを吸引保持するアタッチメントと、
前記アタッチメントを着脱自在に保持し、前記アタッチメントを加熱する加熱部であって、第一加熱エリアと、前記第一加熱エリアを水平方向に囲む第二加熱エリアと、を有する加熱部と、
前記第一加熱エリア及び前記第二加熱エリアそれぞれの温度を検出する温度センサと、
を含み、
前記ボンディングの実行時には、予め記憶した前記第一加熱エリア及び前記第二加熱エリアのエリア目標温度と、前記温度センサでのエリア検出温度との差分に応じて、前記第一加熱エリアと第二加熱エリアの発熱量を独立して制御し、
前記半導体チップのボンディングに先立って、さらに、前記エリア目標温度を取得する目標取得ステップを備え、
前記目標取得ステップでは、サンプルチップを前記ボンディングヘッドでボンディングさせるとともに、その際の前記サンプルチップの温度分布と前記第一加熱エリアおよび前記第二加熱エリアそれぞれのエリア検出温度とを取得し、得られたチップの温度分布およびエリア検出温度に基づいて前記第一加熱エリアおよび前記第二加熱エリアのエリア目標温度を算出する、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、基板に1以上の半導体チップをボンディングすることで半導体装置を製造する半導体装置の製造装置、および、製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板に1以上の半導体チップをボンディングすることで半導体装置を製造する半導体装置の製造装置が知られている。かかる製造装置には、通常、半導体チップを吸引保持して、基板または他の半導体チップの上にボンディングするボンディングツールが設けられている。ボンディングツールには、加熱手段で加熱される加熱部と、当該加熱部に着脱自在のアタッチメントと、が設けられている。半導体チップは、アタッチメントを介して吸着保持されており、アタッチメントは、取り扱う半導体チップのサイズ等に応じて適宜交換される。半導体チップをボンディングする際、ボンディングツールは、ボンディング対象の半導体チップを加圧しつつ加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-29576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、半導体チップをボンディングする際、加熱対象物(例えば半導体チップ等)の温度分布が目的通りの分布になることが求められる。例えば、フリップチップボンダでは、半導体チップの底面に形成された複数のバンプを熱溶融させて、基板または他の半導体チップの表面に形成された電極と接合させる。このとき、半導体チップの温度分布が不均一であると、場所によって、バンプの溶融状態が異なり、接合不良や、半導体チップと基板(または他の半導体チップ)との間のギャップ量が不均一になる等の問題を招く。そのため、フリップチップボンダでは、加熱対象物である半導体チップの温度分布が均等になることが求められる。また、ボンディングや加熱対象物の種類によっては、加熱対象物の周縁部を中心部よりも高温にしたい場合や、加熱対象物の中心部を周縁部よりも高温にしたい場合もある。
【0005】
しかしながら、加熱対象物(例えば半導体チップ)側の吸熱レートが場所によって異なるにもかからず、従来のボンディングツールでは、加熱系統が一つしか設けられていなかった。その一方で、加熱対象物の吸熱レートは、通常、中心部より周縁近傍のほうが高い。そのため、ボンディングツールで加熱した際の加熱対象物の温度は、周縁に近づくほど、低くなりやすかった。すなわち、従来の技術では、加熱対象物の温度分布を目的通りの分布にすることは難しかった。
【0006】
なお、特許文献1には、表示パネルの接続用の周縁部に、異方性導電膜を配置し、仮圧着用ヒーターツールで加熱しつつ押圧することで、異方性導電膜を周縁部に貼り付ける技術が開示されている。この特許文献1では、異方性導電膜の両端部における仮圧着不良を防止するために、仮圧着用ヒーターツールを、異方性導電膜の中間部分を押圧する主ヒーターツールと、異方性導電膜の両端部を押圧する端部ヒーターツールと、に分割し、異方性導電膜の両端部が、中間部分より高温になるように、主ヒーターツールおよび端部ヒーターツールの温度を制御している。この特許文献1の技術は、あくまで、異方性導電膜の圧着に関する技術であり、半導体チップのボンディングには適用できない。
【0007】
そこで、本明細書では、ボンディング時における加熱対象物の温度分布を制御できる半導体装置の製造装置および製造方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する半導体装置の製造装置は、基板が載置されるステージと、前記ステージと対向配置され、前記基板に半導体チップをボンディングするボンディングヘッドと、コントローラと、を備え、前記ボンディングヘッドは、前記半導体チップを吸引保持するアタッチメントと、前記アタッチメントを着脱自在に保持し、前記アタッチメントを加熱する加熱部であって、第一加熱エリアと、前記第一加熱エリアを水平方向に囲む第二加熱エリアと、を有する加熱部と、を含み、前記コントローラは、前記第一加熱エリアと第二加熱エリアの温度を独立して制御する、ことを特徴とする。
【0009】
この場合、前記コントローラは、ボンディング実行時に前記半導体チップの面内温度分布が均一になるように、前記第一加熱エリアと第二加熱エリアの発熱量を制御してもよい。
【0010】
また、前記ボンディングヘッドは、さらに、前記第一加熱エリア及び前記第二加熱エリアの温度を検出する温度センサをそれぞれ有しており、前記コントローラは、前記第一加熱エリア及び前記第二加熱エリアのエリア目標温度を予めそれぞれ記憶しており、前記記憶されたエリア目標温度と、前記温度センサでのエリア検出温度との差分に応じて、前記第一加熱エリアと第二加熱エリアの発熱量を制御してもよい。
【0011】
また、前記ボンディングヘッドは、さらに、前記第一加熱エリア、前記第二加熱エリアに対応して設けられるとともに互いに独立した冷却経路であって、冷媒が流れることで対応する前記第一加熱エリア及び前記第二加熱エリアを冷却する冷却経路を有しており、前記コントローラは、前記記憶されたエリア目標温度と、前記温度センサでのエリア検出温度との差分に応じて、前記発熱量及び前記冷媒の流量を制御してもよい。
【0012】
また、前記コントローラは、前記半導体チップのボンディングに先立って、前記エリア目標温度を取得する目標取得処理を実行するように構成され、前記目標取得処理において、前記コントローラは、サンプルチップを前記ボンディングヘッドでボンディングさせるとともに、その際の前記サンプルチップの温度分布と前記第一加熱エリアおよび前記第二加熱エリアそれぞれのエリア検出温度とを取得し、得られたチップの温度分布およびエリア検出温度に基づいて前記第一加熱エリアおよび前記第二加熱エリアのエリア目標温度を算出してもよい。
【0013】
また、前記第一加熱エリアの前記エリア目標温度は、前記第二加熱エリアの前記エリア目標温度よりも低くてもよい。
【0014】
また、本明細書で開示する半導体装置の製造方法は、ステージに基板を載置するステップと、前記ステージに対して移動を可能なボンディングヘッドを駆動して、前記基板に半導体チップをボンディングするステップと、を含み、前記ボンディングヘッドは、前記半導体チップを吸引保持するアタッチメントと、前記アタッチメントを着脱自在に保持し、前記アタッチメントを加熱する加熱部であって、第一加熱エリアと、前記第一加熱エリアを水平方向に囲む第二加熱エリアと、を有する加熱部と、を有しており、前記ボンディングの実行時に、コントローラが、前記第一加熱エリアと第二加熱エリアの温度を独立して制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本明細書で開示の半導体装置の製造装置および製造方法によれば、ボンディングヘッドの加熱部が、第一加熱エリアと第二加熱エリアとに分割されており、さらに、コントローラが、第一加熱エリアと第二加熱エリアの温度を独立して制御するため、ボンディング時における加熱対象物の温度分布を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】製造装置の構成を示す模式図である。
図2】半導体チップおよび基板の模式図である。
図3】半導体チップの温度分布の一例を示すグラフである。
図4】ボンディングヘッドの構成を示す模式図である。
図5】ボンディングヘッドの加熱部の概略平面図である。
図6】半導体チップをボンディングする際のエリア検出温度の経時的変化を示すグラフである。
図7】目標取得処理の流れを示すフローチャートである。
図8】従来のボンディングヘッドの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して半導体装置の製造装置10の構成について説明する。図1は、製造装置10の構成を示す模式図である。この製造装置10は、基板100に複数の半導体チップ110をボンディングすることで半導体装置を製造する。
【0018】
製造装置10は、ピックアップユニット12と、ボンディングヘッド14と、ステージ16と、コントローラ18と、を有している。ピックアップユニット12は、ダイシングテープ120に載置された半導体チップ110を突き上げる突き上げピン20と、突き上げられた半導体チップ110をその底面で保持するピックアップヘッド22と、を有する。ピックアップヘッド22は、水平方向に延びる回転軸Oを中心に回転可能となっている。ピックアップヘッド22が、180度回転することで、ピックアップした半導体チップ110を厚み方向に180度反転させることができる。これにより、半導体チップ110のうちダイシングテープ120に接着されていた面が上方に向く。
【0019】
ボンディングヘッド14は、図示しないXY駆動機構により、ステージ16の上面と平行な水平方向に移動し、図示しないZ軸駆動機構により、水平方向と直交する鉛直方向に移動する。このボンディングヘッド14には、半導体チップ110を吸着保持するアタッチメント(図1では図示せず)と、当該アタッチメント33を加熱するヒータ(図1では図示せず)と、が設けられている。また、アタッチメント33は、半導体チップ110の種類に応じて選択される。このボンディングヘッド14の具体的な構成については後述する。
【0020】
また、ボンディングヘッド14には、さらに、第一カメラ26も設けられている。第一カメラ26は、光軸が下方に延びる姿勢でボンディングヘッド14に取り付けられており、ステージ16に載置された基板100等を撮像する。コントローラ18は、この第一カメラ28で撮像された画像等に基づいて、ボンディングヘッド14と基板100と、の相対位置関係を算出し、その算出結果に基づいてボンディングヘッド14を位置決めする。ステージ16は、図示しない搬送機構により搬送された基板100を真空吸着して支持する。このステージ16には、ヒータ(図示せず)が内蔵されており、載置された基板100を加熱できる。
【0021】
コントローラ18は、製造装置10の各部の駆動を制御するもので、例えば、各種演算を実行するプロセッサと、各種プログラムおよびデータを記憶するメモリと、を有する。このコントローラ18は、ピックアップユニット12およびボンディングヘッド14を駆動して、基板100上に複数の半導体チップ110をボンディングさせる。このボンディングの際、コントローラ18は、半導体チップ110を適切に加熱するために、ボンディングヘッド14およびステージ16に設けられたヒータの温度を制御するが、これについては、後述する。
【0022】
次に、製造装置10で取り扱う半導体チップ110について簡単に説明する。図2は、半導体チップ110および基板100の模式図である。半導体チップ110の底面には、バンプ116と呼ばれる金属突起が形成されている。バンプ116は、導電性金属からなり、所定の溶融温度で溶融する。基板100のうち、このバンプ116と対応する位置には、基板電極102が形成されている。半導体装置を製造する際には、当該バンプ116を溶融させて、基板電極102と接合させる。
【0023】
半導体チップ110の底面には、バンプ116を覆うように、非導電性フィルム(以下「NCF」という)118が貼り付けられている。NCF118は、半導体チップ110と、基板100または他の半導体チップ110とを接着する接着剤として機能するもので、非導電性の熱硬化性樹脂、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等からなる。このNCF118の厚みは、バンプ116の平均高さよりも大きく、バンプ116は、このNCF108によりほぼ完全に覆われている。NCF118は、常温下では、固体のフィルムであるが、所定の軟化開始温度を超えると、徐々に、可逆的に軟化して流動性を発揮し、所定の硬化開始温度を超えると、不可逆的に硬化し始める。なお、軟化開始温度は、NCF118の硬化開始温度およびバンプ116の溶融温度よりも低い。
【0024】
半導体チップ110を基板100にボンディングする際には、仮圧着工程と、本圧着工程と、を実行する。仮圧着工程では、基板100に載置された半導体チップ110を仮圧着用温度で加熱しつつ加圧する。この仮圧着用温度は、NCF118の軟化開始温度より高く、バンプ116の溶融温度およびNCF118の硬化開始温度よりも低い。仮圧着用温度まで加熱することで、NCF118が、軟化し、流動性を持つ。そして、これにより、NCF118が、半導体チップ110と基板100との隙間に流れ込み、当該隙間を確実に埋めることができる。
【0025】
本圧着工程では、仮圧着された半導体チップ110を本圧着用温度で加熱しつつ加圧する。この本圧着用温度は、バンプ116の溶融温度およびNCF118の硬化開始温度よりも高い。本圧着用温度まで加熱することで、バンプ116が、溶融し、対向する基板電極102に溶着できる。また、この加熱により、NCF118が、半導体チップ110と基板100との隙間を埋めた状態で硬化するため、半導体チップ110と基板100とが強固に固定される。
【0026】
仮圧着工程、本圧着工程のいずれにおいても、半導体チップ110は、均一に加熱されることが望まれる。すなわち、仮圧着工程において、半導体チップ110は、その中心も端部も、仮圧着用温度となることが求められる。同様に、本圧着工程において、半導体チップ110は、その中心も端部も、本圧着用温度となることが求められる。しかしながら、従来のボンディングヘッド14には、加熱系統が、一つしか設けられていないため、半導体チップ110の温度分布を均一にすることは難しかった。
【0027】
これについて、図8を参照して説明する。図8は、従来のボンディングヘッド14の構成を示す模式図である。ボンディングヘッド14には、上側から順に、ベース部29、断熱部30、加熱部31、アタッチメント33が、並んで設けられている。ベース部29は、図示しない移動機構に取り付けられており、例えば、ステンレス等で構成される。加熱部31は、発熱抵抗体36が内蔵された部位である。加熱部31は、平板形であり、窒化アルミ等のセラミックスで構成される。この加熱部31の内部には、発熱抵抗体36が埋め込まれている。発熱抵抗体36は、例えば、白金あるいはタングステン等で構成され、電源を有したドライバ38に電気的に接続されている。この発熱抵抗体36に電流を印加することで、発熱抵抗体36が発熱し、加熱部31全体が加熱される。断熱部30は、加熱部31の熱をベース部29に伝えないようにするもので、例えば、アドセラム(登録商標)等のセラミックスで構成される。
【0028】
加熱部31の下側には、アタッチメント33が取り付けられている。アタッチメント33は、矩形板状のベース33aと、当該ベース33aの底面から突出するアイランド33bと、を有している。ベース33aは、加熱部31とほぼ同じ外形を有している。アイランド33bは、ベース33aよりも小さく、半導体チップ110と略同一サイズの四角形状である。このアタッチメント33は、加熱部31に対して着脱自在であり、取り扱う半導体チップ110の種類に応じて適宜交換される。なお、図8には、図示していないが、このアタッチメント33には厚み方向に貫通し、吸引ポンプに連通される吸引孔が形成されている。また、加熱部31や断熱部30、ベース部29には、この吸引孔と吸引ポンプとを連通する連通通路が形成されている。半導体チップ110は、この吸引孔を介して、アタッチメント33に吸着保持される。
【0029】
また、加熱部31の上側には、冷媒が流れる冷却通路42が形成されている。この冷却通路42は、冷媒供給源44に連通されており、冷却通路42の途中には、バルブ46が設けられている。コントローラ18は、バルブ46の開き量をコントロールすることで、冷媒の流量をコントロールする。冷却通路42に冷媒が流れることで、加熱部31およびこれに取り付けられたアタッチメント33が冷却される。
【0030】
ここで、従来のボンディングヘッド14においても、発熱抵抗体36を加熱部31に均等に分散配置することで加熱部31の温度分布をある程度均一にできる。しかしながら、加熱対象である半導体チップ110の吸熱レートは、当該半導体チップ110の外側に近づくにつれて高くなる。そのため、従来技術では、加熱部31の温度分布を均一にしたとしても、加熱対象である半導体チップ110の温度は、外側に近づくにつれて低くなりやすかった。
【0031】
図3は、半導体チップ110の温度分布の一例を示すグラフである。図3において、横軸は、半導体チップ110内の位置を、縦軸は、半導体チップ110の温度(以下「チップ温度」と略す)を、それぞれ示している。また、図3において、「Cc」は、半導体チップ110の中心位置を、「Co」は、半導体チップ110の端部位置を、それぞれ示している。
【0032】
加熱系統を一つしか有さないボンディングヘッド14で半導体チップ110を加熱した場合、チップ温度は、図3の実線で示すように、端部に近づくにつれて低くなる。換言すれば、従来のボンディングヘッド14では、半導体チップ110の温度分布にばらつきが生じやすかった。このように半導体チップ110の温度分布が不均一な場合、バンプ116の溶融状態やNCF118の軟化または硬化状態が場所によって異なってしまい、半導体チップ110の接合不良や、半導体チップ110と基板100(または他の半導体チップ110)との間のギャップ量が不均一になる等の問題が招く。
【0033】
そこで、本明細書では、チップ温度の分布を均一にするために、加熱部31を水平方向に複数の加熱エリアに分割するとともに、各加熱エリアを互いに異なるドライバに電気的に接続している。これについて、図4図5を参照して説明する。
【0034】
図4は、製造装置10に搭載されるボンディングヘッド14の構成を示す模式図である。また、図5は、このボンディングヘッド14の加熱部31の概略平面図である。このボンディングヘッド14は、従来のボンディングヘッド14と同様に、上側から順に、ベース部29、断熱部30、加熱部31、およびアタッチメント33が並んで配置されている。このうち、ベース部29、断熱部30、アタッチメント33の構成は、従来のボンディングヘッド14とほぼ同じである。
【0035】
一方、本例の加熱部31は、第一加熱エリア32aおよび第二加熱エリア32bに分割されている点で従来技術と相違する。具体的に説明すると、本例の加熱部31は、略矩形の第一加熱エリア32aと、当該第一加熱エリア32aの外周囲を取り囲む角環形状の第二加熱エリア32bと、に分割されている。第一加熱エリア32aには、第一発熱抵抗体36aが、第二加熱エリア32bには、第二発熱抵抗体36bが、それぞれ、埋め込まれている。さらに、第一加熱エリア32aには、当該第一加熱エリア32aの温度を検出する第一温度センサ34aが、第二加熱エリア32bには、当該第二加熱エリア32bの温度を検出する第二温度センサ34bが、それぞれ取り付けられている。
【0036】
ここで、一つの加熱エリアに対応する温度センサ34a,34bは、隣接する他の加熱エリアとの境界から離間した位置に設けてもよい。例えば、第一温度センサ34aは、第一加熱エリア32aの中央付近に、第二温度センサ34bは、第二加熱エリア32bの外側端部付近に、取り付けてもよい。かかる構成とすることで、各温度センサ34a,34bが、隣接する他の加熱エリアの温度の影響を受けにくくなる。
【0037】
第一発熱抵抗体36aおよび第二発熱抵抗体36bは、それぞれ、第一ドライバ38aおよび第二ドライバ38bにより通電される。第一ドライバ38aは、所望の電流を第一発熱抵抗体36aに印加するための電源回路を有する。この第一ドライバ38aには、第一温度センサ34aでの検出温度(以下「第一エリア検出温度Ta1」という)、および、コントローラ18に記憶されている第一エリア目標温度Ta1*、が入力される。第一ドライバ38aは、第一エリア検出温度Ta1と第一エリア目標温度Ta1*との差分に応じて、第一発熱抵抗体36aに印加する電流値を制御する。
【0038】
第二ドライバ38bは、所望の電流を第二発熱抵抗体36bに印加するための電源回路を有する。この第二ドライバ38bには、第二温度センサ34bの検出温度(以下「第二エリア検出温度Ta2」という)、および、コントローラ18に記憶されている第二エリア目標温度Ta2*、が入力される。第二ドライバ38bは、第二エリア検出温度Ta2と第二エリア目標温度Ta2*との差分に応じて、第二発熱抵抗体36bに印加する電流値を制御する。
【0039】
なお、図4図5では、二つの加熱エリア32a,32bの境界を明確にするために、二つの加熱エリア32a,32bの間に隙間を図示している。しかし、実際には、二つの加熱エリア32a,32bの間の隙間は無くてもよい。また、第一加熱エリア32aと第二加熱エリア32bは、機械的に分離している必要はなく、第一発熱抵抗体36aが埋め込まれる第一加熱エリア32aと、第二発熱抵抗体36bが埋め込まれる第二加熱エリア32bと、は、切れ目なく繋がっていてもよい。すなわち、加熱部31は、単一のセラミックスで構成されてもよい。このように加熱部31を単一のセラミックスで構成することで、加熱部31の平坦度等が担保しやすくなり、半導体チップ110をより均等に加圧できる。
【0040】
また、本例では、加熱系統だけでなく、冷却系統も複数設けている。すなわち、加熱部31の上側には、第一加熱エリア32aおよび第二加熱エリア32bそれぞれに対応して設けられた第一冷却通路42aおよび第二冷却通路42bが設けられている。各冷却通路42a,42bは、冷媒供給源44に連通されており、当該冷却通路42a,42bの途中に設けられたバルブ46a,46bの開閉量を制御することで、各冷却通路42a,42bに流れる冷媒流量を変更できる。このバルブ46a,46bの開閉量は、コントローラ18により制御される。換言すれば、コントローラ18は、二つの冷却通路42a,42bそれぞれの冷媒の流れを互いに独立して制御できる。各冷却通路42a,42bに、冷媒が流れることで、対応する加熱エリア32a,32bが冷却される。
【0041】
ここで、これまでの説明で明らかな通り、本例では、第一加熱エリア32aおよび第二加熱エリア32bそれぞれの加熱温度を独立して制御可能である。コントローラ18は、半導体チップ110をボンディングする際には、当該半導体チップ110の温度分布が均一になるように、2つ加熱エリア32a,32bの温度を制御する。具体的には、コントローラ18は、半導体チップ110の温度分布を均一にでき得るエリア目標温度Ta1*,Ta2*を第一、第二ドライバ38a,38bに入力する。より具体的には、コントローラ18は、外側に位置する第二加熱エリア32bのエリア目標温度Ta2*として、内側に位置する第一加熱エリア32aのエリア目標温度Ta1*より高温の値を第二ドライバ38bに入力する。
【0042】
図6は、半導体チップ110をボンディングする際のエリア検出温度Ta1,Ta2の経時的変化を示すグラフである。図6において、横軸は、時間を、縦軸は、エリア検出温度を示している。また、図6において、太線は、第一エリア検出温度Ta1を、細線は、第二エリア検出温度Ta2を、それぞれ示している。図6に示すように、本例では、第一エリア検出温度Ta1が、第一エリア目標温度Ta1*になり、第二エリア検出温度Ta2が、第一エリア目標温度Ta1*よりも高い。第二エリア目標温度Ta2*になるように、二つのヒータ36a,36bの駆動を制御している。
【0043】
なお、発熱抵抗体36a,36bの通電制御のみでは、微妙な温度コントロールが難しい場合がある。その場合には、発熱抵抗体36a,36bの通電と並行して、冷却通路42a,42bへの冷媒供給を行ってもよい。例えば、第二エリア検出温度Ta2の昇温レートが、目標よりも高い場合、コントローラ18は、第二冷却通路42bに設けられたバルブ46bの開度を増加させて、第二冷却通路42bに流れる冷媒流量を一時的に増加させてもよい。このように、発熱抵抗体36a,36bの通電制御と、冷媒流量の制御と、を並行して行うことで、各加熱エリア32a,32bをより精度よく加熱できる。
【0044】
いずれにしても、外側に位置する第二加熱エリア32bが内側に位置する第一加熱エリア32aよりも高温になることで、吸熱レートの高い半導体チップ110の端部付近も、中央付近と同様に温度上昇させることができる。そして、結果として、本例によれば、半導体チップ110の温度分布を均一に近づけることができる。
【0045】
コントローラ18は、半導体チップ110を均等に加熱するために、第一エリア目標温度Ta1*および第二エリア目標温度Ta2*を予めメモリに記憶している。このエリア目標温度Ta1*,Ta2*は、工程ごとに用意されている。すなわち、コントローラ18は、仮圧着工程で用いるエリア目標温度Ta1*,Ta2*と、本圧着工程で用いるエリア目標温度Ta1*,Ta2*と、を記憶している。
【0046】
また、半導体チップ110の吸熱レートの分布は、半導体チップ110の種類によって異なるため、半導体チップ110を均一に加熱できるエリア目標温度T1*,T2*は、半導体チップ110の種類に応じて異なる。そのため、エリア目標温度Ta1*,Ta2*は、取り扱う半導体チップ110の種類ごとにも用意されている。
【0047】
コントローラ18は、こうしたエリア目標温度Ta1*,Ta2*を取得するために、半導体装置の製造に先立って、エリア目標温度を取得する目標取得処理を実行してもよい。図7は、目標取得処理の流れを示すフローチャートである。
【0048】
目標取得処理では、まず、サンプルチップに、内側温度センサおよび外側温度センサを取り付ける(S10)。ここで、サンプルチップは、実際の半導体装置の製造で用いられる半導体チップ110と同種の半導体チップ110である。内側温度センサは、このサンプルチップの中央付近に、外側温度センサは、サンプルチップの端部付近に取り付けられる。以下では、内側温度センサでの検出温度を「第一チップ検出温度Tc1」と呼び、外側温度センサでの検出温度を「第二チップ検出温度Tc2」と呼ぶ。
【0049】
コントローラ18は、ボンディングヘッド14を駆動して、このサンプルチップを基板100に載置させる(S12)。サンプルチップが基板100に載置されれば、続いて、コントローラ18は、第一エリア検出温度Ta1が、第一仮目標温度Tt1に、第二エリア検出温度Ta2が、所定の第二仮目標温度Tt2に、達するまで発熱抵抗体36a,36bを加熱させる(S14)。ここで、第一仮目標温度Tt1および第二仮目標温度Tt2は、互いに同じ値でもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
Ta1=Tt1、Ta2=Tt2となれば、コントローラ18は、その時点での第一チップ検出温度Tc1および第二チップ検出温度Tc2を取得する(S16)。コントローラ18は、取得されたチップ検出温度Tc1,Tc2と、半導体チップ110の目標温度Tdefと、の差分を第一差分値ΔT1、第二差分値ΔT2として算出する(S18)。ここで、仮圧着工程で用いるエリア目標温度Ta1*,Ta2*を取得する場合、目標温度Tdefは、仮圧着用温度である。また、本圧着工程で用いるエリア目標温度Ta1*,Ta2*を取得する場合、目標温度Tdefは、本圧着用温度である。
【0051】
続いて、コントローラ18は、この第一差分値の絶対値|ΔT1|および第二差分値の絶対値|ΔT2|を、許容誤差Δdefと比較する(S20)。比較の結果、|ΔT1|が許容誤差Δdef以下、かつ、|ΔT2|が許容誤差Δdef以下の場合(S20でYesの場合)、現在の仮目標温度Tt1,Tt2が適切であると判断できる。したがって、この場合、コントローラ18は、現在の第一仮目標温度Tt1を第一エリア目標温度Ta1*、第二仮目標温度Tt2を第二エリア目標温度Ta2*としてメモリに記憶する(S24)。
【0052】
一方、比較の結果、|ΔT1|が許容誤差Δdef超過、または、|ΔT2|が許容誤差Δdef超過の場合(S20でNoの場合)、コントローラ18は、仮目標温度Tt1,Tt2を修正する(S22)。この仮目標温度Tt1,Tt2の修正方法は、差分値ΔT1,ΔT2を低減できるようなものであれば、特に限定されない。したがって、例えば、差分値ΔT1,ΔT2に所定の係数K1,K2を乗算した値を、現在の仮目標温度Tt1,Tt2から減算した値を修正後の仮目標温度Tt1,Tt2として算出してもよい。すなわち、Tt1=Tt1-ΔT1・K1、Tt2=Tt2-ΔT2・K2としてもよい。
【0053】
仮目標温度Tt1,Tt2が算出できれば、コントローラ18は、再び、ステップS14~S22の処理を繰り返す。そして、最終的に、|ΔT1|≦Δdef、かつ、|ΔT2|≦Δdefとなり、ステップS24が実行されれば、エリア目標温度の取得処理は終了となる。
【0054】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、加熱部31が、第一加熱エリアと、第一加熱エリアを水平方向に囲む第二加熱エリアと、に分割され、この第一、第二加熱エリアが独立して温度制御可能であれば、その他の構成は、変更されてもよい。例えば、これまでの説明では、加熱部31を、第一加熱エリア32aと、その周囲を取り囲む第二加熱エリア32bと、に分割しているが、加熱部31は、より多数のエリアに分割されてもよい。例えば、加熱部31は、略矩形の第一加熱エリアと、第一加熱エリアを取り囲むロ字状の第二加熱エリアと、第二加熱エリアを取り囲むロ字状の第三加熱エリアと、に分割されてもよい。また、上述の説明では、加熱対象物の温度分布が均一になるように、二つの加熱エリアを独立して温度制御している。しかし、加熱対象物の温度分布は、ボンディングの種類や加熱対象物の種類に応じて、適宜、変更されてもよい。例えば、コントローラは、加熱対象物の周縁部が中心部より高温になるように、第一、第二加熱エリアの温度を制御してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 製造装置、12 ピックアップユニット、14 ボンディングヘッド、16 ステージ、18 コントローラ、20 突き上げピン、22 ピックアップヘッド、26 第一カメラ、29 ベース部、30 断熱部、31 加熱部、32a 第一加熱エリア、32b 第二加熱エリア、33 アタッチメント、33a ベース、33b アイランド、34 温度センサ、36 発熱抵抗体、38 ドライバ、42 冷却通路、44 冷媒供給源、46 バルブ、100 基板、102 基板電極、110 半導体チップ、116 バンプ、120 ダイシングテープ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8