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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】射出成形金型及び射出成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/44 20060101AFI20230113BHJP
   B29C 45/04 20060101ALI20230113BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20230113BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B29C45/44
B29C45/04
B29C33/44
B22D17/22 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022192993
(22)【出願日】2022-12-01
【審査請求日】2022-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520057140
【氏名又は名称】ユウキ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】三宅 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】金森 義幸
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-094479(JP,A)
【文献】特開2011-031589(JP,A)
【文献】特開平07-241889(JP,A)
【文献】特開2017-193156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
B22D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四辺のそれぞれの内側面に曲がり込んだアンダーカット部を設けた枠体を成形するための射出成形金型であって、
前記枠体の四辺の外側面を前記枠体の外部の四方向から形成する四つの外側スライドコアと、
前記外側スライドコアに設けられ、当該外側スライドコアをアンギュラピンによって外側にスライド可能とする外側レール部と、
それぞれの第一内側製品面形成部によって、前記アンダーカット部の内側面を含む前記枠体の四辺の内側面のうち、対向する二辺の内側面を前記枠体の内部の二方向から形成する二つの第一内側スライドコアと、
前記第一内側スライドコアの第一内側製品面形成部のスライド方向と直角方向の両端部のそれぞれから所定の第一距離だけ中央側に寄せて設けられ、当該第一内側スライドコアをアンギュラピンによって内側にスライド可能とする第一内側レール部と、
それぞれの第二内側製品面形成部によって、前記枠体の四辺の内側面のうち、前記第一内側スライドコアが形成する二辺と異なる残りの二辺の内側面を前記枠体の内部の二方向から形成する二つの第二内側スライドコアと、
前記第一内側レール部が内側にスライドした際に、当該第一内側レール部が接触しないように、前記第二内側スライドコアの第二内側製品面形成部のスライド方向と直角方向の両端部のそれぞれから所定の第二距離だけ中央側に寄せて設けられ、当該第二内側スライドコアをアンギュラピンによって内側にスライド可能とする第二内側レール部と、
前記枠体の四角の内側面を前記枠体の内部の四方向から形成するとともに、前記第一内側スライドコアと前記第二内側スライドコアとそれぞれに合わさるように設けられる四つの傾斜ブロックと、
前記四つの傾斜ブロックに連結され、当該四つの傾斜ブロックを本金型の開閉方向から傾斜する方向に沿って移動可能であり、本金型の型開きの後に前記枠体の四角に前記四つの傾斜ブロックを押し出して、当該枠体の四角の内側面から離脱させる四つの傾斜ロッドと、
先端部が前記枠体の四辺のアンダーカット部の先端部を形成し、前記四つの傾斜ブロックの移動とともに、前記枠体のアンダーカット部の先端部を保持しながら、本金型の開閉方向に沿って移動させ、本金型の開閉方向と直角方向に対して相対的に当該枠体の移動を防止する少なくとも四つの移動防止ピンと、
を備える射出成形金型。
【請求項2】
前記第一内側レール部の第一距離は、前記第一内側製品面形成部のスライド方向と直角方向の両端部の第一全体距離の1/10~1/3の範囲内に設定され、
前記第二内側レール部の第二距離は、前記第二内側製品面形成部のスライド方向と直角方向の両端部の第二全体距離の1/10~1/3の範囲内に設定される、
請求項1に記載の射出成形金型。
【請求項3】
前記第一内側スライドコアと前記第二内側スライドコアとのそれぞれに対面する傾斜ブロックの合わせ面であって、本金型の開閉方向に対する合わせ面の角度は、本金型の開閉方向に対する前記傾斜ブロックの移動方向を示す傾斜角度よりも大きく設定され、且つ、10度~30度の範囲内である、
請求項1に記載の射出成形金型。
【請求項4】
四辺のそれぞれの内側面に曲がり込んだアンダーカット部を設けた枠体を成形するための射出成形金型であって、
前記枠体の四辺の外側面を前記枠体の外部の四方向から形成する四つの外側スライドコアと、
前記外側スライドコアに設けられ、当該外側スライドコアをアンギュラピンによって外側にスライド可能とする外側レール部と、
それぞれの第一内側製品面形成部によって、前記アンダーカット部の内側面を含む前記枠体の四辺の内側面のうち、対向する二辺の内側面を前記枠体の内部の二方向から形成する二つの第一内側スライドコアと、
前記第一内側スライドコアの第一内側製品面形成部のスライド方向と直角方向の両端部のそれぞれから所定の第一距離だけ中央側に寄せて設けられ、当該第一内側スライドコアをアンギュラピンによって内側にスライド可能とする第一内側レール部と、
それぞれの第二内側製品面形成部によって、前記枠体の四辺の内側面のうち、前記第一内側スライドコアが形成する二辺と異なる残りの二辺の内側面を前記枠体の内部の二方向から形成する二つの第二内側スライドコアと、
前記第一内側レール部が内側にスライドした際に、当該第一内側レール部が接触しないように、前記第二内側スライドコアの第二内側製品面形成部のスライド方向と直角方向の両端部のそれぞれから所定の第二距離だけ中央側に寄せて設けられ、当該第二内側スライドコアをアンギュラピンによって内側にスライド可能とする第二内側レール部と、
前記枠体の四角の内側面を前記枠体の内部の四方向から形成するとともに、前記第一内側スライドコアと前記第二内側スライドコアとのそれぞれに合わさるように設けられる四つの傾斜ブロックと、
前記四つの傾斜ブロックに連結され、当該四つの傾斜ブロックを本金型の開閉方向から傾斜する方向に沿って移動可能であり、本金型の型開きの後に前記枠体の四角に前記四つの傾斜ブロックを押し出して、当該枠体の四角の内側面から離脱させる四つの傾斜ロッドと、
先端部が前記枠体の四辺のアンダーカット部の先端部を形成し、前記四つの傾斜ブロックの移動とともに、前記枠体のアンダーカット部の先端部を保持しながら、本金型の開閉方向に沿って移動させ、本金型の開閉方向と直角方向に対して相対的に当該枠体の移動を防止する少なくとも四つの移動防止ピンと、
を備える射出成形金型の射出成形方法であって、
本金型の型開きが行なわれると、前記外側スライドコアを前記アンギュラピンによって外側にスライドさせ、前記第一内側スライドコアを前記アンギュラピンによって内側にスライドさせ、且つ、前記第二内側スライドコアを前記アンギュラピンによって内側にスライドさせるスライドコア工程と、
前記四つの傾斜ブロックを本金型の開閉方向から傾斜する方向に沿って移動させて、前記枠体の四角の内側面から離脱させるとともに、前記移動防止ピンを前記枠体のアンダーカット部の先端部の一部を保持させながら、本金型の開閉方向に沿って移動させる傾斜ブロック工程と、
を備える、射出成形金型を用いた射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形金型及び射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラスを使用した冷蔵庫の扉等の枠体を基本とする扉は、外板及び内板と、これらの間に介装された断熱材とから構成されており、樹脂成形品の一例である冷蔵庫扉の外板は、射出成形によって製作されている。この外板の平面板の外縁には、側面板が設けられ、且つ、側面板の外端からは内向き片(以下、リブという)が平面板とほぼ平行するようにして延出されている。外板の平面板にガラス板を設置した上で、このガラス板と外板のリブとの間に断熱材を注入し、内板を設置して、一体化している。
【0003】
ここで、外板を一体で成形する場合、この外板のリブは、平面板の内側全周囲にわたって形成される必要がある。しかしながら、樹脂成形品の製作時に用いられる射出成形金型では、これらのリブがアンダーカットとなり、そのアンダーカットが、外板の内側全周囲にわたって必要となることから、射出成形金型の構造が極めて複雑となる。
【0004】
そこで、製作を容易化するために、外板を分割した複数のパーツをそれぞれ別体で製造し、後から複数のパーツの端部を接合することで、一体化した外板を製造していた。
【0005】
しかしながら、このような構成及び手順を採用すると、部品点数が増加し、複数の製造工程及び接合工程が増加し、全体として製造コストが増大する。又、接合部分は、外部に露出するため、外観上、不具合が生じる。更に、外板に何らかの外力が加わると、接合部分の離脱により、外板全体が容易に破損する。つまり、様々な課題が存在していた。
【0006】
そこで、特開2000-94479号公報(特許文献1)には、多角形状とされた平面板の外縁に沿って側面板が立設され、且つ、側面板の外端からは平面板とほぼ平行するリブが延出されてなる樹脂成形品を製作する射出成形金型が開示されている。この射出成形金型において、成形用空間を介した上で移動側金型と対向配置される固定側金型には、平面板の角部それぞれと対応する位置毎に配設されて内向き方向に移動する角部移動ブロックと、平面板の辺部のそれぞれと対応する位置毎に配設されて内向き方向に移動する辺部移動ブロックとが設けられている。これにより、型開き後における角部移動ブロックを先ずもって内向き方向に移動させた後、引き続いて辺部移動ブロックを内向き方向に移動させるという2段階方式の作動が可能であるため、内側全周囲にわたるリブが形成された樹脂成形品であっても何らの不都合もなくアンダーカット処理を実行し得るとしている。
【0007】
又、特開2011-31589号公報(特許文献2)には、内向き溝状のアンダーカットが環状に設けられた成形品を製造するための射出成形金型が開示されている。この射出成形金型の可動金型は、可動側取付板と、可動側取付板の合わせ面側に固定されるスペーサブロックと、スペーサブロックの合わせ面側に固定される受け板と、を備える。又、可動金型は、受け板の合わせ面側中央部に固定されるセンターコアと、受け板の合わせ面側の外周部に前進後退可能に支持される可動側型板と、センターコアの外側を囲むためにその外側に沿って交互に配置される複数の第1のスライドコアと第2のスライドコアと、を備える。可動金型は、第1のスライドコアと第2のスライドコアがセンターコアと可動側型板との間の収容空間に嵌め込まれると共にアンダーカットの内側に相当する部分に嵌り込む。又、可動金型は、可動側取付板と受け板との間に両者の間隔を広げるための開放力を付与する開放手段と、可動側型板と受け板との広がる間隔を規制するストップボルトを備える。そして、可動金型は、成形品の硬化後に、開放手段によりセンターコアを相対的に後退させ、その後に第1のスライドコアと、第2のスライドコアを内側に順番に移動させる。開放手段は、型開きの前半段階に開放力を付与するものであり、型開きの後半段階に第1のスライドコアを内側スライドコア方式により移動させるために、第1のスライドコアには、アンダーカットよりも外側に突出する係合部を備える。固定金型と第1のスライドコアの係合部との一方にはアンギュラピンを、他方にはアンギュラピンが出入りする嵌合穴をそれぞれ備える。これにより、開放手段が開放力を付与することにより、型開きの前半段階で、第1及び第2のスライドコア等に対してセンターコアが相対的に後退し、第1のスライドコアが内側に移動するための移動用空間が形成される。そして、型開きの後半段階で、内側スライドコア方式によって、第1のスライドコアを内側に移動させるものなので、型開き後には、第2のスライドコアのみを移動させればよい。従って、型開き後にアンダーカットの処理に要する工程は、第2のスライドコアを移動させる1つの工程で済み、成形サイクルの短縮が可能となるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-94479号公報
【文献】特開2011-31589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、枠体を基本とする扉では、例えば、トップキャップ、ボトムキャップ、2つのサイドキャップのドアの4つの枠体部品と、ガラス板と、真空成形のインナードアと、ガスケットパッキンとの複数の部品で構成され、各部品を組み立てて、且つ、4つの枠体部品の端部を接合した後に、各部品間の隙間に断熱性のウレタンを注入することで製造される。このような製造方法では、上述のように、部品点数の増加、接合工程の増加、外観上の不備、全体強度の弱さ等の課題があるとともに、枠体部品の接合面からのウレタンの漏れが生じるという課題がある。一方で、全周部にアンダーカット形状を有する四角形の枠体を一体成形するための金型の製作には一定の難易度があった。
【0010】
ここで、特許文献1に記載の技術では、型開き後において、角部移動ブロックを内向き方向に移動させた後に、辺部移動ブロックを内向き方向に移動させる2段階方式であるため、2段階の工程が必要であり、時間が掛かるという課題がある。
【0011】
又、特許文献2に記載の技術では、開放手段により、型開きの前半段階で、センターコアが後退し、型開きの後半段階で、第1のスライドコアを内側に移動させるため、開放手段の設置が必要であり、金型の構造が複雑になり、開放手段の存在により、金型全体が巨大化するという課題がある。そのため、内向き溝状のアンダーカットが設けられた外板(枠体)の成形品の製造において、工程数が少なく、且つ、金型全体を小型化することが可能な射出成形金型が求められていた。
【0012】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、四辺のそれぞれの内側面にアンダーカット部を有する枠体を効率よく製造することが可能な射出成形金型及び射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る射出成形金型は、四辺のそれぞれの内側面に曲がり込んだアンダーカット部を設けた枠体を成形するための射出成形金型であって、四つの外側スライドコアと、外側レール部と、二つの第一内側スライドコアと、第一内側レール部と、二つの第二内側スライドコアと、第二内側レール部と、四つの傾斜ブロックと、四つの傾斜ロッドと、少なくとも四つの移動防止ピンと、を備える。四つの外側スライドコアは、前記枠体の四辺の外側面を前記枠体の外部の四方向から形成する。外側レール部は、前記外側スライドコアに設けられ、当該外側スライドコアをアンギュラピンによって外側にスライド可能とする。二つの第一内側スライドコアは、それぞれの第一内側製品面形成部によって、前記アンダーカット部の内側面を含む前記枠体の四辺の内側面のうち、対向する二辺の内側面を前記枠体の内部の二方向から形成する。第一内側レール部は、前記第一内側スライドコアの第一内側製品面形成部のスライド方向と直角方向の両端部のそれぞれから所定の第一距離だけ中央側に寄せて設けられ、当該第一内側スライドコアをアンギュラピンによって内側にスライド可能とする。二つの第二内側スライドコアは、それぞれの第二内側製品面形成部によって、前記枠体の四辺の内側面のうち、前記第一内側スライドコアが形成する二辺と異なる残りの二辺の内側面を前記枠体の内部の二方向から形成する。第二内側レール部は、前記第一内側レール部が内側にスライドした際に、当該第一内側レール部が接触しないように、前記第二内側スライドコアの第二内側製品面形成部のスライド方向と直角方向の両端部のそれぞれから所定の第二距離だけ中央側に寄せて設けられ、当該第二内側スライドコアをアンギュラピンによって内側にスライド可能とする。四つの傾斜ブロックは、前記枠体の四角の内側面を前記枠体の内部の四方向から形成するとともに、前記第一内側スライドコアと前記第二内側スライドコアとのそれぞれに合わさるように設けられる。四つの傾斜ロッドは、前記四つの傾斜ブロックに連結され、当該四つの傾斜ブロックを本金型の開閉方向から傾斜する方向に沿って移動可能であり、本金型の型開きの後に前記枠体の四角に前記四つの傾斜ブロックを押し出して、当該枠体の四角の内側面から離脱させる。少なくとも四つの移動防止ピンは、先端部が前記枠体の四辺のアンダーカット部の先端部を形成し、前記四つの傾斜ブロックの移動とともに、前記枠体のアンダーカット部の先端部を保持しながら、本金型の開閉方向に沿って移動させ、本金型の開閉方向と直角方向に対して相対的に当該枠体の移動を防止する。
【0014】
本発明に係る射出成形金型の射出成形方法は、スライドコア工程と、傾斜ブロック工程と、を備える。スライドコア工程は、本金型の型開きが行なわれると、前記外側スライドコアを前記アンギュラピンによって外側にスライドさせ、前記第一内側スライドコアを前記アンギュラピンによって内側にスライドさせ、且つ、前記第二内側スライドコアを前記アンギュラピンによって内側にスライドさせる。傾斜ブロック工程は、前記四つの傾斜ブロックを本金型の開閉方向から傾斜する方向に沿って移動させて、前記枠体の四角の内側面から離脱させるとともに、前記移動防止ピンを前記枠体のアンダーカット部の先端部の一部を保持させながら、本金型の開閉方向に沿って移動させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、四辺のそれぞれの内側面にアンダーカット部を有する枠体を効率よく製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る枠体の斜視図と射出成形金型の斜視図と平面図とである。
図2】本発明の実施形態に係る第一内側スライドコアと第二内側スライドコアの斜視図と、第一内側スライドコアと第二内側スライドコアとの内側へのスライドを示す斜視図とである。
図3】本発明の実施形態に係る傾斜ブロックの移動を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る射出成形金型の型開き前後を示す平面図と斜視図とである。
図5】本発明の実施形態に係る外側スライドコアと第一内側スライドコアと第二内側スライドコアとのスライドを示す平面図と、外側スライドコアと第一内側スライドコアを示す断面図とである。
図6】本発明の実施形態に係る外側スライドコアと第一内側スライドコアと第二内側スライドコアとのスライドを示す平面図と、第一内側スライドコアと第二内側スライドコアとの内側へのスライドを示す斜視図とである。
図7】本発明の実施形態に係る傾斜ブロックと移動防止ピンの移動を示す平面図と斜視図とである。
図8】本発明の実施形態に係る傾斜ブロックと移動防止ピンの移動完了を示す斜視図と断面図とである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0018】
本発明の実施形態に係る射出成形金型1は、図1に示すように、四辺のそれぞれの内側面に曲がり込んだアンダーカット部Uを設けた枠体Fを成形するための射出成形金型1であって、四つの外側スライドコア10と、外側レール部11と、二つの第一内側スライドコア20と、第一内側レール部21と、二つの第二内側スライドコア30と、第二内側レール部31と、四つの傾斜ブロック40と、四つの傾斜ロッド41と、少なくとも四つの移動防止ピン50と、を備える。
【0019】
ここで、枠体Fは、四辺がある長方形状の枠体であって、中央部分が開口されている。アンダーカット部Uは、枠体Fの内側面の全周方向に存在し、枠体Fの側面の下方から内側面に曲がり込んで構成されている。
【0020】
さて、四つの外側スライドコア10は、枠体Fの四辺の外側面を枠体Fの外部の四方向から形成する。ここでは、四つの外側スライドコア10は、それぞれの外側製品面形成部によって、枠体Fの四辺の外側面を形成している。外側レール部11は、外側スライドコア10に設けられ、当該外側スライドコア10をアンギュラピンによって外側にスライド可能とする。ここで、製品面形成部とは、スライドコアのうち、枠体F等の製品面を形成するための主要な構成部を意味する。又、外側レール部11は、外側スライドコア10のスライド方向と直角方向の両端部のそれぞれに設けられ、図示しない外側レールガイド部をスライドする。
【0021】
又、二つの第一内側スライドコア20は、それぞれの第一内側製品面形成部20aによって、アンダーカット部Uの内側面を含む枠体Fの四辺の内側面のうち、対向する二辺の内側面を枠体Fの内部の二方向から形成する。ここでは、二つの第一内側スライドコア20の第一内側製品面形成部20aは、枠体Fの長方形状の四辺のうち、二つの長辺の内側面を形成している。又、第一内側レール部21は、図2に示すように、第一内側スライドコア20の第一内側製品面形成部20aのスライド方向と直角方向の両端部20a1のそれぞれから所定の第一距離d1だけ中央側に寄せて設けられ、当該第一内側スライドコア20をアンギュラピンによって内側にスライド可能とする。尚、第一内側レール部21は、第一内側スライドコア20の第一内側レール設置部20bの両端部に設けられ、図示しない第一内側レールガイド部をスライドする。ここで、レール設置部とは、スライドコアのうち、レール部を設置するための主要な構成部を意味する。
【0022】
又、二つの第二内側スライドコア30は、それぞれの第二内側製品面形成部30aによって、枠体Fの四辺の内側面のうち、第一内側スライドコア20が形成する二辺と異なる残りの二辺の内側面を枠体Fの内部の二方向から形成する。ここでは、二つの第二内側スライドコア30は、枠体Fの長方形状の四辺のうち、二つの短辺の内側面を形成する。又、第二内側レール部31は、図2に示すように、第一内側レール部21が内側にスライドした際に、当該第一内側レール部21が接触しないように、第二内側スライドコア30の第二内側製品面形成部30aのスライド方向と直角方向の両端部30a1のそれぞれから所定の第二距離d2だけ中央側に寄せて設けられ、当該第二内側スライドコア30をアンギュラピンによって内側にスライド可能とする。尚、第二内側レール部31は、第二内側スライドコア30の第二内側レール設置部30bの両端部に設けられ、図示しない第二内側レールガイド部をスライドする。
【0023】
ここで、第一内側製品面形成部20aの両端部20a1のそれぞれから第一距離d1だけ第一内側製品面形成部20aの中央側に寄せて第一内側レール部21を設け、第一内側製品面形成部20aの両端部20a1のそれぞれと、第一内側レール設置部20bの第一内側レール部21との間には、何も設けられずに、空間が存在する。又、第二内側製品面形成部30aの両端部30a1のそれぞれから第二距離d2だけ第二内側製品面形成部30aの中央側に寄せて第二内側レール部31を設け、第二内側製品面形成部30aの両端部30a1のそれぞれと、第二内側レール設置部30bの第二内側レール部31との間には、何も設けられずに、空間が存在する。このように、第一内側レール設置部20bの両端部の長さを第一内側製品面形成部20aの両端部の長さよりも短くし、且つ、第二内側レール設置部30bの両端部の長さを第二内側製品面形成部30aの両端部の長さよりも短くして、第一内側レール部21と第二内側レール部31とのそれぞれに空間を設けることで、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とが内側にスライドして接近したとしても、第一内側レール設置部20bと第二内側レール設置部30bの両端部のそれぞれが干渉することなく移動することが可能であり、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とを出来るだけ内側にスライドさせることが出来るのである。
【0024】
従来であれば、第一内側レール設置部20bの両端部の長さを第一内側製品面形成部20aの両端部の長さと等しくし、且つ、第二内側レール設置部30bの両端部の長さを第二内側製品面形成部30aの両端部の長さと等しくすることで、第一内側レール部21と第二内側レール部31とのそれぞれのスライド性(摺動性)を良好にしたが、その場合は、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30との移動領域に限界が生じる。
【0025】
本発明では、第一内側レール部21と第二内側レール部31とのそれぞれのスライド性を損なわない程度に、第一内側レール設置部20bの両端部の長さを第一内側製品面形成部20aの両端部の長さよりも短くし、且つ、第二内側レール設置部30bの両端部の長さを第二内側製品面形成部30aの両端部の長さよりも短くしている。これにより、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30との移動領域を拡大することが可能になる。
【0026】
又、四つの傾斜ブロック40は、枠体Fの四角の内側面を枠体Fの内部の四方向から形成するとともに、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とのそれぞれに合わさるように(第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30との間に)設けられる。四つの傾斜ロッド41は、図3に示すように、四つの傾斜ブロック40に連結され、当該傾斜ブロック40を本金型1の開閉方向から傾斜する方向に沿って移動可能であり、本金型1の型開きの後に枠体Fの四角に四つの傾斜ブロック40を押し出して、当該枠体Fの四角の内側面から離脱させる。
【0027】
又、少なくとも四つの移動防止ピン50は、先端部50aが枠体Fの四辺のアンダーカット部Uの先端部Uaの一部を形成し、図3に示すように、四つの傾斜ブロック40の移動とともに、枠体Fのアンダーカット部Uの先端部Uaの一部を保持しながら、本金型1の開閉方向に沿って移動させ、本金型の開閉方向と直角方向に対して相対的に当該枠体Fの移動を防止する。図1では、移動防止ピン50は、一つの第一内側スライドコア20に対して二本設けられ、一つの第二内側スライドコア30に対して二本設けられ、合計八本の移動防止ピン50が存在する。又、傾斜ロッド41と移動防止ピン50は、例えば、一枚のエジェクタプレートにより支持され、このエジェクタプレートの移動により、傾斜ロッド41と移動防止ピン50は、同時に移動する。
【0028】
これにより、四辺のそれぞれの内側面にアンダーカット部Uを有する枠体Fを効率よく製造することが可能となる。即ち、本発明では、図2に示すように、第一内側レール部21を第一内側製品面形成部20aの両端部より中央側に設けるとともに、第二内側レール部31を第二内側製品面形成部30aの両端部より中央側に設けることで、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とが、それぞれ又は共に内側にスライドしたとしても、第一内側レール部21と第二内側レール部31とが接触することが無く、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とを枠体Fの四辺の内側面から離脱させることが出来る。つまり、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30との移動領域を拡大して、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とを出来るだけ枠体Fの内側に移動させることが出来る。そのため、枠体Fに内側面に曲がり込んだアンダーカット部Uがあったとしても、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とをアンダーカット部Uから引き離すことが可能となり、枠体Fの内側面の全周方向に存在するアンダーカット部Uを適切に形成することが出来るのである。
【0029】
例えば、本発明では、アンダーカット部Uの先端部Uaが枠体Fの内側面から所定の長さ(例えば、枠体Fの縦が250mm~900mm、横が180mm~660mmの場合、枠体Fの内側面からの長さは1mm~15mm)まで枠体Fの内側面に沿って突出している場合であっても、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とをコンパクトに内側にスライドさせて、アンダーカット部Uから引き離すことが出来る。
【0030】
次に、本発明では、図3に示すように、先端部50aによりアンダーカット部Uの先端部Uaの一部を形成する移動防止ピン50が、傾斜ブロック40の移動とともにアンダーカット部Uの先端部Uaの一部を保持しながら追従する。そのため、四つの傾斜ブロック40が、本金型1の開閉方向から傾斜する方向に沿って移動し、枠体Fの四角の内側面から離脱して、枠体Fの位置が不安定となったとしても、移動防止ピン50がアンダーカット部Uの先端部Uaの一部を保持することで、四つの傾斜ブロック40の離脱を円滑にするとともに、枠体Fの位置を安定化することが出来る。例えば、四つの傾斜ブロック40を枠体Fの四角の内側面から離脱して、アンダーカット部Uを形成させる際に、枠体Fの成形の収縮により、傾斜ブロック40の一部に枠体Fの一角が残り、枠体Fの離脱完了時に枠体Fの位置がずれて、次の工程が進まないことがある。本発明では、移動防止ピン50の先端部50aによりアンダーカット部Uの先端部Uaの一部を保持させることで、本金型1の開閉方向と直角方向に対して相対的に当該枠体Fの移動を防止し、枠体Fの位置を安定化することが出来る。これにより、例えば、次の工程の枠体Fの取り出しの際に、ロボット等の取り出し手段が枠体Fを落とさずに取り出すことが可能となる。尚、傾斜ブロック40と移動防止ピン50の移動が完了すると、例えば、取り出し手段によって枠体Fが取り出され、その後に、傾斜ブロック40と移動防止ピン50が同時に元の位置に戻ることになる。
【0031】
このように、本発明では、型開きの際に、スライドコア方式の工程を行い、次に、傾斜ブロック方式の工程を行うことで、アンダーカット部Uを内面側に有する枠体Fを効率よく製造することが出来る。これにより、枠体Fの低価格化、金型本体の低価格化、枠体Fの内側面に流し込むウレタン発泡工程での組立工数の削減、ウレタン漏れ等の不良ロスの削減、枠体Fの外側面の外観品質の向上(例えば、4部品の繋ぎ目を無くしたり、4部品の繋ぎ目の段差を無くしたりすること)を実現することが出来る。特に、本発明では、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30との構成に工夫を凝らし、移動防止ピン50を設けるという簡単な構成であるため、枠体Fが複雑な形状であるにもかかわらず、金型1の簡素化を実現している。
【0032】
ここで、第一内側レール部21の第一距離d1に特に限定は無いが、例えば、第一内側製品面形成部20aのスライド方向と直角方向の両端部20a1の第一全体距離d01の1/10~1/3の範囲内に設定される。ここでの第一内側製品面形成部20aの両端部20a1のそれぞれは第一内側製品面形成部20aの先端部に位置する。又、第二内側レール部31の第二距離d2に特に限定は無いが、例えば、第二内側製品面形成部30aのスライド方向と直角方向の両端部30a1の第二全体距離d02の1/10~1/3の範囲内に設定される。又、第二内側製品面形成部30aの両端部30a1のそれぞれは第二内側製品面形成部30aの先端部に位置する。これにより、第一内側レール部21と第二内側レール部31とのそれぞれのスライド性を損なうことなく、且つ、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30との強度も確保しながら、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30との移動領域を拡大することが出来る。
【0033】
一方、第一内側レール部21の第一距離d1が第一全体距離d01の1/10よりも短い場合や第二内側レール部31の第二距離d2が第二全体距離d02の1/10よりも短い場合は、第一内側レール部21と第二内側レール部31とが直ぐに接触してしまい、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30との移動領域を拡大することは出来ない。又、第一内側レール部21の第一距離d1が第一全体距離d01の1/3よりも長い場合や第二内側レール部31の第二距離d2が第二全体距離d02の1/3よりも長い場合は、第一内側レール部21と第二内側レール部31とのそれぞれのスライド性が損なわれたり、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30との強度も低下したりするため、好ましくない。第一内側レール部21の第一距離d1と、第二内側レール部31の第二距離d2とは、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30との移動領域や枠体Fのサイズや形状を踏まえて設定される。
【0034】
又、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とのそれぞれに対面する傾斜ブロック40の合わせ面40aであって、本金型1の開閉方向に対する合わせ面40aの角度αに特に限定は無いが、例えば、図3に示すように、例えば、本金型1の開閉方向に対する傾斜ブロック40の移動方向を示す傾斜角度βよりも大きく設定され、且つ、10度~30度の範囲内にすると好ましい。これにより、四角に存在する四つの傾斜ブロック40が、四つの傾斜ロッド41により本金型1の開閉方向から傾斜する方向に沿って同時に移動させたとしても、四つの傾斜ブロック40が、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30との対面から確実にすり抜けるとともに、四つの傾斜ブロック40を枠体Fの四角の内側面から適切に離脱することが可能となる。
【0035】
又、外側スライドコア10と、第一内側スライドコア20と、第二内側スライドコア30との冷却構成に特に限定は無いが、例えば、外側スライドコア10と、第一内側スライドコア20と、第二内側スライドコア30との底面から内部に向かって冷却管路を設けて、冷却管路に流水して、外側スライドコア10と、第一内側スライドコア20と、第二内側スライドコア30とを冷却させる。これにより、射出成形中に、外側スライドコア10と、第一内側スライドコア20と、第二内側スライドコア30とのそれぞれの熱膨張を防止し、枠体Fの製品寸法を安定化することが可能となる。又、第一内側スライドコア20と、第二内側スライドコア30との冷却が効率よく行われることで、傾斜ブロック40とのかじりを防止することが出来る。ここで、かじりとは、第一内側スライドコア20と、第二内側スライドコア30とのいずれかと傾斜ブロック40との接触圧力が強く、熱影響により接触表面が局部的に溶着することを意味する。
【0036】
又、傾斜ブロック40と、傾斜ロッド41との冷却構造に特に限定は無いが、例えば、傾斜ブロック40と、傾斜ロッド41との底面から内部に向かって冷却管路を設けて、冷却管路に流水して、傾斜ブロック40と、傾斜ロッド41とを冷却させる。これにより、上述と同様に、第一内側スライドコア20と、第二内側スライドコア30とのかじりを確実に防止するとともに、傾斜ロッド41をガイドするガイドとのかじりも確実に防止することが出来る。
【0037】
さて、次に、本発明の実施形態に係る射出成形金型1を用いて実行される射出成形方法を説明する。先ず、図1に示すように、先ず、それぞれのアンギュラピンによって、四つの外側スライドコア10が内側にスライドして、枠体Fの四辺の外側面を形成するとともに、二つの第一内側スライドコア20と、二つの第二内側スライドコア30とが外側にスライドして、枠体Fの四辺の内側面を形成する。四つの傾斜ブロック40が第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30との間に合わさって(嵌って)、枠体Fの四角の内側面を形成し、八つの移動防止ピン50が、枠体Fの四辺のアンダーカット部Uの先端部Uaの一部を形成する。四つの外側スライドコア10と、二つの第一内側スライドコア20と、二つの第二内側スライドコア30と、四つの傾斜ブロック40が移動側金型に配置される。これらの金型群が形成しない枠体Fの表面を形成する他の金型群が存在する場合は、他の金型群も配置される。そして、これらの金型群が固定側金型に配置されることで、型締めの状態となる。
【0038】
次に、固定側金型の所定の位置に設けられたゲート(樹脂注入口)から溶融樹脂が、四つの外側スライドコア10と、二つの第一内側スライドコア20と、二つの第二内側スライドコア30と、四つの傾斜ブロック40とを含む金型群の形成する空間に注入される。ここでゲートの種類に特に限定は無いが、例えば、ホットランナーバルブゲートであり、固定側金型の所定の二点の位置に設置され、溶融樹脂が注入される。ゲートの数に特に限定は無く、枠体Fのサイズや樹脂の種類等に応じて、二点~七点の範囲内に設定される。ゲートの位置は、例えば、樹脂の流動解析により適宜設定される。注入された樹脂は、空間内に充満されて、冷却されることで、この空間に対応する枠体Fが樹脂で形作られる。
【0039】
次に、樹脂の枠体Fの冷却が完了すると、固定側金型が移動側金型から切り離されることで、型開きが行なわれる。ここで、型開きによって、図3図4に示すように、外側レール部11は、外側スライドコア10をアンギュラピンPによって外側にスライドさせ、第一内側レール部21は、第一内側スライドコア20をアンギュラピンPによって内側にスライドさせ、且つ、第二内側レール部31は、第二内側スライドコア30をアンギュラピンPによって内側にスライドさせる(スライドコア工程)。
【0040】
具体的には、外側レール部11と、第一内側レール部21と、第二内側レール部31とのそれぞれには、アンギュラピンP用の傾斜貫通孔Hが設けられており、型締めの際には、外側レール部11と、第一内側レール部21と、第二内側レール部31とのそれぞれの傾斜貫通孔Hに、固定側金型に設けられたアンギュラピンPが装着されることで、四つの外側スライドコア10が内側にスライドするとともに、二つの第一内側スライドコア20と、二つの第二内側スライドコア30とが外側にスライドする。そして、型開きの際に、固定側金型から移動側金型を離間させると、固定側金型のアンギュラピンPのそれぞれが、外側レール部11と、第一内側レール部21と、第二内側レール部31とのそれぞれの傾斜貫通孔Hから抜け出す。これにより、外側レール部11が外側にスライドすることで、外側スライドコア10を外側にスライドさせるとともに、第一内側レール部21と第二内側レール部31とが内側にスライドすることで、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とを内側にスライドさせる。型開きの際に、外側スライドコア10と第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とを同時にスライドさせることで、生産効率を高めることが出来る。
【0041】
ここで、図2図5に示すように、第一内側レール部21を、第一内側製品面形成部20aのスライド方向と直角方向の両端部20a1のそれぞれから所定の第一距離d1だけ中央側に寄せて設けているとともに、第二内側レール部31を、第二内側製品面形成部30aのスライド方向と直角方向の両端部30a1のそれぞれから所定の第二距離d2だけ中央側に寄せて設けている。これにより、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とが、共に内側にスライドしたとしても、第一内側レール部21と第二内側レール部31とが接触することが無く、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とを枠体Fの四辺の内側面から離脱させることが出来る。
【0042】
さて、外側スライドコア10と第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30とのスライドが完了すると、次に、図7図8に示すように、四つの傾斜ロッド41が、四つの傾斜ブロック40を本金型1の開閉方向から傾斜する方向に沿って移動させて、枠体Fの四角の内側面から離脱させるとともに、八つの移動防止ピン50が、枠体Fのアンダーカット部Uの先端部Uaの一部を保持しながら、本金型1の開閉方向に沿って移動する(傾斜ブロック工程)。
【0043】
そして、四つの傾斜ブロック40の押し上げと、八つの移動防止ピン50の移動が完了すると、ここから、ロボット等の取り出し手段が枠体Fを取り出すことで、枠体Fを取得することが出来る。今度は、四つの傾斜ロッド41と、八つの移動防止ピン50が、先ほどと逆方向に移動して、元の位置に戻り、再度、移動側金型が固定側金型に向かって戻ることで、外側レール部11は、外側スライドコア10をアンギュラピンPによって内側にスライドさせ、第一内側レール部21は、第一内側スライドコア20をアンギュラピンPによって外側にスライドさせ、且つ、第二内側レール部31は、第二内側スライドコア30をアンギュラピンPによって外側にスライドさせる。これにより、型締めの状態になる。この後、再度、ゲートから溶融樹脂が注入されて、上述の枠体Fの成形が繰り返される。
【0044】
このように、本発明では、四辺のそれぞれの内側面に曲がり込んだアンダーカット部Uを設けた枠体Fを成形することが可能である。ここで、本発明では、アンダーカット部Uの断面形状が略コの字状であったが、これに限らず、略U字状や略V字状、半円形状等の形状でも構わない。又、本発明では、従来の内側スライドコアの移動領域と比べて、第一内側スライドコア20と第二内側スライドコア30の移動領域が拡大されていることから、内側面に曲がり込んだアンダーカット部Uに限らず、外側面に曲がり込んだ外側アンダーカット部を設けた枠体であっても形成可能である。
【0045】
又、本発明では、図1図8に示す金型1は、移動側金型が固定側金型に対して上下方向に移動する構成であるが、これに限定する必要は無く、一般的な金型では、移動側金型が固定側金型に対して左右方向又は前後方向に移動する構成も多種存在するため、そのような構成でも構わない。
【0046】
又、枠体Fの用途に特に限定は無いが、例えば、上述のように、冷蔵庫の扉に限らず、二重のガラスを設け、アンダーカット部Uにウレタンを注入したショーケースの扉、システムキッチンの食洗器の扉、テーブルの上面部等に用いることが可能である。枠体Fに装着する内板に特に限定は無く、無印刷ガラスや印刷ガラス、樹脂板やセラミック板等を挙げることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明に係る射出成形金型及び射出成形方法は、四辺のそれぞれの内側面にアンダーカット部を有する枠体はもちろん、内側面及び外側面にアンダーカット部を有する枠体を製造する射出成形金型及び射出成形方法として有用であり、四辺のそれぞれの内側面にアンダーカット部を有する枠体を効率よく製造することが可能な射出成形金型及び射出成形方法として有効である。
【符号の説明】
【0048】
1 射出成形金型
10 外側スライドコア
11 外側レール部
20 第一内側スライドコア
21 第一内側レール部
30 第二内側スライドコア
31 第二内側レール部
40 傾斜ブロック
41 傾斜ロッド
50 移動防止ピン
【要約】
【解決手段】二つの第二内側スライドコア30は、枠体Fの四辺の内側面のうち、第一内側スライドコア20が形成する二辺と異なる残りの二辺の内側面を枠体Fの内部の二方向から形成する。第二内側レール部31は、第一内側レール部21が内側にスライドした際に、当該第一内側レール部21が接触しないように、第二内側製品面形成部のスライド方向と直角方向の両端部のそれぞれから中央側に寄せて設けられる。第一内側レール部21は、第一内側製品面形成部のスライド方向と直角方向の両端部のそれぞれから中央側に寄せて設けられる。四つの傾斜ロッド41は、四つの傾斜ブロック40を本金型1の開閉方向から傾斜する方向に沿って移動可能であり、本金型1の型開きの後に枠体Fの四角に四つの傾斜ブロック40を押し出して、当該枠体Fの四角の内側面から離脱させる。四つの移動防止ピン50は、先端部50aが枠体Fの四辺のアンダーカット部Uの先端部Uaの一部を形成し、四つの傾斜ブロック40の移動とともに、枠体Fのアンダーカット部Uの先端部Uaの一部を保持しながら、本金型1の開閉方向に沿って移動させる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8