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  • 特許-重金属含有排ガスの処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】重金属含有排ガスの処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/56 20060101AFI20230113BHJP
   F23G 7/00 20060101ALI20230113BHJP
   B01D 53/64 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B01D53/56 300
F23G7/00 F ZAB
B01D53/64
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018243589
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020104037
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】306039131
【氏名又は名称】DOWAメタルマイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 宏満
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-221418(JP,A)
【文献】特開2003-129138(JP,A)
【文献】特開2001-311589(JP,A)
【文献】特開平3-267116(JP,A)
【文献】特開2007-69130(JP,A)
【文献】特開2003-56815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/85
F23G 7/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属含有原料を、前記重金属含有原料とは別の炭化水素であるLNGを添加しつつ燃焼する燃焼工程と、
前記燃焼工程により生じる重金属含有排ガスであって窒素酸化物を含有し且つ前記重金属含有排ガス中の銅の濃度が0.07g/m3以上であり且つ700~1000℃の重金属含有排ガスに対し還元剤を添加することにより脱硝処理を行う脱硝工程と、
を有し、
前記重金属含有原料は、重金属が使用された電子部品が搭載された配線基板を含む、重金属含有排ガスの処理方法。
【請求項2】
前記還元剤は、液体アンモニア、アンモニア水および尿素水の少なくともいずれかである、請求項1記載の重金属含有排ガスの処理方法。
【請求項3】
前記重金属含有排ガス中の銅の濃度が3.0g/m3以上である、請求項1または2に記載の重金属含有排ガスの処理方法。
【請求項4】
記燃焼工程は金属製錬炉にて行われる、請求項1~のいずれかに記載の重金属含有排ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属含有排ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼により生じる燃焼排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOまたはNO、以降NOと称する。)を分解する際に触媒を使用しない無触媒脱硝法が知られている。無触媒脱硝法とは、燃焼排ガスに対して還元剤(例えばアンモニア水や尿素水)を添加する(更に具体的には吹き込む)ことにより、窒素酸化物を還元して分解し、脱硝するという方法である(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-74515号公報
【文献】特開2006-289326号公報
【文献】特開2013-94765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記無触媒脱硝法に際し、Cu、Pb、Zn、Feといった重金属またはその化合物(特にCuを例示、Cu単体もその化合物もまとめて“Cuを含有”と称する。)が、燃焼排ガス中における粉塵および煙の少なくともいずれかとして共存していると、燃焼排ガスに対する脱硝率すなわちNO除去率が著しく低下することを、本発明者らは知見した。以降、粉塵のことをダストとも称し、煙のことをヒュームとも称する。両者における固形分のことを単に“固形分”と称する。
【0005】
本発明の目的は、銅を含有する重金属含有排ガスに対して脱硝処理を効果的に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、
重金属含有原料を燃焼することにより生じる重金属含有排ガスであって窒素酸化物を含有し且つ前記重金属含有排ガスにおける銅の濃度が0.07g/m以上である重金属含有排ガスに対し、還元剤により脱硝処理を行う重金属含有排ガスの処理方法であって、
前記重金属含有原料とは別の炭化水素を添加しつつ前記重金属含有原料を燃焼させる燃焼工程と、
700~1000℃の前記重金属含有排ガスに対して前記還元剤を添加する脱硝工程と、
を有する、重金属含有排ガスの処理方法である。
【0007】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記炭化水素は、LNG、重油、メタンおよびプロパンの少なくともいずれかである。
【0008】
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記炭化水素はLNGである。
【0009】
本発明の第4の態様は、第1~第3のいずれかの態様に記載の発明において、
前記還元剤は、液体アンモニア、アンモニア水および尿素水の少なくともいずれかである。
【0010】
本発明の第5の態様は、第1~第4のいずれかの態様に記載の発明において、
前記重金属含有排ガスにおける銅の濃度が3.0g/m以上である。
【0011】
本発明の第6の態様は、第1~第5のいずれかの態様に記載の発明において、
前記重金属含有原料は廃電子機器を含み、
前記燃焼工程は金属製錬炉にて行われる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、銅を含有する重金属含有排ガスに対して脱硝処理を効果的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る重金属含有排ガスの処理方法を行う装置の概略図である。
図2図2は、実施例1~4および比較例3における、銅品位(横軸)と脱硝率(縦軸)との関係を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について説明する。本明細書における「~」は所定の数値以上かつ所定の数値以下を指す。また、天地の天の方向を上方、天地の地の方向を下方とする。
【0015】
本実施形態に係る重金属含有排ガスの処理方法は、重金属含有原料を燃焼することにより生じる重金属含有排ガスであって窒素酸化物を含有し且つ重金属含有排ガスにおける銅の濃度が0.07g/m以上である重金属含有排ガスに対し、還元剤により脱硝処理を行うものである。そのうえで少なくとも以下の工程を有する。
・前記重金属含有原料とは別の炭化水素を添加しつつ前記重金属含有原料を燃焼させる燃焼工程
・700~1000℃の前記重金属含有排ガスに対して前記還元剤を添加する脱硝工程
【0016】
前記各工程を行えるのならば、本実施形態に係る重金属含有排ガスの処理方法を行う装置には特に限定は無い。例えば金属製錬炉または金属や化学プラントの加熱炉等を用いてもよい。
【0017】
また、前記装置の用途に応じて重金属含有原料の種類も変わるが、重金属含有原料の種類には特に限定は無い。例えば、重金属含有原料として、既に廃棄された電子機器を採用してもよい。電子機器には、通常、重金属が使用された電子部品が搭載された配線基板が備わっている。本実施形態の一例では、金属製錬炉にて廃電子機器を燃焼させて熔融金属(後に回収)とし、それと共に重金属含有排ガスが発生する。ただその場合、燃焼ではなく溶錬と称することが多い。本実施形態における燃焼工程には、非鉄製錬の溶錬工程における、1000℃以上における原料の酸化加熱処理も含む。
【0018】
本明細書における重金属とは、鉄以上の比重を有する金属のことを指し、例えば、Cu、Pb、Zn、Feが挙げられる。本明細書における重金属含有原料とは、重金属単体またはその化合物(本実施形態においては銅(Cu)含有の場合を例示)を含有する原料のことを指す。また、重金属含有排ガスも、重金属単体またはその化合物を(例えばダストやヒューム中の微粒子すなわち固形分として)含有する原料のことを指す。
【0019】
本実施形態においては、重金属含有原料は廃電子機器を含むものを採用し、且つ、前記燃焼工程は金属製錬炉にて行い、前記脱硝工程は金属製錬炉と連通するボイラーにて行う場合を例示する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る重金属含有排ガスの処理方法を行う装置1の概略図である。
【0021】
前記装置1には、重金属含有原料を燃焼するための炉2と、炉2と連通するボイラー3とが備わっている。
【0022】
前記炉2には、重金属含有原料を炉2内に投入するための原料投入口21と、燃焼のための酸素、空気、燃料等を炉2内に添加するためのガス等添加口22とが備わっている。
【0023】
また、前記ボイラー3は、炉2と連通して上方に向けて延在する第1ボイラー部31と、第1ボイラー部31と連通して下方に向けて延在する第2ボイラー部32とを備える。ボイラー3により、重金属含有排ガスの熱を回収する。
【0024】
なお、前記ボイラー3のようにボイラーとしての機能を備えたものではなく、それ以外の機能を備えた煙道または単なる煙道としても構わないが、重金属含有排ガスの熱を回収してそれを他工程に利用することが効率的である。ただ、前記第1ボイラー部31は第1煙道部としてボイラーの機能を備えさせつつ、前記第2ボイラー部32の代わりに、ダクトまたはダストチャンバー部を設け、第2煙道部としても構わない。つまり、前記ボイラー3の一部を、ボイラーとしての機能以外の機能を備えた煙道としてもよい。本明細書においてはボイラー、ダクト、ダストチャンバー部等を含めて「煙道」と称する。本実施形態においては前記ボイラー3を例示する。
【0025】
重金属含有原料を燃焼することにより生じた重金属含有排ガスは、前記炉2と連通する第1ボイラー部31を下方から上方に向けて進む(図1中の白抜き矢印)。第1ボイラー部31の長尺方向の途中に、還元剤噴霧機構4を設ける。また、第1ボイラー部31の長尺方向の端すなわち天板近傍に、重金属含有排ガスの温度を調整するための水噴霧機構(不図示)を設けてもよい。
【0026】
還元剤噴霧機構4は、還元剤貯留部41と、還元剤を移送するポンプ42と、雰囲気を取り込むエアー取込部43と、第1ボイラー部31の内部を通過する重金属含有排ガスに還元剤を吹き付けるノズル44と、を備える。ノズル44は単数でもよいし複数でもよい。なお、図1中では、第1ボイラー部31の長尺方向に沿って複数設けているが、それと共にまたはそれに代えて、第1ボイラー部31の内周に沿ってノズル44を複数設けてもよい。
【0027】
なお、還元剤噴霧機構4のノズル44は第2ボイラー部32に取り付けることも可能であるが、時間が経過すると、重金属含有排ガス中の窒素が酸化してNOが増加する可能性もある。そのため、重金属含有排ガスが発生して最初に通過する第1ボイラー部31にノズル44を設けるのが好ましい。
【0028】
なお、本実施形態のボイラー3は、炉2と連通して上方に向けて延在する第1ボイラー部31と、第1ボイラー部31と連通して下方に向けて延在する第2ボイラー部32とを備える場合を例示したが、そうでなくともよい。
例えば、炉2と連通して水平方向(例えば図1の右方)に向けて延在する第1ボイラー部と、逆の水平方向(例えば図1の左方)に向けて延在する第2ボイラー部を備えてもよい。
また、ボイラーを、炉2と連通して下方に向けて延在した後に上方に向けて延在させてもよい。
【0029】
第1ボイラー部31を通過した重金属含有排ガスは、第2ボイラー部32に沿って下方へとUターンする。このUターンをスムーズに行うべく、第1ボイラー部31から第2ボイラー部32へとに移行する部分には、内径が徐々に大きくなるテーパー33を設ける。
【0030】
第2ボイラー部32から先は、公知の排ガス処理機構を設け、公知の排ガス処理に係る工程を行っても構わない。最終的には煙突(不図示)から外界に排ガスが排出される。
【0031】
以下、燃焼工程および脱硝工程について詳述する。
【0032】
燃焼工程においては重金属含有原料を燃焼する。その際に炭化水素を添加することが、本実施形態の大きな特徴の一つである。この作業により、後述の実施例の項目にて示すように、重金属含有排ガスであっても高い脱硝率を達成できる。
【0033】
燃焼工程において添加される炭化水素は、重金属含有原料とは別の物質である。つまり、該炭化水素は、重金属含有原料の燃焼の際に、重金属含有原料とは別にガス等添加口22から添加される。この炭化水素は燃料を兼ねてもよい。
【0034】
前記炭化水素の種類には特に限定は無いが、LNG、重油、メタンおよびプロパンの少なくともいずれか(特にLNG)が挙げられる。なお、本明細書におけるLNGとは、メタン(CH)を最も多く(主成分として)含有しつつ、エタン(C)、プロパン(C)、n-ブタン(n-C10)、イソブタン(i-C10)、2-メチルブタン(i-C12)などのその他飽和炭化水素成分も含有する液化天然ガスのことを指す。また、LNGのことを、メタンを主成分とする炭化水素ガスと呼んでも差し支えない。
【0035】
燃焼工程を行うことにより重金属含有排ガスが生じ、第1ボイラー部31内を上昇する。重金属含有排ガス温度は、第1ボイラー部31の側壁に設けられた温度計にて計測する。この計測結果を基に、第1ボイラー部31の長尺方向(上下方向)に沿って設けた複数のノズル44のうち、重金属含有排ガスが、無触媒脱硝法において最適な温度域である700~1000℃となっている部分のノズルを稼働させる。これにより、重金属含有排ガスに対して還元剤を添加する脱硝工程を行う。
【0036】
脱硝工程においては、無触媒にて還元剤により脱硝処理を行う。この「無触媒」とは、脱硝の際に(更に具体的に言うと還元剤が重金属含有排ガスと接触してNOが分解する際に)別途触媒は存在させないことを指す。言い方を変えると、還元剤が重金属含有排ガスと接触するタイミングの前後において、脱硝以外の用途として触媒含有フィルター等を第1ボイラー部31および第2ボイラー部32の少なくともいずれかに設けることは妨げない。
【0037】
脱硝工程の一具体例としては、700~1000℃の温度域の重金属含有排ガスに対する、還元剤噴霧機構4におけるノズル44による還元剤の吹き付けが挙げられる(図1中の黒矢印)。
【0038】
還元剤の種類には特に限定は無いが、液体アンモニア、アンモニア水および尿素水の少なくともいずれか(特に尿素水)が挙げられる。これらの化合物は、700~1000℃の温度域の重金属含有排ガスに対して脱硝効果が高い。
【0039】
本実施形態での例示すなわち重金属含有原料は廃電子機器を含み且つ前記燃焼工程は金属製錬炉で行う場合、重金属含有排ガスにおけるNO濃度は50~400ppmである。そして、還元剤の添加量は、NOの1.0倍モル以上としてもよい。いずれにせよ、本実施形態の手法ならば、該手法を適用しない場合に比べ、重金属含有排ガスに対してであっても有効に脱硝工程を行える。
【0040】
また、後述の実施例の項目にて示すように、前記燃焼工程にて生じた前記重金属含有排ガスにおける銅の濃度が0.07g/m以上(特に3.0g/m以上)である場合、本実施形態がもたらす効果すなわち重金属含有排ガスに対する無触媒での脱硝処理を顕著に効果的に行える。なお、重金属含有排ガスにおける銅の濃度(g/m)の求め方としては、例えば、燃焼工程開始から終了まで(または一定時間内)の全ガス量と、燃焼工程開始から終了まで(または一定時間内)において外界に排ガスを排出する煙突(不図示)に至る途中に設けられたバグフィルター(不図示)にて捕集された固形分中の銅の重量と、から重金属含有排ガスにおける銅の濃度(g/m)を得ることが挙げられる。
【0041】
また、同じく後述の実施例の項目にて示すように、重金属含有排ガス中の固形分における銅品位(重量%、以降同様)が高いほど脱硝率が低下する。つまり、前記燃焼工程にて生じた前記重金属含有排ガス中の銅品位が0.1%以上(特に4%以上)である場合、本実施形態がもたらす効果すなわち重金属含有排ガスに対する無触媒での脱硝処理を顕著に効果的に行うことが可能となる。
【0042】
なお、重金属含有排ガス中の銅品位は、例えばICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析装置にて求めればよい。
【0043】
以上の各工程により、銅を含有する重金属含有排ガスに対して脱硝処理を効果的に行うことが可能となる。
【0044】
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0045】
例えば、前記脱硝工程を第1脱硝工程とすると、第2ボイラー32内にてアルコールの添加による第2脱硝工程を行ってもよい。なお、第2脱硝工程には前記還元剤噴霧機構4を別途用意すれば足りる(不図示)。その際の重金属含有排ガスの温度は300~700℃であるのがよく、400~600℃がなおよい。前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、またはそれらから生じるアルデヒドもしくはカルボン酸の少なくともいずれかが挙げられる。
【実施例
【0046】
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下に記載のない内容は、前記本実施形態で述べた内容と同様とする。
【0047】
<実施例1~4>
実施例1では、先に挙げた図1に示す装置1すなわち金属製錬炉およびボイラー3により、重金属含有排ガスに対する脱硝処理を行った。
【0048】
重金属含有原料としては廃電子機器を採用し、燃焼工程で用いる炭化水素としてはLNGを採用した。燃焼工程により生じた重金属含有排ガスが700~1000℃になる第1ボイラー部31の箇所に配置したノズル44から重金属含有排ガスに向けて尿素水を噴霧した。
【0049】
そして、脱硝率(NO除去率)を測定した。なお、脱硝率を求めるために、脱硝工程前後の重金属含有排ガスにおけるNO濃度が必要となる。
脱硝工程前の重金属含有排ガスについては、第1ボイラー部31において炉2の近傍に設けられた取出口(不図示)から一部採取した。
そして、採取した重金属含有排ガスに対し、NO濃度および酸素濃度については赤外線式ガス分析計(型番URA-208、株式会社島津製作所製)を使用し、測定を行った。NOの測定方式には非分散型赤外吸収法を採用した。また、酸素の測定方式には磁気風式を採用した。
また、採取した重金属含有排ガスに対し、銅(Cu)の品位についてはICP発光分光分析装置(型番SPS5100、SIIナノテクノロジー株式会社社製、以降同様)を使用し、測定を行った。なお、Cu品位は、煙突に至る途中に設けられたバグフィルター(不図示)にて採取した固形分に対してICP発光分光分析装置による測定を行うことにより求めた。
前記各測定により、脱硝工程前のNO濃度および酸素濃度、銅(Cu)の品位、ならびに重金属含有排ガスにおける銅の濃度を求めた。
脱硝工程後の重金属含有排ガスについては、最終的に煙突から排出される排ガスを一部採取し、前記手法と同様の手法でNO濃度および酸素濃度を求めた。
NO濃度は酸素濃度への依存性があるため、NO濃度を酸素濃度にて除したうえで、NO濃度の減少度合いを百分率にて示したのが本明細書における脱硝率である。
【0050】
実施例1では重金属含有排ガスにおける銅の濃度を9.3g/m(Cu品位を13.9%)とし、実施例2では該銅の濃度を7.3g/m(Cu品位を10.1%)、実施例3では該銅の濃度を7.8g/m(Cu品位を9.5%)、実施例4では該銅の濃度を3.8g/m(Cu品位を5.1%)とし、脱硝率を得た。
実施例1では、脱硝工程前の重金属含有排ガスの酸素濃度(重量%、以降同様)は11.5%、温度は888℃とし、尿素水の添加量は0.9m/hとした。
実施例2では、脱硝工程前の重金属含有排ガスのNO濃度は実施例1に比べて1.7倍とし、酸素濃度は10.5%、温度は873℃とし、尿素水の添加量は0.6m/hとした。
実施例3では、脱硝工程前の重金属含有排ガスのNO濃度は実施例1に比べて1.5倍とし、酸素濃度は9.5%、温度は916℃とし、尿素水の添加量は1.1m/hとした。
実施例4では、脱硝工程前の重金属含有排ガスのNO濃度は実施例1に比べて1.7倍とし、酸素濃度は10.3%、温度は885℃とし、尿素水の添加量は0.7m/hとした。
【0051】
<比較例1~2>
比較例1では、実施例1だとLNGを添加したことに代え、微粉炭を添加した他は、実施例1と同様の試験を行った。なお、重金属含有排ガスにおける銅の濃度は4.5g/m(Cu品位は7.9%)とした。また、脱硝工程前の重金属含有排ガスのNO濃度は実施例1に比べて1.4倍とし、酸素濃度は8.6%、温度は857℃とし、尿素水の添加量は0.3m/hとした。
比較例2も同様に、実施例1だとLNGを添加したことに代え、微粉炭を添加した他は、実施例1と同様の試験を行った。なお、重金属含有排ガスにおける銅の濃度は3.8g/m(Cu品位は6.9%)とした。また、脱硝工程前の重金属含有排ガスのNO濃度は実施例1に比べて1.9倍とし、酸素濃度は4.1%、温度は936℃とし、尿素水の添加量は1.9m/hとした。
【0052】
実施例1~4および比較例1~2における試験条件および脱硝率をまとめたものが以下の表1である。
【表1】
【0053】
<結果その1>
実施例1~4では、銅の濃度の値にかかわらず、良好な脱硝率を実現できた。言い方を変えると、実施例1~4だと、Cu品位が4%以上であっても49%以上の脱硝率を確保できた。
比較例1~2では、炭化水素ではない微粉炭だと、良好な脱硝率を実現できないどころか、尿素水のアンモニアがリークしてしまい脱硝率がマイナスとなった。つまり、比較例1~2では、尿素水を噴霧しても窒素酸化物が除去されず、逆に上昇した。この理由は、尿素中のアンモニアが酸化されて窒素酸化物が生成されたためである。
【0054】
<比較例3>
比較例3では、Cu品位を細かく変化させた試料を複数用意し、比較例1と同様の試験を行った。
【0055】
<結果その2>
図2は、実施例1~4および比較例3における、銅品位(横軸)と脱硝率(縦軸)との関係を示すプロットである。このプロットの比較例3の結果には、先の比較例1および比較例2の結果も含まれている。
【0056】
図2を見ると、燃料に微粉炭を使用した比較例3では、ダストCu品位(ひいては重金属含有排ガスにおける銅の濃度)が高くなるにつれて脱硝率が低下した。脱硝率がマイナスになっている条件では、尿素を噴霧すると、窒素酸化物が除去されずに、逆に上昇していた。
その一方で、燃料にLNGを使用した実施例では銅の濃度(Cu品位)が高いにもかかわらず、いずれの条件でも49%以上と高い脱硝率が得られた。
【符号の説明】
【0057】
1…装置
2…炉
21…原料投入口
22…ガス等添加口
3…ボイラー
31…第1ボイラー部
32…第2ボイラー部
33…テーパー
4…還元剤噴霧機構
41…還元剤貯留部
42…ポンプ
43…エアー取込部
44…ノズル
図1
図2