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特許7209410水洗トイレ節水システム及びトイレ洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】水洗トイレ節水システム及びトイレ洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   E03D 5/12 20060101AFI20230113BHJP
   E03D 11/10 20060101ALI20230113BHJP
   E03D 11/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E03D5/12
E03D11/10
E03D11/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022136481
(22)【出願日】2022-08-30
【審査請求日】2022-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519300301
【氏名又は名称】株式会社アルソナ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】飯高 友之
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-303639(JP,A)
【文献】特開2019-203256(JP,A)
【文献】特開昭63-107631(JP,A)
【文献】特許第7175064(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/10-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大便器の排出口にフラッパー弁を有する簡易水洗トイレ用の大便器を備え、この大便器使用ごとに、浄水タンクから大便器に1回350cc~500ccの洗浄水を流して汚物を横引配管に貯め置くように構成し、
浄水タンクから横引配管に連続する送水管を通して大便器の洗浄用とは別の圧送用の洗浄水を横引配管に送水するフラッシング装置を設け、
フラッシング装置による1回6~28リットルの送水で横引配管に貯め置いた2~5回分の汚物をまとめて圧送するように構成したことを特徴とする水洗トイレ節水システム。
【請求項2】
前記フラッシング装置は、前記浄水タンク内に、前記送水管を開閉する送水弁と、送水弁に連結され送水弁の開閉操作をする送水レバーと、前記浄水タンク内の水量を調整するボールタップとを備えた請求項1記載の水洗トイレ節水システム。
【請求項3】
前記フラッシング装置の前記送水管は、前記浄水タンクから前記横引配管に直接連結するように設けたフラッシング管とする請求項1又は2記載の水洗トイレ節水システム。
【請求項4】
前記フラッシング装置の前記送水管に前記大便器の排水口を使用すると共に、前記大便器のフラッパー弁にバランス式開閉弁を配置した請求項1又は2記載の水洗トイレ節水システム。
【請求項5】
大便器の排出口にフラッパー弁を有する簡易水洗トイレ用の大便器を備え、この大便器を使用するごとに汚物を横引配管に貯め置くように構成し、大便器の使用回数に応じて横引配管内に汚物搬送用の搬送水を流す水洗式トイレのトイレ洗浄方法において、
簡易水洗用の大便器に排出した汚物を1回350cc~500ccの洗浄水を流して横引配管Pに溜め置き、
浄水タンク内の洗浄水を横引配管に圧送するフラッシング装置により、横引配管内に貯め置いた2~5回分の汚物を1回6~28リットルの洗浄水で圧送することを特徴とするトイレ洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平常時に水洗トイレで使用する水量を大幅に節水する水洗トイレ節水システム及びトイレ洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、横引配管内の汚物の搬送を良好にする汚物搬送システムが記載されている。このシステムでは、大便器の排水口から横引配管を通し汚物を搬送するシステムにおいて、大便器の使用回数または使用時間をカウントし、所定のカウント値に達すると、大便器から横引配管に、大便器洗浄水とは別の汚物搬送用の水を流すように構成したシステムである。
【0003】
すなわち、大便器の使用ごとに6リットル程度流す洗浄水をできるだけ節水するために、使用回数や使用時間をカウントし、所定の使用回数や時間に応じて洗浄水とは別の汚物搬送用の水として1回10リットル程度の水を大便器から横引配管に流すように構成したものである。
【0004】
特許文献2に、節水時において横引配管内の汚物搬送を可能にする便器システムが記載されている。この便器システムは、洗浄水の供給量が多い平常モードと、洗浄水の供給量が少ない節水モードとを変更する供給モード変更手段を備えたものである。
【0005】
平常モードとは通常使用する洗浄水を5~6リットルとする。節水モードとは断水時を想定したもので、洗浄水を1リットル程度に制限する。この節水モードに切り替えると、汚物が横引配管内に残留してしまうので、洗浄水タンクに設けたインナタンクに、バケツ等を用いて大量の搬送水を流し込むことで残留した汚物を下水まで搬送するシステムである。
【0006】
一方、1回の洗浄水量が500cc以下の簡易水洗トイレが一般に使用されている(特許文献3参照)。この簡易水洗トイレは、汲取り式トイレの一種で、公共下水道の整備が遅れている地域では、単純な汲み取り式よりも衛生的であり、水洗式便所により近い実用性が得られることから、単純な汲み取り式に代えて、現在多くの簡易水洗トイレが普及している。
【0007】
この簡易水洗トイレは、洗浄水と共に汚物を汚物タンクに落下させて溜めるので、大便器の排出口は汚物タンクに向いた鉛直直線状を成す。そのため、この排出口にフラップ弁を開閉自在に装着し、汚物タンクから臭気が逆流するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4094797号公報
【文献】特開2019-230256号公報
【文献】特開昭63-107631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の汚物搬送システムは、大便器の洗浄水を節水しすぎると、汚物が横引配管内に滞留してしまうので、横引配管に10リットル程度の水を流して滞留した汚物を搬送するシステムである。尚、このシステムは、水洗便器で通常使用する洗浄水を6リットルより少なくして節水する場合に対応するものである。
【0010】
ところが、搬送用の水を大便器から横引き配管に流す構造なので、搬送用の水の勢いが大便器の排出路を通過する際に弱まる不都合がある。すなわち水洗式の大便器では、配管から臭気の逆流を防止するため底部に水溜まり状のトラップを設けている。このトラップは、排出路の一部を上向きに屈曲することで一部の水が排出されず水溜まりになるように構成している。
【0011】
したがって、このような排出路に搬送用の水を流した場合、10リットル程度の水の勢いはこのトラップで減衰してしまい、横引配管内の汚物を十分に搬送することができなくなるおそれがある。
【0012】
しかも、通常使用する6リットル程度の洗浄水をどこまで節水可能であるかについては示されていない。すなわち、一般的な水洗式の大便器は、底部に水溜まり状のトラップを設けているため、このトラップを超えられない水量まで節水することはできない構造である。そのため、この種の便器は、6リットル程度の洗浄水を節水するとしても大幅な節水はできない構造であることが知られている。
【0013】
一方、特許文献2に記載の便器システムでは、水洗式トイレのトラップの代わりに簡易水洗トイレ用のフラッパー弁を設けたものである。そして、平常時は、5~6リットル程度の洗浄水を使用し、非常時(節水時)は、1リットル程度の洗浄水を使用する。そのため、非常時は汚物が横引配管内に残留してしまうことから、バケツ等を用いて大量の搬送水を大便器から横引配管内に直接流し込むように構成している。
【0014】
また、バケツによる搬送水の代わりに横引配管の下流側に汚水貯留槽を設け、この汚水貯留槽に溜めた汚水を非常時の搬送水として利用する記載もある。この汚水貯留槽は、横引配管の上流側に水中ポンプで汚水搬送して循環させることで、横引配管内に残留している汚物を搬送する構成である。
【0015】
このように、この便器システムにおける節水モードとは、断水等の非常時に洗浄水タンク内の水を節水するモードであり、通常使用する洗浄水を節水するものではない。すなわち、断水が解消されると非常時の節水モードから平常モードに切り替えて、洗浄水は通常の5~6リットルに戻される。このように、この便器システムは、平常時の洗浄水を継続的に節水するシステムではなかった。
【0016】
一方、特許文献3に記載のごとく、通常使用時に1回の洗浄水量が500cc以下の簡易水洗トイレが普及している。この簡易水洗トイレは、汚物を汚物タンクに溜め込む汲取り式トイレであるから、汚物タンクの貯留量を確保するために、洗浄水をできるだけ節水したものである。
【0017】
一部の簡易水洗トイレでは、汚物タンクの代わりに下水管に至る排水管に連結して水洗トイレに使用可能なユニットも提供されている。ところが、排水管に連結した簡易水洗トイレは、横引配管内に汚物が滞留しないようにするため、洗浄水の量を5~6リットルに変更されるので、平常時の洗浄水量を500cc以下にする簡易水洗トイレの節水機能は失われてしまう。
【0018】
そこで本発明は上述の課題を解決すべく創出されたもので、簡易水洗トイレの節水機能を通常使用する水洗式トイレに活用することで、水洗式トイレの平常時の使用水量が大幅に節水される水洗トイレ節水システム及び水洗トイレ洗浄方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、大便器20の排水口22にフラッパー弁21を有する簡易水洗トイレ用の大便器20を備え、この大便器20使用ごとに、浄水タンク10から大便器20に1回350cc~500ccの洗浄水を流して汚物を横引配管Pに貯め置くように構成し、
浄水タンク10から横引配管Pに連続する送水管を通して大便器20の洗浄用とは別の圧送用の洗浄水を横引配管Pに送水するフラッシング装置30を設け、
フラッシング装置30による1回6~28リットルの送水で横引配管Pに貯め置いた2~5回分の汚物をまとめて圧送するように構成したものである。
【0020】
第2の手段の前記フラッシング装置30は、前記浄水タンク10内に、前記送水管を開閉する送水弁32と、送水弁32に連結され送水弁32の開閉操作をする送水レバー33と、浄水タンク10内の水量を調整するボールタップ34とを備えたものである。
【0021】
第3の手段の前記フラッシング装置30の前記送水管は、前記浄水タンク10から前記横引配管Pに直接連結するように設けたフラッシング管31とするものである。
【0022】
第4の手段の前記フラッシング装置30の前記送水管に前記大便器20の排水口22を使用すると共に、前記大便器20のフラッパー弁21にバランス式開閉弁を配置している。
【0023】
第5の手段は、大便器20の排出口にフラッパー弁21を有する簡易水洗トイレ用の大便器20を備え、この大便器20を使用するごとに汚物を横引配管Pに貯め置くように構成し、大便器20の使用回数に応じて横引配管P内に汚物搬送用の搬送水を流す水洗式トイレのトイレ洗浄方法において、
簡易水洗用の大便器20に排出した汚物を1回350cc~500ccの洗浄水を流して横引配管Pに溜め置き、
浄水タンク10内の洗浄水を横引配管Pに圧送するフラッシング装置30により、横引配管P内に貯め置いた2~5回分の汚物を1回6~28リットルの洗浄水で圧送するトイレ洗浄方法にある。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、簡易水洗用の大便器を水洗式トイレに使用し、横引配管に貯め置いた2~5回分の汚物に対し、フラッシング装置から6~28リットルの搬送水を直接供給することで、平常時に水洗トイレで使用する水量を大幅に節水しながら長期にわたる使用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例を示す概略断面図である。
図2】本発明のフラッシング装置の一実施例を示す切欠き正面図である。
図3】本発明のフラッシング装置の一実施例を示す切欠き平面図である。
図4】本発明の他の実施例を示す概略断面図である。
図5】本発明のフラッシング装置の他の実施例を示す切欠き正面図である。
図6】本発明のフラッシング装置の他の実施例を示す切欠き平面図である。
図7】本発明のバランス式開閉弁を示す要部側断面図である。
図8】本発明の強制式開閉弁を備えた大便器を示す要部側断面図である。
図9】本発明の実験装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明節水システムは、水洗式トイレの日常的に使用する水量を大幅に節水するシステムであり、簡易水洗トイレの節水機能を通常使用する水洗式トイレに活用した水洗トイレ節水システムである。
【0027】
大便器20は、簡易水洗用の大便器20を使用し、この大便器20に排出した汚物を1回350cc~500ccの洗浄水と共に横引配管Pに溜め置くように構成している。
【0028】
簡易水洗用の大便器20とは、500cc以下の洗浄水を流して洗浄するもので、大便器20の開口底部にフラッパー弁21と称する揺動自在な弁を設けて排水口22から臭気が逆流するのを防いでいる。さらに、このフラッパー弁21の下方に直線状を成す排水口22を有している(図1参照)。本来の簡易水洗用のトイレは、この排水口22の下に設置した汚物タンクに汚物を溜め込む汲取り式トイレであるが、本発明において、汚物はフラッパー弁21から排水口22を通して横引配管Pに貯め置かれる(図1図4参照)。
【0029】
フラッパー弁21には、バランス式開閉弁21A(図7参照)や、強制式開閉弁21B(図8参照)があり、それぞれ1回ごとの洗浄水量が異なる。
【0030】
バランス式開閉弁21Aは、洗浄水や汚物の重量で開き、錘21Aaの作用で閉じる揺動自在な弁である(図7参照)。このバランス式開閉弁21Aは、1回の洗浄水量を350ccとするもので、フラッパー弁21の中でも比較的少ない洗浄水での洗浄が可能になっている。
【0031】
強制式開閉弁21Bは、大便器20の開口底部に水を溜める機構を有する(図8参照)。そして弁の開閉操作は手動等で強制的に開閉する。図示例では、レバー21Baを介して強制式開閉弁21Bを開き(同図(ロ)参照)、開いた強制式開閉弁21Bはスプリング21Bbの弾性力で元の位置に戻る機構である(同図(イ)参照)。強制式開閉弁21Bの1回の洗浄水量は溜め水と合わせて500ccの洗浄水を使用し、特に臭気の逆量を抑える効果が高い弁である。
【0032】
このように、本発明で使用する大便器20は、現在使用されている簡易水洗用トイレのバランス式開閉弁21Aや強制式開閉弁21Bを備えた大便器20、すなわち、洗浄水量350cc~500ccの大便器20を選択使用する。また、浄水タンク10には、この大便器20に洗浄水を流すタンクバルブ11と、タンクバルブ11の開閉操作をするレバーハンドル12とを備えている(図2図5参照)。
【0033】
一方、横引配管Pに貯め置いた汚物を浄水タンク10内の洗浄水で圧送するフラッシング装置30を設ける。すなわち、浄水タンク10内の洗浄水は、大便器20の洗浄に使用する他、横引配管Pに貯め置いた汚物を圧送する際にも使用する。
【0034】
図1乃至図3のフラッシング装置30は、浄水タンク10から横引配管Pに連続する送水管としてフラッシング管31を設けたものである。そして、このフラッシング管31を開閉する送水弁32と、送水弁32に連結され送水弁32の開閉操作をする送水レバー33と、浄水タンク10内の水量を調整するボールタップ34とを備えている(図2参照)。
【0035】
このフラッシング装置30の基本構成は、水洗便器の浄水タンク10内に設置する一般的な機構と同様であるが、フラッシング装置30は、大便器20の洗浄用とは別に圧送用の洗浄水を横引配管Pに送水する装置である。すなわち、送水レバー33が操作されると、送水弁32から6~28リットルの搬送水がフラッシング管31を通して横引配管Pに供給される。送水レバー33は、カウンター13のカウント数で自動的に操作される。また、使用者がカウント数を見て手動で操作することも可能である。
【0036】
このカウンター13は、大便器20の使用回数をカウントするもので、使用回数が2~5回の使用で送水レバー33が作動し送水弁32が開くように設定する。また、仮に1日経過しても設定の使用回数まで満たない場合は、タイマー(図示せず)が作動して送水弁32が開くように設定し、横引配管P内に汚物が付着するのを防止することも可能である。
【0037】
図4図6に示すフラッシング装置30は、浄水タンク10から横引配管Pに連続する送水管として、大便器20の排水口22を使用する構成である。この場合、大便器20のフラッパー弁21にバランス式開閉弁21Aを配置する。
【0038】
このバランス式開閉弁21Aは、洗浄水や汚物の重量で開き、錘21Aaの移動で閉じる揺動自在な弁である(図7参照)。そのため、横引配管Pに圧送する洗浄水を、大便器20の排水口22に流した場合でも、バランス式開閉弁21Aは自動的に開くので浄水タンク10内の圧送用の洗浄水を直接横引配管Pに流すことが可能になる(図4参照)。尚、バランス式開閉弁21Aに代えて強制式開閉弁21Bを使用する場合は、送水レバー33の作動にリンクして強制式開閉弁21Bを自動的に開閉する機構を設ける(図示せず)。
【0039】
また、フラッシング装置30の送水管に排水口22を使用する構成では、フラッシング装置30の送水弁32とタンクバルブ11とを兼用する(図5参照)。すなわち大便器20の使用ごとに、レバーハンドル12の操作で送水弁32が開くと、1回350ccの洗浄水が流れる。一方、カウンター13のカウント数でフラッシング装置30の送水レバー33が操作されると、送水弁32が開いた状態で6~28リットルの圧送用の洗浄水が横引配管Pに流れるように構成している。
【0040】
本発明トイレ洗浄方法は、簡易水洗用の大便器20から1回350cc~500ccの洗浄水と共に排出した汚物を横引配管Pに滞留させるもので、浄水タンク10のフラッシング装置30から横引配管Pに供給した1回6~28リットルの搬送水で貯め置いた2~5回分の汚物を圧送するトイレ洗浄方法である。
【0041】
実験によると、一般に使用されている横引配管Pに汚物を貯め置く限界は5回分までとなり、6回分からは横引配管Pに汚物が固まって詰まることが想定される。尚、大便器20の1回分の汚物量(0.30リットル)は、「内閣府(防災担当)が指定する避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」の「1日のし尿の発生量の目安」に基づく。
【0042】
実験は図9に示す装置で実施した。この装置はタンク40から横引配管50に搬送水を流すもので、この横引配管50を透明にして内部の搬送確認試験を行った。試験内容は次のとおりである。
【0043】
1 本装置は一般の配管状況を模したもので、総延長20m、配管勾配は2/100とし、横引配管50(VU透明100φ)に大曲エルボ(VULL90°)を2ヶ所設置した。縦引き配管には(VUDL90°エルボ)を3ヶ所に設置し、横引配管50までの落差は、タンク40の落とし口(口径38mm)から横引き配管の管底まで1,270mmとした。
2 本発明の試験に使用したトイレットペーパーの量は、日本トイレ協会HPの<トイレットペーパー使用量計算資料>に基づいて計算した(トイレットペーパーはシングルを使用)。
3 大便・小便によって使用量が異なるが、大便の容量を含み平均3m/1回使用すると仮定した。
4 大便よりトイレットペーパーの方が詰まりやすいため、トイレットペーパーの量を倍にし、条件を厳しくして検査した。
5 1回(3mのペーパーをボール状にして2個/1回)0.35リットルで流し、5回分を横引配管50に溜め置きして、搬送水を30リットル/1回から徐々に少なくして搬送できなくなる限界まで搬送水を横引配管50に流すことを繰り返した。
6 一方、溜め置きが5回を超える場合、トイレットペーパーが横引配管50内に機械的に詰まりだすことが分かった。
7 5回分が6リットルで問題なく流れることを確認した。6リットルより少なくした場合横引配管50にトイレットペーパ(汚物)が残留することが分かった。
試験の結果、横引配管50に溜め置きした5回分のトイレットペーパ(汚物)は、1回6リットルの搬送水で問題なく流れるものである。
【0044】
【表1】
【0045】
表1は、(イ)本発明システム(洗浄水量0.35リットル)と、(ロ)従来の節水システム(洗浄水量4.8リットル)と、(ハ)従来の一般の水洗トイレ(洗浄水量6リットル)との総水量(し尿共)を比較したものである。
【0046】
(イ)の本発明システムにおいて、使用回数1回で6リットルの搬送水を流した場合の「総水量(し尿共)」は6.65リットルになる。また、使用回数2回で6リットルの搬送水(フラッシング水量)を流した場合は7.30リットルになる。
【0047】
(ロ)の従来の節水システムは、他社から超節型として市販されているシステムで通常6リットル程度の洗浄水量を4.8リットルまで節水したものである。この「総水量(し尿共)」を確認すると、使用回数1回の場合は、5.10リットルで、使用回数2回の場合は10.20リットルになる。この結果、(イ)で使用回数2回の「総水量(し尿共)」が7.30リットルであるのに対し、(ロ)の使用回数2回の「総水量(し尿共)」は10.20リットルなので、2.9リットルの節水になり、節水率は28.43%になる。
【0048】
(ハ)一般の水洗トイレの「総水量(し尿共)」を比較すると、使用回数1回は5.10リットルで、使用回数2回では12.60リットルである。したがって、(イ)で使用回数2回の7.30リットルは、(ハ)と比べて5.3リットルの節水になり、節水率42.06%になる。
【0049】
これらの節水率は、大便器20の使用回数が増えるごとに節水率も高まる。現実的に横引配管50への溜め置きが可能な5回までの節水が可能になるので、(ロ)と比較すると最大68.73%、(ハ)の場合で最大70.63%もの節水が可能になる。
【0050】
【表2】
【0051】
表2は(イ)本発明システム(洗浄水量0.5リットル)と、(ロ)従来の節水システムと、(ハ)従来の一般の水洗トイレの洗浄水量を比較したものである。すなわち、(イ)の洗浄水量を0.35リットルから0.5リットルに増加した場合でも、2回目に6リットルの搬送水を流した「総水量(し尿共)」を比較すると、(ロ)、(ハ)と比べて約61%~68%の節水になる。
【0052】
本発明の搬送水は、この6リットルから最大28リットルまで増加することが可能である。すなわち、一般に水洗トイレ用の横引配管50として使用されている100φの横引配管50を想定すると、大便器20の使用回数で溜め置く回数は5回までが限度である。
【0053】
そこで、表1に示す(イ)本発明システム(洗浄水量0.35リツトル)の搬送水(フラッシング)の水量(6リットル/回)を増加した場合、(28リットル/回)を超えると(ハ)の一般の水洗トイレ5回分の総水量(し尿共)31.50リットルを超えることになる。したがって、本発明における搬送水の最大水量は(28リットル/回)で、最小水量は(6リットル/回)となる。
【0054】
尚、本発明の横引配管Pは一般使用されているサイズのものを前提としているが、これより大口径の横引配管Pを使用する場合は、横引配管Pに溜め置き可能な回数を増加し、搬送水の量を増加するなどの対応も可能になる。
【符号の説明】
【0055】
P 横引配管
10 浄水タンク
11 タンクバルブ
12 レバーハンドル
13 カウンター
20 大便器
21 フラッパー弁
21A バランス式開閉弁
21Aa 錘
21B 強制式開閉弁
21Ba レバー
21Bb スプリング
22 排水口
30 フラッシング装置
31 フラッシング管
32 送水弁
33 送水レバー
34 ボールタップ
40 タンク
50 横引配管
【要約】
【課題】平常時に使用する水洗式トイレの使用水量を大幅に節水することが実施可能な水洗トイレ節水システムを提供する。
【解決手段】使用回数に応じて横引配管Pに汚物搬送用の搬送水を流す水洗式トイレを設ける。1回の洗浄水量が350cc~500ccの簡易水洗用の大便器20を配置する。大便器20使用ごとに汚物が横引配管Pに貯め置くように構成する。横引配管Pに搬送水を直接供給するフラッシング装置30を浄水タンク10に設ける。貯め置いた2~5回分の汚物を6~28リットルの搬送水で圧送するように構成する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9