(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】車両用発光表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 13/04 20060101AFI20230113BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
G09F13/04 K
B60R13/04 Z
(21)【出願番号】P 2018224337
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】野田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】坪井 智克
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-116888(JP,U)
【文献】特開2003-194590(JP,A)
【文献】特開2005-189457(JP,A)
【文献】特開2018-135012(JP,A)
【文献】特開2011-170076(JP,A)
【文献】実開昭57-201585(JP,U)
【文献】特表2016-539458(JP,A)
【文献】実開昭62-027389(JP,U)
【文献】特開平11-015392(JP,A)
【文献】特開2018-159617(JP,A)
【文献】特開2018-049131(JP,A)
【文献】特開2014-185946(JP,A)
【文献】特開2013-217714(JP,A)
【文献】特開2007-121486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/00-13/46
B60R 13/01-13/04
B60R 13/08
G09F 9/30- 9/46
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源装置と、
前記光源装置の前方側に配置され、光透過性を有する有色の透光性部材と、
前記透光性部材の所定領域を前方側から覆うように配置され、光透過率50%以下の光透過性を有した
黒色の樹脂材料からなる有色スモーク部材と、
前記有色スモーク部材を前方側から覆うように配置され、一部に設けられた切り欠き部から前記有色スモーク部材を前方側に露出させて表記部を形成する、光透過性を有しないカバー部材と、
を備え、少なくとも前記表記部の背後領域において、前記有色スモーク部材の後方側を臨む裏面と、前記透光性部材の前方側を臨む表面と、前記透光性部材の後方側を臨む裏面と、のいずれか又は複数に光拡散層が形成され
、
前記有色スモーク部材は、前記カバー部材の背後領域において、外周側で前記透光性部材と一体化されるとともに内周側で前記透光性部材の前記所定領域との対向間に空間を形成していることを特徴とする車両用発光表示装置。
【請求項2】
前記光源装置を固定して前記透光性部材の後方側に配置され、光透過性を有しないケース体を備え、
前記空間は、前記カバー部材と前記ケース体の間に挟まれた位置にある請求項1に記載の車両用発光表示装置。
【請求項3】
前記光拡散層は、少なくとも前記表記部の背後領域において、前記有色スモーク部材の後方側を臨む裏面と、前記透光性部材の前記所定領域の前方側を臨む表面と、のいずれか又は双方に形成されている請求項1
又は請求項2に記載の車両用発光表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両には、光源装置が組み込まれて夜間等に発光する発光表示装置が設けられている。例えば、車両正面中央等に配置されるエンブレム等が発光表示装置として設けられている(例えば特許文献1)。
【0003】
こうした発光表示装置では、現状、以下のような構造を有するものがある。即ち、
図7に示すように、光源装置110と、拡散板109と、透光性部材102と、金属調のメッキカバー104と、ケース体105と、を有した発光表示装置101である。光源装置110はLED等を含むバックライトであり、ケース体105に配置される。拡散板109は、光源装置110の光を拡散させるために光源装置110の正面に配置される板状部材である。透光性部材102は、拡散板109の正面に配置される形でケース体105に組み付けられる略白色の樹脂部材である。メッキカバー104は、透光性部材102を透過する光の外部出射を妨げるよう透光性部材102を正面側から覆う被覆部材であり、透光性部材102の一部を露出させて所定の表記部103Eを形成する開口104Hが設けられる。光源装置110の非発光時には、表記部103Eが黒く視認されるよう、メッキカバー104の開口104Hの内側に位置する透光性部材102の表面には、透光性を有する黒色のカラークリア塗装103が施されている。光源装置110が発光した際には、透光性部材102のうち、メッキカバー104の開口104H内で露出する表記部103Eと、メッキカバー104に被われない外周部102Bとが、白色の発光状態で視認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、略白色の透光性部材102の表面に黒色の塗装(カラークリア塗装)が施されると、透光性部材102そのものの白色が原因となって、やや灰色がかって見えてしまい、真っ黒に見せることができない。
【0006】
また、光源装置110と拡散板109との距離が近い場合には、発光領域(103E、102B)に対し光が均一に拡散して照射されず、発光ムラが生じやすいという問題もある。
【0007】
本発明の課題は、光源装置の非発光時には表記領域を、透光性部材の色の影響を従来よりも受けにくい形で視認でき、かつ光源装置の発光時にはその表記領域がムラなく発光する車両用発光表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の車両用発光表示装置は、
光源装置と、
前記光源装置の前方側に配置され、光透過性を有する有色の透光性部材と、
前記透光性部材の所定領域を前方側から覆うように配置され、光透過率50%以下の光透過性を有した黒色の樹脂材料からなる有色スモーク部材と、
前記有色スモーク部材を前方側から覆うように配置され、一部に設けられた切り欠き部から前記有色スモーク部材を前方側に露出させて表記部を形成する、光透過性を有しないカバー部材と、
を備え、少なくとも前記表記部の背後領域において、前記有色スモーク部材の後方側を臨む裏面と、前記透光性部材の前方側を臨む表面と、前記透光性部材の後方側を臨む裏面と、のいずれか又は複数に光拡散層が形成され、
前記有色スモーク部材は、前記カバー部材の背後領域において、外周側で前記透光性部材と一体化されるとともに内周側で前記透光性部材の前記所定領域との対向間に空間を形成していることを特徴とする。
【0009】
上記本発明によれば、透光性部材の色の影響を受けることなく、有色スモーク部そのものの色を視認できる。例えば、従来のようにカバー領域の切り欠き部から、白色の透光性部材上に塗装された黒色塗装領域を露出させるのではなく、黒色の有色スモーク部材そのものを露出させることができる。これによれば、透光性部材の白色の影響を受けることがないため、よりはっきりとした黒を視認することができる。また、上記本発明によれば、有色スモーク部材や透光性部材の裏面に光拡散層を設けることで、光源装置からより離れた位置に光拡散層を形成できるから、発光ムラを軽減できる。
【0010】
上記本発明における前記光拡散層は、少なくとも前記表記部の背後領域において、前記有色スモーク部材の後方側を臨む裏面と、前記透光性部材の前記所定領域の前方側を臨む表面と、のいずれか又は双方に形成されるようにできる。この構成によれば、2層ないし3層の光拡散層を形成することができるため、発光ムラをより大きく軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施例である車両用発光表示装置を示す正面図。
【
図4】本発明の第二実施例である車両用発光表示装置を、
図1のA-A断面と同じ断面を用いて簡略的に示した断面図。
【
図5】本発明の第三実施例である車両用発光表示装置を、
図1のA-A断面と同じ断面を用いて簡略的に示した断面図。
【
図6】本発明の第四実施例である車両用発光表示装置を、
図1のA-A断面と同じ断面を用いて簡略的に示した断面図。
【
図7】従来の車両用発光表示装置を、
図1のA-A断面と同じ断面を用いて簡略的に示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0013】
本実施例の車両用発光表示装置1は、
図1及び
図2に示すように、光源装置10と、透光性部材2と、有色スモーク部材3と、カバー部材4と、ケース体5と、を備える。なお、本発明における有色には、有彩色に限らず、白や黒や灰色といった無彩色も含まれるものとする。
【0014】
ケース体5は、光透過性を有しない部材であり、前面が開口して背面が閉塞した有底筒状をなす。ケース体5の底面側には、光源装置10が載置されて固定される。ここでのケース体5は、樹脂成形体であり、例えば黒色のASA(Acrylate Sthrene Acrylonitrile)によって成形される。
【0015】
光源装置10は、
図3に示すように、回路基板6と、回路基板6の主表面に実装される発光素子7と、を有する。ここでの発光素子7は、回路基板6の主表面に広く分散配置された複数のLED(発光ダイオード)であり、回路基板6の主表面側に、例えば白色に発光する発光面10aを形成し、その発光面10aが前方を臨むように配置される。なお、光源装置10には、他のものが用いられてもよく、例えば板状の導光部材と、それに側面又は背面側から光を照射する光源と、を有したものでもよい。
【0016】
透光性部材2は、少なくとも有色スモーク部材3よりも高い光透過性を有した、無彩色や有彩色を含む有色の部材であり、光源装置10の発光面10aの前方側に配置される。透光性部材2は、ケース体5に対し前面の開口を覆う形で係合して組み付けられる。組み付け方法は周知の方法であるため説明は省略する。透光性部材2は、後方の光源装置10が発光すると、外部からは自身の色と同色に発光しているものと視認される。ここでの透光性部材2は樹脂成形体であり、例えば白色透明のアクリルによって成形され、光源装置10からの光により白色に発光しているものと視認される。
【0017】
有色スモーク部材3は、光透過性を有しており、光透過率50%以下、より望ましくは光透過率20%以上50%以下となる、無彩色や有彩色を含む有色の樹脂材料からなり、透光性部材2の前方側の所定の中央領域2A(所定領域)を覆うように配置される。ここでの有色スモーク部材3は、無彩色であるため、後方の光源装置10が発光すると、その光が有色の透光性部材2を透過した上で入光し、該透光性部材2と同色(ここでは白色)に発光しているものと視認される。ここでの有色スモーク部材3は、樹脂成形体であり、例えば黒色のスモークアクリルとして成形され、別途成形された透光性部材2に対し熱溶着等により合体成形されて一体化されている。また、有色スモーク部材3は、内周側が透光性部材2の中央領域2Aに対し空間8(空気層)を挟んで対向し、外周側で透光性部材2と一体化されている。
【0018】
カバー部材4は、少なくとも有色スモーク部材3よりも光透過性が低い部材である。ここでのカバー部材4は、光透過性を有しない部材とされ、有色スモーク部材3の前方側を覆うように配置される。ここでのカバー部材4は、表面に金属メッキが施された金属調の部材であり、外周側で透光性部材2と係合して組み付けられる。なお、組み付け方法は周知の方法であるため説明は省略する。
【0019】
また、カバー部材4には、その一部に切り欠き部4Hが設けられ、その切り欠き部4Hから有色スモーク部材3を前方側に露出させる。これにより、その露出部分が黒色の表記部3Eをなす。ここでは、
図1に示すように「SAKAE」という表記が黒色にて現れる。なお、
図2の断面図は
図1のA-A断面を簡略的に図示したものであり、上記断面を正確な寸法で示したものではない。
【0020】
なお、本発明において「光透過性を有しない」とは光透過率が5%未満であることを意味し、「光透過性を有する」とは光透過率が5%以上であることを意味する。
【0021】
また、透光性部材2と有色スモーク部材3には、その表面に光拡散層9を形成できる。光拡散層9は、透光性部材2や有色スモーク部材3の成形時又は成形後に、それらの表面に、例えば研磨等による周知の粗面化処理や、光拡散性材(白色顔料やガラスビーズ等)を含む周知の透明樹脂層付加処理又は接着処理によって形成できる。
【0022】
ここでの光拡散層9は、透光性部材2の中央領域2Aの前方側を臨む表面2a(中央表面)と、その裏側の裏面(透光性部材2の中央領域2Aの後方側を臨む裏面:中央裏面)2bと、有色スモーク部材3の後方側を臨む裏面3bとの3面の表層に、光拡散層9が粗面化処理により形成されている。より具体的にいえば、光拡散層9は、透光性部材2における有色スモーク部材3との対向面である表面2aと、透光性部材2における中央領域2Aの内側裏面2b1と、透光性部材2において中央領域2Aの外周端から前方に立ち上がった先で外周側に拡がる外周領域2Bの外側裏面2b2と、有色スモーク部材3におけるカバー部材4からの露出部(表記部3E)の裏面3b(表記部裏面)と、に形成されている。
【0023】
このように形成された車両用発光表示装置1は、光源装置10の非点灯時には、カバー部材4の切り欠き部4Hの内側に有色スモーク部材3が露出して、金属調のカバー部材4の内側に黒色の表記部3E(ここでは
図1の文字領域「SAKAE」)を形成する。一方、光源装置10の点灯時には、透光性部材2が白色の光を透過させることで、その外周領域2Bが白く発光するとともに、カバー部材4の切り欠き部4Hの内側の黒色の表記部3Eが白色の光を透過させることで、その表記部3Eも白く発光する。本実施例における表記部3Eは、車両のエンブレムを表記するものである。本実施例では、光拡散層9が3層形成されていることにより、上述の発光領域をムラなく均一に発光できる。
【0024】
また、本実施例においては、ケース体5と、回路基板6と、透光性部材2とには、空間8(空気層)と外部を連通させるための連通孔8Hが形成されている。本実施例のような車両用発光表示装置1では、水の浸入の有無を確認するために気密チェックが行われる場合がある。このため、本来であれば、透光性部材2に連通孔8Hを形成する手間を省くため、車両用発光表示装置1の内部に、空間8を形成しないよう設計したいところである。ところが、光拡散層9をより多く形成するために、あえて空間8を形成することにより、発光領域(3E、2B)の均一な発光を実現している。
【0025】
さらに本実施例の車両用発光表示装置1では、ケース体5と、透光性部材2と、有色スモーク部材3とによって、装置内部に密閉された内部空間が形成される。そして、その内部空間は、その正面側が光透過性を有しないカバー部材4によって覆われ、その背面側(さらには側面後方側)が光透過性を有しないケース体5で被われている。これにより、その内部空間は、光が進入しにくい暗い空間となる。特に、カバー部材4が表記部3Eの周辺を覆うため、表記部3Eの背後がより暗い空間となる。光源装置10が非発光状態のときに表記部3Eを視認する場合、表記部3Eを形成する有色スモーク部材3は、背後に暗い空間が存在することで、背後の構造物の色の影響を受けにくくなり、より黒く視認することが可能となる。
【0026】
以上、本発明の一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記実施例において一部の構成要件を省略する、さらには他の構成要件を追加する等、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【0027】
以下、本発明の他の実施例及び変形例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能部や同様の機能部については詳細な説明を省略する。また、上記実施例と下記変形例は、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0028】
上記実施例では、黒色の表記部3Eが車両のエンブレムをなしているが、他の意匠部であってもよい。
【0029】
上記実施例の各種の樹脂製部材(2、3、4、5)は、光透過率や剛性等の条件を満たすものであれば、他の樹脂材料にて形成されてもよい。
【0030】
上記実施例における連通孔8Hは無くてもよい。
【0031】
上記実施例では、光拡散層9は、透光性部材2の中央領域2Aの表面2aと、その中央領域2Aの裏側の裏面2bと、有色スモーク部材3の表記部3Eの裏面3bと、に形成されているが、少なくとも表記部3Eの背後領域Eにおいて、有色スモーク部材3の後方側を臨む裏面と、透光性部材2の前方側を臨む表面と、透光性部材2の後方側を臨む裏面と、のいずれか又は複数に形成されていればよい。例えば
図4に示すように、有色スモーク部材3の裏面3b(表記部裏面)と、透光性部材2の裏面2b1、2b2(中央裏面と外側裏面)と、に形成されてもよいし、
図5に示すように、透光性部材2の表面2a(中央表面)と、透光性部材2の裏面2b1、2b2(中央裏面と外側裏面)と、に形成されてもよい。
【0032】
なお、
図2、
図4、
図5の実施例では、有色スモーク部材3の裏面3b(表記部裏面)と、透光性部材2の表面2a(中央表面)と、その裏面2b1(中央裏面)とが、少なくとも表記部3Eの背後領域Eに対応する部位に形成されている。ただし、本発明における光拡散層9は、それらの面3b、2a、2b1に限らず、例えば有色スモーク部材3の裏面全体、透光性部材2の表面全体、透光性部材2の裏面全体等、それらの面3b、2a、2b1を含んだより広い領域に形成されていてもよい。
【0033】
上記実施例では、透光性部材2と有色スモーク部材3との間に空間8(空気層)を設けて、3つの光拡散層9を形成可能にしていたが、
図6に示すように
図2の空間8を排除することもできる。この場合、透光性部材2の裏面2b(外側裏面2b2)や有色スモーク部材3の裏面3b(表記部裏面)に光拡散層9を形成できる。
【符号の説明】
【0034】
1 車両用発光表示装置
2 透光性部材
2A 透光性部材の中央領域(所定領域)
2B 透光性部材の外周領域
3 有色スモーク部材
3E 表記部
4 カバー部材
4H 切り欠き部
5 ケース体
8 空間
9 光拡散層
10 光源装置