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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】電子連動装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 19/06 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
B61L19/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019190137
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021062852
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】潮見 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】遠山 喬
(72)【発明者】
【氏名】寺田 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】石毛 隆晴
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】古川 伸一
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-205877(JP,A)
【文献】特開2004-058793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駅の連動論理の処理を行う電子連動装置において、該電子連動装置は、
少なくとも、連動論理処理を行う制御部とメモリを有する連動処理部と、
前記電子連動装置に接続されたデータ書換端末とを備え、
前記連動処理部により、複数の駅の連動論理の処理を駅ごとの1又は複数のセグメントに割り当てた連動論理を処理し、
前記連動処理部は、該連動処理部のセグメント単位の処理能力に基づき、駅ごとの要求処理量をセグメント数として規定し、複数の駅のセグメント数の総和が該連動処理部の処理周期ごとのセグメント数以下に設定されている、電子連動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子連動装置において、
前記連動処理部は、前記データ書換端末から入力される、処理周期単位で実行される各セグメントの処理内容を記載したセグメント割り当てデータに基づき、セグメントの処理順を決めて連動論理を処理する、電子連動装置。
【請求項3】
請求項記載の電子連動装置において、
前記連動処理部は、前記セグメント割り当てデータに基づき、セグメントに割り当てた処理の要否、出力の要否を行う、電子連動装置。
【請求項4】
請求項に記載の電子連動装置において、
前記連動処理部は、前記セグメント割り当てデータに基づき、処理駅の追加を行う、電子連動装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載した電子連動装置を複数台備えた電子連動装置システムにおいて、
前記連動処理部の1台をマスター機、他をスレーブ機と規定し、
前記マスター機は、各スレーブ機と相互にポーリングを通じて死活監視を行い、
故障の生じた電子連動装置が実行している連動論理の処理を、他の電子連動装置に、前記セグメント割り当てデータ単位で移行する、電子連動装置システム。
【請求項6】
複数の駅の連動論理の処理を行う電子連動装置において処理する連動論理の処理方法において、
前記電子連動装置は、少なくとも、連動論理の処理を行う制御部とメモリを有する連動処理部と、該電子連動装置に接続されたデータ書換端末とを備えており、
前記連動処理部は、予め、処理周期単位のセグメント数を決定し、
前記連動処理部のセグメント単位の処理能力を決定し、
前記複数の駅の現場機器から入力される要求処理量を、前記連動処理部のセグメント単位の処理能力に基づきセグメント数を求め、該セグメント数が前記連動処理部の処理周期単位のセグメント数以下であるように、駅の数を決定する、連動論理の処理方法。
【請求項7】
請求項に記載の前記連動論理の処理方法において、
前記データ書換端末から入力される、処理周期単位で実行される各セグメントの処理内容を記載したセグメント割り当てデータに基づき、セグメントの処理順、セグメントへの連動論理の追加、変更、削除を行う、連動論理の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子連動装置に関する。更に具体的には、本発明は、複数の駅の連動論理処理を行う電子連動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連動装置は、駅構内の信号保安設備の動作に関して、一定の論理をもって動作を規定することにより、列車の衝突や追突、接触などの事象のほか、分岐器における途中転換等が発生しないよう信号設備を制御する装置である。その実現のため、列車等を走行させる進路を確保するための操作に対して、軌道回路等からの列車検知情報、電気転てつ機等からの分岐器開通方向の表示情報、競合する進路の確保等の情報を取得して、安全が確保される一定の論理が成立する条件が整った場合にのみ、進路の確保(鎖錠)と分岐器開通方向の転換及び鎖錠を行い、関係する信号機の制御を行う。
【0003】
電子連動装置は、現場機器間の状態を取得して論理の処理を電子計算機で行い、現場機器等に対する制御情報を出力する連動装置のひとつである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】森川、遠藤、川谷、荒:結線入力方式による新しい電子連動装置(K-5形)、京三サーキュラー、Vol.41, No.l, 1991
【文献】小川、中村:3重系切替方式フェールセーフCPUの開発、鉄道と電気技術、Vol.22, No.l, 2011
【文献】寺田、潮見、藤田、小野、遠山:クラウド型連動装置の構築に向けて、第24回鉄道技術連合シンポジウム J-Rail2017 講演論文集, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1によると、複数の駅の連動論理の処理を行う電子連動装置は、一定の周期ごとに、複数の駅のデータをまとめて、出力処理、入力処理、論理演算等の処理を行っている。従って、その中の1つの駅の処理を変更する場合、他の駅の連動処理を停止する必要があった。即ち、他の駅の処理を継続しながら1つの駅の論理を書き換えることは出来ない。
【0006】
非特許文献2には、一般的な2つの方式の電子連動装置が開示されている。第1の方式は、一つの処理装置上に3個の処理部(CPU等)を設けて、3重系多数決処理を行うことで、信頼性、安全性及び安定性を保つ方式である。第2の方式は、一つの処理装置上に同一構成の常用と予備の2つの処理系(I系,II系)を設け、各処理系には2個の処理部(CPU等)が設けられている。2個の処理部の比較照合により一致状態が成立しない場合、その処理系は故障と判断され処理を停止し安全性を確保するとともに、他方の処理系に切り替え、安定性を確保する方式である。現在の主流は、第2の方式であるが、常に待機予備の処理系を確保する必要がある。
【0007】
非特許文献3「クラウド型連動装置の構築に向けて」は、本出願人の一人である鉄道総研によるクラウド型連動装置に関する提案である。複数駅の連動論理を処理するクラウド型連動装置を実現するためには、スケーラビリティの確保が重要と指摘している。本発明は、複数駅のクラウド型連動装置の一形態として、考案されたものである。
【0008】
ここで、本発明は、複数の駅及び/又は線区(本出願書類では、単に「複数の駅」という。)の連動論理処理を可能にした新規な電子連動装置を提供することを目的とする。
更に、本発明は、上記電子連動装置が複数台有る場合、1台のマスター機が他のスレーブ機を動的に管理する電子連動装置システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子連動装置は、一面では、複数の駅の連動論理の処理を行う電子連動装置であって、該電子連動装置は、少なくとも、連動論理処理を行う制御部とメモリを有する連動処理部と、前記電子連動装置に接続されたデータ書換端末とを備え、前記連動処理部により、複数の駅の連動論理の処理を駅ごとの1又は複数のセグメントに割り当てて順次処理している。ここで、セグメントとは、処理能力を定めた単位であり、連動処理部の処理周期ごとの実行可能な処理能力は1または複数のセグメントとなる。
【0010】
更に、前記電子連動装置では、前記連動処理部は、該連動処理部のセグメント単位の処理能力に基づき、駅ごとの要求処理量をセグメント数として規定し、複数の駅のセグメント数の総和が該連動処理部の処理周期ごとのセグメント数以下に設定されるようにしてもよい。
【0011】
更に、前記電子連動装置では、前記連動処理部は、前記データ書換端末から入力される、処理周期単位で実行される各セグメントの処理内容を記載したセグメント割り当てデータに基づき、セグメントに割り当てた処理順を決めて連動論理を処理してもよい。
【0012】
更に、前記電子連動装置では、前記連動処理部は、セグメント割り当てデータに基づき、セグメントに割り当てた処理の要否、出力の要否を行ってもよい。
【0013】
更に、前記電子連動装置では、前記連動処理部は、前記セグメント割り当てデータに基づき、処理駅の追加を行ってもよい。
【0014】
更に、本発明に係る電子連動装置システムは、一面では、上記電子連動装置を複数台備えた電子連動装置システムであって、前記連動処理部の1台をマスター機、他をスレーブ機と規定し、前記マスター機は、各スレーブ機と相互にポーリングを通じて死活監視を行い、故障の生じた電子連動装置が実行している連動論理の処理を、他の電子連動装置に、セグメント割り当てデータ単位で移行する。
【0015】
更に、本発明に係る連動処理方法は、一面では、複数の駅の現場機器から入力されるデータを電子連動装置において連動処理する連動処理方法であって、前記電子連動装置は、少なくとも、連動論理の処理を行う制御部とメモリを有する連動処理部と、該電子連動装置に接続されたデータ書換端末とを備えており、前記連動処理部は、予め、処理周期単位のセグメント数を決定し、前記連動処理部のセグメント単位の処理能力を決定し、前記複数の駅の現場機器から入力される要求処理量を、前記連動処理部のセグメント単位の処理能力に基づきセグメント数を求め、該セグメント数が前記連動処理部の処理周期単位のセグメント数以下であるように、駅の数を決定する。
【0016】
更に、上記電子連動装置方法では、前記データ書換端末から入力される、処理周期単位で実行される各セグメントの処理内容を記載したセグメント割り当てデータに基づき、セグメントの処理順の変更や、セグメントへの連動論理の割り当ての追加、削除を行ってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の駅の連動論理処理を可能にした新規な電子連動装置を提供することができる。
更に、本発明によれば、上記電子連動装置が複数台有る場合、1台のマスター機が他のスレーブ機を動的に管理する電子連動装置システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施形態に係るA駅~C駅の連動論理の処理を行う電子連動装置の一例を示す図である。
図2図2は、概念的に、従来の連動装置の処理と、第1実施形態の処理を比較して説明する図である。
図3図3は、従来の連動装置の処理(A)を説明する図である。
図4図4は、処理周期とセグメント単位の処理時間とを説明する図である。
図5図5は、第1実施形態の連動論理の処理を具体的に説明する図である。
図6図6は、第1実施形態のセグメント割り当てデータと連動論理データの処理実行の一例を説明する図である。
図7図7は、第1実施形態のセグメント方式による処理駅追加の一例を説明する図である。
図8図8は、従来の電子連動装置と第1実施形態に係る電子連動装置を比較しながら、データの移行を説明する図である。
図9図9は、第2実施形態に係るコントローラ方式におけるマスター機の変更、及び死活監視を説明する図である。
図10図10は、第2実施形態に係るコントローラ方式における論理データのロードと共有を説明する図である。
図11図11は、第3実施形態に係る電子連動装置システムを説明する図である。
図12図12は、予備機削減の効果を説明する図であり、図12(A)は、従来の電子連動装置の場合であり、(B)は本実施形態に係る電子連動装置の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る複数の駅の連動論理の処理を行う電子連動装置の実施形態に関し、添付の図面を参照しながら説明する。ここで、複数の駅は、A駅、B駅、C駅の3駅を例に取り説明する。しかし、本実施形態に係る電子連動装置は、3駅に限定されない。処理可能な駅の数は、後で説明するように、電子連動装置の処理能力と駅の要求処理量から決められる。
【0020】
[電子連動装置]
図1は、本実施形態に係るA駅~C駅の連動論理の処理を行う電子連動装置2の一例を示す図である。電子連動装置2は、連動処理部4を有する。連動処理部4は、コンピュータと同様の構成からなり、I/Oインターフェース6、CPU等から成る制御部8、入力部12、大容量ハードディスクのようなストレージ14、高速メモリであるRAM16等を備えている。電子連動装置2には、データ書換端末18及び制御盤22が接続されている。
【0021】
電子連動装置2には、A駅~C駅の機器1A~1Cが接続されている。A駅の機器1Aには、信号機1A2、転てつ機1A3、軌道回路1A4等、及びI/O端末1A1が備えられている。本出願書類では、信号機、転てつ機、軌道回路等をまとめて、単に「機器」という。A駅の機器1Aは、I/O端末1A1を介して、電子連動装置2のI/Oインターフェース6に接続されている。B駅の機器1B及びC駅の機器1Cも、A駅の機器1Aと同様の構成を有する。
【0022】
[第1実施形態]
第1実施形態は、従来の連動装置の処理におけるA駅~C駅の連動論理データの結合を解消し、駅ごとの連動論理データを1又は複数のセグメント単位とし、駅間のデータの独立性を確保して連動論理を処理する電子連動装置を実現する。第1実施形態の処理を、従来の処理と比較しながら説明する。
【0023】
従来の処理では、図2(A)に示すように、処理周期ごとに、A駅~C駅が結合した連動論理データが一括処理されるので、処理周期(3)にて実行される処理についてC駅の処理を更新する場合、A駅およびB駅の処理周期(3)の処理を停止する必要がある。すなわちA駅およびB駅の処理を継続しながら、C駅の処理を更新することができない。
【0024】
これに対して、第1実施形態の処理では、図2(B)に示すように、処理周期において、A~C駅の夫々の連動論理データは処理単位である1又は複数のセグメントとして駅ごとに分割されて処理されるので、処理周期(3)にて実行される処理についてC駅の処理を更新する場合、A駅およびB駅の処理周期(3)の処理を継続しながら、C駅の処理を停止して更新することができる。このように複数の駅の連動論理データを駅に関連付けた1又は複数のセグメント単位で処理することで、駅ごとのデータの駅間の結合性を排して独立性が確保されているので、他の駅の処理に影響を受けることなく駅単位のデータの追加、削除、変更することが可能になる。以下、これを実現した具体的な内容を説明する。
【0025】
図3は、図2(A)に示した従来の処理をより具体的に示した図である。左側のフローチャートは、従来の電子連動装置の処理を示すフローチャートである。右側の「I/O端末」は、A駅~C駅のI/O端末を総じて示している。
【0026】
従来の電子連動装置では、処理周期ごとに、フローチャートに示すように、 (1)ウオッチドッグタイマ監視、(2)主従系監視、(3)制御情報の作成、(4)制御情報の出力、(5)各駅の機器から表示情報の入力、(6)表示情報により列車位置の追跡処理、(7)各駅の表示情報を一括して連動論理処理、(8)ウオッチドッグタイマの出力、(9)ROM、RAMのチェック、が繰り返し実行される。すなわち従来の処理では、図2(A)を参照して説明したように、これらの処理についてA駅~C駅の機器1A~機器1Cから取得したデータが一括して処理される。この処理が、処理周期(1)~処理周期(3)に渡って、A駅~C駅のデータが一括処理されるので、C駅の処理を更新する場合、A駅およびB駅の処理も実行できなくなる。
【0027】
図4は、図2(B)に示した第1実施形態の処理の処理周期(3)をより具体的に示した図である。第1セグメントでは、駅共通のタイマ監視、主従監視が行われ、第8セグメントではROM、RAMのチェック等が行われる。第2セグメントではA駅の連動論理データ処理が行われ、第3,4セグメントではB駅の連動論理データの処理が行われている。第5,6セグメントではC駅の連動論理データの処理が行われるように設定されていたが、C駅の処理を停止することにより、C駅の処理は実行されない。すなわち第1実施形態の連動処理では、図2(B)を参照して説明したように、駅ごとの連動論理データの駅間の結合性を排して独立性が確保されているので、他の駅の処理に影響を受けることなく駅単位の連動論理データの追加、削除、変更することが可能になる。
【0028】
図2(B)を参照して説明したように、第1実施形態の連動処理ではA~C駅の夫々の連動論理データは処理単位である1又は複数のセグメントとして駅ごとに分割されて処理される。ここで、図5を参照して、処理周期とセグメント数の関係を説明する。図5(A)に示すように、例えば、処理周期が200msの場合、一周期内に8セグメントを処理すると1セグメントの処理時間は25msであり、図5(B)に示すように、5セグメントでは処理時間は40msとなる。夫々の場合、セグメント単位の電子連動装置2の処理能力が決まる。これにより、予め、駅の要求処理量から必要なセグメント数を見積もることが出来る。従って、電子連動装置2の処理能力に対して、駅の数が過剰になることを防ぐことが出来る。
【0029】
図4の例では、1セグメントの処理時間が25msの電子連動装置2の処理能力とA駅の要求処理量とから計算して必要セグメント数が1セグメントとされ、B駅の要求処理量から2セグメントとされC駅の要求処理量から2セグメントとされている。
【0030】
図4の例では、「第5,6セグメントではC駅の連動論理データの処理が行われるように設定されていたが、C駅の処理を停止することにより、C駅の処理は実行されない」旨、説明したが、ここでC駅の処理を停止するための手順について説明する。図6は、処理周期ごとに、最初にRAM16に読み出される「セグメント割り当てデータ」の例を示す図である。「セグメント割り当てデータ」および連動論理データ(後述)は、データ書換端末18より、連動処理部4の入力部12を介してストレージ14に入力される。処理周期の開始時に、RAM16に読み出され、セグメント割り当てデータに基づき順次処理が行われる。
【0031】
セグメント割り当てデータは、この例の場合、処理周期内における処理手順を定義するテーブル形式のデータである。ここでは、各駅のデータを駅ごとのセグメントの分割、処理順序、処理の要否、出力の要否等、が記述されている。処理の要否に関する「否」は、工事、データ書き換え等で処理を停止する場合に設定される。出力の要否に関する「否」は、主従2つの連動処理系が稼働している場合の従の処理系の出力を不要とする場合に設定される。なお、処理手順をセグメント割り当てデータで規定せず、連動処理部4内部で固定して定義してもよい。
【0032】
連動論理データは、駅ごとの連動論理を記述したデータ、各駅共通の処理データ(タイマ監視、主従監視等)、ストレージに蓄積された連動論理データをRAMにロードする処理を記述したデータを含んでいる。
【0033】
図6に示すセグメント割り当てデータにより、第1セグメントに、各駅共通の処理(例えば、タイマ監視、主従監視が設定される。第2~3セグメントの二つのセグメントにA駅の処理が設定される。第4セグメントの一つのセグメントにB駅の処理が設定される。第5~6セグメントにC駅の処理を行わない旨の「否」が設定されている。セグメント割り当てデータにより連動処理が実行されることによって、A駅およびB駅の処理は実行されるが、C駅の処理は行われない。すなわち図2の例の関係では、処理周期(3)のタイミングで、図6に示すセグメント割り当てデータを、電子連動装置2の連動処理部4に提供することで、C駅の処理のみ停止させることができる。
【0034】
このように、A駅の表示情報データは、第2~3セグメントに割り当てられ、B駅の表示情報データは、第4セグメントに割り当てられているため、駅間のデータの混在はなく、各駅間のデータの独立性が確保されている。
【0035】
次に、新しい駅の処理を追加する手順にて図7を参照して説明する。図7の例では、A駅とB駅の処理を実施しながら、C駅を追加する場合の手順を示している。セグメント割り当てデータの初期状態は、図7(A)に示すように、第1セグメントに各駅共通の処理が、第2~3セグメントにA駅の処理が、第4セグメントにB駅の処理が、第8セグメントに各駅共通の処理が割り当てられているものとする。処理周期(1)のセグメント割り当てデータとして、図7(B)に示すように第5~6セグメントに、C駅の処理「要」、出力「否」を設定することで、C駅の連動論理データがストレージ14からRAM16へロードされる。処理周期(2)のセグメント割り当てデータとして、図7(C)に示すように設定することで、C駅の表示情報等がC駅のI/O端末1C1から取得される。処理周期(3)のセグメント割り当てデータとして、図7(D)に示すように設定することで、C駅の処理が実施される。この例の場合、処理周期(1)~(3)においてA駅およびBの処理は継続して実行される。すなわちこの手順により、A駅及びB駅の処理に影響を与えることなく、C駅の処理を追加することができる。同様の手順により、駅単位の処理の停止、変更、追加等の処理が可能となる。
【0036】
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態で説明した電子連動装置2が複数台有る場合に、その内の一台をマスター機と定め、他をスレーブ機とし、複数台の電子連動装置2を動的に管理する電子連動装置システムに関する。
【0037】
この例の場合、電子連動装置2に、連動処理部4の稼働状況を管理するコントローラ21がさらに設けられている。各電子連動装置2のコントローラ21は、相互にネットワークで結合し,連動論理データの共有やセグメントの割り当て変更、相互の死活監視を行う。連動論理データは、特定のコントローラに接続したデータ書き換え装置によって行ったのち、コントローラ用ネットワーク32を介して全コントローラ21で共有し記録される。連動論理データは、連動処理部4のストレージ14に記録される。複数台の電子連動装置2は、マスター機とスレーブ機の間で(1)ポーリングを行って状態を監視、(2)死活監視、(3)最新の連動論理データの共有、(4)1台の電子連動装置が故障した場合のデータの再割り当て、(5)特定の電子連動装置の一時的な停止や再開、(6)電子連動装置間の負荷のバランス制御、を行う。なお、ここでは、電子連動装置が、コントローラを備える場合を説明するが、電子連動装置とは別に設けてもよい。或いは、電子連動装置とコントローラを1つの装置としてもよい。
【0038】
図8(A)の例の場合、データは駅ごとの1又は複数のセグメントデータとして処理されている。電子連動装置2AはA駅常用とB駅常用として処理を行い、電子連動装置2BはC駅常用とA駅予備として処理を行い、電子連動装置2CはB駅予備とC駅予備として処理を行っている。常用処理も予備処理も、同時に同一の処理を行って、常用の装置に故障がない限り、常用の出力が使用されている。
【0039】
ここで、電子連動装置2Bを停止させる場合、電子連動装置2CのC駅予備がC駅常用に切り替わり、C駅予備が電子連動装置2Aに移行する。従来の電子連動装置では、実行しているC駅とA駅の処理を駅ごとに分離して移行することは出来なかった。しかし、第2実施形態に係るシステムでは、駅ごとのデータに独立性を付与したことにより、C駅とA駅の処理を分離して他の装置へ移行することが出来る。
【0040】
図8(B)の例の場合、電子連動装置2AはA駅とB駅の処理を行い、電子連動装置2BはC駅の処理を行い、電子連動装置2Cは予備機である。
【0041】
ここで、電子連動装置2Bを停止させる場合、C駅の処理はそのまま予備機の電子連動装置2Cに移行する。同様に、電子連動装置2Aが処理を停止させる場合、A駅及びB駅の処理はそのまま予備機の電子連動装置2Cに移行する。
以下、これを実現した具体的な内容を説明する。
【0042】
(マスター機の決定)
図9(A)は、マスター機の決定とその後の変更を説明する図である。図9では、簡略化のために、電子連動装置2のうち、コントローラ21及びストレージ14のみを表示し、その他は省略されている。最初、電子連動装置2Aのコントローラ21Aがマスター機であり、電子連動装置2B及び2Cのコントローラ21B及び21Cスレーブ機とする。予め、マスター機となる順序が規定されており、電子連動装置2Aが第1番目(順序1)、電子連動装置2Bが第2番目(順序2)、電子連動装置2Cが第3番目(順序3)である。マスター機は、予め定めたこの順序により一定時間ごとに変更してもよい。
【0043】
(ポーリングによる死活監視)
電子連動装置2の死活監視に関し、図9(B)に示すように、複数台のコントローラ21の中の一台を「マスター」として定め、マスター機21Aは他のスレーブ機21B,21Cに対して定期的なポーリングを行う。スレーブ機21B,21Cはマスター機21Aからのポーリングに対して配下の連動処理部の動作状態情報を含む返信を送信する。マスター機21Aはスレーブ機21B,21Cからの返信を確認し、返信がない、又は連動処理部の動作が停止している場合は当該機に割り当てたセグメントの再割り当てを行う。
【0044】
図9(C)に示すように、マスター機である電子連動装置2Aに故障が発生した場合、コントローラ21は、順序2の電子連動装置2Bがマスター機になる。なお、スレーブ機はマスター機からのポーリングを監視し、ポーリングが一定時間停止した場合は、予め定めた順序の次点となるスレーブ機がマスター機となり(図9(C)の例では、電子連動装置2B)、他機へのポーリングを送信する。マスター機は、予め定めた順序により一定時間周期で変更してもよい。
【0045】
(最新連動論理データの共有)
任意の時に、マスター機の移行が出来るようにするためには、各電子連動装置2が、常時最新のデータを蓄積しておくことが必須となる。即ち、最新の連動論理データのロードと共有が必要である。図10は、最新の連動論理データのロードと共有を説明する図である。図10では、簡略化のために、電子連動装置2のうち、コントローラ21及びストレージ14のみを表示し、その他は省略されている。
【0046】
図10(A)に示すように、データ書換端末18から最新の連動論理データが電子連動装置2Bのコントローラ21Bへロードされるとする。連動論理デ一夕は、駅毎に分割したファイルとして入力される。ファイルのヘッダ部には、ファイル作成及び更新日時、バージョン番号等が記載されている。連動論理データの更新を行った電子連動装置2Bは、他の電子連動装置2A,2Cのコントローラ21A,21Cに対して変更を行ったデータのファイル名とバージョン番号(ver.12345)を配信する。他の電子連動装置2A,2Cのコントローラ21A,21Cは、夫々自機のデータのバージョン(ver.12344)と照合を行い、自機のデ一タのバージョンが低い場合は送信元の電子連動装置2Bのコントローラ21Bにデ一タの送信要求を行い、最新バージョン番号(ver.12345)の論理データを上書きする。これにより、任意のコントローラ21に対してロードした連動論理データを全での電子連動装置2のコントローラ21で共有することが可能となる。
【0047】
この実施手順については、セグメント割り当てデータのロードと共有においても同様である。
【0048】
(セグメントデータの再割り当て)
マスター機2Aのコントローラ21Aは、データ書換端末18から入力される「セグメント割り当てデータ」(図6参照)に基づいて、各電子連動装置2が論理処理を行うセグメントの初期割り当てを決定する。
【0049】
駅ごとの論理データを実行する稼働系と待機系の少なくとも2個以上を電子連動装置に割り当てる。かつ、稼働系と待機系は同一の電子連動装置には割り当てを行わない。1台の電子連動装置が停止した場合は、その電子連動装置に割り当てられていたセグメントの再割り当てを行う。
【0050】
なお、各電子連動装置のコントローラは、データ書換端末18に対して、最新のセグメント割り当てデータに更新するため、動的再割り当て等で変更された後のセグメント割り当てデータを出力する機能を持つ。
【0051】
セグメントの動的な再割り当ては、以下の状態が発生した場合に実施する。
(1)コントローラの停止もしくは連動処理部の停止が知得された場合
(2)処理が所定の時間内で完了しなかった場合
【0052】
また、セグメントの動的再割り当ては、以下のルールに基づいて行う。
(1)動的再割り当てはマスター機が行う。
(2)実行不能となった処理が複数の場合、セグメントサイズが大きい順に以下を実施する。
(3)動作中の連動処理部の空きセグメントを探索し、実行不能な処理のセグメントサイズ以上の空きがある場合は、空きセグメントに割当を行う。
(4)空きセグメントが同一処理部で不連続、かつ空きセグメントの合計が実行不能なサイズ以上の場合は、セグメントの再配置を行う。
(5)(3)によっても空きが確保できない場合は、実行中セグメントを他処理部に再配置し、空きを確保する。
(6)以下、(2)~(4)を空きセグメントもしくは実行不能セグメントがなくなるまで繰り返す。
(7)空きセグメントがなくなる(もしくは実行不能セグメントが処理不能)の場合は、モニタ系に優先度の低い駅の停止の可否をメッセージとして表示する(人間系での処理可否承認)。
(8)承認された場合、優先度の低い処理を停止させ、(2)~(6)の処理を繰り返す。
各電子連動装置のコントローラは、更新されたセグメント割り当てに従って連動処理部へ連動論理データを書き込む。また、主系/従系情報、及び動作/停止情報を含むセグメント割り当てデータを連動処理部へ書き込む。
【0053】
[第3実施形態]
第3実施形態は、第2実施形態の変形例である。第3実施形態の例を図11に示す。第3実施形態では、コントローラ用ネットワーク32により各コントローラ21を相互接続し、進路制御用ネットワーク36により各連動処理部を相互接続し、連動用ネットワーク34により各駅の機器及び電子連動装置2を相互接続している。各ネットワークは、名称は相違するが、同じネットワークを使用してもよい。進路制御用ネットワーク36には、管理端末38と、進路制御端末40が接続されている。
【0054】
第2実施形態では、各電子連動装置2の負荷の状態をマスター機が監視していた。第3実施形態では、管理端末38を設け、各電子連動装置2の負荷の状態を監視し、進路制御端末40の制御により過重負荷の電子連動装置2から余裕のある電子連動装置2へセグメントデータを移転している。
【0055】
連動用ネットワーク34により、駅から遠隔地に電子連動装置2A~2Cを配置することが出来る。管理端末38及び進路制御端末40を設けることにより、マスター機、スレーブ機の関係を離れて、負荷の監視、過重負荷の再配置を一層動的に処理出来る。
【0056】
[本実施形態の利点・効果]
以上説明した本実施形態に係る電子連動装置は、次のような利点・効果を有している。
(1)複数駅の連動論理の処理を扱っても、各駅の連動論理の処理を予め入力した順序に従って処理することにより、各駅間の処理の独立性が確保できる。
(2)複数駅の連動論理の処理を扱っても、セグメント分割方式により、特定駅の処理の追加、削除、変更が可能となった。
(3)連動論理の処理の追加、削除は「セグメント」と呼称する処理量単位で行い、予め連動装置の処理能力に応じたセグメント数を決定することにより、連動装置の処理能力に対して過剰な処理量を割り当てることを防ぐことが出来る。
【0057】
(4)複数台の電子連動装置の稼働状況を管理する上位のコントローラを設けることにより、必要により予備機に連動論理デ一夕を書き込んで稼働させることが出来る。非特許文献2に関する第2の方式で説明した課題である予備機の台数を従来のN台(稼働している連動処理部と同一台数)から削減することが可能となる。
【0058】
図12は、予備機削減の効果を説明する図であり、図12(A)は、従来の電子連動装置の場合であり、図12(B)は本実施形態に係る電子連動装置2の場合である。図12(A)では、4台の処理装置を設け、1台が距離的に近いA~C駅の常用機として処理を実行(稼働)し、1台がA~C駅の予備機として処理を実行(待機)し、1台が、例えば遠隔地にあるD駅の常用として処理を実行し、1台が予備機として処理を実行している。この場合、A~C駅の処理装置の稼働率は50%、D駅の処理装置の稼働率は25%であったとする。
【0059】
一方、図12(B)では、処理装置の処理能力に余裕が有る場合、1台がA~C駅の常用機として処理を実行(稼働)し且つD駅の予備機として処理を実行し、1台がA~C駅の予備機として処理を実行(稼働)し且つD駅の常用機として処理を実行している。すなわちこの例の場合、1台の稼働率は75%に上がり、4台(2N)の処理装置は、2台(N)に削減できる。
【0060】
(5)特定駅の処理を「セグメント」単位で追加、削除、変更を可能とした構成を取り、かつ「コントローラ」により連動処理部で処理させる「セグメント」を動的に割り当てることで、各連動処理部の稼働率を高い状態とすることができる。
【0061】
更に、連動処理部の保守や更新のために他の装置群に処理を振り分けることが可能となる。これにより、複数の連動処理部からなるシステム全体としては連続した動作を実現しながら、連動処理部に必要な保守や更新を実施することが可能となる。
【0062】
また、ホットスタンバイで従来の1台以上の待機予備系を確保する方式において、従来はN台の連動処理部に対して+N台の予備機を必要としたが、連動処理部群全体の稼働率に余裕がある場合には予備機を削減することが可能となる(図3参照)。
【符号の説明】
【0063】
2:電子連動装置、 4:連動処理部、 6:I/Oインターフェース、8:制御部、 12:入力部、 14:ストレージ、 16:RAM、 18:データ書換端末、 21:コントローラ、 22:制御盤、 1A:A駅の機器、 1B:B駅の機器、 1C:C駅の機器、

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12