(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】自転車用チャイルドシートカバー
(51)【国際特許分類】
B62J 1/16 20060101AFI20230113BHJP
B62J 1/20 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B62J1/16
B62J1/20 Z
(21)【出願番号】P 2018166585
(22)【出願日】2018-09-06
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503356451
【氏名又は名称】有限会社大久保製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100135437
【氏名又は名称】坂野 哲三
(72)【発明者】
【氏名】大久保 富彦
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129052(JP,A)
【文献】特開2017-193258(JP,A)
【文献】特開2012-011816(JP,A)
【文献】特開2016-130073(JP,A)
【文献】特開2015-217835(JP,A)
【文献】登録実用新案第3154712(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00, 1/16
B62J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の後部荷台部に固定されたヘッドレスト付きチャイルドシートの略全体を被覆できる自転車用チャイルドシートカバーにおいて、
このチャイルドシートカバーは、チャイルドシートの上方部分を
帽子の様に又は傘の様に外方に膨出するように被覆する上方被覆部とチャイルドシートの前方及び側方を含む下方部分を被覆する下方被覆部との2つの部分から構成され、これら上方被覆部と下方被覆部とは相互に係合分離可能に連結することができ、
前記上方被覆部の周縁部全体に渡り可撓性及び弾力性を有する環状線条材を配設し、当該周縁部の内面の両側部分にはそれぞれ係着部材を配設し、これらの係着部材と相互に係着する係着部材を前記チャイルドシートのヘッドレストの両側面にそれぞれ設けることにより、前記上方被覆部の係着部材と前記ヘッドレストの係着部材を相互に係着することにより前記上方被覆部がヘッドレストに装着され、
前記下方被覆部の上方縁部を前記上方被覆部の周縁部に連結することによってチャイルドシート全体を被覆することができることを特徴とする自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項2】
前記下方被覆部の両側面に自転車のハンドルグリップを挿通できる挿通部をそれぞれ設け、自転車のハンドル中央部に固定されたヘッドレスト付きチャイルドシートの略全体を被覆できることを特徴とする請求項1に記載の自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項3】
前記上方被覆部と前記下方被覆部との連結手段がスライドファスナーであって、当該スライドファスナーのスライダーを前記上方被覆部の背面下端中央部に1個又は2個設け、若しくは前記下方被覆部の上端縁の両端部の一方又は両方に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項4】
前記上方被覆部の前方上端部分に日除け用庇を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項5】
前記環状線条材の前方に更にもう1つ第2環状線条材を配設し、この第2環状線条材の下端中央部は前記環状線条材の下端中央部と接するように配設し、これら両線条材間には日除け用生地を張設して日除け用庇としたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項6】
前記下方被覆部の少なくとも前面部を透明シート素材から形成したことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項7】
前記上方被覆部の背面部にエアー排出孔を設け、このエアー排出孔を被覆するように被覆シートを設けたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項8】
前記上方被覆部の下方両側面部に薄板状の芯材を配設したことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項9】
前記上方被覆部に設けた係着部材及び前記ヘッドレストに設けた係着部材が面ファスナーからなることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項10】
前記上方被覆部の背面部の裏面に脱落防止用のベルト部材を設け、このベルト部材がチャイルドシートのヘッドレスト支持部に装着できることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項11】
前記下方被覆部の前方中央下端部に固定用ベルト部材を設け、この固定用ベルト部材が自転車のシートポスト等のフレームに装着でき、且つ、前記下方被覆部の下端周縁部の適宜部位に伸縮自在の紐状部材を配設したことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の自転車用チャイルドシートカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のハンドル部に固定された前部チャイルドシート又は自転車の後部荷台部に固定された後部チャイルドシートの略全体を被覆することができるチャイルドシートカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願発明は、上記した通り、前部チャイルドシート又は後部チャイルドシート(以下単に「シート」という。)の略全体を被覆できるチャイルドシートカバー(以下単に「カバー」という。)に関するものである。
【0003】
上記シートとしては、現在良く知られているように、前部チャイルドシートにあっては、その座部が自転車のハンドル部中央の略U字形状に湾曲した部分に固定され、座部の前方には開閉自在で使用時に下方に開放される足乗せ部が設けられ、その背面部である背凭れ部には上下に摺動可能なヘッドレスト(ヘッドサポートともいう。)が設けられ、座部の前には着席した幼児が把持する取手部が設けられた形態を有するものである。上記ヘッドレストは、上下に摺動しない固定式のタイプのものも存在する。
【0004】
他方、後部チャイルドシートにあっては、その座部は自転車の後部荷台部に固定され、足乗せ部は自転車の後輪の両側に配設され、座部の背面部である背凭れ部にはやはり上下に摺動可能なヘッドレストが設けられた形態を有し、座部の前には着席する幼児が把持する取手部が設けられたものである。
勿論、この種のシートとしては、上記ヘッドレストが上下に摺動しない固定式のタイプのものも存在する。
【0005】
これらの前後のシートには、その座部の底面部を除く略全体を被覆することができる各種形態のチャイルドシートカバーが市販されている。
下記特許文献1に記載の発明は、本願出願人が先に提案した自転車用チャイルドシートカバーに関するものであり、当該チャイルドシートカバーの天部の高さ位置を上下に変更調節できるようにしたものである。
【0006】
その構成は、上下動自在のヘッドレストを有するチャイルドシートの底面部以外の略全体を被覆することができるチャイルドシートカバーであって、カバーの背面部内側に係着部材を設け、この係着部材と係着することができる係着部材をその表面に設け、前記カバーとは別体に形成された固定部材をチャイルドシート、ヘッドレスト又はヘッドレスト支持部の背面部に装着し、この固定部材の係着部材と前記カバーの背面部内側に設けた係着部材を相互に係着することにより、チャイルドシートカバーの背面部及び天部が適宜高さ位置に確保されるものである。
即ち、背面部内側に設けた係着部材と上記固定部材の係着部材の係着位置を異ならせることによってカバー天部の上下の高さを変更し、調整することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来のチャイルドシートカバーにおいては、シートの底面部を除く略全体を被覆することができ、雨天の場合のレインカバーとして、或いは冬季の防寒用として利用されているものであるが、取り外し又は装着に不便な点があり、装着したままで使用する利用者もある。
そこで、本発明においては、雨対策用又は防寒用としてばかりでなく、夏の暑い盛りには日除け用のものとして、夏でも冬でも一年中何時でも使用することができるタイプのチャイルドシートカバーを提案することをその課題とし、加えて、装着及び脱着が極めて容易なものを提案することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、自転車の後部荷台部に固定されたヘッドレスト付きチャイルドシートの略全体を被覆できる自転車用チャイルドシートカバーにおいて、このチャイルドシートカバーは、チャイルドシートの上方部分を帽子の様に又は傘の様に外方に膨出するように被覆する上方被覆部とチャイルドシートの前方及び側方を含む下方部分を被覆する下方被覆部との2つの部分から構成され、これら上方被覆部と下方被覆部とは相互に係合分離可能に連結することができ、前記上方被覆部の周縁部全体に渡り可撓性及び弾力性を有する環状線条材を配設し、当該周縁部の内面の両側部分にはそれぞれ係着部材を配設し、これらの係着部材と相互に係着する係着部材を前記チャイルドシートのヘッドレストの両側面にそれぞれ設けることにより、前記上方被覆部の係着部材と前記ヘッドレストの係着部材を相互に係着することにより前記上方被覆部がヘッドレストに装着され、前記下方被覆部の上方縁部を前記上方被覆部の周縁部に連結することによってチャイルドシート全体を被覆することができることを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0010】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、前記下方被覆部の両側面に自転車のハンドルグリップを挿通できる挿通部をそれぞれ設け、自転車のハンドル中央部に固定されたヘッドレスト付きチャイルドシートの略全体を被覆できることを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0011】
本発明の第3のものは、上記第1又は第2の発明において、前記上方被覆部と前記下方被覆部との連結手段がスライドファスナーであって、当該スライドファスナーのスライダーを前記上方被覆部の背面下端中央部に1個又は2個設け、若しくは前記下方被覆部の上端縁の両端部の一方又は両方に設けたことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0012】
本発明の第4のものは、上記第1乃至第3のそれぞれの発明において、前記上方被覆部の前方上端部分に日除け用庇を設けたことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0013】
本発明の第5のものは、上記第1乃至第3のそれぞれの発明において、前記環状線条材の前方に更にもう1つ第2環状線条材を配設し、この第2環状線条材の下端中央部は前記環状線条材の下端中央部と接するように配設し、これら両線条材間には日除け用生地を張設して日除け用庇としたことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0014】
本発明の第6のものは、上記それぞれの発明において、前記下方被覆部の少なくとも前面部を透明シート素材から形成したことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0015】
本発明の第7のものは、上記それぞれの発明において、前記上方被覆部の背面部にエアー排出孔を設け、このエアー排出孔を被覆するように被覆シートを設けたことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0016】
本発明の第8のものは、上記それぞれの発明において、前記上方被覆部の下方両側面部に薄板状の芯材を配設したことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0017】
本発明の第9のものは、上記それぞれの発明において、前記上方被覆部に設けた係着部材及び前記ヘッドレストに設けた係着部材が面ファスナーからなることを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0018】
本発明の第10のものは、上記それぞれの発明において、前記上方被覆部の背面部の裏面に脱落防止用のベルト部材を設け、このベルト部材がチャイルドシートのヘッドレスト支持部に装着できることを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0019】
本発明の第11のものは、上記それぞれの発明において、前記下方被覆部の前方中央下端部に固定用ベルト部材を設け、この固定用ベルト部材が自転車のシートポスト等のフレームに装着でき、且つ、前記下方被覆部の下端周縁部の適宜部位に伸縮自在の紐状部材を配設したことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
尚、上記発明において、「前方」と記載したのは、カバーを装着する自転車の進行方向を意味する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1のものにおいては、上方被覆部と下方被覆部との2つの部材から構成されており、つまり、ツーピースから成るものであり、一方の上方被覆部をチャイルドシートのヘッドレストの両側面に係着し、その後、下方被覆部を前記上方被覆部の下端周縁部に連結させることができ、簡単にチャイルドシートに装着できる。
【0021】
また、上方被覆部の周縁部に可撓性及び弾力性を有する線条材を配設しているために、その全体形状が確定され、装着時、シートのヘッドレストと共に、その外形形状が確実に保持されることとなる。
換言すれば、この上方被覆部は、上記線条材とヘッドレストを骨組みとしたテントの如きものとしてその外形形状が確定されるのである。
また、この線条材の存在によって、この上方被覆部は、この線条材を8の字状にした状態で、その交差部で二つに折り重ねることによって小さく折り畳むこともでき、収納に便利なものとなる。
【0022】
前記下方被覆部として、例えば、これをメッシュ生地等のエアー流通可能な生地によって形成することにより、夏用のものとして使用することができる。
また、前記上方被覆部は日除けの機能をも有しており、この上方被覆部のみを日除けとして使用することもできる。
勿論、当該チャイルドシートカバーは、雨天時又は防寒用としても使用することができ、一年中使用可能なものとなる。
【0023】
本発明の第2のものにおいては、前記下方被覆部の両側面に自転車のハンドルグリップを挿通できる挿通部をそれぞれ設けているために、自転車のハンドル中央部に固定されたヘッドレスト付き前部チャイルドシートの略全体を被覆することもできる。
【0024】
本発明の第3のものにおいては、前記上方被覆部と前記下方被覆部との連結手段がスライドファスナーであることを特定し、当該スライドファスナーのスライダーを前記上方被覆部の背面下端中央部に1個又は2個設け、若しくは前記下方被覆部の上端縁の両端部の一方又は両方に設けている。
そのため、上記下方被覆部を容易に上方被覆部に係合離脱することができる。
【0025】
このスライドファスナーの係合は、普通の開閉ファスナーと同様のもので、一方のファスナーの端部を他方のファスナーの端部に係合させて、スライダーを上げ下げすれば係合離脱が可能な形式のものである。
スライダーを2個設けた場合には、下方被覆部は、その上端縁の両端部からそれぞれ中央部に向かって係合(歯合)させることができ、これら2個のスライダーの間に間隔を設けた状態で係合すれば、そのスライダー間に隙間が生じ、外気の導入口となる。
【0026】
本発明の第4のものにおいては、前記上方被覆部の前方上端部分に日除け用庇を設けたことを特徴とし、日除け機能を更に付加したものである。
【0027】
本発明の第5のものにおいては、前記環状線条材の前方に更にもう1つ第2の環状の線条材を配設し、この第2環状線条材の下端中央部は前記環状線条材の下端中央部と接するように配設し、これら両線条材間には日除け用生地を張設して日除け用庇としたものである。
その効果は、上記第4の発明と同じであるが、前記上方被覆部の周縁部に設けた環状線条材の補強の効果も有する。
【0028】
本発明の第6のものにおいては、前記下方被覆部の少なくとも前面部を透明シート素材から形成したことを特定したものであり、カバー内外からの視認性を向上させたものである。
【0029】
本発明の第7のものにおいては、前記上方被覆部の背面部にエアー排出孔を設け、このエアー排出孔を被覆するように被覆シートを設けたことを特定したものであり、カバー内部のエアー交換を可能とし、居住性を向上させたものである。
【0030】
本発明の第8のものにおいては、前記上方被覆部の下方両側面部に薄板状の芯材を配設したことを特定したものであるが、上方被覆部のヘッドレストへの係着をより効果的に行えるように考慮したものである。
【0031】
本発明の第9のものにおいては、前記上方被覆部に設けた係着部材及び前記ヘッドレストに設けた係着部材が面ファスナーであることを特定したものであり、これによりワンタッチで上方被覆部をヘッドレストに装着でき、またその係着位置も簡単に調整できることとなるのである。
【0032】
本発明の第10のものにおいては、前記上方被覆部の背面部の裏面(内面)に脱落防止用のベルト部材を設け、このベルト部材がチャイルドシートのヘッドレスト支持部に装着できることを特定したものであり、これにより、仮に上方被覆部とヘッドレストの係着が分離した時であっても、このベルト部材によりこの上方被覆部は、脱落しないこととなる。
【0033】
本発明の第11のものにおいては、前記下方被覆部の前方中央下端部に固定用ベルト部材を設け、この固定用ベルト部材が自転車のシートポスト等のフレームに装着でき、且つ、前記下方被覆部の下端周縁部の適宜部位に伸縮自在の紐状部材を配設したことを特定したものであり、これにより、本発明に係るチャイルドシートカバーはチャイルドシートにしっかりと装着固定することができることとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態に係るチャイルドシートカバーを後部チャイルドシートに装着した状態を示す全体説明図である。
【
図2】上記実施形態に係る上方被覆部を後部チャイルドシートから分離して上方に配置した状態を示す説明図である。
【
図3】上記実施形態に係るカバーの分解状態を示す説明図である。
【
図4】上記実施形態に係る上方被覆部をシートのヘッドレストに装着した状態を後方側から見た説明図である。
【
図5】本発明に係る上方被覆部の他の実施形態を図示した説明図である。
【
図6】本発明に係る上方被覆部の更に別の実施形態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下添付の図面と共に、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るチャイルドシートカバーを後部チャイルドシートに装着した状態を示す全体説明図である。
尚、この
図1ではチャイルドシート自体はそのヘッドレストHとヘッドレスト支持部G及び取手部Tを図示しているが、その他の座部や背凭れ部等は図示省略している。
【0036】
本発明に係るチャイルドシートカバー10(以下単に「カバー」という。)は、上方に位置する上方被覆部11と下方に位置する下方被覆部21の2つの部材、つまり、ツーピースから構成される。
上方被覆部11は、シートの上方部、側面上方部及び背面上方部を被覆できる。
下方被覆部21は、シートの前方部、両側面部及び背面下方部を被覆できる。
【0037】
上方被覆部11は、その下端周縁部の全体に挿通部12を形成し、その内部に可撓性及び弾力性を有する線条材14を配設している。
この線条材14は、可撓性及び弾力性を有する金属製ワイヤーやFRP(ファイバー・リインフォースド・プラスチック/繊維強化プラスチック)等を利用することができる。
【0038】
この上方被覆部11は、シートのヘッドレストHの両側面に設けた係着部材Kに、上方被覆部11の両側内面(裏面)にそれぞれ設けた係着部材13を相互に係着して、帽子の様に、或いは、傘の様に装着することができる。即ち、この上方被覆部11は、その下端周縁部から外方に(
図1では斜め後方に)膨出するような形状を有している。
両係着部材K、13は、それぞれ相互に係着できる面ファスナーを使用しており、その係着位置を変えることにより、この上方被覆部11のヘッドレストHへの装着位置を多少変更することができる。
【0039】
上記挿通部12の上端部分には、日除け用の庇15を設けている。
この上方被覆部11の素材は、ポリエステル生地を使用しており、その複数枚の構成生地を縫製して外側に膨出するような形状に形成している。また、適宜その内部に芯材を配設することも自由である。芯材は、厚地の織物地でもよく、或いは合成樹脂製の薄板を内部に配設したものであってもよい。
【0040】
他方、下方被覆部21は、後の図により更に説明するが、1枚のシート状のものからなり、その上端縁部で、上記上方被覆部11と係合離脱自在に連結することができる。
即ち、上方被覆部11の挿通部12の周縁部には、一方のスライドファスナーがその全周に渡り設けられ、下方被覆部21の上端縁部の全体には、他方のスライドファスナーが設けられており、上方被覆部11の後方下端中央部に上記一方のスライドファスナーの両端部が位置し、これら両端部にスライドファスナーの係合部とスライダーがそれぞれ設けられている。
【0041】
これら両端部の係合部に下方被覆部21の上端縁部に設けた他方のスライドファスナーの両端部を係合させ、それぞれのスライドファスナーをスライダーにより歯合して行くことにより上方被覆部11と下方被覆部21とが連結できるのである。
【0042】
また、下方被覆部21の前面部及び側面部を構成する上方部分21uは、PVC(ポリ塩化ビニル)等の透明素材から形成され、その下の下方部分21sは特に透明素材でなくともよく。適当な伸縮性を有する素材の生地を用いればよい。
この下方部分21sの下端縁部等は、シートの足載せ部等に引っ掛けて使用するためである。
【0043】
勿論、この下端縁部に挿通部を形成して、その内部に伸縮性のある紐状部材を配設することも自由であるし、この下方部分21sの前面中央下端にベルト部材を設けて、自転車のサドルポストやその他のフレームに固定させることもできる。
【0044】
図2は、上記上方被覆部を後部チャイルドシートから分離して上方に配置した状態を示す説明図である。
この図からチャイルドシートの構成を見て取ることができる。
このチャイルドシートは座部Sが自転車の荷台部に固定され、座部Sの両側から起立して背凭れ部Bが形成され、この背凭れ部Bの背面部にヘッドレスト支持部Gが上下摺動可能に設けられ、ヘッドレスト支持部Gの上端部にヘッドレストHが固定されている。
【0045】
座部Sの前部には取手部Tが設けられ、座部Sの前方両側下方には足載せ部Lが設けられている。
上記ヘッドレストHには、背面部の両側から前方に向かって延長するように側面部Jが設けられ、この両側面部Jの外表面に係着部材Kが設けられることとなる。
【0046】
この両係着部材K、Kに上方被覆部11に設けられた係着部材13、13が相互に係着することとなるのである。
この係着部材13は、上方被覆部11の両側縁部に沿って適宜長さの範囲に渡り設けられており、その係着位置を適宜選択してヘッドレストHの係着部材Kに係着することができる。
【0047】
上記上方被覆部11の下端周縁部に設けた挿通部12内には、上記した通り線条材14が配設され、この挿通部12の周囲には図には明瞭に表れていないが一方のスライドファスナーが、上記挿通部12の後方下端中央部にその両端部を位置させて上記周縁部の全体に渡り設けられている。
【0048】
上記挿通部12の後方下端中央部のスライドファスナーの両端部には、スライダー16が設けられ、下方被覆部21の上縁部に設けた他方のスライドファスナーの両端部を上記一方のスライドファスナーの両端部に係合させて、上記スライダー16を引き上げることにより下方被覆部21が上方被覆部11の挿通部12の周縁部に歯合されることとなるのである。
【0049】
図3は、上記実施形態に係るカバーの分解状態を示す説明図である。
前図では、上方被覆部とシートとの関係を図示したが、この
図3では、上記実施形態に係る上方被覆部と下方被覆部との連結について説明する。
【0050】
下方被覆部21は、その上方部分21uが透明素材から形成され、その下方部分21sは不透明素材から形成されている。勿論、下方部分21sを透明にしてもよい。
この下方被覆部21の上縁部の全体には他方のスライドファスナー28が設けられ、その両端部には係合部27、27がそれぞれ設けられている。
【0051】
上記係合部27は、上方被覆部11の下端周縁部に設けられた一方のスライドファスナー18の端部に設けられた係合部17と係合される。
一方のスライドファスナー18の両端部は、上方被覆部11の下端周縁部の後方下端中央部に配置されている。
【0052】
従って、下方被覆部21の他方のスライドファスナー28の両端部の係合部27、27を上方被覆部11のスライドファスナー18の両端部の係合部17、17に係合してスライダー16、16を引き上げることによって、下方被覆部21は上方被覆部11の下端周縁部に連結されることとなる。
【0053】
換言すると、1枚の下方被覆部21を上方被覆部11の下端周縁部に巻き付けるようにスライドファスナー18、28を歯合させるようにスライダー16、16を引き上げるようにして連結するのである。
これにより、スライダー16、16を前方に向かって引き上げ、庇15の端部部位で停止させると、庇15の下に開口部が形成され、この開口部を外気の導入口とすることもできる。
勿論、降雨時や寒冷時には、スライダー16、16を当接させるまで引き上げ、完全にスライドファスナーを閉鎖するようにする。
【0054】
図4は、上記実施形態に係る上方被覆部をシートのヘッドレストに装着した状態を後方側から見た説明図である。
このように、上方被覆部11の両側の裏面に設けた係着部材13をシートのヘッドレストHの両側面の外側面に設けた係着部材Kに相互に係着して簡単に取り付けることができる。
【0055】
尚、図示はしていないが、この上方被覆部11の背面部の内側にベルト部材を設けて、このベルト部材をヘッドレスト支持部Gに巻回し装着して、上方被覆部11の脱落防止手段とすることもできる。
【0056】
図5は、本発明に係る上方被覆部の他の実施形態を図示した説明図である。
この実施形態においては、その日除け用の庇の構成が上記実施形態と異なる。
即ち、上方被覆部11の下端周縁部に配設した線条材13の前方に更に同じ材質から成る線条材19を配設するのである。この線条材19が第2の環状線条材となる。
【0057】
この前方に設けた環状の線条材19の下端中央部は、上記線条材13の下端中央部と同じ位置に配設し、これら両線条材13、19との間にはポリエステル生地を張設するのである。
これにより日除け用の庇15が形成されることとなるのである。
この前方の線条材19は、上方被覆部11の下端周縁部の補強の意味合いも有する。
尚、厳密には、上記線条材19も庇15を形成する生地の前方周縁部の全体に挿通部を設けて、その内部に配設することになるのは、線条材13の場合と同じ構成である。
【0058】
図6は、本発明に係る上方被覆部の更に別の実施形態を示した説明図である。
この上方被覆部11においては、その背面部にエアー排出孔31を複数設けている。
これにより、カバー内に流入した外気がカバーの外部に排出できるように構成した。
【0059】
また、このエアー排出孔31の全体を覆うように被覆シート32を設け、雨の侵入を防止している。
上記エアー排出孔31の大きさ及び数は自由に設定することができる。これらエアー排出孔31の大きさと数に応じて被覆シート32のサイズを決定することができる。
尚、この図に示した上方被覆部11には、日除け用の庇15を設けていない。上記上方被覆部11のみでも十分に日除け効果を発揮するからである。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明においては以下の通りその形態を種々設計変更することができる。
まず第一に、上記実施形態においては、自転車の荷台部に固定した後部チャイルドシートに装着する例を示したが、本発明に係るカバーは、自転車のハンドル中央部に設けられた上下摺動可能なヘッドレスト付き前部チャイルドシートにも適用することができる。
【0061】
即ち、下方被覆部21の両側面部の適宜位置にハンドルグリップの挿通部を形成し、下方被覆部21の大きさと形状とを適宜変更することによって適用することができるからである。
【0062】
上記上方被覆部の形状及び大きさは適宜変更して設計することができる。
要は、上方被覆部の下端周縁部に可撓性及び弾力性を有する線条材を配設することが本発明のポイントであり、この線条材とシートのヘッドレストにより上方被覆部の形状は確定されるのである。
【0063】
勿論、この上方被覆部は、日除けの意味合いも有しているために、この部分は不透明の生地を使用している。
また、適宜部位に薄板状の素材から成る芯材を配設するのも自由である。特に、係着部材13が設けられる部分に芯材を配設することが望ましい。
【0064】
その後は、上記上方被覆部の下端周縁部に下方被覆部の上端縁部を連結してカバーは装着される。
下方被覆部の形状及び大きさも適宜変更して設計することができる。
下方被覆部では、その前面部が少なくとも透明であればよく、その他の部分は自由に素材変更することができる。
【0065】
更に、下方被覆部として、別形態のものを用意することにより、例えば、下方被覆部をメッシュ生地によって形成したものに交換することにより夏用のものに変更することも容易に可能となる。
その他、下方被覆部として異なる形態や色違いのものを各種用意することによって、好みに合わせてその内の一つを選択して使用することができ、デザイン性を高めることができる。
【0066】
勿論、上記上方被覆部及び下方被覆部の外表面には防水加工又は撥水加工を施している。
庇の前方延長長さも自由に設定することができる。
上方被覆部の背面部に設けたエアー排出孔の数及び大きさも自由に設計変更することができる。
【0067】
以上、本発明においては、自転車用チャイルドシートカバーを上方被覆部と下方被覆部との2つの部材から構成し、上方被覆部の下端周縁部に可撓性及び弾力性を有する線条材を配設し、その内面に設けた係着部材とシートのヘッドレストに設けた係着部材とを相互に係着することにより簡単に装着でき、且つ、この上方被覆部に下方被覆部を容易に連結することにより簡単にチャイルドシートにカバーを装着でき、デザイン性の優れた夏冬兼用の自転車用チャイルドシートカバーを提供することができたものである。
【符号の説明】
【0068】
10 チャイルドシートカバー
11 上方被覆部
12 挿通部
13 係着部材
14、19 線条材
15 庇
16 スライダー
17、27 係合部
18、28 スライドファスナー
21 下方被覆部
21u 上方部分(下方被覆部の)
21s 下方部分(下方被覆部の)
31 エアー排出孔
32 被覆シート
G ヘッドレスト支持部
H ヘッドレスト
J 側面部
K 係着部材
L 足載せ部
S 座部
T 取手部