(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】感圧タッチセンサ及び感圧タッチセンサモジュール
(51)【国際特許分類】
G06F 3/044 20060101AFI20230113BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20230113BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
G06F3/044 140
G06F3/041 602
G06F3/041 580
G06F3/041 400
H01H36/00 J
(21)【出願番号】P 2018227494
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑輔
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0326456(US,A1)
【文献】特開2012-064108(JP,A)
【文献】特開2016-046028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0357354(US,A1)
【文献】特開2010-217967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/044
G06F 3/041
H01H 36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作パネルの背面に取り付けられて、前記操作パネルの操作面の押圧を検知する静電容量式の感圧タッチセンサであって、
基材シートと、第1の電極と、第2の電極と、弾性層と、
前記基材シートと前記操作パネルとを接着するための接着層と、を備え、
前記基材シートは、透明の樹脂製の絶縁フィルムからなり、
前記第1の電極は前記基材シートの第1の面又は第2の面に設けられ、
前記第2の電極は、前記第1の電極と前記第2の電極の間に前記弾性層が配置された状態で、前記第1の電極と前記第2の電極の互いの面が対向するように設けられ、
押圧力により前記弾性層が厚さ方向に圧縮変形し、前記第1の電極と前記第2の電極の距離が近づくことによる静電容量の変化から押圧を検知する感圧検知部が形成され、
前記接着層は、前記基材シートの
前記操作パネルに向けられる第2の面における前記感圧検知部を除く領域に設けられている、静電容量式の感圧タッチセンサ。
【請求項2】
前記接着層が両面テープで形成されている、請求項1に記載の静電容量式の感圧タッチセンサ。
【請求項3】
前記第2の電極及び前記弾性層
と、前記接着層
とが、いずれも前記基材シートの前記操作パネルに向けられる第2の面側に配置され
、且つ前記接着層は前記第2の面における前記第2の電極及び前記弾性層を含む前記感圧検知部を除く領域に設けられている、請求項1又は2に記載の静電容量式の感圧タッチセンサ。
【請求項4】
前記弾性層が空間部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の感圧タッチセンサ。
【請求項5】
前記基材シートに第3の電極がさらに設けられ、前記第3の電極に導体が接触又は近接することによる前記第3の電極の静電容量の変化から、前記第3の電極への導体の接触又は近接を検知する、請求項1~4のいずれか一項に記載の感圧タッチセンサ。
【請求項6】
操作面を有する操作パネルと、フレーム部材と、請求項1~5のいずれか一項に記載の感圧タッチセンサとを備え、
前記感圧タッチセンサが前記操作パネルと前記フレーム部材で挟持されている、感圧タッチセンサモジュール。
【請求項7】
前記フレーム部材が凸部を有し、
前記感圧タッチセンサの前記弾性層が位置する部分が前記操作パネルと前記凸部で挟持されている、請求項6に記載の感圧タッチセンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧タッチセンサ及び感圧タッチセンサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の電子機器等の様々な分野において、操作面の操作を検知するセンサモジュールとして、感圧検知可能な静電容量式の感圧タッチセンサモジュールが提案されている。
例えば、特許文献1には、第1の電極と第2の電極を基材シートの一方の面に設け、基材シートを部分的に折り返して第1の電極と第2の電極とを対向させ、さらに第1の電極と第2の電極の間に弾性シート(弾性層)を設けた感圧タッチセンサが開示されている。このような感圧タッチセンサでは、第1の電極、弾性層及び第2の電極が積層された部分が感圧検知部となる。
【0003】
感圧タッチセンサの一方の面には接着層が設けられ、前記接着層を介して操作パネルの背面に貼り付けられて感圧タッチセンサモジュールとされる。感圧タッチセンサモジュールでは、操作面を押圧したときに感圧タッチセンサの感圧検知部で弾性層が圧縮変形し、第1の電極と第2の電極が接近して静電容量が変化する。この静電容量の変化を検知することで、操作面の押圧を検知できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような感圧タッチセンサにおける感圧検知部と、感圧検知部以外の部分には厚さに差があり、それらの境界部分には段差がある。そのため、感圧タッチセンサを操作パネルに貼り付ける際には均一に力をかけることが難しく、感圧タッチセンサと操作パネルの間の接着部分に気泡が混入することがある。気泡の混入は感圧タッチセンサの誤検知の要因となる。
【0006】
本発明は、操作パネルに貼り付ける際の気泡の混入を抑制して誤検知を抑制できる感圧タッチセンサ、及び前記感圧タッチセンサを備える感圧タッチセンサモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]押圧を検知する静電容量式の感圧タッチセンサであって、
基材シートと、第1の電極と、第2の電極と、弾性層と、接着層と、を備え、
前記第1の電極は前記基材シートの第1の面又は第2の面に設けられ、
前記第2の電極は、前記第1の電極と前記第2の電極の間に前記弾性層が配置された状態で、前記第1の電極と前記第2の電極の互いの面が対向するように設けられ、
押圧力により前記弾性層が厚さ方向に圧縮変形し、前記第1の電極と前記第2の電極の距離が近づくことによる静電容量の変化から押圧を検知する感圧検知部が形成され、
前記接着層は、前記基材シートの第2の面における前記感圧検知部を除く領域に設けられている、静電容量式の感圧タッチセンサ。
[2]前記接着層が両面テープで形成されている、[1]に記載の静電容量式の感圧タッチセンサ。
[3]前記第2の電極及び前記弾性層が前記接着層側に配置されている、[1]又は[2]に記載の静電容量式の感圧タッチセンサ。
[4]前記弾性層が空間部を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の感圧タッチセンサ。
[5]前記基材シートに第3の電極がさらに設けられ、前記第3の電極に導体が接触又は近接することによる前記第3の電極の静電容量の変化から、前記第3の電極への導体の接触又は近接を検知する、[1]~[4]のいずれかに記載の感圧タッチセンサ。
[6]操作面を有する操作パネルと、フレーム部材と、[1]~[5]のいずれかに記載の感圧タッチセンサとを備え、
前記感圧タッチセンサが前記操作パネルと前記フレーム部材で挟持されている、感圧タッチセンサモジュール。
[7]前記フレーム部材が凸部を有し、
前記感圧タッチセンサの前記弾性層が位置する部分が前記操作パネルと前記凸部で挟持されている、[6]に記載の感圧タッチセンサモジュール。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作パネルに貼り付ける際の気泡の混入を抑制して誤検知を抑制できる感圧タッチセンサ、及び前記感圧タッチセンサを備える感圧タッチセンサモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の感圧タッチセンサの一例を示した平面図である。
【
図2】
図1の感圧タッチセンサのA-A断面図である。
【
図3】
図1の感圧タッチセンサのB-B断面図である。
【
図4】
図1の感圧タッチセンサの折り返し部を折り返す前の状態を示した平面図である。
【
図5】
図4の感圧タッチセンサのC-C断面図である。
【
図6】
図1の感圧タッチセンサにおける弾性層の折り返し部分の間に設ける前の状態を示した平面図である。
【
図8】本発明の感圧タッチセンサモジュールの一例を示した分解斜視図である。
【
図9】本発明の感圧タッチセンサモジュールの一例を示した断面図である。
【
図10】本発明の感圧タッチセンサにより操作面へのタッチを認識する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】本発明の感圧タッチセンサの他の例を示した断面図である。
【
図12】本発明の感圧タッチセンサモジュールの他の例を示した断面図である。
【
図13】本発明の感圧タッチセンサの他の例の折り返し部を折り返す前の状態を示した平面図である。
【
図14】
図13の感圧タッチセンサの折り返し部を折り返した状態を示した平面図である。
【
図15】本発明の感圧タッチセンサの他の例の折り返し部を折り返す前の状態を示した平面図である。
【
図16】
図15の感圧タッチセンサの折り返し部を折り返した状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[感圧タッチセンサ]
本発明の感圧タッチセンサは、押圧を検知する静電容量式の感圧タッチセンサである。例えば、本発明の感圧タッチセンサを操作パネルの背面に取り付けることで、操作パネルの操作面の押圧を検知することができる。以下、本発明の感圧タッチセンサの一例を示して説明する。
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0011】
本実施形態の感圧タッチセンサ1は、
図1~5に示すように、基材シート10と、保護層12と、接着層14と、剥離紙16と、4つの第1の電極18と、4つの第2の電極20と、3つの第3の電極22と、3つの補助電極24と、4つの弾性層26と、を備えている。各々の第1の電極18と第2の電極20の間に弾性層26が配置されることで感圧検知部25が形成されている。
【0012】
この例の感圧タッチセンサ1は、平面視で長方形の本体部1aと、本体部1aの4つの角部から幅方向の外側に突き出るように形成された平面視で矩形の4つの折り返し部1bと、本体部1aの短辺から延びる帯状の帯状部1cとを有している。なお、本体部1aにおける帯状部1cが延出する箇所は、任意であり、本体部1aの短辺には限定されない。また、帯状部1cを有しない感圧タッチセンサであってもよい。
【0013】
基材シート10の第1の面10aには第1の電極18、第2の電極20、第3の電極22及び補助電極24が設けられ、それらを覆うように保護層12が積層されている。基材シート10の第2の面10b側には、接着層14を介して剥離紙16が貼り合わされている。基材シート10の第2の面10bは、操作パネル側に向けられる面である。
【0014】
基材シート10の形状は、この例の形状には限定されず、用途に応じて適宜設定できる。基材シート10の寸法も特に限定されず、用途に応じて適宜設定できる。
基材シートとしては、透明な樹脂製の絶縁フィルムを使用できる。ここで、「透明」とは、JIS K7136に従って測定した光線透過率が50%以上であることを意味する。また、「絶縁」とは、電気抵抗値が1MΩ以上、好ましくは10MΩ以上であることを意味する。
【0015】
基材シートを形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース等が挙げられる。
基材シートを形成する材料は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0016】
基材シートの厚さは、10~250μmが好ましく、25~188μmがより好ましい。基材シートの厚さが前記範囲の下限値以上であれば、充分な強度及び剛性を確保しやすい。基材シートの厚さが前記範囲の上限値以下であれば、感圧タッチセンサを容易に薄型化できる。
【0017】
保護層12は、感圧タッチセンサ1における本体部1a、折り返し部1b及び帯状部1cの全体において、基材シート10の第1の面10a側に積層されている。
保護層12の形状及び寸法は、この例の形状には限定されず、用途に応じて適宜設定できる。
保護層としては、特に限定されず、例えば、基材シートで挙げたものと同じ透明な樹脂製の絶縁フィルムを例示できる。
【0018】
保護層の厚さは、10~250μmが好ましく、10~188μmがより好ましい。保護層の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、充分な強度及び剛性を確保しやすい。保護層の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、感圧タッチセンサを容易に薄型化できる。
【0019】
感圧タッチセンサ1は、
図1及び
図2に示すように、4つの折り返し部1bが本体部1aに向かって折り返されるようになっている。また、
図1、
図2、
図4及び
図5に示すように、感圧タッチセンサ1の折り返し部1bを折り返す折り線部1d、すなわち基材シート10及び保護層12における本体部1aと折り返し部1bの境界線部分には、直線状のスリット28が形成されている。
【0020】
図1及び
図2に示すように、感圧タッチセンサ1では、スリット28を利用してそれぞれの折り返し部1bを本体部1a側に容易に折り返すことができる。また、一般に、基材シートを部分的に折り返すと、折り返した部分が広がって元の折り返していない状態に戻ろうとする。しかし、感圧タッチセンサ1では、折り線部1dにスリット28が形成されているため、折り返し部1bが元の状態に戻ろうとする力が弱くなる。そのため、第1の電極18と第2の電極20の距離が安定になることで、押圧による静電容量の変化の検知精度が高くなり、押圧の誤検知が抑制される。
【0021】
この例ではスリット28は連続して実線状に形成されているが、スリット28は、断続的に破線状に形成されていてもよい。
スリット28の長さは、折り返す部分の折り線の長さに応じて適宜設定できる。
スリット28の幅は、適宜設定でき、例えば、0.5~10mmとすることができ、0.5~5mmが好ましく、1~3mmがより好ましい。スリット28の幅が前記範囲の下限値以上であれば、弾性層を挟持しやすい。スリット28の幅が前記範囲の上限値以下であれば、製品サイズが大きくなりにくい。
【0022】
第1の電極18及び第2の電極20は、操作面の押圧を検知するための感圧電極である。それぞれの第1の電極18及び第2の電極20は、配線2a,2bによって、帯状部1cの先端部分に形成された接続端子部30と接続されており、接続端子部30を介してさらに図示しない静電容量検知部と電気的に接続される。
【0023】
感圧タッチセンサ1では、基材シート10の第1の面10aにおける4つの折り返し部1bのそれぞれに第2の電極20が設けられている。また、基材シート10の第1の面10aにおける本体部1aの四隅のスリット28に対して線対称となる位置に、それぞれ第1の電極18が設けられている。このように、この例では基材シート10及び保護層12における第1の電極18と第2の電極20の間にスリット28が形成されている。
図2に示すように、基材シート10の第1の面10aが内側となるように折り返し部1bを本体部1a側に折り返した状態では、基材シート10の厚さ方向から見たときに第1の電極18と第2の電極20が重なり、それらの互いの面が対向するようになっている。
本発明では、第1の電極18と第2の電極20の距離がより安定になり、押圧の検知精度がさらに高くなる点から、この例のように、基材シートにおける少なくとも第1の電極と第2の電極の間にスリットが形成されていることが好ましい。
なお、本発明の感圧タッチセンサは、折り返し部1bが基材シート10の第2の面10bが内側となるように折り返されたものであってもよい。
【0024】
この例の第1の電極18及び第2の電極20の形状は、平面視で矩形である。なお、第1の電極18及び第2の電極20の形状は、矩形には限定されず、適宜設計できる。
第1の電極18及び第2の電極20の寸法も特に限定されず、例えば、縦10mm×横10mm程度とすることができる。第1の電極18及び第2の電極20が大きいほど、押圧力の検知感度が向上する。
本発明では、第1の電極及び第2の電極のうち、操作面から遠い側の電極の大きさを、操作面に近い側の電極よりも小さくしてもよい。例えば、感圧タッチセンサ1において、第2の電極20を第1の電極18よりも小さいサイズにしてもよい。これにより、厚さ方向から見たときに、操作面から遠い側の電極が操作面に近い側の電極からはみ出しにくくなるため、誤検知をさらに抑制しやすくなる。
【0025】
第1の電極18及び第2の電極20のうち、操作面に近い側に配置される電極は、接地されることが好ましい。これにより、感圧タッチセンサ1の感圧検知部25に指が接近しても、接地した電極がシールドとなって静電容量が変化することを抑制できる。これにより、第1の電極18及び第2の電極20の静電容量の変化から、操作面に触れようとする指が感圧検知部25に近づくことによる影響を排除し、押圧力の影響による変化に限定できるため、押圧の誤検知をさらに抑制できる。
【0026】
第1の電極18及び第2の電極20は、公知の態様の感圧電極を採用でき、自己容量方式であってもよく、相互容量方式であってもよい。
自己容量方式としては、例えば、第1の電極18及び第2の電極20がいずれもベタ電極であり、第1の電極18が接地された態様が挙げられる。
相互容量方式としては、第1の電極18及び第2の電極20をいずれもベタ電極とし、それらを送信電極と受信電極にする態様が挙げられる。また、第1の電極18を接地されたベタ電極とし、第2の電極20を送信電極と受信電極とが櫛歯状に配置されたものにする態様としてもよい。
【0027】
第1の電極18及び第2の電極20の材料としては、特に限定されず、感圧電極として通常用いられる電極を使用できる。例えば、銅、銀等が挙げられる。用途によっては、電極材料として、インジウムドープ酸化錫(ITO)、導電性高分子、銀ナノワイヤー、銀ペースト、カーボン、グラファイト、カーボンナノチューブ等を使用してもよい。なかでも、第1の電極18及び第2の電極20の電極材料としては、銀ペーストが好ましい。
ここで、「導電」とは、電気抵抗値が1MΩ未満であることを意味する。
第1の電極18及び第2の電極20の厚さは、材料に応じて適宜設定すればよく、平均厚さの好ましい範囲は後述の第3の電極の平均厚さの好ましい範囲と同様である。
【0028】
この例では第1の電極18及び第2の電極20は4個ずつであるが、第1の電極18及び第2の電極20の数は、特に限定されない。第1の電極18の数は、3個以下であってもよく、5個以上であってもよい。同様に、第2の電極20の数は、3個以下であってもよく、5個以上であってもよい。
【0029】
配線2a,2bの材料は、第1の電極18及び第2の電極20の材料と同じものを例示でき、銀ペーストが好ましい。
配線2a,2bの平均厚さの好ましい範囲は、後述の第3の電極の平均厚さの好ましい範囲と同様である。
【0030】
また、感圧タッチセンサ1では、4つの折り返し部1bを折り返した状態で、本体部1aとそれぞれの折り返し部1bとの間に弾性層26が設けられている。この例では、4つの折り返し部1bが折り返された状態で、各弾性層26が第1の電極18と第2の電極20の間に位置し、感圧検知部25が形成されている。
【0031】
弾性層26は、弾性体を含む層であり、押圧によって圧縮変形する。感圧タッチセンサ1が厚さ方向に押圧されたときには、弾性層26が厚さ方向に圧縮変形し、第1の電極18と第2の電極20との距離が近づくことで静電容量が変化する。この静電容量の変化を検知することで操作面の押圧が認識される。
【0032】
この例の弾性層26は、
図6及び
図7に示すように、一対の第1シート部26a及び第2シート部26bと、それら第1シート部26aと第2シート部26bに挟持された複数の柱部26cとを備えるゴム状弾性体である。第1シート部26a、第2シート部26b及び複数の柱部26cは一体化されている。弾性層26は、各々の柱部26cの周囲の部分に空間部26dを有している。
【0033】
第1シート部26aと第2シート部26bの間における柱部26c以外の空間部26dには、スポンジ等の弾性部材を配置してもよい。これにより、弾性層26が過度に圧縮変形して基材シート10や保護層12の折り線部1dが損傷することが抑制されやすくなる。
【0034】
第1シート部26a、第2シート部26b及び複数の柱部26cを形成する材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。弾性層26のうち、弾性体からなる必要があるのは、圧縮変形する柱部26cのみである。第1シート部26a及び第2シート部26bは、弾性材料によって形成されていてもよく、非弾性の硬質材料によって形成されていてもよい。硬質材料としては、例えば、エラストマー以外の樹脂、ガラス、金属、セラミックス、木材等が挙げられる。
【0035】
弾性層26の弾性体を形成する弾性材料としては、押圧による厚さ方向の圧縮変形の程度が適当であり、押し心地が良好であるものを使用することが好ましい。弾性材料としては、例えば、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴム等の熱硬化性エラストマー;ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系又はフッ素系等の熱可塑性エラストマー;或いはそれらの複合物等が挙げられる。これらの中でも、繰り返しの押圧に対する寸法変化が小さい、即ち圧縮永久歪が小さい点から、シリコーンゴムが好ましい。前記弾性材料は、内部に気泡を含む発泡材料でもよく、実質的な気泡を含まない非発泡材料でもよい。
【0036】
弾性層26を形成する弾性体の厚み(高さ)を1cmとしてJIS K 6253に従って測定した際のタイプAデュロメータ硬さは、85以下が好ましい。前記タイプAデュロメータ硬さが85以下であれば、押圧された際に容易に弾性変形する。ただし、過度に軟らかいと、弾性変形後の回復が遅くなるため、前記タイプAデュロメータ硬さは10以上が好ましい。
【0037】
第1シート部26aの厚さは、5~100μmが好ましく、10~100μmがより好ましい。第1シート部26aの厚さが前記範囲の下限値以上であれば、柱部26cとの接合強度を強くできる。第1シート部26aの厚さが前記範囲の上限値以下であれば、操作面を押圧していない状態における第1の電極18と第2の電極20との距離を近づけやすく、押圧の検知精度をより高くすることができる。
第2シート部26bの厚さの好ましい範囲は、第1シート部26aの厚さの好ましい範囲と同じである。第1シート部26aの厚さと第2シート部26bの厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0038】
柱部26cの形状は、特に限定されず、例えば、円柱状、円錐台状、角柱状等の柱状が挙げられる。なかでも、耐久性に優れる点から、円柱状、円錐台状が好ましい。複数の柱部26cの形状は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
単一の柱部26cの高さ方向に垂直な方向の断面積は、特に限定されず、例えば、0.005~4mm2が挙げられ、0.02~0.8mm2が好ましい。前記柱部26cの断面積が前記範囲の下限値以上であれば、押圧力が加わった際に高さ方向に圧縮変形することが容易になり、柱部26cが圧縮せずに屈曲することを防止しやすい。前記柱部26cの断面積が前記範囲の上限値以下であれば、指で押す程度の適度な押圧力で容易に圧縮変形させることができる。
ここで、柱部の断面積は、柱部の1/2の高さの位置で高さ方向に直交する断面の面積を意味する。柱部の断面積は、光学顕微鏡測定機等の公知の微細構造観察手段により測定できる。
【0040】
弾性層26が有する全ての柱部26cの合計の断面積は、弾性材料の物性と、設定する押し心地に応じて適宜設定できる。第1シート部26a又は第2シート部26bの面積を100%としたとき、前記合計の断面積は、0.1~30%が好ましく、0.5~20%がより好ましく、1~20%がさらに好ましい。前記合計の断面積が前記範囲内であれば、指で押す程度の適度な押圧力で容易に圧縮変形させることができる。
具体的には、例えば、前記合計の断面積を1~100mm2とすることができる。
【0041】
柱部26cの高さは、1~3000μmが好ましく、50~2000μmがより好ましく、200~1000μmがさらに好ましく、300~1000μmが特に好ましい。柱部26cの高さが前記範囲の上限値以下であれば、操作面を押圧していない状態における第1の電極18と第2の電極20との距離を近づけやすく、押圧力の検知精度をより高くできる。また、操作面を押圧した際に操作面がへこむ感覚が抑制されやすく、通常のタッチパネルのように硬い面に触れているのと同じ感覚で操作しやすくなる。
ここで、柱部26cの高さには、第1シート部26aの厚さ及び第2シート部26bの厚さは含まれない。柱部26cの高さは、光学顕微鏡測定機等の公知の微細構造観察手段により測定できる。
【0042】
柱部26cは、第1シート部26aの厚さ及び第2シート部26bと接続され、弾性層26の厚さを支える部材である。弾性層26の厚さが部位によらず同じであれば、複数の柱部26cの高さは実質的に同じである。
【0043】
この例の複数の柱部26cの平面視での配置パターンは、矩形状の第1シート部26aの厚さ及び第2シート部26bの平面方向において、縦方向と横方向に5×5の25本の柱部26cが間隔をあけて整列したパターンである。なお、複数の柱部26cの配置パターンは、このパターンには限定されず、例えば、複数の柱部26cが千鳥状に配列したパターンであってもよい。
【0044】
弾性層26が有する柱部26cの個数は、複数でもよく、1個でもよい。例えば、第1シート部26aの厚さ及び第2シート部26bの平面方向の中央領域に1個の平面視矩形の柱部26cが設けられた態様であってもよい。この態様の場合、柱部26cを形成する弾性体は、内部に気泡を含む発泡体であることが好ましい。
【0045】
弾性層26が有する柱部26cの個数は、1~1000個が好ましく、3~100個がより好ましく、4~50個がさらに好ましい。前記個数が前記範囲の下限値以上であれば、操作面を指で押す程度の適度な押圧力で弾性層26を圧縮変形させることができる。前記個数が前記範囲の上限値以下であれば、指で押す程度の押圧の検出精度を向上させることができる。
【0046】
隣り合う柱部26c同士のピッチは、0.1~5mmが好ましく、0.5~3mmがより好ましい。前記ピッチが前記範囲の下限値以上であれば、操作面を指で押す程度の適度な押圧力で弾性層26を圧縮変形させることができる。前記ピッチが前記範囲の上限値以下であれば、指で押す程度の押圧の検出精度を向上させることができる。
【0047】
この例の弾性層26は、
図2に示すように、第1基材フィルム32と第2基材フィルム34に挟持された状態で、基材シート10及び保護層12の折り返し部1bを折り返した部分の間に配置され、接着層36,38を介して保護層12と接着されている。折り返し部1bを折り返した部分の間に配置する前においては、
図6及び
図7に示すように、接着層36,38の表面に剥離紙40,42が積層されている。
【0048】
接着層36,38は、それぞれ第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34の保護層12との密着面の一部のみに設けられていてもよく、密着面の全面に設けられていてもよい。弾性層26に対する押圧力を面方向に均一化することが容易な点から、前記密着面の全体に接着層36,38が設けられていることが好ましい。
【0049】
接着層36,38の材料としては、それぞれ独立に、例えば、公知の硬化型接着剤(接着前は液状の接着剤)、又は粘着剤(接着前はゲル状の感圧性接着剤)が挙げられる。また、各接着層は、基材層の両面に接着剤又は粘着剤が配置された基材型接着層であってもよい。基材型接着層としては、例えば公知の両面テープが挙げられる。
前記接着剤、粘着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。前記硬化型接着剤は、硬化時に揮発する溶剤を含む溶剤型であってもよく、ホットメルト型であってもよい。
【0050】
接着層36,38の厚みとしては、それぞれ独立に、例えば1~75μmが挙げられる。前記硬化型接着剤を用いた接着層36,38の厚みは、1~20μmが好ましい。前記粘着剤を用いた接着層36,38の厚みは、10~75μmが好ましい。
【0051】
第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34を形成する材料としては、絶縁性の樹脂材料を使用でき、それぞれ独立に、例えば、PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ウレタン等が挙げられる。第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34を形成する樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0052】
第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34の厚さは、それぞれ独立に、例えば、10~200μmが挙げられる。前述の樹脂材料を用いる場合、その厚みは、10~200μmが好ましく、25~150μmがより好ましく、25~100μmがさらに好ましい。
厚さが前記範囲の下限値以上であれば、弾性層26に対する押圧力を面方向に均一化することが容易である。厚さが前記範囲の上限値以下であれば、操作面に対する入力の検知精度を高めることができる。
【0053】
第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34は、それぞれ弾性層26の第1シート部26aの外表面と第2シート部26bの外表面にそれぞれ接着されている。これらは不図示の接着層によって接着されていてもよく、公知の表面処理又は加熱処理によって直に接着されていてもよい。
第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34の接着面には、接着力を向上させる目的で、物理的又は化学的な公知の表面処理が施されていてもよい。
【0054】
第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34は、操作面に加えられた押圧力が弾性層26に均一に伝達されるようにするために、弾性層26に対する平滑な表面を有する。仮に、第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34が存在しないと、第1の電極18や第2の電極20が設けられた部分の凹凸が弾性層26に対する押圧を不均一にすることがある。本実施形態では第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34が備えられているため、第1の電極18や第2の電極20が設けられた部分の凹凸が弾性層26に対する押圧を不均一にする影響を低減できる。また、第1の電極18や第2の電極20が局所的に弾性層26の柱部26cからの応力を受けて損傷することが抑制される。
【0055】
感圧タッチセンサ1では、基材シート10の第1の面10aにおける幅方向の中央部に、長さ方向に間隔をあけて3つの第3の電極22が設けられている。第3の電極22は、第3の電極22への導体の接触又は近接による静電容量の変化から、第3の電極22への導体の接触又は近接を検知する電極である。第3の電極22は、感圧タッチセンサモジュールでは、操作面への導体の接触を検知するためのタッチ電極として機能する。
本発明では、このように基材シートの第1の面に、操作面の押圧を検知するための第1の電極及び第2の電極に加えて、タッチ電極である第3の電極がさらに設けられていることが好ましい。これにより、操作面の操作を指の接触と押圧の2段階で判定して認識することができるため、誤検知をより安定して抑制できる。
【0056】
この例の第3の電極22の形状は、平面視で矩形状である。なお、第3の電極22の形状は、矩形状には限定されず、適宜設計できる。第3の電極22の寸法も特に限定されず、例えば、縦10mm×横10mm程度とすることができる。
【0057】
第3の電極22は、自己容量方式であってもよく、相互容量方式であってもよい。
相互容量方式の第3の電極22の態様としては、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形等のベタ電極や、櫛歯電極または、基材の一方の面に帯状の送信電極が形成され、他方の面に送信電極と直交する方向に延びる複数の帯状の受信電極が形成された田形電極パターン、ダイヤモンドパターン等が挙げられる。
自己容量方式の第3の電極22の態様としては、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形等のベタ電極や、ダイヤモンドパターン等が挙げられる。
【0058】
第3の電極22としては、透明導電膜を使用できる。
透明導電膜としては、導電性高分子を含む膜、導電性ナノワイヤーを含む膜、金属粒子又は導電性金属酸化物粒子を含む膜、カーボンを含む膜、金属蒸着法によって形成された金属蒸着膜等が挙げられる。透明導電膜としては、曲げ耐性に優れる点では、導電性高分子を含む膜が好ましい。
【0059】
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等が挙げられる。導電性高分子のなかでも、ポリチオフェンが好ましく、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)にポリスチレンスルホン酸をドープしたものが特に好ましい。
【0060】
導電性ナノワイヤーとしては、銀ナノワイヤー、金ナノワイヤー、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
金属粒子としては、例えば、銀、銅、金等の金属の粒子が挙げられる。
導電性金属酸化物粒子としては、例えば、インジウムドープ酸化錫の粒子が挙げられる。
カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
金属蒸着膜を形成する金属としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、亜鉛、金等が挙げられる。これらの中でも、電気抵抗が低く、低コストであることから、銅が好ましい。
【0061】
導電性高分子を含む透明導電膜からなる第3の電極22の平均厚さは、0.1~5.0μmが好ましく、0.1~2.0μmがより好ましい。
金属ナノワイヤーを含む透明導電膜からなる第3の電極22の平均厚さは、20~1000nmが好ましく、50~300nmがより好ましい。
金属粒子、導電性金属酸化物粒子又はカーボンを含む透明導電膜からなる第3の電極22の平均厚さは、0.01~25μmが好ましく、0.1~15μmがより好ましい。
金属蒸着膜の透明導電膜からなる第3の電極22の平均厚さは、0.01~1.0μmが好ましく、0.05~0.3μmがより好ましい。
第3の電極22の平均厚さが前記範囲の下限値以上であれば、ピンホールによる断線を抑制しやすい。第3の電極22の平均厚さが前記範囲の上限値以下であれば、薄型化が容易になる。
【0062】
第3の電極22は、透明導電膜には限定されず、銀ペースト、カーボンペースト等であってもよい。
銀ペースト又はカーボンペーストからなる第3の電極22の平均厚さは、1~25μmが好ましい。
【0063】
電極の厚さを測定する方法としては、厚さのレンジによって異なる。例えば、μmオーダーの膜厚の場合には、マイクロメーター、デジマティックインジケーターやレーザー変位計測によって厚さを測定できる。また、μmオーダーよりも薄い膜厚の場合には、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察や蛍光X線分析装置によって厚さを測定できる。
平均厚さは、電極において中心付近で測定した厚さの平均値である。
【0064】
この例では第3の電極22は3個であるが、第3の電極22の数は、特に限定されない。第3の電極22の数は、2個以下であってもよく、4個以上であってもよい。
【0065】
感圧タッチセンサでは、第3の電極22の周囲を囲うように、第3の電極22と全周にわたって接触した補助電極24が設けられている。補助電極24は、配線2cによって、帯状部1cの先端部分に形成された接続端子部30と接続されており、さらに接続端子部30を介して図示しない静電容量検知部と電気的に接続される。これにより、第3の電極22は静電容量検知部と接続できるようになっている。
補助電極24を設けることで、第3の電極22と配線2cとを点接触させる場合に比べて、抵抗の影響を受けにくくなる。そのため、第3の電極22を比較的抵抗が大きい導電性高分子で形成した場合でも、高い検知精度を確保できる。
【0066】
補助電極24の材料は、第1の電極18及び第2の電極20の材料と同じものを例示でき、銀ペーストが好ましい。
補助電極24の平均厚さの好ましい範囲は、第3の電極22の平均厚さの好ましい範囲と同様である。
【0067】
この例の接着層14及び剥離紙16は、感圧タッチセンサ1における折り返し部1bと、本体部1aにおける折り返された折り返し部1bと重なる部分と、帯状部1cには設けられていない。このように、接着層14及び剥離紙16は、基材シート10における感圧検知部25を除く領域に部分的に設けられている。
【0068】
基材シート10における感圧検知部25を除く領域に接着層14が設けられていることで、剥離紙16を剥離した感圧タッチセンサ1を、接着層14を介して操作パネルの背面に貼り付ける際には、感圧検知部25は操作パネルに接着されない。感圧タッチセンサ1における感圧検知部25を操作パネルに接着せず、それ以外の部分だけが操作パネルに接着されるようにすることで、感圧タッチセンサ1を貼り付ける際に厚みの異なる部分を一度に貼り付ける必要がなくなる。このように、感圧タッチセンサ1における、感圧検知部25以外の厚さが均等な部分だけを操作パネルに貼り付けるようにすることで、感圧タッチセンサ1と操作パネルとの間の接着部分に気泡が混入することを抑制できる。
【0069】
接着層14を形成する材料としては、特に限定されず、例えば、接着層36,38で挙げた、接着剤、粘着剤と同じものを例示できる。なかでも、固定領域を容易に制御できる点から、両面テープが好ましい。
剥離紙16としては、特に限定されず、公知の剥離紙を使用できる。
【0070】
感圧タッチセンサ1の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を利用することができる。
第1の電極18、第2の電極20、第3の電極22及び補助電極24は、例えば、基材シート10に対して印刷等により電極材料でパターンを形成することで製造できる。また、基材の一方の面又は両面に電極を形成し、それを接着剤や両面テープ等により基材シート10に接合してもよい。電極を形成する方法としては、例えば、導電性ペーストを印刷した後に加熱して硬化させる方法、金属粒子を含むインクを印刷する方法、金属箔又は金属蒸着膜を形成してパターニングする方法等が挙げられる。
第1の電極18、第2の電極20、第3の電極22及び補助電極24を形成した後、基材シート10の第1の面10a側に、接着剤等で保護層12を貼り合わせて積層する。また、基材シート10の第2の面10b側において、本体部1aの折り返し部1bが折り返される部分を除く領域に、両面テープを貼り付ける等によって接着層14を形成し、剥離紙16を貼り付ける。
【0071】
弾性層26は、例えば、以下の方法で製造することができる。具体的には、第2基材フィルム34の片面にスクリーン印刷等により第2シート部26bを形成する。第2シート部26bの表面と各柱部26cの第2シート部26bに接する面に紫外線を照射し、それらを重ね合せて加圧して、第2シート部26bと各柱部26cとを接合する。また、第1基材フィルム32の片面にスクリーン印刷等により第1シート部26aを形成する。第1シート部26aの表面と各柱部26cの第1シート部26aに接する面に紫外線を照射し、それらを重ね合せて加圧して、第1シート部26aと各柱部26cとを接合する。これにより第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34に挟持された弾性層26を形成できる。
【0072】
基材シート10及び保護層12における折り返し部1bを、基材シート10の第1の面10aが内側となるように折り線部1dで折り返し、第1の電極18と第2の電極20の互いの面を対向させる。次いで、その折り返した部分の間に弾性層26を配置し、接着層36,38を介して保護層12に接着する。これにより、感圧タッチセンサ1が得られる。
【0073】
[感圧タッチセンサモジュール]
本発明の感圧タッチセンサモジュールは、操作面を有する操作パネルと、フレーム部材と、本発明の感圧タッチセンサとを備え、本発明の感圧タッチセンサが操作パネルとフレーム部材で挟持された装置である。以下、本発明の感圧タッチセンサモジュールの一例として、感圧タッチセンサ1を備える感圧タッチセンサモジュール100(以下、「モジュール100」とも記す。)について、
図8及び
図9に基づいて説明する。
【0074】
モジュール100は、操作面112を有する操作パネル110と、4つの凸部122を有するフレーム部材120と、感圧タッチセンサ1とを備えている。感圧タッチセンサ1は、剥離紙16を剥離した状態で、接着層14を介して操作パネル110の背面に貼り付けられている。
【0075】
感圧タッチセンサ1を操作パネル110に貼り付ける方法は、特に限定されず、例えば、ダイアフラム方式、ローラー方式等が挙げられる。なかでも、感圧タッチセンサ1の接着層14と操作パネル110との間に気泡が混入することを抑制しやすく、感圧タッチセンサ1をより綺麗に貼り付けることができる点から、ダイアフラム方式が好ましい。
【0076】
感圧タッチセンサ1は折り返し部1bが折り返され、その折り返した部分の間に弾性層26が設けられた状態で、操作パネル110とフレーム部材120により挟持されている。感圧タッチセンサ1の折り返し部1bを折り返した側にフレーム部材120が設けられ、折り返し部1bを折り返した側と反対側に操作パネル110が設けられている。この例では、操作パネル110とフレーム部材120とはバネ130により接続されている。
操作パネル110における感圧タッチセンサ1と反対側の表面が操作面112となる。
【0077】
操作パネル110としては、指で押圧した際に、パネルを通して指で押圧した位置から離れた位置にある弾性層を圧縮できる剛性を備えたものが使用できる。ただし、押圧する位置と弾性層のある位置が近い場合は、操作パネル110として、剛性の低いパネルを使用してもよい。操作パネル110としては、例えば、感圧タッチセンサ1の表面を覆うカバー層と、前記カバー層の表面に形成された加飾層を備えるものが挙げられる。カバー層は、光源からの光線を平面方向に導くライトガイド層を兼ねる層であってもよい。
【0078】
カバー層の材料としては、例えば、ガラス、樹脂が挙げられる。
樹脂としては、例えば、PC、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン(PS)、PVC、PET、PBT、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
カバー層の厚さは、0.05mm~10mmが好ましく、2mm~5mmがより好ましい。カバー層の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、充分な強度が得られやすい。カバー層の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、モジュール100が過度に厚くなることを抑制しやすく、また指で電極に触れた際に第3の電極の静電容量が十分に変化して良好な検知精度が得られやすい。
【0080】
加飾層は、装飾、文字、図形、記号、絵柄、これらの組み合わせ、あるいはこれらと色彩との組み合わせによる任意の装飾が施された層である。加飾層は、例えば、カバー層に印刷を施すことにより形成できる。
なお、操作パネル110は、加飾層を有しないものであってもよい。
【0081】
フレーム部材120には、感圧タッチセンサ1側の表面における感圧タッチセンサ1の各弾性層26と対応する位置に、平面視矩形状の4つの凸部122が設けられている。感圧タッチセンサ1が操作パネル110とフレーム部材120で挟持された状態では、4つの凸部122がそれぞれ、感圧タッチセンサ1における弾性層26が位置する折り返し部1bに圧接している。このように、感圧タッチセンサ1の弾性層26が位置する部分が操作パネル110とフレーム部材120の凸部122で挟持された状態になっている。
【0082】
モジュール100では、このように、第1の電極18、弾性層26及び第2の電極20が重なっている感圧検知部25は、操作パネル110とフレーム部材120の凸部122で圧接固定されている。そのため、感圧検知部25が操作パネル110には接着されていなくても、それによる性能の低下は生じない。感圧タッチセンサ1の感圧検知部25に接着層14が設けられていないことで、感圧検知において接着層14の影響を受けないため、感圧の検知精度はより高くなる。
なお、凸部122は粘着剤等で感圧タッチセンサ1と接着されていてもよい。
【0083】
この例では、フレーム部材120の感圧タッチセンサ1側の表面における4つの凸部122よりも内側には、静電容量検知部(IC)を備える制御基板124が固定されている。制御基板124は図示されないコネクターを介して感圧タッチセンサ1の接続端子部30と接続されていてもよい。また、制御基板124には、静電容量検知部(IC)に加え、文字照光用のLED126が実装されており、タッチ判定状態に対応して感圧タッチセンサ1の第3の電極22及び操作パネル110を透過して文字照光させるようになっている。
【0084】
本発明では、このようにフレーム部材が凸部を有し、感圧タッチセンサの弾性層が位置する部分が操作パネルとフレーム部材の凸部で挟持されていることが好ましい。これにより、指で押圧した程度でも弾性層26が圧縮変形しやすくなり、タッチ操作の検出精度がより高くなる。
【0085】
フレーム部材を形成する材料としては、例えば、樹脂、ガラス、無機物等が挙げられる。
フレーム部材を形成する樹脂としては、例えば、カバー層を形成する樹脂として挙げた樹脂と同じものが挙げられる。フレーム部材を形成する樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
以下、モジュール100を用いたタッチ操作の判定処理について、
図10に基づいて説明する。
モジュール100における感圧タッチセンサ1の4対の第1の電極18及び第2の電極20を1つの静電容量検知部と接続し、3つの第3の電極22をそれぞれ個別の静電容量検知部と接続する。そして、各々の第3の電極22と接続された静電容量検知部で検出される検出値について、それぞれ第1の閾値を設定し、操作パネル110の操作面112における特定の第3の電極22に対応する部分に触れた場合に、その第3の電極22に対応する検出値が第1の閾値以上となるようにする。また、4対の第1の電極18及び第2の電極20と接続された静電容量検知部で検出される検出値について第2の閾値を設定し、所定の押圧力以上で押圧した場合に検出値が第2の閾値以上となるようにする。
なお、4対の第1の電極18及び第2の電極20は、それぞれ個別の静電容量検知部と接続されていてもよい。その場合は、4つの静電容量検知部のそれぞれで検出された検出値の合計値に対して、第2の閾値を設定することができる。
【0087】
この状態で操作パネル110の操作面112における1つの第3の電極22に対応する部分を指で押圧する。すると、まずその第3の電極22において静電容量が変化し、対応する静電容量検知部で検出された検出値が第1の閾値以上となる。さらに押圧によって各感圧検知部25の弾性層26が圧縮変形し、4対の第1の電極18と第2の電極20の距離が近づいて静電容量が変化すると、それらと接続された静電容量検知部で検出された検出値が第2の閾値以上となる。この場合、操作する意図を持って押圧したタッチ状態であると判定される。
【0088】
一方、操作パネル110の操作面112に触れずに指が接近しただけの場合は、各々の第3の電極22に対応する静電容量検知部で検出された検出値は第1の閾値未満となり、非タッチ状態であると判定される。
また、操作パネル110の操作面112における1つの第3の電極22に対応する部分に触れているだけで、その部分を押圧していない場合、その第3の電極22に対応する静電容量検知部で検出された検出値は第1の閾値以上となるものの、4対の第1の電極18及び第2の電極20に対応する静電容量検知部で検出された検出値は第2の閾値未満となる。そのため、操作する意図がなく単に指が操作面に触れてしまっただけの場合には非タッチ状態であると判定される。
また、操作パネル110の操作面112における第3の電極22に対応していない部分を押圧した場合、各々の第3の電極22に対応する静電容量検知部で検出された検出値は第1の閾値未満となり、非タッチ状態であると判定される。
【0089】
以上説明したように、本発明においては、操作パネルに貼り付けるための感圧タッチセンサの接着層が、厚さ方向において、基材シートの感圧検知部以外の領域に部分的に設けられ、感圧検知部が操作パネルに接着されないようになっている。これにより、感圧タッチセンサを操作パネルに貼り付ける際に、感圧タッチセンサの接着層と操作パネルの間に気泡が混入することが抑制される。そのため、感圧タッチセンサの誤検知を抑制することができる。
【0090】
感圧タッチセンサと操作パネルの間への気泡の混入は、特に第3の電極による導体の接触又は近接の検知に対する悪影響が大きい。しかし、本発明では、感圧タッチセンサ1のように、第3の電極を備える感圧タッチセンサの場合でも、第3の電極による導体の接触又は近接の誤検知を抑制することができる。また、押圧を検知する第1の電極及び第2の電極と、指の接触を検知する第3の電極を組み合わせる態様、すなわちそれぞれ独立した感圧電極とタッチ電極を備える態様は、指の接触と感圧の2段階の閾値を用いてタッチ状態を判定できるため、誤検知をさらに抑制できる。
【0091】
また、弾性層26のように、感圧検知部の弾性層が空間部を有する場合は、操作パネルに貼り付ける際、弾性層が空間部を有しない場合に比べて感圧検知部に均一に圧力を加えることが難しく、操作パネルに貼り付けた感圧検知部に接着ムラが生じやすい傾向がある。しかし、本発明では、基材シートの感圧検知部となる領域には、操作パネルに貼り付けるための接着層が無いため、この部分に接着ムラが生じることがない。
【0092】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、
図11に示すように、第2の電極20及び弾性層26が接着層14側となるように折り返し部1bを折り返して感圧検知部25を形成した感圧タッチセンサ1Aであってもよい。この場合、
図12に示すように、感圧タッチセンサ1Aを備える感圧タッチセンサモジュール100Aにおいては、感圧検知部25の段差が操作パネル110側となるように感圧タッチセンサ1Aが操作パネル110に貼り付けられる。そのため、製造時等に感圧検知部25の段差に他の部材等が引っ掛かって感圧検知部25が損傷することを抑制しやすい。
【0093】
本発明の感圧タッチセンサは、
図13及び
図14に例示した感圧タッチセンサ1Bであってもよい。感圧タッチセンサ1Bでは、平面視で長方形の本体部1aの4つの角部から幅方向の外側に突き出るように平面視で矩形の4つの張出部1eが形成され、さらに張出部1eの本体部1aと反対側に平面視で矩形の折り返し部1bが接続されている。各々の張出部1eと折り返し部1bの境界線部分にはスリット28が設けられている。
基材シート10における張出部1eの部分に第1の電極18が設けられ、折り返し部1bに第2の電極20が設けられている。感圧タッチセンサ1Bでは、折り返し部1bが折り返されて張出部1eと重ねられ、それらの間に弾性層26が設けられることで、本体部1aの外側で感圧検知部25が形成される。
【0094】
接着層14は、基材シート10における本体部1a全体に設けられ、張出部1e、折り返し部1b及び帯状部1cには設けられていない。すなわち、感圧タッチセンサ1Bでは、接着層14は、基材シート10における感圧検知部25を除く領域に部分的に設けられている。これにより、感圧タッチセンサ1Bにおいても、操作パネルに貼り付ける際に感圧タッチセンサ1Aの接着層14と操作パネルの間に気泡が混入することが抑制される。そのため、感圧タッチセンサ1Bの誤検知を抑制することができる。
感圧タッチセンサ1Bは、平面視で長方形の本体部1a全体に接着層14が設けられるため、ローラー方式によって操作パネルに貼り付けることが容易な点で有利である。
【0095】
また、本発明の感圧タッチセンサは、
図15及び
図16に例示した感圧タッチセンサ1Cであってもよい。感圧タッチセンサ1Cは、各々の張出部1eと本体部1aの境界線部分にスリット28Aが設けられている以外は、感圧タッチセンサ1Bと同様の態様である。
感圧タッチセンサ1Cでは、折り返し部1bを折り返し、張出部1eと折り返し部1bの間に弾性層26を設けて感圧検知部25を形成し、さらにその感圧検知部25を本体部1a側に折り返すことができる。操作パネルに貼り付けた後に、このように感圧検知部25を本体部1a側に折り返した状態とすることで、感圧タッチセンサ1Cと操作パネルの間に気泡が混入することを抑制しつつ、感圧タッチセンサ1Cをコンパクトにしてモジュールの収納部分に収めることができる。
【0096】
本発明の感圧タッチセンサは、感圧タッチセンサ1、1A~1Cにおいて、スリット28,28Aが形成されていないものであってもよい。
本発明の感圧タッチセンサは、第2の電極が設けられた折り返し部を折り返して感圧検知部を形成する態様には限定されず、例えば、第2の電極と弾性層を含む積層体を別の部材として作製し、第1の電極と第2の電極の間に弾性層が位置するように貼り付けて感圧検知部を形成する態様であってもよい。
【0097】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1,1A~1C…感圧タッチセンサ、2a,2b…配線、10…基材シート、12…保護層、14…接着層、16…剥離紙、18…第1の電極、20…第2の電極、22…第3の電極、24…補助電極、26…弾性層、26d…空間部、100,100A…感圧タッチセンサモジュール、110…操作パネル、112…操作面、120…フレーム部材、122…凸部。