(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】感光性着色樹脂組成物、硬化物、カラーフィルタ、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/075 20060101AFI20230113BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230113BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20230113BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230113BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
G03F7/075 511
G02B5/20 101
G03F7/031
G03F7/075 521
G03F7/004 505
G03F7/004 501
G02F1/1335 505
(21)【出願番号】P 2018062322
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢実
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-226115(JP,A)
【文献】特開2000-105457(JP,A)
【文献】特開2016-141770(JP,A)
【文献】特開2017-182067(JP,A)
【文献】特開2017-062467(JP,A)
【文献】特開2017-021346(JP,A)
【文献】特開2010-055066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/075
G02B 5/20
G03F 7/031
G03F 7/004
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A1)で表される化合物及び下記一般式(A2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含むケイ素含有化合物(A)と、光重合性化合物(B)と、光開始剤(C)と、色材(D)とを含有し、
前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物の合計の含有量が、前記光重合性化合物(B)100質量部に対し、10.0質量部超過である、感光性着色樹脂組成物。
【化1】
(一般式(A1)において、Rは、水素原子、エーテル結合(-O-)を含んでいてもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基、又は反応性基を有する基であり、
当該反応性基を有する基が、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい、直鎖又は分岐のアルキル基において、少なくとも1つのメチル基を、チオール基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性基に置き換えた一価の基であり、複数あるRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、全てのRのうち少なくとも一部が前記反応性基を有する基である。Lは直接結合又は-O-結合であり、nは2以上30以下の整数を表す。
一般式(A2)において、R’は、水素原子、エーテル結合(-O-)を含んでいてもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基、又は式:-(CH
2)
a-SiA
2Hで表される基(aは1以上3以下の整数であり、Aは、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシ基、メルカプトアルコキシ基又はグリシジルオキシ基を表す。)であり、複数あるR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、全てのR’のうち少なくとも一部が前記式:-(CH
2)
a-SiA
2Hで表される基である。R”は、炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、複数あるR”は同一でも異なっていてもよく、L’は直接結合又は炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、n’は2以上30以下の整数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物は、下記数式(1)で表される反応性基当量が、100g/mol以上である、請求項1に記載の感光性着色樹脂組成物。
数式(1)
反応性基当量(g/mol)=W
(A)(g)/M
(A)(mol)
(数式(1)中、W
(A)は、ケイ素含有化合物の質量(g)を表し、M
(A)はケイ素含有化合物W
(A)(g)中に含まれるエチレン性不飽和結合、チオール基又はエポキシ基である反応性基の合計モル数(mol)を表す。)
【請求項3】
感光性着色樹脂組成物の固形分全量100質量%中、前記ケイ素含有化合物(A)の含有量が10質量%以上80質量%以下であり、
前記ケイ素含有化合物(A)100質量部に対し、アルカリ可溶性樹脂の含有量が25質量部以下である、請求項1又は2に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項4】
前記光開始剤(C)が、下記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物を含有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の感光性着色樹脂組成物。
【化2】
(一般式(C1)において、Xは、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)又は-C(R
a)(R
b)-で表される2価の基であり、R
a及びR
bはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、Xがチオエーテル結合(-S-)又はエーテル結合(-O-)の場合は、Yは無結合であり、Xが-C(R
a)(R
b)-で表される2価の基の場合は、Yは直接結合である。R
cは、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい炭化水素基であり、Zは、水素原子又は-(C=O)R
dであり、R
dは酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基、又は、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基であり、R
eは、炭素数1以上10以下の炭化水素基である。)
【請求項5】
前記光開始剤(C)が、カルバゾール骨格を有しないオキシムエステル化合物を2種以上含む、請求項4に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項6】
前記光開始剤(C)が、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物において、前記一般式(C1)中のXが-C(R
a)(R
b)-で表される2価の基であり、Yが直接結合であるオキシムエステル化合物と、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物において、前記一般式(C1)中のXがチオエーテル結合(-S-)であり、Yが無結合であるオキシムエステル化合物とを含む、請求項4又は5に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項7】
前記光開始剤(C)が、更に、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項8】
更に酸化防止剤を含有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項9】
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤のフェノール性水酸基を加熱により脱離可能な保護基で保護した潜在性ヒンダードフェノール系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項10】
前記色材(D)が、C.I.ピグメントグリーン59と、C.I.ピグメントイエロー150及びその誘導体顔料から選ばれる少なくとも一種の黄色色材とを含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項11】
前記請求項1乃至10のいずれか一項に記載の感光性着色樹脂組成物の硬化物。
【請求項12】
基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが前記請求項11に記載の硬化物である、カラーフィルタ。
【請求項13】
前記請求項12に記載のカラーフィルタを有する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性着色樹脂組成物、硬化物、カラーフィルタ、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。モバイルディスプレイ(携帯電話、スマートフォン、タブレットPC)の普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。また、最近においては、自発光により視認性が高い有機ELディスプレイのような有機発光表示装置も、次世代画像表示装置として注目されている。これらの画像表示装置の性能においては、高演色化、高コントラスト化、高精彩化といったさらなる高画質化や消費電力の低減が強く望まれている。
【0003】
これらの液晶表示装置や有機発光表示装置には、カラーフィルタが用いられている。例えばカラー液晶ディスプレイの場合は、バックライトを光源とし、電気的に液晶を駆動させることで光量を制御し、その光がカラーフィルタを通過することで色表現を行っている。有機発光表示装置では、画素の色調整を、カラーフィルタを用いて行う場合や、白色発光の有機発光素子にカラーフィルタを用いて液晶表示装置と同様にカラー画像を形成する場合がある。
【0004】
近年の傾向として、画像表示装置の省電力化が求められており、バックライトの利用効率を向上させるためにカラーフィルタの高輝度化が特に求められている。特にモバイルディスプレイでは大きな課題である。技術進化により電池容量が大きくなったとは言え、モバイルの蓄電量は有限であることに変わりはなく、その一方で画面サイズの拡大に伴い消費電力は増加する傾向にある。モバイル端末の使用可能時間や充電頻度に直結するために、カラーフィルタを含む画像表示装置は、モバイル端末の設計や性能を左右する。
【0005】
ここで、カラーフィルタは、一般的に、透明基板と、透明基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように透明基板上に形成された遮光部とを有している。
このような着色層の形成方法の一つとして、基板上に、色材と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物とを含む感光性着色樹脂組成物を塗布し、所定のマスクパターンを介して露光し、その後、現像処理することにより、パターニングされた着色層とする方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0006】
一方で、特許文献2には、カラーフィルタ用の着色層を、レジストをマスクとして用いて、エッチングによりパターニングする場合、エッチング後、着色層上にあるレジストを除去する際に、レジストとともに除去されにくい着色層を形成することを目的として、シロキサン樹脂を含む樹脂成分と有機色材とを含む着色組成物であって、着色組成物の全固形分中の有機色材の含有量が20~90質量%であり、着色組成物の全固形分中の樹脂成分の含有量が10~80質量%であり、樹脂成分の全質量に対するシロキサン樹脂の含有量が80~100質量%である、着色組成物が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、液晶ディスプレイにおいて、薄膜トランジスタ素子上に被覆形成する透明な平坦化膜などに利用可能であり、透明性、耐薬品性、耐環境性にすぐれた硬化膜またはパターンを低温で形成させることができることを目的として、ポリシロキサン、(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリロイル基を2つ以上含む化合物、重合開始剤、および溶剤を含んでなることを特徴とする、ネガ型感光性組成物が開示されているが、特許文献3には、色材を含んだ感光性着色樹脂組成物については一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-44195号公報
【文献】国際公開第2015/174189号公報
【文献】特開2015-18226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、良好な現像性を有しながら、高輝度な着色層を形成可能な感光性着色樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該感光性着色樹脂組成物の硬化物、当該感光性着色樹脂組成物を用いた、高輝度な着色層を有するカラーフィルタ、及び、当該カラーフィルタを用いた、高輝度な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、下記一般式(A1)で表される化合物及び下記一般式(A2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含むケイ素含有化合物(A)と、光重合性化合物(B)と、光開始剤(C)と、色材(D)とを含有し、
前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物の合計の含有量が、前記光重合性化合物(B)100質量部に対し、10.0質量部超過である。
【0011】
【化1】
(一般式(A1)において、Rは、水素原子、エーテル結合(-O-)を含んでいてもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基、又は反応性基を有する基であり、
当該反応性基を有する基が、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい、直鎖又は分岐のアルキル基において、少なくとも1つのメチル基を、チオール基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性基に置き換えた一価の基であり、複数あるRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、全てのRのうち少なくとも一部が前記反応性基を有する基である。Lは直接結合又は-O-結合であり、nは2以上30以下の整数を表す。
一般式(A2)において、R’は、水素原子、エーテル結合(-O-)を含んでいてもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基、又は式:-(CH
2)
a-SiA
2Hで表される基(aは1以上3以下の整数であり、Aは、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシ基、メルカプトアルコキシ基又はグリシジルオキシ基を表す。)であり、複数あるR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、全てのR’のうち少なくとも一部が前記式:-(CH
2)
a-SiA
2Hで表される基である。R”は、炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、複数あるR”は同一でも異なっていてもよく、L’は直接結合又は炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、n’は2以上30以下の整数を表す。)
【0012】
本発明は、前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物を提供する。
【0013】
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、前記着色層の少なくとも1つが、前記本発明に係る硬化物であることを特徴とする。
【0014】
本発明は、前記本発明に係るカラーフィルタを有する表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、良好な現像性を有しながら、高輝度な着色層を形成可能な感光性着色樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、当該感光性着色樹脂組成物の硬化物、当該感光性着色樹脂組成物を用いた、高輝度な着色層を有するカラーフィルタ、及び、当該カラーフィルタを用いた、高輝度な表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の表示装置の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の表示装置の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る感光性着色樹脂組成物、硬化物、カラーフィルタ、表示装置について、順に詳細に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれる。非可視領域の波長の電磁波としては、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことをいう。
本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表す。
また、本明細書において、C.I.ピグメントレッドを「PR」、C.I.ピグメントグリーンを「PG」、C.I.ピグメントイエローを「PY」と適宜略記する。
【0018】
[感光性着色樹脂組成物]
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、下記一般式(A1)で表される化合物及び下記一般式(A2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含むケイ素含有化合物(A)と、光重合性化合物(B)と、光開始剤(C)と、色材(D)とを含有し、
前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物の合計の含有量が、前記光重合性化合物(B)100質量部に対し、10.0質量部超過であり、
前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物が有する反応性基が、光照射又は加熱により架橋構造を形成し得る基であることを特徴とする。
【0019】
【化2】
(一般式(A1)において、Rは、水素原子、酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭素数1以上10以下の炭化水素基、又は反応性基を有する基であり、複数あるRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、全てのRのうち少なくとも一部が反応性基を有する基である。Lは直接結合又は-O-結合であり、nは2以上30以下の整数を表す。
一般式(A2)において、R’は、水素原子、酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭素数1以上10以下の炭化水素基、又は反応性基を有する基であり、複数あるR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、全てのR’のうち少なくとも一部が反応性基を有する基である。R”は、炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、複数あるR”は同一でも異なっていてもよく、L’は直接結合又は炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、n’は2以上30以下の整数を表す。)
【0020】
また、本発明に係る感光性着色樹脂組成物の第1実施形態は、前記一般式(A1)で表される化合物を含むケイ素含有化合物(A)と、光重合性化合物(B)と、光開始剤(C)と、色材(D)とを含有し、
前記一般式(A1)で表される化合物の含有量が、前記光重合性化合物(B)100質量部に対し、10.0質量部超過であり、
前記一般式(A1)で表される化合物が有する反応性基が、光照射又は加熱により架橋構造を形成し得る基であることを特徴とする。
また、本発明に係る感光性着色樹脂組成物の第2実施形態は、前記一般式(A2)で表される化合物を含むケイ素含有化合物(A)と、光重合性化合物(B)と、光開始剤(C)と、色材(D)とを含有し、
前記一般式(A2)で表される化合物の含有量が、前記光重合性化合物(B)100質量部に対し、10.0質量部超過であり、
前記一般式(A2)で表される化合物が有する反応性基が、光照射又は加熱により架橋構造を形成し得る基であることを特徴とする。
また、本発明に係る感光性着色樹脂組成物の第3実施形態は、前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物を含むケイ素含有化合物(A)と、光重合性化合物(B)と、光開始剤(C)と、色材(D)とを含有し、
前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物の合計の含有量が、前記光重合性化合物(B)100質量部に対し、10.0質量部超過であり、
前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物が有する反応性基が、光照射又は加熱により架橋構造を形成し得る基であることを特徴とする。
【0021】
特許文献1に記載されているような、バインダー成分としてアルカリ可溶性樹脂を用いた従来の着色樹脂組成物では、カラーフィルタの着色層を形成する際に、ポストベーク時の加熱によりバインダー成分が酸化して着色し、着色層の輝度が低下するという問題がある。一方で、カラーフィルタ画素をより高演色、低膜厚なものとするため、画素に含まれる色材の高濃度化が求められている。しかし、着色樹脂組成物に含まれる色材を高濃度化すると、アルカリ可溶性成分の減少に伴い、パターン形成時の現像性が低下するという問題があり、特に細線パターンを形成する際に、パターンの直線乃至曲線が不均一となって寸法精度が悪化する不具合、いわゆるビリツキが発生し易くなる。
また、特許文献2に記載されているシロキサン樹脂を含む着色組成物を用いて形成された着色層は、ポストベーク時の加熱により色味が変わってしまったり、輝度が低下する場合があり、十分な輝度を達成することが困難である。
それに対し、本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、バインダー成分として、前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であるケイ素含有化合物を、光重合性化合物100質量部に対し、10.0質量部超過含有することにより、良好な現像性を有しながら、高輝度な着色層を形成可能である。
本発明の感光性着色樹脂組成物は、バインダー成分として、前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である、反応性基を有する特定のケイ素含有化合物を特定量含有し、前記特定のケイ素含有化合物が耐熱性に優れるため、ポストベーク時の加熱によるバインダー成分の分解乃至酸化が抑制されて、バインダー成分の着色が抑制され、更に、前記特定のケイ素含有化合物が有する反応性基が架橋構造を形成することにより、ポストベーク時の加熱による塗膜の着色がより生じ難いため、高輝度な着色層を形成することができると考えられる。前記特定のケイ素含有化合物は、このようにポストベーク時の加熱による輝度の低下を抑制するものでありながら、更に良好な現像性を有するため、本発明の感光性着色樹脂組成物は、良好な現像性を有しながら、高輝度な着色層を形成可能である。
前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物が耐熱性に優れるのは、主鎖にケイ素原子を含み、ケイ素原子を含む結合が酸化反応に対して安定であり、大気雰囲気下で加熱しても酸化が起こり難く、その構造が安定しているためと考えられる。更に、前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物は、反応性基を有し、着色層を形成する過程で当該反応性基同士が結合して架橋構造を形成するため、当該架橋構造によって、着色層中への酸素の侵入が抑制されることにより、バインダー成分の分解乃至酸化がより抑制されると考えられる。また、当該架橋構造によって、着色層中の色材の動きが抑制されることにより、色材の分解乃至酸化も抑制されると考えられる。このように、前記特定のケイ素含有化合物を用いることにより、バインダー成分の分解乃至酸化、並びに色材の分解乃至酸化が抑制されることから、高輝度な着色層を形成することができると考えられる。
また、前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物は、ケイ素原子を含むことにより、ケイ素原子と、炭素原子又は酸素原子との間に、電気陰性度の差が生じ、極性が偏っているため、同じく極性が偏っているイオン性のアルカリを吸着しやすく、良好なアルカリ現像性を有すると考えられる。更に、前記一般式(A1)で表される化合物は、主鎖のSi-O結合が、水との親和性が高いことにより、アルカリ現像性がより向上しやすいと考えられる。
【0022】
本発明の感光性着色樹脂組成物は、少なくとも、バインダー成分として、ケイ素含有化合物(A)と、光重合性化合物(B)と、光開始剤(C)とを含有し、更に着色成分として、色材(D)とを含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本発明の感光性着色樹脂組成物の各成分について、順に詳細に説明する。
【0023】
本発明の感光性着色樹脂組成物は、バインダー成分として、ケイ素含有化合物(A)と、光重合性化合物(B)と、光開始剤(C)とを含有することにより、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与することができ、フォトリソグラフィー法によって既存のプロセスを用いて簡便にパターンを形成できる。
【0024】
<ケイ素含有化合物(A)>
本発明の感光性着色樹脂組成物は、ケイ素含有化合物(A)として、下記一般式(A1)で表される化合物及び下記一般式(A2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である、反応性基を有するケイ素含有化合物を含有する。下記一般式(A1)で表される化合物及び下記一般式(A2)で表される化合物は、各々1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
【化3】
(一般式(A1)において、Rは、水素原子、酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭素数1以上10以下の炭化水素基、又は反応性基を有する基であり、複数あるRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、全てのRのうち少なくとも一部が反応性基を有する基である。Lは直接結合又は-O-結合であり、nは2以上30以下の整数を表す。
一般式(A2)において、R’は、水素原子、酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭素数1以上10以下の炭化水素基、又は反応性基を有する基であり、複数あるR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、全てのR’のうち少なくとも一部が反応性基を有する基である。R”は、炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、複数あるR”は同一でも異なっていてもよく、L’は直接結合又は炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、n’は2以上30以下の整数を表す。)
【0026】
一般式(A1)中のR及び一般式(A2)中のR’における反応性基は、光照射又は加熱により架橋構造を形成し得る基であり、すなわち、光照射又は加熱により互いに反応して結合することにより架橋構造を形成し得る基であり、同種の反応性基同士で反応して結合し、架橋構造を形成し得る基であることが好ましい。
前記反応性基同士が互いに反応して結合するための光照射又は加熱の条件は、反応性基の種類によって適宜選択され、特に限定はされないが、前記反応性基が光照射により互いに反応して結合する場合は、例えば、後述するカラーフィルタにおいて、着色層を形成する際の露光により、前記反応性基同士を互いに結合させることができる。当該露光には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯等の光源から発せられる紫外線を好適に用いることができる。露光量は、30mJ/cm2以上200mJ/cm2以下が好ましく、40mJ/cm2以上150mJ/cm2以下がより好ましく、50mJ/cm2以上100mJ/cm2以下がより更に好ましい。前記反応性基が加熱により互いに反応して結合する場合は、例えば、後述するカラーフィルタにおいて、着色層を形成する際の露光の後、好ましくは80℃以上250℃以下、より好ましくは100℃以上240℃以下、より更に好ましくは180℃以上230℃以下、最も好ましくは200℃以上230℃以下で加熱することにより、前記反応性基同士を互いに結合させることができる。前記加熱の時間は、10分以上180分以下であることが好ましく、20分以上150分以下であることがより好ましい。
【0027】
前記反応性基としては、中でも、エチレン性不飽和結合、チオール基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。前記反応性基を有する基は、中でも、着色層の輝度を向上する点からは、(メタ)アクリロイル基を有する基であることがが好ましく、現像性を向上する点からは、エポキシ基を有する基であることが好ましい。
なお、前記反応性基は、同種の反応性基同士で反応して結合することができるものであれば、異種の反応性基や別の官能基とも反応して結合するものであってもよい。
【0028】
前記反応性基がチオール基を含む場合は、本発明の感光性着色樹脂組成物を用いて着色層を形成する際のポストベークの温度を低減できる点から好ましい。この場合、前記ポストベークの温度を、例えば、70℃以上150℃以下とすることができ、より好ましい態様においては、80℃以上120℃以下とすることができる。また、前記反応性基がチオール基を含む場合は、前記ポストベークの加熱処理の時間は、10分以上120分以下であることが好ましい。
また、ポストベークの温度を低減する観点からは、前記反応性基の総量100モル%のうちのチオール基の割合が、10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがより更に好ましく、前記反応性基がチオール基であることが特に好ましい。
【0029】
一般式(A1)中のR及び一般式(A2)中のR’において、反応性基を有する基は、前記反応性基を有する一価の基であり、前記反応性基を少なくとも1つ有する一価の基である。前記反応性基を有する基としては、例えば、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい、直鎖又は分岐のアルキル基において、少なくとも1つのメチル基を、チオール基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基又はエポキシ基に置き換えた一価の基等が挙げられる。前記アルキル基の炭素数は、1以上であれば良いが、前記反応性基により形成される架橋構造が、前記色材の熱運動を抑制して耐熱性を向上し、輝度の低下を抑制する効果が高い点から、20以下であることが好ましく、17以下であることがより好ましく、更に10以下であることが好ましく、更に6以下であることが好ましく、更に4以下であることが好ましく、更に3以下であることが好ましい。前記アルキル基が直鎖アルキル基の場合の炭素数は、1以上10以下であることが好ましく、1以上6以下であることがより好ましく、1以上3以下であることがより更に好ましい。前記アルキル基が分岐アルキル基の場合の炭素数は、3以上20以下であることが好ましく、4以上17以下であることがより好ましい。また、前記アルキル基は、直鎖状であると、酸化による構造変化を受けにくい点から好ましく、分岐状であると、末端を複数有することにより、各末端に前記反応性基を導入して、架橋構造を形成しやすくできる点や、架橋密度が大きくなりやすく、熱による架橋構造の振動を抑制できる点から好ましい。
【0030】
前記反応性基を有する基としては、例えば、3-グリシドキシプロピル基等のグリシドキシアルキル基、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、3-メルカプトプロピル基等のメルカプトアルキル基、2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基、1-(メタ)アクリロイルオキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-プロポキシ基等の(メタ)アクリロイルオキシアルコキシ基、2-メルカプトエトキシ基、メルカプトメトキシ基等のメルカプトアルコキシ基、グリシジルオキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、ペンタエリトリトールテトラキス(メルカプトアセタート)の末端の-SHから水素原子1個を除いた基等、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい直鎖又は分岐アルキル基の末端に前記反応性基を有するものを好適に用いることができる。
また、前記反応性基を有する基としては、チオール基等、前記反応性基からなる基であってもよい。前記反応性基からなる基は、高密度な架橋構造を形成することができることにより、着色層の耐熱性を向上し易い点から好ましい。
また、一般式(A2)中のR’における反応性基を有する基としては、式:-(CH2)a-SiA2Hで表される基(aは1以上3以下の整数であり、Aは、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシ基、メルカプトアルコキシ基又はグリシジルオキシ基を表す。)も好ましい。前記式において、aは1又は2であることがより好ましい。
前記反応性基を有する基としては、中でも、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基又はチオール基を有する基が、輝度及び現像性の点から好ましい。
【0031】
前記一般式(A1)で表される化合物は、前記一般式(A1)中の全てのRのうち少なくとも一部が前記反応性基を有する基であり、中でも、前記一般式(A1)で表される化合物の前記反応性基当量は、加熱による輝度の低下を抑制しやすい点から、100g/mol以上であることが好ましく、105g/mol以上であることがより好ましく、110g/mol以上であることがより更に好ましく、一方、現像性の点から、300g/mol以下であることが好ましく、250g/mol以下であることがより好ましく、200g/mol以下であることがより更に好ましい。
前記一般式(A2)で表される化合物は、前記一般式(A2)中の全てのR’のうち少なくとも一部が前記反応性基を有する基であり、中でも、前記一般式(A2)で表される化合物の前記反応性基当量は、加熱による輝度の低下を抑制しやすい点から、100g/mol以上であることが好ましく、105g/mol以上であることがより好ましく、110g/mol以上であることがより更に好ましく、一方、現像性の点から、300g/mol以下であることが好ましく、250g/mol以下であることがより好ましく、200g/mol以下であることがより更に好ましい。
ここで、前記ケイ素含有化合物の反応性基当量は、下記数式(1)で表される。
数式(1)
反応性基当量(g/mol)=W(A)(g)/M(A)(mol)
(数式(1)中、W(A)は、ケイ素含有化合物の質量(g)を表し、M(A)はケイ素含有化合物W(A)(g)中に含まれる全ての反応性基の合計モル数(mol)を表す。)
【0032】
前記一般式(A1)中のR及び前記一般式(A2)中のR’における酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭素数1以上10以下の炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基のいずれであってもよく、直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよいが、中でも、直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。また、前記炭化水素基が酸素原子を有する場合としては、例えば、エーテル結合(-O-)を含む炭化水素基が挙げられ、典型的にはアルコキシ基である。前記一般式(A1)中のR及び前記一般式(A2)中のR’における酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭化水素基の炭素数は、中でも、1以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。
【0033】
前記一般式(A2)中のR”における炭素数1以上3以下のアルキレン基としては、中でも、エチレン基が保存安定性と反応性のバランスの点、及び耐熱性の点から好ましい。
【0034】
前記一般式(A1)中のLは、直接結合又は-O-結合であり、中でも、-O-結合であることが好ましい。
前記一般式(A2)中のL’は、直接結合又は炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、中でも、炭素数1以上3以下のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
なお、L又はL’が直接結合であるとは、ケイ素原子同士が直接結合していることをいう。
【0035】
前記一般式(A1)中のn及び前記一般式(A2)中のn’は、2以上30以下であれば特に限定はされないが、中でも、硬化性と製版性の点から、3以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、一方、現像性と相溶性の点から、27以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましく、更に20以下であることが好ましく、更に10以下であることが好ましい。
【0036】
また、現像性の点から、前記一般式(A1)で表される化合物の分子量は、300以上5000以下であることが好ましく、500以上4000以下であることがより好ましく、1000以上3000以下であることがより更に好ましく、前記一般式(A2)で表される化合物の分子量は、300以上5000以下であることが好ましく、500以上4000以下であることがより好ましく、1000以上3000以下であることがより更に好ましい。
【0037】
前記一般式(A1)で表される化合物としては、中でも、下記一般式(A1-1)で表される末端構造を有し、更に下記一般式(A1-2)で表される構成単位を有することが好ましく、下記一般式(A1-2)で表される構成単位が3つ以上結合した部分構造を有するケイ素含有化合物がより好ましい。当該好ましいケイ素含有化合物は、下記一般式(A1-3)で表される構成単位を更に有していてもよい。当該好ましいケイ素含有化合物としては、下記一般式(A1-1)で表される末端構造と、下記一般式(A1-2)で表される構成単位が3つ以上結合した部分構造と、前記末端構造と下記一般式(A1-2)で表される構成単位とを連結する-O-結合と、からなるケイ素含有化合物が特に好ましい。ここで、末端構造とは、前記一般式(A1)で表される化合物の主鎖の両末端の構造をいう。
【0038】
【化4】
(一般式(A1-1)において、R
iは、水素原子、酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭素数1以上10以下の炭化水素基、又は反応性基を有する基である。
一般式(A1-2)において、R
iiは、反応性基を有する基である。
一般式(A1-3)において、R
iiiは、水素原子、又は酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭素数1以上10以下の炭化水素基である。)
【0039】
前記一般式(A1-1)中、複数あるRiはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、同一であることが好ましく、また、各末端構造でRiが異なっていてもよいが、すべての末端構造において、Riは同一であることが好ましい。
前記一般式(A1-2)中、複数あるRiiはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、同一であることが好ましい。各構成単位でRiiは異なっていてもよいが、架橋構造を形成しやすい点からは、前記一般式(A1-2)で表される構成単位全てにおいて、Riiは同一であることが好ましい。
前記一般式(A1-3)中、複数あるRiiiはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、同一であることが好ましい。各構成単位でRiiiは同一でも異なっていてもよい。
【0040】
前記一般式(A1-1)及び前記一般式(A1-2)における反応性基を有する基、並びに、前記一般式(A1-1)及び前記一般式(A1-3)における酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭素数1以上10以下の炭化水素基は、それぞれ前記一般式(A1)と同様であり、それぞれ前記一般式(A1)において好ましいものを同様に好ましく用いることができる。前記一般式(A1-1)及び前記一般式(A1-2)における反応性基を有する基としては、中でも、炭素数1以上6以下の直鎖アルコキシ基又は炭素数1以上6以下の直鎖アルキル基の末端に、-O-結合、-O-(C=O)-結合、炭素数1以上3以下のアルキレン基又はこれらの組み合わせである2価の連結基を介して又は介さずに、前記反応性基を有する基が好ましく、中でも、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、メルカプトアルキル基、グリシドキシアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシ基、メルカプトアルコキシ基又はグリシジルオキシ基がより好ましく、より具体的には、3-グリシドキシプロピル基、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、3-メルカプトプロピル基、2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基、2-メルカプトエトキシ基、メルカプトメトキシ基又はグリシジルオキシ基が好ましい。これらの中でも更に、炭素数1以上6以下の直鎖アルコキシ基の末端に、-O-結合、-O-(C=O)-結合、炭素数1以上3以下のアルキレン基又はこれらの組み合わせである2価の連結基を介して又は介さずに、前記反応性基を有する基が好ましく、中でも、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシ基、メルカプトアルコキシ基又はグリシジルオキシ基がより好ましく、より具体的には、2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基、2-メルカプトエトキシ基又はグリシジルオキシ基が好ましい。
前記一般式(A1-1)中のRiは、中でも、酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭素数1以上10以下の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上4以下のアルコキシ基であることがより好ましい。
前記一般式(A1-1)中のRiが反応性基を有する基である場合、Riが有する反応性基は、前記一般式(A1-2)中のRiiが有する反応性基と同一であっても異なっていてもよいが、架橋構造を形成しやすい点から、同一であることが好ましい。
【0041】
前記の好ましい一般式(A1)で表されるケイ素含有化合物が有する構成単位の総量のうち、前記一般式(A1-2)で表される構成単位の含有割合、及び前記一般式(A1-3)で表される構成単位の含有割合は、当該ケイ素含有化合物が含有する反応性基の量が前記好ましい範囲になるように適宜調整されることが好ましい。
【0042】
前記一般式(A1)で表される化合物は、例えば、下記一般式(a1)で表されるジシロキサンの存在下に、下記一般式(a2)で表される環状シロキサンを含有し、更に必要に応じて下記一般式(a3)で表される環状シロキサンを含有する環状シロキサンの混合物を、開環重合させることにより製造することができる。
【0043】
【化5】
(一般式(a1)中のR
iは、前記一般式(A1-1)と同様であり、一般式(a2)中のR
iiは、前記一般式(A1-2)と同様であり、一般式(a2)中のR
iiiは前記一般式(A1-3)と同様である。n1及びn2はそれぞれ独立に、3又は4である。)
【0044】
前記環状シロキサンの混合物中の前記一般式(a2)で表される環状シロキサンの含有割合は、ケイ素含有化合物が含有する反応性基の量が前記好ましい範囲になるように適宜調整されればよく、特に限定はされないが、環状シロキサンの合計100モル%中、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0045】
また、前記一般式(a1)で表されるジシロキサンの存在下に、前記一般式(a2)で表される環状シロキサンを含有し、更に必要に応じて前記一般式(a3)で表される環状シロキサンを含有する環状シロキサンの混合物を、開環重合させる際においては、前記ジシロキサン1モルに対し、前記環状シロキサンの合計量を、1モル以上10モル以下とすることが好ましく、2モル以上8モル以下とすることがより好ましい。
【0046】
前記開環重合反応の条件は、使用する材料の種類に応じて、適宜選択され、特に限定はされないが、例えば、前記ジシロキサンと前記環状シロキサンとを含む混合物を、50℃以上150℃以下の温度に加熱し、8時間以上24時間以下保つことにより行うことができる。
前記開環重合反応の際には、触媒を用いることが好ましい。前記触媒としては、公知のものを用いることができ、特に限定はされず、塩基性触媒又は強酸性触媒のいずれも使用することができる。前記触媒は、開環重合によって得られた生成物を中和又は水洗することにより除去することができる。前記開環重合反応の際には、必要に応じて溶媒を用いても良い。
【0047】
前記一般式(A1)で表される化合物は、下記一般式(a4)で表されるポリシロキサンと、テトラアルコキシシランとを反応させることにより製造することもできる。
【0048】
【化6】
(一般式(a4)中、R
iiは前記一般式(A1-2)と同様である。n3は2以上30以下の整数を表す。)
【0049】
前記一般式(a4)中のn3は、中でも5以上であることが好ましい。
前記テトラアルコキシシランとしては、中でも、当該テトラアルコキシシランが有するアルコキシ基の炭素数が1以上4以下であることが好ましく、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等を好適に用いることができ、中でも、テトラメトキシシランが特に好ましい。
【0050】
前記一般式(a4)で表されるポリシロキサンと、テトラアルコキシシランとを反応させる際は、テトラアルコキシシラン1.0モルに対し、前記一般式(a4)で表されるポリシロキサンを0.5モル以上2.0モル以下とすることが好ましく、0.6モル以上2.0モル以下とすることがより好ましい。
【0051】
前記一般式(a4)で表されるポリシロキサンと、テトラアルコキシシランとの反応条件は、適宜調整され、特に限定はされないが、50℃以上140℃の反応温度で1時間以上10時間以下行うことが好ましい。また、前記一般式(a4)で表されるポリシロキサンと、テトラアルコキシシランとの反応においては、必要に応じて、酸性又は塩基性の触媒を用いても良いし、溶媒を用いても良い。前記触媒の添加量は、前記一般式(a4)で表されるポリシロキサンと、テトラアルコキシシランとの合計量に対して100ppm以下であることが好ましい。また、前記反応の際は、副生するアルコールを減圧下又は窒素気流下で除去しながら行うことが好ましい。
【0052】
前記一般式(A2)で表される化合物は、中でも、下記一般式(A2-1)で表される末端構造を有し、更に下記一般式(A2-2)で表される構成単位を有するケイ素含有化合物が好ましい。当該好ましいケイ素含有化合物は、下記一般式(A2-3)で表される構成単位を更に有していてもよい。当該好ましいケイ素含有化合物としては、中でも、下記一般式(A2-1)で表される末端構造と、下記一般式(A2-2)で表される構成単位と、下記一般式(A2-3)で表される構成単位と、前記末端構造と前記一般式(A2-2)で表される構成単位又は前記一般式(A2-3)で表される構成単位とを連結する炭素数1以上3以下のアルキレン基と、からなるケイ素含有化合物が特に好ましい。ここで、末端構造とは、前記一般式(A2)で表される化合物の主鎖の両末端の構造をいう。
【0053】
【化7】
(一般式(A2-1)において、R
ivは、水素原子、酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭素数1以上10以下の炭化水素基、又は反応性基を有する基である。
一般式(A2-2)において、R
vは、反応性基を有する基、水素原子、又は酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、少なくとも1つのR
vは反応性基を有する基であり、R”は、炭素数1以上3以下のアルキレン基である。
一般式(A2-3)において、R
viは、水素原子、又は酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、R”は、炭素数1以上3以下のアルキレン基である。)
【0054】
前記一般式(A2-1)及び前記一般式(A2-2)における反応性基を有する基、並びに、前記一般式(A2-1)、前記一般式(A2-2)及び前記一般式(A2-3)における酸素原子を有していてもよく、反応性基を有しない炭素数1以上10以下の炭化水素基は、それぞれ前記一般式(A2)と同様であり、それぞれ前記一般式(A2)において好ましいものを同様に好ましく用いることができる。
前記一般式(A2-1)中、複数あるRivはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、1つのRivが水素原子であり、残りの2つのRivが反応性基を有する基であることが好ましい。Rivにおける反応性基を有する基としては、中でも、炭素数1以上6以下の直鎖アルコキシ基の末端に、-O-結合、-O-(C=O)-結合、炭素数1以上3以下のアルキレン基又はこれらの組み合わせである2価の連結基を介して又は介さずに、前記反応性基を有する基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシ基、メルカプトアルコキシ基又はグリシジルオキシ基がより好ましく、より具体的には、2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基、2-メルカプトエトキシ基、メルカプトメトキシ基又はグリシジルオキシ基が好ましい。
前記一般式(A2-2)中、複数あるRvはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、同一であることが好ましく、反応性基を有する基であることが好ましい。Rvにおける反応性基を有する基としては、中でも、前記式:-(CH2)a-SiA2Hで表される基(aは1以上3以下の整数であり、Aは、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシ基、メルカプトアルコキシ基又はグリシジルオキシ基を表す。)が好ましい。前記式中のAは、中でも、2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基、2-メルカプトエトキシ基、メルカプトメトキシ基又はグリシジルオキシ基であることが好ましい。
前記一般式(A2-3)中、複数あるRviはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、同一であることが好ましく、水素原子であることが好ましい。
【0055】
前記の好ましい一般式(A2)で表されるケイ素含有化合物が有する構成単位の総量のうち、前記一般式(A2-2)で表される構成単位の含有割合、及び前記一般式(A2-3)で表される構成単位の含有割合は、当該ケイ素含有化合物が含有する反応性基の量が前記好ましい範囲になるように適宜調整されることが好ましい。
【0056】
前記一般式(A2)で表される化合物は、例えば、下記一般式(a5)で表されるモノクロロシランを、下記一般式(a6)で表される多官能ビニル化合物に付加させた後、還元することにより製造することができる。
【0057】
【化8】
(一般式(a5)中のR
ivは反応性基を有する基であり、一般式(a6)中のR”は、炭素数1以上3以下のアルキレン基である。)
【0058】
前記一般式(a5)中のRivは、前記一般式(A2-1)中のRivにおける反応性基を有する基と同様である。
【0059】
前記一般式(a5)で表されるモノクロロシランを、前記一般式(a6)で表される多官能ビニル化合物に付加させる方法としては、例えば、Pt化合物を用いる方法が挙げられ、前記付加させた後、還元剤を用いることにより還元することができる。ここで、Pt化合物を用いた付加反応は、公知の方法、条件にて行うことができる。また、前記還元剤としては、例えばLiAlH4等を使用できる。前記還元反応も、公知の方法、条件にて行うことができる。
【0060】
前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物の合計の含有量は、後述する光重合性化合物(B)100質量部に対し、10.0質量部超過であれば特に限定はされないが、輝度を向上する点から、光重合性化合物(B)100質量部に対し、20質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、75質量部以上であることがより更に好ましく、相溶性の点から、光重合性化合物(B)100質量部に対し、300質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましい。
【0061】
本発明の感光性着色樹脂組成物は、ケイ素含有化合物(A)として、本発明の効果を損なわない範囲で、前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物とは異なるその他のケイ素含有化合物を含んでいても良い。前記その他のケイ素含有化合物としては、例えば、主鎖がC-C結合である部分構造とシロキサン骨格を有する部分構造とを含む共重合体等が挙げられる。
中でも、前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物の合計の含有量は、輝度の点から、ケイ素含有化合物(A)の総量100質量部に対し、80質量部以上であることが好ましく、90質量部以上であることがより好ましく、95質量部以上であることがより更に好ましい。
【0062】
また、感光性着色樹脂組成物中のケイ素含有化合物(A)の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量100質量%中に、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、15質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。ケイ素含有化合物(A)の含有量が前記下限値以上であると、ポストベーク時の加熱による輝度の低下及び色味の変化を抑制しやすく、着色層の輝度を向上しやすく、また、アルカリ現像性も良好になりやすい。ケイ素含有化合物(A)の含有量が前記上限値以下であると、色材濃度を上げることができ、他の成分との併用の効果を十分に発揮することができる。
なお、本発明において固形分とは、溶剤以外のもの全てであり、溶剤中に溶解しているモノマー等も含まれる。
【0063】
<光重合性化合物(B)>
本発明の感光性着色樹脂組成物が含有する光重合性化合物(B)としては、後述する光開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定はされないが、例えば、分子内に、エチレン性不飽和結合を有する化合物を用いることができ、中でも、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物が好ましく、特に、分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、従来公知のものの中から適宜選択して用いればよい。具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0064】
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の感光性着色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能モノマーが、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0065】
感光性着色樹脂組成物中の光重合性化合物(B)の含有量は、硬化不良を抑制し、露光した部分が現像時に溶出することを抑制する点から、感光性着色樹脂組成物の固形分全量100質量%中に、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。一方、現像不良を抑制する点、輝度を向上する点、及び熱収縮を抑制し、着色層の表面全体に微小な皺が生じ難い点から、光重合性化合物(B)の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量100質量%中に、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、更に55質量%以下であることが好ましく、更に40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下としても良く、25質量%以下としても良い。
【0066】
<光開始剤(C)>
本発明の感光性着色樹脂組成物が含有する光開始剤(C)としては、特に制限はなく、従来知られている各種光開始剤の中から、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明の着色樹脂組成物に用いられる光開始剤には、光重合開始剤の他に連鎖移動剤が含まれる。
本発明において、光開始剤(C)としては、オキシムエステル系光開始剤、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤等を好適に用いることができ、中でも、感度を向上させ、前記ケイ素含有化合物との組み合わせにより着色層の輝度を向上しやすい点から、オキシムエステル系光開始剤を含むことが好ましい。また、オキシムエステル系光開始剤を用いることにより、細線パターンを形成する際に、面内の線幅のばらつきが抑制され易い。更に、オキシムエステル系光開始剤を用いることにより、現像耐性が向上し、水染み発生抑制効果が高くなる傾向がある。なお、水染みとは、アルカリ現像性を高くする成分を用いると、アルカリ現像後、純水でリンスした後に、水が染みたような跡が発生することをいう。このような水染みは、ポストベーク後に消えるので製品としては問題がないが、現像後にパターニング面の外観検査において、ムラ異常として検出されてしまい、正常品と異常品の区別がつかないという問題が生じる。そのため、外観検査において検査装置の検査感度を下げると、結果として最終的なカラーフィルタ製品の歩留まり低下を引き起こし、問題となる。
【0067】
本発明において、光開始剤(C)は、中でも、オキシムエステル系光開始剤として、下記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物を含有することが好ましい。
【0068】
【化9】
(一般式(C1)において、Xは、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)又は-C(R
a)(R
b)-で表される2価の基であり、R
a及びR
bはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、Xがチオエーテル結合(-S-)又はエーテル結合(-O-)の場合は、Yは無結合であり、Xが-C(R
a)(R
b)-で表される2価の基の場合は、Yは直接結合である。R
cは、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい炭化水素基であり、Zは、水素原子又は-(C=O)R
dであり、R
dは酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基、又は、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基であり、R
eは、炭素数1以上10以下の炭化水素基である。)
【0069】
より高感度な光開始剤を使用する場合、ラジカル発生後、未露光部までラジカルが移動してしまい、露光部分の内部にある未露光部の形状を保ちつつ、かつ未露光部周辺をビリツキなく形成することは困難である。そのため、細線パターンを形成可能な高感度の光開始剤を使用すると、細線パターンの直線性は良好であっても、細線パターン内に微小孔を形成することは困難な場合があり、一方で、比較的感度の低い光開始剤を使用すると、微小孔を形成することができても、残膜率が低下するといった問題がある。それに対し、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物を用いることにより、残膜率の低下を抑制しながら、細線パターン内に微小孔を形成することができる。
また、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物を用いることにより、細線パターンを形成する際に、直線性を向上することができる。ここで、「直線性が向上する」とは、着色組成物を塗布した後の現像工程において形成される着色層の端部の凹凸が少なく、直線状または略直線状に形成されることをいう。
【0070】
前記一般式(C1)において、X及びYは、中でも、Xがチオエーテル結合(-S-)であり、且つYが無結合であるか、Xが-C(Ra)(Rb)-で表される2価の基であり、且つYが直接結合であることが好ましい。
Ra及びRbはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、当該アルキル基としては、直鎖、分岐、環状、又はこれらの組合せのアルキル基のいずれであってもよく、例えば、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、中でも、炭素数2以上6以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数2以上4以下のアルキル基であることがより好ましく、更に好ましくは炭素数2以上4以下の直鎖アルキル基である。
【0071】
前記一般式(C1)において、Rcは、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい炭化水素基である。
前記Rcにおける炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。前記アルキル基は直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよく、これらの組み合わせであっても良い。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。前記アルケニル基は直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよく、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基などを挙げることができる。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基などを挙げることができる。前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基などを挙げることができる。Rcにおける炭化水素基としては、中でも炭素数1以上14以下の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数7以上8以下のアラルキル基、及び炭素数6以上10以下のアリール基がより好ましく、炭素数1以上10以下のアルキル基がより更に好ましい。また、Rcにおける炭化水素基は、炭素数が2以上であると、現像性を向上する点から好ましい。また、Rcにおける炭化水素基は、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基等の環状及び直鎖状のアルキル基を含む構造であると、溶剤溶解性や相溶性の点から好ましい。
また、前記Rcにおいては、前記炭化水素基が前記2価の連結基を含むことにより、溶剤溶解性や相溶性を向上することができる。前記2価の連結基としては、中でも、溶剤溶解性を向上する点から、チオエーテル結合(-S-)、又はエーテル結合(-O-)であることが好ましい。前記Rcにおいて、前記炭化水素基が前記2価の連結基を含む場合は、前記2価の連結基を介して前記炭化水素基がオキシムエステル基の炭素原子と結合していてもよいし、前記炭化水素基の炭素原子がオキシムエステル基の炭素原子と直接結合していてもよい。前記Rcにおいて、前記炭化水素基が前記2価の連結基を含み、且つ前記炭化水素基の炭素原子がオキシムエステル基の炭素原子と直接結合する場合としては、例えば、前記Rcが、炭化水素基同士を前記2価の連結基で結合した基である場合が挙げられる。炭化水素基同士を前記2価の連結基で結合した基としては、例えば、メチルチオメチル基などのアルキルチオアルキル基、アリールチオアルキル基等のチオエーテル結合(-S-)を含む構造;メトキシメチル基、メトキシシクロへキシル基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基等のエーテル結合(-O-)を含む構造;アセチルメチル基、ベンゾイルメチル基、アシルアルキル基等のカルボニル結合(-CO-)を含む構造;等が挙げられる。
【0072】
前記一般式(C1)において、Zは、水素原子又は-(C=O)Rdであり、Rdは酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基、又は、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基である。前記Rdにおける酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基としては、例えば、前記Rcで説明した炭化水素基、前記Rcで説明した炭化水素基が、エーテル結合(-O-)、カルボニル結合(-CO-)等の酸素原子を含む連結基及びチオエーテル結合(-S-)等の硫黄原子を含む連結基から選択される少なくとも1種の連結基を更に含んだ基が挙げられ、中でも炭素数1以上14以下の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数7以上8以下のアラルキル基、及び炭素数6以上10以下のアリール基がより好ましく、炭素数6以上10以下のアリール基がより更に好ましい。また、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基における複素環としては、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、フロフラン環、チエノフラン環などが挙げられる。前記Rdにおける前記炭化水素基又は前記複素環基は、現像性の点から、炭素数1以上10以下であることが好ましい。
前記Zは、中でも、現像性及び輝度の観点からは、水素原子であることが好ましい。一方で、前記Zが-(C=O)Rdであることにより、溶剤溶解性や相溶性を向上することができる。
【0073】
前記一般式(C1)において、Reは、炭素数1以上10以下の炭化水素基である。
炭素数1以上10以下の炭化水素基としては、例えば、前記Rcで説明した炭化水素基のうち、炭素数1以上10以下のものが挙げられる。前記Reは、中でも感度が向上する点から、炭素数1以上10以下のアルキル基及び炭素数6以上10以下のアリール基が好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0074】
前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物の分子量は、特に限定はされないが、光開始剤の含有量の低減の点から、1,000以下であることが好ましく、更に800以下であることが好ましい。また、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物の分子量の下限は、特に限定はされないが、例えば、300以上とすることができる。
【0075】
前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物のうち、前記一般式(C1)中の-C(Ra)(Rb)-で表される2価の基であり、且つYが直接結合であるオキシムエステル化合物としては、例えば、Ra及びRbが共に炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Rcが炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Zが水素原子であり、Reが炭素数1以上4以下のアルキル基である化合物;Ra及びRbが共に炭素数1以上6以下のアルキル基であり、Rcが直鎖アルキル基と環状アルキル基とを組み合わせた炭素数4以上10以下のアルキル基であり、Zが水素原子であり、Reが炭素数1以上4以下のアルキル基である化合物;Ra及びRbが共に水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Rcが炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Zが-(C=O)Rdであり、Rdが炭素数6以上10以下のアリール基であり、Reが炭素数1以上4以下のアルキル基である化合物;等が好適なものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物のうち、前記一般式(C1)中の-C(Ra)(Rb)-で表される2価の基であり、且つYが直接結合であるオキシムエステル化合物としては、下記化合物(C1-1)~(C1-4)から選ばれる少なくとも一種がより好適なものとして挙げられる。
【0077】
【0078】
前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物のうち、前記一般式(C1)中の-C(Ra)(Rb)-で表される2価の基であり、且つYが直接結合であるオキシムエステル化合物は、例えば、特表2012―526185号公報を参照し、ジフェニルスルフィド又はその誘導体に代えて、フルオレン又はその誘導体を用い、使用する材料に応じて溶剤、反応温度、反応時間、精製方法等を適宜選択することにより、合成することができる。
【0079】
前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物のうち、前記一般式(C1)中のXがチオエーテル結合(-S-)であり、且つYが無結合であるオキシムエステル化合物としては、例えば、Rcが直鎖アルキル基と環状アルキル基とを組み合わせた炭素数6以上10以下のアルキル基であり、Zが水素原子であり、Reが炭素数1以上4以下のアルキル基である化合物;Rcが直鎖アルキル基と環状アルキル基とを組み合わせ
た炭素数6以上10以下のアルキル基であり、Zが-(C=O)Rdであって、当該Rdが窒素原子を含まず、硫黄原子を含む複素環基であり、Reが炭素数1以上4以下のアルキル基である化合物;等が好適なものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物のうち、前記一般式(C1)中のXがチオエーテル結合(-S-)であり、且つYが無結合であるオキシムエステル化合物としては、下記化合物(C1-5)及び下記化合物(C1-6)から選ばれる少なくとも一種がより好適なものとして挙げられる。
【0081】
【0082】
前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物のうち、前記一般式(C1)中のXがチオエーテル結合(-S-)であり、且つYが無結合であるオキシムエステル化合物は、例えば、特表2012―526185号公報を参照して合成することができる。
【0083】
前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物としては、中でも、前記一般式(C1)中のXがチオエーテル結合(-S-)であり、且つYが無結合であるオキシムエステル化合物が、前記ケイ素含有化合物(A)との組み合わせにより、着色層の輝度を向上しやすい点から好ましい。
【0084】
また、本発明の感光性着色樹脂組成物は、前記光開始剤(C)が、カルバゾール骨格を有しないオキシムエステル化合物を2種以上含むことが、輝度を向上した着色層を形成可能であり、感度が良好で、パターン形成の際の線幅の調整が容易な点から好ましい。カルバゾール骨格を有しないオキシムエステル化合物は、反応残基が着色原因になり難いため、着色層の輝度の低下を抑制することができる。中でも、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物を含み、感度の異なる2種以上のオキシムエステル化合物を適宜選択して組み合わせることにより、良好な感度を維持しつつ、パターン形成の際の線幅を調整することができる。本発明の着色樹脂組成物がカルバゾール骨格を有しないオキシムエステル化合物を2種以上含む場合、少なくとも1種以上の前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物を含むことが好ましく、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物を2種以上含んでもよいし、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物と、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物とは異なるカルバゾール骨格を有しないオキシムエステル化合物を組み合わせて含んでもよい。
【0085】
本発明の感光性着色樹脂組成物は、中でも、前記光開始剤(C)が、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物において、前記一般式(C1)中のXが-C(Ra)(Rb)-で表される2価の基であり、Yが直接結合であるオキシムエステル化合物と、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物において、前記一般式(C1)中のXがチオエーテル結合(-S-)であり、Yが無結合であるオキシムエステル化合物とを組み合わせて含むことが、輝度を向上した着色層を形成可能であり、パターン形成の際の線幅の調整が容易であり、細線パターンを形成する際に、直線性がより向上したり、ビリツキが抑制される点から好ましい。着色層をパターニングする際に同時に着色層に所望の微小孔を形成する場合、微小孔の周縁部に特にビリツキが発生しやすいが、微小孔周縁部のビリツキも抑制することができる。
【0086】
また、本発明の感光性着色樹脂組成物は、前記光開始剤(C)が、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物を含有し、更に、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤から選ばれる少なくとも1種を含有することが、より輝度を向上しつつ、細線パターンを形成する際に、直線性がより向上したり、マスク線幅の設計通りに細線パターンを形成する能力が向上する点から好ましい。
中でも、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤を更に組み合わせて用いることが、パターン形成する際に、ビリツキが抑制される点から好ましい。アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤は他の開始剤と比較して熱分解温度が高いため、プリベーク時の加熱による副反応が起こりにくいことにより、ビリツキが抑制されると考えられる。
【0087】
また、細線パターンを形成する際に、直線性がより向上する点からは、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物に、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせて用いることが好ましく、中でも、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物として、前記一般式(C1)中のXがチオエーテル結合(-S-)であり、Yが無結合であるオキシムエステル化合物を含有することが好ましく、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤から選ばれる少なくとも1種が、メルカプト系連鎖移動剤を含有することが好ましく、更に、後述する酸化防止剤を組み合わせて用いることがより好ましい。
【0088】
α-アミノケトン系光開始剤は、塗膜表面から中間を硬化させる性質を有し、塗膜深部硬化性を抑制し易いことから、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物と組み合わせると塗膜深部硬化性を向上する傾向が高い点から好ましい。
α-アミノケトン系光開始剤としては、例えば、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(例えばイルガキュア907、BASF社製)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(例えばイルガキュア369、BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(イルガキュア379EG、BASF社製)等が挙げられる。α-アミノケトン系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、及び、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノンが、残膜率が向上する点から好ましく、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、ビリツキ抑制の点からより好ましい。
【0089】
ビイミダゾール系光開始剤は、塗膜深部を硬化させるという性質を有し、塗膜表面硬化性を抑制し易く、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物と組み合わせると塗膜表面硬化性を向上する傾向が高い点から好ましい。
ビイミダゾール系光開始剤としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等を挙げることができる。ビイミダゾール系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、メルカプト系連鎖移動剤と組み合わせて用いることが塗膜硬化性向上する点から好ましい。
【0090】
チオキサントン系光開始剤としては、例えば、2,4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等が挙げられる。チオキサントン系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、2,4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントンを用いることが、ラジカル発生の転移が向上する点から好ましい。
【0091】
アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤は、熱による黄変が少ないという性質を有するため、輝度向上に適しているものの、一般的に感度が低く十分な硬化性が得られない場合がある。しかしながら、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物と組み合わせると全体的な塗膜硬化性を向上し、パターン形成時に、端部のビリツキが抑制されて寸法精度が良好になり易い点から好ましい。
アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤としては、例えば、ベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、3,4-ジメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-エチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドを用いることが、塗膜硬化性が向上する点から好ましい。
【0092】
メルカプト系連鎖移動剤は反応の遅いラジカルからラジカルを受け取り反応を早め、硬化性を向上するという性質を有し、特に、ビイミダゾール系光開始剤と組み合わせると反応速度を向上する傾向が高い点から好ましい。また、メルカプト系連鎖移動剤は、水染み発生抑制効果が向上する点からも好ましい。前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル系光開始剤と、メルカプト系連鎖移動剤とを組み合わせて含有すると、現像性が向上する点、水染み発生抑制効果が更に向上する点、及び、細線パターンを形成する際に、直線性がより向上したり、マスク線幅の設計通りに細線パターンを形成する能力が向上する点から好ましい。
メルカプト系連鎖移動剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾイミダゾール、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸エチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキス(メルカプトアセタート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、およびテトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。メルカプト系連鎖移動剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、水染み抑制効果が向上する点からは、メルカプト基を1分子中に2個以上有するものが好ましい。また、長期保存した場合にも良好な水染み抑制効果が維持され易い点からは、メルカプト基が結合する炭素原子が第2級炭素原子である2級メルカプト基を有するものが好ましく、更に当該2級メルカプト基を1分子中に2個以上有するものがより好ましい。
【0093】
感光性着色樹脂組成物中の光開始剤(C)の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量100質量%中に、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。光開始剤(C)の含有量が前記下限値以上であると、ラジカル重合を十分に促進し、硬化不良を抑制することができ、また光開始剤(C)の含有量が前記上限値以下であると、副反応を抑制し、経時安定性の低下を抑制することができる。
【0094】
前記光開始剤(C)が、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物において、前記一般式(C1)中のXが-C(Ra)(Rb)-で表される2価の基であり、Yが直接結合であるオキシムエステル化合物(以下、オキシムエステル化合物1とする)と、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物において、前記一般式(C1)中のXがチオエーテル結合(-S-)であり、Yが無結合であるオキシムエステル化合物(以下、オキシムエステル化合物2とする)とを含む場合は、前記オキシムエステル化合物1と前記オキシムエステル化合物2との比率は、前記オキシムエステル化合物1が100質量部に対して、前記オキシムエステル化合物2が10質量部以上150質量部以下であることが好ましく、更に15質量部以上120質量部以下であることが、輝度及び感度の点から好ましい。
また、前記光開始剤(C)が、前記オキシムエステル化合物1及び前記オキシムエステル化合物2とは異なるその他の光開始剤を含む場合は、前記オキシムエステル化合物1と前記オキシムエステル化合物2との合計含有量は、前記光開始剤(C)の合計100質量部中に、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることが更に好ましく、一方で、前記その他の光開始剤との併用効果を十分に発揮させる点から、95質量部以下であることが好ましく、85質量部以下であることがより好ましい。
【0095】
また、前記光開始剤(C)が、更に、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤から選ばれる少なくとも1種を含有する場合、これらの合計含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、0.1質量%以上4.0質量%以下、さらに0.5質量%以上2.0質量%以下の範囲内であることが、これらの光開始剤との併用効果を十分に発揮させる点から好ましい。
前記光開始剤(C)として、メルカプト系連鎖移動剤を用いることにより水染み抑制効果を向上する点からは、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対するメルカプト系連鎖移動剤の含有量を、0.2質量%以上4.0質量%以下とすることが好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下とすることがより好ましい。
【0096】
<色材(D)>
本発明の感光性着色樹脂組成物が含有する色材は、カラーフィルタの着色層を形成した際に所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、種々の有機顔料、無機顔料、分散可能な染料を、単独で又は2種以上混合して用いることができる。中でも有機顔料は、発色性が高く、耐熱性も高いので、好ましく用いられる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物を挙げることができる。
また、前記分散可能な染料としては、染料に各種置換基を付与したり、公知のレーキ化(造塩化)手法を用いて、溶剤に不溶化することにより分散可能となった染料や、溶解度の低い溶剤と組み合わせて用いることにより分散可能となった染料が挙げられる。このような分散可能な染料と、前記分散剤とを組み合わせて用いることにより当該染料の分散性や分散安定性を向上することができる。
分散可能な染料としては、従来公知の染料の中から適宜選択することができる。このような染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、シアニン染料、ナフトキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、フタロシアニン染料などを挙げることができる。
なお、目安として、10gの溶剤(又は混合溶剤)に対して染料の溶解量が10mg以下であれば、当該溶剤(又は混合溶剤)において、当該染料が分散可能であると判定することができる。
【0097】
本発明の感光性着色樹脂組成物を用いて赤色画素を形成する場合、本発明に用いられる色材(D)としては、特に制限されないが、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、ナフトール系アゾ顔料やその他のアゾ顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料等の赤色色材が挙げられる。本発明で用いられる赤色色材は、中でも、着色力が高く、P/V比((組成物中の色材成分質量)/(組成物中の色材成分以外の固形分質量)比)を抑えることができる点から、ジケトピロロピロール系顔料、ナフトール系アゾ顔料、アントラキノン系顔料、及びペリレン系顔料からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、更に、高色濃度の色相を形成しやすく輝度が高い観点から、ジケトピロロピロール系顔料及びアントラキノン系顔料からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ジケトピロロピロール系顔料を含むことがより好ましい。
【0098】
前記ジケトピロロピロール系顔料としては、例えば、下記一般式(D1)で表されるものを好適に用いることができる。
【0099】
【化12】
(一般式(D1)中、A
3及びA
4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、フェニル基、N,N-ジメチルアミノ基、トリフルオロメチル基、又はシアノ基を表し、k及びk’はそれぞれ独立に0以上5以下の整数を表し、k及びk’がそれぞれ2以上の整数の場合、複数のA
3及びA
4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0100】
前記ジケトピロロピロール系顔料としては、具体的には、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、及び下記化学式(D1-1)で表されるジケトピロロピロール顔料(BrDPP)等が挙げられ、中でも、着色層の輝度を向上しやすい点から、C.I.ピグメントレッド254が好ましい。
【0101】
【0102】
前記ナフトール系アゾ顔料としては、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド185等が挙げられる。
その他のアゾ系顔料としては、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド41等が挙げられる。
前記アントラキノン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントオレンジ51等が挙げられる。
前記ペリレン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド224等が挙げられる。
【0103】
本発明の感光性着色樹脂組成物を用いて赤色画素を形成する場合、本発明に用いられる色材(D)としては、前記赤色色材に、更に他の色材を組み合わせて用いても良い。前記赤色色材と組み合わせて用いる他の色材としては、例えば、黄色色材及び前記赤色色材に包含されないオレンジ色色材から選ばれる少なくとも1種を好適に用いることができる。
前記赤色色材と組み合わせて用いる他の色材としては、具体的には、C.I.ピグメントオレンジ1、5、13、14、16、17、24、34、36、40、43、46、49、51、61、63、64等のオレンジ色色材;C.I.ピグメントイエロー1、3、11、12、13、14、15、16、17、20、24、31、55、60、61、65、71、73、74、81、83、93、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、126、127、128、129、138、139、150、151、152、153、154、155、156、166、167、168、175、180、及び185等の黄色色材等が挙げられる。
【0104】
本発明の感光性着色樹脂組成物を用いて赤色画素を形成する場合、前記色材(D)全体に対する前記赤色色材の含有割合は、所望の色度に合わせて適宜調整されればよく、特に限定されないが、輝度及びコントラストの点から、前記色材全量100質量%に対して、前記赤色色材の含有量が、35質量%以上99質量%以下であることが好ましく、40質量%以上98質量%以下であることがより好ましく、45質量%以上97質量%以下であることがより更に好ましい。
【0105】
本発明の感光性着色樹脂組成物を用いて緑色画素を形成する場合、本発明に用いられる緑色色材としては、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントグリーン59等が挙げられる。中でも、着色力が高く、P/V比を抑えることができ、また、色再現性に優れ、着色層の薄膜化に対応可能であり、高輝度な着色層を形成できる点から、C.I.ピグメントグリーン59が好ましい。
【0106】
本発明の感光性着色樹脂組成物を用いて緑色画素を形成する場合は、中でも、色材(D)として、C.I.ピグメントグリーン59と、C.I.ピグメントイエロー150及びその誘導体顔料から選ばれる少なくとも一種の黄色色材とを組み合わせて用いることが、着色層の輝度及びコントラストを向上する点から好ましい。
C.I.ピグメントグリーン59と組み合わせて用いる、C.I.ピグメントイエロー150及びその誘導体顔料から選ばれる少なくとも一種の黄色色材としては、中でも、下記一般式(D2)で表されるアゾ化合物及びそれの互変異性構造のアゾ化合物のモノ、ジ、トリ及びテトラアニオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンとCd,Co,Al,Cr,Sn,Pb,Zn,Fe,Ni,Cu及びMnからなる群から選択される少なくとも2種の金属のイオンと、下記一般式(D3)で表される化合物とを含む黄色色材(以下、黄色色材(a)という)が、輝度を向上し、且つ、コントラストを向上する点から好ましい。当該黄色色材(a)は、前記特定の2種類以上の金属イオンを含むことにより、色材の結晶成長を抑制するため、色材が樹脂組成物中で微粒化されやすいため、輝度及びコントラストを向上すると推察される。また、当該黄色色材(a)は、着色力に優れることから、P/V比を抑えても、高色濃度の着色層を作製することができる。また、着色樹脂組成物中の色材成分の合計含有量を抑えることができることから、バインダー成分の含有量を相対的に増加させることができるため、製版性が向上し、基板との密着性をより高めた着色層を形成することが可能となる。
【0107】
【化14】
(一般式(D2)中、R
fはそれぞれ独立して、-OH、-NH
2、-NH-CN、アシルアミノ、アルキルアミノ又はアリールアミノであり、R
gはそれぞれ独立して、-OH又は-NH
2である。)
【0108】
【化15】
(一般式(D3)中、R
hはそれぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。)
【0109】
一般式(D2)中のアシルアミノ基におけるアシル基としては、例えば、アルキルカルボニル基、フェニルカルボニル基、アルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基、アルキル、フェニル、又はナフチルで置換されていても良いカルバモイル基、アルキル、フェニル、又はナフチルで置換されていても良いスルファモイル基、アルキル、フェニル、又はナフチルで置換されていてもよいグアニル基等が挙げられる。前記アルキル基は炭素数1以上6以下であることが好ましい。また前記アルキル基は、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン、-OH、-CN、-NH2、及び/又は、炭素数1以上6以下のアルコキシ基で置換されていてもよい。また、前記フェニル基及びナフチル基は、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン、-OH、-CN、-NH2、-NO2、炭素数1以上6以下のアルキル基、及び/又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基で置換されていてもよい。
一般式(D2)中のアルキルアミノ基におけるアルキル基としては、炭素数1以上6以下であることが好ましい。前記アルキル基は、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン、-OH、-CN、-NH2、及び/又は、炭素数1以上6以下のアルコキシ基で置換されていてもよい。
一般式(D2)中のアリールアミノ基におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられ、これらのアリール基は、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン、-OH、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、-NH2、-NO2および-CNなどで置換されていてもよい。
【0110】
前記一般式(D2)で表されるアゾ化合物及びそれの互変異性構造のアゾ化合物において、Rfとしては、それぞれ独立に、-OH、-NH2、-NH-CN、又はアルキルアミノであることが、赤味の色相になる点から好ましく、2つのRfはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
前記一般式(D2)において、2つのRfは、中でも色相の点から、両方とも-OHである場合、両方とも-NH-CNである場合、又は、1つが-OHで1つが-NH-CNである場合が更に好ましく、両方とも-OHである場合がより更に好ましい。
【0111】
また、前記一般式(D2)で表されるアゾ化合物及びそれの互変異性構造のアゾ化合物において、Rgとしては、色相の点から、両方とも-OHである場合がより好ましい。
【0112】
Cd,Co,Al,Cr,Sn,Pb,Zn,Fe,Ni,CuおよびMnからなる群から選択される少なくとも2種の金属としては、中でも、2価又は3価の陽イオンになる金属を少なくとも1種含むことが好ましく、Ni,Cu,およびZnからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、更に、少なくともNiを含むことが好ましい。
中でも、Niと、更に、Cd,Co,Al,Cr,Sn,Pb,Zn,Fe,CuおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種の金属とを含むことが好ましく、より更に、Niと、更に、Zn,Cu,AlおよびFeからなる群から選択される少なくとも1種の金属とを含むことが好ましい。中でも特に、前記少なくとも2種の金属としては、NiとZnであるか、又は、NiとCuであることが好ましい。
【0113】
前記黄色色材(a)において、少なくとも2種の金属の含有割合は適宜調製されれば良いが、中でも、色相の点から、前記黄色色材(a)においては、Niと、更に、Cd,Co,Al,Cr,Sn,Pb,Zn,Fe,CuおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種の金属との含有割合は、Ni:その他の前記少なくとも1種の金属が97:3~10:90のモル比で含むことが好ましい。
その他の前記少なくとも1種の金属がZnを含有する場合は、中でも、色相の点から、NiとZnとをNi:Znが95:5~10:90のモル比で含むことが好ましく、90:10~10:90のモル比で含むことがより好ましく、80:20~20:80のモル比で含むことがより更に好ましい。
その他の前記少なくとも1種の金属がCuを含有する場合は、中でも、色相の点から、NiとCuとをNi:Cuが97:3~10:90のモル比で含むことが好ましく、96:4~20:80のモル比で含むことが更に好ましい。
【0114】
前記黄色色材(a)は、更に、前記特定の金属のイオンとは異なる金属のイオンを含んでいても良く、例えば、Li,Cs,Mg,Na,K,Ca,Sr,Ba,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Sc,Y,Ti,Zr,V,Nb,MoおよびLaからなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオンを含んでいても良い。前記黄色色材(a)が3種以上の金属イオンを含む場合は、中でも、Cd,Co,Al,Cr,Sn,Pb,Zn,Fe,Ni,CuおよびMnからなる群から選択される少なくとも2種の金属のイオンとして、NiおよびZnの金属イオンを含み、更に、Li,Cs,Mg,Na,K,Ca,Sr,Ba,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Sc,Y,Ti,Zr,V,Nb,MoおよびLaからなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン、好ましくは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、Mn、Cd、及びPbからなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン、より好ましくは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Ho及びSrからなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオンを含むことが、輝度及びコントラストを向上し、P/V比を抑えることができる点から好ましい。
【0115】
前記黄色色材(a)が、Cd,Co,Al,Cr,Sn,Pb,Zn,Fe,Ni,CuおよびMnからなる群から選択される少なくとも2種の金属のイオンとして、NiおよびZnの金属イオンを含み、更に、Li,Cs,Mg,Na,K,Ca,Sr,Ba,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Sc,Y,Ti,Zr,V,Nb,MoおよびLaからなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオンを含む場合、全ての金属100モル%に対し、Ni及びZnの合計量は、75モル%以上99.5モル%以下であることが好ましく、80モル%以上99モル%以下であることがより好ましい。また、全ての金属100モル%に対し、Li,Cs,Mg,Na,K,Ca,Sr,Ba,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Sc,Y,Ti,Zr,V,Nb,MoおよびLaからなる群から選択される少なくとも1種の金属の合計量は、0.5モル%以上25モル%以下であることが好ましく、1モル%以上20モル%以下であることがより好ましい。
【0116】
また、C.I.ピグメントグリーン59と組み合わせて用いる、C.I.ピグメントイエロー150及びその誘導体顔料から選ばれる少なくとも一種の黄色色材としては、前記一般式(D2)で表されるアゾ化合物及びそれの互変異性構造のアゾ化合物のモノ、ジ、トリ及びテトラアニオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンとZn又はNiの金属イオン及びLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y 、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、Mn、Cd、及びPbからなる群から選択される少なくとも2種の金属イオンと、前記一般式(D3)で表される化合物とを含む黄色色材(以下、黄色色材(b)という)も、輝度向上の点から好ましい。
【0117】
黄色色材中に少なくとも2種の金属のイオンを含む態様としては、共通した結晶格子中に少なくとも2種の金属のイオンが含まれる場合と、別の結晶格子中に各々1種ずつの金属のイオンが含まれる結晶が凝集している場合が挙げられる。中でも、共通した結晶格子中に少なくとも2種の金属のイオンが含まれる場合が、よりコントラストが向上する点から好ましい。なお、共通した結晶格子中に少なくとも2種の金属のイオンが含まれる態様か、別の結晶格子中に各々1種ずつの金属のイオンが含まれる結晶が凝集している態様であるかは、例えば特開2014-12838号公報を参照してX線回折法を用いて適宜判断することができる。
【0118】
前記黄色色材(a)及び前記黄色色材(b)は、前記一般式(D2)で表されるアゾ化合物及びそれの互変異性構造のアゾ化合物のアニオンと特定の金属イオンとからなる金属錯体と前記一般式(D3)で表される化合物との複合分子を含む。これらの分子間の結合は、例えば分子間相互作用によるか、ルイス酸-塩基相互作用によるか、又は配位結合によって形成され得る。また、ゲスト分子がホスト分子を構成する格子に組み込まれている包接化合物のような構造であっても良い。或いは、2つの物質が共同結晶を形成し、第一の成分の規則的な格子の位置に第二の成分の原子が位置しているような混合置換結晶を形成していても良い。
【0119】
前記一般式(D3)中のRhにおけるアルキル基としては、炭素数1以上6以下のアルキル基であることが好ましく、更に炭素数1以上4以下のアルキル基であることが好ましい。当該アルキル基は、-OH基で置換されていても良い。
中でも、Rhは、水素原子であることが好ましい。
【0120】
前記一般式(D3)で表される化合物の含有量は、前記一般式(D2)で表されるアゾ化合物及びそれの互変異性構造のアゾ化合物の1モルを基準にして、一般的には5モル以上300モル以下であり、10モル以上250モル以下であることが好ましく、更に100モル以上200モル以下であることが好ましい。
【0121】
また、前記黄色色材(a)及び前記黄色色材(b)には、更に、尿素および置換尿素、例えばフェニル尿素、ドデシル尿素等、並びにそのアルデヒド、特にホルムアルデヒドとの重縮合物;複素環、例えばバルビツール酸、ベンズイミダゾロン、ベンズイミダゾロン-5-スルホン酸、2,3-ジヒドロキシキノキサリン、2,3-ジヒドロキシキノキサリン-6-スルホン酸、カルバゾール、カルバゾール-3,6-ジスルホン酸、2-ヒドロキシキノリン、2,4-ジヒドロキシキノリン、カプロラクタム、メラミン、6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、6-メチル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、シアヌル酸等が含まれていても良い。
また、前記黄色色材(a)及び前記黄色色材(b)には、更に、水溶性ポリマー、例えばエチレン-プロピレンオキシド-ブロックポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチル-およびエチルヒドロキシエチルセルロースのような変性セルロース等が含まれていても良い。
【0122】
前記黄色色材(a)及び前記黄色色材(b)は、例えば、特開2014-12838及び特開2017-171912等を参照することにより、調製することができる。
【0123】
本発明に用いられる色材の平均一次粒径としては、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる色材の種類によっても異なるが、10nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましく、15nm以上60nm以下であることがより好ましい。色材の平均一次粒径が前記範囲であることにより、本発明の感光性着色樹脂組成物を用いて製造されたカラーフィルタを備えた表示装置を高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。
【0124】
また、前記色材(D)を溶剤に分散させた色材分散液中の色材の平均分散粒径は、用いる色材の種類によっても異なるが、10nm以上100nmの範囲内であることが好ましく、15nm以上60nm以下の範囲内であることがより好ましい。
色材分散液中の色材の平均分散粒径は、少なくとも溶剤を含有する分散媒体中に分散している色材粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、色材分散液に用いられている溶剤で、色材分散液をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA-EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。ここでの平均分布粒径は、体積平均粒径である。
【0125】
感光性着色樹脂組成物中の色材(D)の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量100質量%中に、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、25質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。色材(D)の含有量が前記下限値以上であると、良好な光学特性が得られ、所望の機能を発現することができ、また、感光性着色樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0μm以上5.0μm以下)に塗布した際の着色層が充分な色濃度を有する。色材(D)の含有量が前記上限値以下であると、硬化不良を抑制し、着色層の形成が容易になり、また、保存安定性に優れると共に、基板との密着性を有する着色層を得ることができる。
特に色材濃度が高い塗膜乃至着色層を形成する場合には、感光性着色樹脂組成物中の色材(D)の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量100質量%中に、15質量%以上60質量%以下であることが好ましく、25質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0126】
<分散剤(E)>
本発明の感光性着色樹脂組成物において、前記色材(D)は、分散剤により後述する溶剤中に分散させて用いられることが好ましい。本発明において分散剤は、従来公知の分散剤の中から適宜選択し、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、均一に、微細に分散し得る点から、高分子分散剤が好ましい。
【0127】
高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシ基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシ基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。
【0128】
高分子分散剤としては、中でも、前記色材(D)を好適に分散でき、分散安定性が良好である点から、主鎖又は側鎖に窒素原子を含み、アミン価を有する高分子分散剤が好ましく、中でも、3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体からなる高分子分散剤であることが、分散性が良好で塗膜形成時に異物を析出せず、輝度及びコントラストを向上する点から好ましい。3級アミンを有する繰り返し単位は、前記色材(D)と親和性を有する部位である。3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体からなる高分子分散剤は、通常、溶剤と親和性を有する部位となる繰り返し単位を含む。3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体としては、中でも、3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部と、溶剤親和性を有するブロック部とを有するブロック共重合体であることが、耐熱性に優れ、高輝度となる塗膜を形成可能となる点で好ましい。
【0129】
3級アミンを有する繰り返し単位は、3級アミンを有していれば良く、該3級アミンは、ブロックポリマーの側鎖に含まれていても、主鎖を構成するものであっても良い。中でも、側鎖に3級アミンを有する繰り返し単位であることが好ましく、中でも、主鎖骨格が熱分解し難く、耐熱性が高い点から、下記一般式(I)で表される構造であることが、より好ましい。
【0130】
【化16】
(一般式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基、Aは、2価の連結基、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R
2及びR
3が互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【0131】
前記一般式(I)において、Aは、2価の連結基である。Aにおける2価の連結基としては、例えば、炭素数1以上10以下のアルキレン基、アリーレン基、-CONH-基、-COO-基、炭素数1以上10以下のエーテル基(-R’-OR”-:R’及びR”は、各々独立にアルキレン基)及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
中でも、分散性の点から、前記一般式(I)におけるAは、-CONH-基、又は、-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましい。
【0132】
前記一般式(I)において、R2及びR3における、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基における炭化水素基は、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルキル基の炭素数は、1以上18以下が好ましく、中でも、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、7以上20以下が好ましく、更に7以上14以下が好ましい。
また、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6以上24以下が好ましく、更に6以上12以下が好ましい。なお、前記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
ヘテロ原子を含む炭化水素基とは、前記炭化水素基中の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられた構造を有する。炭化水素基が含んでいてもよいヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられる。
また、炭化水素基中の水素原子は、炭素数1以上5以下のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子により置換されていてもよい。
【0133】
R2とR3が互いに結合して環構造を形成しているとは、R2とR3が窒素原子を介して環構造を形成していることをいう。R2及びR3が形成する環構造にヘテロ原子が含まれていても良い。環構造は特に限定されないが、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、モルフォリン環等が挙げられる。
【0134】
本発明においては、中でも、R2とR3が各々独立に、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、フェニル基であるか、又は、R2とR3が結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルフォリン環を形成していることが好ましく、中でもR2及びR3の少なくとも1つが炭素数1以上5以下のアルキル基、フェニル基であるか、又は、R2とR3が結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルフォリン環を形成していることが好ましい。
【0135】
前記一般式(I)で表される構成単位としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリレート等、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも分散性、及び分散安定性が向上する点でジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを好ましく用いることができる。
前記一般式(I)で表される構成単位は、1種類からなるものであってもよく、2種以上の構成単位を含むものであってもよい。
【0136】
前記一般式(I)で表される構成単位を有する重合体としては、分散性を向上する点から、更に溶剤親和性を有する部位を含むことが好ましい。溶剤親和性部位としては、前記一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと重合可能な、エチレン性不飽和結合を有するモノマーの中から、溶剤親和性を有するように溶剤に応じて適宜選択して用いられることが好ましい。目安として、組み合わせて用いられる溶剤に対して、重合体の23℃における溶解度が50(g/100g溶剤)以上となるように、溶剤親和性部位を導入することが好ましい。
本発明において用いられる高分子分散剤としては、色材の分散性及び分散安定性並びに樹脂組成物の耐熱性を向上し、高輝度且つ高コントラストな着色層を形成できる点から、中でも、ブロック共重合体又はグラフト共重合体が好ましく、ブロック共重合体が特に好ましい。以下、特に好ましいブロック共重合体について詳細に説明する。
【0137】
(ブロック共重合体)
前記一般式(I)で表される構成単位を含むブロックをAブロックとすると、当該Aブロックは、前記一般式(I)で表される構成単位が塩基性を有し、色材に対する吸着部位として機能する。一方、前記一般式(I)で表される構成単位を含まないBブロックは、溶剤親和性を有するブロックとして機能するようにする。本発明においてブロック共重合体の各ブロックの配置は特に限定されず、例えば、ABブロック共重合体、ABAブロック共重合体、BABブロック共重合体等とすることができる。中でも、分散性に優れる点で、ABブロック共重合体、又はABAブロック共重合体が好ましい。
【0138】
Bブロックを構成する構成単位としては、前記一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合を有する単量体を挙げることができ、中でも下記一般式(II)で表される構成単位が好ましい。
【0139】
【化17】
(一般式(II)中、A’は、直接結合又は2価の連結基、R
4は、水素原子又はメチル基、R
5は、炭化水素基、-[CH(R
6)-CH(R
7)-O]
x-R
8又は-[(CH
2)
y-O]
z-R
8で示される1価の基である。R
6及びR
7は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
8は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH
2CHO、又は-CH
2COOR
9で示される1価の基であり、R
9は水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基である。
前記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
xは1以上18以下の整数、yは1以上5以下の整数、zは1以上18以下の整数を示す。)
【0140】
前記一般式(II)の2価の連結基A’としては、一般式(I)におけるAと同様のものとすることができる。中でも、A’は、有機溶剤への溶解性の点から、直接結合、又は-CONH-基若しくは-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましい。得られたポリマーの耐熱性や溶剤として好適に用いられるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)に対する溶解性、また比較的安価な材料である点から、A’は、-COO-基であることが好ましい。
【0141】
R5における炭化水素基としては、炭素数1以上18以下のアルキル基、炭素数2以上18以下のアルケニル基、アラルキル基、又はアリール基であることが好ましい。
前記炭素数1以上18以下のアルキル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、2-エチルヘキシル基、2-エトキシエチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。
前記炭素数2以上18以下のアルケニル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基などを挙げることができる。アルケニル基の二重結合の位置には限定はないが、得られたポリマーの反応性の点からは、アルケニル基の末端に二重結合があることが好ましい。
アルキル基やアルケニル基等の脂肪族炭化水素の置換基としては、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
【0142】
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アリール基の炭素数は、6以上24以下が好ましく、更に6以上12以下が好ましい。
また、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アラルキル基の炭素数は、7以上20以下が好ましく、更に7以上14以下が好ましい。
アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
なお、前記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0143】
前記R5において、xは1以上18以下の整数、好ましくは1以上4以下の整数、より好ましくは1以上2以下の整数であり、yは1以上5以下の整数、好ましくは1以上4以下の整数、より好ましくは2又は3である。zは1以上18以下の整数、好ましくは1以上4以下の整数、より好ましくは1以上2以下の整数である。
【0144】
前記R8における炭化水素基は、前記R5で示したものと同様のものとすることができる。
R9は水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基であって、直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよい。
また、前記一般式(II)で表される構成単位中のR5は、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0145】
前記R5としては、中でも、後述する溶剤との相溶性に優れたものとなるように選定することが好ましく、具体的には、例えば前記溶剤が、感光性着色樹脂組成物の溶剤として一般的に使用されているグリコールエーテルアセテート系、エーテル系、エステル系などの溶剤を用いる場合には、メチル基、エチル基、イソブチル基、n-ブチル基、2-エチルヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。
【0146】
さらに、前記R5は、前記ブロック共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、アルコキシ基、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基等の置換基によって置換されたものとしてもよく、また、前記ブロック共重合体の合成後に、前記置換基を有する化合物と反応させて、前記置換基を付加させてもよい。
【0147】
本発明において前記ブロック共重合体の溶剤親和性のブロック部のガラス転移温度(Tg)は、適宜選択すればよい。耐熱性の点から、中でも、溶剤親和性のブロック部のガラス転移温度(Tg)が、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。
本発明における溶剤親和性のブロック部のガラス転移温度(Tg)は下記式で計算することができる。また同様に色材親和性ブロック部及びブロック共重合体のガラス転移温度も計算することができる。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、溶剤親和性のブロック部はi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。なお、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は、Polymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用することができる。
【0148】
溶剤親和性のブロック部を構成する構成単位の数は、色材分散性が向上する範囲で適宜調整すればよい。中でも、溶剤親和性部位と色材親和性部位が効果的に作用し、色材の分散性を向上する点から、溶剤親和性のブロック部を構成する構成単位の数は、10以上200以下であることが好ましく、10以上100以下であることがより好ましく、更に10以上70以下であることがより好ましい。
【0149】
溶剤親和性のブロック部は、溶剤親和性部位として機能するように選択されれば良く、溶剤親和性のブロック部を構成する繰り返し単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0150】
また、中でも、本発明において分散剤は、前記一般式(II)で表される構造を含みアミン価が40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下である重合体を含有することが、分散性が良好で塗膜形成時に異物を析出せず、輝度及びコントラストを向上する点から好ましい。
アミン価が前記範囲内であることにより、粘度の経時安定性や耐熱性に優れると共に、アルカリ現像性や、溶剤再溶解性にも優れている。本発明において、分散剤のアミン価は、分散性および分散安定性の点から、中でも、アミン価が80mgKOH/g以上であることが好ましく、90mgKOH/g以上であることがより好ましい。一方、溶剤再溶解性の点から、分散剤のアミン価は、110mgKOH/g以下であることが好ましく、105mgKOH/g以下であることがより好ましい。
アミン価は、試料1g中に含まれるアミン成分を中和するのに要する過塩素酸と当量の水酸化カリウムのmg数をいい、JIS-K7237に定義された方法により測定することができる。当該方法により測定した場合には、分散剤中の有機酸化合物と塩形成しているアミノ基であっても、通常、当該有機酸化合物が解離するため、分散剤として用いられるブロック共重合体そのもののアミン価を測定することができる。
【0151】
本発明に用いられる分散剤の酸価は、現像残渣の抑制効果の点から、下限としては、1mgKOH/g以上であることが好ましい。中でも、現像残渣の抑制効果がより優れる点から、分散剤の酸価は2mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、本発明に用いられる分散剤の酸価は、現像密着性の悪化や溶剤再溶解性の悪化を防止できる点から、分散剤の酸価の上限としては、18mgKOH/g以下であることが好ましい。中でも、現像密着性、及び溶剤再溶解性が良好になる点から、分散剤の酸価は、16mgKOH/g以下であることがより好ましく、14mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。
本発明に用いられる分散剤においては、塩形成前のブロック共重合体の酸価が1mgKOH/g以上であることが好ましく、2mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。現像残渣の抑制効果が向上するからである。また、塩形成前のブロック共重合体の酸価の上限としては18mgKOH/g以下であることが好ましいが、16mgKOH/g以下であることがより好ましく、14mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。現像密着性、及び溶剤再溶解性が良好になるからである。
なお、本発明において酸価はJIS K 0070に従って測定することができる。
【0152】
また、本発明において、分散剤のガラス転移温度は、現像密着性が向上する点から、30℃以上であることが好ましい。すなわち、分散剤が、塩形成前ブロック共重合体であっても、塩型ブロック共重合体であっても、そのガラス転移温度は、30℃以上であることが好ましい。分散剤のガラス転移温度が低いと、特に現像液温度(通常23℃程度)に近接し、現像密着性が低下する恐れがある。これは、当該ガラス転移温度が現像液温度に近接すると、現像時に分散剤の運動が大きくなり、その結果、現像密着性が悪化するからと推定される。ガラス転移温度が30℃以上であることによって、現像時の分散剤の分子運動が抑制されることから、現像密着性の低下が抑制されると推定される。
分散剤のガラス転移温度は、現像密着性の点から中でも32℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。一方、精秤が容易など、使用時の操作性の観点から、200℃以下であることが好ましい。
本発明における分散剤のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量測定(DSC)により測定することにより求めることができる。
【0153】
色材濃度を高め、分散剤含有量が増加すると、相対的にバインダー量が減少することから、着色樹脂層が現像時に下地基板から剥離し易くなる。分散剤がカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックを含み、前記特定の酸価及びガラス転移温度を有することにより、現像密着性が向上する。酸価が高すぎると、現像性に優れるものの、極性が高すぎて却って現像時に剥離が生じ易くなると推定される。
【0154】
以上のことから、本発明において前記分散剤は、前記一般式(I)で表される構造を含みアミン価が40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下である重合体であって、且つ、酸価が1mgKOH/g以上18mgKOH/g以下で、ガラス転移温度が30℃以上であることが、色材分散安定性に優れてコントラストを向上し、着色樹脂組成物とした際に、現像残渣の発生が抑制されながら、溶剤再溶解性に優れ、更に、高い現像密着性を有する点から好ましい。
【0155】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、前記一般式(I)で表される構成単位を有するモノマーと共重合可能で、不飽和二重結合とカルボキシ基を含有するモノマーを用いることができる。このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物基含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0156】
カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含有する場合、塩形成前のブロック共重合体中、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、ブロック共重合体の酸価が前記特定の酸価の範囲内になるように適宜設定すればよく、特に限定されないが、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、0.05質量%以上4.5質量%以下であることが好ましく、0.07質量%以上3.7質量%以下であることがより好ましい。
カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合が、前記下限値以上であることより、現像残渣の抑制効果が発現され、前記上限値以下であることより現像密着性の悪化や溶剤再溶解性の悪化を防止できる。
なお、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位は、前記特定の酸価となればよく、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0157】
また、本発明に用いられる分散剤のガラス転移温度を特定の値以上とし、現像密着性が向上する点から、モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が10℃以上であるモノマーを、合計でBブロック中に75質量%以上とすることが好ましく、更に85質量%以上とすることが好ましい。
【0158】
前記ブロック共重合体において、前記Aブロックの構成単位のユニット数mと、前記Bブロックの構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.05以上1.5以下の範囲内であることが好ましく、0.1以上1.0以下の範囲内であることが、色材の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
【0159】
前記ブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、色材分散性及び分散安定性を良好なものとする点から、1000以上20000以下であることが好ましく、2000以上15000以下であることがより好ましく、更に3000以上12000以下であることがより好ましい。
ここで、重量平均分子量は(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値とし、THFを溶離液として、ショウデックスGPCシステム-21H(Shodex GPC System-21H)により測定することができる。なお、ブロック共重合体の原料となるマクロモノマーや塩型ブロック共重合体、グラフト共重合体についても、前記条件で行う。
【0160】
前記ブロック共重合体の製造方法は、特に限定されない。公知の方法によってブロック共重合体を製造することができるが、中でもリビング重合法で製造することが好ましい。連鎖移動や失活が起こりにくく、分子量の揃った共重合体を製造することができ、分散性等を向上できるからである。リビング重合法としては、リビングラジカル重合法、グループトランスファー重合法等のリビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法等を挙げることができる。これらの方法によりモノマーを順次重合することによって共重合体を製造することができる。例えば、Aブロックを先に製造し、AブロックにBブロックを構成する構成単位を重合することにより、ブロック共重合体を製造することができる。また前記の製造方法においてAブロックとBブロックの重合の順番を逆にすることもできる。また、AブロックとBブロックを別々に製造し、その後、AブロックとBブロックをカップリングすることもできる。
【0161】
このような前記一般式(I)で表される構成単位を含むブロック部と溶剤親和性を有するブロック部とを有するブロック共重合体の具体例としては、例えば、特許第4911253号公報に記載のブロック共重合体を好適なものとして挙げることができる。
【0162】
本発明においては、色材の分散性や分散安定性の点から、前記一般式(I)で表される構成単位を含む重合体中のアミノ基のうちの少なくとも一部と、有機酸化合物やハロゲン化炭化水素とが塩を形成したものを分散剤として用いても好ましい(以下、このような重合体を、塩型重合体と称することがある)。
中でも、3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体がブロック共重合体であって、前記有機酸化合物がフェニルホスホン酸やフェニルホスフィン酸等の酸性有機リン化合物であることが、色材の分散性及び分散安定性に優れる点から好ましい。このような分散剤に用いられる有機酸化合物の具体例としては、例えば、特開2012-236882号公報等に記載の有機酸化合物が好適なものとして挙げられる。
また、前記ハロゲン化炭化水素としては、臭化アリル、塩化ベンジル等のハロゲン化アリル及びハロゲン化アラルキルの少なくとも1種であることが、色材の分散性及び分散安定性に優れる点から好ましい。
【0163】
感光性着色樹脂組成物中の分散剤(E)の含有量は、用いる色材の種類、更に感光性着色樹脂組成物中の固形分濃度等に応じて適宜選定され、特に限定はされないが、感光性着色樹脂組成物の固形分全量100質量%中に、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、2質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上25質量%以下であることがより更に好ましい。分散剤(E)の含有量が前記下限値以上であれば、色材の分散性及び分散安定性に優れ、感光性着色樹脂組成物の保存安定性により優れている。また、前記上限値以下であれば、現像性が良好なものとなる。
特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、感光性着色樹脂組成物中の分散剤(E)の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量100質量%中に、2質量%以上25質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0164】
<溶剤(F)>
本発明の感光性着色樹脂組成物は、必要に応じて、更に溶剤を含有していてもよい。本発明に用いられる溶剤としては、感光性着色樹脂組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に限定されない。溶剤は単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
溶剤の具体例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、i-プロピルアルコール、メトキシアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、ヒドロキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシプロピオン酸エチル、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、酪酸n-ブチル、クロヘキサノールアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶剤;プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート等のジアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ-ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;テトラヒドロフランなどの環状エーテル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N-ヘプタン、N-ヘキサン、N-オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中ではグリコールエーテルアセテート系溶剤、カルビトールアセテート系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エステル系溶剤が他の成分の溶解性の点で好適に用いられる。中でも、本発明に用いる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、乳酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、及び、3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選択される1種以上であることが、他の成分の分散性乃至溶解性や塗布適性の点から好ましい。
【0165】
また、現像性や溶剤再溶解性等の観点から、2種類以上の溶剤を含有する混合溶剤を使用するのも好ましい。
混合溶剤を使用する場合、第1溶剤としては、安全性が高い、適度な揮発性を持つ、適度な溶解性を持つために分散性が良好である等の理由から、前記したグリコールエーテルアセテート系溶剤を使用するのが好ましい。また、その中でも、沸点(大気圧における沸点をいう。以下同じ。)が150℃未満である2-メトキシエチルアセテート、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が特に好ましい。
【0166】
前記第1溶剤以外の溶剤である第2溶剤としては、アルコール性水酸基を有する溶剤や、沸点150℃以上の溶剤が好ましい。第2溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
第2溶剤としてアルコール性水酸基を有する溶剤を使用すると、分散性が良好になり溶剤再溶解性が良好になりやすい。
アルコール性水酸基を有する溶剤の例としては、前記アルコール系溶剤、前記カルビトール系溶剤、前記グリコールエーテル系溶剤が挙げられ、具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121℃)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(沸点174℃)等が挙げられる。
【0167】
混合溶剤を使用する場合に、アルコール性水酸基を有する溶剤の含有量は、全溶剤中10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。また、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。
前記範囲内であると、分散剤の溶解性が良好になりやすく、また、分散剤の第1溶剤への溶解を阻害しなくなるため、分散安定性が良好になりやすい。
【0168】
第1溶剤が沸点150℃未満の溶剤である場合、第2溶剤として沸点150℃以上の溶剤を使用すると、乾燥ムラが発生し難くなり、異物が生じ難く、溶剤再溶解性も良好になり易い。
沸点150℃以上の溶剤の例としては、例えば、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点179℃)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(沸点188℃)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点179℃)、3-メトキシブチルアセテート(沸点172℃)等が挙げられる。
【0169】
混合溶剤を使用する場合、沸点150℃以上の溶剤の含有量は、全溶剤中40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。また、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。
前記範囲内であると、乾燥ムラが発生し難く、また、乾燥時間が長くなり過ぎず生産性が良好となりやすい。
【0170】
前記「沸点150℃以上の溶剤」の沸点は、乾燥時間が長くなり過ぎない等の点から、240℃以下であることが好ましく、200℃以下であることが特に好ましい。
【0171】
本発明の感光性着色樹脂組成物が溶剤(F)を含有する場合、溶剤(F)の含有量は、特に限定はされないが、塗布性を向上し、他の成分の分散性乃至溶解性を向上しやすい点から、当該溶剤(F)を含む感光性着色樹脂組成物全量に対して、通常、55質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましく、中でも60質量%以上90質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0172】
<酸化防止剤(G)>
本発明の感光性着色樹脂組成物は、更に酸化防止剤を含むものであってもよい。本発明の感光性着色樹脂組成物は、酸化防止剤を含むことにより、耐熱性を向上することができ、露光及びポストベーク後の輝度低下を抑制できるため輝度を向上することができる。本発明の感光性着色樹脂組成物は、中でも、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と組み合わせて酸化防止剤を含むことが好ましい。
【0173】
本発明に用いられる酸化防止剤としては、特に限定されず、従来公知のものの中から適宜選択し、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられ、耐熱性の点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0174】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤とは、少なくとも1つのフェノール構造を含有し、当該フェノール構造の水酸基の2位と6位の少なくとも1つに炭素数4以上の置換基が置換されている構造を有する酸化防止剤を意味する。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:イルガノックス1010、BASF社製)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名:イルガノックス3114、BASF社製)、2,4,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジル)メシチレン(商品名:イルガノックス1330、BASF社製)、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-2,4-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン(商品名:イルガノックス565、BASF社製)、2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:イルガノックス1035、BASF社製)、1,2-ビス[3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(商品名:イルガノックスMD1024、BASF社製)、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル(商品名:イルガノックス1135、BASF社製)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(商品名:イルガノックス1520L、BASF社製)、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド](商品名:イルガノックス1098、BASF社製)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:イルガノックス259、BASF社製)、1-ジメチル-2-[(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:ADK STABAO-80、アデカ製)、ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロピオン酸)エチレンビス(オキシエチレン)(商品名:イルガノックス245、BASF社製)、1,3,5-トリス[[4-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(商品名:イルガノックス1790、BASF社製)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:スミライザーMDP-S、住友化学製)、6,6’-チオビス(2-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:イルガノックス1081、BASF社製)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル(商品名:イルガモド195、BASF社製)、アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル(商品名:スミライザーGM、住友化学製)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)(商品名:スミライザーWX-R、住友化学製)、6,6'-ジ-tert-ブチル-4,4'-ブチリデンジ-m-クレゾール(商品名:アデカスタブAO-40、ADEKA製)等が挙げられる。その他ヒンダードフェノール構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
【0175】
また、本発明においては、酸化防止剤として、潜在性酸化防止剤を用いても良い。本発明において潜在性酸化防止剤とは、加熱により脱離可能な保護基を有する化合物であって、当該保護基が脱離することにより、酸化防止機能を発現する化合物である。中でも150℃以上で加熱することにより、保護基が脱離しやすくなるものが好ましい。潜在性酸化防止剤は、露光時においては酸化防止機能を持たないため、光開始剤から発生したラジカルを失活せず、感度の低下を抑制し、線幅の細りを抑制し、残膜率を向上し易い。一方、露光後に行われる加熱工程においては、前記保護基が脱離して酸化防止効果が発現するため、色材等の退色が抑制されて、高輝度な着色層が得られる。
本発明において好適に用いられる潜在性酸化防止剤としては、耐熱性の点及び相溶性の点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤のフェノール性水酸基を加熱により脱離可能な保護基で保護した潜在性ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられ、具体例としては下記化学式(a)~(c)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0176】
【0177】
前記潜在性酸化防止剤の製造方法は特に限定されないが、例えば、特開昭57-111375、特開平3-173843、特開平6-128195、特開平7-206771、特開平7-252191、特表2004-501128の各公報に記載された方法により製造されたフェノール系化合物と、酸無水物、酸塩化物、Boc化試薬、アルキルハライド化合物、シリルクロライド化合物、アリルエーテル化合物等を反応させて得ることができる。また、市販品を用いてもよい。
前記加熱により脱離可能な保護基としては、例えば、酸無水物、酸塩化物、Boc化試薬、アルキルハライド化合物、シリルクロライド化合物、又はアリルエーテル化合物の反応残基が挙げられ、典型的には、t-ブトキシカルボニル基が挙げられる。
【0178】
本発明の感光性着色樹脂組成物が酸化防止剤(G)を含む場合、感光性着色樹脂組成物中の酸化防止剤(G)の含有量は、特に限定はされないが、露光及びポストベーク後の輝度低下を抑制し、着色層の輝度を向上する点から、感光性着色樹脂組成物の固形分全量100質量%中に、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上5質量%以下であることがより更に好ましい。
【0179】
また、前記酸化防止剤の含有量は、前記光開始剤との併用効果を十分に発揮させる点から、前記光開始剤(C)の合計100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることが更に好ましい。一方で、適度な感度維持の点から、前記光開始剤(C)の合計100質量部に対して、300質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましい。
【0180】
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明の感光性着色樹脂組成物は、更に、アルカリ可溶性樹脂を含むものであってもよい。
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は酸性基を有するものであり、バインダー成分として作用し、かつパターン形成する際に用いられるアルカリ現像液に可溶性であるものの中から、適宜選択して使用することができる。
本発明において、アルカリ可溶性樹脂とは、酸価が40mgKOH/g以上であることを目安にすることができる。
本発明における好ましいアルカリ可溶性樹脂は、酸性基、通常カルボキシ基を有するポリマーであり、具体的には、カルボキシ基を有するアクリル系共重合体及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系ポリマー、カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート系ポリマー等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシ基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和結合等の光重合性官能基を有するものである。アルカリ可溶性樹脂が側鎖に光重合性官能基を含有することにより、カラーフィルタ製造時における樹脂組成物の硬化工程において、当該アルカリ可溶性樹脂同士、乃至、当該アルカリ可溶性樹脂が、前記ケイ素含有化合物又は前記光重合性化合物が有するエチレン性不飽和結合と反応して架橋結合を形成し得ることにより、輝度の低下が抑制され、硬化膜の膜強度がより向上して現像耐性が向上し、また、硬化膜の熱収縮が抑制されて基板との密着性に優れるようになる。
【0181】
カルボキシル基を有する構成単位を有するアクリル系共重合体、及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系ポリマーは、例えば、カルボキシル基含有モノマー、及び必要に応じて共重合可能なその他のモノマーを、公知の方法により(共)重合して得られた(共)重合体である。
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、前記分散剤(E)で述べたものと同様のものが挙げられ、中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0182】
アルカリ可溶性樹脂中に、エチレン性不飽和結合を導入する方法は、従来公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、アルカリ可溶性樹脂が有するカルボキシル基に、分子内にエポキシ基とエチレン性不飽和結合とを併せ持つ化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等を付加させ、側鎖にエチレン性不飽和結合を導入する方法や、水酸基を有する構成単位を共重合体に導入しておいて、分子内にイソシアネート基とエチレン性不飽和結合とを備えた化合物を付加させ、側鎖にエチレン性不飽和結合を導入する方法などが挙げられる。
【0183】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂は、着色層の密着性が優れる点から、更に炭化水素環を有することが好ましい。前記炭化水素環としては、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
前記炭化水素環の具体例としては、例えば、シクロヘキサン、ノルボルナン、アダマンタン等の脂肪族炭化水素環;ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素環;ビフェニル等の鎖状多環や、カルド構造(9,9-ジアリールフルオレン)等が挙げられる。
前記炭化水素環が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、アミド基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
なお、前記炭化水素環は、1価の基として含まれていても良いし、2価以上の基として含まれていても良い。
【0184】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂において、カルボキシ基を有する構成単位とは別に、前記炭化水素環を有する構成単位を有するアクリル系共重合体を用いることが、各構成単位量を調整しやすく、前記炭化水素環を有する構成単位量を増加して当該構成単位が有する機能を向上させやすい点から好ましい。
カルボキシ基を有する構成単位と、前記炭化水素環とを有するアクリル系共重合体は、前述の“共重合可能なその他のモノマー”として炭化水素環を有するモノマーを用いることにより調製することができる。
【0185】
炭化水素環を有するモノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンなどが挙げられ、現像後の着色層の断面形状が加熱処理においても維持される効果が大きい点から、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びスチレンから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0186】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂は、更にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等、エステル基を有する構成単位等の他の構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、感光性着色樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分として機能するだけでなく、溶剤に対する溶解性、さらには溶剤再溶解性を向上させる成分としても機能する。
アルカリ可溶性樹脂は、各構成単位の仕込み量を適宜調整することにより、所望の性能を有するアルカリ可溶性樹脂とすることができる。
【0187】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂の好ましい重量平均分子量Mwは、好ましくは1,000以上50,000以下の範囲であり、さらに好ましくは3,000以上20,000以下である。1,000未満では硬化後のバインダー機能が著しく低下する場合があり、50,000を超えるとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が困難となる場合がある。
【0188】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点から、酸価が50mgKOH/g以上のものを選択して用いることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点、及び基板への密着性の点から、酸価が70mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、中でも、80mgKOH/g以上280mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0189】
アルカリ可溶性樹脂の側鎖にエチレン性不飽和結合を有する場合のエチレン性不飽和結合当量は、硬化膜の膜強度が向上して現像耐性が向上し、基板との密着性に優れるといった効果を得る点から、100g/mol以上2000g/mol以下の範囲であることが好ましく、特に、140g/mol以上1500g/mol以下の範囲であることが好ましい。該エチレン性不飽和結合当量が、100g/mol以上であれば現像耐性や密着性に優れている。また、2000g/mol以下であれば、前記カルボキシ基を有する構成単位や、炭化水素環を有する構成単位などの他の構成単位の割合を相対的に増やすことができるため、現像性や耐熱性に優れている。
ここで、エチレン性不飽和結合当量とは、前記アルカリ可溶性樹脂におけるエチレン性不飽和結合1モル当りの重量平均分子量のことであり、下記数式(2)で表される。
数式(2)
エチレン性不飽和結合当量(g/mol)=W(g)/M(mol)
(数式(2)中、Wは、アルカリ可溶性樹脂の質量(g)を表し、Mはアルカリ可溶性樹脂W(g)中に含まれるエチレン性不飽和結合のモル数(mol)を表す。)
【0190】
前記エチレン性不飽和結合当量は、例えば、JIS K 0070:1992に記載のよう素価の試験方法に準拠して、アルカリ可溶性樹脂1gあたりに含まれるエチレン性不飽和結合の数を測定することにより算出してもよい。
【0191】
本発明において、アルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の感光性着色樹脂組成物がアルカリ可溶性樹脂を含有する場合、その含有量としては特に制限はないが、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、アルカリ現像性を向上する効果が得られやすい点から、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、前記ケイ素含有化合物(A)を十分に含有させる点から、10質量%以下であることが好ましい。
本発明の感光性着色樹脂組成物においては、前記ケイ素含有化合物(A)100質量部に対し、アルカリ可溶性樹脂の含有量が、25質量部以下であることが好ましく、更に22質量部以下であることが好ましく、更に20質量部以下であることが好ましく、更に10質量部以下であることがより好ましい。
【0192】
<任意添加成分>
本発明の感光性着色樹脂組成物は、必要に応じて各種添加剤を含むものであってもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤の他、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
界面活性剤及び可塑剤の具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のものが挙げられる。
【0193】
シランカップリング剤としては、例えばKBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-903、KBE-903、KBM573、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-303、KBM-802、KBM-803、KBE-9007、X-12-967C(信越シリコーン社製)などが挙げられる。中でもSiN基板の密着性の点からメタクリル基、アクリル基を有するKBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103が好ましい
【0194】
シランカップリング剤の含有量としては、着色樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、シランカップリング剤が0.05質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。前記下限値以上、前記上限値以下であれば、SiNの密着性に優れている。
【0195】
本発明の感光性着色樹脂組成物においては、P/V比((組成物中の色材成分質量)/(組成物中の色材成分以外の固形分質量)比)は、脱ガスや熱収縮の点から、0.1以上であることが好ましく、更に0.2以上であることが好ましく、一方、溶剤再溶解性、現像残渣、現像密着性、現像耐性、水染み発生抑制効果等に優れる点から、0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、現像残渣、現像密着性の点から0.6以下であることがより更に好ましい。
【0196】
<感光性着色樹脂組成物の製造方法>
本発明の感光性着色樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、色材(D)を、必要に応じて前記分散剤を用いることにより、溶剤中に分散させた色材分散液を調製し、当該色材分散液に、ケイ素含有化合物(A)と、光重合性化合物(B)と、光開始剤(C)と、必要に応じて分散補助樹脂等のその他の成分を添加し、公知の混合手段を用いて混合することにより得ることができる。色材(D)が2種以上の色材を含む場合は、必要に応じて分散剤を用いて、各色材の色材分散液を各々準備し、各々の色材分散液と、ケイ素含有化合物(A)と、光重合性化合物(B)と、光開始剤(C)と、必要に応じて分散補助樹脂等のその他の成分を、公知の混合手段を用いて混合することにより得ることができる。
前記分散補助樹脂としては、前記アルカリ可溶性樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂の立体障害によって色材粒子同士が接触しにくくなり、分散安定化することやその分散安定化効果によって分散剤を減らす効果がある場合がある。
また、前記色材分散液には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、例えば、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を含有させても良い。
前記色材分散液の製造方法としては、特に限定はされないが、例えば、以下の2つの製造方法のうちのいずれかとすることが好ましい。
【0197】
前記色材分散液の第一の製造方法は、前記分散剤を準備する工程と、溶剤中、前記分散剤の存在下で、色材を分散する工程とを有するものである。溶剤中、前記分散剤の存在下で、2種以上の色材を共分散しても良いし、1種以上の色材を分散乃至共分散した後、2種以上の色材分散液を混合することにより前記色材分散液を得ても良い。
【0198】
前記色材分散液の第二の製造方法は、前記塩型ブロック共重合体である分散剤を用いる方法であり、溶剤と、前記ブロック共重合体と、前記有機酸化合物やハロゲン化炭化水素と、色材とを混合して、前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と、前記有機酸化合物やハロゲン化炭化水素とを塩形成しながら、色材を分散する工程とを有するものである。このような塩形成しながら色材を分散する場合においても、2種以上の色材を共分散しても良いし、1種以上の色材を分散乃至共分散した後、2種以上の色材分散液を混合することにより色材分散液を得ても良い。
【0199】
前記第一の製造方法及び前記第二の製造方法において色材は、従来公知の分散機を用いて分散することができる。
分散機の具体例としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03mm以上3.0mm以下が好ましく、より好ましくは0.05以上2.0mm以下である。
【0200】
[硬化物]
本発明に係る硬化物は、前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物である。
本発明に係る硬化物は、カラーフィルタの着色層として好適に用いられるものであり、前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物であるため、輝度の低下が抑制されたものである。
本発明に係る硬化物は、例えば、前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させたのち、露光し、必要に応じて前記ケイ素含有化合物中の反応性基同士を反応させて結合させるための加熱をし、更に必要に応じて現像することにより得ることができる。塗膜の形成、露光、加熱、及び現像の方法としては、例えば、後述する本発明に係るカラーフィルタが備える着色層の形成において用いられる方法と同様の方法とすることができる。
【0201】
[カラーフィルタ]
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが、前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物である。
【0202】
このような本発明に係るカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0203】
(着色層)
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、少なくとも1つが、前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物、すなわち前記着色樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層である。
着色層は、通常、後述する基板上の遮光部の開口部に形成され、通常3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、感光性着色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1μm以上5μm以下の範囲であることが好ましい。
【0204】
当該着色層は、例えば、下記の方法により形成することができる。
まず、前述した本発明の感光性着色樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、ダイコート法などの塗布手段を用いて後述する基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。なかでもスピンコート法、ダイコート法を好ましく用いることができる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、ポリマー及び光重合性化合物等を光重合反応させて硬化塗膜とする。露光には、例えば、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線、通常20~2000kVの粒子加速器から取り出される電子線、α線、β線、γ線等を用いることができる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
前記露光後には、更に重合反応を促進させるため、及び前記ケイ素含有化合物中の反応性基同士を反応させて結合させるために、加熱処理(ポストベーク)を行ってもよい。ポストベークの加熱条件は、使用する感光性着色樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み、反応性基の種類等によって適宜選択され、特に限定はされないが、露光後の加熱処理における温度は、好ましくは80℃以上250℃以下、より好ましくは100℃以上240℃以下、より更に好ましくは180℃以上230℃以下、最も好ましくは200℃以上230℃以下であり、当該加熱の時間は、10分以上180分以下であることが好ましく、20分以上150分以下であることがより好ましい。前記ケイ素含有化合物(A)が反応性基としてチオール基を含む場合は、露光後の加熱処理における温度を、70℃以上150℃以下とすることができ、より好ましい態様においては、80℃以上120℃以下とすることができる。また、前記ケイ素含有化合物(A)が反応性基としてチオール基を含む場合は、露光後の加熱処理の時間は、10分以上120分以下であることが好ましい。
【0205】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶剤にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、感光性着色樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0206】
(遮光部)
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、後述する基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。遮光部は、スパッタリング法、真空蒸着法等によるクロム等の金属薄膜であっても良い。或いは、遮光部は、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂層であってもよい。遮光性粒子を含有させた樹脂層の場合には、感光性レジストを用いて現像によりパターニングする方法、遮光性粒子を含有するインクジェットインクを用いてパターニングする方法、感光性レジストを熱転写する方法等がある。
【0207】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2μm以上0.4μm以下程度で設定され、黒色顔料をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5μm以上2μm以下程度で設定される。
【0208】
(基板)
基板としては、後述する透明基板やシリコン基板、前記基板上にアルミニウム、銀、銀/銅/パラジウム合金薄膜などを形成したものが用いられる。これらの基板上には、別のカラーフィルタ層、樹脂層、TFT等のトランジスタ、回路等が形成されていてもよい。本発明の感光性着色樹脂組成物において、前記ケイ素含有化合物(A)が有する前記反応性基がチオール基を含む場合は、ポストベークの温度を低減できることから、前記基板として、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板、シリコン基板等の高温で変形しやすい基板を好ましく用いることができる。
【0209】
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板、フレキシブルガラス等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm以上1mm以下程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、前記基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や配向突起、柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0210】
[表示装置]
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有することを特徴とする。本発明において表示装置の構成は特に限定されず、従来公知の表示装置の中から適宜選択することができ、例えば、液晶表示装置や、有機発光表示装置などが挙げられる。
【0211】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明に係るカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。
図2は、本発明の表示装置の一例を示す概略図であり、液晶表示装置の一例を示す概略図である。
図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、前記カラーフィルタ10と前記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この
図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0212】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
【0213】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
【0214】
<有機発光表示装置>
本発明に係る有機発光表示装置は、前述した本発明に係るカラーフィルタと、有機発光体とを有することを特徴とする。
このような本発明の有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。
図3は、本発明の表示装置の他の一例を示す概略図であり、有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルタ10と、有機発光体80とを有している。カラーフィルタ10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0215】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルタ上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この
図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0216】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
なお、以下において、合成したケイ素含有化合物の構造は、GC/MSと1H-NMRにより分析した。
また、以下において、重量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液として、ショウデックスGPCシステム-21H(Shodex GPC System-21H)を用いて測定した。
【0217】
(合成例1:Si含有化合物Aの合成)
エステルアダプター、冷却管、及び温度計を備えた500mlガラスフラスコにα、ω-ジヒドロキシジアクリロエトキシシロキサン165.4g(0.1モル)及びテトラメトキシシラン15.2g(0.1モル)を仕込み、窒素雰囲気下で、120℃で3時間反応させた。エステルアダプターには脱メタノール反応によるメタノールの留出がみられた。反応終了後、分析により、得られた化合物の反応性基(エチレン性不飽和結合)のモル当量は、159g/molであり、分子量が1,904であり、下記一般式(i)において、Aが2-アクリロイルオキシエトキシ基(-O-(CH2)2-O-C(=O)-CH=CH2)であるSi含有化合物Aであることを確認した。
【0218】
【0219】
(合成例2:Si含有化合物Bの合成)
攪拌機、温度計、ジムロート、滴下ロートを備えた1,000mlの四つ口フラスコに、ビス(トリビニルシリル)エタン98.4g(0.4モル)、及び塩化白金酸のジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(Pt換算濃度0.5質量%)1.0gを仕込み攪拌しながら90℃に昇温した。次いでジアクリロエトキシクロロシラン598.5g(2.64モル)を滴下ロートにより90℃~100℃で2時間かけて滴下した後、90~100℃で3時間熟成を行った。冷却後、減圧蒸留した。
次に、攪拌機、温度計、ジムロート、滴下ロートを備えた1,000mlの四つ口フラスコにトルエン150g、LiAlH430.1g(0.79モル)を仕込み、攪拌しながらTHF300gを滴下ロートにより滴下した後、減圧蒸留により得られた留分596g(0.35モル)とトルエン500gの混合液を滴下ロートにより滴下した。30℃以下で2時間熟成した後、酢酸エチル80gを滴下ロートにより滴下し、次いで反応物を1N塩酸3L中に添加、水洗後、分液により上層のみ取り出し、芒硝脱水後ろ過し、ろ液を減圧蒸留した。分析より、得られた化合物の反応性基(エチレン性不飽和結合)のモル当量は、148g/molであり、分子量が1,779であり、下記一般式(ii)において、A’が2-アクリロイルオキシエトキシ基(-O-(CH2)2-O-C(=O)-CH=CH2)であるSi含有化合物Bであることを確認した。
【0220】
【0221】
(合成例3:Si含有化合物Cの合成)
合成例1において、α、ω-ジヒドロキシジアクリロエトキシシロキサンに代えて、α、ω-ジヒドロキシジエトキシチオシロキサンを等モル用いた以外は、合成例1と同様にした。分析により、得られた化合物の反応性基(チオール基)のモル当量は、127g/molであり、分子量が1,525であり、前記一般式(i)においてAが2-メルカプトエトキシ基(-O-(CH2)2-SH)であるSi含有化合物Cであることを確認した。
【0222】
(合成例4:Si含有化合物Dの合成)
合成例2において、ジアクリロエトキシクロロシランに代えて、ジメトキシチオクロロシランを等モル用いた以外は、合成例2と同様にした。分析により、得られた化合物の反応性基(チオール基)のモル当量は、122g/molであり、分子量が1,468であり、前記一般式(ii)において、A’がメルカプトメトキシ基(-O-CH2-SH)であるSi含有化合物Dであることを確認した。
【0223】
(合成例5:Si含有化合物Eの合成)
合成例1において、α、ω-ジヒドロキシジアクリロエトキシシロキサンに代えて、α、ω-ジヒドロキシジグリシジルオキシシロキサンを等モル用いた以外は、合成例1と同様にした。分析により、得られた化合物の反応性基(エポキシ基)のモル当量は、117g/molであり、分子量が1,400であり、前記一般式(i)においてAがグリシジルオキシ基であるSi含有化合物Eであることを確認した。
【0224】
(合成例6:Si含有化合物Fの合成)
合成例2において、ジアクリロエトキシクロロシランに代えて、ジグリシジルオキシクロロシランを等モル用いた以外は、合成例2と同様にした。分析により、得られた化合物の反応性基(エポキシ基)のモル当量は、118g/molであり、分子量が1,419であり、前記一般式(ii)において、A’がグリシジルオキシ基であるSi含有化合物Fであることを確認した。
【0225】
(合成例7:開始剤aの合成)
(1)中間体A1の合成
フルオレン0.60mol、水酸化カリウム2.4mol及びよう化カリウム0.06molを窒素雰囲気下で無水ジメチルスルホキシド500mlに溶解させて15℃で維持し、ブロモブタン1.33molを2時間で徐々に加えて反応物を15℃で1時間撹拌した。その後反応物に蒸溜水2Lを加えて30分程度撹拌した後、ジクロロメタン2Lで生成物を抽出して、抽出した有機層を蒸溜水2Lで2回洗った。次いで、回収した有機層を無水MgSO4で乾燥し、溶媒を減圧蒸溜して得た生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒;エチルアセテート:n-ヘキサン=1:20)で精製することにより、下記中間体A1を得た。
【0226】
【0227】
(2)中間体A2の合成
前記中間体A1(0.11mol)をジクロロメタン500mlに溶解させて-5℃まで冷却した後、AlCl3 0.13molを徐々に加え、反応物の温度が昇温されないように、ジクロロメタン15mlとシクロヘキシル塩化プロピオニル0.13molからなる溶液を1時間で徐々に滴下し、-5℃で1時間撹拌した。その後反応物を氷水500mlに徐々に注いで30分間撹拌した後、有機層を蒸溜水200mLで洗った。次いで、回収した有機層を減圧蒸溜して得た生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒;エチルアセテート:n-ヘキサン=1:4)で精製することにより、下記中間体A2を得た。
【0228】
【0229】
(3)中間体A3の合成
前記中間体A2(0.042mol)をテトラヒドロフラン(THF)200mlに溶解させ、1,4-ジオキサンに溶解された4N HCl25mlと亜硝酸イソブチル0.063molを順に加えて反応物を25℃で6時間撹拌した。その後反応溶液にエチルアセテート200mlを加えて30分間撹拌して有機層を分離した後、蒸溜水200mlで洗った。次いで、回収した有機層を無水MgSO4で乾燥し、溶媒を減圧蒸溜して得た生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒;エチルアセテート:n-ヘキサン=1:4)で精製することにより、下記中間体A3を得た。
【0230】
【0231】
(4)開始剤aの合成
前記中間体A3(0.056mol)を窒素雰囲気下でN-メチル-2-ピロリジノン(NMP)200mlに溶解させて-5℃で維持し、トリエチルアミン0.068molを加えて反応溶液を30分間撹拌した。その後、アセチルクロリド0.068molとN-メチル-2-ピロリジノン10mlからなる溶液を30分間で徐々に加え、反応物が昇温されないように30分間撹拌した。その後蒸溜水200mlを反応物に徐々に加えて30分間撹拌して有機層を分離した。次いで、回収した有機層を無水MgSO4で乾燥し、溶媒を減圧蒸溜して得た生成物を、エタノール1Lを使用して再結晶した後乾燥することにより、下記開始剤aを得た。
【0232】
【0233】
(合成例8:開始剤bの合成)
(1)中間体B1の合成
9H-フルオレン-2-イル-(フェニル)メタノン0.030molをジクロロメタン45mlに溶解させて-5℃まで冷却し、無水AlCl3 0.033molを加えた後、ジクロロメタン9mlと塩化プロピオニル0.033molからなる溶液を反応物の温度が昇温されないように1時間で徐々に加えて-5℃で1時間撹拌した。その後、氷水250gに反応物を徐々に注いで30分間撹拌した後、有機層を分離して、蒸溜水100mlで洗った。次いで、回収した有機層を減圧蒸溜して得た生成物を、トルエン: エチルアセテート(5:1)の混合溶液20mlで再結晶することにより、下記中間体B1を得た。
【0234】
【0235】
(2)中間体B2の合成
前記中間体B1(0.010mol)をテトラヒドロフラン(THF)30mlに溶解させ、1,4-ジオキサンに溶解された4N HCl4.5mlと亜硝酸イソペンチル0.015molを順に加えて反応物を25℃で24時間撹拌した。 その後、反応溶液にエチルアセテート20mlと蒸溜水50mlを加えて有機層を抽出した。抽出した有機層を無水MgSO4で乾燥し、溶媒を減圧蒸溜して得た生成物を、エタノール:エチルアセテート(5:1)の混合溶媒30mlを使用して再結晶した後乾燥することにより、下記中間体B2を得た。
【0236】
【0237】
(3)開始剤bの合成
前記中間体B2(0.006mol)を窒素雰囲気下でエチルアセテート25mlに溶解させて反応物を-5℃で維持し、トリエチルアミン0.007mmolを加えて反応溶液を30分間撹拌した後、アセチルクロリド0.007molとエチルアセテート5mlからなる溶液を、反応物が昇温されないように30分間で徐々に加え、30分間撹拌した。その後、蒸溜水100mlを反応物に徐々に加えて30分程度撹拌し、有機層を分離した。次いで、回収した有機層を無水MgSO4で乾燥し、溶媒を減圧蒸溜することにより、下記開始剤bを得た。
【0238】
【0239】
(合成例9:開始剤cの合成)
(1)中間体C1の合成
500mlの四口フラスコ中に、ジフェニルチオエーテル0.2molと、粉砕したAlCl3 0.22molと、ジクロロエタン150mlとを投入して攪拌し、アルゴンガスを流して氷浴で冷却して温度が0℃まで低下した時に、シクロヘキシル塩化プロピオニル0.22molとジクロロエタン42gからなる溶液を滴下し始め、温度を10℃以下に調整しながら約1.5時間かけて添加した。温度を15℃に上昇して、引き続き2時間攪拌した後、反応液を排出した。氷400gと濃塩酸65mlとを配合した希塩酸中に、攪拌下で反応液を徐々に投入した後、分液漏斗で下層を分液し、上層を50mlのジクロロエタンで抽出した後、抽出液と下層液とを合わせた。その後、NaHCO310gと水200gとを配合したNaHCO3溶液で洗浄し、更にpH値が中性を呈するまで200mlの水で3回洗浄し、60gの無水MgSO4で乾燥して水分を除去した後、回転蒸発によりジクロロエタンを蒸発させた。回転蒸発瓶中に残った固体粉末を石油エーテル200mlに入れ、吸引ろ過を行い、更に150mlの無水エタノールに投入して加熱し、還流した。その後室温まで冷却し、更に氷で2時間冷却し、吸引ろ過した後、50℃のオーブン中で2時間乾燥することにより、下記中間体C1を得た。
【0240】
【0241】
(2)中間体C2の合成
500mlの四口フラスコ中に、前記中間体C 142gと、テトラヒドロフラン400gと、濃塩酸200gと、亜硝酸イソアミル24.2gとを投入して、常温で5時間攪拌した後、反応液を排出した。反応液を大ビーカーに入れ、水1000mlを加えて攪拌した後、一晩静置することにより分層し、黄色の粘稠状液体を得た。粘稠状液体をジクロロエタンで抽出し、50gの無水MgSO4を投入して乾燥した後、吸引ろ過を行い、ろ液を回転蒸発させて溶剤を除去し、油状粘稠物を得た。続いて、該粘稠物を石油エーテル150mlに入れ、攪拌、析出し、吸引ろ過を行って、白色粉末状固体を得た。その後、60℃で5時間乾燥して、下記中間体C2を得た。
【0242】
【0243】
(3)開始剤cの合成
1000mlの四口フラスコ中に、前記中間体C2 34gと、ジクロロエタン350mlと、トリエチルアミン12.7gとを投入して攪拌し、氷浴で冷却して、温度が0℃まで低下した時に酢酸クロリド15.7gとジクロロエタン15gからなる溶液を滴下し始め、約1.5時間かけて添加した。引き続いて1時間攪拌した後、冷水500mlを滴下し、分液漏斗で分層した。5%NaHCO3溶液200mlで1回洗い、更にpH値が中性を呈するまで200ml水で2回洗い、その後、濃塩酸20gと水400mlとを配合した希塩酸で一1回洗い、続いて200ml水で3回洗った後、100gの無水MgSO4で乾燥し、溶剤を回転蒸発させて除去し、粘稠状液体を得た。該粘稠状液体に適量のメタノールを投入して析出した白色固体を、ろ過、乾燥して、下記開始剤cを得た。
【0244】
【0245】
(合成例10:アルカリ可溶性樹脂A溶液の調製)
メタクリル酸ベンジル(BzMA)40質量部、メタクリル酸メチル(MMA)15質量部、メタクリル酸(MAA)25質量部、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3質量部の混合液を、PGMEA 150質量部を入れた重合槽中に、窒素気流下、100℃で、3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に100℃で、3時間加熱し、重合体溶液を得た。この重合体溶液の重量平均分子量Mwは、7000であった。
次に、得られた重合体溶液に、グリシジルメタクリレート(GMA) 20質量部、トリエチルアミン0.2質量部、及びp-メトキシフェノール0.05質量部を添加し、110℃で10時間加熱し、反応溶液中に、空気をバブリングさせた。得られたアルカリ可溶性樹脂Aは、BzMAとMMA、MAAの共重合により形成された主鎖にGMAを用いてエチレン性二重結合を有する側鎖を導入した樹脂であり、固形分42.6質量%、酸価74mgKOH/g、重量平均分子量Mwは12000であった。酸価は、JIS K 0070に基づいて測定した。
【0246】
(合成例11:Azo誘導体1の調製)
550gの蒸留水の中に、23.1gのジアゾバルビツール酸および19.2gのバルビツール酸を導入した。次いで、水酸化カリウム水溶液を用いてアゾバルビツール酸(0.3モル)となるように調整し、750gの蒸留水と混合した。5gの30%の塩酸を滴下により添加した。その後、38.7gのメラミンを導入した。次いで、0.57モルの塩化ニッケル(II)溶液と0.03モルの塩化銅溶液を混合して添加し、80℃の温度で8時間撹拌した。濾過により顔料を単離し、洗浄し、120℃で乾燥させ、乳鉢で磨砕し、Azo誘導体1(Ni:Cu=95:5(モル比)のazo顔料)を得た。
【0247】
(合成例12:Azo誘導体2の調製)
合成例11において、0.57モルの塩化ニッケル溶液と0.03モルの塩化銅溶液の代わりに、0.39モルの塩化ニッケル(II)溶液と0.21モルの塩化亜鉛(II)溶液を用いた以外は、合成例11と同様にして、Azo誘導体2(Ni:Zn=65:35(モル比)のazo顔料)を得た。
【0248】
(合成例13:Azo誘導体3の調製)
アゾバルビツール酸96gに82℃で5000gの蒸留水を添加した。その後、252.2gのメラミンを導入した。次いで、0.70モルの30%塩化ニッケル(II)溶液、0.05モルの30%塩化亜鉛(II)溶液、および0.167モルの20%塩化ランタン(III)溶液の混合物を滴下により添加した。82℃で3時間経過してから、水酸化カリウム水溶液を用いてpHを5.5とした。それに続けて、約1000gの蒸留水を用い、90℃で希釈した。次いで、113gの30%塩酸を滴下により添加し、その混合物を90℃で12時間にわたり加熱処理した。その後、水酸化カリウム水溶液を使用してpHを5とした。次いで、吸引ロート上で顔料を単離し、洗浄し、真空乾燥キャビネット内において80℃で乾燥させ、標準的な実験室用ミル内で約2分間かけて摩砕し、Azo誘導体3(Ni:Zn:La=81:6:13(モル比)のazo顔料)を得た。
【0249】
(合成例14:分散剤a溶液の調製)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコにTHF250質量部、塩化リチウム0.6質量部を加え、充分に窒素置換を行った。反応フラスコを-60℃まで冷却した後、ブチルリチウム4.9質量部(15質量%ヘキサン溶液)、ジイソプロピルアミン1.1質量部、イソ酪酸メチル1.0質量部を、シリンジを用いて注入した。Bブロック用モノマーのメタクリル酸1-エトキシエチル(EEMA)3.3質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)18.2質量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(EHMA)4.2質量部、メタクリル酸n-ブチル(BMA)7.0質量部、メタクリル酸ベンジル(BzMA)24.7質量部、メタクリル酸メチル(MMA)13.3質量部を、添加用ロートを用いて60分かけて滴下した。30分後、Aブロック用モノマーであるメタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMMA)30.8質量部を20分かけて滴下した。30分間反応させた後、メタノール1.5質量部を加えて反応を停止させた。得られた前駆体ブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、PGMEAで希釈し固形分30質量%溶液とした。水を32.5質量部加え、100℃に昇温し7時間反応させ、EEMA由来の構成単位を脱保護しメタクリル酸(MAA)由来の構成単位とした。得られたブロック共重合体PGMEA溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、前記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含み親溶剤性を有するBブロックとを含むブロック共重合体A(酸価12mgKOH/g、Tg44℃)を得た。このようにして得られたブロック共重合体Aの重量平均分子量Mwは8100であった。また、アミン価は110mgKOH/gであった。
100mL丸底フラスコ中でPGMEA29.35質量部に、ブロック共重合体Aを29.35質量部溶解し、フェニルホスホン酸(東京化成製)1.59質量部(フェニルホスホン酸がブロック共重合体AのDMMAユニット1モルに対し、0.1モル)加え、反応温度30℃で20時間攪拌することにより、塩型ブロック共重合体A(分散剤a)溶液(固形分51.3質量%)を得た。
塩形成後のアミン価は、塩形成前のアミン価110mgKOH/gから、DMMAユニットの0.10モル分のアミン価(11mgKOH/g)を差し引いて、99mgKOH/gと算出することができる。塩形成後のブロック共重合体Aの酸価は塩形成前ブロック共重合体Aと同じである。塩形成後のブロック共重合体Aの酸Tgは46℃であった。
なお、塩形成前のブロック共重合体の酸価は、JIS K 0070に記載の方法に準ずる方法により求め、塩形成前のブロック共重合体のアミン価は、JIS K 7237に記載の方法に準ずる方法により求めた。
塩形成前のブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、前述の本発明の測定方法に従って、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求めた。
塩形成前及び塩形成後のブロック共重合体のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に記載の方法に準ずる方法により、示差走査熱量測定(DSC)(SIIナノテクノロジー社製、EXSTAR DSC 7020)を用いて測定した。
【0250】
(実施例1)
(1)色材分散液R1の製造
分散剤として分散剤a溶液(固形分51.3質量%)を6.23質量部、色材としてC.I.ピグメントレッド254(商品名:Hostaperm Red D2B-COF LV3781、CLARIANT製)を13.0質量部、PGMEAを14.59質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、色材分散液R1(固形分47.9質量%、色材濃度38.4質量%)を得た。
【0251】
(2)感光性着色樹脂組成物R1の製造
前記(1)で得られた色材分散液R1を11.29質量部、Si含有化合物Aを1.25質量部、合成例10で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分42.6質量%)を0.63質量部、光重合性化合物(多官能モノマー、商品名アロニックスM-403、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(DPHA)、東亞合成(株)社製)を1.25質量部、開始剤aを0.15質量部、PGMEAを9.77量部加え、感光性着色樹脂組成物R1を得た。
(3)着色層の形成
前記(2)で得られた感光性着色樹脂組成物R1を、厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。塗布量は、ポストベーク後の着色層の色度が、x=0.650となるように調整した。その後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥して塗膜を形成した。この塗膜に、開口寸法90μm×300μmの独立細線内に20μm×20μmのクロムマスクを配置したパターンフォトマスク(クロムマスク)を介して、超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2の紫外線を照射し、更に230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークすることにより、着色層R1を形成した。なお、着色層の色度(x、y)は、大塚電子製分光特性測定装置LCF-1500Mを用いて測定した。
【0252】
(実施例2~14、比較例1~3)
実施例2~14及び比較例1~3は、実施例1で用いた色材分散液R1と同じ色材分散液を用い、感光性着色樹脂組成物R2~14、RC1~RC3を以下のようにして製造した。
実施例2~6では、実施例1の(2)において、Si含有化合物Aに代えて、それぞれ表1に示すSi含有化合物を、表1に示す量で用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R2~R6を得た。
実施例7では、実施例1の(2)において、開始剤aの添加量を0.40質量部に変え、更に開始剤bを0.40質量部添加し、PGMEAの量を11.19質量部となるように調整した以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R7を得た。
実施例8では、実施例1の(2)において、開始剤aに代えて、開始剤bを用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R8を得た。
実施例9では、実施例1の(2)において、Si含有化合物Aに代えて、Si含有化合物Fを、表1に示す量で用い、更に開始剤aに代えて、開始剤cを用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R9を得た。
実施例10では、実施例1の(2)において、開始剤aの添加量を0.40質量部に変え、更に開始剤cを0.40質量部添加し、PGMEAの量を11.19質量部となるように調整した以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R10を得た。
実施例11では、実施例1の(2)において、開始剤aの添加量を0.40質量部に変え、更にメルカプト系連鎖移動剤(ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート)(商品名:カレンズMTPE1、昭和電工製))を0.30質量部添加し、PGMEAの量を12.05質量部となるように調整した以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R11を得た。
実施例12では、実施例1の(2)において、更にヒンダードフェノール系酸化防止剤としてペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:イルガノックス1010、BASF社製)を0.30質量部添加した以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R12を得た。
実施例13では、実施例1の(2)において、開始剤aに代えて、下記化学式(d)で表されるOXE-02(BASF社製)を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R13を得た。
【0253】
【0254】
実施例14では、実施例1の(2)において、Si含有化合物Aの添加量を表1に示す値に変えた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R14を得た。
比較例1では、実施例1の(2)において、Si含有化合物Aを用いなかった以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物RC1を得た。
比較例2では、実施例1の(2)において、Si含有化合物Aを用いず、更に開始剤aに代えて、前記化学式(d)で表されるOXE-02(BASF社製)を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物RC2を得た。
比較例3では、実施例1の(2)において、Si含有化合物Aの添加量を0.10質量部に変え、光重合性化合物の添加量を2.05質量部に変えた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物RC3を得た。
【0255】
実施例2~14及び比較例1~3では、実施例1の(3)において、感光性着色樹脂組成物R1の代わりに、それぞれ前記感光性着色樹脂組成物R2~R14、RC1~RC3を用いた以外は、実施例1の(3)と同様にして、着色層R2~R14、RC1~RC3を得た。
【0256】
(実施例15)
(1)色材分散液G1の製造
分散剤として分散剤a溶液(固形分51.3質量%)を13.3質量部、色材としてC.I.ピグメントグリーン59(商品名:FASTOGEN GREEN C100、DIC(株)製)を11.0質量部と、C.I.ピグメントイエロー150(商品名:LEVASCREEN YELLOW G01、ランクセス(株)製)を2.0質量部と、PGMEAを63.7質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、色材分散液G1(固形分22.0質量%、色材濃度14.4質量%)を得た。
【0257】
(2)感光性着色樹脂組成物G1の製造
前記(1)で得られた色材分散液G1を287.0質量部、Si含有化合物Aを23.0質量部、合成例10で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分42.6質量%)を12.0質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM-403、東亞合成(株)社製)を23.0量部、開始剤aを5.1質量部、PGMEAを84.63質量部加え、感光性着色樹脂組成物G1を得た。
(3)着色層の形成
前記(2)で得られた感光性着色樹脂組成物G1を、厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。塗布量は、ポストベーク後の着色層の色度がy=0.370となるように調整した。その後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥して塗膜を形成した。この塗膜に、開口寸法90μm×300μmの独立細線内に20μm×20μmのクロムマスクを配置したパターンフォトマスク(クロムマスク)を介して、超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2の紫外線を照射し、更に230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークすることにより、着色層G1を形成した。なお、着色層の色度(x、y)は、大塚電子製分光特性測定装置LCF-1500Mを用いて測定した。
【0258】
(実施例16~20)
実施例16~20においては、実施例15で用いた色材分散液G1と同じ色材分散液を用い、実施例15の(2)において、Si含有化合物Aに代えて、それぞれ表2に示すSi含有化合物を、表2に示す量で用いた以外は、実施例15の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G2~G6を得た。次いで、実施例15の(3)において、感光性着色樹脂組成物G1の代わりに、それぞれ前記感光性着色樹脂組成物G2~G6を用いた以外は、実施例15の(3)と同様にして、着色層G2~G6を得た。
【0259】
(実施例21)
分散剤として分散剤a溶液(固形分51.3質量%)を13.3質量部、色材としてC.I.ピグメントグリーン59(商品名:FASTOGEN GREEN C100、DIC(株)製)を11.0質量部と、合成例11で得られたAzo誘導体1を2.0質量部と、PGMEAを63.7質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、色材分散液G7(色材濃度14質量%)を得た。
次いで、実施例15の(2)において、色材分散液G1に代えて、前記色材分散液G7を用いた以外は、実施例15の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G7を得た。
次いで、実施例15の(3)において、感光性着色樹脂組成物G1の代わりに、前記感光性着色樹脂組成物G7を用いた以外は、実施例15の(3)と同様にして、着色層G7を得た。
【0260】
(実施例22)
実施例21において、合成例11で得られたAzo誘導体1に代えて、合成例12で得られたAzo誘導体2を用いた以外は、実施例21と同様にして、色材分散液G8(色材濃度14質量%)を得た。次いで、実施例21において、色材分散液G7に代えて、前記色材分散液G8を用いた以外は、実施例21と同様にして、感光性着色樹脂組成物G8及び着色層G8を得た。
【0261】
(実施例23)
実施例21において、合成例11で得られたAzo誘導体1に代えて、合成例13で得られたAzo誘導体3を用いた以外は、実施例21と同様にして、色材分散液G9(色材濃度14質量%)を得た。次いで、実施例21において、色材分散液G7に代えて、前記色材分散液G9を用いた以外は、実施例21と同様にして、感光性着色樹脂組成物G9及び着色層G9を得た。
【0262】
(比較例4~7)
実施例15、21、22及び23において、Si含有化合物Aを用いなかった以外は、それぞれ実施例15、21、22及び23と同様にして、比較色材分散液GC1、GC2、GC3及びGC4を得た。次いで、実施例15、21、22及び23において、色材分散液G1、G7、G8及びG9に代えて、前記比較色材分散液GC1、GC2、GC3及びGC4を用いた以外は、それぞれ実施例15、21、22及び23と同様にして、比較感光性着色樹脂組成物GC1、GC2、GC3及びGC4、並びに着色層GC1、GC2、GC3及びGC4を得た。
【0263】
[評価方法]
<光学性能評価>
実施例及び比較例で得られた着色層の輝度(Y)を、大塚電子製分光特性測定装置LCF-1500Mを用いて測定した。
【0264】
<現像性評価>
実施例及び比較例で得られた着色層を光学顕微鏡により観察し、下記評価基準により、ビリツキについて評価した。
[ビリツキ]
A:着色層に形成された微小孔の周縁部の十点平均粗さが0.1より小さい
B:着色層に形成された微小孔の周縁部の十点平均粗さが0.1以上0.5以下
C:着色層に形成された微小孔の周縁部の十点平均粗さが0.5より大きい
なお、十点平均粗さは、JIS B0601に準拠して測定した。
【0265】
[直線性]
実施例1~14及び比較例1~3では、着色層を形成する際の露光時に使用したクロムマスクの開口幅90μmに当たる部分の着色層の細線パターンの幅を光学顕微鏡で5箇所測定し、線幅のばらつきをもって直線性を評価した。
A:ばらつきが±0.1μm以内
B:ばらつきが±0.1μm超過±0.3μm以内
C:ばらつきが±0.3μm超過
【0266】
実施例1~14及び比較例1~3では、得られた着色層を光学顕微鏡により観察し、下記評価基準により、現像残渣について評価した。
[現像残渣]
A:光学顕微鏡による観察で着色層に形成された微小孔内部に着色が観察されない
B:光学顕微鏡による観察で着色層に形成された微小孔内部に着色が観察される
【0267】
<耐熱性評価>
実施例及び比較例において、着色層を形成する際に、露光後且つポストベーク前の硬化膜の色度(L0、a0、b0)と、ポストベーク後の着色層の色度(L1、a1、b1)をそれぞれ測定し、下記式により、ポストベーク前後の硬化膜の色度変化を評価した。
ΔEab={(L1-L0)2+(a1-a0)2+(b1-b0)2}1/2
なお硬化膜(着色層)の色度(L1、a1、b1)はオリンパス(株)社製「顕微分光測定装置OSP-SP200」を用いて測定した。
【0268】
【0269】
【0270】
なお、表中各略号は、以下の通りである。
PR254:C.I.ピグメントレッド254商品名:Hostaperm Red D2B-COF LV3781、CLARIANT製)
PG59:C.I.ピグメントグリーン59(商品名:FASTOGEN GREEN C100、DIC(株)製)
PY150:C.I.ピグメントイエロー150(商品名:LEVASCREEN YELLOW G01、ランクセス(株)製)
メルカプト系:メルカプト系連鎖移動剤(ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート、商品名:カレンズMTPE1、昭和電工(株)製)
OXE02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(商品名イルガキュアOXE-02、BASF社製)
Irganox1010:ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:IRGANOX1010、BASF社製)
【0271】
[結果のまとめ]
表の結果から、前記一般式(A1)で表される化合物及び前記一般式(A2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である特定のケイ素含有化合物を、光重合性化合物100質量部に対し、10.0質量部超過含有した実施例1~23の感光性着色樹脂組成物は、良好な現像性を有しながら、ポストベーク時の加熱による色味の変化が抑制され、高輝度な着色層を形成可能であることが明らかにされた。
中でも、光開始剤として、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物において、前記一般式(C1)中のXが-C(Ra)(Rb)-で表される2価の基であり、Yが直接結合であるオキシムエステル化合物と、前記一般式(C1)で表されるオキシムエステル化合物において、前記一般式(C1)中のXがチオエーテル結合(-S-)であり、Yが無結合であるオキシムエステル化合物とを組み合わせて用いた実施例10は、感光性着色樹脂組成物の現像性に優れ、着色層のパターン内に形成した微小孔周縁部のビリツキがより抑制されていた。
また、実施例15~23の中では、黄色色材としてC.I.ピグメントイエロー150の誘導体顔料を用いた実施例21~23が、特に高輝度な着色層を形成することができた。
一方、比較例1、2、4~7の感光性着色樹脂組成物は、前記特定のケイ素含有化合物を含有しないものであったため、比較例3の感光性着色樹脂組成物は、前記特定のケイ素含有化合物の添加量を、光重合性化合物100質量部に対し、10質量部以下としたため、それぞれ現像性に劣り、ポストベーク時の加熱による色味の変化が大きく、着色層の輝度も劣っていた。
【符号の説明】
【0272】
1 基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルタ
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
50 有機保護層
60 無機酸化膜
71 透明陽極
72 正孔注入層
73 正孔輸送層
74 発光層
75 電子注入層
76 陰極
80 有機発光体
100 有機発光表示装置