(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】車載装置
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20230113BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230113BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20230113BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20230113BHJP
【FI】
B60R13/08
H05K5/02 L
H05K5/03 A
B60K6/24 ZHV
(21)【出願番号】P 2019051897
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立石 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 之人
(72)【発明者】
【氏名】今村 友厚
(72)【発明者】
【氏名】根本 剛幹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広行
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-290686(JP,A)
【文献】特開2014-028603(JP,A)
【文献】実開昭56-161157(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/08
H05K 5/02
H05K 5/03
B60K 6/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1当接面を有する第1カバー部材と、
前記第1当接面と当接する第2当接面を有し、前記第1カバー部材とともに電気機器を収容する内部空間が形成される第2カバー部材と、
前記第1カバー部材および前記第2カバー部材の一方または双方に形成され、前記第1当接面および前記第2当接面よりも、前記第1当接面と前記第2当接面との当接方向の外側まで延在し、前記第1カバー部材および前記第2カバー部材における隣接部位よりも、前記内部空間から前記第1カバー部材および前記第2カバー部材の外側へ音を伝達し易い透過部と、
前記当接方向に貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔の内側に、前記第1当接面、前記第2当接面、および、前記透過部が位置する防音カバーと、
を備える車載装置。
【請求項2】
前記透過部は、前記隣接部位よりも肉厚が薄い請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記防音カバーは、前記透過部よりも前記当接方向の外側まで延在する請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記防音カバーにおける前記当接方向の端部と、前記透過部との距離は、前記隣接部位の肉厚よりも長い請求項3に記載の車載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータなどの電気機器では、スイッチングによる騒音が生じる。そこで、特許文献1では、ケース本体の開口内に配する防音材によって、開口から外側に漏れる騒音が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載の構成では、ケース本体の開口以外の壁部から外側に漏れる騒音を抑制することができない。すべての壁部を覆うように防音材を設けると、質量が増加してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、質量増加を抑制しつつ、騒音を抑制することができる車載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明による車載装置は、第1当接面を有する第1カバー部材と、第1当接面と当接する第2当接面を有し、第1カバー部材とともに電気機器を収容する内部空間が形成される第2カバー部材と、第1カバー部材および第2カバー部材の一方または双方に形成され、第1当接面および第2当接面よりも、第1当接面と第2当接面との当接方向の外側まで延在し、第1カバー部材および第2カバー部材における隣接部位よりも、内部空間から第1カバー部材および第2カバー部材の外側へ音を伝達し易い透過部と、当接方向に貫通する貫通孔を有し、貫通孔の内側に、第1当接面、第2当接面、および、透過部が位置する防音カバーと、を備える。
【0007】
透過部は、隣接部位よりも肉厚が薄くてもよい。
【0008】
防音カバーは、透過部よりも当接方向の外側まで延在してもよい。
【0009】
防音カバーにおける当接方向の端部と、透過部との距離は、隣接部位の肉厚よりも長くてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、質量増加を抑制しつつ、騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】PCUのうち、電気機器、第1カバー部材、および、第2カバー部材を分解した図である。
【
図3】第1カバー部材の
図2におけるIII矢視図である。
【
図4】組み付け後の電気機器、第1カバー部材、および、第2カバー部材の図である。
【
図5】防音カバーを取り付けた後のPCUの図である。
【
図6】防音カバーを取り付けた後のPCUを、
図3におけるVI-VI線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、車両100の構成を説明する図である。なお、以下では、車両100の進行方向を前方向、車両100の後退方向を後方向、車両100の進行方向に対して右側を右方向、車両100の進行方向に対して左側を左方向、鉛直上方向を上方向、鉛直下方向を下方向として説明する。
【0014】
図1に示すように、車両100は、エンジン102およびモータジェネレータ104が設けられたハイブリッド車両である。エンジン102およびモータジェネレータ104は、車体100aの前方向側のボンネット内に配されている。
【0015】
車両100には、バッテリー106およびPCU108(パワーコントロールユニット)が設けられている。バッテリー106は、車体100aの後方向側のトランクルームの下方に配されている。PCU108(車載装置)は、車体100aの後方向側の後部座席における下方に配されている。
【0016】
車両100は、エンジン102に優先してモータジェネレータ104で走行するモータ走行モード、および、モータジェネレータ104とエンジン102とを併用して走行するエンジン併用モードなどの走行モードが準備されている。
【0017】
PCU108は、コンバータやインバータなどで構成される電気機器がケーシングの内部に収容されており、モータジェネレータ104およびバッテリー106と電気的に接続されている。モータジェネレータ104が駆動源として機能する場合、バッテリー106に蓄電された電力を、PCU108のインバータが直流電力から交流電力に変換する。PCU108のコンバータは、交流電力の電圧を昇圧してモータジェネレータ104に供給する。モータジェネレータ104は、供給された電力によって駆動する。
【0018】
モータジェネレータ104が発電機として機能する場合、エンジン102の動力によってモータジェネレータ104で発電して得られた交流電力を、PCU108のコンバータが降圧する。PCU108のインバータは、降圧された交流電力を直流電力に変換してバッテリー106に供給する。バッテリー106は、供給された電力を充電する。
【0019】
図2は、PCU108のうち、電気機器110、第1カバー部材120、および、第2カバー部材160を分解した図である。電気機器110は、例えば、大凡直方体形状である。第1カバー部材120および第2カバー部材160は、大凡同形状である。
【0020】
第1カバー部材120の外形は、大凡直方体形状である。第1カバー部材120は、第2カバー部材160と当接する第1当接面122を有する。第1カバー部材120には、カバー穴124が設けられる。カバー穴124は、第1当接面122側に開口する。カバー穴124は、大凡直方体形状である。
【0021】
第1カバー部材120のうち、外側面(外周面)を形成する側壁部126には、フランジ部128が形成される。フランジ部128は、側壁部126のうち、第2カバー部材160側に位置する。フランジ部128のうち、第2カバー部材160側の端面は、第1当接面122の一部となる。
【0022】
第2カバー部材160は、第1カバー部材120と当接する第2当接面162を有する。第2カバー部材160には、カバー穴164が設けられる。カバー穴164は、第2当接面162側に開口する。カバー穴164は、大凡直方体形状である。
【0023】
第2カバー部材160のうち、外側面(外周面)を形成する側壁部166には、フランジ部168が形成される。フランジ部168は、側壁部166のうち、第1カバー部材120側に位置する。フランジ部168のうち、第1カバー部材120側の端面は、第2当接面162の一部となる。
【0024】
図3は、第1カバー部材120の
図2におけるIII矢視図である。
図3に示すように、フランジ部128は、側壁部126の全周に亘って延在する。
図3では、第1カバー部材120について図示したが、第2カバー部材160についても同様の構成である。
【0025】
図4は、組み付け後の電気機器110、第1カバー部材120、および、第2カバー部材160の図である。
図4中、電気機器110をクロスハッチングで示す。
図4に示すように、第1カバー部材120の第1当接面122、および、第2カバー部材160の第2当接面162が当接する。このとき、2つのカバー穴124、164によって、内部空間Sが形成される。電気機器110は、内部空間Sに収容される。
【0026】
図5は、防音カバー200を取り付けた後のPCU108の図である。
図5に示すように、防音カバー200は、例えば、発砲ウレタンなどの高周波音を吸音する材質で構成される。防音カバー200は、貫通孔202を有する。
【0027】
貫通孔202は、防音カバー200を、第1当接面122と第2当接面162との当接方向(
図5中、上下方向、以下、単に当接方向という)に貫通する。防音カバー200は、例えば、環状である。貫通孔202の内側には、第1当接面122、第2当接面162、および、2つのフランジ部128、168が位置する。防音カバー200は、第1当接面122、第2当接面162、および、2つのフランジ部128、168を全周に亘って囲繞する。
【0028】
図6は、防音カバー200を取り付けた後のPCU108を、
図3におけるVI-VI線で切断した断面図である。
図6では、第1当接面122、第2当接面162近傍を抽出して示す。
【0029】
図6に示すように、第1カバー部材120には、溝部130が形成される。溝部130は、側壁部126のうち、カバー穴124側に形成される。溝部130は、第1当接面122から、第2カバー部材160から離隔する方向(
図6中、上側)に延在する。溝部130は、第1当接面122とカバー穴124の境界部に形成される。
【0030】
同様に、第2カバー部材160には、溝部170が形成される。溝部170は、側壁部166のうち、カバー穴164側に形成される。溝部170は、第2当接面162から、第1カバー部材120から離隔する方向(
図6中、下側)に延在する。溝部170は、第2当接面162とカバー穴164の境界部に形成される。
【0031】
第1カバー部材120、第2カバー部材160のうち、溝部130、170が形成された部位の肉厚は、溝部130、170の形成されていない部位よりも薄くなる。この溝部130、170が形成されて薄くなった部位が、透過部210として機能する。
【0032】
すなわち、透過部210は、第1カバー部材120および第2カバー部材160の双方に形成される。ただし、透過部210は、第1カバー部材120および第2カバー部材160の一方のみに形成されてもよい。
【0033】
透過部210は、第1当接面122および第2当接面162よりも、当接方向の外側まで延在する。すなわち、透過部210は、第1当接面122よりも、
図6中、上側まで延在する。透過部210は、第2当接面162よりも、
図6中、下側まで延在する。透過部210は、防音カバー200の貫通孔202の内側に位置する。透過部210の肉厚は、第1カバー部材120および第2カバー部材160における透過部210との隣接部位132、172の肉厚よりも、薄い。
【0034】
そのため、透過部210は、隣接部位132、172よりも、内部空間Sから第1カバー部材120および第2カバー部材160の外側へ音を伝達し易い。電気機器110から発した音は、相対的に音が伝達し易い透過部210に向かう傾向がある。透過部210を通過した音は、防音カバー200によって吸音される。
【0035】
このように、防音カバー200の貫通孔202の内側に透過部210を位置させることで、騒音が抑制される。電気機器110の音が透過部210に向かうことから、防音カバー200を、透過部210近傍にのみ設ければ騒音が抑制される。そのため、防音カバー200が、第1カバー部材120および第2カバー部材160の全体を覆う場合に比べ、質量やコストを低減することが可能となる。
【0036】
また、第1当接面122および第2当接面162には錆が生じやすい。そこで、第1当接面122、第2当接面162、および、その近傍には防錆剤が塗布される。ここでは、防音カバー200によって第1当接面122および第2当接面162を囲繞しているため、防音カバー200は、上記の防音に加えて防錆の機能も有する。
【0037】
また、防音カバー200は、透過部210よりも当接方向の外側まで延在する。そのため、透過部210を
図6中、左側に通過した音の多くは、防音カバー200によって吸音される。
【0038】
また、透過部210の隣接部位132、172の肉厚を肉厚Aとする。防音カバー200のうち、当接方向の一方側(
図6中、上側)の端部204と、透過部210との距離Bは肉厚Aよりも長い。同様に、防音カバー200のうち、当接方向の他方側(
図6中、下側)の端部206と、透過部210との距離Cは肉厚Aよりも長い。ここでは、距離Bと距離Cは等しいものとする。ただし、距離Bと距離Cは異なっていてもよい。
【0039】
上記のように、距離B、Cは肉厚Aよりも長い。肉厚Aよりも肉厚の短い透過部210に向かった音は、
図6中、左上方向や左下方向に透過部210を通過したとしても、肉厚Aよりも長い距離となる経路を取り難い。そのため、透過部210を通過した音は、ほとんど防音カバー200によって吸音される。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0041】
例えば、上述した実施形態では、透過部210は、隣接部位132、172よりも肉厚が薄い場合について説明した。しかし、例えば、第1カバー部材120、第2カバー部材160が金属の場合、熱処理によって、透過部210が、隣接部位132、172よりも音を伝達し易くなっていてもよい。
【0042】
また、上述した実施形態では、防音カバー200は、透過部210よりも当接方向の外側まで延在する場合について説明した。しかし、防音カバー200は、透過部210と当接方向の位置が等しくてもよいし、透過部210よりも当接方向の内側までしか延在していなくてもよい。
【0043】
また、上述した実施形態では、防音カバー200のうち、当接方向の端部204、206と、透過部210との距離B、Cは、隣接部位132、172の肉厚Aよりも長い場合について説明した。しかし、距離B、Cは、肉厚Aと等しくてもよいし、肉厚Aより短くてもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、溝部130、170は、側壁部126、166のうち、カバー穴124、164側に形成される場合について説明した。しかし、溝部130、170は、側壁部126、166のうち、カバー穴124、164と反対側(内部空間Sの外側)に形成されてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、電気機器110としてインバータやコンバータを例に挙げて説明した。しかし、電気機器110は、これに限定されない。例えば、電気機器110は、電動ポンプであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、車載装置に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
108 PCU(車載装置)
110 電気機器
120 第1カバー部材
122 第1当接面
132、172 隣接部位
160 第2カバー部材
162 第2当接面
200 防音カバー
202 貫通孔
204、206 端部
210 透過部
A 肉厚
B、C 距離
S 内部空間