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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/29 20150101AFI20230113BHJP
   H04B 17/18 20150101ALI20230113BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20230113BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H04B17/29 300
H04B17/18
H04W88/02 110
H04M1/00 W
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018179931
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020053793
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 貴史
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159496(WO,A1)
【文献】特開2007-036665(JP,A)
【文献】特開2012-175663(JP,A)
【文献】特開2017-143569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/29
H04B 17/18
H04W 88/02
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークの基地局に無線接続する無線通信装置であって、
無線状態を点灯/消灯で示す複数のLEDと、
前記LEDの表示内容を規定する表示モードを設定するモード切替スイッチと、
無線接続の処理を行う無線モジュールと、
予め設定されている動作項目について前記無線モジュールの動作状態を検出する制御部とを備え、
前記LEDが、前記動作項目のそれぞれに対応して設けられており、
前記制御部が、前記基地局をサーチしているか否か、前記基地局からの信号を検出したか否か、前記基地局へ位置登録要求信号を送信しているか否か、前記位置登録要求信号に対してネットワークから許可応答を受信しているか否か、の前記動作項目のすべてについて前記無線モジュールの動作状態を検出し、前記モード切替スイッチによって、前記ネットワークへの接続処理状態を表示する解析モードが設定されると、前記動作項目のそれぞれに対応する前記LEDを、検出された動作状態に応じて点灯又は消灯させて前記接続処理状態を表示することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
ネットワークの基地局に無線接続する処理を行う無線モジュールを備えた無線通信装置における表示方法であって、
制御部が、前記基地局をサーチしているか否か、前記基地局からの信号を検出したか否か、前記基地局へ位置登録要求信号を送信しているか否か、前記位置登録要求信号に対してネットワークから許可応答を受信しているか否か、の動作項目のすべてについて前記無線モジュールの動作状態を検出し、前記ネットワークへの接続処理状態を表示する解析モードが設定されると、前記動作項目のそれぞれに対応するLEDを、検出された動作状態に応じて点灯又は消灯させて前記接続処理状態を表示することを特徴とする表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信事業者のネットワークに接続する無線通信装置に係り、特に通信不可状態となった場合の原因を簡易的に判断でき、復旧までの時間を短縮することができる無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
通信事業者のネットワークに接続して無線通信を行う無線通信モジュール(無線モジュール)や、その無線モジュールを組み込んだ無線通信装置がある。
このような無線通信装置には、無線モジュールの動作状態を示すために複数のLEDが設けられ、それらの点灯/消灯のパターンによって、内部状態を知ることができる。
【0003】
従来、無線通信装置がネットワークに位置登録できずに通信不可状態になった場合、通常、当該機器の近くにいる操作者は、コマンド応答及びLED点灯状態から圏外であることのみが分かる程度であった。
【0004】
通信不可状態となった要因としては、無線モジュールの不具合、無線モジュールを搭載した無線通信装置の不具合、無線通信装置を設置した場所の電波環境、通信事業者の基地局の不具合、通信事業者による通信制限等が考えられる。
【0005】
そして、どの要因によって通信不可状態が発生しているのかを判断するためには、無線通信モジュールの内部動作ログを取得して解析し、モジュールの動作および位置登録要求に対するネットワークからの応答を確認する必要があり、それには通信事業者や無線通信モジュールの製造メーカの、専門技術を持った作業者が、専用のツールをインストールしたPCを持参して現地に赴き、動作ログ取得作業を行わなければならなかった。
[関連技術]
【0006】
尚、無線モジュールや無線通信装置に関する従来技術としては、特開2016-072647号公報「無線通信システム、通信方法、無線通信モジュール」(特許文献1)、特開2015-216488号公報「無線通信モジュール」(特許文献2)、特開2015-064234号公報「無線通信システム及び無線通信モジュール」(特許文献3)がある。
【0007】
特許文献1には、外部装置の制御ソフトウェアを改修することなく、サーバからのデータ通信を行うことができる無線通信モジュールが記載されている。
特許文献2には、搭載される機器内の設置環境に応じて、2つの受信系に対応する2つのアンテナのどちらか一方を、外部アンテナと内蔵アンテナを適宜切り換えて使用する無線通信モジュールが記載されている。
特許文献3には、位置情報サービスにおいて測位を実行して得られた位置情報を平均化演算し、ユーザが希望する測位精度で位置情報を得ることができる無線通信システム及び無線通信モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-072647号公報
【文献】特開2015-216488号公報
【文献】特開2015-064234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来の無線通信装置では、圏外となって通信できない状態が継続した場合に、専門の技術者が現地に到着して解析作業を行うまでは通信不可の原因が全く分からず、通信復旧まで時間がかかり、無線通信装置の利用者にとって不便であるという問題点があった。
【0010】
尚、特許文献1~3には、制御部が、予め設定されている動作項目について動作状態を検出し、解析モードが設定されると、動作項目に対応するLEDを、検出された動作状態に応じて点灯又は消灯させてネットワークへの接続処理状態を表示することは記載されていない。
【0011】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、通信技術に関する専門技術を持たない無線通信装置の利用者でも、通信不可の原因の所在を大まかに切り分け可能とし、通信復旧までの時間を短縮することができる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、ネットワークの基地局に無線接続する無線通信装置であって、無線状態を点灯/消灯で示す複数のLEDと、LEDの表示内容を規定する表示モードを設定するモード切替スイッチと、無線接続の処理を行う無線モジュールと、予め設定されている動作項目について無線モジュールの動作状態を検出する制御部とを備え、LEDが、動作項目のそれぞれに対応して設けられており、制御部が、基地局をサーチしているか否か、基地局からの信号を検出したか否か、基地局へ位置登録要求信号を送信しているか否か、位置登録要求信号に対してネットワークから許可応答を受信しているか否か、の動作項目のすべてについて無線モジュールの動作状態を検出し、モード切替スイッチによって、ネットワークへの接続処理状態を表示する解析モードが設定されると、動作項目のそれぞれに対応するLEDを、検出された動作状態に応じて点灯又は消灯させて接続処理状態を表示することを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、ネットワークの基地局に無線接続する処理を行う無線モジュールを備えた無線通信装置における表示方法であって、制御部が、基地局をサーチしているか否か、基地局からの信号を検出したか否か、基地局へ位置登録要求信号を送信しているか否か、位置登録要求信号に対してネットワークから許可応答を受信しているか否か、の動作項目のすべてについて無線モジュールの動作状態を検出し、ネットワークへの接続処理状態を表示する解析モードが設定されると、動作項目のそれぞれに対応するLEDを、検出された動作状態に応じて点灯又は消灯させて接続処理状態を表示することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ネットワークの基地局に無線接続する無線通信装置であって、無線状態を点灯/消灯で示す複数のLEDと、LEDの表示内容を規定する表示モードを設定するモード切替スイッチと、無線接続の処理を行う無線モジュールと、予め設定されている動作項目について無線モジュールの動作状態を検出する制御部とを備え、LEDが、動作項目のそれぞれに対応して設けられており、制御部が、基地局をサーチしているか否か、基地局からの信号を検出したか否か、基地局へ位置登録要求信号を送信しているか否か、位置登録要求信号に対してネットワークから許可応答を受信しているか否か、の動作項目のすべてについて無線モジュールの動作状態を検出し、モード切替スイッチによって、ネットワークへの接続処理状態を表示する解析モードが設定されると、動作項目のそれぞれに対応するLEDを、検出された動作状態に応じて点灯又は消灯させて接続処理状態を表示する無線通信装置としているので、通信不可状態になった場合に解析モードに設定すれば、LEDの点灯パターンに基づいて、通信不可の大まかな原因を切り分けて推測でき、通信復旧までの時間を短縮することができ、通信不可となっている要因が、無線モジュールによるものか、電波環境によるものか、基地局装置によるものかを切り分けて大まかに判断できる効果がある。
【0017】
また、本発明によれば、ネットワークの基地局に無線接続する処理を行う無線モジュールを備えた無線通信装置における表示方法であって、制御部が、基地局をサーチしているか否か、基地局からの信号を検出したか否か、基地局へ位置登録要求信号を送信しているか否か、位置登録要求信号に対してネットワークから許可応答を受信しているか否か、の動作項目のすべてについて無線モジュールの動作状態を検出し、ネットワークへの接続処理状態を表示する解析モードが設定されると、動作項目のそれぞれに対応するLEDを、検出された動作状態に応じて点灯又は消灯させて接続処理状態を表示する表示方法としているので、通信不可状態になった場合に解析モードに設定すれば、LEDの点灯パターンに基づいて、通信不可の大まかな原因を切り分けて推測でき、通信復旧までの時間を短縮することができ、通信不可となっている要因が、無線モジュールによるものか、電波環境によるものか、基地局装置によるものかを切り分けて大まかに判断できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本無線通信装置の概略構成図である。
図2】通常モードLED表示テーブルの一例を示す説明図である。
図3】解析モードLED表示テーブルの一例を示す説明図である。
図4】解析モードにおけるCPUの表示処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信装置(本無線通信装置)は、制御部が、動作モードとして通常動作モードと解析モードとを備え、予め設定されている動作項目について無線モジュールの動作状態を検出し、モード切替スイッチによって解析モードが設定されると、各項目に対応するLEDを検出された状態に応じて点灯又は消灯させるようにしており、専門技術を持たない無線通信装置の利用者でも、通信不可状態になった場合に解析モードに設定することにより、LEDの点灯パターンに基づいて、通信不可の大まかな原因を切り分けて推測でき、適切に対処することにより通信復旧までの時間を短縮することができるものである。
【0020】
また、本無線通信装置は、基地局をサーチしているか否か、基地局からの信号を検出したか否か、基地局に位置登録要求信号を送信しているか否か、位置登録要求に対して、ネットワークから許可応答を受信しているか否か、を監視して、結果に応じてLEDを点灯/消灯することで、通信不可となっている要因が、無線モジュールによるものか、電波環境によるものか、基地局装置によるものかを大まかに判断できるようにしている。
【0021】
[本無線通信装置の概略構成:図1
本無線通信装置の概略構成について図1を用いて説明する。図1は、本無線通信装置の概略構成図である。
本無線通信装置は、従来と同様に、有線で外部装置と接続すると共に、通信事業者のネットワークの基地局装置と無線通信を行って、外部装置を通信事業者のネットワークに接続するものである。
【0022】
図1に示すように、本無線通信装置は、本体の外装を構成する筐体1と、筐体1の内部に格納された基板2とを備えている。筐体1及び筐体1の外側及び内部に設けられた各部を含む構成全体が、本無線通信装置に相当する。
尚、本無線通信装置に接続する外部装置は省略している。
【0023】
基板2には、無線モジュール20と、CPU(Central Processing Unit)21と、が搭載されている。無線モジュール20は、ベースバンド信号処理部22と、RF(Radio Frequency)信号処理部23を有する。
【0024】
また、筐体1には、LED11a(LED(1))~11e(LED(5))の5個のLED(LED11と記載することもある)と、アンテナ12と、本無線通信装置の特徴部分である動作モード切替スイッチ13とを備えている。
LED11と、動作モード切替スイッチ13は、CPU21に接続され、アンテナ12は、アンテナケーブルを介してRF信号処理部23に接続されている。
【0025】
無線モジュール20は、基地局装置との無線通信を実現するものである。
また、図示は省略するが、無線モジュール20は、ネットワークへの接続処理状態を監視する状態監視部を備えている。
本無線通信装置のCPU21は、無線モジュール全体を制御して無線通信を行うと共に、内部の動作状態(通信状態を含む)を監視して、LED11の点灯/消灯の制御を行う。
また、CPU21は、内部に、設定された動作モードを保持している。動作モードは、動作モード切替スイッチ13によって切り替えられて設定される。動作モード切替スイッチ13は人手によって操作される。
【0026】
ここで、「動作モード」は、各LED11が点灯又は消灯の状態で示す内容を規定するものであり、請求項における表示モードに相当している。
尚、CPU21が通信不能を自己診断して、自動で解析モードに切り替わるように構成してもよい。
【0027】
動作モードとしては、従来と同様に無線通信を行う通常動作モード(通常モード)と、無線通信ができない状態となった場合に、その原因を探るための表示を行う解析モードとを備えている。平常時には通常モードが設定されている。
そして、CPU21は、設定された動作モードに対応した処理プログラムに従って動作を行う。解析モードにおける動作は、後述する。
【0028】
また、ベースバンド信号処理部22は、入力された送信ベースバンド信号について、符号化、デジタル変調、誤り訂正符号の付加等を行い、受信ベースバンド信号について、復号化、デジタル復調、誤り訂正の処理等を行う。
【0029】
RF信号処理部23は、送信信号を高周波にアップコンバートしてアンテナ12に出力すると共に、アンテナ12からの受信信号をベースバンド信号にダウンコンバートして、ベースバンド信号処理部22に出力する。
【0030】
アンテナ12は、高周波信号の送受信を行う。
動作モード切替スイッチ13は、動作モードを、「通常モード」又は「解析モード」に切り替えるスイッチである。スイッチとしてはスライド型やプッシュ型等、任意の形状でよい。尚、現在設定されている動作モードが、通常モードであるか解析モードであるかは、動作モード切替スイッチ13の状態によって目視で判断する。
【0031】
本無線通信装置に専用のPCを接続して、コマンドを送信することによって動作モードを切り替えることも可能であるが、ここでは、専用のPCを持たない一般の操作者であっても容易に動作モードの切り替えを行うことができるよう、動作モード切替スイッチ13を設けている。
【0032】
LED11は、CPU21からの制御で点灯又は消灯する。各LEDは、それぞれ、特定の動作状態を表すように予め設定されている。ここでは、LED11の動作を点灯/消灯としているが、点灯の代わりに点滅としてもよいし、点滅/点灯/消灯として3つの状態を表示するように構成することも可能である。
【0033】
更に、本無線通信装置の特徴として、LED11は、通常モードが設定されている場合と解析モードが設定されている場合で、異なる動作項目の状態を示すようにしている。
各LEDの示す状態は、動作モード毎に予めCPU21にLED表示テーブルとして記憶されている。つまり、解析モード専用のLEDを備える必要はない。
【0034】
[CPU21の状態監視]
CPU21による状態監視について説明する。
CPU21は、動作モードに関わらず本無線通信装置の動作状態を監視して、動作モードに応じて規定されている動作項目の監視結果に基づき、LED11を点灯又は消灯させるよう制御する。
解析モードにおいてLED11で表示する動作項目は、ネットワークへの接続処理状態であり、
(1)基地局サーチを行っているか
(2)基地局サーチを行った結果、基地局からの信号を受信しているか
(3)基地局からの信号を受信した結果、位置登録要求信号を送信しているか
(4)基地局に位置登録要求信号を送信した後、基地局からの応答があるか
の4つがある。
【0035】
CPU21は、これらの状態を示す情報を、無線モジュール20から入力することで、ネットワークとの接続状態を監視する。
無線モジュール20の状態監視部は、上記(1)~(4)の情報について、非請求リザルトを周期的に出力するか、又は、専用の信号線を設けて各種状態をCPU21に出力するようにしてもよい。
CPU21は、無線モジュール20から定期的に出力される状態を示す情報を記憶しておき、解析モードが設定された場合には記憶されている情報に基づいてLED11の点灯/消灯を行う。
【0036】
非請求リザルトは、コマンドに対する応答であり、状態監視部が検出した状態変化に応じて出力する。
本無線通信装置では、例えば、基地局からの信号を検出したら無線モジュール20からその旨を示す非請求リザルトをCPU21に出力するよう予め設定しておき、CPU21は、解析モードにおいて非請求リザルトを受信すると、それに応じてLED11を制御する動作を行う。
【0037】
[LEDの表示内容:図2図3
ここで、本無線通信装置におけるLED11の表示内容について図2図3を用いて説明する。
[通常モードでの表示内容:図2
まず、通常モードが設定されている場合のLED11の表示内容について図2を用いて説明する。図2は、通常モードLED表示テーブルの一例を示す説明図である。
図2に示すように、通常モードLED表示テーブル(以下、通常モードテーブル)は、通常モードにおける動作状態と各LEDの点灯/消灯の状態を対応付けて記憶している。通常モードテーブルは、通常モードにおけるLEDの表示内容を規定するものである。
【0038】
例えば、通常モードにおいて、LED(1)(LED11a)は、装置が起動中であれば点灯し、停止中であれば消灯する。また、LED(2)(LED11b)は、通信圏内であれば点灯し、通信圏外であれば消灯する。
つまり、CPU21が動作状態を監視して、装置が通信圏内であれば、LED(2)を点灯させ、通信圏外であれば、LED(2)を消灯させるよう制御する。
【0039】
同様に、LED(3)~(5)についても、動作状態とそれに対応する点灯又は消灯が規定されており、CPU21は、通常モードテーブルに従ってLED11の点灯又は消灯を制御する。
【0040】
[解析モードでの表示内容:図3
次に、解析モードが設定されている場合のLED11の表示内容について図3を用いて説明する。図3は、解析モードLED表示テーブルの一例を示す説明図である。
図3に示すように、解析モードLED表示テーブル(以下、解析モードテーブル)は、解析モードにおける動作状態と各LEDの点灯/消灯の状態を対応付けて記憶しており、解析モードにおけるLED11の表示内容を規定するものである。
【0041】
LED(1)は、通常モードと同様に装置が起動中か停止中かを示すが、LED(2)~(5)は、解析モードにおいては、通常モードとは異なる内容を示すようになっている。
例えば、解析モードが設定されている場合、LED(2)は、基地局をサーチしているかどうかを示す。
具体的には、CPU21は、基地局サーチを行っているかどうかを監視して、基地局サーチを行っている場合には、LED(2)を点灯させ、行っていない場合には消灯させる。
【0042】
同様に、解析モードにおいては、LED(3)は基地局からの信号検出の有無、LED(4)は位置登録要求信号を送信しているかどうか、LED(5)は位置登録要求に対して、ネットワークから許可応答を受信したかどうかを、点灯/消灯で示すように、CPU21が制御を行う。
上述したように、CPU21は、無線モジュール20からの非請求リザルトに基づいて、それぞれの状態を監視している。
【0043】
また、通常テーブル及び解析テーブルで規定されている表示内容は、例えばマニュアル等に記載されて、本無線通信装置の利用者が認識可能となっている。
特に解析モードにおいて、LED11の点灯/消灯のパターンを見ることによって、通信不可の原因がどこにあるかを切り分けて推測することが可能となる。
【0044】
更に、LED11の数が4個以下であった場合、解析モードにおいて表示可能な情報数も減ることになるが、その場合でも、通信不可の要因切り分けが全くできないわけではないので、従来に比べて通信不可事象の解析における利便性は向上する。
【0045】
[通信不可要因の切り分け:図3
次に、LED11の点灯/消灯パターンと通信不可となった要因の切り分けについて図3を用いて説明する。尚、以下の説明では、LED(1)は点灯しているものとして説明する。
まず、LED(2)が消灯している場合、無線モジュールが基地局サーチを行っていないことがわかる。これにより、無線モジュールの動作に問題があると推定される。
【0046】
LED(2)が点灯し、LED(3)が消灯している場合、無線モジュールが基地局サーチを行ったが、基地局からの信号を受信していないと考えられる。この場合は、無線通信装置設置場所の電波環境に問題があって、基地局からの電波が無線通信装置に届いていないと推定される。
【0047】
LED(2),LED(3)が点灯し、LED(4)が消灯している場合、無線モジュールが、基地局からの信号に対して位置登録要求信号を送信していないことがわかる。この場合、無線モジュールの動作に問題があると推定できる。
【0048】
LED(2),LED(3),LED(4)が点灯し、LED(5)が消灯している場合、無線通信装置が送信した位置登録要求信号が基地局に届いておらず、電波環境が弱電界であるために通信が不安定になっている可能性がある。
また、LED(2),LED(3),LED(4),LED(5)が点灯して、拒否応答(Reject)を受信した場合には、基地局側に要因(例えば通信制限をかけている場合等)があることがわかる。
【0049】
これにより、無線通信装置の利用者は、解析モードにおいてLED11の点灯/消灯のパターンから通信不可の要因を大まかに切り分けて推定でき、推定された要因について対処すると共に、それ以外の要因についてはとりあえず除外できるものである。
また、解析モードでのLED11の点灯/消灯パターンにより、専門の技術者に対しても一次的な情報を提供して解析を容易にし、通信不可状態からの復帰に要する時間を短縮することができるものである。
【0050】
[解析モードにおける表示処理:図4
次に、CPU21の解析モードにおける表示処理について図4を用いて説明する。図4は、解析モードにおけるCPUの表示処理を示すフローチャートである。
CPU21は、通常モードにおいて、ベースバンド信号処理部22からの情報を監視して、動作状態を記憶している。尚、CPU21は、解析モードに切り替わっても監視及び動作状態の記憶は継続する。
動作モード切替スイッチ13により、解析モードに切り替えられると、CPU21は、LED(2)~LED(5)を消灯する(S11)。
【0051】
そして、CPU21は、監視結果に基づいて、基地局サーチを行っているかどうかを判断し(S12)、行っていない場合(Noの場合)には処理S14に移行する。また、基地局サーチを行っている場合(Yesの場合)には、CPU21は、LED(2)を点灯させ(S13)、処理S14に移行する。
【0052】
次に、CPU21は、基地局からの信号を検出したかどうかを判断し(S14)、検出していない場合には処理S16に移行する。また、処理S14で、基地局からの信号を検出した場合には、CPU21は、LED(3)を点灯させ(S15)、処理S16に移行する。
【0053】
処理S16において、CPU21は、位置登録要求信号を送信しているかどうかを判断し(S16)、送信していない場合には処理S18に移行し、送信している場合にはLED(4)を点灯して(S17)、処理S18に移行する。
【0054】
処理S18において、CPU21は、ネットワークから許可応答を受信したかどうかを判断し(S18)、受信していない場合には処理S20に移行し、受信した場合はLED(5)を点灯させて(S19)、処理20に移行する。
【0055】
そして、CPU21は、動作モード切替スイッチ13から解析モード解除の指示(通常モードへの切替の指示)が入力されたかどうかを判断し、入力されない場合(Noの場合)には待ち受け、入力されたら(Yesの場合)、通常モードに移行する。
このようにして、解析モードにおける表示処理が行われる。
【0056】
[実施の形態の効果]
本無線通信装置によれば、動作モード(表示モード)を通常の通信を行う通常動作モード又は解析モードに切り替える動作モード切替スイッチ13と、無線モジュール20の無線状態を点灯/消灯で示す複数のLED11とを備え、CPU21が、予め設定されている動作項目について現在の状態を検出し、動作モード切替スイッチ13によって解析モードが設定されると、項目及び検出された状態に対応するLED11を点灯又は消灯させるようにしており、専門の技術者が専用のPCを接続して動作ログの解析を行わなくても、無線通信装置の利用者が、動作モード切替モードボタン13を操作して、LEDの点灯パターンを目視で認識することで、通信不可状態の大まかな原因を切り分けて推測でき、解析における利便性を向上させ、適切に対処することにより通信復旧までの時間を短縮することができる効果がある。
【0057】
また、本無線通信装置によれば、CPU21が、基地局をサーチしているか否か、基地局からの信号を検出したか否か、位置登録要求信号を送信しているか否か、位置登録要求に対して、ネットワークから許可応答を受信しているか否か、といったネットワークへの接続処理状態を監視して、結果に応じてLED11を点灯/消灯するようにしているので、通信不可となっている要因が、無線モジュールによるものか、電波環境によるものか、基地局装置によるものかを切り分けて大まかに判断できるようにする効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、専門技術を持たない無線通信装置の利用者でも、通信不可の原因の所在を大まかに把握することができ、解析における利便性を向上させ、通信復旧までの時間を短縮することができる無線通信装置に適している。
【符号の説明】
【0059】
1…筐体、 2…基板、 11…LED、 12…アンテナ、 13…動作モード切替スイッチ、 20…無線モジュール、 21…CPU、 22…ベースバンド信号処理部、 23…RF信号処理部
図1
図2
図3
図4