(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ラメルテオン含有フィルムコーティング錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/343 20060101AFI20230113BHJP
A61K 9/30 20060101ALI20230113BHJP
A61K 9/36 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230113BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230113BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
A61K31/343
A61K9/30
A61K9/36
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/38
A61P25/20
(21)【出願番号】P 2019018286
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2021-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306020438
【氏名又は名称】日本ジェネリック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆久
(72)【発明者】
【氏名】藤垣 泉
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-212063(JP,A)
【文献】特開2008-255064(JP,A)
【文献】特開2016-135755(JP,A)
【文献】特開2016-006038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/343
A61K 9/30
A61K 9/36
A61K 47/02
A61K 47/32
A61K 47/34
A61K 47/38
A61P 25/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラメルテオン含有素錠を、ヒプロメロース
及びヒドロキシプロピルセルロースでコーティング
するか、
またはポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーでコーティングした
、フィルムコーティング錠剤。
【請求項2】
ヒプロメロース及びヒドロキシプロピルセルロースでコーティングした請求項1記載のフィルムコーティング錠剤であって、ヒドロキシプロピルセルロースの含有量がフィルムコーティング錠剤のコーティング部当たり10重量%以上である、フィルムコーティング錠剤。
【請求項3】
ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーでコーティングした請求項1記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項4】
更にコーティングに遮光剤を含む請求項1~3記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項5】
遮光剤が酸化チタンおよび黄色三二酸化鉄である請求項4記載のフィルムコーティング錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラメルテオンを安定に含有する、フィルムコーティング錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ラメルテオンは睡眠誘発作用を示すメラトニン受容体作動薬であるが、光に不安定であるため上市製剤は安定化を目的にコーティングが施されている。一方、ヒプロメロースに代表される水溶性皮膜にはフィルム強度の向上、展延性向上などを目的に可塑剤としてポリエチレングリコールが汎用されているが、ラメルテオンとポリエチレングリコールの配合適性が悪いことから、ポリエチレングリコールに代わる可塑剤が必要であった。
【0003】
そこで、ポリエチレングリコールに代わる可塑剤として、特許文献1には、コポリビドンを使用した安定性の良好なラメルテオン含有フィルムコーティング錠についての記載がある。
【0004】
しかしながら、コーティング層に含まれるコーティング剤のラメルテオンに対する安定性効果については、何ら開示や示唆もなく、ラメルテオンを安定化させるコーティング剤の探索は未だ課題のひとつであった。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コーティング剤により、ラメルテオンの安定性を向上させる新たな手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、驚くべきことに、ヒプロメロースと、ヒドロキシプロピルセルロース又はプロピレングリコールを組合わせてコーティング剤に用いることで、もしくはポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーをコーティング剤に用いることでラメルテオオンの類縁物質を著しく抑制することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は<1>ラメルテオン含有素錠を、ヒプロメロースと、ヒドロキシプロピルセルロース又はプロピレングリコールでコーティングしたフィルムコーティング錠剤を提供する、もしくはポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーでコーティングしたフィルムコーティング錠剤を提供する。
【0010】
<2>ヒプロメロース及びプロピレングリコールでコーティングした前記<1>記載のフィルムコーティング錠剤を提供する。
<3>ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーでコーティングした前記<1>記載のフィルムコーティング錠剤。
<4>更にコーティングに遮光剤を含む前記<1>~<3>記載のフィルムコーティング錠剤を提供する。
【0011】
<5>遮光剤が酸化チタンおよび黄色三二酸化鉄である前記<4>記載のフィルコーティング錠剤を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のラメルテオン含有フィルムコーティング錠剤は、有効成分であるラメルテオンの類縁物質生成が抑制されているため、ラメルテオンの安定性が良好な医薬品として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、ラメルテオン(N-{2-[(8S)-1,6,7,8-Tetrahydro-2H-indeno[5,4-b]furan-8-yl]ethyl}propanamide)は、以下の化学式により表される化合物である。ラメルテオンは、例えば、特許第2884153号公報に記載の方法によって製造されうる。また、ラメルテオンの含有量は、1フィルムコーティング錠剤あたり1~20重量%が好ましく、5~10重量%がより好ましい。
【化1】
【0014】
本発明において、コーティング剤とは、例えば、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールアクリル酸メタクリル酸メチル共重合体およびポリエチレングリコールなどが挙げられるが、ラメルテオンの安定性の観点から、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマーが好ましく、ヒプロメロース、プロピレングリコールがより好ましい。また含有量は、ヒプロメロースで、1フィルムコーティング錠のコーティング部当たり50~90重量%が好ましく、60~80重量%がより好ましく、ヒドロキシプロピルセルロースで、1フィルムコーティング錠のコーティング部当たり5~30重量%が好ましく、10~20重量%がより好ましく、プロピレングリコールで、1フィルムコーティング錠のコーティング部当たり5~30重量%が好ましく、10~20重量%がより好ましい。
【0015】
本発明において、遮光剤とは、例えば、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、食用黄色5号、食用赤色102号が挙げられ、酸化チタン、黄色三二酸化鉄がより好ましい。
【0016】
本発明において、添加剤とは、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤を言うが、特にこれらに制限されない。当該添加剤以外に、当技術分野で用いられる着色剤、抗酸化剤、増粘剤、緩衝化剤、甘味付与剤、フレーバー付与剤、又はパフューム剤などを本発明のフィルムコーティング錠剤に配合してもよい。甘味付与剤としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、マルチトール、グリセリン、ラクチトール、ガラクチトールなどが挙げられる。
【0017】
本発明において、賦形剤として、例えばD-マンニトール、乳糖(乳糖水和物、噴霧乾燥乳糖、流動層造粒乳糖、異性化乳糖、還元乳糖等)、トウモロコシデンプン、ショ糖、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールなどが挙げられる。本発明においては、乳糖、トウモロコシデンプンが好ましい。
【0018】
本発明において、結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。なお、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースは、本発明において、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロースはコーティング剤として使用することもできる。
【0019】
本発明において、崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、アルギン酸、部分アルファー化デンプン、ベントナイト等が挙げられる。
【0020】
本発明において、滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルクなどが挙げられる。
【0021】
本発明において、フィルムコーティング錠剤は、口腔内崩壊錠にコーティング剤でコーティングを施してもよい。
【0022】
本発明のフィルムコーティング錠剤は、通常の錠剤製造方法により製造することが可能である。
具体的には、本発明のラメルテオン含有フィルムコーティング錠剤は、例えば、ラメルテオンと賦形剤を混合し、結合剤を溶解した液を噴霧しながら、流動層造粒機で造粒後、ステンレス篩で整粒し、その整粒品に滑沢剤を混合後、打錠し、素錠を得えた後、その素錠に、コーティング剤を噴霧することで得られる。
【0023】
以下に、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
ラメルテオン32g、乳糖水和物376g、トウモロコシデンプン80gを混合し、ヒドロキシプロピルセルロース(粘度2~2.9mPa・s)16gを精製水250.7gに溶解した液を噴霧しながら流動層造粒機で造粒後、目開き850μmのステンレス篩で整粒した。この整粒品252gにフマル酸ステアリルナトリウム8gを混合後、打錠し、ラメルテオン含有素錠を得た。さらに、ヒプロメロース104.7g、ヒドロキシプロピルセルロース(粘度2~2.9mPa・s)21gを精製水1350gに溶解した、酸化チタン15g、クラウンタルク9g、黄色三二酸化鉄0.3gが分散された液を噴霧しながらフィルムコーティング機で1錠当たり5mgのコーティングを行いフィルムコーティング錠剤を得た(1錠当たりの重量:135mg)。
【実施例2】
【0025】
ラメルテオン32g、乳糖水和物376g、トウモロコシデンプン80gを混合し、ヒドロキシプロピルセルロース(粘度2~2.9mPa・s)16gを精製水250.7gに溶解した液を噴霧しながら流動層造粒機で造粒後、目開き850μmのステンレス篩で整粒した。この整粒品252gにフマル酸ステアリルナトリウム8gを混合後、打錠し、ラメルテオン含有素錠を得た。さらに、ヒプロメロース104.7g、プロピレングリコール21gを精製水1350gに溶解した、酸化チタン15g、クラウンタルク9g、黄色三二酸化鉄0.3gが分散された液を噴霧しながらフィルムコーティング機で一錠当たり5mgのコーティングを行いフィルムコーティング錠剤を得た(1錠当たりの重量:135mg)。
【実施例3】
【0026】
ラメルテオン32g、乳糖水和物376g、トウモロコシデンプン80gを混合し、ヒドロキシプロピルセルロース(粘度2~2.9mPa・s)16gを精製水250.7gに溶解した液を噴霧しながら流動層造粒機で造粒後、目開き850μmのステンレス篩で整粒した。この整粒品252gにフマル酸ステアリルナトリウム8gを混合後、打錠し、ラメルテオン含有素錠を得た。さらに、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー125.7gを精製水1350gに溶解した、酸化チタン15g、クラウンタルク9g、黄色三二酸化鉄0.3gが分散された液を噴霧しながらフィルムコーティング機で一錠当たり5mgのコーティングを行いフィルムコーティング錠剤を得た(1錠当たりの重量:135mg)。
【0027】
(比較例1)
ラメルテオン32g、乳糖水和物376g、トウモロコシデンプン80gを混合し、ヒドロキシプロピルセルロース(粘度2~2.9mPa・s)16gを精製水250.7gに溶解した液を噴霧しながら流動層造粒機で造粒後、目開き850μmのステンレス篩で整粒した。この整粒品252gにフマル酸ステアリルナトリウム8gを混合後、打錠し、ラメルテオン含有素錠を得た。さらに、ヒプロメロース104.7g、マクロゴール6000 21gを精製水1350gに溶解した、酸化チタン15g、クラウンタルク9g、黄色三二酸化鉄0.3gが分散された液を噴霧しながらフィルムコーティング機で一錠当たり5mgのコーティングを行いフィルムコーティング錠剤を得た(1錠当たりの重量:135mg)。
【0028】
実施例1~3および比較例の組成は表1の通り。
【0029】
【0030】
(試験例1)
実施例1~3及び比較例1の錠剤を60℃にて密栓の条件下で1ヶ月保存し、ラメルテオン由来の総未知類縁物質量を測定することにより、保存安定性を評価した。
【0031】
<評価方法>
ラメルテオンが約1mg/mLとなるように水/アセトニトリル混液(1:1)で溶解し、メンブランフィルター(0.45μm)でろ過し、試料溶液とした。この液1mLを正確にとり、水/アセトニトリル混液(1:1)を加えて正確に100mLとし標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液10μLずつを正確にとり、次の条件で高速液体カラムクロマトグラフィー(HPLC)法により測定した。類縁物質の含量%は次式により求めた。
ラメルテオン由来総類縁物質の量(%)=AT/AS
AS:標準溶液のラメルテオンのピーク面積
AT:試料溶液のラメルテオン及び,ラメルテオンに対する相対保持時間約3.96の製剤添加剤由来以外のピークの合計面積
【0032】
<測定条件>
HPLC条件
検出器:紫外可視吸光光度計,測定波長230nm
カラム:XBridge Phenyl,5μm,内径:4.6mm,長さ:250mm
カラム温度:30℃
移動相(A):
0.1%トリエチルアミンを含む0.05mol/Lリン酸水素二カリウム溶液(pH6.8)
移動相(B):アセトニトリル
流量:1mL/min
グラジエントプログラム
【0033】
その結果、表1に示す通り、実施例1~3は、比較例1と比べ、保存安定性に優れている錠剤であることが示された。
【0034】