(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】マルチコイル大面積無線電力システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20230113BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20230113BHJP
H02J 50/70 20160101ALI20230113BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20230113BHJP
H03F 3/217 20060101ALI20230113BHJP
H03F 3/68 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/40
H02J50/70
H01F38/14
H03F3/217 160
H03F3/68 210
H03F3/68 220
(21)【出願番号】P 2020511938
(86)(22)【出願日】2018-08-27
(86)【国際出願番号】 US2018048152
(87)【国際公開番号】W WO2019046194
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-07-27
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511243668
【氏名又は名称】エフィシエント パワー コンヴァーション コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】デ ルーイ,マイケル,エー.
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユアンヂゥ
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-199975(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0236844(US,A1)
【文献】特表2015-537497(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0098916(KR,A)
【文献】特表2012-523814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H01F 38/14
H03F 3/217
H03F 3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大面積無線電力システムであって、
第1シングルエンド
クロック信号を生成し、前記第1シングルエンド
クロック信号を複数の差動信号に変換するための
1つの同期送信器と、
前記同期送信器からの前記複数の差動信号を受信し、
受信した各差動信号を複数の第2シングルエンド信号
に変換する複数の同期受信器と、
最短のケーブルから最長のケーブルまでのさまざまな長さの複数のケーブルであって、各ケーブルは、前記複数の差動信号を前記同期送信器から前記複数の同期受信器まで伝送する差動伝送線路対を有し、各同期受信器は、前記差動信号が様々な長さの前記ケーブルを介して伝送されるときの位相遅延の差を補償するための遅延補償回路を有し、前記遅延補償回路は、前記第2シングルエンド信号が同期されるように、前記最長のケーブルを介して伝送される前記差動信号に対応する前記第2シングルエンド信号に最小量の遅延を追加し、前記最短のケーブルを介して伝送される前記差動信号に対応する前記第2シングルエンド信号に最大量の遅延を追加するように構成されている、複数のケーブルと、
前記同期受信器のそれぞれから
、同期された前記複数の第2シングルエンド信号を受信し、電力を生成する複数の高電力増幅器と、
前記複数の高電力増幅器によって生成された電力を受信し、電力を無線供給する複数の無線電力コイルと、
を有する大面積無線電力システム。
【請求項2】
前記同期送信器は、
前記第1シングルエンド
クロック信号を生成する発振器と、
前記第1シングルエンド
クロック信号を受信し、前記複数の差動信号を生成する複数の差動ドライバと、を有する、
請求項1記載の大面積無線電力システム。
【請求項3】
各同期受信器は、
前記複数の差動信号を前記複数の
第2シングルエンド信号に変換する差動受信器と、
前記
第2シングルエンド信号を受信し、前記同期受信器をそれぞれの高電力増幅器から絶縁する絶縁ドライバと、を有する、
請求項
1記載の大面積無線電力システム。
【請求項4】
各差動受信器は、前記複数の
ケーブルのうちのそれぞれの
ケーブルから、電力を受け取る。
請求項
3記載の大面積無線電力システム。
【請求項5】
前記遅延補償回路は、前記差動受信器から前記
第2シングルエンド信号を受信し、前記絶縁ドライバに位相遅延補償信号を提供する、
請求項
3記載の大面積無線電力システム。
【請求項6】
前記遅延補償回路は、前記絶縁ドライバから前記
第2シングルエンド信号を受信し、前記高電力増幅器に位相遅延補償信号を提供する、
請求項
3記載の大面積無線電力システム。
【請求項7】
前記複数の無線電力コイルは、-17dBの最大結合を有するように物理的に分離されている、
請求項1記載の大面積無線電力システム。
【請求項8】
前記複数の無線電力コイルは重なり合っている、
請求項1記載の大面積無線電力システム。
【請求項9】
無線電力コイルへ高電力を供給するための増幅回路であって、
前記増幅回路は、
差動ドライバから差動信号を受信し、前記差動信号を
対応するシングルエンド信号に変換する差動受信器と、
前記シングルエンド信号を受信し、前記差動受信器を絶縁する絶縁ドライバと、
前記シングルエンド信号を受信し、前記無線電力コイルに電力を供給する高電力増幅器と、
前記シングルエンド信号が前記高電力増幅器に供給される前に、前記シングルエンド信号の任意の位相遅延を補償する遅延補償回路
であって、前記遅延補償回路は、前記差動信号が最短のケーブルから最長のケーブルまでの様々な長さのケーブルを介して伝送されるときの位相遅延の差を補償するように構成された遅延補償回路であって、各ケーブルは差動伝送線路対を有し、前記遅延補償回路は、前記シングルエンド信号が同期されるように、前記最長のケーブルを介して送信される前記差動信号に対応する前記シングルエンド信号に最小量の遅延を追加し、前記最短のケーブルを介して送信される前記差動信号に対応する前記シングルエンド信号に最大量の遅延を追加するように構成されている、遅延補償回路と、
を有する増幅回路。
【請求項10】
前記遅延補償回路は、前記差動受信器から前記シングルエンド信号を受信し、前記絶縁ドライバに位相遅延補償信号を供給する、
請求項9記載の増幅回路。
【請求項11】
前記遅延補償回路は、前記絶縁ドライバから前記シングルエンド信号を受信し、前記高電力増幅器に位相遅延補償信号を供給する、
請求項9記載の増幅回路。
【請求項12】
複数の電力コイルに供給される複数の電力信号を同期させる同期回路であって、
前記同期回路は、
シングルエンド
クロック信号を生成し、前記シングルエンド
クロック信号を複数の差動信号に変換する
1つの同期送信器と、
前記同期送信器から前記複数の差動信号を受信し、
前記複数の電力コイルを駆動するために前記複数の差動信号を
同期された複数の
シングルエンド信号に変換する複数の同期受信器と、
最短のケーブルから最長のケーブルまでのさまざまな長さの複数のケーブルであって、各ケーブルは、前記差動信号を前記同期送信器から前記同期受信器まで伝送する差動伝送線路対を有する、複数のケーブルと、
前記差動信号が様々な長さの前記ケーブルを介して伝送されるときの位相遅延の差を補償する遅延補償回路であって、前記シングルエンド信号が同期されるように、前記最長のケーブルを介して伝送される前記差動信号に対応する前記シングルエンド信号に最小量の遅延を追加し、前記最短のケーブルを介して伝送される前記差動信号に対応する前記シングルエンド信号に最大量の遅延を追加するように構成されている、遅延補償回路と、
を有する、同期回路。
【請求項13】
前記同期送信器は、
前記シングルエンド信号を生成する発振器と、
前記シングルエンド信号を受信し、前記複数の差動信号を生成する複数の差動ドライバと、
を有する、
請求項12記載の同期回路。
【請求項14】
各同期受信器は、
前記複数の差動信号のうちのそれぞれ1つの差動信号を
同期された前記複数の
シングルエンド信号のうちのそれぞれ1つ
のシングルエンド信号に変換する差動受信器と、
同期された前記複数の
シングルエンド信号のうちのそれぞれ1つ
のシングルエンド信号を受信し、前記同期受信器を高
電力増幅器から絶縁する絶縁ドライバと、を有する、
請求項12記載の同期回路。
【請求項15】
前記遅延補償回路は、前記差動受信器から
同期された前記
シングルエンド信号を受信し、前記絶縁ドライバに位相遅延補償信号を供給する、
請求項
14記載の同期回路。
【請求項16】
前記遅延補償回路は、前記絶縁ドライバから
同期された前記
シングルエンド信号を受信し、前記高電力増幅器に位相遅延補償信号を供給する、
請求項
14記載の同期回路。
【請求項17】
前記遅延補償回路は、前記発振器から前記シングルエンド信号を受信し、前記複数の差動ドライバに位相遅延補償信号を供給する、
請求項
13記載の同期回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数の高度共振無線電力コイル(highly resonant wireless power coils)を介して大面積にわたって無線充電し、電力コイルに供給される信号を同期させるための電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度共振電磁誘導を用いた無線電力伝送システム(「無線エネルギー伝送システム」とも称される)において多くの開発が行われている。一般に、かかるシステムは、電源及び送信コイル、並びに、電力供給されるべき装置に接続された受信コイルを含む。無線電力伝送システムのアーキテクチャは、電源から負荷へのエネルギー伝達に用いられる、高周波数交番磁界を生成するコイルを使用することに集中している。電源は、電圧及び電流の形態のエネルギーを送信コイルに配電し、そのコイルの周りに、印加電圧及び電流に応じて変化する磁界を生成する。電磁波は、コイルから、自由空間を通って、負荷に結合された受信コイルまで伝搬する。電磁波が受信コイルを通過すると、受信コイルが捕捉するエネルギーに比例する電流が受信コイル内に誘導される。
【0003】
無線電力伝送システムのための1つの既知のコイルレイアウトは、基本スパイラルループである。
図1は、基本スパイラルループコイルを示す。基本スパイラルループコイルでは、コイルのインダクタンスLはN
2に比例する。ここで、Nはコイルの巻数である。この種のコイルは、典型的には、20W未満の小さな低電力システムで使用される。
【0004】
他の既知のコイルレイアウトは、基本インターリーブスパイラルループである。
図2は、2つのインタリーブループ巻線を含む基本インタリーブスパイラルループコイルを示す。1つの巻線は一本の実線として示されている。もう一つの巻線は破線で示されている。
図2において、2つの巻線は、高インダクタンス用には直列で、又は、低インダクタンス用には並列で構成されることができる。この種のループコイルは、一般的に、無線電力送信器(すなわち、電源側)に用いられる。
図2に示す鏡像パターンは、充電表面(コイルからの特定の距離)にほぼ均一な磁界を与える。この種のループコイルは、中電力用途(最大70Wシステム)に使用される。コイルの物理的サイズは、約12インチ四方に制限される。
【0005】
他のコイルレイアウトは、2018年3月15日出願の米国特許出願第15/922,286号に開示されている。その一例は、
図3に示すコイルの配置である。
図3は、PCB上に複数のループの単一コイル10を用いて形成されたコイルクラスタの中に形成された複数のループを示す。単一コイル10は、複数の円形ループのパターンを形成するためにPCB上で巻かれている。複数の円形ループは直列に接続されている。コイルクラスタは、複数の円形ループのパターンを維持するために提供され、ループは、水平方向と垂直方向の両方で、隣接する各ループから等距離にある。これにより、コイルクラスタが重畳しているときに、コイルループのパターンが維持され、コイルクラスタが他のコイルクラスタとデカップリング(decoupled)される。これはまた、接続されたコイルクラスタのうちの各隣接ループを互いにデカップリングすることを可能にする。ループのデカップリングにより、直列に接続された小さなループの組み合わせから生じるインダクタンスは、等価なサイズの巻線コイルと比べて比較的低い。低誘導コイルは、虚部インピーダンス変動に対する環境の影響がより低いため、無線電力伝送において有利である。
【0006】
大面積に電力を供給するために使用される場合、これらの無線電力システムに問題が生じ得る。例えば、コイル面積が増加するにつれて、放射される磁界の体積が増加し、その結果、生体組織への比吸収率(SAR)が増加し、EMI放射レベルが増加して、これは放射放出制限(radiated emissions limits)に準拠することを困難にする。
【0007】
大コイル面積のもう1つの影響は、インダクタンスの増加であり、したがって、コイルを6.78MHzの高度共振無線電力用途の、定められた、産業、科学、医療(ISM)の帯域(the fixed industrial, scientific and medical (ISM) band)に調整するには、キャパシタンスをさらに小さくすることが必要とされる。より小さいキャパシタンスは、許容誤差の影響を強調するため、共振を維持することが困難であり製造において実用的ではない。また、高インダクタンスは、同調キャパシタにわたる高電圧ストレスをもたらす。この電圧は容易に1000Vを超え得る。
【0008】
大面積コイルの二次的影響は、それらが、異種金属物の存在、デバイス(負荷)からのキャパシタンス、及び負荷電力需要などの、使用時の変動により、虚部インピーダンスシフトの影響を受けやすくなることである。
【0009】
別の問題は、一般的に大面積コイルに使用される高周波数(6.78MHz)増幅器は、より高い電圧及び/又は電流のFETを使用したとしても、デバイス電圧定格及び設計限界のために、最大出力電力に制限を有することである。
【0010】
したがって、上記の問題に対処する大面積無線電力システムを提供することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許公開第20180269727号公報
【発明の概要】
【0012】
一実施形態では、複数のコイルを含む大面積無線電力システムが提供される。長距離にわたって複数のコイルに電力を供給する場合、タイミング歪み及びジッタが問題となり得るため、タイミング歪み及びジッタを低減するために同期回路が設けられる。同期回路は、コイルに供給される信号が同相であるか、少なくとも任意の最大位相遅延閾値内にあるように、信号の位相遅延を補償することもできる。複数のコイルから電力を受信し得る大きな負荷に対して、信号が同相であることを確実にすることが重要である。
【0013】
例示的な実施例において、大面積無線電力システムは、同期送信器と、同期送信機からの複数の差動信号を受信し、複数の第2シングルエンド信号を出力する複数の同期受信器と、同期送信機は、第1シングルエンド信号を生成し、第1シングルエンド信号を複数の差動信号に変換する。大面積無線電力システムは、同期受信器のそれぞれから複数の第2シングルエンド信号を受信し、電力を生成する複数の高電力増幅器と、複数の高電力増幅器によって生成された電力を受信し、この電力を無線供給する複数の無線電力コイルと、も含む。
【0014】
別の実施形態では、大面積無線電力システムは、共振大面積コイルと、より小さい誘導コイルと、誘導コイルに電力を供給し、それによって誘導コイルに共振大面積コイル内への磁界を誘導させる高電流増幅器と、を有する。高電流増幅器は、例えば、電流平衡インダクタを用いてして並列に配列された2つの差動モードZVSクラスD増幅器として構成されてもよく、又は、並列に配列された2つの差動モードEクラス増幅器として構成され得る。
【0015】
もう一つの実施例では、大面積無線電力システムは、大面積コイルと、大面積コイルに電力を供給する高圧増幅器と、を有する。高電圧増幅器は、マルチレベル構成で積層された複数のZVSクラスD増幅器を有し、複数のZVSクラスD増幅器の各々は同期してスイッチングされる。
【0016】
無線電力コイルに高電力を供給する増幅回路も記載されている。増幅回路は、差動ドライバから差動信号を受信し、その信号をシングルエンド信号に変換する差動受信器を有する。増幅回路はさらに、シングルエンド信号を受信し、差動受信器を絶縁する絶縁ドライバと、シングルエンド信号を受信し、無線電力コイルに電力を供給する高電力増幅器と、を有する。増幅回路は、シングルエンド信号が高電力増幅器に供給される前に、シングルエンド信号の任意の位相遅延を補償する遅延補償回路も有する。
【0017】
同期回路は、複数の電力コイルに供給される複数の電力信号を同期させる同期回路も記載されている。同期回路は、前記シングルエンド信号を生成する発振器と、シングルエンド信号を複数の差動信号に変換する同期送信器を有する。同期回路はさらに、同期送信器から複数の差動信号を受信し、複数の差動信号を複数の同期シングルエンド信号に変換する複数の同期受信器を有する。同期回路は、複数の同期シングルエンド信号における位相遅延を補償する遅延補償回路も有する。
【0018】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面と併せて以下の説明を読むことで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】基本スパイラルループコイルを示す図である。
【
図2】2つのインタリーブループ巻線を有する基本インタリーブスパイラルループコイルを示す図である。
【
図3】既知のマルチループコイルクラスタを示す図である。
【
図4】一実施形態による大面積無線パワーシステムを示す図である。
【
図6】一実施形態による遅延補償回路を示す図である。
【
図7】大面積無線パワーシステムの実施形態を示す図である。
【
図8】大面積無線パワーシステムの実施形態を示す図である。
【
図9】並列高電流ZVSクラスD増幅器の実施形態を示す図である。
【
図10】並列高電流ZVSクラスE増幅器の実施形態を示す図である。
【
図11】大面積無線パワーシステムの実施形態を示す図である。
【
図12】高圧マルチレベルZVSクラスD増幅器の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図4は、本発明の第1実施形態による大面積無線電力システム400を示す。無線電力システム400は、3つのコイル40A、40B、40Cを有するが、電力を供給すべき領域のサイズに基づいて、より多くの又はより少ないコイルを使用することができる。
図4以降の図は、
図3のマルチループ構成を示しているが、コイル40A、40B及び40Cは、任意のコイルタイプであり得る。各コイルは、それぞれの無線電力増幅器41A、41B、41Cに結合されている。コイル40A、40B、40Cは、個別のステップでスケーリングする(scale in discrete steps)が、2つ以上のコイルに結合するのに十分大きな任意の負荷が、各コイルから同相の電力を受信することを確実にするために、各無線電力増幅器41A、41B、41C間の正確な同期を必要とする。さらに、無線電力増幅器間の物理的距離は、しかしながら、低いジッタ及びタイミング歪を伴う同期信号を分配することを困難にする。これに関して、各無線電力増幅器は、同期受信器42A、42B、42C及び同期送信器43を含む同期回路50に接続される。さらに、この実施形態では、コイル40A、40B、40Cは、-17dBの最大結合を有するように物理的に分離される。
【0021】
高共振無線電力用途のISM周波数、6.78MHzにおいて、コイルクラスタの大面積は、それらの間の容量結合を増加させる。この容量結合は、コモンモード電流のための経路を提供する。コモンモード電流は、EMI問題、不所望な加熱、及び劣化した性能に導く。これらのコモンモード問題を克服するために、適切なコモンモードチョーク44A、44B、44Cは、無線電力増幅器41A、41B、41C及びコイル40A、40B、40Cとの間に接続される。コモンモードチョーク44A、44B、44Cは、好ましくは、バイファイラ巻き(bifilar wound)であり、好ましくは、キャパシタンスを減少させ、したがって、コア材料に直接誘導される損失を減少させるために、厚いプラスチック絶縁を使用する。
【0022】
図5は、好ましい実施形態による、
図4の同期送信器43及び同期受信器42A、42B、42Cのブロック図であり、これらは共に同期回路50を含む。同期回路50は、差動伝送線路対51A、51B、51Cによって複数の同期受信器42A、42B、42Cに接続された同期送信器43を含む。同期送信器43は、無線電力システム400のためのシングルエンドクロック信号を供給する発振器52と、シングルエンドクロック信号を差動信号に変換する差動ドライバ53A、53B、53Cと、各差動伝送線路対51A、51B、51Cに電力を供給するDC電源54と、を含む。発振器52によって供給される信号の周波数は、好ましくは6.78MHzであり、高度共振無線電力用途のためのISM帯域である。各同期受信器42A、42B、42Cは、絶縁ドライバ56A、56B、56Cに接続された差動受信器55A、55B、55Cを含む。
【0023】
差動伝送線路対51A、51B、51Cは、クロック信号を発振器52から各差動受信器55A、55B、55Cへ分配するために使用される。差動伝送線路路対51A、51B、51Cは、無線電力電磁界からの防護(immunity)を提供するために使用され、ジッタ及びタイミング誤差を誘発し得る反射を防止する固定インピーダンス、好ましくは50Ω又は100Ωを有する。各同期受信器42A、42B、42Cは、それぞれの差動伝送線路対51A、51B、51Cから差動信号を受信し、それぞれの無線電力増幅器41A、41B、41Cに接続された絶縁ドライバ56A、56B、56Cの形態で、絶縁バリアにわたって送信されるシングルエンド信号に変換する。各差動受信器55A、55B、55Cの出力は、各無線電力増幅器41A、41B、41Cの間の高周波低インピーダンス経路を除去するために、絶縁ドライバ56A、56B、56Cに供給される。各差動受信器55A、55B、55Cは、好ましくは、それぞれの差動伝送線路対51A、51B、51Cを介してDC電源54からDC電力を受信する。各絶縁ドライバは、好ましくは、それぞれの無線電力増幅器41A、41B、41Cによって電力供給される。
【0024】
複数のコイルを同期させる場合、長さの異なるケーブルが必要となる。しかしながら、しかし、異なる長さのケーブルを使用すると、各受信器においてそれぞれ他の信号に対して位相差が生じる可能性がある。上述のように、種々のコイルが同相であることが重要である。この問題に対処する一つの方法は、同期送信器を同期受信器に接続するために同じ長さのケーブルを使用することである。しかしながら、送信器と受信器との間の距離が短いコイルでは、ケーブルが束ねられる結果となり、そのような束ねられたケーブルを収納するためのスペースが必要となる。したがって、この解決法は望ましくない。別の解決法は、
図5に示すように、各同期回路に遅延補償回路57A、57B、57Cを含むことである。ケーブルが最も短い場合、遅延補償回路は、より長い遅延を加えるように構成され得る。ケーブルが中程度の長さの場合、遅延補償回路は、中程度の遅延を加えるように構成することができる。ケーブルが最も長い場合、遅延補償回路は必要なく、すべての遅延回路設定に対する遅延基準として機能する。全ての付加された遅延は、各受信器に関する種々の信号間の位相差を最小限、好ましくは200ピコ秒以下にするという目標を達成するように意図されている。
【0025】
遅延補償回路57A、57B、57Cは、好ましくは、
図5に示すように、差動受信器55A、55B、55Cと絶縁ドライバ56A、56B、56Cとの間に配置されている。遅延補償回路57A、57B、57Cは、代わりに、絶縁ドライバ56A、56B、56Cの後段であって無線電力増幅器41A、41B、41Cの前段に、又は発振器52と同期送信器43の差動ドライバ53A、53B、53Cとの間に配置され得る。
図6は、例示的な遅延補償回路57A、57B、57Cを示し、例示的な遅延補償回路がどのように動作して遅延を補償するかをグラフで示す。
図6に示す遅延補償回路は、例示的なものであり、任意の既知の遅延補償回路を使用することができる。
【0026】
図7は、無線電力システム70を有する本発明の代替的実施形態を示す。無線電力システム70は、米国特許出願第15/922,286号に記載されているように、コイル40A、40B、40Cが部分的に(例えば、距離aだけ)重複する点を除いて、無線電力システム400(
図4)とほぼ同一である。
【0027】
図8は、別の実施形態による大面積無線電力システム80を示す。大面積無線電力システム80は、共振大面積コイル81及びより小さな誘導コイル82を使用する。高電流増幅器83によって駆動されるより小さい誘導コイル82は、共振大面積コイル81内に磁界を誘導し、共振によって磁界を増強する。より小さな誘導コイル82は高電流の一次コイルであり、すなわち、共振大面積コイル81中で高電力を駆動するための電流は、より小さな誘導コイルに高電流をもたらし、変流器(a current transformer)のように挙動する。より小さい誘導コイル82は、同調されているか又はされていなくてもよい。共振大面積コイル81は、低電流コイルであり、同調されている。
【0028】
大面積無線電力システム80内の2つのコイル81、82の組み合わせは、変流器として作用し、補正電流(the correct current)を生じる。
図4の大面積無線電力システム400にわたる大面積無線電力システム80の2コイルアプローチの主な利点は、共振大面積コイル81が、電力表面積にわたる周期的な小さなギャップなしに一様な電界を生成するように設計され得ることである。しかしながら、大面積無線電力システム80の2コイルアプローチは、誘導コイル面積の増加のために、非常に大きな面積にスケーリングする能力が制限されている。また、誘導コイルと共振コイルの両方が、広い面積に適した特性を有することも必要である。
【0029】
高電流増幅器83は、例えば、
図9に示されるように、電流平衡インダクタLB1、LB2、LB2、LB4を用いて並列に配列された2つの差動モードZVSクラスD増幅器であり得、
図10に示すように、複数の差動モードZVSクラスD増幅器の間の、又は2つの差動モードクラスE増幅器の間の循環電流を防止し得る。これらの両方の場合において、電流を増加させることによって、コイルへの電力は増加される。かかる並列増幅器は、米国特許第9,331,061号に詳細に記載されている。
図9及び10の増幅器トポロジーの各々に使用されるFETの各々に対するゲート信号タイミングは、損失の増加を招き得る電流不均衡又は循環を阻止するために正確なタイミングを必要とする。これは、信号が遅延補償回路57A、57B、57Cと同様の方法で狭いウィンドウ内に到達するように、同等の信号伝送経路長と共に低レイテンシゲートドライバを使用することを必要とする
【0030】
図11は、別の実施形態による大面積無線電力システム110を示す。大面積無線電力システム110は、高電圧増幅器112によって電力供給される単一の大型コイル111を使用する。無線電力システム110は、コイル内に十分な電流を誘導するのに十分高い駆動電圧を提供することによって、大型コイルに関連する問題を克服する。
【0031】
図12は、高電圧増幅器112の例示的な実施形態を示す。高電圧増幅器112は、マルチレベル構成でスタックされた複数のZVSクラスD増幅器を含み、ここで、すべての増幅器は同期してスイッチされる必要がある。マルチレベルコンバータに固有のものであるが、高電圧増幅器112は、負荷のための出力周波数を増加させながら、より低いスイッチング周波数を可能にする。これは、トポロジー内の多くのデバイスの損失を低く保つ。このトポロジーは、ZVSクラスDトポロジーが各レベル(ハーフブリッジ)に対してZVSを保証するために使用されるマルチレベルコンバータ上で広がっている。
図12は、差動モード構成を示すが、高電圧増幅器112は、シングルエンドであってもよい。
【0032】
上記の詳細な説明では、特定の実施形態を参照する。これらの実施形態は、当業者がそれらを実施することができるように十分に詳細に記載されている。他の実施形態を使用することができ、種々の構造的、論理的、及び電気的変更を行うことができることが理解されるべきである。さらに、特定の実施形態は、エネルギー伝送システムに関連して記載されるが、本明細書に記載される特徴は、一般に、他のタイプの回路にも適用可能であることを理解されたい。