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特許7209416超音波ホーンおよび半導体装置の製造装置
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  • 特許-超音波ホーンおよび半導体装置の製造装置 図1
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  • 特許-超音波ホーンおよび半導体装置の製造装置 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】超音波ホーンおよび半導体装置の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/02 20060101AFI20230113BHJP
   B23K 20/10 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B06B1/02 K
B23K20/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022505656
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2021022560
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄平
(72)【発明者】
【氏名】青柳 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 光昭
(72)【発明者】
【氏名】淺見 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】三浦 光
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-340837(JP,A)
【文献】特開2004-275592(JP,A)
【文献】特開2002-209906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/02
B23K 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子が取り付けられる振動源部と、
加工ツールが取り付けられる先端部と、
前記先端部と前記振動源部との間に介在し、前記超音波振動子で生じた振動を前記先端部に伝搬させる中間部と、
を備え、前記中間部に、超音波ホーンの径方向に貫通する孔であって、周方向に進むにつれて軸方向に進む単一の螺旋孔が形成されている、
ことを特徴とする超音波ホーン。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波ホーンであって、
前記先端部には、前記軸方向と直交する第一方向に貫通し、前記加工ツールが取り付けられる取付孔が形成されており、
前記螺旋孔の先端側端部は、前記第一方向と略平行な方向に貫通している、
ことを特徴とする超音波ホーン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波ホーンであって、
前記螺旋孔は、その基端側端部から先端側端部までの間に、周方向に1/4回転分進む形状である、ことを特徴とする超音波ホーン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波ホーンであって、
前記中間部は、基端側から先端側に近づくにつれて、断面積が小さくなる先細り形状である、ことを特徴とする超音波ホーン。
【請求項5】
半導体装置の製造装置であって、
請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波ホーンと、
前記超音波ホーンの前記先端部に取り付けられ、ワイヤが挿通される円筒状のキャピラリと、
を備える、ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、対象物を振動加工(接合、切削、研磨等)するための超音波加工機に用いられる超音波ホーン、および、当該超音波ホーンを有した半導体装置製造装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から対象物を振動加工するために、縦振動および捩り振動を発生させる超音波ホーンが提案されている。こうした超音波ホーンの多くは、縦振動を捩り振動に変換するために、その周面に、複数の傾斜スリットが形成されている。傾斜スリットは、軸方向に進むにつれて周方向に進むものである。縦振動は、この傾斜スリットを通過する際に、捩り振動に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-294673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした傾斜スリットは、超音波ホーンの周面表層にのみ形成されており、超音波ホーンの径方向中心には達していなかった。この場合、縦振動から捩り振動への変換効率が悪く、捩り振動を十分に得ることが難しかった。
【0005】
また、従来の超音波ホーンでは、互いに独立した複数の傾斜スリットを傾斜している。この場合、複数の傾斜スリット間での相互位置のバラつきが生じやすく、振動特性が変動しやすかった。
【0006】
そこで、本明細書では、所望の振動特性が、より確実に得られる超音波ホーン、および、半導体装置の製造装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する超音波ホーンは、超音波振動子が取り付けられる振動源部と、加工ツールが取り付けられる先端部と、前記先端部と前記振動源部との間に介在し、前記超音波振動子で生じた振動を前記先端部に伝搬させる中間部と、を備え、前記中間部に、超音波ホーンの径方向に貫通する孔であって、周方向に進むにつれて軸方向に進む単一の螺旋孔が形成されている、ことを特徴とする。
【0008】
この場合、前記先端部には、前記軸方向と直交する第一方向に貫通し、前記加工ツールが取り付けられる取付孔が形成されており、前記螺旋孔の先端側端部は、前記第一方向と略平行な方向に貫通していてもよい。
【0009】
また、前記螺旋孔は、その基端側端部から先端側端部までの間に、周方向に1/4回転分進む形状でもよい。
【0010】
また、前記中間部は、基端側から先端側に近づくにつれて、断面積が小さくなる先細り形状でもよい。
【0011】
本明細書で開示する半導体装置の製造装置は、上述の超音波ホーンと、前記超音波ホーンの前記先端部に取り付けられ、ワイヤが挿通される円筒状のキャピラリと、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本明細書で開示する技術によれば、螺旋孔は、超音波ホーンを径方向に貫通しているため、捩り振動への変換効率が高い。そのため、螺旋孔は、超音波ホーンに一つ形成するだけで十分となる。そして、形成する孔を一つだけとすることで、複数のスリットを形成する場合に比べて、形状誤差等を小さく抑えることができ、振動特性を設計通りに保ちやすい。結果として、本明細書で開示する技術によれば、所望の振動特性が、より確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】超音波ホーンを搭載した半導体装置の製造装置の構成を示す図である。
図2】超音波ホーンの斜視図である。
図3】超音波ホーンの平面図である。
図4図3のA-A断面図である。
図5】螺旋孔の形成の様子を示す模式図である。
図6A】第一駆動信号を印加した際の先端部の移動軌跡を示す図である。
図6B】第二駆動信号を印加した際の先端部の移動軌跡を示す図である。
図6C】第一駆動信号および第二駆動信号を印加した際の移動軌跡を示す図である。
図7】比較例の超音波ホーンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して超音波ホーン50およびこれを搭載した半導体装置の製造装置10の構成について説明する。図1は、超音波ホーン50を搭載した製造装置10の構成を示す図である。
【0015】
製造装置10は、対象物30に設けられた二つの電極間をワイヤ26で接続することで半導体装置を製造するワイヤボンディング装置である。対象物30は、例えば、半導体チップがマウントされたリードフレームである。通常、半導体チップおよびリードフレームには、それぞれ、電極が設けられており、これら電極をワイヤ26で電気的に接続することで、半導体装置が製造される。
【0016】
製造装置10は、XYステージ20に組み付けられたボンディングヘッド12を有する。XYステージ20は、ボンディングヘッド12を水平方向、すなわち、X方向およびY方向に移動させる。ボンディングヘッド12には、超音波ホーン50およびカメラ22が、垂直方向、すなわちZ方向に移動可能に取り付けられている。超音波ホーン50は、ホーンホルダ14を介してボンディングヘッド12に取り付けられている。超音波ホーン50は、縦振動および捩り振動を発生させ、キャピラリに伝搬させる。キャピラリ18は、超音波ホーン50の末端に取り付けられるとともに、ワイヤ26が挿通される筒状部材である。縦振動および捩り振動が、このキャピラリ18を介して、ワイヤ26に伝達される。さらに、キャピラリ18の上方には、キャピラリ18とともに移動し、ワイヤ26を挟持するクランパ19が設けられている。
【0017】
カメラ22は、必要に応じて、対象物30を撮像する。コントローラ32は、このカメラ22で撮像された画像に基づいて、キャピラリ18の対象物30に対する位置を特定し、キャピラリ18の位置決めを行う。ボンディングヘッド12には、さらに、ワイヤ26が巻回されたスプール24が設けられており、必要に応じて、ワイヤ26がスプール24から繰り出される。コントローラ32は、製造装置10を構成する各部の駆動を制御する。例えば、コントローラ32は、超音波ホーン50に設けられた超音波振動子58に、所定周波数の電圧(すなわち駆動信号)を印加し、所定周波数の振動を発生させる。
【0018】
次に、製造装置10に搭載された超音波ホーン50の構成について説明する。図2は、超音波ホーン50の斜視図であり、図3は、超音波ホーン50の平面図である。さらに、図4は、図3のA-A断面図である。
【0019】
超音波ホーン50は、その基端側から末端側にかけて、基端部52、振動源部53、中間部54、および、先端部56が、一直線状に並んでいる。基端部52は、ホーンホルダ14に取り付けられる部位であり、基端側に近づくにつれて小径となる略円錐形である。
【0020】
振動源部53には、超音波振動子58が組み込まれている。超音波振動子58は、電圧信号である駆動信号を受けて、縦振動を発生させる振動発生源である。この超音波振動子58は、例えば、交流電圧を受けて振動するチタン酸ジルコン酸鉛(通称PZT)を有しており、PZTを金属のブロックではさみ・ネジ(ボルト)で締め付け圧力をかけたボルト締めランジュバン型振動子(通称BLT又はBL振動子)である。本例では、この超音波振動子58に、第一周波数の交流信号(以下「第一駆動信号」という)と、第一周波数よりも大きい第二周波数の交流信号(以下「第二駆動信号」という)と、を同時に印加する。
【0021】
中間部54は、この超音波振動子58で生じた振動を、先端部56へと伝搬させる。本例において、中間部54は、先端に近づくにつれて断面積が小さくなるような、略角錐状である。かかる構成とすることで、振動源部53で生じた振動が、増幅されて先端部56に伝搬される。また、中間部54には、縦振動の一部を、捩り振動に変換する螺旋孔68が形成されているが、これについては、後述する。
【0022】
先端部56は、キャピラリ18を保持する部位である。この先端部56の末端近傍には、Z方向(すなわちキャピラリ18の軸方向)に貫通し、キャピラリ18が挿入される取付孔64が形成されている。この取付孔64の直径は、無負荷状態では、キャピラリ18の直径よりもわずかに小さい。取付孔64より基端側には、Z方向に貫通し、Z方向から見て略しずく形の調整孔66が形成されている。この調整孔66と取付孔64は、細いスリットを介して繋がっている。そのため、調整孔66に専用の治具等を圧入して調整孔66を広げると、取付孔64も拡径する。そして、取付孔64が拡径することで、取付孔64にキャピラリ18を挿入できる。キャピラリ18を取付孔64に挿入した状態で、治具を調整孔66から離脱させると、取付孔64は、縮径し、キャピラリ18を強固に保持する。
【0023】
ここで、上述した通り、中間部54には、螺旋孔68が形成されている。この螺旋孔68について詳説する。螺旋孔68は、超音波振動子58が出力した縦振動の一部を捩り振動に変換するための孔である。この螺旋孔68は、中間部54を径方向に貫通するとともに、軸方向に進むにつれて周方向に進む孔である。より詳しく説明すると、螺旋孔68は、その基端側端部においては、中間部54の両側面を通るように、中間部54をX方向(すなわち超音波ホーン50の軸方向およびキャピラリ18の軸方向の双方に直交する方向)に貫通している。この螺旋孔68の貫通方向は、軸方向先端側に進むにつれて、Z方向に近づくように変化していく。そして、螺旋孔68は、その先端側端部においては、中間部54の上面および底面を通るように、中間部54をZ方向に貫通する。つまり、螺旋孔68の貫通方向は、基端側端部から先端側端部に進む過程で、周方向1/4回転している。別の見方をすれば、螺旋孔68は、平板を90度捩ったような形状である。
【0024】
こうした螺旋孔68は、例えば、ワイヤ放電加工により形成できる。図5は、螺旋孔68の形成加工の様子を示す模式図である。なお、図5では、説明を簡単にするため、超音波ホーン50を円柱として図示している。螺旋孔68を形成する際には、図5Aに示すように、放電ワイヤ70を、径方向に貫通させておく。その状態で、放電加工を実行しながら、超音波ホーン50を放電ワイヤ70に対して、軸方向Aおよび周方向Wに、相対移動させる。これにより、超音波ホーン50に、螺旋状の貫通孔が形成される。なお、当然ながら、螺旋孔68は、ワイヤ放電加工に限らず、他の加工技術、例えば、レーザ加工等で形成されてもよい。
【0025】
ここで、これまでの説明で明らかな通り、螺旋孔68は、単一の孔であり、中間部54を径方向に貫通している。かかる構成とすることで、縦振動を捩り振動に効率的に変換でき、また、個体ごとの振動特性のバラつきを抑制できる。これについて、比較例と比較して説明する。
【0026】
図7は、比較例の超音波ホーン50*の模式図である。比較例の超音波ホーン50*は、中間部54において、螺旋孔68ではなく、複数の傾斜溝80が形成されている。この傾斜溝80は、軸方向に進むにつれて周方向に進む溝であり、縦振動を捩り振動に変換する。ただし、傾斜溝80は、螺旋孔68と異なり、中間部54の周面の表層にのみ存在しており、中間部54を径方向に貫通していない。そのため、螺旋孔68に比べて、傾斜溝80は、縦振動から捩り振動への変換効率が悪い。そこで、比較例では、傾斜溝80を複数形成することで、捩り振動への変換効率を高めている。しかし、複数の傾斜溝80を設ける場合、この複数の傾斜溝80の相互位置の誤差や形状のバラつきが生じ、振動特性が変化していた。その結果、比較例の構成では、超音波ホーン50*の振動特性の個体差が生じやすかった。
【0027】
また、比較例の超音波ホーン50*を使用する際には、第一駆動信号と第二駆動信号を並行して印加する。第一駆動信号により生成される振動を「第一振動」、第二駆動信号により生じる振動を「第二振動」とした場合、比較例では、傾斜溝80を、第一振動の節、第二振動の腹となる位置に形成していた。かかる構成とすることで、第一振動は、縦振動のまま先端部56に伝搬され、第二振動は、傾斜溝80により、捩り振動に変換されて先端部56に伝搬される。つまり、比較例の構成の場合、周波数が互いに異なる二つの振動の腹位置および節位置を考慮して、傾斜溝80の位置を設定する必要があり、設計が複雑になりやすかった。
【0028】
一方、本明細書で開示する超音波ホーン50は、上述した通り、螺旋孔68が一つだけ形成されている。この螺旋孔68は、中間部54を径方向に貫通しているため、振動源部53から伝搬される縦振動を捩り振動に、効率的に変換できる。換言すれば、本例の超音波ホーン50によれば、第一、第二振動の腹位置および節位置を考慮しなくても、確実に縦振動を捩り振動に変換できる。その結果、螺旋孔68の位置の設計を簡易化できる。また、超音波ホーン50に形成される螺旋孔68は、一つだけである。そのため、相互位置の誤差や形状のバラつきが発生せず、超音波ホーン50ごとの、振動特性の個体差を低減できる。
【0029】
次に、本例の超音波ホーン50で得られる振動について説明する。超音波加工を実行する際、コントローラ32は、第一周波数の第一駆動信号と、第二周波数の第二駆動信号と、を並行して超音波振動子58に印加する。これを受けて、振動源部53において、第一周波数の縦振動、すなわち、第一振動と、第二周波数の縦振動、すなわち、第二振動が発生する。二種類の縦振動は、いずれも、螺旋孔68を通過する際に、その一部が捩り振動に変換される。変換後の第一振動と、変換後後の第二振動は、互いに、略直交する方向の振動となる。この変換後の第一振動および変換後の第二振動が並行して先端部56に伝搬されることで、先端部56は、略面状に振動する。そして、これにより、超音波加工を、より効率的に行える。
【0030】
これについて、図6を参照して説明する。図6A図6Cは、先端部56の振動の動きを示す図である。より具体的には、図6Aは、第一駆動信号のみを印加した際の先端部56の移動軌跡を示している。同様に、図6Bは、第二駆動信号のみを印加した際の、図6Cは、第一駆動信号および第二駆動信号を並行して印加した際の、先端部56の移動軌跡を示している。なお、図6A図6Cにおいて、黒塗りに見える箇所は、先端部56の移動軌跡を示す多数の線が重複している箇所である。図6Aに示すように、第一駆動信号のみを印加した場合、先端部56の動きは、縦振動成分が多めではあるが、全体としては、縦振動と捩り振動が混ざった動きとなる。結果として、先端部56は、第二象限と第四象限との間を移動するように振動する。
【0031】
一方、第二駆動信号のみを印加した場合、先端部56の動きは、図6Bに示すように、縦振動と捩り振動が混在した動きとなり、先端部56は、第一象限と第三象限との間を移動するように振動する。第一駆動信号および第二駆動信号を並行して印加した場合、先端部56の動きは、図6Aに示す動きと、図6Bに示す動きと、を合成したような動きとなる。結果として、先端部56は、図6Cに示すように、略面状に振動する。そして、先端部56、ひいては、キャピラリ18が、面状に振動することで、超音波加工を、より効率的に行える。
【0032】
以上の説明で明らかな通り、本例の超音波ホーン50によれば、振動特性の個体差を低く抑えつつ、縦振動を捩り振動に効率的に変換できる。なお、これまで説明した構成は一例であり、超音波ホーン50の中間部54に、径方向に貫通する孔であって、周方向に進むにつれて軸方向に進む単一の螺旋孔68が形成されているのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、上述の説明では、螺旋孔68は、基端側端部から先端側端部までの間に、周方向に1/4回転分進む形状となっている。しかし、十分な強度と振動特性が得られるのであれば、螺旋孔68の周方向範囲は、1/4回転より小さくてもよいし、1/4回転より大きくてもよい。例えば、螺旋孔68は、基端側端部から先端側端部までの間に、周方向に1/2回転分進む形状でもよい。
【0033】
また、上述の説明では、螺旋孔68は、その先端側端部において、X方向、すなわち、キャピラリ18の軸方向および超音波ホーン50の軸方向の双方に直交する方向に貫通している。かかる構成とした場合、螺旋孔68の先端側端部の貫通方向と、キャピラリ18の取付孔64の貫通方向と、が略平行となる。かかる構成とすることで、両孔68,64が非平行の場合に比べて、捩り振動が、先端部56に伝搬されやすくなる。しかし、こうした貫通方向は、適宜、変更されてもよい。したがって、例えば、螺旋孔68は、その先端側端部が、Z方向に貫通し、その基端側端部が、X方向に貫通するような配置でもよい。
【0034】
また、これまでの説明では、超音波ホーン50の中間部54は、基端側から先端側に近づくにつれて、断面積が小さくなる先細り形状である。かかる構成とすることで、先端側に近づくにつれて、振動が増幅される。しかし、超音波ホーン50に求められる特性等によっては、中間部54は、他の形状、例えば、径一定の丸棒状等でもよい。
【0035】
また、これまでの説明では、超音波ホーン50を搭載した半導体装置製造装置10を例に挙げて説明したが、本明細書で開示した超音波ホーン50は、他の種類の超音波加工装置、例えば、超音波溶接装置等に組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 製造装置、12 ボンディングヘッド、14 ホーンホルダ、18 キャピラリ、19 クランパ、20 XYステージ、22 カメラ、24 スプール、26 ワイヤ、30 対象物、32 コントローラ、50 超音波ホーン、50* 比較例の超音波ホーン、52 基端部、53 振動源部、54 中間部、56 先端部、58 超音波振動子、64 取付孔、66 調整孔、68 螺旋孔、70 放電ワイヤ、80 傾斜溝。
【要約】
超音波ホーン(50)は、超音波振動子(58)が取り付けられる振動源部(53)と、キャピラリ(18)が取り付けられる先端部(56)と、前記先端部(56)と前記振動源部(53)との間に介在し、前記超音波振動子(58)で生じた振動を前記先端部(56)に伝搬させる中間部(54)と、を備え、前記中間部(54)に、超音波ホーン(50)の径方向に貫通する孔であって、周方向に進むにつれて軸方向に進む単一の螺旋孔(68)が形成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7