(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ライナ付キャップ及びキャップ付容器
(51)【国際特許分類】
B65D 41/04 20060101AFI20230113BHJP
B65D 51/16 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B65D41/04 200
B65D51/16 300
(21)【出願番号】P 2016006090
(22)【出願日】2016-01-15
【審査請求日】2018-12-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2015032988
(32)【優先日】2015-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】府川 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 栄治
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】八木 誠
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-262458(JP,A)
【文献】特開2008-184208(JP,A)
【文献】特開2003-327262(JP,A)
【文献】特開2013-203430(JP,A)
【文献】特開2015-3737(JP,A)
【文献】特公昭56-30266(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D39/00-55/16
B65D35/44-35/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなる円筒部とを備えるキャップ本体と、前記天面部の内面に設けられたライナとを有し、容器の口金部を密栓するライナ付キャップであって、
前記円筒部の前記天面部近傍には、周方向にスリット状に開口形成されて開栓時に内圧を開放する複数のベントホールと、内圧が700kPaになると開口して内部のガスを放出する内圧開放スリットとが設けられており、
前記ベントホールが最も大きく開口して観察される位置における、
前記ベントホールのそれぞれの開口面積が0.35mm
2
以上0.8mm
2
以下とされ、
各ベントホールの開口面積を総合した総面積が5.0mm
2
以上11.5mm
2
以下とされており、
前記容器に前記ライナ付キャップを再栓して該容器内部の内圧を600kPaとした場合において、前記ライナ付キャップを閉止位置から周方向に180°回転させて開栓した際に、前記容器内部の内圧が44kPa以上150kPa以下に低下するライナ付キャップ。
【請求項2】
前記内圧が降下し始めてから300kPaまでの間の内圧降下速度が1kPa/msec以上とされる請求項1記載のライナ付キャップ。
【請求項3】
前記ライナは、前記容器の口金部との接触面が、平坦に設けられている請求項1
又は2に記載のライナ付キャップ。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の前記ライナ付キャップを前記容器の口金部に巻締めて密栓したキャップ付容器であって、
前記容器に前記ライナ付キャップを再栓して該容器の内圧を600kPaとした場合において、前記ライナ付キャップを閉止位置から開栓方向に180°開栓させて開栓するまでに生じる最大トルクが80N・cm以下とされるキャップ付容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用等の容器の口金部に装着されて密栓するライナ付キャップ及びキャップ付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器を密栓するキャップは、一度開栓すると、容器との嵌合が緩むことで、容器がキャップを保持する力が弱まる。また、一度開栓したキャップは、PPバンド(ピルファープルーフバンド)が切られており、口金部の雄ねじ部とキャップの雌ねじ部との螺合だけで容器に保持される。このため、容器に装着されたキャップが一旦開栓されて再栓された後に、内容物の二次発酵等によって内圧が過度に上昇した際に、キャップが内圧により押されてキャップが勢いよく飛び出す(キャップ飛び)リスクが高まる。
【0003】
この点、例えば特許文献1又は特許文献2に記載されているように、内容物の二次発酵等によって内圧が過度に上昇した際に、容器内部のガスを放出して内圧を低下させることにより容器の破裂やキャップの飛び出しを防止する、いわゆる防爆機能を有するキャップが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007‐30927号公報
【文献】特開2008‐63001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来から、キャップが容器に装着されている状態において、容器内部の内圧が過度に上昇した際に、その内圧を外部に排出してキャップ飛びを防止する対策が行われている。ところが、キャップが容器に完全に装着された状態よりも、キャップを緩めて開栓し始めた時に、キャップ飛びのリスクが高まる。すなわち、容器内部の内圧が、例えば700kPaを超えるような高内圧であれば、内圧を外部に排出してキャップ飛びを防止する機能が働くが、700kPaに到達せずに防爆機能が働く前の状態において、このような容器内部の圧力が比較的高内圧のまま、キャップが緩められてねじ部の嵌合による保持力が弱くなると、キャップが内圧によって内側から押されることにより、最もキャップ飛びのリスクが高くなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、開栓を開始してから速やかに容器内部の圧力を低下させ、開栓時のキャップ飛びを防止することができるライナ付キャップ及びキャップ付容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなる円筒部とを備えるキャップ本体と、前記天面部の内面に設けられたライナとを有し、容器の口金部を密栓するライナ付キャップであって、前記円筒部の前記天面部近傍には、周方向にスリット状に開口形成されて開栓時に内圧を開放する複数のベントホールと、内圧が700kPaになると開口して内部のガスを放出する内圧開放スリットとが設けられており、前記ベントホールが最も大きく開口して観察される位置における、前記ベントホールのそれぞれの開口面積が0.35mm
2
以上0.8mm
2
以下とされ、各ベントホールの開口面積を総合した総面積が5.0mm
2
以上11.5mm
2
以下とされており、前記容器に前記ライナ付キャップを再栓して該容器内部の内圧を600kPaとした場合において、前記ライナ付キャップを閉止位置から周方向に180°回転させて開栓した際に、前記容器内部の内圧が44kPa以上150kPa以下に低下する。
【0008】
キャップ付容器を開栓させる際、人によってライナ付キャップの回転量にバラツキがあるものの、多くの場合、開栓一回のひねり動作(最初のアクション)において少なくとも180°の回転動作が行われる。そこで、容器に対してライナ付キャップを周方向に180°回転させたときに内圧を150kPa以下まで低下させることで、キャップ飛びリスクを低減することができる。
ベントホールの数を増やすことにより開栓時のベント性能を向上させることができる。ところが、個々のベントホールの開口面積が0.35mm
2
未満の大きさであると、個々のベントホールの開口面積を0.35mm
2
以上の大きさで形成した場合と比較して、内圧降下速度が低下し、すなわち内圧の開放効率が低下する。また、このように個々のベントホールの開口面積が0.35mm
2
未満では、必要な内圧降下速度を確保するために、さらに多くのベントホールが必要になり、外観を損なうおそれがある。一方、個々のベントホールの開口面積が0.8mm
2
を超えると、ベントホールからの異物の混入が懸念される。
また、各ベントホールの開口面積の総面積が5.0mm
2
未満では、十分な内圧降下速度を得ることが難しくなる。一方、各ベントホールの開口面積の総面積を11.5mm
2
確保できれば、十分な内圧降下速度を得られることから、11.5mm
2
を上限としている。
【0009】
本発明のライナ付キャップにおいて、前記内圧が降下し始めてから300kPaまでの間の内圧降下速度が1kPa/msec以上とされるとよい。
【0010】
容器内部の内圧が300kPaに達するまでの内圧降下速度を1kPa/msecとして、比較的速い降下速度に設定することで、キャップを開栓し始めてから早い段階(短時間)で容器内部の内圧を低減することができ、開栓時のキャップ飛びを確実に防止することができる。
【0013】
本発明のライナ付キャップにおいて、前記ライナは、前記容器の口金部との接触面が、平坦に設けられているとよい。
【0014】
ライナが口金部と接触する部分(接触面)を平坦に形成することで、ライナ付キャップを周方向に回転して、ライナと口金部との間に隙間が設けられた際に、内圧の開放流路がベントホールに向けてダイレクトに確保され、円滑に内圧を開放することができる。したがって、内圧を速やかに150kPa以下まで低下させることができ、キャップ飛びリスクを低減することができる。
【0015】
本発明のキャップ付容器は、前記ライナ付キャップを前記容器の口金部に巻締めて密栓したキャップ付容器であって、前記容器に前記ライナ付キャップを再栓して該容器の内圧を600kPaとした場合において、前記ライナ付キャップを閉止位置から開栓方向に180°開栓させて開栓するまでに生じる最大トルクが80N・cm以下とされる。
【0016】
キャップ付容器を開栓させる際、人によってライナ付キャップの回転量にバラツキがあるが、容器開栓時に生じる最大トルクを比較的低い状態に維持することで、開栓動作を円滑に行えるようになるので、いずれの人が開栓した場合であっても少なくとも180°の回転量を確実に確保することができる。したがって、開栓時に速やかに内圧を150kPa以下まで低下させることができ、キャップ飛びリスクを低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、開栓を開始してから速やかに容器内部の圧力を低下させることができ、開栓時のキャップ飛びを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態のライナ付キャップ又はキャップ付ボトル缶を示す部分断面図であり、(a)がライナ付キャップのボトル缶への巻締め前の状態であり、(b)がライナ付キャップをボトル缶に巻締めた後のキャップ付ボトル缶とした状態を示す。
【
図2】ライナ付キャップのボトル缶への巻締め前の状態における正面図である。
【
図3】ライナ付キャップの
図2に示すA矢視図である。
【
図5】ベントホールのマイクロスコープ画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るライナ付キャップ及びキャップ付容器の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態のライナ付キャップ10は、
図1(b)に示すように、例えば直径38mm口径のアルミニウム又はアルミニウム合金製(金属製)のボトル缶20(本発明でいう、容器)の口金部21に装着されて密接するピルファープルーフキャップ(以下、PPキャップとも称す。)となるものである。
このライナ付キャップ10は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の板材をカップ状に成形したもので、
図2に示すように、天面部41とその天面部41の周縁から略垂下されてなる円筒部42とを備えるキャップ本体40と、そのキャップ本体40の天面部41の内面に設けたライナ50とを有する。
【0020】
このライナ付キャップ10が装着されるボトル缶20の口金部21は、
図4に示すように、その下端部に半径方向外方に突出する膨出部22が形成され、その上方に雄ねじ部23、雄ねじ部23の上方に開口端部を丸めてなるカール部24が形成されている。口金部21に被せられたライナ付キャップ10は、膨出部22、雄ねじ部23、カール部24の形状に沿うように、例えば、ねじ部形成ローラ(図示略)で円筒部42を内方に押圧することにより成形される。そして、
図1(b)に示すように、円筒部42に雌ねじ部13が形成されて口金部21に装着されたライナ付キャップ10は、円筒部42の下端部が膨出部22の下面に係止され、ライナ50がカール部24に圧接されて、ボトル缶20を密封状態としてキャップ付ボトル缶100(本発明でいう、キャップ付容器)とされる。
【0021】
ライナ付キャップ10のキャップ本体40の円筒部42は、
図2に示すように、その下端部に周方向に断続的に形成されたスリット17を介して上下に分割された筒上部43と筒下部44とを有し、周方向に隣接するスリット17間に形成される複数のブリッジ17aによって筒上部43と筒下部44とを連結した形状としたものである。
【0022】
また、円筒部42の天面部41近傍には、
図2に示すように、周方向に複数並べて形成されたナール凹部31と、周方向にスリット状に開口形成され開栓時に内圧を開放する複数のベントホール32と、そのベントホール32の上部開口部端部及び下部開口部端部を円筒部42の半径方向内方に向けて曲げて形成した上部突起部33及び下部突起部34とが設けられる。さらに、この円筒部42の天面部41近傍には、これらナール凹部31及びベントホール32と並んで、キャップ本体40がボトル缶20の口金部21に装着された状態で所定の内圧(例えば、700kPa)になると開口する周方向に沿って形成された内圧開放スリット35が設けられている。
【0023】
ナール凹部31、上部突起部33及び下部突起部34は、円筒部42の外周面において凹形状をなしており、これらが間隔をあけて配置されることにより、円筒部42の外周面に凹凸表面が形成され、開栓時にライナ付キャップ10を保持する指との間の摩擦抵抗を増大させることができる。これにより、手を滑らせることなくライナ付キャップ10を把持することが可能となり、容易に開栓することが可能となっている。
【0024】
また、ベントホール32は、円筒部42の周方向にせん断されて形成されており、ボトル缶20に装着されたライナ付キャップ10がブリッジ17aを破断しつつ上方に回転操作された際、ボトル缶20内部のガスを外部に放出するためのベントホールとして機能する。
また、ベントホール32の上部突起部33の先端は、挿入された際のライナ50の外周縁よりも半径方向内方に位置されているとともに、下部突起部34の先端と半径方向で同位置又はその先端よりも半径方向外方に位置している。さらに、上部突起部33の先端部は、さらに下方に折り曲げられて先端面が下方に向けられている。
【0025】
また、内圧開放スリット35は、
図2に示すように、円筒部42の周方向に延在して線状に形成されるベントホール32よりも長いスリットに形成され、ベントホール32と同じ高さ、あるいはベントホール32よりも下方に配置されている。この内圧開放スリット35は、例えば円筒部42の周長の8%以上13%以下の長さで形成される。そして、内圧開放スリット35は、内容物が発酵する等してボトル缶20の内圧が過剰に上昇した際に、所定の内圧開放値(例えば、700kPa)で開口して内部のガスを放出する、いわゆる防爆機能の役目を果たす。
【0026】
キャップ本体40に挿入されるライナ50は、ライナ付キャップ10の閉止時にボトル缶20の口金部21に当接し、ボトル缶20の内部を密封し得るように形成され、
図1(a)に示すように、キャッピング前の状態で口金部21(カール部24)との接触面が平坦に設けられる。このように、ライナ50が口金部21と接触する部分(接触面)をキャッピング前の状態で平坦に形成することで、ライナ付キャップ10を口金部21に被着させたキャッピング後においてライナ50が口金部21に押し付けられて若干の変形が生じるものの、ライナ付キャップ10が周方向に回転して、ライナ50と口金部21との間に僅かな隙間が設けられた時点で、概ね平坦に設けられたライナ50の表面と口金部21との間にボトル缶20内部の内圧の開放流路がベントホール32に向けてダイレクトに確保されることから、円滑に内圧を開放することができる。なお、ライナ50の口金部21との接触面をカール部24の表面に倣って湾曲した面で形成した場合には、ライナ50がカール部24から離れにくくなり、ライナ付キャップ10が周方向に回転してライナ50と口金部21との間に僅かな隙間が設けられた時点では、ライナ50の表面とカール部24との間に内圧の開放流路を確保することが難しくなる。
【0027】
このようなライナ50としては、具体的には、
図1に示すように、エラストマー樹脂等で形成されてシール機能を有する密封層51と、その密封層51よりも高い硬度を有し、ポリプロピレン等で形成された円板状の天面部41の内面と摺動する摺動層52とが積層されたものを用いることができる。この場合、密封層51は、摺動層52よりも外径が小さく設けられ、上部突起部33の先端は、ライナ50の摺動層52の外周縁よりも半径方向内方に位置し、下部突起部34の先端は、密封層51の外周縁よりも半径方向外方に位置している。そして、ライナ50が口金部21と接触する密封層51の表面(接触面)が平坦に設けられる。
【0028】
ライナ50のキャップ本体40への取り付けは、キャップ本体40を開口端部が上向きとなるように載置した状態で、上方からライナ50を挿入することにより行われる。この際、ライナ50の外周が下部突起部34に当接するが、さらにライナ50を下向きに押し込むことで、ライナ50の外周が下部突起部34、上部突起部33を乗り越えて組み付けられ、これら上部突起部33と天面部41の内面との間にライナ50が保持される。
このため、上部突起部33は、ライナ50の摺動層52と当接するが、密封層51とは接触しないようになっている。したがって、ライナ付キャップ10の開栓時において、密封層51が上部突起部33と接触して開栓時の抵抗となり開栓トルク(最大トルク)が上昇することを回避でき、良好な開栓性を維持することができる。なお、本実施形態のキャップ付ボトル缶100(
図1(b)参照)においては、ボトル缶20にライナ付キャップ10を再栓してボトル缶20の内圧を600kPaとした場合において、ライナ付キャップ10を閉止位置から開栓方向に180°開栓させて開栓するまでに生じる最大トルクが80N・cm以下となるように調整されている。
【0029】
次に、
図1(b)に示すように、口金部21にライナ付キャップ10を被着させて密閉されたキャップ付ボトル缶100について説明する。
キャップ付ボトル缶100は、飲料用の液体(内容物)が充填されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなるボトル缶20と、そのボトル缶20の口金部21に被着されたライナ付キャップ10とを備える。
このライナ付キャップ10は、天面部41が肩絞り加工され、雄ねじ部23の外径に沿う雌ねじ部13を筒上部43に形成するとともに、膨出部22の下部に沿うピルファープルーフ部14を筒下部44に形成することにより、ボトル缶20の口金部21に被着されたものである。そして、ライナ付キャップ10の天面部41側にはライナ50が設けられ、そのライナ50によってボトル缶20の開口部20aがシールされている。このシール状態では、ライナ50は、肩絞り加工によって天面部41の周縁部がカール部24の外周面側に被さるように変形させられる。
【0030】
このように構成されたキャップ付ボトル缶100において、ライナ付キャップ10を開栓するために回転させると、雌ねじ部13が形成された筒上部43がボトル缶20の雄ねじ部23に沿って上方に持ち上がりながら回転する。一方、ピルファープルーフ部14が形成された筒下部44はボトル缶20の膨出部22に係止され、筒上部43と一体に持ち上がらずに回転する。
この際、上方向に引っ張る力と、周方向に引っ張る力(摩擦力)とを加えられた各ブリッジ17aが順次破断していき、全てのブリッジ17aが破断した際に、ライナ付キャップ10の筒上部43と筒下部44とが分断される。その後、筒上部43を口金部21の雄ねじ部23に対してさらに回転させることにより、ボトル缶20からライナ付キャップ10の筒上部43が外れて、ボトル缶20を開栓させることができる。一方、ライナ付キャップ10の筒下部44は、リング状のピルファープルーフ部14としてボトル缶20に残される。
【0031】
このようにライナ付キャップ10により密栓されたボトル缶20を初めて開栓する際には、ボトル缶20の内部のガスが天面部41の内側のライナ50と口金部21との間を経て、ベントホール32及び内圧開放スリット35から外部に放出される。
また、ライナ付キャップ10が一旦開栓されて再度ボトル缶20に装着された後に、その閉栓状態において内容物の二次発酵等によって内圧が700kPaを超えて上昇した際には、円筒部42に形成された内圧開放スリット35が所定の開放値で開口して、ボトル缶20内部のガスを速やかに放出して内圧を開放させる。このため、内圧の異常上昇によるライナ付キャップ10の飛び出しを防ぐことができる。
【0032】
さらに、ライナ付キャップ10をボトル缶20に再栓して、このボトル缶20に完全に装着された状態から、ライナ付キャップ10を緩めて開栓し始めたときにも、ボトル缶20内部のガスが天面部41の内側のライナ50と口金部21との間を経て、ベントホール32及び内圧開放スリット35から速やかに外部に放出される。具体的には、ライナ付キャップ10をボトル缶20に再栓してボトル缶20内部の内圧を600kPaとした場合において、ボトル缶20に対してライナ付キャップ10を1秒以内で閉止位置から周方向に180°回転させて開栓した際に、ボトル缶20内部の内圧が150kPa以下に低下する。また、このライナ付キャップ10は、開栓を開始してから降圧が始まるまでのライナ付キャップ10の回転角度(シール角度)が概ね100°とされるとともに、ボトル缶20内部の内圧が降下し始めてから300kPaまでの間の内圧降下速度が1kPa/msec以上となるように設けられ、比較的速い降下速度で内圧が開放される。
【0033】
ライナ付キャップ10を開栓する際、人によってライナ付キャップ10の回転量にバラツキがあるものの、多くの場合、開栓一回のひねり動作において、少なくとも1秒以内に180°の回転動作が行われる。この点、本実施形態のライナ付キャップ10においては、開栓開始から180°回転させて開栓するまでの間(1秒以内)に、ボトル缶20内部の内圧が150kPa以下に低下するとともに、その内圧降下速度が1kPa/msecという比較的速い降下速度で低下する。このため、ボトル缶20内部の圧力が600kPaという比較的高内圧のまま、ライナ付キャップ10が緩められて、雄ねじ部23と雌ねじ部13との嵌合による保持力が弱くなった際にも、ボトル缶20内部の内圧が速やかに開放される、ライナ付キャップ10の飛び出しを確実に防ぐことができる。
【0034】
このライナ付キャップ10の開栓時におけるボトル缶20内部の内圧開放値や内圧降下速度は、キャップ本体40の円筒部42の天面部41近傍に形成された複数のベントホール32のそれぞれの開口面積と、これら各ベントホール32の開口面積を総合した総面積とを調整することにより実現することができる。
具体的には、ベントホール32のそれぞれの開口面積を0.35mm2以上0.8mm2以下とし、各ベントホール32の開口面積を総合した総面積が5.0mm2以上11.5mm2以下に調整することにより、ライナ付キャップ10をボトル缶20に対して180°回転させて開栓した際に、内圧を600kPaから150kPa以下に低下させることができるとともに、ボトル缶20内部の内圧が降下し始めてから300kPaまでの間の内圧降下速度を1kPa/msec以上とすることができる。
【0035】
なお、ベントホール32の個数を増やすことにより、開栓時のベント性能を向上させることができるが、個々のベントホール32の開口面積が0.35mm2未満の大きさであると、個々のベントホール32の開口面積を0.35mm2以上の大きさで形成した場合と比較して、内圧降下速度が低下し、すなわち内圧の開放効率が低下することとなる。また、このように個々のベントホール32の開口面積が0.35mm2未満では、必要な内圧降下速度を確保するために、さらに多くのベントホール32を設ける必要があり、外観を損なうおそれがある。一方、個々のベントホール32の開口面積が11.5mm2を超えると、ベントホール32からの異物の混入が懸念される。
また、各ベントホール32の開口面積が5.0mm2未満では、十分な内圧降下速度を得ることが難しくなる。一方、各ベントホール32の開口面積の総面積を11.5mm2確保できれば、十分な内圧降下速度を得られることから、11.5mm2を上限としている。
【0036】
また、本実施形態のライナ付キャップ10では、ベントホール32と並んで、内圧開放スリット35を形成しており、内圧開放スリット35の長さを長くするほど、内圧開放値を低くすることができる。また、内圧開放スリット35の長さは、キャップ本体40(円筒部42)の周長の10%以上あると、ライナ付キャップ10の飛び出しを効果的に抑制することができる。一方で、内圧開放スリット35の長さをあまり長くし過ぎると、剛性が低下することで内圧開放値が低くなり過ぎることや、キャッピング時の変形を生じ易くなる。また、内圧開放値が低すぎると、意図しないタイミング(例えば内容物の殺菌処理中等)に内圧を開放することがあるので、内圧開放値を安定させて適切な数値にコントロールすることが必要である。
【0037】
この点、ライナ付キャップ10のベントホール32は、内圧開放スリット35の長さと比較して、周長が充分に短く設定されるものであり、下部突起部34を半径方向内方に押し込むことにより、スリットの隙間を広げて個々の開口面積を比較的大きく形成しながらも、その部分の剛性を高める効果がある。このため、ベントホール32の個数や大きさを調整することにより内圧開放値を適切な数値にコントロールすることができる。したがって、ライナ付キャップ10をボトル缶20にキャッピングする際に内圧開放スリット35が変形することを防止でき、ライナ付キャップ10毎に形状のバラツキが生じることを防止できるので、内圧開放値を安定させることができる。
【0038】
また、本実施形態のライナ付キャップ10においては、ライナ50の密封層51の表面、すなわちボトル缶20の口金部21との接触面をキャッピング前の状態で平坦に形成しており、キャッピング後において密封層51の外周部がカール部24に押し付けられて若干の変形が生じるものの、ライナ付キャップ10をボトル缶20に対して周方向に回転して、ライナ50と口金部21との間に隙間が設けられた際には、概ね平坦に設けられた密封層51の表面とカール部24との間に内圧の開放流路がベントホール32に向けてダイレクトに確保されることから、円滑に内圧を開放することができる。したがって、内圧を速やかに150kPa以下まで低下させることができ、キャップ飛びリスクを低減することができる。
【0039】
また、本実施形態のキャップ付ボトル缶100は、ボトル缶20にライナ付キャップ10を再栓してボトル缶20の内圧を600kPaとした場合において、ライナ付キャップ10を閉止位置から開栓方向に180°開栓させて開栓するまでに生じる最大トルクが80N・cm以下となるように調整されている。
具体的には、ライナ50をキャップ本体40に接着せずに、天面部41の内面と上部突起部33との間にライナ50を保持することとしているので、ライナ付キャップの開栓時において、天面部41の内面とライナ50の摺動層52とが摺動して、ライナ付キャップ10の開栓時に生じる開栓トルク(最大トルク)を低減することができる。また、上部突起部33は、ライナ50の摺動層52と当接するが、密封層51とは接触しないようになっており、ライナ付キャップ10の開栓時において、密封層51が上部突起部33と接触して開栓時の抵抗となり開栓トルクが上昇することを回避できる。
【0040】
キャップ付ボトル缶100を開栓させる際に、人によってライナ付キャップ10の回転量にバラツキが生じ易いが、本実施形態のように、キャップ付ボトル缶100の開栓時に生じる最大トルクを比較的低い状態に維持することで、個人差なく開栓動作を円滑に行えるようになるので、いずれの人が開栓した場合であっても、少なくとも180°の回転量を確実に確保することができる。したがって、ボトル缶20にライナ付キャップ10を再栓してボトル缶20の内圧を600kPaとしたキャップ付ボトル缶100において、開栓時に速やかに内圧を150kPa以下まで低下させることができ、キャップ飛びリスクを低減することができる。
【実施例】
【0041】
次に、本実施形態のライナ付キャップ及びキャップ付ボトル缶を実際に作製し、開栓時における内圧開放値、開栓トルク(最大トルク)について評価した。
各ボトル缶としては、直径38mm口径の口金部を有するアルミニウム製のボトル缶を用いた。また、各ライナ付キャップは、
図5(a)~(d)に示すように、異なる形状のベントホールを有するものを用意した。各ライナ付キャップの条件を、表1から表3に示す。
【0042】
試料1は、
図5(a)に示すように、スリットの上部突起部及び下部突起部を半径方向内方に押し込むことにより、スリットの隙間を広げてベントホールを形成したものである。また、試料2も、
図5(b)に示すように、スリットの上部突起部及び下部突起部を半径方向内方に押し込むことにより、スリットの隙間を広げてベントホールを形成したものであり、試料1のベントホールよりも開口面積を小さく形成したものである。また、試料3は、試料1と同様の大きさのベントホールを形成したものであり、試料4は、試料2と同様の大きさのベントホールを形成したものである。一方、試料5は、
図5(c)に示すように、スリットを広げることなく、そのままの状態でベントホールを形成したものである。また、試料6も、
図5(d)に示すように、スリットを広げることなく、そのままの状態でベントホールを形成したものである。
【0043】
これら
図5(a)~(d)に示す各ベントホールは、マイクロスコープを使用して、各ベントホールが最も大きく開口して観察される位置(角度)において画像を撮影し、得られた画像から各ベントホールの開口面積を計測した。表1に各ライナ付キャップに対するベントホールの観測条件、ベントホールの測定結果を示す。また、表2には、各ライナ付キャップの有する内圧開放スリットの条件を示しており、試料1,2,6については、内圧開放スリットを設けていないため、内圧開放スリット及びその観察条件の欄を「―」で記載した。また、表3の開口部総面積は、各ライナ付キャップごとにベントホールの総面積と内圧開放スリットの開口面積とを足した面積である。
【0044】
(内圧開放値の評価)
試料1~6のライナ付キャップを用いて、内容物の充填と殺菌処理を行ったキャップ付ボトル缶を作製し、このキャップ付ボトル缶を一度開栓して内容物を廃棄した後、ライナ付キャップを再栓した再栓後のキャップ付ボトル缶について、
図6に示す開栓装置110を用いて開栓時の内圧の変化と、キャップ飛びの有無を評価した。各試料ごとに5個(N=5)のキャップ付ボトル缶を作製して行った。
再栓後のキャップ付ボトル缶は、ボトル缶の底部から内容物の二次発酵を想定した内圧(600kPa)を付加し、開栓装置110の固定治具111にセットする。ライナ付キャップの開栓駆動にはエアシリンダーを用いており、開栓速度はライナ付キャップを把持しない空運転状態で1.2sec/回転に調整した状態で行った。なお、開栓の駆動力を一定にして測定を行っているため、各ライナ付キャップの開栓動作において、開栓速度は一定ではない。
【0045】
そして、開栓装置110の開栓駆動部113に接続されているキャップ把持具112をライナ付キャップに取り付け、一定駆動力で周方向に180°回転することにより、キャップ付ボトル缶を開栓し、
図7に示すように、開栓動作開始後におけるボトル缶内部の内圧の変化を測定するとともに、キャップ飛び発生の有無を確認した。また、ライナ付キャップを180°回転させた開栓動作後は、それ以上(180°以上)の開栓動作は行わずに、内圧の測定だけ行った。
結果を表4に示す。
【0046】
なお、表4に示す結果は、各試料ごとに作製した5個のキャップ付ボトル缶による評価結果の平均値を示した。また、表4に示す「降圧開始時間」は、
図7に示すように、開栓開始から内圧が下がり始める(降圧開始)までの時間である。「300kPa到達時間」は、降圧開始から内圧が300kPaまで降下するまでに要した時間である。「除圧終了時間」は、降圧開始から内圧が0kPaまで降下するまでに要した時間である。また、「180°開栓終了時内圧」ライナ付キャップを閉止位置から周方向に180°開栓した時の内圧である。「内圧降下速度」は、降圧開始から300kPa到達までの間における降圧傾きである。また、「キャップ飛び」は、ライナ付キャップを閉止位置から周方向に180°回転させるまでの間に、キャップ把持具112の上昇が確認され、内圧が急降下したものを、キャップ飛びが生じたものと評価し、5個のうち1個でもキャップ飛びが生じたものを「×」とした。一方、キャップ把持具112の上昇が確認されずに、内圧が適度な勾配を持って降下したものを、キャップ飛びが生じなかったものと評価し、「キャップ飛び」を「○」とした。
【0047】
(開栓トルクの評価)
また、試料1及び試料6のライナ付キャップを用いてキャップ付ボトル缶を作製し、ライナ付キャップを再栓した際の閉め込み位置(閉止位置)の違いによる開栓時に生じる開栓トルクの違いを確認した。各試料ごとに5個(N=5)のキャップ付ボトル缶を作製して行った。
試料1のライナ付キャップは、キャップ本体に密封層と摺動層とが積層されたライナを装着したものであり、口金部との接触面を構成する密封層の表面を平坦に形成した。一方、試料6のライナ付キャップは、キャップ本体の天面部内面にライナが予め固定されたものであり、口金部との接触面を構成するライナの表面を、口金部の表面に沿って凹溝状に形成した。
【0048】
表5の「閉止位置」は、再栓したキャップ付ボトル缶において、ボトル缶に対する各ライナ付キャップの閉め込み位置を示す。ボトル缶にライナ付キャップを巻締めて密栓した際に、そのライナ付キャップの閉止位置を予めマーキングをしておき、キャップ付ボトル缶のピルファープルーフ部を切断して開栓した後で、再度ライナ付キャップをボトル缶に装着して再栓する際に、そのマーキングの位置を基準にライナ付キャップを閉め込んた。「閉止位置A」は、ライナ付キャップをマーキングが一致する位置まで閉め込んだ状態を示す。また、「閉止位置B」は、ライナ付キャップをマーキングの一致する位置を超えて、周長でおおよそ2mm奥側まで閉め込んだ状態を示す。
なお、ボトル缶を再栓する際にライナ付キャップを閉め込む力は個人差があるが、「閉止位置B」は、多くの場合に想定される閉止位置よりもさらに深く閉め込まれた位置を想定したものである。
【0049】
そして、このようにして再栓したキャップ付ボトル缶の開栓を、
図6に示す開栓装置110を用いてライナ付キャップを閉止位置から周方向に180°回転させることにより行い、ライナ付キャップを閉止位置から周方向に180°開栓した時に生じる開栓トルクの最大値(最大トルク)を確認した。なお、各キャップ付ボトル缶の開栓は、ボトル缶内部に内圧を付加しない状態で行った。結果を表5に示す。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
表4の結果からわかるように、各ベントホールのそれぞれの開口面積(単一面積)が0.35mm2以上0.8mm2以下とされ、各ベントホールの開口面積を総合した総面積が5.0mm2以上11.5mm2以下とされる試料1~4においては、再栓後の内圧が600kPaが設定されたキャップ付ボトル缶のライナ付キャップを閉止位置から周方向に180°回転させて開栓した際に、ボトル缶内部の内圧(180°開栓終了時内圧)を150kPa以下に低下させることができ、内圧が300kPaに達するまでの内圧降下速度も1kPa/msec以上とされ、開栓後速やかに内圧を降下させることができた。また、これら試料1~4においては、作製した5個のキャップ付ボトル缶の全てについてキャップ飛びが生じなかった。
【0056】
一方、各ベントホールの開口面積を総合した総面積が5.0mm2未満とされる試料5においては、作製した5個のキャップ付ボトル缶の全てについてキャップ飛びが生じなかったものの、試料5では180°開栓終了時内圧を150kPa以下に低下させることができず、内圧降下速度も1kPa/msec未満となり、開栓後速やかに内圧を開放することができなかった。また、試料6に至っては、作製した5個のキャップ付ボトル缶のうちの3個において、180°の開栓が終了するまでの間にキャップ飛びが生じた。なお、試料6の結果については、キャップ飛びが生じたことから、除圧終了時間及び180°開栓終了時内圧を測定することができず、これらの欄を「―」で記載した。
【0057】
また、表5の結果からわかるように、ライナの表面、すなわちボトル缶の口金部との接触面である密封層の表面を平坦に形成するとともに、キャップ本体の天面部とライナとを非接着状態に設けた試料1においては、閉止位置Aと閉止位置Bとのいずれにおいても、最大トルクが80N・cm以下に維持されている。このように、開栓時の最大トルクが80N・cm以下とし、開栓トルクを比較的低い状態に維持することで、個人差なく開栓動作を円滑に行えることから、少なくとも180°の回転量を確実に確保することができる。したがって、内圧を600kPaとしたキャップ付ボトル缶において、開栓時に速やかに内圧を150kPa以下まで低下させることができ、キャップ飛びリスクを低減することができる。なお、この試料1のライナ付キャップにおいては、表4に示すように、内圧降下速度が1kPa/msec以上とされ、開栓後速やかに内圧を降下させることができる。
一方、キャップ本体の天面部内面にライナが接着して設けられ、口金部との接触面を構成するライナの表面を口金部の表面に沿って凹溝状に形成した試料6においては、閉止位置Aにおける最大トルクが80N・cmを大きく超える結果となった。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 ライナ付キャップ
13 雌ねじ部
14 ピルファープルーフ部
17 スリット
17a ブリッジ
20 ボトル缶(容器)
21 口金部
22 膨出部
23 雄ねじ部
24 カール部
31 ナール凹部
32 ベントホール
33 上部突起部
34 下部突起部
35 内圧開放スリット
40 キャップ本体
41 天面部
42 円筒部
43 筒上部
44 筒下部
50 ライナ
51 密封層
52 摺動層
100 キャップ付ボトル缶(キャップ付容器)
110 開栓装置
111 固定治具
112 キャップ把持具
113 開栓駆動部