(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】酸素運搬体としてのククルビツリル誘導体
(51)【国際特許分類】
A61K 47/56 20170101AFI20230113BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20230113BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230113BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230113BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230113BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230113BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230113BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230113BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20230113BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20230113BHJP
C07D 487/22 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/61 20170101ALN20230113BHJP
【FI】
A61K47/56
A61K31/4188
A61P7/00
A61P9/10
A61P9/00
A61P17/00
A61K8/49
A61Q19/08
A61K33/00
A61K8/19
A61K47/69
C07D487/22 CSP
A61K47/61
(21)【出願番号】P 2020510153
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2018060963
(87)【国際公開番号】W WO2018197705
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-21
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519383348
【氏名又は名称】ブノワ・プリュール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ・プリュール
(72)【発明者】
【氏名】マリー-ピエール・エック
(72)【発明者】
【氏名】ガスパール・ユベール
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-526708(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0098242(KR,A)
【文献】Journal of Physical Chemistry,2016年,120(26),13911-13921
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】
に相当する化合物CB[5]OH
10、あるいはその塩または溶媒和物をO
2ガス運搬体として含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記化合物が、ヘモグロビン代替物として使用される、請求
1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
虚血の治療のための、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
動脈血圧の調節のための、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
内部空洞にカプセル封入されたO
2ガスを含む、
以下の式:
【化2】
に相当する化合物CB[5]OH
10
あるいはその塩または溶媒和物の複合体。
【請求項6】
請求項
5に記載の複合体、及び少なくとも1つの化粧品として許容される賦形剤を含む、化粧品組成物。
【請求項7】
抗老化、皮膚保護、または皮膚再生のための、請求項
6に記載の化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ククルビツリル誘導体、並びに生理学的気体運搬体としてのこれらの治療的及び非治療的な用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ククルビツリルは、メチレン架橋(-CH2-)で連結された6つのグリコールウリルモノマー(C4H2N4O2)からなる環状オリゴマーであり、1905年にBehrend及び同僚らによって初めて合成された[Behrend et al., Justus Liebigs Ann. Chem. Soc., 1905, 339, 1]。
【0003】
ククルビツリルという名前は、その構造を説明したMock及び同僚らによって言及されるように、この分子とウリ科のカボチャとの類似性に由来する[Mock et al., J. Am. Chem. Soc., 1981, 103, 7367-7368]。
【0004】
前記構造は、以下の式(CB):
【化1】
に相当する。
【0005】
延長として、CB[n]と略称されるククルビツリルは、メチレン架橋を介して互いに結合したn個のグリコールウリル単位からなるマクロ環状分子を意味する。
【0006】
特有の剛性内部空洞により、ククルビツリルは、結合における注目すべき選択性をもって多種多様な化合物、例えば、ペプチド、糖類、染料、炭化水素、薬剤、さらには、タンパク質をホストすることができ、よって広範な領域、とりわけ触媒作用、生物学、医療、材料、または環境科学における多数の応用に道を開く。
【0007】
このため、この科の化合物及び新規な同族体及び誘導体の合成に対する関心は、ますます高まっている [Nau et al., Chem. Soc. Rev., 2015, 44, 394-418]。
【0008】
しかるに、縮合イミダゾリジン環によって共有される炭素原子上で任意に置換されたグリコールウリルモノマーによって形成されるククルビツリルを製造する方法が、Dayらによって特許化され[米国特許第6,793,839号]、また、ククルビツリル中に気体または揮発性化合物を結合させる方法が、その後同一発明者によって開示された[米国特許第6,869,466号]。
【0009】
生理学的気体を固定、運搬、及び放出する能力は非常に興味深い。特に、酸素運搬体に関しては、無数の産業上及び治療用の応用が考えられる。
【0010】
例えば、バイオテクノロジー企業のHemarina SAは、血液代替物として、及び臓器保存、創傷被覆、及び細胞培養の分野における、海洋細胞外ヘモグロビンベースの酸素運搬体の使用の開発に努めている[国際公開公報第2010/128159号]。
【0011】
特に、血液代替品の分野は、血液の供給が不十分なために、近年多くの注目を集めている。
【0012】
実際、世界中で毎年約1億800万単位の献血が行われているにもかかわらず、輸血を必要とする多くの患者は、安全な血液及び血液製剤を適時に入手することができない。輸血は、一般に、心臓血管手術、移植手術、大規模な外傷、及び固体の血液系腫瘍の治療における支持療法に使用される。また、献血された全ての血液を、HIV、B型肝炎、C型肝炎、及び梅毒について輸血前に必ずスクリーニングすべきであるが、多くの低所得及び中所得国では、試験キットの不規則な供給、スタッフ不足、低品質の試験キット、または試験施設に基本的な質の欠如のために、これらの感染症の1つ以上について、献血された全ての血液をスクリーニングすることができない。
したがって、安全な血液代替物の開発によれば、これらの問題に取り組むことができる。
【0013】
海洋細胞外ヘモグロビンは、ヒトヘモグロビンの適切な代替品となる可能性があるが、ヒトの血液1リットルが約140gのヘモグロビンを含むことを考慮すれば、輸血のための血液のニーズを満たすために十分な量で製造できる可能性は低いという事実が依然として残る。さらに、生物学的製剤の使用には、ウイルスが含まれている可能性のため、汚染のリスクが伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第6,793,839号
【文献】米国特許第6,869,466号
【文献】国際公開公報第2010/128159
【非特許文献】
【0015】
【文献】Behrend et al., Justus Liebigs Ann. Chem. Soc., 1905, 339, 1
【文献】Mock et al., J. Am. Chem. Soc., 1981, 103, 7367-7368
【文献】Nau et al., Chem. Soc. Rev., 2015, 44, 394-418
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、新規な酸素、及びより一般的な生理学的気体の、運搬体への需要が存在する。
出願人は最近、ククルビツリルの特定のサブクラスが、酸素に対して著しく強い親和性を示すことを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明は、生理学的気体運搬体としての使用のための、以下の一般式(I):
【化2】
[式中、
・nは5または6に等しく、
・X
1及びX
2は、互いに独立して、酸素または硫黄原子を表し、
・R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素またはハロゲン原子、OR
3、SR
4、NR
5R
6、S(O)R
7、SO
2R
8、OCOR
9、CO
2R
10、CONR
11R
12、CO
2R
13、OP(O)(OR
14)
2、NO
2、またはCN基を表し、ここで、
・R
3からR
14は、それぞれ互いに独立して、水素原子または(C
1-C
6)アルキル基を表し、
但し、少なくとも2つのR
1、2つのR
2、または1つのR
1と1つのR
2が水素原子を表すことはない]
の化合物あるいはその塩、溶媒和物、または立体異性体に関し、ここで、前記気体は、O
2、N
2、NO、NO
2、H
2、He、及び/またはCO
2、有利にはO
2である。
【0018】
本発明の意味の範囲内で、「生理学的気体」なる語は、人体機能に関与する気体、例えば、O2、N2、NO、NO2、H2、He、またはCO2、特にO2、NO、またはCO2を意味する。好ましくは、前記生理学的気体はO2である。
【0019】
本発明の文脈において、塩は以下のものであり得る:
(1)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などと、または有機酸、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2-ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、コハク酸、ジベンゾイル- L-酒石酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸、及びトリフルオロ酢酸などと形成される酸付加塩、または、
(2)化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはアルミニウムイオンで置き換えられるか;または有機もしくは無機塩基に配位した場合に形成される塩。許容される有機塩基には、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなどが含まれる。許容される無機塩基には、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどが含まれる。
【0020】
本発明の文脈において、本発明の使用のための化合物の溶媒和物には、従来の溶媒和物、例えば、本発明の化合物の調製の最終工程中に溶媒の存在により形成されるものなどが含まれる。例として、水(これらの溶媒和物は水和物とも呼称される)またはエタノールの存在による溶媒和物を挙げて良い。
【0021】
本発明の意味の範囲内で、「立体異性体」は、ジアステレオ異性体または鏡像異性体を示すことを意図する。したがって、これらは光学異性体である。光学異性体は、4つの異なる置換基(孤立電子対を含んでもよい)を含む原子(例えば炭素原子)上の置換基または孤立電子対の間の異なる位置から生じる。しかるに、この原子は、キラル中心または不斉中心を表す。互いに鏡像ではない光学異性体は「ジアステレオ異性体」と呼称され、重ね合わせることができない鏡像である光学異性体は「鏡像異性体」と呼称される。
【0022】
キラル化合物の2つのエナンチオマーの等モル混合物は、ラセミ化合物またはラセミ混合物と呼称される。
【0023】
本発明で使用される「ハロゲン」なる語は、フッ素、臭素、塩素、またはヨウ素の原子を意味する。
【0024】
本発明で使用される「(C1-C6)アルキル」なる語は、以下に限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、
tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどを含む、1から6個の炭素原子を含む飽和、直鎖もしくは分岐の炭化水素鎖を意味する。
【0025】
本発明による使用のための化合物は、以下の同等の図示構造(S1)及び(S2)の1つによって表すことができ、ここでは、iは0または1に等しい。
【0026】
【0027】
実際、本発明による使用のための化合物は、メチレン架橋(-CH
2-)によって連結された以下の式(GU)のn個の置換グリコールウリルモノマーから成る環状オリゴマー、あるいはその塩、溶媒和物、または立体異性体であり、nは5または6に等しい。
【化5】
【0028】
n個のGU単位毎に、互いに独立して:
・X1及びX2は、互いに独立して、酸素または硫黄原子を表し、
・R1及びR2は、それぞれ独立して、水素またはハロゲン原子、OR3、SR4、NR5R6、S(O)R7、SO2R8、OCOR9、CO2R10、CONR11R12、CO2R13、OP(O)(OR14)2、NO2、またはCN基を表し、ここで、
・R3からR14は、それぞれ互いに独立して、水素原子または(C1-C6)アルキル基を表し、
但し、n個のGU単位の中で少なくとも2つのR1、2つのR2、または1つのR1と1つのR2が水素原子を表すことはない。
【0029】
好ましい実施態様では、nは5に等しい。
【0030】
特定の実施態様では、X1及びX2は同一であり、好ましくは、X1及びX2はいずれも酸素原子を表す。
【0031】
別の実施態様では、R1及びR2は、それぞれ互いに独立して、水素原子、またはOR3、SR4、NR5R6基を表し、R3からR6は、それぞれ互いに独立して、水素原子または(C1-C6)アルキル基、特に、水素原子、メチル、エチル、またはn-プロピル基を表す。
【0032】
好ましい実施態様では、R1及びR2は、それぞれ互いに独立して、水素原子またはOR3基を表し、R3は水素原子または(C1-C6)アルキル基、特に、水素原子、メチル、エチル、またはn-プロピル基、有利には水素原子を表す。
【0033】
さらに別の実施態様において、R1及びR2は、同一であり、以上に定義される通りである。
【0034】
さらに別の実施態様では、n個のGU単位毎に、互いに独立して、X
1及びX
2は同一である。しかるに、本発明による使用のためのこうした化合物は、下式(II):
【化6】
に相当する、メチレン架橋(-CH
2-)により連結されたn個のGU単位から構成される環状オリゴマー、あるいはその塩、溶媒和物、または立体異性体であり、ここでnは5または6であり、n個のGU単位毎に、互いに独立して:
・X
1は、酸素または硫黄原子を表し、
・R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素またはハロゲン原子、OR
3、SR
4、NR
5R
6、S(O)R
7、SO
2R
8、OCOR
9、CO
2R
10、CONR
11R
12、CO
2R
13、OP(O)(OR
14)
2、NO
2、またはCN基を表し、ここで、R
3からR
14は、それぞれ互いに独立して、水素原子または(C
1-C
6)アルキル基を表し、
但し、少なくとも2つのR
1、2つのR
2、または1つのR
1と1つのR
2が水素原子を表すことはない。
【0035】
好ましい実施態様では、本発明による使用のための化合物は、式(II)においてnが5に等しく、5個のGU単位毎に、互いに独立して、
・X1は、酸素原子を表し、
・R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、またはOR3、SR4、NR5R6基、有利には水素原子またはOR3基を表し、ここでR3からR6は、それぞれ互いに独立して、水素原子または(C1-C6)アルキル基、特に、水素原子、メチル、エチル、またはn-プロピル基、有利には水素原子を表す。
【0036】
さらに別の実施態様では、n個のGU単位のそれぞれについて、互いに独立して、X
1及びX
2は同一であり、R
1及びR
2は同一である。しかるに、本発明による使用のためのこうした化合物は、下式(III):
【化7】
に相当する、メチレン架橋(-CH
2-)により連結されたn個のGU単位から構成される環状オリゴマー、あるいはその塩、溶媒和物、または立体異性体であり、ここでnは5または6であり、n個のGU単位毎に、互いに独立して:
・X
1は、酸素または硫黄原子を表し、
・R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素またはハロゲン原子、OR
3、SR
4、NR
5R
6、S(O)R
7、SO
2R
8、OCOR
9、CO
2R
10、CONR
11R
12、CO
2R
13、OP(O)(OR
14)
2、NO
2、またはCN基を表し、ここで、R
3からR
14は、それぞれ互いに独立して、水素原子または(C
1-C
6)アルキル基を表し、
但し、少なくとも2つのR
1が水素原子を表すことはない。
【0037】
好ましい実施態様では、本発明による使用のための化合物は、式(III)においてnは5に等しく、5個のGU単位毎に、互いに独立して、
・X1は、酸素原子を表し、
・R1は、水素原子、またはOR3、SR4、NR5R6基、有利には水素原子またはOR3基を表し、ここでR3からR6は、それぞれ互いに独立して、水素原子または(C1-C6)アルキル基、特に、水素原子、メチル、エチル、またはn-プロピル基、有利には水素原子を表す。
【0038】
特定の実施態様において、本発明による使用のための化合物は、メチレン架橋(-CH2-)により連結されたn個のGU単位から構成される環状オリゴマーであり、ここでnは5または6であり、GU単位は上記定義の通りである。
【0039】
より具体的には、n個のGU単位のそれぞれにおいて、X1及びX2はいずれも酸素原子を表し、本発明による使用のためのこうした化合物は、以下ではCB[n](R1R2)nと呼称され、ここでn、R1及びR2は、上記定義の通りである。
【0040】
特に好ましい実施態様では、本発明による使用のための化合物は、メチレン架橋(-CH
2-)により連結されたn個の同一のGU
sym単位
からなる環状オリゴマーであり、ここでnは5または6、好ましくは5に等しく、GU
sym単位は次の式(GU
sym)に相当する。
【化8】
式中、
・X
1は、酸素または硫黄原子を表し、有利には酸素原子を表し、
・R
1は、OR
3、SR
4、NR
5R
6基を表し、有利にはOR
3を表し、ここで、R
3からR
6は、それぞれ互いに独立して、水素原子または(C
1-C
6)アルキル基を表し、特に、水素原子、メチル、エチル、またはn-プロピル基、有利には水素原子を表す。
【0041】
本発明による使用のためのこうした化合物は、以下ではCB[n](R1)2nと呼称され、ここでn及びR1は、上記定義の通りである。
【0042】
最も好ましい実施態様では、本発明による使用のための化合物は、以下の式:
【化9】
に相当するCB[5]OH
10であるか、があるいはその塩または溶媒和物である。
【0043】
別の特定の実施態様では、1つまたはいくつかの親水性ポリマー側鎖が上記で定義される本発明による使用のための化合物にグラフトされており、各親水性ポリマー側鎖は、R1またはR2基により前記分子に共有結合し、且つ水溶性モノマーの直鎖状もしくは分岐状鎖であり、ここで、前記ポリマーはポリオールまたは糖類である。
【0044】
本発明で使用される「ポリオール」なる語は、上記で定義される(C1-C6)アルキルを意味し、これは、以下に限定されるものではないが、グリセロール、エチレングリコールなどを含む、少なくとも2個、好ましくは2個または3個のヒドロキシル基をさらに含む。
【0045】
本発明で使用される「糖類」なる語は、エリスロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、エリスロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボースまたはタガトースのD形またはL形、特にグルコースを意味し、1つ以上の(C1-C6)アルキル基、例えば、メチル、エチル、またはn-プロピル基で任意に置換されていてもよい。
【0046】
さらに別の特定の実施態様では、本発明による使用のための化合物は、1つまたはいくつかの親水性ポリマー側鎖、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはヒドロキシエチルデンプン(HES)に共有結合している。
【0047】
好ましい実施態様では、上記で定義される化合物は、O2運搬体としての使用のためのものである。
【0048】
別の実施態様において、上記で定義された化合物は、ヘモグロビン代替物として使用される。
本発明の文脈において、「ヘモグロビン代替物」なる語は、赤血球中に存在するヘモグロビンを置換することができ、特に酸素及び二酸化炭素に関してその気体運搬体としての機能を果たすことのできる化合物を意味する。この代替物はまた、組織に酸素を供給し、ここでCO2に充填され、これを交換表面、すなわち肺で放出することになる。
【0049】
別の実施態様において、上記で定義された化合物は、虚血の治療に使用される。
本発明の文脈において、「虚血」なる語は、特に酸素不足をもたらす、組織への血液供給の不足を意味する。
これは、特に腎虚血、心虚血(別名心筋梗塞または急性心筋梗塞、一般に心臓発作と呼称)、虚血性大腸炎、腸間膜虚血、急性または慢性脳虚血、急性四肢虚血、または皮膚虚血でありうる。
【0050】
本発明は、上記で定義される化合物の有効用量をこれを必要とする人に投与することを含む、虚血を治療するための方法にも関する。
【0051】
別の実施態様において、上記で定義される化合物は、動脈血圧の調節を企図したO2及び/またはNO運搬体としての使用のためのものである。
さらに別の実施態様では、上記で定義される化合物は、N2運搬体として、ダイビング事故後の患者の血液から前記気体を除去することを企図して使用するためのものである。
さらに別の実施態様では、上記で定義される化合物は、抗老化、皮膚保護、または皮膚再生における使用のためのものである。
【0052】
本発明はまた、その内部空洞に封入された気体を含む、上記で定義される化合物の複合体に関する。
特定の実施態様では、前記気体はO2である。
別の特定の実施態様では、前記化合物はCB[5]OH10である。
【0053】
本発明はまた、虚血の治療に使用するための本発明による複合体に関する。
本発明は、上記で定義される複合体の有効用量をこれを必要とする人に投与することを含む、虚血を治療する方法にも関する。
本発明はまた、動脈血圧の調節に使用するための本発明の複合体に関する。
本発明はまた、老化防止、皮膚保護、または皮膚再生に使用するための本発明の複合体に関する。
【0054】
本発明はまた、血液代替物、特にヒト血液代替物としての使用のための上記で定義される化合物及び/または複合体を含む、生理学的に許容される媒体からなる組成物に関する。
「生理学的に許容される媒体」なる語は、一般に安全で、非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましからぬ要素がなく、獣医学及びヒトの治療用途に許容される媒体を意味する。
これはさらに、塩、例えば、NaCl、CaCl2、MgCl2、MgSO4、KCl、グルコン酸ナトリウム、及び/または酢酸ナトリウムを含んでよい。
【0055】
本発明による組成物は、特に経口投与用または注射による投与用に製剤化することができ、前記組成物はヒトを含む哺乳動物用である。
活性成分は、標準的な医薬賦形剤と混合された単位剤形で、動物または人間に投与することができる。
適切な経口単位剤形には、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、及び経口液剤または懸濁剤が含まれる。
【0056】
固体組成物が錠剤形態で調製される場合、主要な活性成分は、薬学的媒体、例えば、ゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アラビアゴム、または類似体と混合される。錠剤は、スクロースまたは他の適切な材料でコーティングすることができ、またはこれらを処理して活性を延長または遅延させ、所定量の活性成分を連続的に放出するようにすることもできる。
【0057】
カプセル調剤は、有効成分を希釈剤と混合し、得られた混合物をソフトまたはハードカプセルに注ぐことにより得られる。
シロップまたはエリキシル形態の調剤は、有効成分を、甘味料、防腐剤、並びに風味増強剤、及び適切な染料と共に含んでよい。
【0058】
水分散性粉末または顆粒は、有効成分を、分散剤または湿潤剤、または懸濁剤、ならびに風味増強剤または甘味料と混合して含むことができる。
注射による投与のためには、薬理学的に適合する分散剤及び/または湿潤剤を含む水性懸濁液、等張食塩水、または注射用滅菌溶液を使用する。
活性成分は、マイクロカプセルの形態で、任意に1つ以上の追加の賦形剤とともに処方することもできる。
【0059】
本発明は、虚血の治療における使用のための上記で定義される組成物にも関する。
本発明は、上記で定義される組成物の有効量をこれを必要とする人に投与することを含む、虚血を治療するための方法にも関する。
本発明はまた、老化防止、皮膚保護、または皮膚再生のための上記に定義される組成物に関する。
【0060】
本発明は、一般式(I):
【化10】
[式中、
・nは5または6に等しく、
・X
1及びX
2は、互いに独立して、酸素または硫黄原子を表し、
・R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素またはハロゲン原子、OR
3、SR
4、NR
5R
6、S(O)R
7、SO
2R
8、OCOR
9、CO
2R
10、CONR
11R
12、CO
2R
13、OP(O)(OR
14)
2、NO
2、またはCN基を表し、ここで、
・R
3からR
14は、それぞれ互いに独立して、水素原子または(C
1-C
6)アルキル基を表し、
但し、少なくとも2つのR
1、2つのR
2、または1つのR
1と1つのR
2が水素原子を表すことはない]
の化合物あるいはその塩、溶媒和物、または立体異性体の、気体の固定、運搬、及び/または放出のための非治療的使用に関し、ここで、前記気体は、O
2、N
2、NO、NO
2、H
2、He、及び/またはCO
2、有利にはO
2である。
【0061】
特定の実施態様において、前記化合物は式(II)または(III)のものであって、ここで、X1、R1、及びR2は上記で定義された通りである。
別の特定の実施態様では、前記化合物はCB[n](R1R2)n化合物であり、ここでn、R1、及びR2は上記で定義された通りである。
さらに別の特定の実施態様では、CB[n](R1)2n化合物であり、ここでn及びR1は上記で定義された通りである。
好ましい実施態様では、nは5に等しい。
【0062】
さらに別の好ましい実施態様では、R1及びR2は、それぞれ互いに独立して、水素原子またはOR3、SR4、NR5R6基、有利には水素原子またはOR3基を表し、ここで、R3からR6は、それぞれ互いに独立して、水素原子または(C1-C6)アルキル基、特に、水素原子、メチル、エチル、またはn-プロピル基、有利には水素原子を表し、
但し、n個のGU単位の中で少なくとも2つのR1、2つのR2、または1つのR1と1つのR2が水素原子を表すことはない。
最も好ましくは、前記化合物はCB[5]OH10、またはその塩もしくは溶媒和物である。
【0063】
別の実施態様では、前記化合物は、1つまたはいくつかの親水性ポリマー側鎖、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはヒドロキシエチルデンプン(HES)に共有結合している。
好ましい実施態様では、本発明による使用は、O2の固定、運搬、及び/または放出のためのCB[5]OH10の使用である。
【0064】
本発明はまた、生物学的材料、例えば、インビトロでの細胞、組織、体液、及び器官、並びに微生物の保存及び/または保護のための、有利には医療機器としての、上記で定義された化合物、本発明による複合体の使用、特に非治療的使用に関する。
本発明の文脈において、「インビトロ」とは、生物学的材料が由来する生物の外を意味する。
本発明はまた、上記で定義される化合物または複合体を含む媒体中に前記生物材料を配置することによる、生物学的材料及び微生物の保存及び/または保護の方法に関する。
【0065】
本発明で使用される生物材料または微生物の「保存」なる語は、生物材料または微生物の状態(特に構造及び機能)を、それが既に存在する状態に維持するか、またはこの状態の劣化を防止または制限する事実を意味する。
【0066】
本発明で使用される生物学的材料または微生物の「保護」なる語は、生物学的材料または微生物が、内的または外的な攻撃、例えば、酸化ストレス(UVなど)、温度の変化、pHの変化、化学的もしくは細菌による汚染、飢餓状態などのストレスから保護されるという事実を意味する。
【0067】
特に、生物材料または微生物は、37℃未満、例えば0℃未満の温度に、特に生物材料、例えばヒトの器官、組織(例えば移植用の)、体液または細胞の凍結保存の条件下に置かれた場合に保護することができる。
【0068】
生物材料または微生物の凍結保存は、生物材料または微生物を氷点下、特に液体窒素を使用して約-196℃の温度に冷却することを意味する。
生物材料は、特に細胞、組織、体液、または器官であってよい。
【0069】
微生物は、特に原核生物または真核生物である微生物であってよく、特に単細胞または多細胞であってよい。微生物は、特に、細菌、酵母を含む真菌、藻類、ファージを含むウイルス、微小寄生虫(寄生微生物とも呼称される)、及び原虫の中から選択することができる。
【0070】
本発明の文脈において、「医療機器」とは、ヒトまたは動物の身体由来の器官、組織、細胞、または生成物と、ヒトにおける治療のための使用の前の保存、調製、変換、包装、または輸送中に接触する任意の製品を意味する。本発明による医療機器はまた、医学的に補助された生殖活動の文脈において胚と接触する任意の製品であってよい。特に、このカテゴリーの製品には、移植片保存培地(組織、器官)、体外受精の状況で使用される培地、または細胞療法製品の調製中に使用される培地が含まれる。
【0071】
特に、本発明は、上記で定義した化合物または複合体の、器官、生物組織、または生体細胞を保存するため、好ましくは器官、例えば肝臓または腎臓を保存するための培地中における使用に関する。
【0072】
したがって、前記化合物または複合体は、移植片の場合には、ドナーでの試料採取と受取側での移植片との間で細胞、組織、または器官を保存するための補助的治療製品として
使用することができる。
【0073】
本発明はまた、上記で定義される少なくとも1つの化合物または1つの複合体を含む、培養、貯蔵、及び/または保存培地に関する。
【0074】
本発明はまた、培養、貯蔵、及び/または保存培地におけるアジュバントとしての、上記で定義される化合物または複合体の使用に関する。
【0075】
培養、貯蔵、及び/または保存培地は、生物学的材料または微生物の培養、貯蔵、及び/または保存を企図する。生物学的材料は、より具体的には、培養培地の場合の細胞または組織であろう。
【0076】
本発明はまた、上記で定義される少なくとも1つの化合物または1つの複合体を含む、培養、貯蔵、及び/または保存培地に関する。
【0077】
培養、貯蔵、及び/または保存培地は、液体またはゲルの形態であってよい。したがって、これは水を含む。しかしながら、培地は、水の添加により再水和可能な脱水形態であってよい。
【0078】
これは、共溶媒(例えばジメチルスルホキシド(DMSO))、塩(例えばNaCl、MgCl2、ZnCl2、MnCl2、CuCl2、K2PO4、KH2PO4、K2HPO4、Na2S2O3、K2SO4、MgSO4、 KNO3、Ca(NO3)2、Na2CO3、NaHCO3など、炭水化物などの炭素源(例えばグルコース、ラクトース、またはショ糖)またはポリオール(例えばマンニトールまたはグリセロール)、ビタミン(例えばビタミンB1、B2、B6、B12、B3、B5、B9、B7、C、A、D、E、及びK)窒素、及びアミノ酸源(例えばペプトン、牛もしくは酵母エキス、血清など)、成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、フィボネクチン、アルブミン)、分化因子、抗生物質、及び抗真菌薬(抗菌剤及び抗真菌剤とも呼称、例えばアクチノマイシンD、アンホテリシンB、アンピシリン、カルベニシリン、セフォタキシム、フォスミドマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、ペニシリン、ポリミキシンB)、ホルモン、サイトカイン及び微量元素からなる群の1つまたはいくつかの成分を含んで良い。
【0079】
別の添加剤、例えば指示薬(例えばpH指示薬)、阻害剤などが存在してよい。
【0080】
ゲルの形態である場合、培養培地は、ゲル化剤、例えば、寒天、ゼラチン、シリカゲルなどをさらに含むことができる。
【0081】
本発明はまた、抗老化、皮膚保護、または皮膚再生のための、上記に定義される式(I)の化合物及び/または本発明による複合体の使用、有利には非治療的、好ましくは美容のための使用に関する。
【0082】
本発明は、上記で定義される式(I)の化合物及び/または本発明による複合体を皮膚に適用することによる抗老化、皮膚保護または皮膚再生のための美容方法にも関する。
【0083】
本発明はまた、本発明による上記で定義される式(I)の化合物及び/または複合体の有効量をこれを必要とする人の皮膚に適用することによる、老化防止、皮膚保護、または皮膚再生のための方法に関する。
こうした使用または方法においては、前記化合物または複合体は皮膚に局所的に適用することができる。
【0084】
本発明はまた、本発明による上記で定義される式(I)の少なくとも一つの化合物及び/または複合体並びに少なくとも一つの化粧品として許容される賦形剤を含む化粧品組成物に関する。
【0085】
本発明の組成物は、一つ以上の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、皮膚科学的活性剤、皮膚軟化剤、別の保湿剤、別の増粘剤、香料、防腐剤、顔料もしくは着色剤、または乳白剤をさらに含んで良い。
【0086】
これら追加の添加剤は、ベース組成物の粘度、保湿性、及びすすぎ落とし特性を妨げないように、限られた重量で組み込まれる。こうした添加剤は、当業者にとって通常のものである。
【0087】
これらの添加物の例は、以下に、また国際化粧品成分辞典及びHandbook, eds. Wenninger and McEwen (The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Assoc., Washington, D.C., 7th Edition, 1997)(以下「ICTハンドブック」)に挙げられている。
【0088】
前記組成物を、微生物感染、例えば細菌、真菌、または原生動物による感染の傾向がある皮膚に適用する場合、抗菌剤を使用することができる。こうした薬剤の例には、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、フェニル水銀アセテート、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、安息香酸、フェノキシエタノール、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、及び安息香酸ナトリウム、特にメチルパラベンが含まれる。別の抗菌剤は、ICTハンドブックの1612頁に挙げられている。
【0089】
酸化防止剤を使用して、組成物の成分を、該組成物に含まれるかまたは該組成物と接触する酸化剤から保護することができる。抗酸化剤の例には、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸カリウムプロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、フェニル-α-ナフチルアミン、及びトコフェロール、例えば、α-トコフェロールが含まれる。別の抗酸化剤は、ICTハンドブックの1612から1613頁に挙げられている。
【0090】
皮膚科学的な活性剤には、創傷治癒、炎症、ざ瘡、乾癬、皮膚老化、皮膚癌、膿痂疹、ヘルペス、水疱瘡、皮膚炎、疼痛、掻痒、または皮膚刺激を治療するための薬剤が含まれる。こうした皮膚科学的な活性剤の例には、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン(dexamethesone)、パンテノール、フェノール、テトラサイクリン塩酸塩、酵母、ヘキシルレゾルシノール、ラミン、カイネチン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、フルオシノロン、メチルプレドニゾロン、レチノイド類、例えばレチノール及びレチノイン酸、ダプソン、スルファサラジン、レゾルシノール、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、過酸化エリスロマイシン-ベンゾイル、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ムピロシン、グリセオフルビン、アゾール類、例えばミコナゾール、エコノゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、及びケトコナゾール、シクロピロクス、アリルアミン類、例えばナフチフィン及びテルフィナフィン、アシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、ベンゾカイン、リドカイン、ジブカイン、塩酸プラモキシン、サリチル酸メチル、樟脳、メントール、レゾルシノール、及びビタミン類、例えばトコフェロール及び酢酸トコフェロールが含まれる。
【0091】
皮膚軟化剤は、肌を柔らかくし滑らかにする薬剤である。皮膚軟化剤の例には、ワックス、例えば微結晶ワックス、ポリエチレン、トリグリセリドエステル、例えばヒマシ油、ココアバター、ベニバナ油、コーン油、オリーブ油、タラ肝油、アーモンド油、パーム油、スクアレン、大豆油のトリグリセリドエステル、アセチル化モノグリセリド、エトキシ化グリセリド、脂肪酸、脂肪酸のアルキルエステル、脂肪酸のアルケニルエステル、脂肪アルコール、脂肪アルコールエーテル、エーテルエステル、ラノリン及びラノリンの誘導体、多価アルコールエステル、ワックスエステル、例えば蜜蝋、植物ワックス、ホスホリド、及びステロール、パルミチン酸イソプロピル、またはステアリン酸グリセリル、特にアーモンド油、または脂肪アルコール、セチル、ステアリル、及び/またはミリスチルアルコールが含まれる。その他の皮膚軟化剤は、ICTハンドブックの1656から1661頁に挙げられている。
【0092】
シロキサンが特に好ましい皮膚軟化剤である。本発明で使用してよいシロキサンには、以下に限定されるものではないが、ジメチコン、シクロメチコン、フェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、セチルジメチコン、ステアリルジメチコン、アモジメチコン、C30-45アルキルジメチコン、C30-45アルキルメチコン、セテアリルメチコン、ジメチコンコポリオール、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサンまたはこれらの任意の組み合わせが含まれる。特に、アモジメチコンを、本発明における皮膚軟化剤として使用することができる。
【0093】
追加の増粘剤は、特に、脂肪アルコール、例えば、セチル、ステアリル、及び/またはミリスチルアルコールであってよい。
【0094】
香料または香水の例には、ペパーミント、ローズオイル、ローズウォーター、アロエベラ、クローブオイル、メントール、樟脳、ユーカリオイル、及びその他の植物抽出物が含まれる。組成物から特定の臭気を除去するために、マスキング剤を使用してもよい。他のフレグランスとマスキング剤は、ICTハンドブックの1639から1940頁に挙げられている。
【0095】
防腐剤を使用して、組成物を分解から保護することができる。保存剤の例には、フェノキシエタノール、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、プロピルパラベン、安息香酸、ベンジルアルコール、及びこれらの混合物、例えばリキパーオイルが含まれる。特に、これは、フェノキシエタノール、メチルパラベン、またはこれらの混合物であってよい。別の防腐剤は、ICTハンドブックの1654から1655頁に挙げられている。しかしながら、本発明の組成物は防腐剤を含まなくてもよい。
【0096】
顔料または着色剤は、組成物の色を変更するため、例えば白色の組成物を得るために使用される。これは特に二酸化チタンであってよい。
乳白剤、例えば、酸化チタンは、透明もしくは透過性の組成物においてこれを不透明にするために使用される。したがって、本発明は、乳白剤の使用の有無に応じて透明または不透明であってよい。
【0097】
本発明による化粧品組成物は、特に局所投与用に製剤化することができる。したがって、これは、ローション、フォーム、ゲル、分散液、懸濁液、スプレー、美容液、クリーム、エマルション、ボディミルク、シャンプー、またはマスクであってよい。
【0098】
前記化粧品組成物は、特に抗老化、皮膚保護、または皮膚再生を企図する。
本発明はまた、上記で定義される化合物の、化学反応を触媒するための使用に関する。
【0099】
本発明はまた、上記で定義される化合物の、水産養殖を目的とする培地でO2を放出するための使用に関する。
好ましい実施態様では、前記培地は水槽である。
本発明はまた、上記で定義される化合物の、農業用、特に植物種の成長を企図する培地におけるO2の放出のための使用に関する。
【0100】
好ましい実施態様では、前記培地からは土壌が除かれており、植物種の成長に寄与する栄養素を含む液体が含まれる。
【0101】
本発明はまた、上記で定義される化合物の、好気性浄化微生物を含む培地中でO2を放出するための使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1】
図1a及び1bは、O
2及びNaClの有無によって異なる、CB[5]OH
10について20℃で得られる
1H NMRスペクトルを示す:・SP1:NaClもO
2もなし;・SP2:1bar未満のO
2、NaCIなし;さらに・SP3:1barの圧力でNaCl及びO
2を使用。
【
図2】
図2は、酸素分圧の関数として、CB[5]OH
10について37℃で得られる
1H NMRスペクトルを示し、前記スペクトルはH
axシグナルに焦点を当てている。
【
図3】
図3は、酸素分圧の関数として、37℃でH
axについて測定されたR
1を表す。
【
図4】
図4a及び4bは、O
2の有無によって異なる、CBについて20℃で得られる
1H NMRスペクトルSP1及びSP2を示す。
【
図5】
図5a及び5bは、O
2及びNaClの有無によって異なる、CB[5]OH
10について20℃で得られる
1H NMRスペクトルを示す:・SP1:NaClもO
2もなし;・SP2:1bar未満のO
2、NaCIなし;さらに・SP3:1barの圧力でNaCl及びO
2を使用。
【発明を実施するための形態】
【0103】
【0104】
I.
材料と方法
I-1. 検討した化合物
CB[5]、CB[5]Me
10、及びCB[5]OH
10の、O
2固定能を検討した。
前記化合物は、下式(IV)のものであり、式中、R
1はそれぞれH、CH
3、及びOHに相当する。
【化11】
【0105】
I-2. 合成
・CB[5]OH10を、文献(J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 10186)に記載の方法に従い、処理操作を行う際に若干の変更を加えて合成した:溶媒の量を減圧下で半減させ、アセトンで沈殿させた。ろ液を濃縮し、12時間に亘ってAmberlyst A21樹脂(Flucka 20-50メッシュ)と共に攪拌した後、焼結フィルター(多孔率P4)でろ過し、減圧下で濃縮してCB[5]OH10とする。
・CB[5]Me10を、文献(Angew. Chem. Int. Ed. 1992, 31, 1475)に記載の方法に従って合成した。
・CB[5]はSigma Aldrichから購入した。
【0106】
I-3. 1H NMR
・試料の準備:
― CB[5]OH10:D20(及び言及のある場合はNaCl)中の0.319mM溶液;
― CB[5]:D20(及び言及のある場合はNaCl)中の0.501mM溶液;及び
― CB[5]Me10:D20(及び言及のある場合はNaCl)中の0.472mM溶液。
【0107】
濃度は、個別の試料において、TSP-d4の既知の溶液に既知の容量を追加することによって測定した。
およそ1barの圧力までのO2を含む試料は、シリンジを使用して大気圧よりわずかに高い圧力で純粋O2を添加した後に、溶液の平衡化と周囲空気への迅速な放出によって調製される。
【0108】
実際、実験は156mの高度で行われ、中圧は0.982barであった。
5barの圧力までのO2を含む試料に関して実験が行われたが、O2は、液体窒素浴を使用して予め脱気したチューブで既知量のO2を凝縮することによって添加した。
【0109】
・T
1の測定:
縦軸緩和時間T
1は、標準の反転回復法(180°-t-90°acq.)で測定され、その後、スペクトルの位相調整及びTopspin(登録商標)のベースライン補正が行われる。その後、データをエクセルにエクスポートする。シグナルは統合され、強度は3つのパラメーターモデルに基づいて反転遅延に従って調整される。
【数1】
式中、A因子は、磁化の不完全な反転を考慮に入れており、R
1はT
1の逆の緩和速度である。
【0110】
・錯体形成定数Kの調整:
錯体形成定数Kの調整は、以下の1:1錯体形成モデルを調整することにより得られ:
【数2】
定義によれば:
【数3】
であり、ここで、
【数4】
であり、よって
【数5】
であって、ここで、
R
1空は、酸素の非存在下とみなされる核のR
1に相当し、かなり優れた精度(10%)で得られる。
R
1複合体は、試験化合物とその内部空洞(またはケージ)に封入されたO
2との複合体が形成される場合の核のR
1に相当し、調整可能なパラメーターである。これは、結果に鑑みて、前記ケージをほぼ完全に飽和させるには、実験圧よりもはるかに高い圧力(最大5bar)が必要となるため、正確には不明である。
sは、37℃での9g/lのNaCl溶液への酸素の溶解度であり、表形式のデータの内挿によって得られる。実際、溶液中のO
2の濃度は、溶液上部のO
2圧力であるPO
2に比例し:ヘンリーの法則は実験圧範囲で非常によく検証されている。
【0111】
II.
結果
II-1. CB[5]OH
10
属性:
図1a及び1bに表示される、20℃で得られた
1H NMRスペクトルを検討すると、属性はピーク山(massifs)によって明らかである。実際、10個のメチレンは同等である。
H
ax(式(IV)を参照)は、およそ5.40ppmで共鳴し、H
eqはおよそ4.58ppmで共鳴する。
【0112】
また、各シグナルは2つの二重線で構成され:
・一方(白丸)は、O2の存在もしくは非存在に依存し、その常磁性は近傍のNMRシグナルに大きな影響を与え、T1の線幅と値は大幅に変化し、
・他方(黒丸)については、NMR特性はO2の添加によっても不変である。従って、黒丸に相当するケージ分子が、親和性の高い分子を含み、これがN2または溶媒であるとの仮説が成り立つ。前記分子のカプセル封入は、より高い酸素分圧下で作業することにより、酸素/ヘリウム混合物を使用することにより、または精製により前記分子を除去することにより、回避し得る。
【0113】
白丸は、「空の」分子(つまり、溶媒以外の分子を含まない)と、CB[5]OH10とO2との複合体との間の加重平均に相当する。実際、前述のように、実験圧力(最大5bar)よりもはるかに高い圧力が、ケージをほぼ完全に飽和させるためには必要である。
【0114】
高い酸素分圧下におけるO
2のカプセル封入がより好ましいという事実は、生理学的濃度のNaClを含む試料の前記圧力の関数として、37℃で得られた
1H NMRスペクトルを表す、
図2によって証明されている。
したがって、CB
5OH
10は、生理学的濃度のNaClが存在する場合でさえも、37℃でO
2を有意にカプセル封入する。
【0115】
・R
1
によるKの決定:
-対象のH
axシグナルに関して:
脱気した試料を使用して測定したT
1空は、2.1s
-1に等しい。
T
1、しかるにR
1は、さまざまな酸素圧で測定された。
得られた結果を
図3に示す。
調整により、K=3000M
-1とする。標準偏差の2乗の合計は、K=1170及び6380 M
-1について2倍になり、測定誤差の推定値が得られる。
【0116】
-R
1を、2つの異なる温度にて、NaCl 9g/l及びO
2 1barの存在下及び非存在下において、CB[5]OH
10のプロトンH
axについて測定した。
【表2】
わずかに異なる温度のR
1への影響は穏やかである。
結論:NaClは錯形成についてO
2と競合しない。
【0117】
II-2. CB[5]
H
ax及びH
eqに相当する2つの二重線(それぞれ約5.69ppmと4.35ppm)に加えて、
図4a及び4bに表示されるCB[5]のスペクトルは、R
1=Hに相当する5.5ppmの一重線を示す。
スペクトルSP1とSP2が同一であるという事実により、O
2がCB[5]には有意にカプセル封入されないことが証明される。
【0118】
II-3. CB[5]Me
10
1.8ppmで共鳴するCB[5]Me
10のメチル基の特徴的なシグナルは、
図5a及び5bに表示されるスペクトルには表されていない。
スペクトルSP1、SP2、及びSP3の比較により、O
2が、NaClの非存在下ではCB[5]Me
10によってカプセル封入されるが、NaClの存在下ではカプセル封入がそれほど顕著でないことを示す。したがって、血液中に存在する主なイオンは、CB[5]Me
10中でのカプセル封入に関してはO
2の競合相手としてあまりに強力である。
【0119】
III. 結論
したがって、上記の結果は、CB[5]OH10が、特にCBまたはCB[5]Me10と比較して、酸素に対して著しく強い親和性を呈することを示す。