(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】孔開き判定装置
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
F01M13/00 E
F01M13/00 K
(21)【出願番号】P 2018241530
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 智也
(72)【発明者】
【氏名】矢島 裕人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直樹
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-081383(JP,U)
【文献】実開平05-030410(JP,U)
【文献】特開平10-184336(JP,A)
【文献】特開2017-144806(JP,A)
【文献】実開昭58-093843(JP,U)
【文献】特開2013-050093(JP,A)
【文献】特開平02-238111(JP,A)
【文献】特開2013-124587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周部と外周部とを有する筒状の本体部と、
前記内周部によって囲繞され、流体が流通する流通部と、
前記内周部と前記外周部との間に形成され、前記流通部を囲繞する中空部と、
少なくとも前記中空部内の圧力
、および、インテークマニホールド内の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段が検出した圧力に基づいて、前記本体部における孔開きの有無を判定する判定部と、
を備え
、
前記流通部を流通する前記流体は、エンジンから供給されるブローバイガスである孔開き判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記エンジンの運転時において、前記圧力検出手段が検出した前記中空部内の圧力が第1条件を満たす場合であって、前記エンジンの停止後において、前記圧力検出手段が検出した前記中空部内の圧力が第2条件を満たす場合に、前記内周部および前記外周部において孔開きが生じたと判定する請求項
1に記載の孔開き判定装置。
【請求項3】
前記第1条件は、少なくとも前記圧力検出手段が検出した前記インテークマニホールド内の圧力に基づく所定の範囲内の場合である請求項
2に記載の孔開き判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記エンジンの運転時において、前記圧力検出手段によって検出された前記中空部内の圧力が、前記所定の範囲よりも大きい値である場合に、前記内周部において孔開きが生じたと判定する請求項
3に記載の孔開き判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記エンジンの運転時において、前記圧力検出手段によって検出された前記中空部内の圧力が、前記所定の範囲よりも小さい値である場合に、前記外周部において孔開きが生じたと判定する請求項
3または
4に記載の孔開き判定装置。
【請求項6】
前記第2条件は、前記圧力検出手段によって検出した前記中空部内の圧力の変化が、検出されない場合、または、所定値以下の場合である請求項
2から
5のいずれか一項に記載の孔開き判定装置。
【請求項7】
前記本体部は、弾性部材からなる請求項1から
6のいずれか一項に記載の孔開き判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔開き判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンでは、燃焼行程において、燃焼室内の圧力の上昇により、ピストンとシリンダボアとの隙間からクランクケース内に燃焼途中の半燃焼ガスが微量に漏れ出す。そこで、エンジンには、クランクケース内に漏れ出した半燃焼ガスであるブローバイガスを、大気中に放出することなく、吸気流路に戻すために、クランクケースと吸気流路とを連通させるブローバイガス流路が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ブローバイガス流路を通過するブローバイガスを検出するブローバイガス検出センサを用いて、ブローバイガス流路に漏れが発生していないかを判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ブローバイガス等の流体が流通する空間自体に検出センサを設けた場合、流体の漏れを検出する精度を高めようとすると、多数の検出センサを配置する必要が生じ、構成が複雑になるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成で、孔開きの有無を判定することができる孔開き判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の孔開き判定装置は、内周部と外周部とを有する筒状の本体部と、内周部によって囲繞され、流体が流通する流通部と、内周部と外周部との間に形成され、流通部を囲繞する中空部と、少なくとも中空部内の圧力、および、インテークマニホールド内の圧力を検出する圧力検出手段と、圧力検出手段が検出した圧力に基づいて、本体部における孔開きの有無を判定する判定部と、を備え、流通部を流通する流体は、エンジンから供給されるブローバイガスである。
【0010】
また、判定部は、エンジンの運転時において、圧力検出手段が検出した中空部内の圧力が第1条件を満たす場合であって、エンジンの停止後において、圧力検出手段が検出した中空部内の圧力が第2条件を満たす場合に、内周部および外周部において孔開きが生じたと判定するとよい。
【0011】
また、第1条件は、少なくとも圧力検出手段が検出したインテークマニホールド内の圧力に基づく所定の範囲内の場合であるとよい。
【0012】
また、判定部は、エンジンの運転時において、圧力検出手段によって検出された中空部内の圧力が、所定の範囲よりも大きい値である場合に、内周部において孔開きが生じたと判定するとよい。
【0013】
また、判定部は、エンジンの運転時において、圧力検出手段によって検出された中空部内の圧力が、所定の範囲よりも小さい値である場合に、外周部において孔開きが生じたと判定するとよい。
【0014】
また、第2条件は、圧力検出手段によって検出した中空部内の圧力の変化が、検出されない場合、または、所定値以下の場合であるとよい。
【0015】
また、本体部は、弾性部材からなるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構成で、孔開きの有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】孔開き判定装置を備えたエンジンの概略図である。
【
図4】インテークマニホールド内の圧力および中空部内の圧力を示す図である(孔開き無し)。
【
図5】インテークマニホールド内の圧力および中空部内の圧力を示す図である(孔開き有り)。
【
図7】孔開き判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、本発明の孔開き判定装置100を備えたエンジン1の概略図である。まず、エンジン1の概略構成について説明し、次に孔開き判定装置100の構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、エンジン1は、クランクシャフト2を挟んで2つのシリンダブロック3にそれぞれ形成されたシリンダボア3aが対向して配された水平対向4気筒エンジンである。
【0021】
シリンダブロック3には、クランクケース4が一体形成されるとともに、クランクケース4とは反対側にシリンダヘッド5が固定されている。クランクシャフト2は、クランクケース4によって形成されたクランク室6内に回転自在に支持される。
【0022】
シリンダボア3aには、コンロッド7を介してクランクシャフト2に連結されたピストン8が摺動可能に収容されている。そして、エンジン1では、シリンダボア3aと、シリンダヘッド5と、ピストン8の冠面とによって囲まれた空間が燃焼室9として形成される。
【0023】
シリンダヘッド5には、吸気ポート10および排気ポート11が燃焼室9に連通するように形成される。吸気ポート10と燃焼室9との間には、吸気弁12の先端が位置し、排気ポート11と燃焼室9との間には、排気弁13の先端が位置している。
【0024】
また、エンジン1では、シリンダヘッド5およびヘッドカバー14に囲まれたカム室内に、吸気弁用カム15および排気弁用カム16が設けられる。吸気弁用カム15は、吸気弁12の他端に当接されており、回転することで吸気弁12を軸方向に移動させる。これにより、吸気弁12は、吸気ポート10と燃焼室9との間を開閉する。排気弁用カム16は、排気弁13の他端に当接されており、回転することで排気弁13を軸方向に移動させる。これにより、排気弁13は、排気ポート11と燃焼室9との間を開閉する。
【0025】
吸気ポート10の上流側には、インテークマニホールド17を含む吸気流路18が連通される。また、排気ポート11の下流側には、エキゾーストマニホールド19を含む排気流路20が連通される。各気筒の燃焼室9から排出された排気ガスは、排気ポート11を介してエキゾーストマニホールド19で集約され、過給機21のタービン21aに導かれる。
【0026】
過給機21は、エキゾーストマニホールド19から排出される排気ガスによって回転するタービン21aと、タービン21aの回転動力によって回転するコンプレッサ21bとを含んで構成される。タービン21aとコンプレッサ21bとは、タービンシャフト21cによって接続され、一体回転する。
【0027】
吸気流路18には、エアクリーナ22、コンプレッサ21b、インタークーラ23、および、スロットル弁24が上流側から順に設けられる。コンプレッサ21bは、エアクリーナ22で塵や埃などの異物が除去された吸気を圧縮して下流側に供給する。
【0028】
インタークーラ23は、コンプレッサ21bで圧縮されて昇温した吸気を冷却する。スロットル弁24は、不図示のアクチュエータによって開度が調整されることで、燃焼室9に供給される吸気の流量を可変する。
【0029】
そして、燃焼室9に導かれた吸気と、不図示のインジェクタから噴射された燃料との混合気が、シリンダヘッド5に設けられた不図示の点火プラグによって所定のタイミングで点火されて燃焼される。かかる燃焼により、ピストン8がシリンダボア3a内で往復運動を行い、その往復運動が、コンロッド7を通じてクランクシャフト2の回転運動に変換される。また、燃焼により発生した排気ガスは、排気ポート11、エキゾーストマニホールド19を介してタービン21aに導かれ、タービン21aを回転させた後、排気流路20に設けられた触媒25で浄化され、車外へ排出される。
【0030】
また、エンジン1には、クランク室6と、吸気流路18におけるエアクリーナ22とコンプレッサ21bとの間とを連通する新気ライン26が設けられる。また、新気ライン26における吸気流路18との接続側端部には、バルブ102が設けられる。
【0031】
また、エンジン1には、クランクケース4に形成されたクランク室6とインテークマニホールド17とを連通する掃気ライン27が設けられる。掃気ライン27とクランク室6との接続部には、PCVバルブ104が設けられる。
【0032】
新気ライン26および掃気ライン27は、主にクランク室6内のブローバイガスを掃気するために設けられる。ブローバイガスは、エンジン1の燃焼行程において、燃焼室9内の圧力の上昇により、ピストン8とシリンダボア3aとの隙間からクランク室6内に微量に漏れ出した燃焼途中の半燃焼ガスであり、有害物質である窒素酸化物(NOx)等が含まれる。ブローバイガスは、吸気が過給されない自然吸気の運転領域と、吸気が過給される過給運転の領域とで、新気ライン26および掃気ライン27を流れる向きが異なる。
【0033】
図2は、ブローバイガスの流れを示す説明図である。なお、
図2(a)において、自然吸気の運転領域におけるブローバイガスおよび新気の流れを実線矢印で示し、
図2(b)において、過給運転の領域におけるブローバイガスの流れを実線矢印で示す。
図2(a)に示すように、エンジン1では、自然吸気の運転領域では、バルブ102およびPCVバルブ104は開かれており、インテークマニホールド17で発生する負圧によって、クランク室6内のブローバイガスが掃気ライン27からインテークマニホールド17へ導入されるとともに、新気ライン26からクランク室6内に新気が導入される。
【0034】
一方、
図2(b)に示すように、エンジン1では、過給運転の領域では、バルブ102は開かれ、PCVバルブ104は閉じられており、吸気流路18におけるエアクリーナ22とコンプレッサ21bとの間に生じる負圧によって、新気ライン26からクランク室6内のブローバイガスが吸い出され、吸気流路18へ導入される。このとき、インテークマニホールド17内、および、インテークマニホールド17と連通する掃気ライン27内は正圧になる。
【0035】
図1に戻り、過給機21の下方には、オイルキャッチタンク28が設けられている。オイルキャッチタンク28は、その上方の過給機21と接続され、過給機21を潤滑した後のオイルを一時的に貯留する。貯留したオイルは、スカベンジポンプ29によって吸引され、吸引ライン30を介してエンジン1のオイルパンへ戻される。
【0036】
オイルキャッチタンク28は、クランクケース4内に形成されたクランク室6と、バランスライン31によって連結される。バランスライン31は、クランク室6とオイルキャッチタンク28とを連通することで、オイルキャッチタンク28内の圧力がクランク室6内の圧力と等しくなるように保ち、オイルキャッチタンク28内が、スカベンジポンプ29によるオイルの吸引で過度の負圧とならないようにしている。
【0037】
(孔開き判定装置100)
エンジン1には、掃気ライン27における孔開きを検出する孔開き判定装置100が設けられる。孔開き判定装置100は、掃気ライン27、PCVバルブ104、圧力センサ(圧力検出手段)106、108、制御装置110、および、警告部116を含んで構成される。
【0038】
図3は、掃気ライン27を示す概略図である。なお、
図3(a)は、エンジン1の停止時における掃気ライン27の状態を示している。
図3(a)に示すように、掃気ライン27は、内周部120と外周部122とを有する筒状の本体部124と、内周部120によって囲繞され、流体(ブローバイガス)が流通する流通部126と、内周部120と外周部122との間に形成され、流通部126を囲繞する中空部128とを備える。また、本体部124は、内周部120の厚さTaの方が、外周部122の厚さTbよりも薄くなるように一体形成された、中空のゴムチューブである。
【0039】
図3(b)は、エンジン1の自然吸気の運転領域における掃気ライン27の状態を示している。上記したように、エンジン1の自然吸気の運転領域では、インテークマニホールド17内が負圧となる。この場合、流通部126内も負圧となるため、
図3(a)に比べて、
図3(b)に示すように、内周部120が内側へと押し広げられる。そのため、中空部128内の圧力は低下することとなる。
【0040】
図3(c)は、エンジン1での過給運転の領域における掃気ライン27の状態を示している。上記したように、エンジン1の過給運転の領域では、インテークマニホールド17内が正圧となる。この場合、流通部126内も正圧となるため、
図3(b)に比べて、
図3(c)に示すように、内周部120が外側へと押し広げられる。そのため、中空部128内の圧力は上昇することとなる。
【0041】
PCVバルブ104は、インテークマニホールド17内の圧力P1に応じて、その開度を調整することで、クランク室6から掃気ライン27へ送られるブローバイガスの流量を調整可能となっている。
【0042】
また、
図3に示すように、圧力センサ106は、掃気ライン27に付設され、中空部128内の圧力P2を測定する。また、
図1に示すように、圧力センサ108は、インテークマニホールド17に付設され、インテークマニホールド17内の圧力P1を測定する。圧力センサ106および108は、それぞれ制御装置110に接続されており、中空部128内およびインテークマニホールド17内の圧力P1に応じた検出信号を制御装置110に出力する。そして、制御装置110は、圧力センサ106、108によって測定された圧力に応じた検出信号を受信すると、記憶部114に所定間隔で記憶する。
【0043】
制御装置110は、例えばECU(Engine Control Unit)であり、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM、フラッシュメモリ等の記憶部などを含むマイクロコンピュータでなる。制御装置110は、エンジン1全体の動作を制御するほか、本発明の判定部112、記憶部114としても機能する。
【0044】
警告部116は、例えば、運転席のメインパネルに警告灯として設けられる。そして、警告部116は、掃気ライン27における孔開きの発生時、例えば警告灯を点滅させることで、孔開きの発生を運転者に警告する。
【0045】
図4は、インテークマニホールド17内の圧力P1および中空部128内の圧力P2を示す図である(孔開き無し)である。
図4に示すように、外周部122および内周部120のいずれにも孔開きがない場合、エンジン1の運転時において、インテークマニホールド17内の圧力P1の変化に追従するように、中空部128内の圧力P2の値が変化する。エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2の値は、本体部124を形成する部材の弾性力およびインテークマニホールド17内の圧力P1に起因して変化することとなる。一方、エンジン1の停止後においては、インテークマニホールド内の圧力P1が変動しないにもかかわらず、中空部128内の圧力P2に変化が生じる。これは、エンジン1からの排熱を受けて、中空部128内の空気が体積膨張する影響で、一時的に圧力P2が上昇するためである。
【0046】
また、
図5は、インテークマニホールド17内の圧力P1および中空部128内の圧力P2を示す図である(孔開き有り)である。
図5(a)は、外周部122に孔開きが生じ、内周部120には孔開きが生じていない場合を示している。
図5(a)に示すように、外周部122に孔開きが生じ、内周部120には孔開きが生じていない場合には、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2の値の変化は、
図4の場合(孔開き無し)と比べて小さく測定され、ほとんど圧力P2の変化が測定されない。これは、外周部122に孔が開いたことにより、中空部128内の圧力が雰囲気の圧力と等しくなるためである。また、外周部122に孔開きが生じ、内周部120には孔開きが生じていない場合には、エンジン1の停止後においては、中空部128内の圧力P2の値の変化が測定されない。これは、エンジン1からの排熱を受けて、中空部128内の空気が体積膨張すると、外周部122の孔から中空部128内の空気が排出されるためである。
【0047】
また、
図5(b)は、外周部122に孔開きが生じておらず、内周部120に孔開きが生じてる場合を示している。
図5(b)に示すように、外周部122に孔開きが生じておらず、内周部120に孔開きが生じてる場合には、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2の値の変化は、
図4の場合(孔開き無し)と比べて極端に大きく測定され、インテークマニホールド17内の圧力P1の値と略一致する。これは、内周部120に孔が開いたことにより、中空部128内の圧力がインテークマニホールド17内の圧力P1と等しくなるためである。また、外周部122に孔開きが生じておらず、内周部120に孔開きが生じてる場合には、エンジン1の停止後においては、中空部128内の圧力P2の値の変化が測定されない。これは、エンジン1からの排熱を受けて、中空部128内の空気が体積膨張すると、内周部120の孔から中空部128内の空気が排出されるためである。
【0048】
また、
図5(c)は、外周部122に孔開きが生じ、内周部120にも孔開きが生じている場合を示している。
図5(c)に示すように、外周部122に孔開きが生じ、内周部120にも孔開きが生じている場合には、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2の値の変化は、
図4の場合(孔開き無し)より小さく、かつ、
図5(a)の場合(外周部122のみに孔開き有り)よりは大きく測定される。これは、内周部120に孔が開いたことにより、中空部128内の圧力がインテークマニホールド17内の圧力P1に影響を受ける一方で、外周部122に孔が開いたことにより、中空部128内の圧力の変動が抑えられるためである。また、外周部122に孔開きが生じ、内周部120にも孔開きが生じている場合には、エンジン1の停止後においては、中空部128内の圧力P2の値の変化が測定されない。これは、エンジン1からの排熱を受けて、中空部128内の空気が体積膨張すると、内周部120または外周部122の孔から、中空部128内の空気が排出されるためである。
【0049】
本実施形態では、掃気ライン27における孔開き箇所に応じて中空部128内の圧力P2の測定結果に違いが生じる点に着目して、孔開き判定を行う。以下に、孔開き判定装置100の具体的な動作について説明する。
【0050】
判定部112は、所定の判定開始条件が成立した場合に、孔開き判定処理を実行する。本実施形態では、判定開始条件は、エンジン1の停止から所定時間経過後である。すなわち、判定部112は、孔開き判定処理を1ドライビングサイクルにつき1度実行することとなる。
【0051】
判定部112は、所定の判定開始条件が成立すると、
図4または
図5に示すような、記憶部114に記憶されている、エンジン1の停止までの1ドライビングサイクルにおいて圧力センサ106によって測定されたインテークマニホールド17内の圧力P1、および、中空部128内の圧力P2を取得する。
【0052】
そして、判定部112は、取得したインテークマニホールド17内の圧力P1に基づいて第1条件を設定する。
図6は、第1条件を示す図である。本実施形態では、第1条件として、取得したインテークマニホールド17内の圧力P1に基づいて
図6中の斜線部分のような所定の範囲の圧力P3が設定される。具体的には、例えば、取得したインテークマニホールド17内の圧力P1の値に対する所定割合の範囲内(例えば、5%~70%)の圧力P3が設定される。
【0053】
外周部122および内周部120のいずれにも孔開きがない場合、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2の値は、上記で設定した第1条件の範囲内を推移することとなる。そして、エンジン1の停止後においては、中空部128内の圧力P2に変動が生じることとなる。
【0054】
一方、外周部122に孔開きが生じ、内周部120には孔開きが生じていない場合、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2の値は、上記で設定した第1条件の範囲内よりも小さい値で推移することとなる。また、エンジン1の停止後においては、中空部128内の圧力P2に変動が生じない。
【0055】
また、外周部122に孔開きが生じておらず、内周部120に孔開きが生じている場合、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2の値は、上記で設定した第1条件の範囲内よりも大きい値で推移することとなる。また、エンジン1の停止後においては、中空部128内の圧力P2に変動が生じない。
【0056】
また、外周部122に孔開きが生じ、内周部120にも孔開きが生じている場合、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2の値は、上記で設定した第1条件の範囲内を推移することとなる。また、エンジン1の停止後においては、中空部128内の圧力P2に変動が生じない。
【0057】
そのため、まず、判定部112は、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2が、上記第1条件を満たすか判定する。すなわち、中空部128内の圧力P2が、
図6に示す圧力P3の範囲内であるか判定する。
【0058】
その結果、中空部128内の圧力P2が上記第1条件を満たす、すなわち、圧力P2が圧力P3の範囲内であると判定した場合、判定部112は、エンジン1の停止後の圧力P2が第2条件を満たすか判定する。上記したように、外周部122および内周部120のいずれにも孔開きが無い場合には、エンジン1の停止後において、中空部128内の圧力P2に変化が生じ、外周部122および内周部120のいずれか、あるいは両方に孔開きが有る場合には、エンジン1の停止後において、中空部128内の圧力P2に変化が生じないこととなる。そこで、本実施形態では、第2条件として、中空部128内の圧力P2の変化が検出されない場合が設定される。
【0059】
その結果、エンジン1の停止後の中空部128内の圧力P2が第2条件を満たすと判定された場合、すなわち、エンジン1の停止後の中空部128内の圧力P2の変化が有ると判定された場合には、判定部は、外周部122に孔開き無し、内周部120に孔開き無し、と判定する。一方、エンジン1の停止後の中空部128内の圧力P2が第2条件を満たさないと判定された場合、すなわち、エンジン1の停止後の中空部128内の圧力P2の変化がないと判定された場合には、判定部112は、外周部122に孔開き有り、内周部120に孔開き有り、と判定する。
【0060】
また、中空部128内の圧力P2が上記第1条件を満たさない、すなわち、圧力P2が圧力P3の範囲外であると判定した場合、判定部112は、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2が、所定の範囲よりも大きいか判定する。その結果、中空部128内の圧力P2が、所定の範囲よりも大きいと判定した場合には、判定部112は、外周部122に孔開き無し、内周部120に孔開き有り、と判定する。一方、中空部128内の圧力P2が、所定の範囲よりも大きくないと判定した場合には、すなわち、中空部128内の圧力P2が所定の範囲より小さい場合、判定部112は、外周部122に孔開き有り、内周部120に孔開き無し、と判定する。
【0061】
そして、本実施形態では、3ドライビングサイクルに亘って、上記判定結果が同じである場合に、判定結果に応じた警告を出力する。これにより、測定誤差によって誤判定が生じることを抑制することが可能となる。
【0062】
(孔開き判定処理)
次に、孔開き判定装置100によるブローバイガス流路の孔開き判定処理の流れについて、
図7のフローチャートに基づき説明する。本実施形態では、当該孔開き判定処理をエンジン停止後において毎回実施する。
【0063】
まず、判定部112は、
図4または
図5に示すような、記憶部114に記憶されている、エンジン1の停止までの1ドライビングサイクルにおいて圧力センサ106によって測定されたインテークマニホールド17内の圧力P1、および、中空部128内の圧力P2を取得する。そして、判定部112は、取得したインテークマニホールド17内の圧力P1に基づいて第1条件を設定する(ステップS101)。
【0064】
次に、判定部112は、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2が第1条件を満たすか判定する(ステップS102)。
【0065】
その結果、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2が第1条件を満たすと判定された場合(ステップS102におけるYES)、判定部112は、エンジン1の停止後の中空部128内の圧力P2が第2条件を満たすか、すなわち、エンジン1の停止後の中空部128内の圧力P2が変化なしか判定する(ステップS103)。
【0066】
その結果、エンジン1の停止後の中空部128内の圧力P2が変化している(変化あり)判定された場合(ステップS103のNO)、判定部112は、「外周部122に孔開き無し、内周部120に孔開き無し」と判定する(ステップS104)。
【0067】
また、エンジン1の停止後の中空部128内の圧力P2が変化していない(変化なし)判定された場合(ステップS103のYES)、判定部112は、「外周部122に孔開き有り、内周部120に孔開き有り」と判定する(ステップS105)。
【0068】
一方、エンジン1の運転時における中空部内の圧力P2が第1条件を満たさないと判定された場合(ステップS102におけるNO)、判定部112は、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2が所定の範囲より大きいか判定する(ステップS106)。
【0069】
その結果、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2が所定の範囲より大きいと判定された場合(ステップS106におけるYES)、判定部112は、「外周部122に孔開き無し、内周部120に孔開き有り」と判定する(ステップS107)。
【0070】
一方、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2が所定の範囲より大きくないと判定された場合、すなわち、圧力P2が所定の範囲より小さい場合(ステップS106におけるNO)、判定部112は、「外周部122に孔開き有り、内周部120に孔開き無し」と判定する(ステップS108)。
【0071】
判定部112は、上記ステップS104、S105、S107、S108のいずれかで判定された判定結果を保存する(ステップS109)。
【0072】
判定部112は、上記ステップS109で保存された判定情報に基づいて、警告出力条件が成立したか判定する(ステップS110)。本実施形態では、「外周部122に孔開き無し、内周部120に孔開き無し」以外の同じ判定情報が3ドライビングサイクルに亘って、続けて保存された場合に、警告出力条件が成立したと判定する。
【0073】
その結果、警告出力条件が成立したと判定された場合(ステップS110のYES)、上記ステップS109において保存された判定情報に基づいた警告を出力する(ステップS111)。すなわち、例えば、上記ステップS109において「外周部122に孔開き有り、内周部120に孔開き有り」が保存され、かつ、上記ステップS110において、警告出力条件が成立したと判定された場合には、「外周部122に孔開き有り、内周部120に孔開き有り」に基づく警告を出力する。
【0074】
このとき、出力する警告の種類に応じて、警告態様を異ならせてもよい。例えば、「外周部122に孔開き有り、内周部120に孔開き有り」の判定結果に基づく警告を出力する場合には、直ちに運転手が異常を認識できるようにするとよい。一方、「外周部122に孔開き有り、内周部120に孔開き無し」、または、「外周部122に孔開き無し、内周部120に孔開き有り」の判定結果に基づく警告を出力する場合には、所定の故障コードを制御装置110内の記憶部114にストアしておき、整備者がメンテナンスの際に孔開きの発生を認識できるようにしておくとよい。
【0075】
一方、警告出力条件が成立しないと判定された場合(ステップS110のNO)には、当該孔開き判定処理を終了する。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0077】
上記実施形態では、本発明の孔開き判定装置100を水平対向4気筒エンジンに適用した例を説明したが、本発明はこれに限らず、V型エンジンや直列エンジンにも適用することができる。また、上記実施形態では、孔開き判定を行う箇所を掃気ライン27とした例を説明したが、任意の場所を設定してもかまわない。
【0078】
また、上記実施形態では、本体部124が中空のゴムチューブによって一体成型されている場合を示したが、本発明はこれに限らず、本体部124が弾性部材からなるものであれば、素材は特に限定されない。さらには、流通部126を流通する流体は、エンジン1から供給されるブローバイガスでなくともよい。
【0079】
また、上記実施形態における第1条件はあくまで例示であって、第1条件は、少なくとも、インテークマニホールド17内の圧力P1に基づいて設定されていればよい。
【0080】
また、上記実施形態では、第2条件として、中空部128内の圧力P2の変化が検出されない場合を示したが、または、中空部128内の圧力P2の変化が所定値以下の場合であるとしてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、ステップS106において、判定部112は、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2が所定の範囲より大きいか判定することとしたが、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2が、インテークマニホールド17内の圧力P1、または、雰囲気の圧力のいずれに一致するかを判定してもよい。この際、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2が、インテークマニホールド17内の圧力P1と一致すると判定された場合には、判定部112は、「外周部122に孔開き無し、内周部120に孔開き有り」と判定することができる。また、エンジン1の運転時における中空部128内の圧力P2が、雰囲気の圧力と一致すると判定された場合には、判定部112は「外周部122に孔開き有り、内周部120に孔開き無し」と判定することができる。
【0082】
また、上記実施形態では、3ドライビングサイクルに亘って、孔開きに係る同じ判定結果が導出された場合に、警告出力を行うこととしたが、1ドライビングサイクルで導出された判定結果をそのまま出力してもよい。
【0083】
また、本発明においては、過給機21は必須の構成ではなく、本発明は過給機21を搭載しないエンジンにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、孔開き判定装置に利用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 エンジン
17 インテークマニホールド
100 孔開き判定装置
104 PCVバルブ
106、108 圧力センサ(圧力検出手段)
112 判定部
120 内周部
122 外周部
124 本体部
126 流通部
128 中空部