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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】電池の製造方法および電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20230113BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20230113BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20230113BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20230113BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230113BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230113BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/449
H01M50/46
H01M10/0566
H01M10/0585
H01M10/052
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020043760
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021144889
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩司
(72)【発明者】
【氏名】西川 和孝
(72)【発明者】
【氏名】近藤 繁
(72)【発明者】
【氏名】山本 紀明
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-053862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0309108(US,A1)
【文献】特開2000-306569(JP,A)
【文献】特開平10-172537(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0115053(KR,A)
【文献】特開2019-125441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/449-50/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着層を有するセパレータと電極板とを前記電極板が前記接着層と接するように積層し、
前記接着層に前記電極板の一部を接着して、前記電極板が前記接着層との接着領域および非接着領域を有する積層電極体を形成し、
前記積層電極体をケースに収容し、
前記ケースに電解液を注入することを含
前記セパレータと前記電極板との積層方向から見て、前記接着層は前記電極板の全体と重なり、
前記電極板は、前記接着領域で囲まれた前記非接着領域を有する、
電池の製造方法。
【請求項2】
前記接着領域の面積は、前記電極板の面積全体の15%以上40%未満である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記電極板は、互いに独立した複数の前記非接着領域を有し、
少なくとも一部の前記非接着領域は、前記電極板の外縁まで延びている、
請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記セパレータと前記電極板との積層方向から見て、前記電極板は矩形状であり、
前記電極板は、角部に前記接着領域を有する、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
接着層を有するセパレータおよび電極板が積層された積層電極体と、
前記積層電極体に含浸される電解液と、
前記積層電極体および前記電解液を収容するケースと、を備え、
前記電極板は、前記接着層との接着領域および非接着領域を有
前記セパレータと前記電極板との積層方向から見て、前記接着層は前記電極板の全体と重なり、
前記電極板は、前記接着領域で囲まれた前記非接着領域を有する、
電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池の製造方法および電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)等の普及にともない、車載用の二次電池の出荷が増えている。特にリチウムイオン二次電池の出荷が増えている。また、車載用に限らず、例えばノート型パソコン等の携帯端末用の電源としても二次電池の普及が進んでいる。このような二次電池について、例えば特許文献1には、接着層を有するセパレータと電極とを積層し熱圧着して積層電極体を製造し、積層電極体をケースに収容した後にケースに電解液を注入して、二次電池を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/081035号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池では、電極板に電解液が接触した状態で電極反応が起こる。このため、二次電池を製造する際に、積層電極体に電解液を含浸させる必要がある。一方で、二次電池のエネルギー密度を高めるために、ケース内で積層電極体が占める体積が大きくなる傾向にある。このため、積層電極体への電解液の含浸に要する時間が長くなってきている。含浸時間が長くなると、二次電池の生産リードタイムが長くなり得る。また、二次電池生産のスループットの低下を防ぐために生産設備の増強が強いられ得る。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、積層電極体への電解液の含浸時間を短縮する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は、電池の製造方法である。この製造方法は、接着層を有するセパレータと電極板とを電極板が接着層と接するように積層し、接着層に電極板の一部を接着して、電極板が接着層との接着領域および非接着領域を有する積層電極体を形成し、積層電極体をケースに収容し、ケースに電解液を注入することを含む。
【0007】
本開示の他の態様は、電池である。この電池は、接着層を有するセパレータおよび電極板が積層された積層電極体と、積層電極体に含浸される電解液と、積層電極体および電解液を収容するケースと、を備える。電極板は、接着層との接着領域および非接着領域を有する。
【0008】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、積層電極体への電解液の含浸時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る電池を模式的に示す断面図である。
図2】セパレータおよび電極板の積層方向から見た電極板を模式的に示す平面図である。
図3図3(A)~図3(B)は、実施の形態に係る電池の製造方法を説明するための模式図である。
図4図4(A)~図4(B)は、実施の形態に係る電池の製造方法を説明するための模式図である。
図5図5(A)~図5(B)は、実施の形態に係る電池の製造方法を説明するための模式図である。
図6】種々の接触面積における電解液注入後の経過時間と未含浸面積との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る電池を模式的に示す断面図である。図2は、セパレータおよび電極板の積層方向から見た電極板4を模式的に示す平面図である。電池36は、積層電極体1と、電解液34と、ケース32と、を備える。積層電極体1は、セパレータ2と電極板4とが積層された構造を有する。
【0013】
セパレータ2は、基材6と、接着層8と、を有する。基材6は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜で構成されるシートである。基材6は、単層構造であっても多層構造であってもよい。また、基材6は、好ましくは絶縁性を有する。接着層8は、基材6の少なくとも一方の主表面に設けられる。本実施の形態では、基材6の両面に接着層8が設けられている。接着層8は、公知の塗布装置で公知の接着剤を基材6の表面に塗布することで得られる。接着層8を構成する接着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が例示される。
【0014】
電極板4は、正極板10と、負極板12と、を含む。正極板10は、正極集電体の片面または両面に正極活物質層が積層された構造を有する。正極集電体は、例えばアルミニウム箔等の金属箔、エキスパンド材、ラス材等で構成される。正極活物質層は、正極集電体の表面に公知の塗布装置で正極合材を塗布し、乾燥および圧延することによって形成することができる。正極合材は、正極活物質、結着材、導電材等の材料を分散媒に混練し、均一に分散させることによって得られる。
【0015】
正極活物質は、積層電極体1がリチウムイオン二次電池に用いられる場合、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、リチウム含有遷移金属化合物を正極活物質として使用可能である。リチウム含有遷移金属化合物としては、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄およびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素と、リチウムと、を含む複合酸化物が挙げられる。
【0016】
結着材は、分散媒に混練および分散できるものであれば特に限定されない。例えば、結着材としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、アクリルゴム、アクリル樹脂、ビニル樹脂等を使用可能である。導電材としては、アセチレンブラック、グラファイト、炭素繊維等の炭素材料を使用可能である。分散媒としては、結着材を溶かすことができる溶媒が使用される。正極合材には、必要に応じて分散剤、界面活性剤、安定剤、増粘剤等が含まれてもよい。
【0017】
負極板12は、負極集電体の片面または両面に負極活物質層が積層された構造を有する。負極集電体は、例えば銅、銅合金等からなる金属箔、エキスパンド材、ラス材等で構成される。負極活物質層は、負極集電体の表面に公知の塗布装置で負極合材を塗布し、乾燥および圧延することによって形成することができる。負極合材は、負極活物質、結着材、導電材等の材料を分散媒に混練し、均一に分散させることによって得られる。なお、負極板12は、上述の湿式法に代えて、蒸着法やスパッタ法等の乾式法によって作製することもできる。
【0018】
負極活物質は、積層電極体1がリチウムイオン二次電池に用いられる場合、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含有する炭素材料を負極活物質として使用可能である。炭素材料としては、天然黒鉛、球状または繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素等が挙げられる。また、負極活物質としてチタン酸リチウム、シリコン、錫等も使用することもできる。結着材および導電材は、正極活物質に用いられるものと同様である。負極合材には、必要に応じて分散剤、界面活性剤、安定剤、増粘剤等が含まれてもよい。
【0019】
電極板4は、接着層8と接するようにセパレータ2に積層され、接着層8に電極板4の一部が接着される。したがって、電極板4は、接着層8との接着領域42および非接着領域44を有する。非接着領域44は、当該領域におけるセパレータ2と電極板4との接着強度が、接着領域42における接着強度の30%を下回る領域、より好ましくは20%を下回る領域、さらに好ましくは10%を下回る領域である。接着強度は、例えば日本工業規格JIS C2107(1999)に規定された方法で測定される、180度剥離強度(N/25mm)である。
【0020】
また、セパレータ2と電極板4との積層方向Aから見て、接着層8は電極板4の全体と重なる。したがって、積層方向Aから見て、接着層8は非接着領域44と重なる領域にも延在している。また、電極板4は、互いに独立した複数の非接着領域44を有する。つまり、電極板4は、接着領域42によって区切られて不連続となった、2以上の非接着領域44を有する。そして、少なくとも一部の非接着領域44は、電極板4の外縁まで延びている。つまり、少なくとも一部の非接着領域44は、ケース32の内部空間に連通する開放端44aを有する。また、積層方向Aから見て、電極板4は矩形状である。そして、電極板4は、角部Cに接着領域42aを有する。また、電極板4は、接着領域42で囲まれた非接着領域44bを有する。この非接着領域44bは、全周に接着領域42が延在するため、開放端44aを有しない。
【0021】
一例として、接着領域42および非接着領域44はストライプ状に敷設される。具体的には、個々の接着領域42および非接着領域44は電極板4の長辺に対して5~85°の角度で傾斜した直線状である。そして、接着領域42および非接着領域44が交互に配列される。各非接着領域44は、両端が電極板4の外縁まで延びて開放端44aとなっている。また、各接着領域42の内部には、接着領域42の延びる方向に所定の間隔をあけて複数の非接着領域44bが配列されている。
【0022】
電極板4が接着層8に接着されることで、セパレータ2と電極板4とが互いに連結した積層電極体1が得られる。本実施の形態の積層電極体1は、複数の単位積層体14が積層された構造を有する。積層電極体1における単位積層体14の積層数は、例えば30~40個である。単位積層体14は、正極板10、セパレータ2、負極板12、セパレータ2がこの順に積層された構造を有する。
【0023】
本実施の形態の積層電極体1は、セパレータ2の単板と電極板4の単板とが複数積層された積層型であるが、特にこの構造に限定されない。積層電極体1は、互いに接着されたセパレータ2と電極板4との積層構造を少なくとも一部に有すればよく、帯状のセパレータ2と帯状の電極板4とが巻き回された巻回型であってもよいし、つづら折りされた帯状のセパレータ2の各谷溝に単板の電極板4を配置したつづら折り型等であってもよい。
【0024】
電解液34は、積層電極体1に含浸される。電解液34は、例えば非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質と、を含む。非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジクロロエタン等の公知の溶媒を使用可能である。電解質としては、電子吸引性の強いリチウム塩、具体的にはLiPF、LiBF等の公知の電解質を使用可能である。
【0025】
ケース32は、積層電極体1および電解液34を収容する。ケース32は、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属で構成される。ケース32は、扁平な矩形状であるが、これに限らず円筒状等であってもよい。ケース32は開口を有し、開口を介して積層電極体1および電解液34が収容される。この開口は、後述する封口板18で塞がれる。したがって、封口板18はケース32の一部を構成する。
【0026】
続いて、本実施の形態に係る電池36の製造方法について説明する。図3(A)~図3(B)、図4(A)~図4(B)および図5(A)~図5(B)は、実施の形態に係る電池36の製造方法を説明するための模式図である。
【0027】
<積層電極体1の作製>
図3(A)および図3(B)に示すように、一対の熱圧着ローラ16の間に正極板10、セパレータ2、負極板12およびセパレータ2を通す。セパレータ2と各電極板4とは、電極板4が接着層8と接するように積層される。これにより、正極板10、セパレータ2、負極板12およびセパレータ2が熱圧着されて単位積層体14が得られる。続いて図4(A)に示すように、複数の単位積層体14を一対の熱圧着ローラ16で熱圧着する。これにより、積層電極体1が得られる。
【0028】
一方の熱圧着ローラ16は、表面に複数の凸部40を有する。このような熱圧着ローラ16で電極板4とセパレータ2とを加圧することで、電極板4の一部のみをセパレータ2に押し付けて、押し付けた部分のみを接着層8に接着させることができる。セパレータ2に対して電極板4を部分的に接着させることで、電極板4に接着領域42と非接着領域44とを設けることができる。
【0029】
<電池36の組み立て>
図4(B)に示すように、封口板18を用意する。封口板18は、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属で構成される。封口板18は、正極端子20と、負極端子22と、注液孔24と、安全弁26と、を有する。注液孔24は、電解液をケース内に注入する際に用いられる。安全弁26は、ケースの内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、ケース内部のガスを放出する。
【0030】
積層電極体1の正極集電体を、電力取り出し用の正極集電タブ28を介して正極端子20に電気的に接続する。また、積層電極体1の負極集電体を、電力取り出し用の負極集電タブ30を介して負極端子22に電気的に接続する。正極集電体と正極集電タブ28とは、一体成形体であってもよいし、別体であって溶接等により接合されてもよい。同様に、負極集電体と負極集電タブ30とは、一体成形体であってもよいし、別体であって溶接等により接合されてもよい。正極集電タブ28と正極端子20、負極集電タブ30と負極端子22とは、それぞれ溶接等により接合される。
【0031】
続いて、図5(A)に示すように、封口板18に溶接された積層電極体1をケース32に収容する。積層電極体1は、ケース32の開口を介してケース32の内部に挿入される。複数のセパレータ2と複数の電極板4とは接着層8を介して互いに連結されているため、積層電極体1をケース32に簡単に挿入することができる。特に、電極板4の角部Cに接着領域42が配置されているため、つまり、電極板4の四隅がセパレータ2に固定されているため、積層電極体1をケース32により簡単に挿入することができる。積層電極体1をケース32に挿入した後、ケース32の開口を封口板18で塞ぎ、ケース32と封口板18とを溶接等により接合する。
【0032】
続いて、注液孔24を介してケース32内に電解液34を注入する。電解液34をケース32に注入した後、注液孔24に注液栓(図示せず)を溶接等により接合する。これにより、電池36が組み立てられる。
【0033】
ケース32内に電解液34が注入されると、図5(B)に示すように、電解液34はその流動圧によって電極板4の非接着領域44と接着層8との隙間を広げながら当該隙間に進入していく。隙間への電解液34の進入にともなって、隙間に存在する空気が外に追い出されて、電解液34と空気とがスムーズに置換される。これにより、電極板4に電解液34を迅速に浸潤させることができる。
【0034】
つまり、電極板4の非接着領域44は、電解液34および残存空気の流路として機能する。特に、少なくとも一部の非接着領域44は電極板4の外縁まで延び、ケース32の内部空間に連通する開放端44aを有する。したがって、電解液34は、開放端44aから非接着領域44と接着層8との隙間に容易に進入していくことができる。また、残存空気を開放端44aから容易に排出することができる。
【0035】
接着領域42の面積は、好ましくは電極板4の面積全体の15%以上40%未満である。図6は、種々の接触面積における電解液注入後の経過時間と未含浸面積との関係を示す図である。図6における「接触面積」は、接着領域42の面積を意味する。したがって、「全面接着」、「接触面積15%」、「接触面積30%」、「接触面積40%」はそれぞれ、接着領域42の面積が電極板4の面積全体に対して100%、15%、30%、40%であることを意味する。また、「未含浸面積」は、電極板4において電解液34が含浸していない領域の面積を意味する。電解液34が含浸しているか否かは、目視で確認することができる。また、未含浸面積は、画像解析等によって算出することができる。また、図6には、各接触面積の実験区について、所定経過時間における未含浸面積のプロットと、このプロットを線形近似して得られる直線と、を図示している。
【0036】
図6に示すように、全面接着では、電解液34の注入完了から3時間経過で未含浸面積は18%であり、6時間経過で5%であり、9時間経過で0%であった。接触面積40%では、3時間経過で17%、6時間経過で7%、9時間経過で0%であった。接触面積30%では、3時間経過で12%、6.5時間経過で0%であった。接触面積15%では、3時間経過で7%、4時間経過で3%、4.9時間経過で0%であった。
【0037】
以上の結果から、接着領域42の面積を電極板4の面積全体の40%未満とすることで、積層電極体1への電解液34の含浸時間をより確実に短縮できることが確認された。また、接着領域42の面積を30%以下とすることで、接着領域42を設けない場合に対して含浸時間を2/3程度まで短縮できることが確認された。さらに、接着領域42の面積を15%とすることで、含浸時間を1/2程度まで短縮できることが確認された。また、接着領域42の面積を15%以上とすることで、電極板4とセパレータ2とが連結された状態をより確実に維持することができる。したがって、積層電極体1のハンドリング性を維持することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態に係る電池36の製造方法は、接着層8を有するセパレータ2と電極板4とを電極板4が接着層8と接するように積層し、接着層8に電極板4の一部を接着して、電極板4が接着層8との接着領域42および非接着領域44を有する積層電極体1を形成し、積層電極体1をケース32に収容し、ケース32に電解液34を注入することを含む。電極板4に非接着領域44を設けることで、電極板4とセパレータ2との間に電解液34を進入させやすくすることができる。これにより、積層電極体1への電解液34の含浸時間を短縮することができる。
【0039】
含浸時間の短縮により、電池36の生産リードタイムを短縮することができる。また、電池36のスループットを維持するための生産設備の増強も避けることができ、したがって生産スペースの拡大も回避することができる。また、生産リードタイムが延びることを抑制しながら、電池36の高容量化を図ることができる。
【0040】
また、本実施の形態に係る電池36は、接着層8を有するセパレータ2および電極板4が積層された積層電極体1と、積層電極体1に含浸される電解液34と、積層電極体1および電解液34を収容するケース32と、を備え、電極板4は、接着層8との接着領域42および非接着領域44を有する。電池36においては、充電時に活物質が膨張することによって積層電極体1から電解液34が排出され得る。電解液34は、放電時に活物質が収縮することによって積層電極体1に戻る。仮に、電解液34が積層電極体1に戻りきらない場合、電極板4の一部に電解液34に浸潤していない領域、すなわち放電に寄与しない領域が発生し得る。これに対し、電極板4が非接着領域44を有すると、充電時に積層電極体1から排出された電解液34が放電時にスムーズに積層電極体1に戻ることができる。よって、本実施の形態の電池36によれば、電池36の充放電特性の改善、ひいてはサイクル寿命の改善を図ることができる。
【0041】
また、セパレータ2と電極板4との積層方向Aから見て、接着層8は電極板4の全体と重なっている。したがって、接着層8において電極板4が接着する部分、つまり接着領域42と重なる部分は、非接着領域44と重なる部分でつながっている。このため、電極板4を接着層8に圧着した際に、接着層8における接着領域42と重なる部分が電極板4で押されて基材6に埋没してしまうことを抑制することができる。これにより、電解液34および空気の流路をより確実に形成することができ、電解液34の含浸時間をより確実に短縮することができる。また、正極板10と負極板12との間の距離が不均一になることを抑制でき、積層電極体1全体で電極反応の均一化を図ることができる。
【0042】
また、接着領域42の面積は、好ましくは電極板4の面積全体の15%以上40%未満である。これにより、積層電極体1への電解液34の含浸時間をより確実に短縮できるとともに、積層電極体1のハンドリング性を維持することができる。
【0043】
また、電極板4は、互いに独立した複数の非接着領域44を有し、少なくとも一部の非接着領域44は、電極板4の外縁まで延びている。これにより、非接着領域44と接着層8との隙間に電解液34を進入させやすくすることができ、また残存空気を排出しやすくすることができる。よって、積層電極体1への電解液34の含浸時間をより短縮することができる。
【0044】
また、電極板4は、接着領域42で囲まれた非接着領域44bを有する。つまり、接着領域42の内部に非接着領域44bが配置される。これにより、接着領域42の面積をより細かく調整することができる。よって、電解液34の含浸時間の短縮と、積層電極体1のハンドリング性の維持とのバランスを調整しやすくすることができる。
【0045】
また、積層方向Aから見て電極板4は矩形状であり、電極板4は、角部Cに接着領域42を有する。これにより、電極板4に非接着領域44を設けることによる積層電極体1のハンドリング性の低下をより抑制することができる。
【0046】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【符号の説明】
【0047】
1 積層電極体、 2 セパレータ、 4 電極板、 6 基材、 8 接着層、 32 ケース、 34 電解液、 36 電池、 42 接着領域、 44 非接着領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6